説明

中空杭内不要物の除去容器

【課題】中空杭の中空空間内に存在する不要物の除去と,中空杭の中空空間内壁の洗浄とを同時に行うことができる,中空杭の中空空間内不要物の除去容器を提供する。
【解決手段】本発明の除去容器10は,内部に不要物の収容空間12が形成されたケーシング11の底部に,前記収容空間12内に不要物を導入するための開口13を形成し,この開口13を前記ケーシング11の内部側より蓋板14で覆うと共に,この蓋板14の一端を揺動可能に前記ケーシング11にヒンジ15で係止した構造を備える。そして,前記ケーシング11の上端に,接合具19を取り付けると共に,ケーシング11の外周に噴射孔20を設け,前記接合具19に連結されるスクリューロッドを介して導入される洗浄水を前記噴射孔20に供給する給水路を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,中空杭内不要物の除去容器に関し,より詳細には,中空の既製杭を使用した埋込み杭工法において,中空杭である基礎杭の中空空間に存在するスライムやセメントミルク等の不要物を除去するための除去容器に関する。
【背景技術】
【0002】
家屋,集合住宅,その他の構造物の基礎工法において,支持層の深さにまで達する基礎杭を設け,この基礎杭の杭頭上に構造物の基礎を形成する杭基礎工法が,例えば軟弱地盤,液状化地盤等に構造物を構築する際に広く用いられている。
【0003】
このような杭基礎における基礎杭の施工方法の一例として,中空の既製杭を使用した埋込み杭工法では,アースオーガ等の掘削機で形成された掘削孔内に,根固め液,周辺固定液としてセメントミルクを注入した後に,鋼管やコンクリート製の中空杭を建て込み,又は掘削孔内に中空杭を建て込んだ後,杭の中空孔を介してセメントミルクを根固め液として注入することにより,支持層に対する根固め,拡大球根の造成,周辺地盤と中空杭との一体化が行われている。
【0004】
そして,このようにして製造された基礎杭上には,前述したように構造物の基礎部分が形成されると共に,この基礎部分が杭頭部に接合されている。
【0005】
このような杭基礎の構造において,基礎杭の頭部とその上に形成される構造物の基礎部分とは,前述したように一般に接合されていることから,例えば地震等による揺れが生じたときに,基礎杭の杭頭及び杭全体が,当該基礎杭が埋設された地中地盤と上部構造物を支える基礎部分と一体の動きをするため,上部構造物から伝達される水平力や回転力によって杭頭付近に大きな曲げモーメントや剪断力等が集中する。
【0006】
特に,軟弱地盤や液状化地盤では,地震等が生じると地盤変位がより大きなものとなるために杭頭部付近に発生する剪断力や曲げモーメントはさらに大きなものとなる。
【0007】
このように,杭基礎の杭頭部の強化は耐震性に優れた構造物を構築する上で重要な要素であるが,中空の既製杭を使用した前述の埋込み杭工法等にあっては,中空杭の中空空間内にセメントミルクを注入すると,掘削孔内に残ったスライム等が比重差で浮き上がり,杭頭付近では,スライムやスライムが混在したセメントミルクが存在するものとなり,このようなスライムやスライムが混在したセメントミルクは,硬化しても強度が低く,杭の強化に貢献するものとはなっていない。
【0008】
そこで,本発明の発明者等は,このようなスライムやスライムが混在したセメントミルク等の杭頭部の強化に貢献しない「不要物」を,未だ液状またはゲル状を呈しているときに,これらを杭頭部から取り出して除去すると共に,ここに杭頭部の強化に貢献し得る充填・硬化材を充填することで,基礎杭の杭頭部を強化する方法を提案している(特許文献1参照)。
【0009】
そして,上記の特許文献1において,前述した不要物を中空杭の中空空間内より除去するための除去容器100(図10参照)や,この除去容器100によって不要物が除去された後の中空空間内を洗浄する洗浄装置120(図11参照)についても提案している。
【0010】
