説明

中空形ブロック昇降装置

【課題】 中空形ブロックの製造工程の最終段階において、これを低コストかつ低労力で取り扱うことの可能なブロック昇降装置を提供すること。
【解決手段】 中空形ブロック昇降装置10は、中空形ブロックB0を下方から支持するブロック受け部20と、これが連結される昇降可能な油圧シリンダ40上の駒50と、油圧シリンダ40を含む油圧ジャッキシステムとからなり、ブロック受け部20の姿勢を保持するための受け部支持構造30が設けられた構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブロック昇降装置に係り、特に、海岸や河川における消波、護岸、あるいは根固めなどに用いるブロックを、低コスト、低労力で昇降させることの可能な、中空形ブロック昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、河川および海岸で使用する根固めブロックや、消波ブロックの製作は、鋼製型枠に生コンクリートを打設し、コンクリート養生後、上部鋼製型枠を脱型し、最後に底型枠を抜き取るという手順にて行われている。この、底型枠を抜き取る最後の作業には、ブロックが相当のサイズと重量を有するものであるために、大型クレーンを使用してきた。つまり、大型のブロック製作においては、底型枠を抜き取るためだけに大型クレーンが必要であった。
【0003】
大型ブロック製作の手順項目別に使用する機械と作業は、より具体的には以下の通りである。
鋼製型枠組立・・・大型ブロックでもパーツ単位では2t以下。
生コン打設・・・・クレーン打設、またはコンクリートポンプ打設。
鋼製型枠脱型・・・クレーンによるパーツ単位の脱型(2t以下)。
鋼製底型枠抜き取り・・・大型クレーンにて持ち上げ。
以上のように、先行する3つの手順と比較して、最後底型枠の引き抜き作業においてのみ大型クレーンが必要とされてきた。
【0004】
なお、このような大型ブロックの製作時の取扱いについては、従来から技術的な提案が複数なされている。後掲特許文献開示技術はその一つであり、型枠装置を使用して成型された四脚消波ブロックの脱型、転置作業の簡便化を目的として、底型枠の高さ位置を操作する油圧装置を設けた型枠支持機構と、ブロックの支持脚端部に当接する進退自在な保持部材を設けてこれに油圧装置を設けた保持機構とを備えた構成の装置を提案している。
【特許文献1】特開平8−74224号公報「四脚消波ブロックの転地装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、上記特許文献開示技術も含め、従来の大型ブロック製作における取扱いには、下記のような問題があった。
鋼製型枠のメーカーリースは一般的に、製作個数の1割という取り決めがなされており、仮に50tブロックの製作個数が20個の場合、借り入れ可能個数は2枠である。その場合、製作作業フローは次のようになる。
50tブロック 20個製作フロー
型枠2枠組立・・・・・1日
生コン打設・・・・・・1日
コンクリート養生・・・3日
型枠脱型・抜き取り・・1日
計 6日 よって20個製作・・・60日
【0006】
したがって、この例では、100t以上のクローラークレーンを60日間リースしなければならない。このように製作個数が少ない場合、使用頻度が少ない大型クレーンの賃貸損料は、大きなコストアップの原因となる。また、大型クレーンの運搬、組立、解体等にも相当な労力がかかる。このことも含め、大型ブロック製作の最終工程部分は、多大かつ深刻なエネルギーロスの発生することが、大きな問題となっていた。このような問題点は、ブロックが中空構造を備えた型のブロック、つまり中空形ブロックにおいても共通する。
【0007】
なお、前掲特許文献開示の技術は、特定の製造方法における脱型作業の簡便化を図ったものではあるが、次のような問題点がある。
〈1〉ブロック製造・養生期間中に亘り、最後の脱型作業を考慮して、ある程度高く地面から浮かせた状態を、継続維持しなくてはならない。
〈2〉油圧システムも、底部用、脚部用の2系統が必要であり、複雑な構成である。
〈3〉特定製造方法において底部用と脚部用の要素を含んだ構成であるため、各種形状のブロックに対して即対応できない。
【0008】
〈4〉底型枠脱型だけでなく、ブロック設置位置を平行移動したい場合や、運搬用車両等に積み込みたい場合があるが、そのためには、ブロックを持ち上げて上昇させることが必要である。しかし、製作されたブロックを下降させて接地させる機能しかないため、これに対応できない。
