説明

中空床版構造

【課題】円筒管の下方への生コンクリートの充填性に優れた中空床版構造の提供。
【解決手段】生コンクリート51を打設する型枠の中に複数の円筒管6を水平に配してなる中空床版構造Bは、円筒管6の上部と下部に所定間隔で上穴61と下穴62とを設け、上穴61と下穴62とを連通する連通パイプ7を円筒管6内に配設し、逆流防止パッキン3を連通パイプ7の出口71に取り付けてなり、円筒管6の下方の生コンクリート51を振動アームで振動させた後、連通パイプ7の入口72を蓋53で塞いでいる。振動アームが円筒管6の下方へ届くので、円筒管6の下方の生コンクリート51に直接振動を与えることができ、円筒管6の下方への生コンクリート51の充填性に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路高架橋、鉄道橋、河川橋等に使用される中空床版構造に関する。
【背景技術】
【0002】
生コンクリートの打設量低減や自重低減の観点から、特許文献1の図5に示す様に、コンクリート構造物の内部に中空円筒管を設けた中空床版構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−218606号公報
【特許文献2】特開2008−214959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1、2は、中空円筒管の影になるため、中空円筒管の下方への生コンクリートの充填性が悪いという課題がある。
【0005】
本発明の目的は、中空円筒管の下方への生コンクリートの充填性に優れた中空床版構造の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1について)
中空床版構造は、生コンクリートを打設する型枠の中に、複数の円筒管を略水平に配している。
円筒管の上部と下部には、所定間隔で上穴と下穴とが設けられている。
上穴と下穴とを連通する連通パイプが円筒管内に配設されている。
連通パイプの出口である下穴側には、逆流防止パッキンが取り付けられている。
【0007】
管間の隙間から円筒管の下方へ生コンクリートを流し込む。なお、連通パイプを介して流し込んでも良い。
上穴から円筒管の下方まで挿入した振動アームにより、円筒管の下方の生コンクリートに振動を与えて空隙を除去する。その後、連通パイプの入口である上穴側を蓋で塞ぐ。
【0008】
連通パイプを介して振動アームが円筒管の下方へ届くので、円筒管の下方の生コンクリートに直接振動を与えることができるため、空隙発生の防止が図れ、円筒管の下方への生コンクリートの充填性に優れる。
【0009】
連通パイプの出口である下穴側に逆流防止パッキンが取り付けられており、連通パイプの入口である上穴側を蓋で塞いでいる。このため、打設した生コンクリートが下穴側から連通パイプ内へ逆流することを防止でき、上穴側からの生コンクリートの連通パイプ内への侵入を防止できる。
【0010】
円筒管に上穴と下穴を設け、上穴と下穴とを連通する連通パイプを円筒管内に配設し、連通パイプの出口である下穴側に逆流防止パッキンを取り付け、振動アームにより円筒管の下方の生コンクリートに振動を与えた後に、連通パイプの入口である上穴側を蓋で塞ぐ構成であるので、比較的低コストである。
【0011】
(請求項2について)
中空床版構造は、生コンクリートを打設する型枠の中に、複数の円筒管を略水平に配している。
上穴と下穴とを連通する連通パイプが円筒管内に配設されている。
【0012】
管間の隙間から円筒管の下方へ生コンクリートを流し込む。なお、連通パイプを介して流し込んでも良い。
上穴から円筒管の下方まで挿入した振動アームにより、円筒管の下方の生コンクリートに振動を与えて空隙を除去する。
その後に、円柱状の発泡材を連通パイプ内に挿入して連通パイプ内を閉塞し、上穴側も蓋で塞ぐ。
【0013】
連通パイプを介して振動アームが円筒管の下方へ届くので、円筒管の下方の生コンクリートに直接振動を与えることができるため、空隙発生の防止が図れ、円筒管の下方への生コンクリートの充填性に優れる。
【0014】
円柱状の発泡材を連通パイプ内に挿入して連通パイプ内を閉塞し、上穴側も蓋で塞いでいる。このため、打設した生コンクリートが下穴側から連通パイプ内へ逆流することを防止でき、上穴側からの生コンクリートの連通パイプ内への侵入を防止できる。