この発明の先行技術文献情報としては次のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−223337号公報公報(請求項1,5,図2,図14,図17〜23)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1で提案している前述の除去容器100は,図10に示すように円筒状の除去容器本体111の底部に形成された開口113を,除去容器本体111の内部側より被覆する蓋板114を備え,この蓋板114の一端をヒンジ115により揺動可能に取り付けた構成であるために,これを杭頭部より中空杭の中空空間内に挿入して不要物中に沈下させると,除去容器本体111の底部に形成された開口113を介して除去容器本体111内に流入しようとする不要物の流入圧力によって前記開口113を被覆する蓋板114が押し上げられて除去容器本体111内の収容空間112内に不要物が流入する。
【0013】
一方,前記除去容器100を基礎杭の杭頭部より抜き取るように持ち上げると,前述した蓋板114は自重により,又は開口113を介して流出しようとする不要物の重量によって開口113を閉じ,その結果,除去容器本体111内に回収された不要物を除去容器100と共に基礎杭の中空空間より取り出して回収することができ,これにより不要物の除去回収を比較的容易に行うことができるものとなっている。
【0014】
また,前述した洗浄装置120は,図11に示すように,天板122及び底板123を複数の支持板125により所定の間隔を介して上下に連結し,前記支持板125によって画定される複数の噴射室127を形成すると共に,一端をスクリューロッド内の中空部に連通し,他端を前記噴射室127に臨ませてなる洗浄水の導入路128を備えるものであり,洗浄水の導入路128が形成されているジョイントを,スクリューロッドの先端に接続した状態で中空杭の中空空間内に挿入し,スクリューロッドを介して洗浄水を導入しつつ,前記洗浄装置120を回転させながら中空杭内を上下に移動させると,噴射室127を介して噴射された洗浄水が中空杭の中空空間内壁に向けて噴射されると共に,払拭体126が中空杭の内壁と接触して汚れを掻き取り,これにより中空杭の中空空間内壁に付着した不要物を洗浄して除去することで,その後に充填される充填・硬化材との付着性を向上させることができるものとなっている。
【0015】
しかし,上記従来の方法では,前述したように不要物の除去と,中空杭の中空空間内壁の洗浄とを,それぞれ別個の装置を使用して,別途の作業工程として行うものであるために作業に長時間を要するだけでなく,不要物の除去工程後,洗浄工程に移行するためには,スクリューロッドの先端部に取り付けられている除去容器100を取り外し,これを前述した洗浄装置120に付け替える作業が必要であり,作業が繁雑となる。
【0016】
また,不要物を比較的深い位置まで除去する必要がある場合等,不要物の除去に長時間を要すれば,深部側の不要物の除去を行っている間に既に不要物の除去が完了した杭頭側の内壁に付着した汚れが固まる等して,その後の洗浄によっては除去できなくなる場合がある。
【0017】
更に,洗浄工程は,中空杭の中空空間内壁に洗浄水を噴射して行われるものであるが,前述した構造の洗浄装置120にあっては,隣接する支持板125,125間に形成された噴射室127が比較的大きな空間として形成されるために,洗浄水はこの噴射室127を介して大流量で放出されることから,洗浄水を高速,高圧で噴射するとすれば,洗浄水の消費量が多くなり,また,他の大容量加圧装置を必要とすることを含めて,コストがかかる割には,洗浄水の噴射による洗浄効果を高めることが難しく,さらに,払拭体126等を使用した汚れの掻き落とし等の作業が必要となる。
【0018】
加えて,洗浄水の噴射によって中空杭の中空空間内壁より洗い落とされた不要物は,洗浄水と共に中空杭の内壁を伝って下方に流れ落ちて中空空間内に溜まり,中空空間内に新たな不要物を発生させることとなるが,このように洗浄によって新たに中空空間内に溜まった洗浄水等の不要物を中空空間内より除去しようとすれば,再度前述した除去容器100を使用してこれを除去するか,又はポンプ等を別途に用意してこれを汲み出す作業が必要となる等,中空空間内に溜まった洗浄水等を除去するための作業が新たに発生して作業工程を増やす結果となる。
【0019】
なお,以上の説明では,上記の問題点を,基礎杭の杭頭部の強化方法に関する従来技術との関係で説明したが,前述した問題は,杭頭部の強化を行う場合に限定されず,中空杭の中空空間内からの不要物の除去と,中空杭の中空空間内壁の洗浄を伴う各種の中空杭の施工に際しても同様に生じ得る問題である。
【0020】
