説明

中空状膜の親水化方法

【課題】
複数本の中空状膜からなる中空状膜モジュールにおいて、部分的に乾燥した中空状膜のみを選択的に親水化し、親水化剤の使用量及び親水化処理後の親水化剤を洗い流すための清澄水の使用量を大幅に低減する。
【解決手段】
複数本の中空状膜の少なくとも片側が開口状態となるように接着固定されてなる中空状膜モジュールにおける中空状膜の親水化方法であって、中空状膜の内径よりも外径が小さい先端部を有する親水化剤導入部材を用いてエアリークが発生している中空状膜の開口部から親水化剤を導入することを特徴とする中空状膜の親水化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の中空状膜からなる中空状膜モジュールにおける部分的に乾燥した中空状膜を選択的に親水化させる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、上下水道や排水処理などの水処理分野において、原水中の不純物を分離除去して清澄な水に得る膜ろ過の普及が進んでいる。膜の除去対象物質は、膜の種類によって異なるが、精密ろ過膜(MF膜)や限外ろ過膜(UF膜)(以下、これらを合わせてMF/UF膜という。)の場合は、一般的に縣濁物質、細菌、原虫、コロイド物質等が挙げられる。また、逆浸透膜(RO膜)やナノろ過膜(NF膜)の場合は、溶解性有機物、ウィルス、イオン物質等が挙げられる。
【0003】
MF/UF膜のろ過運転を行う場合、ろ過継続に伴い、膜表面や膜細孔内に汚れ成分が蓄積し、膜のろ過抵抗が上昇し、やがてろ過を行うことができなくなる。
【0004】
そこで、膜のろ過性能を維持するため、膜外側に気泡を導入し、膜を振動させ、膜同士を触れ合わせることにより膜表面の付着物質を掻き落とす空気洗浄や、ろ過とは逆方向に膜ろ過水あるいは清澄水を圧力で押し込み、膜表面や膜細孔内に蓄積した汚れ成分を除去する逆圧洗浄等の物理洗浄を行うのが一般的である。また、これら物理洗浄でも膜のろ過性能が回復しなくなると、酸やアルカリ等の薬品を用いた薬品洗浄を行う。このように、膜のろ過性能を維持するために、物理洗浄や薬品洗浄を繰り返し行うことから、機械的強度や耐薬品性に優れた疎水性膜が多く用いられている。
【0005】
しかしながら、疎水性膜は乾燥状態ではバブルポイント以上の高い圧力をかけないと水が透過しない。そのため、バブルポイント以下の低い圧力でも水が透過するように、膜の親水化処理を行う。親水化処理の方法としては、表面張力の小さい有機溶剤や脱気水などの親水化剤を用いて膜を濡らしてから水と置換する方法などが知られている(例えば特許文献1及び2)。しかし、親水化処理した疎水性膜は、湿潤状態を維持できずに再び乾燥した場合、バブルポイント以上の高い圧力をかけないと水が透過しなくなる。
【0006】
一般的に、中空状膜は、複数本の中空状膜とその支持体および流路材などの部材を一体化した膜エレメント、膜エレメントをケーシングに収納した膜モジュールといった形態で使用される。膜エレメントや膜モジュールは、例えば、出荷や保管時に気密性が悪かったり、ろ過装置へのインストール時に時間が掛かり過ぎたりといったことが原因で、少なくとも部分的に膜が乾燥してしまうことがある。疎水性の膜が再び乾燥してしまうと、バブルポイント以上の高い圧力をかけないと水が透過しなくなると共に、バブルポイント以下でエアが透過する現象(以下、エアリークという)が発生する。特許文献3に例示されているように、膜のエアリークは、再び親水化処理を行うことで解消することができる。
【0007】
また、エアリーク箇所を特定するには様々なリークテスト方法があり、中空糸膜外側に圧力を印加しつつ、撮像手段によって液体中に存在する中空糸膜モジュールの端面の画像を撮像し、得られた画像を処理手段にて処理し中空糸膜から発生する気泡を検知して特定する方法や、中空糸膜モジュールのろ過水側を透明な視認キャップにすることで、発生した気泡を視認して特定する方法などが提案されている。(例えば特許文献4及び5)。
【0008】
さらに、エアリークを補修する方法として、エアリークした中空糸膜を円筒形又は円錐形の物体での密栓する方法やポッティング端面を接着剤等で封止する方法が、特許文献6及び7で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平1−119310号公報
