説明

中空杭内面の付着物除去装置およびその装置を用いた中空杭内面の付着物除去方法

【課題】 簡単な装置において中空杭(例えば、鋼管杭や既製コンクリート杭)の中空部内面に付着した土砂やソイルセメント等の付着物を容易で確実に洗浄除去できると共に、除去した付着物や泥水を確実に外部に排出しつつ除去作業ができ、しかも水の噴射口は水没することなく洗浄能力の低下もない中空杭内面の付着物除去装置および付着物除去方法を提供する。
【解決手段】 排水ポンプを搭載する機枠の外周に、噴射口を所定間隔に配設する噴出管を環状に設けた装置本体が、中空杭の中空内に挿入可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、中空杭(例えば、鋼管杭、既製コンクリート杭)の中掘り工法やプレボーリング工法において、沈設後の中空杭内面の土砂やソイルセメント等の付着物を除去する装置および除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、既製コンクリート杭や鋼管杭の先端支持力を増大させるために、杭軸径に比して拡大した根固め球根、いわゆる拡大根固め球根を杭先端に築造する方法が知られている。近年、拡大根固め球根の杭軸径に対する拡大率を大きくし、より大きな先端支持力を発揮する高支持力杭工法が出現している。
【0003】
一般に杭の設計においては、鉛直荷重が大きくなればなるほど、作用する水平力も大きくなる。したがって、高支持力杭では従来の杭に比し、作用する水平力も大きくなることから、高い曲げ性能が要求される。これを確保するため、既製コンクリート杭ではSC杭の使用が一般的であるが、鋼管杭においては板厚を大きくするか、杭径を大きくすること等で対応することになる。
しかし、現状の鋼管杭工法で用いられるスパイラル鋼管の製造可能な板厚には上限があることや、また、施工可能な杭径にも制約があることから、必要な曲げ性能を確保できない場合がある。この場合、杭本数を増やすことによる対策が必要となり非常に不経済である。
【0004】
そこで、鋼管杭内部にコンクリートを充填し曲げ性能の向上を図るコンクリート充填鋼管杭(以下、CFTと称す。)構造を、基礎杭頭部付近に適用することにより、曲げ性能を確保する方法が採用されることがある。これにより、杭の曲げ剛性が大きくなり必要な曲げ性能を確保できるため、杭本数を増やすことなく、経済設計が可能となる。
しかし、施工直後の杭頭部付近の杭内面には、土砂やソイルセメント等が付着している。CFT構造とするには、これらをきれいに取り除き、コンクリートを打設する必要がある。
【0005】
また、沈設された中空杭の杭頭部内へ鉄筋カゴを挿入し、更にコンクリートを打設して鉄筋コンクリートとした際に、杭頭部と鉄筋カゴを含む鉄筋コンクリートとを一体的に形成するためには、両者の付着を確保する必要があり、そのためには杭頭部内面に土砂やソイルセメント等の付着物がないことが必須条件となる。
【0006】
従来、このような中空杭の内面に付着した土砂やソイルセメント等の付着物を除去する装置や方法として、
(1)洗浄装置本体下部を中空杭の杭頭部内に挿入し、杭頭接触板で杭頭上面に着座させて設置し、本体下部の噴出手段より杭頭部内壁面に向けて水又は空気を噴出させて付着物を除去するもの(例えば、特許文献1参照)。
(2)上方側を重機に懸吊される除去装置本体が、鋼管杭に挿入可能な鋼管からなり該除去装置本体の下方側に鋼管杭の内部の地盤に加圧水を噴射可能な下方噴射口が設けられ、かつ装置本体の内部に空気を注入可能な空気吹出口が設けられ、下方噴射口から加圧水を鋼管杭内部の地盤に噴射することによって、地盤を構成する土砂を液状化すると共に、水圧および空気吹出口から供給された空気の気圧により液状化した泥水を鋼管杭の外部に排出して除去するもの(例えば、特許文献2参照)、等が提案されている。