そこで本発明は,上記従来技術における欠点を解消するために成されたものであり,中空杭の中空空間内に存在する不要物の除去と,中空杭の中空空間内壁の洗浄とを同時に行うことができる中空杭内不要物の除去容器を提供することにより,従来別々の工程で行われていた不要物の除去と,中空空間内壁の洗浄とを一工程で行うことを可能にし,かつ,洗浄時に中空空間内に溜まった洗浄水等の新たな不要物についても,別途特別な工程を設けることなく除去できるようにすることを目的とする。
【0021】
また,本発明の別の目的は,上記の課題に加え,洗浄水の使用量を低減しつつ,十分な洗浄効果を上げることができる中空杭内不要物の除去容器及びメンテナンス性に優れた中空杭内不要物の除去容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するために,本発明は,中空杭30の中空空間32内に存在する不要物を前記中空空間32内より除去するための除去容器10において,
前記除去容器10を,
内部に不要物の収容空間12を備え,かつ,底部に前記収容空間12内に前記不要物を導入するための開口13を備えたケーシング11と,
前記ケーシング11の底部に設けた前記開口13を,例えば,前記ケーシング11の内部側より覆う,前記開口を開閉自在に被覆する蓋板14を,
例えば,前記蓋板14の一端を揺動可能に前記ケーシング11に係止するヒンジ15を備えたものとして構成することができ,
更に,前記ケーシング11に,掘削機のスクリューロッド28の下端に連結可能な接合具19をその上端部分に設けると共に,洗浄水を前記中空杭30の中空空間32内壁に向けて噴射する噴射孔20(20’)と,前記噴射孔20(20’)を前記スクリューロッド28内に設けられた洗浄水の流路を給水路(19a,26,24:図6参照)を介して,連通することを特徴とする(請求項1,5)。
【0023】
前記構成の除去容器10において,前記噴射孔20(20’)を直径1〜3mmとすることが好ましい(請求項2)。
【0024】
この噴射孔20は,前記ケーシング11の肉厚を貫通して形成するものとしても良く(請求項3),又は,前記ケーシング11の外周面にネジ孔22を形成し,このネジ孔22に螺合する外周にネジを備えるボルト状部材21に,該ボルト状部材21を軸線方向に貫通する貫通孔20’を形成し,この貫通孔20’を前記噴射孔20とするものとしても良い(請求項4)。
【発明の効果】
【0025】
以上で説明した本発明の構成により,本発明の中空杭内不要物の除去容器10によれば,以下の顕著な効果を得ることができた。
【0026】
中空杭30の中空空間32内に存在する不要物を除去する際,同時に洗浄水を中空空間の内壁に向けて噴射することのできる除去容器10を提供することができた。
【0027】
その結果,この除去容器10を使用することで,不要物の除去と,中空杭30の中空空間32内の洗浄とを同時に行うことができ,工程数の減少による作業効率の向上を図ることができた。
【0028】
また,前記構成の不要物除去容器10によって中空杭30の中空空間32内の洗浄を,不要物の回収と同時に行うことで,内壁に付着した不要物等の汚れが固まる前に容易に洗浄水の噴射によって除去できると共に,洗浄によって新たに中空空間32内に溜まった洗浄水等の不要物についても,別途に除去,回収工程を設けることなしに,これを除去することが可能であった。
【0029】
さらに,ケーシング11に設けた噴射孔20(20’)の直径を1〜3mmとしたことで,噴射孔20(20’)を通過する洗浄水の流量,従って洗浄水の使用量を減少させることができただけでなく,前述のように比較的小径に形成された噴射孔20(20’)より洗浄水を噴射することで,洗浄水を高速かつ高圧で噴射することができ,その結果,洗浄水の吹き付けによる洗浄効果が向上して,少ない洗浄水の使用量で,高い洗浄効率を得ることができた。
【0030】
加えて,ボルト状部材21に形成した貫通孔20’によって前記噴射孔20を形成するものとした場合には,噴射孔20(20’)の目詰まりや,噴射孔20(20’)が摩耗等により孔径を拡大等した場合であっても,ボルト状部材21の交換という比較的簡単な作業によってこれを解消することができ,メンテナンスの作業性を向上させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の除去容器の正面図。