【0015】
円筒管に上穴と下穴を設け、上穴と下穴とを連通する連通パイプを円筒管内に配設し、振動アームにより円筒管の下方の生コンクリートに振動を与えた後に、円柱状の発泡材を連通パイプ内に挿入して連通パイプ内を閉塞し、上穴側も蓋で塞ぐ構成であるので、比較的低コストである。
【0016】
(請求項3について)
中空床版構造は、生コンクリートを打設する型枠の中に、複数の円筒管を略水平に配している。
円筒管の上部と下部に、所定間隔で上穴と下穴とを設けている。
下穴に逆流防止パッキンを取り付けている。
【0017】
管間の隙間から円筒管の下方へ生コンクリートを流し込む。なお、上穴および下穴を介して流し込んでも良い。
上穴から円筒管の下方まで挿入した振動アームにより、円筒管の下方の生コンクリートに振動を与えて空隙を除去する。その後、連通パイプの入口である上穴側を蓋で塞ぐ。
【0018】
上穴および下穴を介して、生コンクリート打設用の振動アームが円筒管の下方へ届くので、円筒管の下方の生コンクリートに直接振動を与えることができるため、空隙発生の防止が図れ、円筒管の下方への生コンクリートの充填性に優れる。
【0019】
下穴に逆流防止パッキンが取り付けられており、上穴を蓋で塞いでいる。このため、打設した生コンクリートが下穴から円筒管内へ逆流することを防止でき、上穴から円筒管内への生コンクリートの侵入を防止できる。
【0020】
円筒管に上穴と下穴を設け、下穴に逆流防止パッキンを取り付け、振動アームにより円筒管の下方の生コンクリートに振動を与えた後に上穴を蓋で塞ぐ構成であるので、請求項1の中空床版構造より更に低コストである。
【0021】
(請求項4について)
中空床版構造は、生コンクリートを打設する型枠の中に、複数の円筒管を略水平に配している。
円筒管の上部と下部に、所定間隔で上穴と下穴とを設けている。
下穴の円筒管内壁に、逆流防止パッキンを取り付けた鍔付円筒を配設している。
【0022】
管間の隙間から円筒管の下方へ生コンクリートを流し込む。なお、上穴、鍔付円筒および下穴を介して流し込んでも良い。
上穴から円筒管の下方まで挿入した振動アームにより、円筒管の下方の生コンクリートに振動を与えて空隙を除去する。その後、上穴を蓋で塞ぐ。
【0023】
上穴、鍔付円筒および下穴を介して振動アームが円筒管の下方へ届くので、円筒管の下方の生コンクリートに直接振動を与えることができるため、空隙発生の防止が図れ、円筒管の下方への生コンクリートの充填性に優れる。
【0024】
逆流防止パッキンを取り付けた鍔付円筒を下穴の円筒管内壁に配置し、打設した生コンクリートが逆流防止パッキンを若干通過しても鍔付円筒の円筒部に堆積して、自重により更なる通過が防止でき、生コンクリートの円筒管内への逆流が防止できる。また、打設後に上穴を蓋で塞ぐため、上穴からの生コンクリートの侵入も防止できる。
連通パイプの代わりに鍔付円筒を採用しているので、請求項1の中空床版構造より低コストであるとともに、同程度の逆流防止が確保できる。
【0025】
(請求項5について)
中空床版構造は、生コンクリートを打設する型枠の中に、複数の円筒管を略水平に配している。
円筒管の上部と下部に、所定間隔で上穴と下穴とを設けている。
下穴の円筒管内壁に、逆流防止パッキンを取り付けた鍔付円筒を配設している。
【0026】
管間の隙間から円筒管の下方へ生コンクリートを流し込む。なお、上穴、鍔付円筒および下穴を介して流し込んでも良い。
上穴から円筒管の下方まで挿入した振動アームにより、円筒管の下方の生コンクリートに振動を与えて空隙を除去する。
【0027】
上穴、鍔付円筒および下穴を介して振動アームが円筒管の下方へ届くので、円筒管の下方の生コンクリートに直接振動を与えることができるため、空隙発生の防止が図れ、円筒管の下方への生コンクリートの充填性に優れる。
【0028】
逆流防止パッキンを取り付けた鍔付円筒を下穴の円筒管内壁に配置し、振動アームにより円筒管の下方の生コンクリートに振動を与えて空隙を除去した後に、鍔付円筒の上側開口および上穴を蓋で塞ぐ。
打設した生コンクリートが逆流防止パッキンを若干通過しても、鍔付円筒の上側開口が蓋で塞がれているので円筒管内に溢れ出ない。また、生コンクリートの上穴から円筒管内への侵入も防止できる。