【特許文献1】特開2002−115249号公報
【特許文献2】特許第2681760号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の(1)に示す装置や方法は、装置本体下部を中空杭の杭頭部内に挿入し、杭頭接触板で杭頭上面に着座させて設置し、装置本体下部の噴出手段より杭頭部内壁面に向けて水又は空気を噴出させて付着物を除去するものであるので、除去しようとする深度方向の壁面長さが、数種類ある場合、本体下部の必要長さが異なる処理(除去)装置が数種類必要となる課題があり、実用性に乏しい。
また、排水機能がない為ヤットコ長が長い場合、付着物の地上への排出が困難となるという問題、付着物が泥水状となった後、再び土砂となって杭頭部内へ溜まるという問題がある。
さらに、中空杭内壁面の深度方向の除去範囲が長いと、それに対応するため本体下部の長さを長くしなければならないので、処理装置も長くなり扱いにくくなるという課題および下部本体の噴出手段の水噴出口が地下水や雨水や洗浄水のために水没する可能性が高く、その場合噴出する水圧が水中で著しく減衰され洗浄力が低下するという課題がある。
【0008】
また、前記従来の(2)に示す土砂除去装置や方法は、下方噴射口より加圧水を鋼管杭内部の底部の地盤に向けて噴射し、地盤を構成する土砂を液状化し、鋼管杭を引き抜き易くするものであり、この発明で提案する鋼管杭内面の付着物の除去とは異なるものである。
けれども、この従来の装置でも、除去装置本体が鋼管杭内を下降するときに、加圧水を杭内面に向けて噴出することで付着物の除去ができる可能性もある。しかし、このような使い方をしたとしても、前記従来の(2)の装置や方法では次のような課題がある。
水噴出の他に空気の供給が必要となり、空気は内管内に吹出される構成であるため、装置が複雑で大型化するし、コストも高くなる課題、ヤットコ長が長い場合、上記(1)に示す装置と同様な問題や課題がある。
【0009】
本発明は、このような従来の課題を解決せんと提案されたものであり、その目的は、簡単な装置において中空杭(例えば、鋼管杭、既製コンクリート杭)の中空部内面に付着した土砂やソイルセメント等の付着物を容易で確実に洗浄除去できると共に、除去した付着物や泥水を確実に外部(地上)に排出しつつ除去作業ができ、しかも水の噴射口(噴出口)は水没することがなく、洗浄能力の低下もない中空杭内面の付着物除去装置および付着物除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、この発明の中空杭内面の付着物除去装置は、排水ポンプを搭載する機枠の外周に、噴射口を外側に向けて複数配設する噴出管を環状に設けた装置本体が、中空杭の中空内に挿入可能となっており、前記噴出管には給水ホースを介し外部の給水ポンプに連結されていることを特徴とする。
【0011】
この構成により装置本体は、中空杭の中空内に挿入して、上端より下降させたり下降位置より上昇させたりすることが可能であるので、この下降時または上昇時に、給水ポンプにより噴出管に加圧水を供給し、噴射口より中空杭内面に向けて噴出することで、中空杭内面の付着物を除去することができる。この時、噴出管は機枠の外周に環状に設けられ、この噴出管に噴射口が外側に向けて複数配設されているので、供給された加圧水は、中空杭の円周方向の全内周面に環状に噴射されるため、除去する範囲において装置本体を下降または上昇することで、中空杭の所定範囲の杭内面の付着物を完全に除去することができる。また、この除去作業により発生した泥水は、排水ポンプにて外部に排水しつつ作業できるので、装置本体が水没することがないし、除去した付着物は、泥水とともに外部に確実に排出できる。
【0012】
