説明

中空構造部における低温発泡性エポキシ樹脂の使用

本発明は、強化する中空構造部の選択した部分に一液型または二液型の発泡硬化性エポキシ樹脂組成物を導入し、20℃〜100℃以上の範囲の温度に加熱することによって組成物を発泡させながら硬化する、中空構造部を有する基材の強化方法またはそのような基材へのインサートの固定方法であって、組成物が少なくとも1種の下記成分:a)少なくとも1種の反応性エポキシ基含有エポキシ樹脂プレポリマー、b)少なくとも1種の有機カルバミン酸アンモニウム、好ましくは、20℃〜100℃以上の範囲の温度で1時間以内にカルバメートとして結合されたCOの少なくとも25%を放出する有機カルバミン酸アンモニウムを含有する方法;基材に固定するためのインサートであって、基材内に固定するインサートの一部がそのような発泡硬化性組成物によって少なくとも部分的に包囲されているインサート;および中空構造部を有する基材を含むかまたは中空構造部を有する基材からなる物品であって、組成物を用いて、基材が強化されているかまたは挿入されたインサートを有する物品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温(好ましくは100℃までの温度)で重合発泡性であるエポキシ樹脂組成物の新規な使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡および同時の硬化は、エポキシ樹脂モノマーまたはプレポリマー(以下において、「エポキシ樹脂モノマーまたはプレポリマー」は、まとめて用語「エポキシ樹脂プレポリマー」とする)にカルバミン酸アンモニウム塩を潜硬化剤として添加することに基づく。本発明の目的にとって好ましいカルバミン酸アンモニウム塩は、100℃未満の温度でCOを放出し、材料を発泡させる。この過程で生じる遊離アミンは、エポキシ樹脂プレポリマーに対する硬化剤として作用する。本発明の1つの態様では、中空構造部を有する基材を、上記組成物で強化する。本発明の第二の態様では、中空構造部を有する基材において、ネジ、フックなどまたはネジ棒を固定するための雌ネジを伴ってまたは伴わずに、例えばスリーブのようなインサートを固定するために上記組成物を使用する。
【0003】
本発明において、中空構造とは、第一に、ほぼ一定の間隔で配置された空洞を有する構造、例えば固体フォームまたは気泡構造、例えばハニカム構造などであると理解される。第二に、空洞は、より大きい寸法の一貫した容積、例えば、パイプ、中空部位または一次産品の内部であり得る。空洞は、典型的には0.1〜100mm、特に1〜30mmの範囲に直径を有する。固体フォームまたは気泡構造、例えばハニカム構造の場合、1〜10mm、特に1〜5mmの直径を有する気泡が生じることがあるが、充填すべきより大きい空洞を穿孔によって形成してもよい。基材のための材料は、例えば、金属、プラスチック、板材などからなってよい。そのような基材は、例えば、輸送機関において、特に軽量素材として造船および航空機製造において、例えば、航空機または船のための内装材(特に航空機の手荷物入れ)の製造のために使用される。
【0004】
本発明では、以下の反応スキームに示すように、有機アミンがCOを可逆的に吸収してカルバミン酸を生成し、カルバミン酸が自己中和反応において更なるアミンと反応して有機カルバミン酸アンモニウム塩を生成する、既知の反応を使用する。カルバミン酸を生成するアミンは、一級または二級であり、中和用アミンは、一級、二級または三級であってよい。多官能性アミンの場合、酸−塩基反応が分子内または分子間で起こることがある。しかしながら、出発物質の遊離アミン基に対して0.5CO当量しか反応することができない。
【化1】

【0005】
エポキシ樹脂を発泡および硬化させるためのそのようなカルバメートの使用は、US−A−3,320,187から知られている。同特許公報によれば、発泡硬化エポキシ樹脂は、例えば、航空機産業における充填材として、断熱材として、または注封材料として使用される。
【0006】
樹脂系のための発泡性硬化剤としての有機カルバメートの使用は、US−A−3,425,964にも記載されている。そのような有機カルバメートは、例えば、フィルム、塗料または接着剤の製造において使用することができる。更なる用途は、電子部品の注封、或いは包装材料または絶縁材料としての使用である。この目的のために、例えば発泡エポキシ樹脂を使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US−A−3,320,187
【特許文献2】US−A−3,425,964
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、20〜100℃の範囲の温度でカルバメートを用いることにより発泡および硬化させることができるエポキシ樹脂の用途の範囲を拡げる。より高い硬化温度も可能ではあるが、本発明の利点にはほとんど影響しない。
【0009】
本発明は更に、これまでは大抵、通常の二液型接着剤を用いて実施されてきた、中空構造部におけるインサートの固定を改善する。発泡硬化材料は非発泡接着剤よりはるかに低い密度を有することができるので、本発明を用いることにより、軽量構造物において必要とされる接着剤の量を少なくすることができる。
【0010】
更に、発泡性接着材料の別の利点は、変動できる発泡によって空洞寸法の許容差および違いを補償する能力にある。これに対し、従来の非発泡性接着材料の場合は、接着剤の量を調節しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第一の態様では、本発明は、強化する中空構造部の選択した部分に発泡硬化性エポキシ樹脂組成物を導入し、20℃〜100℃以上、好ましくは80℃まで、特に65℃までの範囲の温度に加熱することによって組成物を発泡させながら硬化する、中空構造部を有する基材の強化方法であって、組成物が少なくとも下記成分:
a)反応性エポキシ基を含有するエポキシ樹脂プレポリマー(この用語は、先に示したように、モノマーも包含する)の少なくとも1種、
b)少なくとも1種の有機カルバミン酸アンモニウム、好ましくは、20℃〜100℃以上、好ましくは80℃まで、特に65℃までの範囲の温度で1時間以内にカルバメートとして結合されたCOの少なくとも25%を放出する有機カルバミン酸アンモニウム