連通パイプの代わりに鍔付円筒を採用しているので、請求項1の中空床版構造より低コストであるとともに、同程度の逆流防止が確保できる。
【0029】
(請求項6について)
請求項1、3〜5において、逆流防止パッキンを弾性膜に変更しても良い。
この場合、振動アームを円筒管の下方で振動させる際に弾性膜が伸び、弾性膜を振動アームが貫通しない。
なお、弾性膜に阻まれるため、円筒管の下方への生コンクリートの流し込みは、管間の隙間から行う。
弾性膜により、打設した生コンクリートの下穴からの逆流が防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例1に係る中空床版構造に用いる円筒管の説明図である。
【図2】その中空床版構造において、(a)は床版用の型枠の底部にレジコンおよび受台を配置した状態を示す説明図で、(b)は型枠内へ円筒管を落とし込んで受台に載せた状態を示す説明図である。
【図3】金属製バンドを円筒管に巻き付け、ボルト、ナットで締結して固定する状態を示す説明図である。
【図4】(a)は上穴および下穴を介して注入チューブを円筒管の下方へ臨ませて円筒管の下方へ生コンクリートを流し込んでいる状態を示す説明図で、(b)は振動付与作業が終了して振動アームを円筒管から抜き上穴を蓋で塞いだ状態を示す説明図である。
【図5】本発明の実施例2に係る中空床版構造に用いる円筒管の説明図である。
【図6】(a)は連通パイプを介して注入チューブを円筒管の下方へ臨ませて円筒管の下方へ生コンクリートを流し込んでいる状態を示す説明図で、(b)は振動付与作業が終了して振動アームを連通パイプから抜き入口を蓋で塞いだ状態を示す説明図である。
【図7】本発明の実施例3に係る中空床版構造に用いる円筒管の説明図である。
【図8】(a)は上穴および下穴を介して注入チューブを円筒管の下方へ臨ませて円筒管の下方へ生コンクリートを流し込んでいる状態を示す説明図で、(b)は振動付与作業が終了して振動アームを円筒管から抜き上穴を蓋で塞いだ状態を示す説明図である。
【図9】下穴の円筒管内壁に配設する鍔付円筒の説明図である。
【実施例1】
【0031】
本発明の実施例1(請求項3に対応)の中空床版構造Aを図1〜図4に基づいて説明する。
中空床版構造Aは、段付の上穴11、下穴12を開けた円筒管1を、道路高架橋の型枠2の中に水平に配してなる。
円筒管1は、本実施例では、帯鋼を螺旋状に捲きながら両端を重ね合わせ、保持固定して製造したものである。
なお、円筒管1の寸法は、本実施例では、外径1m、長さ6mであり、帯鋼の寸法は、幅15cm〜22cm、厚さ0.5mm〜1.6mmである。
【0032】
この円筒管1の上部と下部には、1mの間隔で、断面円形の上穴11(小径部の直径10cm)と断面円形の下穴12(小径部の直径10cm)が開けられている。
なお、下穴12には、円筒管1の内側から、星形等に切り込みを入れた鍔付の逆流防止パッキン3(ゴム製)が取り付けられている。
【0033】
中空床版構造Aは、以下の様にして建造される。
(1)上部と下部に、段付の上穴11と下穴12とを開けた長尺の円筒管1を所定の長さに切断して、高架橋等の建築現場へ搬入し、円筒管1の内側から逆流防止パッキン3を下穴12に取り付け、外れ無い様にテープ30等で固定する(図1参照)。
(2)床版用の型枠2の底部に、レジコン21および受台22を配置する{図2の(a)参照}。
(3)円筒管1を設置する予定箇所の長手方向に沿って主筋を配設し、更に、スターラップ23を配設し{図2の(b)参照}、型枠2内へ円筒管1を落とし込んで受台22に載せる。
【0034】
(4)長手方向の所定間隔毎に、金属製バンド41を円筒管1に巻き付け、金属製バンド41の取付端部穴42に挿通させたボルト43のネジ部にワッシャー44を通し、ナット45で締結し、円筒管1を型枠2内に固定する(図3参照)。
【0035】
(5)円筒管1、1間の隙間から円筒管1の下方へ生コンクリート51を流し込む。
なお、上穴11および下穴12を介して注入チューブ5を円筒管1の下方へ臨ませて円筒管1の下方へ生コンクリート51を流し込んでも良い{図4の(a)参照}。
【0036】
(6)上穴11から円筒管1の下方まで挿入した振動アームにより、円筒管1の下方の生コンクリート51に振動を与えて空隙を除去する。
【0037】