また、前記中空杭内面の付着物除去装置の噴射口が、排水ポンプの水の吸込口の位置より高い位置に設けられていると、除去作業で発生した泥水の水位が、噴射口に達する前に排水ポンプで排水することができるので、噴射口は常に水没することなく露出状態とすることができる。従って、噴射された加圧水の圧力の減衰は、水中噴射と比べて圧倒的に小さく、洗浄能力が低下することがないので好ましい。また、噴出口から中空杭の内面への噴出水の角度は、水平ないし俯角45°の角度の範囲になるように噴射口を設け、噴射口と排水ポンプの高低差を噴射口と杭内面の距離以上にすると付着物の除去と同時に除去された付着物を落下させる向きに力が働き効果的である。
【0013】
また、例えば、これに限定するわけではないが、前記中空杭内面の付着物除去装置の機枠が円筒状であると、この円筒状の機枠の内側に排水ポンプを搭載し、機枠の外周に噴出管を環状に設け、この噴出管に噴射口を設けることにより、装置本体を中空杭の中空内に挿入可能とする構成を容易に構成することができる。
また、前記中空杭内面の付着物除去装置の機枠が、吊下げ手段を備えると、これにより重機で装置本体を吊下げて中空杭内を、下降させたり、上昇させることができるので好ましい。
【0014】
さらに、前記中空杭内面の付着物除去装置は、機枠に噴射口と中空杭内面との距離を一定に保つためのスペーサーが設けられていることを特徴とする。
噴射口と中空杭内面の距離を大きくすると、噴射水による洗浄力が落ちる。逆に噴射口と中空杭内面の距離が小さすぎると、噴角と距離の関係から、噴射水の内壁面に当たる範囲が狭まる。噴射水が直接当たらない箇所の土砂やソイルセメント等の付着物は除去できない。スペーサーが設けられていると、噴射口と中空杭内面との距離を常に適正な距離に保持できるので好ましい。
因みに、噴射口と中空杭内面との距離は、30mmから200mm程度が好ましく、100mm程度が最も好ましい。
【0015】
また、この発明の中空杭内面の付着物除去方法は、請求項1乃至3のいずれかに記載の中空杭内面の付着物除去装置を用いて中空杭内面の付着物除去方法であって、
地盤中に中空杭を打設した後に、装置本体を吊り下げて上部開口より中空杭内に挿入し、給水ポンプにより噴出管に水を供給し噴射口より中空杭内面に向けて噴射しつつ、装置本体を下降または下降位置より上昇させ、中空杭内面の付着物を洗浄除去するとともに、発生した中空杭内の泥水を排水ポンプにより排水することを特徴とする。
【0016】
この構成により装置本体をクレーン等の重機で吊り下げて中空杭内に挿入して、下降または上昇(持ち上げ)の操作をするだけで、噴射口より噴射された水により中空杭内面の付着物を洗浄除去することができる。この時発生する泥水は、排水ポンプで排水しつつ除去作業できる。従って、噴射口の位置は、常に泥水中に水没することがないため中空杭内面の付着物の除去作業を容易に実施することができる。
【0017】
さらに、この発明の中空杭内面の付着物除去方法は、中空杭内に吊り下げた装置本体を、給水ポンプにより水を供給し噴射口より中空杭内面に向けて噴射しつつ、中空杭の上部より深度方向に順次下降させる工程、または中空杭の上部より深度方向に順次下降させる工程と下降位置より上部方向に順次上昇させる工程、を複数回繰り返すことを特徴とする。
これにより中空杭内面の付着物が残ることなく更に完全に洗浄除去することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明の中空杭内面の付着物除去装置および付着物除去方法によれば、次のような効果を奏する。
(1)この発明の装置本体は、中空杭の中空内に挿入して、上端より下降させたり下降位置より上昇させたりすることが可能であるので、この下降時または上昇時に、給水ポンプにより噴出管に加圧水を供給し、噴射口より中空杭内面に向けて噴出することで、中空杭内面の付着物を除去することができる。この時、噴出管は機枠の外周に環状に設けられ、この噴出管に噴射口が所定間隔で配設されているので、供給された加圧水は、中空杭の円周方向の全内周面に環状に噴射されるため、除去する範囲において装置本体を下降または上昇することで、中空杭の所定範囲の杭内面の付着物を完全に除去することができる。また、この除去作業により発生した泥水は、排水ポンプにて外部に排水しつつ作業できるので、装置本体が水没することがないし、除去した付着物は、泥水とともに外部に確実に排出できる。
