説明

中空有機・無機ハイブリッド微粒子、反射防止性樹脂組成物、反射防止フィルム用コーティング剤、反射防止積層体及び反射防止フィルム

【課題】 低屈折率の反射防止層を有する反射防止積層体の微粒子として用いたときに、バインダー成分への分散性に優れ、光の乱反射を防止するとともに、機械的強度及びアルカリ耐性が高い反射防止層を得ることができる中空有機・無機ハイブリッド微粒子、反射防止性樹脂組成物、反射防止フィルム用コーティング剤、反射防止積層体及び反射防止フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】 有機骨格及び無機骨格を有し、単孔構造の中空有機・無機ハイブリッド微粒子であって、平均粒子径が10〜100nm、屈折率が1.40以下であり、かつ、シランカップリング剤で表面処理されている中空有機・無機ハイブリッド微粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低屈折率の反射防止層を有する反射防止積層体の材料として用いた場合に、バインダー成分への分散性に優れ、光の乱反射を防止するとともに、機械的強度及びアルカリ耐性が高い反射防止層を得ることができる中空有機・無機ハイブリッド微粒子、反射防止性樹脂組成物、反射防止フィルム用コーティング剤、反射防止積層体及び反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
パソコン、ワープロ、携帯電話等に用いる液晶ディスプレイや、その他種々の商業ディスプレイ等は、極めて広範な分野で利用されている。これらのディスプレイにはガラスやプラスチック等の透明基板が用いられており、これらの透明基板を通して物体や文字、図形等の視覚情報を認知している。
これらのディスプレイの実用上の問題点として、表示面の反射による視認性の悪化が挙げられる。すなわち、室内外を問わずに外光等が入射するような環境下で使用した場合に、外光等の入射光が透明基板の表面で反射することにより、内部の視覚情報が見えにくくなる。
【0003】
このような透明基板の反射を防止する方法としては、例えば、透明基板の表面に凹凸のあるコーティング層を形成し、この表面の凹凸により外光を乱反射させる方法がある。
例えば、特許文献1には、ゾルゲル法により調製されたシリケート系コーティング剤中にシリカ分散液を混合し、その混合液をガラス基板上に塗布して焼成した、表面にシリカ粒子又はシリカ粒子の凝集体による凹凸を有する反射防止膜が開示されている。また、特許文献2には、透明基材フィルム上に樹脂を主成分とする中間層を形成し、この中間層上に、屈折率1.45以下の有機超微粒子を含有する塗布液を塗布することにより形成された、有機超微粒子の表面が露出した凹凸の最表層を有する反射防止膜が開示されている。
【0004】
しかしながら、表面に凹凸を形成して外光を乱反射させる方法は、見かけ上の眩しさは低減されるものの、全体としての反射光の量は減っておらず、全体が白っぽくなるという問題があった。また、表面の凹凸に指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れが付着しやすく、かつ、一度付着した汚れは微細な凹凸があるために除去することが容易ではないという問題もあった。
【0005】
これに対して、透明基板の表面に低屈折率の反射防止層を形成する方法が提案されている。低屈折率の反射防止層を透明基板の表面に形成することにより、光の乱反射や汚れの問題等もなく透明基板の反射を防止することができる。
このような低屈折率の反射防止層としては、シリコン系又はフッ素系の材料からなるものが用いられていたが、これらは一般に透明基板との密着性に劣ることから、例えば、ナノメートルオーダーのシリカ微粒子等の低屈折率の微粒子を分散させたコーティング剤を用いて透明基板上にコーティング層を形成した反射防止フィルムが試みられている。例えば、特許文献3には、一定の構造を有する有機ケイ素化合物重合体をバインダーとして中空シリカ微粒子を配合した低屈折率コーティング剤と、該低屈折率コーティング剤を用いた反射防止フィルムとが開示されている。
【0006】
しかしながら、シリカ微粒子はアルカリ溶液への耐性に劣ることから、シリカ微粒子を含むコーティング層は、汚れを拭き取る際に市販のアルカリ洗剤等を使用すると、性能が低下してしまうことがあるという問題があった。
また、低屈折率コーティング剤のバインダー成分として無機系有機ケイ素化合物重合体等を用いた場合、得られるコーティング層は、脆く機械的強度に欠けるものであった。これに対し、低屈折率コーティング剤のバインダー成分として透明樹脂等の有機系バインダーを用いることで成膜性に優れ機械的強度に優れるコーティング層が得られるが、シリカ微粒子は、無機系有機ケイ素化合物等の無機系バインダー成分中への分散性はよいものの、透明樹脂等の有機系バインダー成分中への分散性が悪く、シリカ微粒子を用いる限りは、樹脂への分散性の問題から、成膜性に優れ機械的強度に優れる透明樹脂をバインダーとして用いることが難しいという問題もあった。
【0007】
これに対して、低屈折率の微粒子として、空隙率が一定以上である中空樹脂微粒子を用いることも検討されている。中空樹脂微粒子は、耐アルカリ性やバインダーに対する分散性に優れることから、このような中空樹脂微粒子を用いれば、透明基板の反射を効率的に抑えることができ、汚れ及び洗浄に強く、機械的強度にも優れる反射防止フィルムが得られることが期待される。
【0008】
このような中空樹脂微粒子の製造方法としては、例えば、特許文献4、特許文献5には、乳化重合によってコア−シェル型のポリマーを形成し、塩基又は塩基及び酸で処理して内部に孔を有するポリマー粒子を製造する方法が開示されている。また、特許文献6、特許文献7には、ラジカル重合による中空樹脂微粒子の製造方法が開示されている。また、特許文献8には、シード重合による中空樹脂微粒子の製造方法が開示されている。更に、特許文献9、特許文献10、特許文献11には、界面反応によって得られる殻を有するマイクロカプセルの製造方法が開示されている。
しかしながら、中空樹脂微粒子を充分に低屈折率にするためには高い空隙率を達成することが必須であるところ、これらの方法で得られる粒子はいずれも粒子径がマイクロメートルオーダーのものであり、ナノメートルオーダーの粒子径を有し、充分に低い屈折率が得られるほどの高空隙率を達成した中空樹脂微粒子は得られなかった。
【0009】
また、特許文献12及び特許文献13には、内部に空洞を有する中空シリカ等の中空微粒子を、アルコキシシランの加水分解重縮合物から得られる無機成分を含むバインダー中に分散させた低屈折率層が開示されている。このような低屈折率層は、多数のミクロボイドを有する低屈折率層と同等の効果を有し、かつ、ミクロボイドがシリカ等の硬い外殻に保護された形となっているため、ある程度の塗膜硬度を有する。
【0010】
しかしながら、無機成分を含むバインダーにより硬い塗膜が形成される反面、外部からの衝撃に対して脆いために、塗膜の機械強度、特に耐擦傷性が劣るといった問題があった。
加えて、中空シリカ粒子の凝集効果により塗膜単独の場合に比べてより硬い塗膜が得られる反面、脆性も増すため、低屈折率でかつ機械的強度に優れる塗膜の実現は困難であった。
【特許文献1】特開平9−101518号公報
【特許文献2】特開平7−092305号公報
【特許文献3】特開2002−317152号公報
【特許文献4】特開平1−185311号公報
【特許文献5】特開平6−248012号公報
【特許文献6】特開平2−255704公報
【特許文献7】特公平5−040770号公報
【特許文献8】特開平8−20604号公報
【特許文献9】特開平8−48075号公報
【特許文献10】特開平8−131816号公報
【特許文献11】特開平10−24233号公報
【特許文献12】特開2001−167637号公報
【特許文献13】特開2002−225866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、上記現状に鑑み、低屈折率の反射防止層を有する反射防止積層体の材料として用いた場合に、バインダー成分への分散性に優れ、光の乱反射を防止するとともに、機械的強度及びアルカリ耐性が高い反射防止層を得ることができる中空有機・無機ハイブリッド微粒子、反射防止性樹脂組成物、反射防止フィルム用コーティング剤、反射防止積層体及び反射防止フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、有機骨格及び無機骨格を有し、単孔構造の中空有機・無機ハイブリッド微粒子であって、平均粒子径が10〜100nm、かつ、屈折率が1.40以下であり、かつ、シランカップリング剤で表面処理されている中空有機・無機ハイブリッド微粒子である。
以下に本発明を詳述する。
【0013】
本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子は、単孔構造を有する中空状である。
本明細書において単孔構造とは、多孔質状等の複数の空隙を有する場合を含まず、ただ1つの空隙を有することを意味する。単孔構造であることにより、空隙内部は密閉性に優れたものとなり、例えば、本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子を反射防止フィルムに用いた場合に、粒子内部へのバインダーやその他の成分の浸入による空隙率の低下を防ぐことができる。