【図2】本発明の除去容器の右側面図。
【図3】本発明の除去容器の平面図。
【図4】図1のIV−IV線断面図。
【図5】図1のV−V線断面図。
【図6】図1のVI−VI線断面図。
【図7】図1のVII−VII線断面図。
【図8】本発明の除去容器の底面図。
【図9】本発明の除去容器を使用した不要物の除去及び杭内洗浄の説明図であり,(A)は未処理の状態,(B)は除去容器を挿入した状態,(C)は,(B)の状態から除去容器を抜き取った後の状体,(D)は再度除去容器を挿入すると共に,洗浄水の噴射による洗浄を行っている状態,(E)は,(D)の状態から除去容器を抜き取った後の状態。
【図10】従来(特許文献1)の除去容器の正面断面図。
【図11】従来(特許文献1)の洗浄装置の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に,本発明の実施形態につき添付図面を参照しながら以下説明する。
【0033】
本発明の除去容器10は,前述したように中空杭30の中空空間32内に存在するスライムやセメントミルク等の不要物を除去すると共に,中空杭の中空空間32の内壁に付着した不要物を洗浄するために使用するもので,この除去容器10は,杭頭部31より前記中空杭30の中空空間32内に挿入可能なサイズに形成されたケーシング11を有する。
【0034】
図示の実施形態においてこのケーシング11は,中空杭30の中空空間32内に挿入可能な直径を有する円筒状に形成しているが,この除去容器10のケーシング11の径あるいは形状は,図示のように円筒状に限定されず,例えば,使用する既製杭の内部形状等に対応し,各種の形状に形成することが可能である。
【0035】
このケーシング11のサイズは,一例として最大で,全長3000mm程度,直径1400mm程度に形成することができ,不要物除去の対象とする中空杭30の内径,不要物の除去を行う深さ等に応じて,上記範囲内において適宜のサイズに形成可能である。
【0036】
この除去容器10のケーシング11内部には,図1,2に示すように除去すべきスライムやセメントミルク等の不要物を回収するための収容空間12が形成されている。
【0037】
そして,ケーシング11の底部に,不要物をこのケーシング11内の収容空間12に導入するための開口13が形成され,更に,この開口13を,ケーシング11の内側より被覆する蓋板14が設けられている(図1参照)。
【0038】
なお,図1において,この蓋板14は,「14(開位置)」,「14(閉位置)」として2箇所に表されているが,これらは,単一の蓋板14の「開位置」と「閉位置」とをそれぞれ示したものである。
【0039】
このように,図示の実施形態では,1つの除去容器10に対して単一の蓋板14を設ける構成を示したものであるが,例えば1つの開口13に対して二枚の蓋板を,所謂「観音開き」となるように取り付けても良く,又は複数設けた開口13のそれぞれに蓋板14を設ける等,開口13を開閉可能なものであれば,蓋板14の取付個数を特に限定するものではない。
【0040】
前述の開口13は,除去容器10をその底部側より中空杭30の中空空間32内に挿入した際に,液状ないしはゲル状のスライムやセメントミルク等の不要物を導入可能な位置であれば,底部のいずれの位置に設けても良い。
【0041】
また,前述の蓋板14は,前記開口13を閉塞可能な大きさを有すると共に,前記不要物の流入圧力によって前記開口13を開放可能と成すように前記収容空間12内に揺動可能に固定されており,図示の実施形態にあっては,その一端を底面にヒンジ15により固定して,前記開口13の閉塞時,蓋板14が前記開口13を内部より覆うことにより閉塞すると共に,前記ヒンジ15を支点として揺動することにより,底面上で立ち上がり,前記開口13を開放することができるように構成されている。
【0042】
なお,図1,図7,図8中,Sはストッパであり,前述の蓋板14の開放時,この蓋板14が,90度未満の開放角度となるように蓋板14の揺動範囲を規制する。
【0043】
例えば図1に示す実施形態において,蓋板14の開放角度が90度を超え,その先端(自由端)がケーシング11の内壁と接触する迄,図中左側に揺動としたとすると,蓋板14はこの位置で安定して開口13を被覆する方向に揺動しなくなるおそれがある。