【特許文献2】特開平5−208121号公報
【特許文献3】特開平5−31337号公報
【特許文献4】特開2007−17171号公報
【特許文献5】特開2008−104945号公報
【特許文献6】特開昭51−32487号公報
【特許文献7】特開昭54−138874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、前述したエアリークの解消方法として、特許文献3に記載された方法は、中空糸膜の内表面および外表面にアルコール水溶液などを一定時間、加圧下で接触させる方法であり、部分的な中空糸膜の乾燥であっても、中空糸膜の外側又は内側に、多量の親水化剤を供給して親水化していたため、多量の清澄水を用いて親水化剤を洗い流すことが必要であったり、親水化剤のコストがかかったりするという問題があった。また、特許文献6及び7で提案された方法では、円筒形又は円錐形の物体で密栓された部分や、接着剤等で封止された部分の中空糸膜はろ過できなくなり、有効膜面積が減少する問題があった。
【0011】
本発明は、複数本の中空状膜からなる中空状膜モジュールにおいて、部分的に乾燥した中空状膜のみを選択的に親水化し、親水化剤の使用量及び親水化処理後の親水化剤を洗い流すための清澄水の使用量を大幅に低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の中空状膜の親水化方法は、次の特徴を有するものである。
(1)複数本の中空状膜の少なくとも片側が開口状態となるように接着固定されてなる中空状膜モジュールにおける中空状膜の親水化方法であって、中空状膜の内径よりも外径が小さい先端部を有する親水化剤導入部材を用いてエアリークが発生している中空状膜の開口部から親水化剤を導入することを特徴とする中空状膜の親水化方法。
(2)中空状膜の外側を加圧した後、親水化剤を導入し、中空状膜の内側に親水化剤を保持する、(1)に記載の中空状膜の親水化方法。
(3)親水化剤を導入後、さらに中空状膜の外側にかかる圧力以上の圧力で親水化剤を加圧導入する、(1)または(2)に記載の中空状膜の親水化方法。
(4)親水化剤の導入中、導入後、加圧導入中、加圧導入後および親水化剤の保持後からなる群から選ばれる少なくとも一部の間で中空状膜の外側を減圧する、(1)〜(3)のいずれかに記載の中空状膜の親水化方法。
(5)中空状膜の材質がポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンからなる群から選ばれる少なくとも1種類を含んでいるものである、(1)〜(4)のいずれかに記載の中空状膜の親水化方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の中空状膜の親水化方法によれば、有効膜面積を減らすことなく、乾燥した中空状膜を選択的に親水化することができる。また、親水化剤の使用量及び、親水化処理後の親水化剤を洗い流すための清澄水の使用量を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の親水化方法が適用される加圧型中空状膜モジュールの一例を示す概略図である。
【図2】本発明の親水化フローの第1段階の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の親水化フローの第2段階の一例を示す概略図である。
【図4】本発明の親水化方法に係るリークテストの実施態様の第1段階の一例を示す概略図である。
【図5】本発明の親水化方法に係るリークテストの実施態様の第2段階の一例を示す概略図である。
【図6】エアリーク部を有する中空状膜についてのリークテストの実施態様の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施態様に限定されるものではない。
【0016】