を含有する方法に関する。
【0012】
別の態様では、本発明は、インサートを固定する中空構造の選択した部分に発泡硬化性エポキシ樹脂組成物を導入し、発泡硬化性組成物の遅くとも発泡硬化後に中空構造部内に固定するインサートの一部が発泡硬化性組成物に入り込むようにインサートを中空構造部の同じ部分に挿入し、20℃〜100℃以上、好ましくは80℃まで、特に65℃までの範囲の温度に加熱することによって組成物を発泡させながら硬化する、中空構造部を有する基材へのインサートの固定方法であって、組成物が少なくとも下記成分:
a)反応性エポキシ基を含有するエポキシ樹脂プレポリマーの少なくとも1種、
b)少なくとも1種の有機カルバミン酸アンモニウム、好ましくは、20℃〜100℃以上、好ましくは80℃まで、特に65℃までの範囲の温度で1時間以内にカルバメートとして結合されたCOの少なくとも25%を放出する有機カルバミン酸アンモニウム
を含有する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明によれば、用語「有機カルバミン酸アンモニウム」は、少なくとも1つのカルバメートアニオンおよび少なくとも1つの有機アンモニウム対イオンを含有する化合物であると理解される。
【0014】
本発明の方法が発泡硬化エポキシ樹脂をもたらすということは、カルバメートから放出されたCOが部分的に、好ましくは可能な限り完全に、ガス入り空洞として硬化組成物に取り込まれたままになることを前提としている。このようにして、孔を有するフォーム様構造が硬化後に得られる。アミンの選択によってこれを制御できるということを、以下により詳細に説明する。
【0015】
カルバメートから放出されたアミンと重合反応が起こるよう、エポキシ樹脂プレポリマーは、少なくとも二官能性でなければならない。即ち、少なくとも2つの反応性エポキシ基を有さなければならない。エポキシ樹脂プレポリマーは、モノマーとして、または既に予備重合されたプレポリマーとして使用することができる。いずれも、本明細書では、用語「エポキシ樹脂プレポリマー」または「エポキシ樹脂」に包含される。
【0016】
以下において「エポキシ樹脂」とも称されるエポキシ樹脂プレポリマーは、基本的に、飽和、不飽和、環式または非環式、脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式のポリエポキシ化合物であってよい。
【0017】
本発明における適当なエポキシ樹脂は、例えば好ましくは、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂、ビスフェノールS型のエポキシ樹脂、ビスフェノールF型のエポキシ樹脂、フェノール−ノボラック型のエポキシ樹脂、クレゾール−ノボラック型のエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンと種々のフェノールとの反応により得られる種々のジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のエポキシ化生成物、2,2’,6,6’−テトラメチルビフェノールのエポキシ化生成物、芳香族エポキシ樹脂、例えば、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂およびフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルおよび1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、脂環式エポキシ樹脂、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートおよびビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、並びに複素環を有するエポキシ樹脂、例えば、トリグリシジルイソシアヌレートから選択される。特に、エポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの反応生成物、フェノールとホルムアルデヒド(ノボラック樹脂)とエピクロロヒドリンとの反応生成物、グリシジルエステル、並びにエピクロロヒドリンとp−アミノフェノールとの反応生成物を包含する。
【0018】
エピクロロヒドリン(またはエピブロモヒドリン)との反応により適当なエポキシ樹脂プレポリマーを生じる別のポリフェノールは、レゾルシノール、1,2−ジヒドロキシベンゼン、ヒドロキノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタンおよび1,5−ヒドロキシナフタレンである。
【0019】
別の適当なエポキシプレポリマーは、ポリアルコールまたはジアミンのポリグリシジルエーテルである。そのようなポリグリシジルエーテルは、ポリアルコール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールまたはトリメチロールプロパンに由来する。
【0020】
市販されている別の好ましいエポキシ樹脂は、特に、オクタデシレンオキシド、エピクロロヒドリン、スチレンオキシド、ビニルシクロヘキセンオキシド、グリシドール、グリシジルメタクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.から商品名"Epon 828"、"Epon 825"、"Epon 1004"および"Epon 1010"で、およびDow Chemical Co.から商品名"DER-331"、"DER-332"、"DER-334"、"DER-732"および"DER-736"で入手可能なもの)、ビニルシクロヘキセンジオキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキセンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、脂肪族ポリプロピレングリコール変性エポキシド、ジペンテンジオキシド、エポキシ化ポリブタジエン(例えば、Sartomerからの製品Krasol)、エポキシ官能基含有シリコーン樹脂、難燃性エポキシ樹脂(例えば、Dow Chemical Co.