空隙内部は、気体が存在する。このような気体としては空気が好ましいが、他の気体であってもよい。空気相は屈折率がほぼ1.00であることから、中空状とすることにより極めて低い屈折率を実現することができる。
【0014】
本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子は、有機骨格及び無機骨格を有する。
本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子は、有機骨格によるネットワークにより耐アルカリ性に優れたものとなる。そのため、例えば、本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子を用いて作製した反射防止フィルムは、汚れを拭き取る際に市販のアルカリ洗剤等を使用した場合でも、含有する本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子がアルカリ洗剤に溶解することがなく、反射防止フィルムとしての性能が低下することがない。
また、本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子は、無機骨格を有することにより、耐熱性及び耐溶剤性に優れ、本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子を用いて反射防止フィルムを作製する場合、その成膜時に溶剤を使用する場合等において、本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子が、溶剤により微粒子骨格が軟化することによる空隙の収縮、バインダー成分の空隙への浸入を効果的に防ぐことができる。更に、内部に空気相(屈折率=1.00)を有するようにすることで、屈折率を効果的に低くすることができるため、例えば、このような低屈折率の中空有機・無機ハイブリッド微粒子を含有するコーティング剤を用いてなる反射防止フィルムの屈折率も低くすることができる。
【0015】
本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子は、平均粒子径の下限が10nm、上限が100nmである。10nm未満であると、中空有機・無機ハイブリッド微粒子同士の凝集が発生して、取扱性に劣る。100nmを超えると、本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子を、例えば、反射防止フィルムに用いた場合には、反射防止フィルム表面に中空有機・無機ハイブリッド微粒子による凹凸が生じて平滑性が劣ったり、中空有機・無機ハイブリッド微粒子表面のレイリー散乱に起因して反射防止フィルムの透明性が低下し、画像が白化したりする。好ましい上限は80nm、より好ましい上限は60nmである。
【0016】
本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子は、外殻の厚みが、平均粒子径の1/60〜1/3であることが好ましい。具体的には、外殻の厚みが1〜30nmであることが好ましく、2〜20nmであることがより好ましい。外殻の厚さが1nm未満であると、バインダー樹脂等が中空有機・無機ハイブリッド微粒子内部に侵入して内部の空洞が減少し、低屈折率の効果が充分得られないことがある。また、外殻の厚さが30nmを超えると、低屈折率の効果が充分得られなくなることがある。
【0017】
本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子は、屈折率の上限が1.40である。1.40を超えると、本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子を、例えば、反射防止フィルムに用いた場合には、外光等の入射光が反射するのを防止する効果が充分に得られなくなり、反射を防止するために必要な反射防止フィルムの厚さが必要以上に厚くなってしまう。好ましい上限は1.35、より好ましい上限は1.30である。
【0018】
本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子は、空隙率の好ましい下限が30%である。30%未満であると、充分に低い屈折率を実現できないことがある。空隙率の上限としては特に限定されないが、形状の維持、及び、ある程度の強度を確保する必要があることから、好ましい上限は95%、より好ましい上限は70%である。
【0019】
本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子は、粒子径のCV値の好ましい上限が20%である。20%を超えると、100nm以上の粗大粒子の比率が高くなり、本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子を、例えば、反射防止フィルムに用いた場合には、透明性や平滑性が劣ることがある。より好ましい上限は15%である。
【0020】
本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子は、更にシランカップリング剤で表面処理されているものである。特に無機骨格部分に表面処理を行うことによって、バインダー樹脂に対する親和性が向上し、反射防止性樹脂組成物中において、本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子の均一分散が可能となるとともに、本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子同士の凝集、大粒子化による透明性や塗膜強度の低下を防ぐことができる。
更に思いがけないことに、シランカップリング剤の反応により粒子骨格が更に強固になり、粒子の潰れが抑制されて反射防止効果が改善されることも見出した。
【0021】
本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子の表面処理に用いられる上記シランカップリング剤は、電離放射線硬化性基を有することが好ましく、上記電離放射線硬化性基は、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基であることが好ましい。
【0022】
上記アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有するシランカップリング剤は、電離放射線硬化性を有しているため、例えば、バインダー樹脂として、電離放射線硬化性基を有する樹脂を用いた場合、電離放射線硬化性基と容易に反応し、本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子がバインダー樹脂に固定される。即ち、本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子が、バインダー樹脂中で架橋剤として作用する。これにより、膜全体の引き締め効果によって得られる塗膜の硬度が向上し、また、バインダー樹脂が本来有する柔軟性を残したまま硬さを付与することができる。従って、塗膜がそれ自体変形することにより、外部衝撃に対する吸収力や変形後の復元力を有するため、傷の発生を抑えることができる。
【0023】
上記シランカップリング剤としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有するシランカップリング剤の使用が好ましい。
【0024】
上記シランカップリング剤の表面処理量は、表面処理前の中空有機・無機ハイブリッド微粒子100重量部に対して、0.5〜50重量部であることが好ましく、1〜30重量部であることがより好ましい。0.5重量部未満であると、バインダー樹脂に対する中空有機・無機ハイブリッド微粒子の親和性が不充分となる。一方、50重量部を超えると、中空有機・無機ハイブリッド微粒子の表面処理に使用されなかった遊離のシランカップリング剤が多量に存在するため、塗膜が硬くなり、外部衝撃に対する復元性が低下して脆くなり、割れや傷の発生が増す。
【0025】
上記シランカップリング剤の表面処理方法としては、本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子の有機溶剤への分散性と、バインダー樹脂との親和性とを向上させることができれば、特に限定されず、従来の方法により処理することができる。例えば、表面処理前の中空有機・無機ハイブリッド微粒子の分散液に所定量のシランカップリング剤を加え、必要に応じて、酸処理、アルカリ処理、加熱処理等を行うことにより、中空有機・無機ハイブリッド微粒子の表面処理を行うことができる。
【0026】
上記シランカップリング剤を用いて表面処理を行う場合は、全てのシランカップリング剤を中空有機・無機ハイブリッド微粒子の表面に導入せず、シランカップリング剤単独又は縮合体として塗工液中に存在させてもよい。上記シランカップリング剤は、バインダー樹脂や中空有機・無機ハイブリッド微粒子との親和性に優れるため、本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子を塗工液中で安定的に分散させることができる。また、上記シランカップリング剤は、電離放射線や加熱による硬化の際に、膜中に取りこまれて架橋剤として作用するため、シランカップリング剤の全量が中空有機・無機ハイブリッド微粒子表面に導入された場合と比べて、塗膜の性能が向上する。