【0019】
(2)この時の泥水状になった土砂等の付着物は、排水ポンプで排水ホースを介しピット等へ排出できるので、現場を汚さず、作業環境も良好にして作業できる。従って、環境も汚すことがない。
また、排水した泥水は、沈殿槽を用いることで洗浄水として再利用可能となる。
【0020】
(3)前記中空杭内面の付着物除去装置の噴射口が、排水ポンプの吸水口の位置より高い位置に設けられているので、除去作業で発生した泥水の水位が、噴射口に達する前に排水ポンプで排水することができるので、噴射口は常に水没することなく露出状態となっている。従って、供給された加圧水の圧力の減衰はなく、洗浄能力が低下することがない。
【0021】
(4)この発明の中空杭内面の付着物除去装置は、機枠に、噴射口と中空杭内面との距離を一定に保つためのスペーサーが設けられているので、装置本体を中空杭内面に挿入した時、噴射口と中空杭内面との距離を常に適正な距離に保持でき、洗浄除去能力を常に最適に維持することができる。
【0022】
(5)洗浄と排水を1工程でできるため、洗浄時間を短縮できる。
(6)杭内径が同程度であれば、洗浄範囲によらず1種類の洗浄装置で洗浄が可能である。
また、噴射口から杭内面までの距離が30〜200mmの間であれば、同一装置で複数の杭内径に対応することが可能である。
(7)使用する資機材の給水ポンプや排水ポンプは、グラウトポンプや、水中ポンプ等の汎用品を使用でき、また構成も簡単なので、装置の製造コストが安い。
(8)洗浄装置がコンパクトであるため、使い勝手が良い。
【0023】
(9)この発明の中空杭内面の付着物除去方法によれば、装置本体をクレーン等の重機に吊り下げて、中空杭内に挿入し、給水ポンプにより水を供給して噴射口より噴射しつつ、装置本体を下降または下降位置より上昇させる操作だけで、中空杭内面の付着物洗浄除去作業を容易に実施することができる。また、この作業時には排水ポンプにおいて発生した泥水を外部に排水できるので、中空杭内面の付着物除去作業は、容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、この発明の実施の形態に係る中空杭内面の付着物除去装置を示す斜視図、図2は、この発明の実施の形態に係る中空杭内面の付着物除去装置を示す断面図である。
【0025】
この中空杭内面の付着物除去装置は、排水ポンプ3を搭載する機枠2の外周に、噴射口5を所定間隔に配設する噴出管4を環状に設けた装置本体1が、中空杭(例えば、鋼管杭、既製コンクリート杭)14の中空内に挿入して進退(下降・上昇)可能となっており、前記噴出管4には給水ホース7を介し外部の給水ポンプ6に連結された構成となっている。この給水ポンプ6は、貯水槽8に連結され、噴出管4に加圧水を供給できるようになっている。また、前記機枠2には、クレーン等の重機11で吊り下げることができる吊下げ手段10が設けられている。
【0026】
従って、装置本体1は、クレーン等の重機11に吊り下げて中空杭14の中空内に挿入して、上端より下降させたり、下降位置より上昇させることができ、この下降時または上昇時に、給水ポンプ6により噴出管4に加圧水を供給し、噴射口5より中空杭14の内面に向けて噴射でき、これにより中空杭14内面の付着物を除去することができる。この時、噴出管4は機枠2の外周に環状に設けられ、この噴出管4に噴射口5が所定間隔で配置されているので、供給された加圧水は、中空杭14の円周方向の全内周面に噴射されるため、長さ方向の除去する範囲において装置本体1を下降または下降位置より上昇することで、中空杭14の所定範囲の杭14内面の付着物を完全に除去することができる。また、この除去作業で発生した泥水12は、その水位が吸水口3aの位置より上方になると排水ポンプ3で排水ホース9を介し外部に排水しつつ作業できる。排水ポンプ3としては、水中ポンプが好ましい。