〈5〉作業をより簡便に、かつ安価にできる技術が求められる。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点を除き、海岸や河川における消波、護岸、あるいは根固めなどに用いる大型ブロック、特に中空形ブロックについて、その製造工程の最終段階において、低コストかつ低労力で取り扱うことの可能な、中空形ブロック昇降装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者は上記課題について検討した結果、油圧ジャッキシステムによってブロックを昇降させることによって上記課題が解決可能であることを見出し、本発明に至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
(1) 中空形ブロックをその中空部において下方から支持するブロック受け部と、該ブロック受け部が連結される昇降可能な油圧シリンダ上の駒と、および該油圧シリンダを含む油圧ジャッキシステムとからなる中空形ブロック昇降装置であって、該ブロック受け部の姿勢を保持するための受け部支持構造が設けられている、中空形ブロック昇降装置。
(2) 前記受け部支持構造は、隣接する前記駒間をそれぞれつなぐ連結部材により枠状をなすことを特徴とする、(1)に記載の中空形ブロック昇降装置。
(3) 前記ブロック受け部は、中空形ブロックの中空部に通されてその天井部を下方から支持するための棒状体を備えることを特徴とする、(1)または(2)に記載の中空形ブロック昇降装置。
(4) 前記ブロック受け部は、前記棒状体と、該棒状体−前記駒間を連結する受梁体とからなり、該受梁体は該棒状体の両端部にそれぞれ二本設けられ、該ブロック受け部は、該棒状体の端面方向からは該受梁体と前記連結部材によって三角形状をなすことを特徴とする、(3)に記載の中空形ブロック昇降装置。
(5) 前記ブロック受け部、前記受け部支持構造ならびに前記油圧ジャッキシステムは分解および組み立て自在であることを特徴とする、(1)ないし(4)のいずれかに記載の中空形ブロック昇降装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明の中空形ブロック昇降装置は上述のように構成されるため、これによれば、大型ブロックの製造工程において、大型ブロックの取扱いを低コストかつ低労力で、もちろん確実、安全に、また簡便に行うことができる。特に最終段階の底型枠の抜き取り作業において、従来のような大型クレーンの使用が不要となるため、全製作工程中でもコストがかかる当該工程におけるコストダウン、労力低減効果は計り知れない。
【0012】
本発明装置は、中空構造を備えた中空形のものであれば、全体形状に関わらず、各種形状・構造のものに対応可能なものであるため、汎用性が高い。海岸・河川における消波、護岸、根固めなど、ブロックの用途も選ばない。
【0013】
本発明装置はまた、パーツ毎に解体、組立を行うことができる。しかも、どのようなサイズ・構造の大型ブロックに適用する場合であっても、最大重量を2t以下にして、たとえばクレーン仕様バックホウ0.4m級、または2.9t吊りクレーン付きトラック、といった小機械で取り扱うことができる。
【0014】
このように小機械で取り扱うことができるため、少人数での作業ができ、多大なコストダウンとなる。また、油圧ジャッキシステムのため静かな作業ができる。さらに微調整も容易であるため、作業中においても、動作面・労務面ともに随時最適な管理が可能となり、非常に安全である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明装置をスタビック6t型の中空形ブロックに適用した例について、図面により詳細に説明する。なおこれは一例であり、たとえば中空三角ブロックなど、本発明装置があらゆる形状・構造の大型ブロックに適用できることは、上述の通りである。
図1は、中空形ブロックに本発明中空形ブロック昇降装置を適用した状態を示す正面図、
図2は、図1に係る平面図、そして、
図3は、図1に係る側面図である。
【0016】