から入手可能なビスフェノール型の臭素化エポキシ樹脂"DER-580")、フェノール−ホルムアルデヒドノボラックの1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(例えば、Dow Chemical Co.からの"DEN-431"および"DEN-438")、並びにレゾルシノールジグリシジルエーテル(例えば、Koppers Company Inc.からの"Kopoxite")、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサンメタジオキサン、ビニルシクロヘキセンモノオキシド、1,2−エポキシヘキサデカン、アルキルグリシジルエーテル、例えばC8−C10アルキルグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.からの"HELOXY Modifier 7")、C12−C14アルキルグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.からの"HELOXY Modifier 8")、ブチルグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.からの"HELOXY Modifier 61")、クレシルグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.からの"HELOXY Modifier 62")、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.からの"HELOXY Modifier 65")、多官能性グリシジルエーテル、例えば1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.からの"HELOXY Modifier 67")、ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.からの"HELOXY Modifier 68")、シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.からの"HELOXY Modifier 107")、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.からの"HELOXY Modifier 44")、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.からの"HELOXY Modifier 48")、脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.からの"HELOXY Modifier 84")、ポリグリコールジエポキシド(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.からの"HELOXY Modifier 32")、ビスフェノールFエポキシド(例えば、Huntsman Int. LLCからの"EPN-1138"または"GY-281")、9,9−ビス−4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニルフルオレノン(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.からの"Epon 1079")を包含する。
【0021】
別の好ましい市販化合物は、例えば、Huntsman Int. LLCからのAralditeTM 6010、AralditeTM GY-281TM、AralditeTM ECN-1273、AralditeTM ECN-1280、AralditeTM MY-720、RD-2;Dow Chemical Co.からのDENTM 432、DENTM 438、DENTM 485、Hexion Specialty Chemicals Inc.からのEponTM 812、826、830、834、836、871、872、1001、1031など、およびHexion Specialty Chemicals Inc.からのHPTTM 1071、HPTTM 1079など、ノボラック樹脂としての例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.からのEpi-RezTM 5132、Sumitomo ChemicalからのESCN-001、Dow Chemical Co.からのQuatrex 5010、Nippon KayakuからのRE 305S、DaiNipon Ink ChemistryからのEpiclonTM N673、またはHexion Specialty Chemicals Inc.からのEpicoteTM 152から選択される。
【0022】
更に、少なくとも少ない割合で以下のポリエポキシドを使用することができる:ポリカルボン酸のポリグリシジルエステル、例えば、グリシドールまたはエピクロロヒドリンと脂肪族または芳香族ポリカルボン酸(例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、テレフタル酸または二量体脂肪酸)との反応生成物。
【0023】
適当なポリエポキシドのエポキシ当量は、150〜50,000の間、好ましくは170〜5000の間で変化することができる。例えば、475〜550g/eqのエポキシ当量、即ち1820〜2110mmol/gの範囲のエポキシ基含量を有するエピクロロヒドリン/ビスフェノールA系エポキシ樹脂が適している。RPM 108-Cに従って測定された軟化点は、75〜85℃の範囲である。エピクロロヒドリンとビスフェノールAまたはビスフェノールFとの反応生成物を、室温で液体であるエポキシプレポリマーとして使用することが好ましい。それらは典型的には、約150〜約480の範囲にエポキシ当量を有する。
【0024】
本発明の使用のための組成物は、一液型組成または二液型組成であってよい。二液型組成の1つの可能な態様では、一方の成分がエポキシ樹脂プレポリマーを含有し、もう一方の成分が有機カルバミン酸アンモニウムを含有する。しかしながら、これは、必ずしもこうでなければならないわけではない。カルバメートが100%配合によって潜伏状態に転換する、即ち十分に低い反応性を有するならば、カルバメートは、エポキシドと混合された一液型として存在することができる。第二の成分は、反応性アミンを含有してよく、カルバメートは、反応熱によってまたは加熱によって分解される。2つの成分を適用直前に混合できるようにするために、両成分が室温(22℃)で液体であることが好ましい。従って、この態様では、22℃で液体であるエポキシ樹脂プレポリマーの少なくとも1種を含有する組成物が好ましい。