【0027】
機枠2は、この実施の形態では円筒状であって内筒2aと外筒2bが同心的に配置され、この内筒2aと外筒2bが連結部材2cで連結された二重筒構造となっており、前記排水ポンプ3は、内筒2a内に位置して搭載されている。この円筒状の機枠2の外径は、沈設した中空杭(例えば、鋼管杭、既製コンクリート杭)14の内径より小さく構成され、機枠2の外周に噴射口5を配置した噴出管4を環状に設けても、中空杭14内において噴射口5と中空杭14の内面との間に所定の間隔が保持できる外径となっている。これにより装置本体1は、沈設した中空杭14内に挿入して進退(下降・上昇)可能となる。
【0028】
噴射口5と中空杭14内面との間隔は、噴射口5と中空杭14内面の距離を大きくすると、噴射水の中空杭14内面に当たる勢いが低下し、洗浄力が落ち、逆に、噴射口5と中空杭14内面との距離が小さすぎると、噴角(水が噴射口から放射状に広がって噴出される時の広がり角度)と距離の関係から、噴射水が当たる範囲が狭まり、付着物の除去残りが生ずる可能性がある。従って、噴射口5と中空杭14内面の距離(間隔)は、30mmから200mm程度が好ましく、100mm程度が最も好ましい。噴射口の数は、噴角や中空杭14内との距離やポンプ能力等によって決定される。噴射口から中空杭の内面への噴出水の角度が45°(俯角)で噴角40°で噴射口5と杭14内面の距離100〜200mm、400リットル/分のポンプでは10〜20ヶが好ましい。
【0029】
中空杭内面の付着物除去装置での除去作業は、装置本体1の1回の下降操作または上昇操作で杭13内面の全周を一度に洗浄できることが好ましいが、1回の操作で付着物が完全に除去できないときは、装置本体1の下降、上昇の操作を反復させ数回の洗浄をしてもよい。噴射口5と中空杭14内面との間隔と、噴出管4の外径に対する噴射口5の取付け数量を適正に設定することにより、杭14内面全周を一度に洗浄でき、反復回数を減らし洗浄時間を短縮することが可能となり、作業効率を向上できる。
【0030】
図3および図4は、この発明の他の実施の形態に係る中空杭内面の付着物除去装置を示す斜視図および断面図である。この実施の形態は、噴出管4およびこの噴出管4に配置された噴射口5が、排水ポンプ3の吸水口3aの位置より高い位置(上方)に設けられている構成および機枠2に、外方に向かって噴射口5と中空杭14内面との距離を一定に保つためのスペーサー13が設けられている構成、を備えるもので、他は前記実施の形態と同様であるので、同一構成要素には同一符号を付して他の詳細な説明は省略する。
【0031】
この実施の形態の中空杭内面の付着物除去装置では、噴射口5の位置が排水ポンプ3の吸水口3aより高い位置(上方)に設けられているので、除去作業で発生した泥水の水位が、噴射口5に達する前に排水ポンプ3で排水することができ、それにより噴射口は常に水没することなく露出状態に維持でき、噴射口5が水没することによる供給された加圧水の中空杭14内面に当たる圧力の減衰を防止でき、洗浄力の低下を防止できる。
また、機枠2に、噴射口5と中空杭14との距離(間隔)を一定に保つためのスペーサー13が設けられているので、装置本体1を中空杭14内に挿入して、下降および上昇させる時、噴射口5と中空杭14内面との距離(間隔)を常に適正な距離(間隔)に保持でき、洗浄力を常に最適に維持できる。このスペーサー13の構成には特に制限はないが、この実施の形態に示すように先端に回転自在の車輪13aを設け、この車輪13aが中空杭14内面に当接する構成とすると、装置本体1の下降および上昇の移動が円滑となるので好ましい。また、このスペーサーは図示しないが、上下方向に複数設けてもよい。他は前記実施の形態と同様である。