これらに図示するように、本中空形ブロック昇降装置10は、中空形ブロックB0をその中空部において下方から支持するブロック受け部20と、ブロック受け部20が連結される昇降可能な油圧シリンダ40上の駒50と、および油圧シリンダ40を含む油圧ジャッキシステム(図示せず)とからなり、ブロック受け部20の姿勢を保持するための受け部支持構造30が設けられていることを、主たる構成とする。ブロック受け部20や受け部支持構造30は、これらの部材としての機能を充分に果たすことができる限り、鋼製その他適宜の材料にて形成したものを用いることができる。
【0017】
受け部支持構造30は、隣接する駒50、50間をそれぞれつなぐ連結部材30A、30B等によって、その全体は、中空形ブロックB0の平面構造に対して枠状をなすように構成される。なお、受け部支持枠構造30は要するに、中空形ブロックB0に対する外側方からの支持作用をなすものである。つまり、枠を嵌めるような形態で外側方からの支持作用が、中空形ブロックB0に対してなされるものである。
【0018】
各図に示すように本中空形ブロック昇降装置10のブロック受け部20は、中空形ブロックB0の中空部に通されてその天井部を下方から支持するための棒状体20Bを備え、さらに、棒状体20B−駒50間を連結する受梁体20Hとから構成される。受梁体20Hは棒状体20Bの両端部にそれぞれ二本設けられる。かかる構成によりブロック受け部20は、棒状体20Bの端面方向からは、受梁体20Hと連結部材30A等とによって三角形状に把握される。
【0019】
以上述べた構成を備える本発明中空形ブロック昇降装置10を、スタビック6t型の中空形ブロックB0における製造後の底型枠抜き取り作業に用いる場合、まず中空形ブロックB0を下方から支持するために、中空形ブロックB0の外側方に設置された油圧シリンダ40、40間に、ブロック受け部20の棒状体20Bと二本の受梁体20H、20Hとによる逆V字形の構造が形成される。この際、棒状体20Bは、中空形ブロックB0の中空部に通されてその天井部を下方から支持するように設定される。
【0020】
棒状体20Bは、中空形ブロックB0の中空部の長さを超える長さであるが、中空部を通って裏側に突出した反対側端部にも、同様の逆V字形の構造が形成される。また、図では棒状体20Bは円管構造を備えたものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。中空形ブロックB0の上方支持に充分耐え強度・物性を備え、かつ中空部を通せるものである限り、管構造に限らずに用いることができる。
【0021】
そして、各駒50、50間をつなぐ形で連結部材30A、30Bが取り付けられ、 受け部支持構造30が構成される。これによって、ブロック受け部20の構造は保持され、枠を嵌めるような形態で、中空形ブロックB0に対する外側方からの支持がなされる。
【0022】
ついで、油圧ジャッキシステムの作動によって駒50、50等を上昇させることによって、中空形ブロックB0は上昇せしめられる。このとき、前述した受け部支持構造30が維持されることによって、中空形ブロックB0は下方から確実かつ安全に支持されつつ上昇せしめられる。つまり、中空形ブロックB0を上昇させる場合に、ブロック受け部20やこれが取り付けられた駒50、油圧シリンダ40がブロックB0の重力(圧力)に負けて外側方へと除けられ、中空形ブロックB0を下方から支持できなくなって、ブロックB0が落下する、という事態が完全に防止される。このようにして、目的とする昇降動作が確実かつ安全に行われる。
【0023】
油圧ジャッキシステムによる上昇動作は、一のシステムによる一の操作によって、各受梁体20Hが取り付けられた全ての箇所における油圧シリンダ40を、一斉に、かつ同じ作動にて行うようにすれば、操作としては簡便である。しかしながら、中空形ブロックB0の姿勢の微調整などのために、各箇所をそれぞれ別個に制御することとしてもよい。
【0024】
なお、各部材長さその他の仕様は、適用される中空形ブロックのサイズ・構造・形状に適合するものを、用意しておけばよい。
【0025】
前述の通り本発明装置はその適用対象とする形状・構造を特に限定せず、幅広く適用可能である。また、消波、護岸、根固め各用途に応じ、さらに海岸や河川の具体的な地形その他の地理・気象条件に応じる形で、種々の形状・構造の大型ブロックが従来から提案されているが、それが中空形の構造のものである限り、本発明はその全てに適用可能なものである。
【0026】