【0025】
一液型の態様では、本発明の組成物は、液体ではなく、むしろ軟質状態と塑性固体に混練可能な状態の間であることが好ましい。プラスチック成形できるように混練可能な組成物を得るために、組成物が、22℃で液体であるエポキシ樹脂プレポリマーの少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0026】
同時に、発泡硬化温度で組成物の粘度は、生じたCOが少なくとも部分的に、好ましくは可能な限り完全に気泡として組成物内に保持されるのに十分なほど高くなければならない。これは、組成物が、22℃で蝋質または固体であるエポキシ樹脂プレポリマーの少なくとも1種を含有する場合に達成することができる。組成物が、22℃で液体であるエポキシプレポリマーと22℃で蝋質または固体であるエポキシプレポリマーの両方を含有することが特に好ましい。
【0027】
組成物は、好ましくは5重量%〜90重量%、特に20重量%〜80重量%のエポキシプレポリマーを含有する。エポキシプレポリマーは、22℃で固体または蝋質であるエポキシプレポリマーとして、22℃で液体であるエポキシプレポリマーとして、または異なったエポキシプレポリマーの混合物として存在してよい。
【0028】
本明細書において、重量%で示した量は一般に、組成物全体の量に対する量であると理解すべきであり、合計100重量%となる。二液型系の場合、その量は、2つの成分を混合した後の組成物の質量に対する。
【0029】
カルバメートアニオンは、好ましくは、式(I):
【化2】

[式中、R1は水素または有機基を示し、R2は有機基を示す]
で示される構造を有する。R1が水素を示さないのであれば、基R1およびR2は同じまたは異なっていてよい。第一級アミンのカルバメート塩が好ましい。従って、R1が水素を示すことが好ましい。従って、式(II):
【化3】

[式中、Rは有機基を示す]
で示される構造を有するカルバメートアニオンが好ましい。基Rの性質は、2つの点で、カルバメートの反応性および対応する遊離アミンの反応性を決定する。第一に、基Rは、いかに容易に有機アミンがCOを吸収してカルバメートを生成し、温度上昇に伴ってCOを再び放出してアミンを生成するかを決める。カルバメート塩の安定性は、2つの因子によってほぼ決まる。まず、遊離アミンの高い塩基性度は、中間体として生じたカルバミン酸との高温発熱中和反応をもたらす。それに応じて、出発物質を回復するためには、熱力学原理に従って、高いエネルギー障壁を乗り越えなければならない。換言すれば、カルバメート塩は高い熱安定性を有する。次に、カルバメート塩のクーロン相互作用エネルギーを乗り越えるには、相当な量のエネルギーが必要とされる。この影響は特に、小さい対称の遊離アミンを用いた場合に見られ、高い熱安定性が同様にもたらされる。本発明の目的にとって適当なアミンは、所望の温度で1時間以内にカルバメートとして結合されたCOの少なくとも25%を放出するアミンである。
【0030】
第二に、基Rの性質は、エポキシ樹脂ポリマーに対する反応性、従って硬化特性を制御する。有機基Rが、
・カルバメート基に転化できる1つ以上の更なるアミノ基またはアルキルアミノ基を含有してよい1〜100個の炭素原子を有する、アルキル基またはアリールアルキル基、
・更なるアミノ基がカルバメート基に転化できる、ジアルキレンアミン基またはポリアルキレンアミン基、
・ポリアルキレングリコール基、
・更なるアミノ基が1つ以上のカルバメート基に同様に転化できるポリグリコールアミン基
を示してよい、式(II)で示されるカルバメートを使用することが好ましい。
【0031】
式(I)の基R2は、好ましくは、式(II)の基Rと同じ意味を有する。基R1が水素でないならば、基R1と式(II)の基Rが同じ意味を有することが好ましい。
【0032】
基R1またはR2の少なくとも一方が
・ポリアルキレングリコール基または
・更なるアミノ基が1つ以上のカルバメート基に同様に転化できるポリグリコールアミン基
を示す、式(I)で示されるカルバメートアニオンが、本発明において特に好ましい。なぜなら、そのようなカルバメートアニオンは、エポキシ樹脂に対する向上した反応性、従って向上した硬化特性によって区別されるからである。基R1またはR2の少なくとも一方がポリアルキレングリコール基を示す、式(I)で示されるカルバメートアニオンが、本発明において最も好ましい。
【0033】
本発明では、2つまたは3つのアミノ基を含有するアミンのカルバメートを少なくとも少ない割合で使用する。これによって、硬化組成物の架橋挙動および機械的性質を制御することができる。
【0034】
カルバメートのための基剤として適当なアミンの例は以下である:トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、アミノエチルピペラジン、ポリエチレングリコールジアミン、(例えばJeffamineTM DおよびTとして知られているような)ポリプロピレングリコールジアミンおよびトリアミン、ポリテトラヒドロフランポリアミンおよびポリテトラヒドロフラン/ポリプロピレングリコールポリアミン、ポリアミドアミン、アリールポリアミン、例えば4,4’−ジアミノジフェニルメタン、アルキレンポリアミン、例えばポリエチレンポリアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン、並びにエポキシ樹脂用硬化剤として当業者に知られている別のアミン。
【0035】
有機アンモニウム対イオンは基本的に、任意の有機アミンから生成することができる。しかしながら、応用特性の面で、カルバメート生成に関与した有機アミンと同じ有機アミンからアンモニウム対イオンを生成することが、本発明では特に有利なことがわかっている。
【0036】
そのようなカルバメートの製造方法は、先に挙げた文献US−A−3,320,187およびUS−A−3,425,964から知られている。
【0037】