【0032】
次に、前記中空杭内面の付着物除去装置を用いて中空杭内面の付着物を除去する方法を説明する。
基本的な中空杭内面の付着物除去方法は、地盤中に中空杭14を沈設した後に、装置本体1を図1に示すようにクレーン等の重機11に吊り下げて、中空杭14の上部開口より中空杭14に挿入し、給水ポンプ6により噴出管4に水を供給し噴射口5より中空杭14内面に向けて噴射しつつ、装置本体1を下降または下降位置より上昇させ、中空杭14内面の付着物を洗浄、除去するとともに、発生した中空杭14内の泥水は排水ポンプ3で排水ホース9を介し外部に排出する方法である。
【0033】
この方法を、中掘り工法において実施した例を、図5と共に説明する。図5は、中掘り工法によって打設される中空杭の内面付着物の除去方法を工程順(a)(b)(c)(d)(e)に示す断面説明図である。
まず、地上に立設した中空杭14の中にスクリューオーガ16を同心的に挿入し、施工機(図示省略)においてスクリューオーガ16を回転させて掘削しつつ中空杭14を圧入して、地盤G中に沈設する。図5(a)はこのようにして中空杭14が地盤G中に所定の深度まで進入された状態を示す。この施工では、中空杭14の頂部には、中空杭14を施工機(図示省略)に連結し、圧入したり引き抜いたりするためにヤットコ15が取付けられている。本例では、中空杭14は直径1m、長さ6mの鋼管杭であり、その頂部に2mのヤットコ15が取付けられている場合を示している。
次に、中空杭14が図5(a)に示すように所定の深度に達したら、中空杭14の圧入を停止すると共に、図5(b)に示すようにスクリューオーガ16を引き抜いて地上に回収する。
このようにして中空杭14が沈設されたら、次に、図1に示すように装置本体1をクレーン等の重機11に吊り下げて、沈設した中空杭14の中に挿入し、給水ポンプ6により噴出管4に加圧水を供給し、噴射口5より中空杭14の内面に向けて噴射しつつ、装置本体1を下降または下降位置より上昇させ、中空杭14内面の付着物を洗浄除去する。図5(c)はこの様子を示している。
【0034】
この加圧水を噴射しての洗浄除去工程は、給水ポンプ6により加圧水を供給し噴射口5より中空杭14内面に向けて噴射しつつ中空杭14の上部より深度方向(除去範囲まで)に順次下降させる工程、あるいは給水ポンプ6により加圧水を供給し噴射口5より中空杭14内面に向けて噴射しつつ中空杭14の上部より深度方向(除去範囲まで)に順次下降させる工程及び下降位置より上部方向に順次上昇させる行程を、複数回繰り返してもよい。これにより、中空杭14内面の付着物は確実に洗浄除去される。この作業中に洗浄除去した泥水で、装置本体1の噴射口5が水没するような時は、排水ポンプ3で排水しつつ洗浄除去する。
次に、中空杭14内面の付着物が洗浄除去できたら、水の供給を停止し、図5(d)に示すように中空杭14内の泥水を排水ポンプ3にて排水して、洗浄除去が完了する。最後に、洗浄除去が完了したら、装置本体1を中空杭14内より引き揚げ、地上に回収すると共に、図5(e)に示すように中空杭14内面の付着物洗浄除去状態を目視確認し、付着物の除去残りがなければ除去作業が完了する。
【0035】
ここでの加圧水を噴射しての洗浄除去工程および排水工程のサイクルは、特に制限されるものではなく、装置本体1を下降させつつ噴射口5より加圧水を中空杭14内面に向けて噴射し洗浄除去する工程、装置本体1を下降位置より上昇させつつ噴射口5より加圧水を中空杭14内面に向けて噴射する工程および排水工程は、適宜組み合わせて実施すればよい。また、この時の装置本体1の下降および上昇の速度や排水時間も最適の範囲で実施する。
【0036】