【0044】
しかし,図1に示すようにストッパSによって蓋板14の開放角を90度未満の位置(本実施形態にあっては85度)で規制することにより,不要物の導入圧力が無くなった際,蓋板14は自重により,または,中空杭の中空空間より抜き取る際の不要物の重量により,確実に開口13側に倒れて開口13を塞ぐ。
【0045】
前記除去容器10のケーシング11内に形成された収容空間12は,ケーシング11内に不要物が導入された際に,この不要物の導入量に応じて収容空間12内の空気を排出することができるよう,その上端部分が開放されており,本実施形態にあっては,ケーシング11自体を,上端を開放した円筒体により形成することで(図3参照),このような空気の排出を可能にしている。
【0046】
以上のように構成された除去容器10のケーシング11上端には,この除去容器10を,オーガマシン等の掘削機のスクリューロッド28の先端に連結可能とするための接合具19が設けられている。
【0047】
本実施形態にあっては,円筒体であるケーシング11の上端開口内に,ケーシング11の内周間に掛け渡された支持材18を設け,この支持材18に前述の接合具19を取り付けている。
【0048】
図3に示す実施形態にあっては,支持材18は,断面H字状の鉄製部材,例えば,所謂H型鋼をもちいることができ,ケーシング11の上部開口内周間を直径方向に掛け渡す第1の支持材18aと,この第1の支持材18aの長さ方向の中央部分とケーシング11の内周間に掛け渡された第2及び第3の支持材18b,18cによって,平面視において十字状に直交する前記支持材18を形成し,ケーシング11の上端開口を塞ぐことなく,ケーシング11上端部の補強と接合具19の取り付けとを可能としている。
【0049】
このように構成された支持材18の中央部分に設けられた前述の接合具19として,本実施形態にあっては掘削機のスクリューロッド28のジョイント部に使用されている,六角柱状の継手(オス)を固着している。
【0050】
このような接合具19を設けることにより,スクリューロッド28の先端に設けられた継手(メス)内に前記接合具19を挿入すると共に,スクリューロッド28に設けられた継手(メス)に設けたピン孔と,前記接合具19に設けたピン孔に共に係止ピンを挿入する等することで,除去容器10を容易にスクリューロッド28の先端に取り付けることができると共に,スクリューロッド28内に形成された洗浄水の流路(図示せず)と,前記接合具19内に形成された洗浄水の導入路19aとを連通させることが可能となる。
【0051】
前述のケーシング11は,更に,中空杭30の中空空間32内で洗浄水を噴射し,杭内周面の洗浄を行うための噴射孔20及びこの噴射孔20に対して洗浄水を導入するための給水路を備えている。
【0052】
この洗浄水の噴射孔20は,洗浄水を噴射して中空杭30の中空空間32内壁に付着した不要物,その他の汚れを洗浄,除去し得るものであれば,その径,形状,形成個数,配置等は如何なる構成としても良く,本実施形態にあっては,この噴射孔20をケーシング11の肉厚を貫通する直径1〜3mm程度の貫通孔として形成し(図1,図2参照),一例として除去容器10のケーシング11の長さを3000mmとした図示の実施例にあっては,ケーシング11の長さ方向に15個(図2)及び17個(図1)の噴射孔20を直線状に所定間隔で並べて配置した噴射孔の列を,円周方向に4列等間隔に配置して,合計64個の噴射孔を設けている。
【0053】
このように,噴射孔20の直径を1〜3mmという比較的小径なものとしたことにより,この噴射孔20を介して噴射される洗浄水を高速かつ高圧にて中空空間32の内壁に噴射,衝突させることができ,比較的少量の洗浄水によって中空空間内壁の洗浄を効果的に行うことができる。
【0054】
なお,噴射孔20は,ケーシング11の肉厚を直接貫通して形成することもできるが,この噴射孔20を,例えば図2中に拡大図として示すように,軸芯方向に1〜3mm程度の貫通孔20’が形成されたボルト状部材21を,ケーシング11の肉厚を貫通して形成されたネジ孔22に螺合し,ボルト状部材21に設けた貫通孔20’によって前述の噴射孔20を形成しても良い。
【0055】