原初のアミノ基の一部しかカルバメート生成のために利用されないよう、アミノ基の一部が既にエポキシドと反応されたジアミンまたはポリアミンを使用することもできる。そのようなジアミンまたはポリアミンは、WO 2007/025007の第17頁第4行〜第19頁第25行に記載されているように製造することができる。しかしながら、反応後にカルバメート生成のための遊離アミノ基を有するためには、エポキシ基に対して化学量論的に過剰にアミンを使用しなければならない。ビスフェノールのジグリシジルエーテル、特にビスフェノールAのジグリシジルエーテルを、エポキシドとして使用することが好ましい。
【0038】
逆に、カルバメートを生成するためのジアミンまたはポリアミンとCOとの部分反応後に、カルバメートに反応していないアミノ基を、エポキシドの大部分との混合前に(好ましくは単官能性または二官能性)エポキシドと反応させることが可能であり、硬化反応の良好な制御の面から好ましい場合さえある。この例を、以下の反応スキームで示す。
【化4】

【0039】
200未満の範囲に分子量を有する多官能性アミンがしばしば、最高100℃、特に最高65℃の温度で僅かな量のCOしか放出しないカルバメートを生成することが見出された。最高100℃、特に最高65℃の発泡硬化温度が(より高い温度が除外されないとしても)本発明において望ましいので、そのようなアミンは本発明にとってあまり適さない。更に、例えばJeffamine型のようなポリエーテルアミン系硬化剤の群について、約1800g/mol超、特に3000g/mol超、とりわけ4000g/mol超の分子量を有するアミンは所望通りにカルバメートとしてCOを結合でき、所望の温度範囲でCOを再び放出できるが、そのようなアミンはしばしばエポキシ樹脂プレポリマーに関して化学的に非常に不活性であるので、気泡として更なるCOが含まれるよう組成物が十分硬化する前にCOのほとんどが組成物から抜け出してしまうことが見出された。従って、本発明の方法には、カルバメートの生成前に約200〜約4000g/mol、好ましくは約3000g/molまで、特に約1800g/molまでの分子量を有するアミンを使用して、エポキシ樹脂を硬化させることが特に好ましい。しかしながら、塩基性度に依存して、上記した特に好ましい範囲より小さいまたは大きい分子量を有するアミンが適していることもある。基本的に適当なアミン群は一般に、約60g/mol〜8000g/molの範囲に分子量を有するアミンを包含する。
【0040】
約200〜約4000g/molの範囲、好ましくは約3000g/molまで、特に約1800g/molまでの分子量を有する第一のカルバメートがカルバメート状態で存在して樹脂の発泡に使用され、最高100℃、特に最高65℃の温度での硬化に適している第二のアミンがエポキシ樹脂の硬化に使用されるよう、2つのアミンの混合物を使用することも可能である。
【0041】
組成物の適当な発泡を確実にするために、組成物は、カルバメートとして結合されたCOを最少含量含有しなければならない。従って、組成物が、組成物全体に対して少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも1重量%の、カルバメートとして結合されたCOを含有することが好ましい。カルバメートの対応する量は、カルバメートの基となるアミンの分子量から決定することができる。組成物は、完全なアンモニウム塩として、好ましくは5〜95重量%、特に好ましくは10〜60重量%の有機カルバミン酸アンモニウムを含有する。組成物は、カルバメートアニオンおよび有機対イオンに加えて、遊離アミン分子を含有することもできる。結果として一般に、硬化が促進される。これは、特に組成物が二液型形態であれば好ましい場合がある。組成物全体に対する遊離アミンの含量は、0〜90重量%、好ましくは1〜60重量%であってよい。
【0042】
組成物は、エポキシ接着剤のために知られているような、強化剤(耐衝撃性改良剤)を含有することもできる。強化剤の使用により、本発明に従って製造された強化中空構造部の安定性が向上するか、または中空構造部に固定されたインサートの付着性が向上する。強化剤は例えば、ゴム、特にゴムナノ粒子としてのゴム、熱可塑性ポリマー、例えば熱可塑性ポリウレタン、有機ポリマーシェルと有機または無機コアを有するコア−シェル粒子、或いはブロックコポリマーであってよい。その例は以下である:固体ゴム、例えばスチレン−ブタジエンゴムおよびニトリル−ブタジエンゴム、またはポリスチレンポリマー、例えばSBSブロックコポリマー、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、EPDM、合成または天然イソプレンゴム、ブチルゴムまたはポリウレタンゴム。イソプレン−アクリロニトリルコポリマーまたはブタジエン−アクリロニトリルコポリマーに基づく部分架橋固体ゴム、エポキシ−ポリウレタンハイブリッド、ヒドロキシル末端ポリオキシアルキレン(例えばポリプロピレングリコールまたはポリテトラヒドロフランジオール)に由来するポリウレタン、スチレン−ブタジエン−メチルメタクリレートブロックコポリマー、メチルメタクリレート−ブタジエン−メチルメタクリレートブロックコポリマーおよびブタジエン−メチルメタクリレートブロックコポリマー、および好ましくはポリエステル鎖含有ポリウレタンから選択される熱可塑性非反応性ポリウレタンが特に適している。
【0043】
本発明の組成物は、上記したポリマーおよびブロックコポリマーに加えてまたは代えて、強化剤としてゴム粒子を含有することができる。ゴム粒子も同様に、特に0℃未満の温度で、硬化組成物の衝撃強さの向上に寄与する。このゴム粒子は、好ましくはコア−シェル構造を有する。本発明では、コア−シェル構造を有するゴム粒子が、0℃未満のガラス転移温度を有するポリマー材料から製造されたコアと、25℃超のガラス転移温度を有するポリマー材料から製造されたシェルを有することが好ましい。特に適当なコア−シェル構造を有するゴム粒子は、ジエンホモポリマー、ジエンコポリマーまたはポリシロキサンエラストマーから製造されたコアおよび/またはアクリル(メタ)アクリレートホモポリマーまたはコポリマーから製造されたシェルを有してよい。
【0044】
本発明の組成物は更に、強化剤として、有機ポリマーから製造されたシェルを有する無機粒子を含有することができる。この有機ポリマーは、好ましくは、ポリスチレンから、或いはアクリル酸および/またはメタクリル酸のホモポリマーまたはコポリマーから選択される。