特に、噴射口5で中空杭14内面に向けて噴射する加圧水(洗浄水)の吐出圧力は高く、かつ吐出量も多いのが、洗浄力が高くなるのでよいが、高くするには給水ポンプ6として高圧グラウトポンプ等が必要となる不都合が生ずる。この発明の中空杭14内面の付着物除去程度では、加圧水(洗浄水)の吐出圧力は、0.1MPa〜1MPaの範囲でよく、0.3MPa以上が特に好ましい。1MPa程度であれば、給水ポンプ6として低圧グラウトポンプでの対応が可能となる、また、上記吐出圧力を確保するために、直径1mの中空杭に対して円周長さ2.65mの噴出管4に、口径φ8mmの噴射口5を16個一定間隔で設けた場合、加圧水(洗浄水)の吐出量は毎分400リットル程度であり、低圧グラウトポンプでの対応が可能となるので好ましい。
【0037】
また、この中空杭内面の付着物除去において発生した泥水は、排水ポンプ3にて排水ホース9を介し沈殿槽に排水すると、ここで土砂等の混入物を沈殿させた水を、洗浄水として再利用することが可能となるので好ましい。また、中空杭内面の付着物を除去して生じた泥水状の土砂やソイルセメント等は、排水ポンプ(水中ポンプ)3にで排水ホース9を介しピット等に排出すると、現場を汚さず、作業環境を良好とすることができるし、自然環境も汚染しないので好ましい。
【0038】
さらに、中空杭14内面の付着物洗浄除去作業が終了した後(前記図5(e)の工程終了後)に、ヤットコ15部分を埋め戻す場合がある。その場合には、中空杭14の上部開口を杭蓋で閉塞する。
図6は、杭蓋の一例を示す斜視図、図7は、杭蓋を取付けた状態を示す断面図、図8は、図7の部分拡大斜視図である。
この杭蓋17は、中空杭14の内径と略同径の外径で同形状の蓋本体18と、該蓋本体18の下面外側に垂下されたズレ止め部材19と、蓋本体18の上面に突設された吊り金具20とより構成されている。一方、中空杭14の上方内周面には、杭蓋17を受け止める蓋受け部材21が円周方向に沿って環状に設けられている。杭蓋17の蓋本体18は、中空杭14の内径と略同径の外径形状となっているので、杭蓋17は、中空杭14の上部開口に取付けると、図7および図8に示すように中空杭14の中空内に入り、蓋本体18の下面外周が蓋受け部材21に受け止められ閉塞する。従って、蓋受け部材21の取付位置は、中空杭14の上方で杭蓋17を取付けた時に外れず、しかも後付けのヤットコの内周面が杭蓋17に当たらない位置が好ましい。
また、杭蓋17で中空杭14を閉塞した時に、ズレ止め部材19は、図7および図8に示すように環状の蓋受け部材21の内側でその内周面に接する格好で位置し、ヤットコ15部分が土砂で埋め戻される際に、土砂の衝撃や偏荷重で杭蓋17がひっくり返ったり、ズレるのを防止する。従って、ズレ止め部材19は、蓋本体18下面の外周縁より蓋受け部材21の肉厚hと略同し幅だけ内側に入った位置に垂設される。このズレ止め部材19は、蓋本体18の下面外周に沿って所定間隔で複数が垂設される。本例では所定間隔(円周方向に90°の間隔)で4個設けた場合を示している。なお、ズレ止め部材19は、図面に示すように下方側をテーパ面19aにしておくと、杭蓋17の取付け時に、蓋受け部材21内にガイドして容易に取付けることができるので好ましい。
また、吊り金具20は、杭蓋17を取り付けたり、取り外す際に、紐やワイヤを挿通したり、フックを掛けたりして吊り下げる時に使用するものである。
【0039】
しかして、この杭蓋17は、図7に示すように中空杭14の上部開口に装着すると、蓋本体18が中空杭14の中空内周面と隙間がほとんどない状態で挿入され、蓋受け部材21に受け止められ、中空杭14の中空部(開口)を閉塞する。この時、ズレ止め部材19は、環状の蓋受け部材21の内側でその内周面に接する位置となる。従って、土砂で埋め戻されても、杭蓋17は、土砂の衝撃や偏荷重でひっくり返ったり、ズレるのが防止されると共に、埋め戻された土砂の荷重で蓋本体18が蓋受け部材21に押し付けられ密着し、確実に閉塞する。