【0027】
本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子の製造方法としては特に限定されないが、表面処理前の中空有機・無機ハイブリッド微粒子を作製した後、シランカップリング剤で表面処理を行う方法等が挙げられる。
【0028】
上記表面処理前の中空有機・無機ハイブリッド微粒子の作製方法としては特に限定されず、適宜の重合方法を用いて合成することができ、例えば、構造内部にビニル基を有する重合性シランカップリング剤、重合性モノマー及び非重合性化合物とを用いて、乳化重合、懸濁重合、ソープフリー重合、マイクロエマルジョン重合、ミニエマルジョン重合、マイクロサスペンジョン重合等を行う方法等が挙げられる。
【0029】
上記構造内部にビニル基を有する重合性シランカップリング剤としては特に限定されず、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの構造内部にビニル基を有する重合性シランカップリング剤は、単独で用いられてもよく、任意の重合性モノマーと2種以上混合して用いられてもよい。
【0030】
上記重合性モノマーとしては特に限定されず、単官能性モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、クミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等の極性基含有(メタ)アクリル系モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン等の芳香族ビニルモノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン含有モノマー;ビニルピリジン、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、イタコン酸、フマル酸、エチレン、プロピレン、ポリジメチルシロキサンマクロモノマー等が挙げられる。
【0031】
上記重合性モノマーの多官能性モノマーとしては特に限定されず、例えば、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、ジ又はトリアリル化合物、ジビニル化合物が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。なお、上記多官能性モノマーは、上記中空有機・無機ハイブリッド微粒子のガラス転移温度(Tg)を高める、耐熱性・耐溶剤性を改善する目的で添加される。
【0032】
上記ジ(メタ)アクリレートとしては特に限定されず、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0033】
上記トリ(メタ)アクリレートとしては特に限定されず、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
上記ジ又はトリアリル化合物としては特に限定されず、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリルフマレート、ジアリルサクシネート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0035】
上記ジビニル化合物としては特に限定されず、例えば、ジビニルベンゼン、ブタジエン等が挙げられる。
【0036】
上記非重合性化合物としては、上記重合性シランカップリング剤及び重合性モノマーの反応温度において液状であり、上記重合性シランカップリング剤と上記重合性モノマーの混合物(以下重合性成分とする)と混合でき、上記重合性成分と反応せず、かつ、加熱等により容易に蒸散させることができるものであれば特に限定されず、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ヘプタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソブチルケトン、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の有機溶剤等が挙げられる。
上記非重合性化合物は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0037】
上記非重合性化合物のなかでも、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ヘプタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン等の炭素数8〜20程度の高級アルカンや長鎖状の疎水性化合物は、極性媒体中で重合性液滴が合一することを効果的に抑制することができるため、これらの非重合性化合物とこれら以外の非重合性化合物とを適宜併用すると、ナノメートルオーダーの重合性液滴を安定して形成することができる。
【0038】
上記非重合性化合物の配合量としては特に限定されないが、上記重合性シランカップリング剤、重合性モノマーからなる重合性成分90重量部に対して、好ましい下限は10重量部、好ましい上限は1000重量部である。10重量部未満であると、得られる中空有機・無機ハイブリッド微粒子の空隙率が低くなり、充分な低屈折率を実現できないことがあり、1000重量部を超えると、非重合性化合物を除いたときに粒子形状が保てず、中空有機・無機ハイブリッド微粒子が得られなかったり、得られた中空有機・無機ハイブリッド微粒子の強度が極端に劣ったりすることがある。
【0039】
上記表面処理前の中空有機・無機ハイブリッド微粒子のその他の合成方法としては、構造内部にエポキシ基やイソシアネート基、ウレイド基、アミノ基、メルカプト基、ハロゲン基を有するシランカップリング剤を用いた界面重合等が挙げられる。
【0040】
上記構造内部にエポキシ基を有するシランカップリング剤としては特に限定されず、例えば、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0041】
上記構造内部にイソシアネート基を有するシランカップリング剤としては特に限定されず、例えば、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0042】
上記構造内部にウレイド基を有するシランカップリング剤としては特に限定されず、例えば、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0043】
上記構造内部にアミノ基を有するシランカップリング剤としては特に限定されず、例えば、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミンN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、特殊アミノシラン等が挙げられる。
【0044】
上記構造内部にメルカプト基を有するシランカップリング剤としては特に限定されず、例えば、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0045】
上記構造内部にハロゲン基を有するシランカップリング剤としては特に限定されず、例えば、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0046】
これらの界面重合可能なシランカップリング剤は、単独で用いられてもよく、任意の界面重合反応性物質であるエポキシプレポリマー、イソシアネート、アミン、ハロゲン化物、ポリメルカプタン、ポリクロライド等と2種以上混合して用いられてもよい。
上記シランカップリング剤を上記界面重合反応性物質と混合して用いられる場合、上記シランカップリング剤は、上記界面重合反応性物質の反応初期から添加されていてもよく、上記界面重合反応性物質の反応後半に添加されてもよい。上記シランカップリング剤が上記界面重合反応性物質の反応後半に添加された場合、得られる本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子を構成する樹脂は、上記シランカップリング剤で架橋された構造となる。
【0047】
上記エポキシプレポリマーは親油性を有し、アミンやポリカルボン酸、酸無水物、ポリチオール、フェノール樹脂と反応して樹脂を与える。
上記エポキシプレポリマーとしては特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型、レゾルシン型、ビスフェノールF型、テトラフェニルメタン型、ノボラック型、ポリアルコール型、ポリグリコール型、グリセリントリエーテル型、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、グリシジルアミン型、脂肪族型、脂環式型、アミノフェノール型、ヒダトイン型、イソシアヌレート型、ビフェノール型、ナフタレン型、又は、これらの水添化物、フッ素化物等が挙げられる。