(7)振動アームを円筒管1から抜き、上穴11を蓋52で塞ぎ、テープ50等で固定する{図4の(b)参照}。
【0038】
中空床版構造Aは、以下の利点を有する。
上穴11および逆流防止パッキン3を取り付けた下穴12を介して、振動アームが円筒管1の下方へ届くので、円筒管1の下方の生コンクリート51に直接振動を与えることができる。
このため、空隙発生の防止が図れ、円筒管1の下方への生コンクリート51の充填性に優れる。
【0039】
円筒管1の内側から逆流防止パッキン3を下穴12に取り付け、振動アームによる振動付与作業の終了後に上穴11を蓋52で塞いでいる。
このため、円筒管1の下方へ打設した生コンクリート51が下穴12から円筒管1内へ逆流したり、上穴11から生コンクリート51が侵入したりする不具合を防止できる。
【0040】
円筒管1に上穴11と下穴12を設け、円筒管1の内側から下穴12に逆流防止パッキン3を取り付け、振動アームによる振動付与作業の終了後に上穴11を蓋52で塞ぐ構成であるので低コストである。
【実施例2】
【0041】
本発明の実施例2(請求項1に対応)の中空床版構造Bを、図2、図3、図5、および図6に基づいて説明する。
中空床版構造Bは、段付の上穴61および下穴62を開けた円筒管6を型枠2の中に水平に配してなり、上穴61と下穴62とを連通する連通パイプ7を円筒管6内に配設している。
【0042】
円筒管6は、実施例1と同様に、帯鋼を螺旋状に捲きながら両端を重ね合わせ、保持固定して製造したものである。
なお、円筒管6の寸法は、実施例1と同様に、外径1m、長さ6mであり、帯鋼の寸法は、幅15cm〜22cm、厚さ0.5mm〜1.6mmである。
【0043】
この円筒管6の上部と下部には、1mの間隔で、断面円形の上穴61(小径部の直径10cm)と断面円形の下穴62(小径部の直径10cm)が開けられている。
連通パイプ7の出口71である下穴62側には、星形等に切り込みを入れたゴム製の逆流防止パッキン3が取り付けられている。また、連通パイプ7の入口72である上穴61側は蓋53で塞がれている。
【0044】
中空床版構造Bは、以下の様にして建造される。
(1)上部と下部に、段付の上穴61と下穴62を開けた長尺の円筒管6内に、各上穴61と各下穴62とを連通する連通パイプ7を複数本、溶接等で固定する。
(2)この長尺の円筒管6を所定の長さに切断して建築現場(高架橋等)へ搬入し、連通パイプ7の出口である下穴62側の段内に逆流防止パッキン3を配設し、テープ等で固定する。
【0045】
(3)床版用の型枠2の底部に、レジコン21および受台22を配置する{図2の(a)参照}。
(4)円筒管6を設置する予定箇所の長手方向に沿って主筋を配設し、更に、スターラップ23を配設し{図2の(b)参照}、型枠2内へ円筒管6を落とし込んで受台22に載せる。
【0046】
(5)長手方向の所定間隔毎に、金属製バンド41を円筒管6に巻き付け、金属製バンド41の取付端部穴42に挿通させたボルト43のネジ部にワッシャー44を通し、ナット45で締結し、円筒管6を型枠2内に固定する(図3参照)。
【0047】
(6)円筒管6、6間の隙間から円筒管6の下方へ生コンクリート51を流し込む。
なお、円筒管6の上穴61、連通パイプ7および下穴12を介して注入チューブ5を円筒管6の下方へ臨ませて円筒管6の下方へ生コンクリート51を流し込んでも良い{図6の(a)参照}。
【0048】
(7)上穴61から円筒管6の下方まで挿入した振動アームにより、円筒管6の下方の生コンクリート51に振動を与えて空隙を除去する。
【0049】
(8)振動アームを円筒管6から抜き、連通パイプ7の入口72である上穴61側を蓋53で塞ぎ、テープ50等で固定する{図6の(b)参照}。
【0050】
中空床版構造Bは、以下の利点を有する。
上穴61、下穴62および連通パイプ7を介して振動アームが円筒管6の下方へ届くので、円筒管6の下方の生コンクリート51に直接振動を与えることができる。
このため、空隙発生の防止が図れ、円筒管6の下方への生コンクリート51の充填性に優れる。
【0051】
連通パイプ7の出口71である下穴62側にゴム製の逆流防止パッキン3を取り付け、振動アームによる振動付与作業の終了後に連通パイプ7の入口72である上穴61側を蓋53で塞いでいる。