本発明装置を使用して、実際に上述のスタビック6t型ブロック製作作業を試みたところ、装置自体の構造がシンプルであるため、初めて作業に携わった作業員でも簡単に組み立てることができた。また、コスト、エネルギー的にも多大な軽減効果が確認できた。
【0027】
なお付言すれば、本発明の中空形ブロック昇降装置の構成によれば、大型ブロック用途のみならず、相当の重量を有する一定形状の構造物であってかつ中空構造を備えたものであれば、広く昇降作業の用に供することが可能である。つまり、
重量構造物をその中空部において下方から支持するブロック受け部と、ブロック受け部が連結される昇降可能な油圧シリンダ上の駒と、および油圧シリンダを含む油圧ジャッキシステムとからなる重量構造物昇降装置であって、ブロック受け部の姿勢を保持するための受け部支持構造が設けられている、重量構造物昇降装置としてである。この場合、受け部支持構造は、隣接する駒間をそれぞれつなぐ連結部材により枠状をなすようにする構成も同様である。特に建設・工事現場においては重量構造物の取扱いが多く、本装置を利用できる場合も少なくないと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の中空形ブロック昇降装置は小型、軽量であり、また汎用性が高い。したがって今後、ブロック製作には必要不可欠な装置になるものと見込まれる。さらにまた本発明装置を使えば、ブロックのトラックへの積み込みも行うことができる。本発明のブロック昇降装置はこのようにさまざまな利点を有したものであり、特に建設産業分野において利用価値が極めて高い発明である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】中空形ブロックに本発明中空形ブロック昇降装置を適用した状態を示す正面図である。
【図2】図1に係る平面図である。
【図3】図1に係る側面図である。
【符号の説明】
【0030】
10…中空形ブロック昇降装置
20…ブロック受け部
20B…棒状体
20H…受梁体
30…受け部支持構造
30A、30B…連結部材
40…油圧シリンダ
50…駒
B0…中空形ブロック


【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空形ブロックをその中空部において下方から支持するブロック受け部と、該ブロック受け部が連結される昇降可能な油圧シリンダ上の駒と、および該油圧シリンダを含む油圧ジャッキシステムとからなる中空形ブロック昇降装置であって、該ブロック受け部の姿勢を保持するための受け部支持構造が設けられている、中空形ブロック昇降装置。
【請求項2】
前記受け部支持構造は、隣接する前記駒間をそれぞれつなぐ連結部材により枠状をなすことを特徴とする、請求項1に記載の中空形ブロック昇降装置。
【請求項3】
前記ブロック受け部は、中空形ブロックの中空部に通されてその天井部を下方から支持するための棒状体を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の中空形ブロック昇降装置。
【請求項4】
前記ブロック受け部は、前記棒状体と、該棒状体−前記駒間を連結する受梁体とからなり、該受梁体は該棒状体の両端部にそれぞれ二本設けられ、該ブロック受け部は、該棒状体の端面方向からは該受梁体と前記連結部材によって三角形状をなすことを特徴とする、請求項3に記載の中空形ブロック昇降装置。
【請求項5】
前記ブロック受け部、前記受け部支持構造ならびに前記油圧ジャッキシステムは分解および組み立て自在であることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の中空形ブロック昇降装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−215707(P2009−215707A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−57098(P2008−57098)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【特許番号】特許第4233108号(P4233108)
【特許公報発行日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(508069486)有限会社香南土木工業 (1)
【Fターム(参考)】