【0048】
このようなエポキシプレポリマーのエポキシ当量としては特に限定されないが、好ましい上限は500である。エポキシ当量の上限が500のエポキシプレポリマーを用いることで、架橋度の高い耐熱性・耐溶剤性・強度に優れた樹脂を得ることができる。より好ましい上限は200である。
【0049】
エポキシ当量の上限が200のエポキシプレポリマーとしては特に限定されず、例えば、エポトートYD115、エポトートYD127、エポトートYD128(商品名、いずれも東都化成社製)、エピコート825、エピコート827、エピコート828(商品名、いずれもジャパンエポキシレジン社製)、EPICLON 840、EPICLON 850(商品名、いずれも大日本インキ化学社製)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;エポトートYDF−170、エポトートYDF175S(商品名、いずれも東都化成社製)、エピコート806、エピコート807(商品名、いずれもジャパンエポキシレジン社製)、EPICLON 830、EPICLON 835(商品名、いずれも大日本インキ化学社製)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂;エポトートYDPN―638、エポトートYDCN―701、エポトートYDCN―702、エポトートYDCN−703、エポトートYDCN―704、エポトートYDCN−500(商品名、いずれも東都化成社製)、エピコート152、エピコート154(商品名、いずれもジャパンエポキシレジン社製)、EPICLON N−655、EPICLON N−740、EPICLONN−770、EPICLON N−775、EPICLON N−865(商品名、いずれも大日本インキ化学社製)等のノボラック型エポキシ樹脂;エポトートYH−434、エポトートYH434−L(商品名、いずれも東都化成社製)、エピコート1031S、エピコート1032H60、エピコート604、エピコート630(商品名、いずれもジャパンエポキシレジン社製)、EPICLON 430(商品名、大日本インキ化学社製)、TETRAD−X、TETRAD−C(商品名、いずれも三菱ガス化学社製)等の特殊多官能タイプ;エピコートYX4000、エピコートYL6121H、エピコートYL6640、エピコートYL6677(商品名、いずれもジャパンエポキシレジン社製)等のビフェニル型エポキシ樹脂;エポトートYH−300、エポトートYH301、エポトートYH−315、エポトートYH−324、エポトートYH−325(商品名、いずれも東都化成社製)等の脂肪族ポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;エポトートYDC−1312、エポトートYSLV−80XY(商品名、いずれも東都化成社製)等の結晶性エポキシ樹脂;EPICLON HP−4032、EPICLON EXA−4700(商品名、いずれも大日本インキ化学社製)等のナフタレン型エポキシ樹脂;エピコート191P、エピコートYX310(商品名、いずれもジャパンエポキシレジン社製)、EPICLON HP−820(商品名、大日本インキ化学社製)等の特殊機能型エポキシ樹脂;EPICLON 725(商品名、大日本インキ化学社製)等の反応性希釈剤等が挙げられる。
【0050】
また、エポキシ当量が200を超え500以下のエポキシプレポリマーとしては特に限定されず、例えば、エポトートYD134、エポトートYD011(商品名、いずれも東都化成社製)、エピコート801、エピコート1001(商品名、いずれもジャパンエポキシレジン社製)、EPICLON860、EPICLON1050、EPICLON1055(商品名、いずれも大日本インキ化学社製)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;エポトートYDF−2001(商品名、東都化成社製)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂;EPICLON N−660、EPICLON N−665、EPICLON N−670、EPICLON N−673、EPICLON N−680、EPICLON N−695(商品名、いずれも大日本インキ化学社製)等のノボラック型エポキシ樹脂;エピコート157S70(商品名、ジャパンエポキシレジン社製)、EPICLON5500(商品名、大日本インキ化学社製)等の特殊多官能タイプ;エポトートYDB−360、エポトートYDB−400、エポトートYDB405(商品名、いずれも東都化成社製)、EPICLON152、EPICLON153(商品名、いずれも大日本インキ化学社製)等の臭素化エポキシ樹脂;エポトートYD−171(商品名、東都化成社製)、エピコート871(商品名、ジャパンエポキシレジン社製)、EPICLONTSR−960、EPICLON TSR−601(商品名、いずれも大日本インキ化学社製)等の可とう性エポキシ樹脂;エポトートST−3000(商品名、東都化成社製)、エピコートYX8000、エピコートYX8034(商品名、いずれもジャパンエポキシレジン社製)等の水添型エポキシ樹脂;EPICLON HP−7200(商品名、大日本インキ化学社製)等のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらのエポキシプレポリマーは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0051】
なお、エポキシ当量が500を超えるエポキシプレポリマーとしては、例えば、エポトートYD−012、エポトートYD−013、エポトートYD―014、エポトートYD−017、エポトートYD−019(商品名、いずれも東都化成社製)、エピコート1002、エピコート1003、エピコート1055、エピコート1004、エピコート1007、エピコート1009、エピコート1010(商品名、いずれもジャパンエポキシレジン社製)、EPICLON3050、EPICLON4050、EPICLON AM−020−P、EPICLON AM−030−P、EPICLON AM−040−P、EPICLON 7050、EPICLON HM−091、EPICLON HM−101(商品名、いずれも大日本インキ化学社製)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;エポトートYDF−2004(商品名、東都化成社製)、エピコート4004P、エピコート4007P、エピコート4010P、エピコート4110、エピコート4210(商品名、いずれもジャパンエポキシレジン社製)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂;エポトートYDB−405(商品名、東都化成社製)、EPICLON1123P−75M(商品名、大日本インキ化学社製)等の臭素化エポキシ樹脂;エポトートYD−172(商品名、東都化成社製)、エピコート872(商品名、ジャパンエポキシレジン社製)、EPICLON1600−75X(商品名、大日本インキ化学社製)等の可とう性エポキシ樹脂;エポトートST−4000D(商品名、東都化成社製)等の水添型エポキシ樹脂;EPICLON5800(商品名、大日本インキ化学社製)等の多官能型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0052】
上記イソシアネートとしては特に限定されず、例えば、ビュレット型、アダクト型、イソシアヌレート型等が挙げられる。
【0053】
上記アミンとしては特に限定されず、例えば、エチレンジアミン及びその付加物、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン及びその変性品、N−アミノエチルピペラジン、ビス−アミノプロピルピペラジン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス−ヘキサメチレントリアミン、ジシアンジアミド、ジアセトアクリルアミド、各種変性脂肪族ポリアミン、ポリオキシプロピレンジアミン等の脂肪族アミン;3,3’−ジメチル4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3−アミノ−1−シクロヘキシルアミノプロパン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−ジメチルシクロヘキシルアミン等の脂環族アミン及びその変性物;4,4’−ジアミノジフェニルメタン(メチレンジアニリン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、m−フェニレンジアミン、2,4’−トルイレンジアミン、m−トルイレンジアミン、o−トルイレンジアミン、メタキシリレンジアミン、キシリレンジアミン等の芳香族アミン及びその変性物;その他特殊アミン変性物、アミドアミン、アミノポリアミド樹脂等のポリアミドアミン、ジメチルアミノメチルフェノール、2,4,6−トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリ(ジメチルアミノメチル)フェノールのトリ−2エチルヘキサン塩等の3級アミン類及びその錯化合物、ケチミン、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−イソプロピルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1)’]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1)’]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1)’]−エチル−s−トリアジン、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロリド、1,3−ジベンジル−2−メチルイミダゾリウムクロリド、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4、5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−4,5−ジ(シアノエトキシメチル)イミダゾール、2−メチルイミダゾールとトリアジン複合物、2−フェニルイミダゾールとトリアジン複合物等のイミダゾール類;イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジド類、エポキシ樹脂のアミノ付加物等のアミノ基含有プレポリマー等が挙げられる。
【0054】
上記ハロゲン化物としては特に限定されず、例えば、アジポイルジクロライド、フタロイルジクロライド、テレフタロイルジクロライド、1,4−シクロヘキサンジカルボニルクロライド等の二塩基酸ハロゲン化物が挙げられる。
【0055】
上記界面重合による中空有機・無機ハイブリッド微粒子の製造方法においては、非重合性化合物を配合してもよい。非重合性化合物は、極性媒体中で安定した重合性液滴を形成したり、シランカップリング剤の反応速度を制御したりする役割を有する。また、非重合性化合物を配合することにより、中空有機・無機ハイブリッド微粒子中に上記非重合性化合物(及び未反応のモノマー成分)が内包されることになり、得られた微粒子から上記非重合性化合物を除去することで、高空隙率の中空有機・無機ハイブリッド微粒子を製造することができる。
【0056】
上記非重合性化合物としては、上記界面重合性成分の反応温度において液状であり、かつ、加熱等により容易に蒸散させることができるものであれば特に限定されず、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ヘプタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソブチルケトン、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の有機溶剤等が挙げられる。
上記非重合性化合物は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0057】
上記非重合性化合物のなかでも、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ヘプタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン等の炭素数8〜20程度の高級アルカンや長鎖状の疎水性化合物は、極性媒体中で重合性液滴が合一することを効果的に抑制することができるため、これらの非重合性化合物とこれら以外の非重合性化合物とを適宜併用すると、ナノメートルオーダーの重合性液滴を安定して形成することができる。
【0058】
上記非重合性化合物の配合量としては特に限定されないが、上記界面重合性成分90重量部に対して好ましい下限は10重量部、好ましい上限は1000重量部である。10重量部未満であると、得られる中空有機・無機ハイブリッド微粒子の空隙率が低くなり、充分な低屈折率を実現できないことがあり、1000重量部を超えると、非重合性化合物を除いたときに粒子形状が保てず、中空有機・無機ハイブリッド微粒子が得られなかったり、得られた中空有機・無機ハイブリッド微粒子の強度が極端に劣ったりすることがある。
【0059】
上述した本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子を適当なバインダーに分散させることで、反射防止フィルム等を製造するための反射防止性樹脂組成物を製造することができる。このような本発明に係る微粒子を含有する反射防止性樹脂組成物もまた、本発明の1つである。
【0060】
本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子を分散させる上記バインダーとしては、透明かつ成膜可能な材料であれば特に限定されず、例えば、樹脂等の有機系材料、無機系材料、重合可能なモノマー溶液等が挙げられる。
上記有機系材料としては特に限定されず、例えば、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブタノイルセルロース、アセチルプロピオニルセルロースアセテート、ニトロセルロース等のセルロース誘導体;ポリアミド、ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン1,2−ジフェノキシエタン−4,4−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレート、又は、これらの各種含フッ素体等の比較的低屈折率の透明樹脂等が挙げられる。
なお、上記バインダーとして透明樹脂を用いる場合には、ガラス転移温度が本発明の中空樹脂微粒子のガラス転移温度よりも低いものを用いることが好ましい。これにより、充分な膜強度を得ることができる。
【0061】
上記無機系材料としては特に限定されず、例えば、各種元素のアルコキシド、有機酸の塩、配位性化合物と結合した配位化合物が挙げられ、具体的には、例えば、チタンテトラエトキシド、チタンテトラ−i−プロポキシド、チタンテトラ−n−プロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラ−sec−ブトキシド、チタンテトラ−tert−ブトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ−i−プロポキシド、アルミニウムトリブトキシド、アンチモントリエトキシド、アンチモントリブトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラ−i−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−sec−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−tert−ブトキシド等の金属アルコレート化合物;ジ−イソプロポキシチタニウムビスアセチルアセトネート、ジブトキシチタニウムビスアセチルアセトネート、ジエトキシチタニウムビスアセチルアセトネート、ビスアセチルアセトンジルコニウム、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムジ−n−ブトキシドモノエチルアセトアセテート、アルミニウムジ−i−プロポキシドモノメチルアセトアセテート、トリ−n−ブトキシドジルコニウムモノエチルアセトアセテート等のキレート化合物;炭酸ジルコニールアンモニウム又はジルコニウムを主成分とする活性無機ポリマー等が挙げられる。
【0062】
上記重合可能なモノマー溶液における重合可能なモノマーとしては、透明なものであれば特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、クミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等の極性基含有(メタ)アクリル系モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン等の芳香族ビニルモノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン含有モノマー;ビニルピリジン、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、イタコン酸、フマル酸、エチレン、プロピレン等が挙げられる。
これらのモノマーは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0063】
上記重合可能なモノマー溶液は、膜強度を向上させる目的で多官能モノマーを含有してもよい。
上記多官能モノマーとしては特に限定されず、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のヘキサ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリルフマレート、ジアリルサクシネート、トリアリルイソシアヌレート等のジ又はトリアリル化合物;ジビニルベンゼン、ブタジエン等のジビニル化合物等が挙げられる。
これらの多官能モノマーは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0064】