【0045】
本発明の使用のための組成物は更に、0〜30重量%、好ましくは1〜20重量%の無機充填材、例えば、様々な粉砕または沈降チョーク、カーボンブラック、炭酸カルシウムマグネシウム、バライト、特にアルミニウムマグネシウムカルシウムシリケート型の珪質充填材、例えば、ウォラストナイト、クロライトを含有することができる。例えば、熱分解法シリカ、ベントナイト、或いはフィブリル化ファイバーまたはパルプチョップトファイバーを、0.1〜5%の範囲でレオロジー添加剤として添加することができる。その添加は特に、組成物が硬化するにつれて、生じたCOが気泡として組成物中に保持されるよう支援する。
【0046】
重量を減少させる目的で、組成物は、先に記載した「通常の」充填材に加えてまたは代えて、軽量充填材を含有することができ、軽量充填材は、例えば、中空金属ビーズ、例えば中空スチールビーズ、中空ガラスビーズ、フライアッシュ(フィライト)、フェノール樹脂、エポキシ樹脂またはポリエステルに基づく中空プラスチックビーズ、壁物質が(メタ)アクリル酸エステルコポリマー、ポリスチレン、スチレン(メタ)アクリレートコポリマー、特に塩化ポリビニリデン、並びに塩化ビニリデンとアクリロニトリルおよび/または(メタ)アクリル酸エステルとのコポリマーから製造されている発泡中空マイクロビーズ、中空セラミックビーズ、或いは天然起源の有機軽量充填材 、例えば粉砕堅果殻、例えば、カシューナッツ、ココナッツまたはピーナッツの殻、並びにコルク粗びき粉またはコルク粉末からなる群から選択することができる。
【0047】
また、更なる助剤および活性成分は、例えば、柔軟剤、接着促進剤、更なる充填材、顔料および難燃剤を包含することができ、難燃剤は特に、航空機製造における用途にとって重要な場合がある。
【0048】
二液型系の場合は特に、組成物がカルバメートからのCOの放出のための促進剤を含有するならば、発泡および/または硬化を促進することができる。そのような促進剤の例は、特に有機酸、例えば、乳酸、クエン酸、酒石酸などである。スルホン酸またはホスホン酸も適している。放出されるCOの総量に対して化学量論的に少ない量の酸を使用することが好ましい。
【0049】
本発明の方法では、組成物が下記成分:
0重量%〜90重量%、好ましくは5重量%〜80重量%、特に20重量%〜80重量%の、22℃で固体または蝋質であるエポキシプレポリマー、
5重量%〜90重量%、好ましくは20重量%〜80重量%の、22℃で液体であるエポキシプレポリマー、
5重量%〜95重量%、好ましくは10重量%〜60重量%の有機カルバミン酸アンモニウム、
0重量%〜90重量%、好ましくは1重量%〜60重量%の遊離アミン、
0重量%〜70重量%、好ましくは1重量%〜50重量%の強化剤、
0重量%〜30重量%、好ましくは1重量%〜20重量%の無機充填材
を含有し、上記した重量%単位の量は組成物の総重量に対する量であり、成分の和は100重量%を超えず、100重量%までの残余は更なる助剤および活性成分、特に、柔軟剤、放出促進剤、接着促進剤、更なる充填材、顔料および難燃剤であってよいことが好ましい。
【0050】
先に記載したように、組成物は、一液型形態または二液型形態であってよい。二液型組成物の場合、一方の成分はエポキシプレポリマーを含有し、もう一方の成分は、場合により遊離アミンと組み合わせてよい、硬化を促進するためのカルバミン酸アンモニウムを含有する。或いは別の態様では、一方の成分はエポキシプレポリマーおよびカルバミン酸アンモニウムを含有し、もう一方の成分は遊離アミンを含有する。別の組み合わせも可能であり、その例は、エポキシプレポリマーおよびカルバメート塩が1つの成分中に存在し、遊離アミンとカルバメート塩との混合物が第二成分中に存在する態様である。
【0051】
両方の態様(一液型および二液型)において、室温(15〜25℃)であってもCOを放出するカルバミン酸アンモニウムを使用することができる。組成物の成分を混合する前、放出温度より低い温度で成分を貯蔵しなければならない。一液型組成物の場合、上記室温より高い温度(例えば30℃超または40℃超)でしかCOを放出しないカルバメートを使用することが好ましい。それでもなお、安全のために、使用前に15℃未満、好ましくは10℃未満、特に0℃未満の温度で、そのような一液型組成物を貯蔵することが好ましい。
【0052】
組成物を一液型形態で使用するのかまたは二液型形態で使用するのかにかかわらず、組成物が、22℃で液体であるエポキシプレポリマーと、22℃で固体または蝋質であるエポキシプレポリマーの両方を含有することが好ましい。組成物全体に対するエポキシプレポリマーの量が25〜40重量%の範囲であることが好ましい。
【0053】
好ましくは一液型形態である適当な組成物は、例えば、
・22℃で液体であるエポキシプレポリマー、
・22℃で固体であるエポキシプレポリマー、
・トリメチロールプロパンポリオキシプロピレントリアミンに基づく有機カルバミン酸アンモニウム(カルバメート生成前の分子量:400);CO配合度:三官能性遊離アミンに対して6.6重量%に相当する、第一級アミノ基の44%、
・充填材、特に軽量充填材、例えば中空ガラスビーズ、
・レオロジー添加剤、例えば熱分解法シリカ
を含有することができる。
【0054】
この場合、好ましい量的範囲は以下である:
・22℃で液体であるエポキシプレポリマー:25〜40重量%、
・22℃で固体であるエポキシプレポリマー:25〜40重量%、
・有機カルバミン酸アンモニウム:10〜30重量%、
・充填材、特に軽量充填材、例えば中空ガラスビーズ:5〜20重量%、
・レオロジー添加剤、例えば熱分解法シリカ:1〜10重量%。
【0055】
好ましい態様では、組成物は、上記した5つの成分からもっぱらなる。この場合、それらの合計が100重量%となるよう、個々の量を互いに調節すべきである。別の好ましい態様では、組成物は、上記した5つの成分に加えて、難燃剤を、好ましくは組成物全体に対して0.1〜60重量%の量で含有する。難燃剤の例は、赤リンまたは水酸化アルミニウムであり、赤リンは好ましくは0.1〜5重量%の量的範囲で使用することができ、水酸化アルミニウムはより多い量、例えば20〜60重量%の範囲で使用することができる。
【0056】