このように,ボルト状部材21に形成された貫通孔20’を前述した噴射孔20として使用することにより,例えば噴射孔20(20’)に目詰まりが生じ,又は摩耗等によって噴射孔20(20’)の孔径が拡大した場合に,このボルト状部材21を交換するだけで噴射孔を正常な状態に戻すことができる。そのため,スライムやセメントミルク中に没した状態で使用され,スライムやセメントミルクによって噴射孔20(20’)の目詰まりが生じ易い本発明の除去容器10のメンテナンスの際の作業性が大幅に向上する。
【0056】
この噴射孔20(20’)に対して洗浄水を供給する給水路は,各噴射孔20(20’)に対して洗浄水を供給し得るものであれば如何なる構成であっても良いが,図示の実施形態にあっては,前述の噴射孔20(20’)に対峙する位置で,ケーシング11の内周側に断面L字状のアングル材23を,その角部がケーシングの中心を向くように取り付け(図4参照),このアングル材23とケーシング11の内周面によって画成された洗浄水の給水路24を形成すると共に,ケーシング11の上部中央に設けた接合具19内に形成された前述の導入路19aと前記各給水路24間を連通する分配給水路26が設けられており(図6参照),前記導入路19a,分配給水路26,給水路24によって,スクリューロッド28内に形成された図示せざる洗浄水の流路と,前記噴射孔20(20’)とを連通する,洗浄水の給水路が形成されている。
【0057】
本実施形態にあっては,この分配給水路26として,支持材18a,18b,18cの裏面にそれぞれアングル材25を取り付けて,平面視において接合具19の裏面位置を中心として十字状を成す分配給水路26を形成し,この分配給水路26それぞれの端部を前記各給水路24の上端に連通している(図5,6参照)。
【0058】
なお,前記実施形態においては,分配給水路26,各給水路24をアングル材25により構成しているが,これらをステンレス製パイプなどからなる中空円筒体など他の材料および形状の部材により,それぞれ,角部において連通しあるいは,連続する一のパイプを折曲して形成してもよい。
【0059】
そして,前記分配給水路26の中心位置に,接合具19に形成された導入路19aを連通すると共に(図6参照),各給水路24の下端を,それぞれ閉塞端としている。
【0060】
このように構成することで,スクリューロッド28を介して供給された洗浄水は,接合具19に形成された導入路19aを介して導入され,分配給水路26によって各給水路24に分配供給されると共に,各給水路24に連通した噴射孔20(20’)を介して,中空杭30の中空空間32内壁に向けて噴射される。
【0061】
なお,図1,2中の符号27はドレン孔であり,このドレン孔27を塞ぐ栓であるドレンボルトの着脱によって開閉可能に構成されていると共に,ドレン孔27を開放することにより,給水路24中に溜まった洗浄水の抜き取りや,ドレン孔27より高圧水を導入することで,給水路24内部の洗浄等を行うことができるように構成されている。
【0062】
以上に,本発明の除去容器10の一実施形態について説明したが,除去容器10の構成は,図1〜8を参照して説明した構成に限定されず,各種の変更が可能である。
【0063】
次に,前述した除去容器10の使用方法の一例を図9を参照して説明する。
【0064】
図9中の30は,既知の埋込み杭工法による施工途中の基礎杭(中空杭)であり,この段階において,掘削孔内に建て込んだ中空杭30内には,硬化前の液状又はゲル状のスライムやセメントミルク等の不要物が存在している〔図9(A)〕。
【0065】
除去容器10は,前述したように本実施形態にあっては円筒状のケーシング11内に不要物を回収するための収容空間12を有すると共に,この収容空間12の底部において下向きに開放する開口13を有し,この開口13を被覆する開閉自在な蓋板14が設けられたものであることから,この除去容器10を,掘削機のスクリューロッド28の先端に取り付けて杭頭部31より中空杭30の中空空間32内に挿入して不要物中に沈下させると,除去容器10の開口13を閉じていた蓋板14が中空空間32内の不要物の導入圧力により開き,これによって不要物が除去容器10の収容空間12内に流入する〔図9(B)〕。
【0066】
除去容器10内の収容空間12内に対する不要物の流入が完了すると,この不要物を押し上げていた流入圧力が消失し,従ってこの圧力によって押し上げられていた蓋板14が自重によって閉動作を行って開口13を閉じる。
【0067】