【0040】
なお、前記実施の形態は、この発明を制限するものではなく、この発明は、要旨を逸脱しない範囲において種々の変形が許容される。
【産業上の利用可能性】
【0041】
この発明の中空杭内面の付着物除去装置およびその装置を用いた中空杭内面の付着物除去方法は、中空杭内面の付着物の除去に好適であるが、中空杭の杭頭部に存在する不要な液状ないしゲル状のセメントミルク、スライム等の不要物の除去にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明の実施の形態に係る中空杭内面の付着物除去装置を示す斜視図である。
【図2】この発明の実施の形態に係る中空杭内面の付着物除去装置を示す断面図である。
【図3】この発明の他の実施の形態に係る中空杭内面の付着物除去装置を示す斜視図である。
【図4】この発明の他の実施の形態に係る中空杭内面の付着物除去装置を示す断面図である。
【図5】中掘り工法によって打設された中空杭の内面付着物の除去方法を工程順(a)(b)(c)(d)(e)に示す断面説明図である。
【図6】杭蓋の一例を示す斜視図である。
【図7】杭蓋を取付けた状態を示す断面図である。
【図8】図7の部分拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
1 装置本体
2 機枠
2a 内筒
2b 外筒
2c 連結部材
3 排水ポンプ
3a 吸水口
4 噴出管
5 噴射口
6 給水ポンプ
7 給水ホース
8 貯水槽
9 排水ホース
10 吊下げ手段
11 クレーン等の重機
12 泥水
13 スペーサー
13a 車輪
14 中空杭
15 ヤットコ
16 スクリューオーガ
17 杭蓋
18 蓋本体
19 ズレ止め部材
20 吊り金具
21 蓋受け部材
G 地盤



【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水ポンプを搭載する機枠の外周に、噴射口を外側に向けて複数配設する噴出管を環状に設けた装置本体が、中空杭の中空内に挿入可能となっており、前記噴出管には給水ホースを介し外部の給水ポンプに連結されていることを特徴とする中空杭内面の付着物除去装置。
【請求項2】
前記噴射口は、排水ポンプの吸水口の位置より高い位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載の中空杭内面の付着物除去装置。
【請求項3】
前記機枠には、噴射口と中空杭内面との距離を略一定に保つためのスペーサーが設けられていることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の中空杭内面の付着物除去装置。
【請求項4】
請求項1乃3のいずれかに記載の中空杭内面の付着物除去装置を用いて中空杭内面の付着物除去方法であって、
地盤中に中空杭を打設した後に、装置本体を吊り下げて上部開口より中空杭内に挿入し、給水ポンプにより噴出管に水を供給し噴射口より中空杭内面に向けて噴射しつつ、装置本体を下降または下降位置より上昇させ、中空杭内面の付着物を洗浄除去するとともに、発生した中空杭内の泥水を排水ポンプにより排水可能にすることを特徴とする中空杭内面の付着物除去方法。
【請求項5】
中空杭内に吊り下げた装置本体を、給水ポンプにより水を供給し噴射口より中空杭内面に向けて噴射しつつ、中空杭の上部より深度方向に順次下降させる工程及び下降位置より上部方向に順次上昇させる行程を、複数回繰り返すことを特徴とする請求項4記載の中空杭内面の付着物除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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