本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子と上記バインダーとの配合比率としては特に限定されないが、本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子の配合量の好ましい下限が5体積%、好ましい上限が95体積%である。5体積%未満であると、例えば、本発明の反射防止性樹脂組成物を用いてなる反射防止積層体の屈折率を充分に低くできないことがあり、95体積%を超えると、上記反射防止積層体の機械強度が劣ることがある。より好ましい下限は30体積%、より好ましい上限は90体積%であり、更に好ましい下限は50体積%、更に好ましい上限は80体積%である。
【0065】
本発明の反射防止性樹脂組成物は、上記バインダーとして硬化型のものを用いる場合には、バインダー中に本発明に係る微粒子が懸濁したエマルジョンであってもよく、また、それ以外の場合には適宜の揮発性溶媒に希釈したものであってもよい。
上記揮発性溶媒としては特に限定されないが、組成物の安定性、濡れ性、揮発性等から、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチル等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のグリコールエーテル類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等が好適に用いられる。これらの揮発性溶媒は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0066】
また、上述した本発明の反射防止性樹脂組成物は、反射防止フィルムを製造するための反射防止フィルム用コーティング剤として用いることができる。このような本発明の反射防止性樹脂組成物からなる反射防止フィルム用コーティング剤もまた、本発明の1つである。
更に、本発明の反射防止性樹脂組成物又は反射防止フィルム用コーティング剤を用いてなる反射防止積層体もまた、本発明の1つである。
【0067】
本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子を用いた反射防止積層体としては、光透過性基材上に、屈折率が1.45以下の低屈折率層を有する反射防止積層体であって、前記低屈折率層は、電離放射線硬化型樹脂組成物と、本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子とを含有する反射防止積層体が挙げられる。このような反射防止積層体もまた、本発明の1つである。
【0068】
上記電離放射線硬化型樹脂組成物は、上記電離放射線硬化性基を有する電離放射線硬化型樹脂を含有する樹脂組成物である。
上記電離放射線硬化性基は、電離放射線の照射により重合反応や又は架橋反応等を進行させて塗膜を硬化させることができる官能基を意味し、例えば、光ラジカル重合、光カチオン重合、光アニオン重合のような重合反応や、光二量化を経て進行する付加重合又は縮重合等の反応形式により反応が進行するものが挙げられる。特に、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合は、紫外線や電子線等の電離放射線の照射により、直接又は開始剤の作用を受けて間接的に、光ラジカル重合反応を生じさせることができるため、光硬化工程を含む取り扱いが比較的容易である。これらの中でも(メタ)アクリロイル基は生産性に優れ、また、硬化後の塗膜の機械強度のコントロールが容易であるため好ましい。
【0069】
上記電離放射線硬化型樹脂組成物は、重合開始剤を含有していてもよい。
上記重合開始剤は、本発明においては必ずしも必要ではないが、上記電離放射線硬化型樹脂組成物、本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子、及び、任意成分である他のバインダー成分の電離放射線硬化性基が、電離放射線照射によって直接重合反応を生じにくい場合には、バインダー成分及び中空有機・無機ハイブリッド微粒子の反応形式に合わせて、適切な開始剤を用いるのが好ましい。
【0070】
上記電離放射線硬化型樹脂の電離放射線硬化性基が(メタ)アクリロイル基である場合には、光ラジカル重合開始剤を用いる。上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、チウラム化合物類、フルオロアミン化合物等が用いられる。より具体的には、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケトン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン等を例示できる。これらのうちでも、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、及び、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンは、少量でも電離放射線の照射による重合反応を開始し促進するので、本発明において好ましく用いられる。これらは、いずれか一方を単独で、又は、両方を組み合わせて用いることができる。これらは市販のものを用いてもよく、例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンは、イルガキュア184(Irgacure 184)の商品名でチバスペシャリティーケミカルズ(株)から入手できる。
【0071】
上記光ラジカル重合開始剤を用いる場合には、電離放射線硬化型樹脂を主体とするバインダー樹脂の合計100重量部に対して、上記光ラジカル重合開始剤を通常は3〜15重量部の割合で配合する。
【0072】
上記光ラジカル重合開始剤は、本発明の中空有機・無機ハイブリッド微粒子表面に存在するシラノール基、表面処理に用いたシランカップリング剤、及びその縮合体の未反応部等の熱硬化反応を促進するために配合される。
【0073】
本発明の反射防止積層体を構成する光透過性基材(以下、単に基材ともいう)は、板状であってもフィルム状であっても良い。好ましい材質としては、例えば、トリアセテートセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ジアセチルセルロース、アセテートブチレートセルロース、ポリエーテルサルホン、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、トリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、(メタ)アクリロニトリル、環状ポリオレフィン等の各種樹脂で形成したフィルム等が挙げられる。なお、上記基材の厚さは、通常30〜200μm程度であり、好ましくは40〜200μmである。
【0074】
本発明の反射防止積層体は、特に、液晶表示装置(LCD)や陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)等の画像表示装置の表示面やプロジェクションスクリーン等の画像形成媒体の表面を被覆する多層型反射防止膜の少なくとも一層、特に低屈折率層を形成するのに好適に用いられる。
【0075】
本発明の反射防止積層体を製造する方法としては特に限定されず、例えば、有機溶剤、電離放射線硬化型樹脂組成物、及び、中空有機・無機ハイブリッド微粒子を混合させて低屈折率層形成用組成物を調製し、得られた低屈折率層形成用組成物を基材に塗布乾燥することにより、低屈折率層を形成する方法等が挙げられる。
なお、上記方法において、バインダー成分として液状の電離放射線硬化型樹脂組成物を比較的多量に用いる場合には、電離放射線硬化型樹脂組成物中のモノマー及び/又はオリゴマーが、液状媒体としても機能し得るので、有機溶剤を用いなくてもよい場合がある。従って、有機溶剤は必ずしも必要ではない。しかしながら、固形成分を溶解分散し、濃度を調整して、塗工適性に優れた低屈折率層形成用組成物を調製するために有機溶剤を使用する場合が多い。
【0076】
上記有機溶剤としては、特に限定されず、例えば、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ハロゲン化炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、及び、これらの混合物を用いることができる。
【0077】
上記有機溶剤としては、ケトン系溶剤を用いるのが好ましい。ケトン系溶剤を用いて低屈折率層形成用組成物を調製すると、基材表面に容易に薄く均一に塗布することができ、かつ、塗工後において溶剤の蒸発速度が適度で乾燥むらを起こし難いので、均一な薄さの大面積塗膜を容易に得ることができる。
【0078】
上記有機溶剤の添加量は、各成分を均一に溶解、分散することができ、調製後放置しても中空有機・無機ハイブリッド微粒子が凝集せず、かつ、塗工時に希薄すぎない濃度となるように適宜調節する。この条件が満たされる範囲内で溶剤の添加量を少なくして高濃度の低屈折率層形成用組成物を調製することが好ましい。これにより、容量をとらない状態で保存でき、塗工作業時に適度な濃度に希釈して使用することができる。固形分と溶剤の合計量を100重量部とした時に、全固形分0.5〜50重量部に対して、有機溶剤を50〜95.5重量部添加することが好ましく、更に好ましくは、全固形分10〜30重量部に対して、溶剤を70〜90重量部の割合で用いることにより、特に分散安定性に優れ、長期保存に適した低屈折率層形成用組成物が得られる。