そして,中空杭30の中空空間32内より除去容器10を抜き取ると,除去容器10の収容空間12内に導入された不要物の重量により蓋板14は完全に開口13を閉じ,収容空間12内に閉じ込められた不要物は除去容器10と共に中空杭30の中空空間32より抜き取られ,中空杭30の中空空間32内の不要物の液面は,除去された不要物分,低下する〔図9(C)〕。
【0068】
このようにして,不要物の除去が行われた後の中空空間32では,それまで不要物中に埋没していた部分の内壁に不要物が付着していると共に,除去容器10の長さに対して除去深さが大きい場合には,必要量の不要物の除去が完了していない状態にある〔同じく図9(C)参照〕。
【0069】
そこで,除去容器10の収容空間12内に回収された不要物を,図示せざる残土ビット等に排出して空の状態とした後,この除去容器10を再度,中空杭30の中空空間32内に挿入して更に不要物の除去を継続する。
【0070】
このとき,スクリューロッド28を介して除去容器10に洗浄水を供給して,除去容器10のケーシング11に設けられた噴射孔20(20’)より洗浄水を噴射することにより,中空杭30の中空空間32内壁に付着した不要物等の汚れを洗浄して除去する〔図9(D)〕。
【0071】
このようにして,洗浄水の噴射を行うことにより,洗浄水によって洗い落とされた不要物は,洗浄水と共に内壁を伝って流れ落ち,中空空間32内に溜まることとなるが,除去容器10を不要物中に沈下させる際に,中空空間32内に溜まった洗浄水は,不要物と共に除去容器10内に導入されて,除去容器10を中空空間32内より抜き取ることにより,中空空間32内より除去される。
【0072】
除去容器10を抜き取った後の中空空間32内は,このようにして除去された不要物の量に対応して更に液面を降下するが,このとき,回収しきれなかった洗浄水の一部が中空空間32内に残る場合がある〔図9(E)〕。
【0073】
しかし,再度図9(D)以降の作業を繰り返し,所定の除去深さ(一例として最大22m程度)に至るまで,洗浄と共に不要物の除去を繰り返すことにより,中空空間32内に溜まった洗浄水は,不要物と共に中空空間32内より除去される。
【0074】
このようにして,所定の除去深さ迄不要物を除去することで,中空空間32内より必要量の不要物が除去されると共に,不要物が除去された部分における中空空間32の内壁の洗浄が完了する。
【0075】
なお,所定の除去深さに至る迄不要物を除去した後においても,未だ中空空間32内に洗浄水が残っている場合には,洗浄水の噴射を停止した状態で除去容器10を洗浄水中に沈下させた後,これを中空空間32内より抜き取ることで,不要物と同様にして残った洗浄水を除去することもできる。
【0076】
このように,本発明の除去容器10を使用して不要物の除去を行うことで,洗浄の際に中空空間32内で噴射した洗浄水を,別途ポンプ等を用意して汲み出す作業が不要となる。
【0077】
なお,前述した不要物の除去と中空空間32内壁の洗浄は,必ずしも同時に行う必要はなく,例えば,不要物の除去深さが比較的浅い場合等においては,先ず,不要物の除去を所定の除去深さ迄行った後,同一の除去容器10を使用して洗浄を行い,その後,必要に応じて中空空間32内に溜まった洗浄水等を,この除去容器10を使用して除去するものとしても良い。
【0078】
このようにして,不要物の除去と,中空空間32内壁の洗浄を同時に行うことで,中空空間32の内壁に付着した付着物が固まる前にこれを容易に洗浄することができる。
【0079】
このようにして不要物の除去,及び内壁の洗浄が完了した中空空間32に対しては,充填・硬化材の充填が行われる。
【0080】
前述したように,中空杭30の内壁を洗浄して内壁に付着する付着物を除去したことにより,充填・硬化材の中空杭30内周壁に対する付着性が向上し,中空杭の強化を好適に行うことが可能である。
【0081】
なお,この充填・硬化材の充填に際しては,不要物の除去,洗浄が完了した中空空間内に,補強筋等を配置した後,充填・硬化材を充填する等して,より一層の中空杭の強化を図るものとしても良い。
【0082】
以上説明したように,本発明の除去容器10によれば,中空杭30の中空空間32内に存在するスライムやセメントミルク等の不要物の除去と,中空空間32内壁の洗浄とを共通の装置により,同時に行うことができることから,各工程毎にそれぞれ異なる装置を使用する場合のように,スクリューロッド28に対する機器の付け替えが不要であると共に,不要物の除去,洗浄に必要な労力やエネルギーを大幅に低減することが可能である。