このため、打設した生コンクリート51が下穴62から連通パイプ7内へ逆流したり、上穴61から生コンクリート51が侵入したりする不具合が防止できる。
【0052】
上部と下部に上穴61と下穴62を開けた円筒管6に、各上穴61と各下穴62とを連通する連通パイプ7を配設し、振動アームによる振動付与作業の終了後に、連通パイプ7の入口72である上穴61側を蓋53で塞ぐ構成であるので低コストである。
【実施例3】
【0053】
本発明の実施例3(請求項4、5に対応)の中空床版構造Cを、図2、図3、図7〜図9に基づいて説明する。
中空床版構造Cは、上穴81、下穴82を開けた円筒管8を型枠2の中に水平に配してなり、逆流防止パッキンpを取り付けた鍔付円筒9を下穴82の円筒管8の内壁に配設している。
【0054】
円筒管8は、実施例1、2と同様に、帯鋼を螺旋状に捲きながら両端を重ね合わせ、保持固定して製造したものである。
なお、円筒管8の寸法は、実施例1、2と同様に、外径1m、長さ6mであり、帯鋼の寸法は、幅15cm〜22cm、厚さ0.5mm〜1.6mmである。
【0055】
この円筒管8の上部には、段付で断面正方形の上穴81(短辺が10cm)が1m間隔で開けられている。
また、円筒管8の下部には、1mの間隔で、断面円形の下穴82(小径部の直径10cm)が開けられている。
【0056】
鍔付円筒9は、本実施例では、円盤状(直径119mm)の鍔部91と、逆流防止パッキンpを配設した円筒部92(直径89mm、高さ60mm)とからなり、ゴムパッキン93を介して、円筒管8の内壁にボルト止めされている。なお、90は鍔付円筒9の上側開口94を塞ぐ蓋である。
【0057】
中空床版構造Cは、以下の様にして建造される。
(1)上穴81および下穴82を開けた円筒管8を建築現場(高架橋等)へ搬入し、下穴82の円筒管8の内壁に鍔付円筒9を配設する。
(2)床版用の型枠2の底部に、レジコン21および受台22を配置する{図2の(a)参照}。
(3)円筒管8を設置する予定箇所の長手方向に沿って主筋を配設し、更に、スターラップ23を配設し{図2の(b)参照}、型枠2内へ円筒管8を落とし込んで受台22に載せる。
【0058】
(4)長手方向の所定間隔毎に、金属製バンド41を円筒管8に巻き付け、金属製バンド41の取付端部穴42に挿通させたボルト43のネジ部にワッシャー44を通し、ナット45で締結し、円筒管8を型枠2内に固定する(図3参照)。
【0059】
(6)円筒管8、8間の隙間から円筒管8の下方へ生コンクリート51を流し込む。
なお、円筒管8の上穴81、鍔付円筒9および下穴82を介して注入チューブ5を円筒管8の下方へ臨ませて円筒管8の下方へ生コンクリート51を流し込んでも良い{図8の(a)参照}。
【0060】
(7)上穴61から円筒管8の下方まで挿入した振動アームにより、円筒管8の下方の生コンクリート51に振動を与えて空隙を除去する。
【0061】
(8)振動アームを円筒管8から抜き、鍔付円筒9の上側開口94を蓋90で塞ぎ、上穴81を蓋84で塞ぎ、テープ50等で固定する{図8の(b)参照}。
【0062】
中空床版構造Cは、以下の利点を有する。
上穴81、鍔付円筒9、および下穴82を介して振動アームが円筒管8の下方へ届くので、円筒管8の下方の生コンクリート51に直接振動を与えることができるため、空隙発生の防止が図れ、円筒管8の下方への生コンクリート51の充填性に優れる。
【0063】
逆流防止パッキンpを取り付けた鍔付円筒9を下穴82の円筒管8の内壁に配置し、打設後に鍔付円筒9の上側開口94を蓋90で塞ぐため、打設した生コンクリート51が逆流防止パッキンpを若干通過しても円筒管8内へ流出しない。また、振動アームによる振動付与作業の終了後に上穴81を蓋84で塞ぐため、上穴81から円筒管8内への生コンクリート51の侵入も防止できる。
連通パイプ7の代わりに鍔付円筒9を採用しているので、実施例2の中空床版構造Bより低コストであるとともに、円筒管8内への流出が確実に防止できる。
【0064】
(変形例1)
実施例2において、下穴62側の逆流防止パッキン3を省き、振動アームを円筒管6から抜いた後、連通パイプ7を閉塞可能な大きさを有する円柱状の発泡スチロールを連通パイプ7の入口72である上穴61側から連通パイプ7内へ圧入し、連通パイプ7の入口72である上穴61を蓋53で塞ぐ構造であっても良い(請求項2に対応)。