【0079】
上記低屈折率層形成用組成物を塗工する方法としては特に限定はされず、例えば、ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアロールコーティング法、エアドクターコーティング法、プレードコーティング法、ワイヤードクターコーティング法、ナイフコーティング法、リバースコーティング法、トランスファロールコーティング法、マイクログラビアコーティング法、キスコーティング法、キャストコーティング法、スロットオリフィスコーティング法、カレンダーコーティング法、ダイコーティング法等が挙げられる。
【0080】
本発明の反射防止積層体を用いてなる反射防止フィルムもまた本発明の1つである。
本発明の反射防止フィルムは、光透過性を有する基材フィルムの一面側又は両面に、直接又は他の層を介して、光透過性を有し、かつ、互いに屈折率が異なる光透過層を一層以上積層した構造を有し、その光透過層のうちの少なくとも1つを本発明による反射防止積層体で形成したものである。基材フィルム及び光透過層は、反射防止フィルムの材料として使用できる程度の光透過性を有する必要があり、できるだけ透明に近いものが好ましい。
【0081】
本発明の反射防止フィルムには、耐擦傷性、強度等の性能を与える目的でハードコート層を設けてもよい。また、本発明の反射防止フィルムに防眩性能を与える目的で、他の層として、防眩層を設けてもよい。
【0082】
本発明の反射防止フィルムは、表面が平滑であることが好ましい。なお、本明細書において表面が平滑とは、JIS B 0601に規定される方法により算出した表面荒れRzが0.2μm以下であることを意味する。
表面が平滑であることにより本発明の反射防止フィルムは、表面での光の乱反射によって全体が白っぽくなることがなく、また、表面に指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れが付着しにくく、一度付着した汚れも容易に除去することができる。
【0083】
本発明の反射防止フィルムの厚さとしては特に限定されないが、好ましい下限は50nm、好ましい上限は200nmである。50nm未満であると、耐擦傷性が不充分となることがあり、200nmを超えると、フィルムが割れやすくなることがある。
また、本発明の反射防止フィルムが上記基材層を有する場合、基材層の厚さとしては特に限定されないが、好ましい下限は3μm、好ましい上限は7μmである。3μm未満であると、本発明の反射防止フィルムの強度が劣ることがあり、7μmを超えると、本発明の反射防止フィルムの透明性が劣り、内部の視覚情報が見えにくくなることがある。
【発明の効果】
【0084】
本発明によれば、低屈折率の反射防止層を有する反射防止積層体の材料として用いた場合に、バインダー成分への分散性に優れ、光の乱反射を防止するとともに、機械的強度及びアルカリ耐性が高い反射防止層を得ることができる中空有機・無機ハイブリッド微粒子、反射防止性樹脂組成物、反射防止フィルム用コーティング剤、反射防止積層体及び反射防止フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0085】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0086】
(実施例1)
(1)中空有機・無機ハイブリッド微粒子Aの調製
エチレングリコールジメタクリレート25重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート50重量部、ビニルトリメトキシシラン25重量部、非重合性有機溶剤としてトルエン65重量部とヘキサデカン5重量部、及び、アゾビスイソブチロニトリル1重量部を混合・撹拌した混合溶液の全量を、水溶性乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2重量%、分散助剤としてセチルアルコール1重量%を含有するイオン交換水1530重量部に添加し、超音波ホモジナイザーにて60分間強制乳化して、平均粒子径78nmの重合性液滴が分散した分散液を調製した。
撹拌機、ジャケット、還流冷却器及び温度計を備えた20L容の重合器を用い、重合器内を減圧して容器内の脱酸素を行った後、窒素置換して内部を窒素雰囲気とした後、得られた分散液を投入し、重合器を80℃まで昇温して重合を開始した。4時間熟成した後、重合器を室温まで冷却してスラリーを得た。
得られたスラリーを分画分子量1万のセルロース膜を用いて透析し、過剰な界面活性剤や無機塩類を除去し、更に濾過にて凝集粒子及び不溶分を除去し、中空微粒子を作製した。
得られた中空微粒子を固形分にして100重量部含有するメチルイソブチルケトン分散液500重量部に、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン5重量部を添加し、60℃で4時間加熱することにより、表面処理された中空有機・無機ハイブリッド微粒子Aの約20重量%メチルイソブチルケトン分散液を得た。
得られた中空有機・無機ハイブリッド微粒子Aを電子顕微鏡(日本電子社製、「JEM−1200EXII」)を用いて観察したところ、その形状はほぼ真球状であり、内部に単一空孔を有する構造あった。
【0087】
(2)反射防止フィルム用コーティング剤の調製及び反射防止積層体の作製
バインダー成分として電離放射線硬化型樹脂組成物のジペンタエリスリトールヘキサアクリレート10重量部、希釈溶媒としてメチルイソブチルケトン139重量部、光ラジカル開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製イルガキュア814)1重量部、及び、中空有機・無機ハイブリッド微粒子Aの約20重量%メチルイソブチルケトン分散液50重量部を撹拌・混合して反射防止フィルム用コーティング剤を調製した。
得られた反射防止フィルム用コーティング剤をトリアセチルセルロースフィルム上に、重合硬化物の反射率が550nmで最低値を取るようにバーコーターを用いて塗布した後、120Wの高圧水銀ランプを用いてフィルム上20cmの距離から紫外線を180秒照射し、反射防止積層体を作製した。
【0088】
(実施例2)
(1)中空有機・無機ハイブリッド微粒子Bの調製
エポキシプレポリマー成分としてエピコート828(ジャパンエポキシレジン社製)70重量部と非重合性有機溶剤としてトルエン90重量部及びヘキサデカン10重量部を混合・撹拌した混合溶液の全量を、アミン成分としてエチレンジアミン30重量部、水溶性乳化剤としてラウリルトリメチルアンモニウムクロライド2重量%を含有するイオン交換水800重量部に添加し、超音波ホモジナイザーにて60分間強制乳化して、平均粒子径82nmの重合性液滴が分散した分散液を調製した。
撹拌機、ジャケット、還流冷却器及び温度計を備えた20L容の重合器を用い、重合器内を減圧して容器内の脱酸素を行った後、窒素置換して内部を窒素雰囲気とした後、得られた分散液を投入し、重合器を80℃まで昇温して重合を開始した。4時間重合し、無機架橋のためのアミン成分としてN−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシランを30重量部加え更に4時間重合した。その後重合器を室温まで冷却した。
得られたスラリーを分画分子量1万のセルロース膜を用いて透析し、過剰な界面活性剤や無機塩類を除去し、更に濾過にて凝集粒子及び不溶分を除去することで中空微粒子を作製した。
次いで、得られた中空微粒子を実施例1と同様の方法で表面処理することにより、中空有機・無機ハイブリッド微粒子Bの約20重量%メチルイソブチルケトン分散液を得た。
得られた有機・無機ハイブリッド微粒子を電子顕微鏡(日本電子社製、「JEM−1200EXII」)を用いて観察したところ、その形状はほぼ真球状であり、内部に単一空孔を有する構造あった。
【0089】
(2)反射防止フィルム用コーティング剤の調製及び反射防止積層体の作成
得られた中空有機・無機ハイブリッド微粒子Bを用い、実施例1と同様の方法で反射防止フィルム用コーティング剤の調製及び反射防止積層体の作製を行った。
【0090】
(実施例3)
(1)中空有機・無機ハイブリッド微粒子Cの調製
エポキシプレポリマー成分としてエピコート828(ジャパンエポキシレジン社製)40重量部とTERAD−C(ジャパンエポキシレジン社製)40重量部、非重合性有機溶剤としてトルエン115重量部及びヘキサデカン15重量部を混合・撹拌した混合溶液の全量を、アミン成分としてN−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン40重量部、水溶性乳化剤としてラウリルトリメチルアンモニウムクロライド2重量%を含有するイオン交換水800重量部に添加し、超音波ホモジナイザーにて60分間強制乳化して、平均粒子径58nmの重合性液滴が分散した分散液を調製した。