好ましい態様では、中空構造部を有する基材にインサートを挿入する前に、基材に孔を設け、その中に(このとき好ましくは蝋質状態または混練可能状態である)組成物を圧入し、次いで、この組成物にインサートを押し込む。続いて、組成物を硬化させる。一液型組成物を使用するならば、インサートを挿入して組成物を硬化させる前に、組成物を導入してから暫くの間(数時間または数日、低温保存するならばより長い期間)基材を一時的に保存することができる。
【0057】
別の好ましい態様では、中空構造部を有する基材に固定するインサートの少なくとも一部は、一液型形態または二液型形態の組成物によって少なくとも部分的に包囲される。この場合、基材にインサートを挿入する際に組成物が取り除かれない程度に、組成物は少なくとも固くなければならない。この態様では、製造業者がインサートに組成物を適用し、この状態で出荷することができる。その後、インサートが基材に挿入される位置でユーザーが組成物を調整する必要はない。このようにして時間を節約し、工程を簡単にすることができる。この目的のために二液型組成物を使用するならば、場合により、尚早の硬化発泡反応を防ぐために(0℃未満の)低温で被覆インサートを貯蔵する必要がある。
【0058】
例えば押出法または射出法が、インサートを組成物で包囲するのに適している。例として、インサートを適当な射出成形用型に配置し、その中で、組成物を用いた射出成形によって所望の程度まで包囲することができる。
【0059】
先に記載したように、インサートは好ましくは、雌ネジを伴ったまたは伴っていないねじ込スリーブ、或いはそのようなスリーブを含む部品である。しかしながら、別のインサートを使用することもでき、その例は、ドライブインナットまたはフランジナットである。別の要素が、これらに固定されていてもよい。しかしながら、ねじ込ロッド、フック、スクリュー、スリーブなどのようなインサートは、組成物に直接固定することもできる。
【0060】
別の態様では、本発明は、基材に固定するためのインサートであって、基材内に固定するインサートの一部が発泡硬化性エポキシ樹脂組成物によって少なくとも部分的に包囲され、20℃〜100℃以上、好ましくは80℃まで、特に65℃までの範囲の温度に加熱することによって組成物が発泡しながら硬化され、組成物が少なくとも下記成分:
a)反応性エポキシ基を含有するエポキシ樹脂プレポリマーの少なくとも1種、
b)20℃〜100℃以上、好ましくは80℃まで、特に65℃までの範囲の温度でCOを放出する有機カルバミン酸アンモニウムの少なくとも1種
を含有するインサートに関する。
【0061】
先に記載したように、インサートは、中空構造部を有する基材に挿入するために使用することができる。インサートは、先に記載したように製造することができる。組成物の好ましい組成については、本発明の方法における組成物についての先の記載が相応に適用される。
【0062】
本発明はまた、中空構造部を有する基材を含むかまたは中空構造部を有する基材からなる物品であって、先に記載した方法によって、中空構造部を有する基材が強化されているかまたはインサートを有する物品を含む。この物品は例えば、船または航空機の部品、特に航空機の手荷物入れのための部品であってよい。しかしながら、物品は一般に、船、車両、航空機のための部品、或いは日常使用する物品であってもよい。
【0063】
本発明は以下の利点をもたらす:
1)非発泡系より低い密度;
2)容積非依存性または添加許容差、および孔容積の違いに対する補償;
3)種々の意図して製造された孔の寸法に、加工物を適合させる可能性;
4)好ましい応用分野における二液型系の現行の通常の使用と比べて、単純化された工程管理および低減された汚染。
【実施例】
【0064】
カルバメートの製造方法は、文献、例えば先に記載した文献US 3425964およびUS 3320187から知られている。
【0065】
下記成分を混合することによって、下記組成を有する組成物を製造した(単位:組成物全体に対する重量%):
・22℃で液体であるエポキシプレポリマー:33.5重量%、
・22℃で固体であるエポキシプレポリマー:33.5重量%、
・トリメチロールプロパンポリオキシプロピレントリアミンに基づく有機カルバミン酸アンモニウム(カルバメート生成前の分子量:400、CO配合度:遊離アミンに対して6.6重量%に相当する、第一級アミノ基の44%):20重量%、
・中空ガラスビーズ:10重量%、
・熱分解法シリカ:3重量%。
【0066】
この組成物を、室温(22℃)で、0.3gの重量を有する円筒形部品に成形した。ハニカムサンドイッチ構造を有し、グラスファイバーフェノール樹脂プリプレグで被覆されたフェノール樹脂シートの孔に、この円筒形部品を挿入した。雌ネジを有するねじ込スリーブとしてのインサートを、この組成物に挿入した。このねじ込スリーブは、直径11mmおよび高さ1mmを有する円形上部、高さ4mmおよび直径7mmを有する円筒形軸、並びに長さ11mm、幅7mmおよび高さ1mmを有する、短辺側で丸くなった、ほぼ方形の底板からなる。このインサートを、上部の上縁まで組成物に押し込んだ。次いで、発泡および硬化させるために、60℃で1時間加熱した。22℃で7日間保存した後、基材からインサートを引き抜くのに要する引張力を測定した。この目的を達成するために、インサートの上部の直径より幾分大きい孔を有する保持板によって基材を保持した。上部を引張試験機(Zwick Z050)に接続し、0.1mm/秒の引き抜き速度で引き抜いた。インサートを引き抜くために、470Nの引張力が測定された。破壊は凝集破壊であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化する中空構造部の選択した部分に発泡硬化性エポキシ樹脂組成物を導入し、20℃〜100℃以上、好ましくは80℃まで、特に65℃までの範囲の温度に加熱することによって組成物を発泡させながら硬化する、中空構造部を有する基材の強化方法であって、組成物が少なくとも下記成分:
a)反応性エポキシ基を含有するエポキシ樹脂プレポリマーの少なくとも1種、
b)少なくとも1つのカルバメートアニオンおよび少なくとも1つの有機アンモニウム対イオンを含有する有機カルバミン酸アンモニウムの少なくとも1種
を含有する方法。
【請求項2】