【0083】
また,洗浄工程を独自に行う場合,除去工程からの経過時間によっては付着物が固まって除去し難くなったり,また,洗浄の際に噴射された洗浄水や,洗浄水によって洗い流された不要物が中空空間内に溜まって新たな不要物を発生させることとなるが,不要物の除去と洗浄とを同時に行うことで,内壁に対する付着物は固まる前に洗浄水の噴射によって容易に除去することができると共に,中空空間32内で噴射されて中空空間32内に溜まった洗浄水等の新たな不要物は,除去容器10による不要物の回収の際に一緒に除去・回収されることとなるために,別途ポンプ等を使用した汲み上げが不要となる。
【0084】
しかも,本発明の除去容器10に設けられた噴射孔20(20’)は,直径1〜3mmと比較的小径であり,この噴射孔20(20’)を介して高圧水を噴射することにより,洗浄効果を犠牲にすることなく,使用する洗浄水の量を減少させることができ,洗浄に要するコスト減を図ることができると共に,環境に対する負荷をも低減することが可能である。
【符号の説明】
【0085】
10 除去容器
11 ケーシング
12 収容空間
13 開口
14 蓋板
15 ヒンジ
18 支持材
18a 第1の支持材
18b 第2の支持材
18c 第3の支持材
19 接合具
19a 導入路
20 噴射孔
20’ 貫通孔(噴射孔)
21 ボルト状部材
22 ネジ孔
23,25 アングル材
24 給水路
26 分配給水路
27 ドレン孔
28 スクリューロッド
30 中空杭
31 杭頭部
32 中空空間
S ストッパ
100 除去容器
111 除去容器本体
112 収容空間
113 開口
114 蓋板
115 ヒンジ
120 洗浄装置
122 天板
123 底板
125 支持板
126 払拭体
127 噴射室
128 導入路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空杭の中空空間内に存在する不要物を,前記中空空間内より除去するための除去容器において,
前記除去容器が,
内部に不要物の収容空間を備え,かつ,底部に前記収容空間内に前記不要物を導入するための開口を備えたケーシングと,
前記ケーシングの底部に設けた前記開口を開閉自在に被覆する蓋板と,
前記ケーシングが更に,
掘削機のスクリューロッドの下端に連結可能な接合具をその上端部分に備えると共に,洗浄水を前記中空杭の中空空間内壁に向けて噴射する噴射孔と,前記噴射孔を前記スクリューロッド内に設けられた洗浄水の流路を給水路を介して,連通することを特徴とする中空杭内不要物の除去容器。
【請求項2】
前記噴射孔の直径が1〜3mmである請求項1記載の中空杭内不要物の除去容器。
【請求項3】
前記噴射孔が前記ケーシングの肉厚を貫通して形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の中空杭内不要物の除去容器。
【請求項4】
前記ケーシングが,該ケーシングの外周面に形成されたネジ孔と,該ネジ孔に螺合するボルト状部材を備え,前記ボルト状部材に,該ボルト状部材を軸線方向に貫通する貫通孔を設け,該貫通孔を前記噴射孔としたことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の中空杭内不要物の除去容器。
【請求項5】
前記ケーシングの底部に設けた前記開口を,前記ケーシングの内部側より覆い,前記開口を開閉自在に被覆する蓋板を,前記蓋板の一端を揺動可能に前記ケーシングにヒンジを介して係止することを特徴とする請求項1記載の中空杭内不要物の除去容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−47244(P2011−47244A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198816(P2009−198816)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(506019290)株式会社播磨商事 (7)
【出願人】(506019304)
【Fターム(参考)】