撹拌機、ジャケット、還流冷却器及び温度計を備えた20L容の重合器を用い、重合器内を減圧して容器内の脱酸素を行った後、窒素置換して内部を窒素雰囲気とした後、得られた分散液を投入し、重合器を80℃まで昇温して重合を開始した。10時間重合し、その後重合器を室温まで冷却した。
得られたスラリーを分画分子量1万のセルロース膜を用いて透析し、過剰な界面活性剤や無機塩類を除去し、更に濾過にて凝集粒子及び不溶分を除去し中空微粒子を作製した。
得られた中空微粒子を固形分にして100重量部含有するメチルイソブチルケトン分散液500重量部に、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン30重量部を添加し、60℃で4時間加熱することにより、中空有機・無機ハイブリッド微粒子Cの約20重量%メチルイソブチルケトン分散液を得た。
得られた中空有機・無機ハイブリッド微粒子Cを電子顕微鏡(日本電子社製、「JEM−1200EXII」)を用いて観察したところ、その形状はほぼ真球状であり、内部に単一空孔を有する構造あった。
【0091】
(2)反射防止フィルム用コーティング剤の調製及び反射防止積層体の作成
得られた中空有機・無機ハイブリッド微粒子Cを用いて、実施例1と同様の方法で反射防止フィルム用コーティング剤の調製及び反射防止積層体の作製を行った。
【0092】
(比較例1)
中空有機・無機ハイブリッド微粒子Aに代えて、低屈折微粒子として、平均粒子径60nm、屈折率1.36の多孔性シリカ粒子の表面を有機珪素化合物で被覆したものを用いた以外は実施例1と同様にして反射防止フィルム用コーティング剤、反射防止積層体を作製した。
【0093】
(比較例2)
(1)中空有機・無機ハイブリッド微粒子Dの調製
エチレングリコールジメタクリレート25重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート50重量部、ビニルトリメトキシシラン25重量部、非重合性有機溶剤としてトルエン115重量部及びヘキサデカン15重量部、及び、アゾビスイソブチロニトリル1重量部を混合・撹拌した混合溶液の全量を、水溶性乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2重量%及び分散助剤としてセチルアルコール1重量%を含有するイオン交換水1530重量部に添加し、超音波ホモジナイザーにて60分間強制乳化して、平均粒子径75nmの重合性液滴が分散した分散液を調製した。
撹拌機、ジャケット、還流冷却器及び温度計を備えた20L容の重合器を用い、重合器内を減圧して容器内の脱酸素を行った後、窒素置換して内部を窒素雰囲気とした後、得られた分散液を投入し、重合器を80℃まで昇温して重合を開始した。4時間熟成した後、重合器を室温まで冷却してスラリーを得た。
得られたスラリーを分画分子量1万のセルロース膜を用いて透析し、過剰な界面活性剤や無機塩類を除去し、更に濾過にて凝集粒子及び不溶分を除去し、中空有機・無機ハイブリッド微粒子Dを作製した。
得られた中空有機・無機ハイブリッド微粒子Dを電子顕微鏡(日本電子社製、「JEM−1200EXII」)を用いて観察したところ、その形状は不定形であるが内部に単一空孔を有する構造あった。
【0094】
(2)反射防止フィルム用コーティング剤の調製及び反射防止積層体の作成
バインダー成分として電離放射線硬化型樹脂組成物のジペンタエリスリトールヘキサアクリレート10重量部、希釈溶媒としてメチルイソブチルケトン139重量部、光ラジカル開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製イルガキュア814)1重量部、及び、中空有機・無機ハイブリッド微粒子Dの約20重量%メチルイソブチルケトン分散液50重量部を撹拌・混合して反射防止フィルム用コーティング剤を調製した。
得られた反射防止フィルム用コーティング剤をトリアセチルセルロースフィルム上に、重合硬化物の反射率が550nmで最低値を取るようにバーコーターを用いて塗布した後、120Wの高圧水銀ランプを用いてフィルム上20cmの距離から紫外線を180秒照射し、反射防止積層体を作製した。
【0095】
(評価)
実施例及び比較例で用いた微粒子及び反射防止積層体について、以下の方法により評価を行った。結果を表1に示した。
【0096】
(1)平均粒子径の測定
動的光散乱式粒度分布計(Particle Sizing Systems社製、「NICOMP model 380 ZLS−S」)を用いて、各実施例及び比較例で用いた微粒子の体積平均粒子径を測定した。
【0097】
(2)空隙率の測定
電子顕微鏡(日本電子社製、「JEM−1200EXII」)を用いて観察し、粒子の写真映像より任意に100個抽出し、粒子外径の長径と短径、粒子空孔部の長径と短径を計測した。下記式(1)を用いて各々の粒子の空隙率を計算し、粒子100個の空隙率の平均値をその粒子の空隙率とした。
空隙率(%)=((空孔部長径+空孔部短径)/(外径の長径+外径の短径))×100 (1)
【0098】
(3)反射防止積層体の反射率の測定、反射防止層の屈折率、微粒子の屈折率
基材フィルム面をサンドペーパーでこすり、艶消しの黒色塗料を塗布した後、分光光度計(島津製作所社製、「UV−3101PC」)を用いて、波長550nmの光の入射角5°での片面の反射率を測定した。
この反射防止フィルムの反射率の値から反射防止層の屈折率を算出した。
また、別途測定した微粒子を配合せず、バインダーのみからなる反射防止層の屈折率を算出後、反射防止層に添加した微粒子の割合から、微粒子の屈折率を算出した。
【0099】
(4)反射防止積層体の耐擦傷性評価
反射防止積層体表面上を、スチールウール(日本スチールウール社製、ボンスター#0000)を用い、荷重500gで10往復した時の傷の有無を目視により確認した。評価基準は以下の通りとした。
【0100】
○:全く傷が無いもの、もしくは細かい傷が5本以下認められるもの
△:傷は著しくつくが、剥離は認められないもの
×:剥離するもの
【0101】
(5)反射防止積層体の耐アルカリ性の評価
反射防止積層体表面上を、市販のアルカリ洗剤を含浸させたセルロース製不繊布で100g/cmの加重をかけ100往復させた後のフィルム外観を目視にて観察し、下記の基準で判定した。
○:色目変化がないもの
△:若干の色目変化があるもの
×:色目変化があり、フィルム全体が白化しているもの
【0102】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明によれば、低屈折率の反射防止層を有する反射防止積層体の材料として用いた場合に、バインダー成分への分散性に優れ、光の乱反射を防止するとともに、機械的強度及びアルカリ耐性が高い反射防止層を得ることができる中空有機・無機ハイブリッド微粒子、反射防止性樹脂組成物、反射防止フィルム用コーティング剤、反射防止積層体及び反射防止フィルムを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機骨格及び無機骨格を有し、単孔構造の中空有機・無機ハイブリッド微粒子であって、
平均粒子径が10〜100nm、屈折率が1.40以下であり、かつ、シランカップリング剤で表面処理されている
ことを特徴とする中空有機・無機ハイブリッド微粒子。
【請求項2】
空隙率が30%以上であることを特徴とする請求項1記載の中空有機・無機ハイブリッド微粒子。
【請求項3】
シランカップリング剤がアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有することを特徴とする請求項1又は2記載の中空有機・無機ハイブリッド微粒子。
【請求項4】
表面処理前の中空有機・無機ハイブリッド微粒子100重量部に対して、0.5〜50重量部のシランカップリング剤で表面処理されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の中空有機・無機ハイブリッド微粒子。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の中空有機・無機ハイブリッド微粒子を含有することを特徴とする反射防止性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5記載の反射防止性樹脂組成物からなることを特徴とする反射防止フィルム用コーティング剤。
【請求項7】
請求項5記載の反射防止性樹脂組成物、又は、請求項6記載の反射防止フィルム用コーティング剤を用いてなることを特徴とする反射防止積層体。
【請求項8】
光透過性基材上に、屈折率が1.45以下の低屈折率層を有する反射防止積層体であって、
前記低屈折率層は、電離放射線硬化型樹脂組成物と、請求項1、2、3又は4記載の中空有機・無機ハイブリッド微粒子とを含有する
ことを特徴とする反射防止積層体。
【請求項9】
請求項7又は8記載の反射防止積層体を用いてなることを特徴とする反射防止フィルム。

【公開番号】特開2009−242475(P2009−242475A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88221(P2008−88221)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】