インサートを固定する中空構造の選択した部分に発泡硬化性エポキシ樹脂組成物を導入し、発泡硬化性組成物の発泡硬化前または発泡硬化後に中空構造部内に固定するインサートの一部が発泡硬化性組成物に入り込むようにインサートを中空構造部の同じ部分に挿入し、20℃〜100℃以上、好ましくは80℃まで、特に65℃までの範囲の温度に加熱することによって組成物を発泡させながら硬化する、中空構造部を有する基材へのインサートの固定方法であって、組成物が少なくとも下記成分:
a)反応性エポキシ基を含有するエポキシ樹脂プレポリマーの少なくとも1種、
b)少なくとも1つのカルバメートアニオンおよび少なくとも1つの有機アンモニウム対イオンを含有する有機カルバミン酸アンモニウムの少なくとも1種
を含有する方法。
【請求項3】
有機カルバミン酸アンモニウムが、20℃〜100℃以上、好ましくは80℃まで、特に65℃までの範囲の温度で1時間以内にカルバメートとして結合されたCOの少なくとも25%を放出する有機カルバメートからなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
発泡硬化性組成物が、22℃で液体であるエポキシ樹脂プレポリマーの少なくとも1種を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
発泡硬化性組成物が、22℃で蝋質または固体であるエポキシ樹脂プレポリマーの少なくとも1種を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
カルバメートアニオンが、式(II):
【化1】

[式中、Rは有機基を表し、好ましくは、
・カルバメート基に転化できる1つ以上の更なるアミノ基またはアルキルアミノ基を含有してよい1〜100個の炭素原子を有する、アルキル基またはアリールアルキル基、
・更なるアミノ基がカルバメート基に転化できる、ジアルキレンアミン基またはポリアルキレンアミン基、
・ポリアルキレングリコール基、
・更なるアミノ基が1つ以上のカルバメート基に同様に転化できるポリグリコールアミン基
を示すことができる]
で示される構造を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
カルバメートの生成前に、アミンが60〜8000g/molの範囲、好ましくは200〜4000g/molの範囲に分子量を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
組成物が、組成物全体に対して少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも1重量%の、カルバメートとして結合されたCOを含有する、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
組成物が、カルバメートアニオンおよび有機アンモニウム対イオンに加えて遊離アミン分子を含有する、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
組成物が下記成分:
0重量%〜90重量%、好ましくは5重量%〜80重量%、特に20重量%〜80重量%の、22℃で固体または蝋質であるエポキシプレポリマー、
5重量%〜90重量%、好ましくは20重量%〜80重量%の、22℃で液体であるエポキシプレポリマー、
5重量%〜95重量%、好ましくは10重量%〜60重量%の、少なくとも1つのカルバメートアニオンおよび少なくとも1つの有機アンモニウム対イオンを含有する有機カルバミン酸アンモニウム、
0重量%〜90重量%、好ましくは1重量%〜60重量%の遊離アミン、
0重量%〜70重量%、好ましくは1重量%〜50重量%の強化剤、
0重量%〜30重量%、好ましくは1重量%〜20重量%の無機充填材
を含有し、上記した重量%単位の量は組成物の総重量に対する量であり、成分の和は100重量%を超えず、100重量%までの残余は更なる助剤および活性成分、特に、柔軟剤、放出促進剤、接着促進剤、更なる充填材、顔料および難燃剤であってよい、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
組成物が一液型で存在し、その調製後および中空構造部を有する基材へのその導入前に組成物を15℃未満、好ましくは10℃未満、特に0℃未満の温度で保持する、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
基材への挿入前に、中空構造部内に固定するインサートの一部が組成物によって少なくとも部分的に包囲され、組成物が一液型で存在する、請求項2〜11のいずれかに記載の中空構造部を有する基材へのインサートの固定方法。
【請求項13】
中空構造部内の空洞に組成物を導入し、次いで、中空構造部内に固定するインサートの一部を組成物に挿入する、請求項2〜11のいずれかに記載の中空構造部を有する基材へのインサートの固定方法。
【請求項14】
基材に固定するためのインサートであって、基材内に固定するインサートの一部が発泡硬化性エポキシ樹脂組成物によって少なくとも部分的に包囲され、20℃〜100℃以上、好ましくは80℃まで、特に65℃までの範囲の温度に加熱することによって組成物が発泡しながら硬化され、組成物が少なくとも下記成分:
a)反応性エポキシ基を含有するエポキシ樹脂プレポリマーの少なくとも1種、
b)少なくとも1つのカルバメートアニオンおよび少なくとも1つの有機アンモニウム対イオンを含有し、20℃〜100℃以上、好ましくは80℃まで、特に65℃までの範囲の温度でCOを放出する有機カルバミン酸アンモニウムの少なくとも1種
を含有するインサート。
【請求項15】
中空構造部を有する基材を含むかまたは中空構造部を有する基材からなる物品であって、請求項1〜13のいずれかに記載の方法によって、中空構造部を有する基材が強化されているかまたはインサートを有する物品。

【公表番号】特表2013−503215(P2013−503215A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525984(P2012−525984)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061688
【国際公開番号】WO2011/023552
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】