【0065】
(変形例2)
実施例1において、下穴12の逆流防止パッキン3をゴム膜に変更しても良い(請求項6に対応)。
ゴム膜が伸び、振動アームを円筒管1の下方で振動させることができる。また、ゴム膜により、生コンクリートの円筒管1内への流出が防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の中空床版構造を用いれば、振動アームが円筒管の下方へ届くので、円筒管の下方の生コンクリートに直接振動を与えることができ、円筒管の下方への生コンクリートの充填性に優れる。
【符号の説明】
【0067】
A、B、C 中空床版構造
1、6、8 円筒管
2 型枠
3、p 逆流防止パッキン
7 連通パイプ
9 鍔付円筒
11、61、81 上穴
12、62、82 下穴
51 生コンクリート
52、53、84、90 蓋
94 上側開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生コンクリートを打設する型枠の中に、複数の円筒管を略水平に配した中空床版構造において、
前記円筒管の上部と下部には、所定間隔で上穴と下穴とが設けられ、
前記上穴と前記下穴とを連通する連通パイプが円筒管内に配設され、
前記連通パイプの出口である下穴側には、逆流防止パッキンが取り付けられ、
前記上穴から前記円筒管の下方まで挿入した振動アームにより前記円筒管の下方の生コンクリートに振動を与えて空隙を除去した後に、前記連通パイプの入口である上穴側を蓋で塞ぐことを特徴とする中空床版構造。
【請求項2】
生コンクリートを打設する型枠の中に、複数の円筒管を略水平に配した中空床版構造において、
前記円筒管の上部と下部には、所定間隔で上穴と下穴とが設けられ、
前記上穴と前記下穴とを連通する連通パイプが円筒管内に配設され、
前記上穴から前記円筒管の下方まで挿入した振動アームにより前記円筒管の下方の生コンクリートに振動を与えて空隙を除去した後に、円柱状の発泡材を連通パイプ内に挿入するとともに、上穴側を蓋で塞ぐことを特徴とする中空床版構造。
【請求項3】
生コンクリートを打設する型枠の中に、複数の円筒管を略水平に配した中空床版構造において、
前記円筒管の上部と下部には、所定間隔で上穴と下穴とが設けられ、
前記下穴には、逆流防止パッキンが取り付けられ、
前記上穴から挿入した振動アームにより前記円筒管の下方の生コンクリートに振動を与えて空隙を除去した後に、前記上穴を蓋で塞ぐことを特徴とする中空床版構造。
【請求項4】
生コンクリートを打設する型枠の中に、複数の円筒管を略水平に配した中空床版構造において、
前記円筒管の上部と下部には、所定間隔で上穴と下穴とが設けられ、
前記下穴の円筒管内壁には、逆流防止パッキンを取り付けた鍔付円筒が配設され、
前記上穴から前記円筒管の下方まで挿入した振動アームにより前記円筒管の下方の生コンクリートに振動を与えて空隙を除去した後に、前記上穴を蓋で塞ぐことを特徴とする中空床版構造。
【請求項5】
生コンクリートを打設する型枠の中に、複数の円筒管を略水平に配した中空床版構造において、
前記円筒管の上部と下部には、所定間隔で上穴と下穴とが設けられ、
前記下穴の円筒管内壁には、逆流防止パッキンを取り付けた鍔付円筒が配設され、
前記上穴から前記円筒管の下方まで挿入した振動アームにより前記円筒管の下方の生コンクリートに振動を与えて空隙を除去した後に、前記鍔付円筒の上側開口および前記上穴を蓋で塞ぐことを特徴とする中空床版構造。
【請求項6】
前記逆流防止パッキンを弾性膜に変更したことを特徴とする請求項1、請求項3乃至請求項5の何れか1項に記載の中空床版構造

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−87538(P2013−87538A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230452(P2011−230452)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000103769)オリエンタル白石株式会社 (136)
【出願人】(592151166)橋梁技建株式会社 (2)
【出願人】(511254365)株式会社水龍工業 (1)
【Fターム(参考)】