図1には本発明の親水化方法が適用される外圧式加圧型中空状膜モジュールの一例を示しており、ケーシング1内に複数本の中空状膜2が挿入され、ケーシング1の両端で中空状膜2がポッティング材3によって接着固定されている。膜モジュール上部接着固定部では、中空状膜2の中空部が開口しており、取り外し可能なキャップ4が取り付けられている。一方、膜モジュール下部接着固定部では、中空状膜の端部がポッティング材3によって閉塞されている。ケーシング1の側面には、ケーシング1の両端の接着固定部よりも内側に下部サイドノズル5と上部サイドノズル6が設けられている。ろ過運転の際、ろ過水は上部ノズル7より得ることができる。下部サイドノズル5は原水供給口として、上部サイドノズル6は原水排水口として使用でき、下部ノズル8はエア供給口及び排水口として使用するため、膜モジュール下部接着固定部には貫通孔9が設けられている。また、下部ノズル8はエア供給口、原水供給口及び排水口として使用しても構わない。
【0017】
ケーシング1の素材は特に限定されず、ABS、ポリプロプレン、塩化ビニル、ポリカーボネートなどの樹脂製の容器、エポキシ樹脂、ウレンタン樹脂などにガラス繊維、炭素繊維などの強化繊維で補強された繊維強化樹脂製の容器、ステンレスなどの金属製の容器を例示することが出来る。ポッティング材3の素材としては、エポキシやポリウレタンを例示することができる。ポッティング剤3は中空状膜2の内外を仕切る管板としての強度が必要であるため、D硬度が50〜85であることが好ましい。なおD硬度とは、JIS K 6253に準じて、タイプDデュロメーターを用いて10秒加圧した後の測定値である。
【0018】
本発明の親水化方法は、後述するリークテストによってエアリークした中空状膜を特定後、エアリークが発生している中空状膜のみに親水化剤を導入することで親水化処理するものである。親水化剤をエアリークした中空状膜の内側に導入する手段としては、エアリークが発生している中空状膜の開口部から親水化剤を加圧導入できる方法であれば特に限定されず、例えば、図2に示すように、親水化剤送液装置10の先に親水化剤導入部材11を装着し、親水化剤導入部材11をエアリークが発生している中空状膜2の開口部に差し込んで親水化剤を中空状膜2の内側へ加圧導入する方法が挙げられる。このとき、中空状膜2の開口部を親水化剤導入部材11で完全に塞いでしまうと、親水化剤を中空状膜2の内側に導入できないため、中空状膜2の内径よりも外径が小さい先端部を有する親水化剤導入部材11を用いて、親水化剤導入部材11と中空状膜2の開口部との間に隙間を設けて親水化剤を導入するようにする。
【0019】
ここで、エアリークが発生している中空状膜2の内側に親水化剤を導入後、図3に示すように親水化剤導入部材11を押し込んで中空状膜2の開口部を密閉し、中空状膜2の外側にかかる圧力以上の圧力に加圧して親水化剤を中空状膜2の内側に加圧導入し、中空状膜2の外側へと親水化剤を押し出すことによって、中空状膜2の細孔内のエアが押し出されるので親水化が効率よく行われるため好ましい。そのため、親水化剤送液装置10としては、親水化剤の量を調整しながら導入及び加圧導入することができる、図3に示すような一般的なシリンジを用いると取り扱いが容易であるので好ましく、中でも、中空状膜2の内側の容積以上の親水化剤を導入でき、圧力計付きのものであればさらに好ましい。
【0020】
また、親水化剤導入部材11としては、中空状膜2の内側に親水化剤を導入し、さらに加圧導入することが可能な中空状膜2の内径よりも外径が小さい先端部を有するものであれば特に限定されないが、先端部がテーパー状の形状であると、一定量の親水化剤を導入した後、親水化剤導入部材11を中空状膜2の開口部に押し込み、親水化剤を大気開放圧力以上の圧力で加圧導入することが容易にできるので好ましい。親水化剤導入部材11の素材は特に限定されず、ポリプロピレン、ポリエチレン、塩化ビニルなどの樹脂製、ガラス製、ステンレスなどの金属製を例示することができる。
【0021】
導入する親水化剤の量は中空状膜2の1本あたりの内側の容積の2倍以上15倍以下の量で適宜設定することが好ましい。親水化剤の2倍未満であると中空状膜2の外部まで親水化剤が到達しないので不十分であり、15倍を超える親水化剤を導入すると、親水化剤の多くがろ過水中に流れ出ることでろ過水のTOC濃度が高くなってしまい、親水化剤を洗い流すための清澄水の使用量が増える場合がある。
【0022】
親水化剤の量は多いほど早く親水化されるので好ましいが、親水化剤の使用量および親水化剤を洗い流すための清澄水の使用量が増えてしまう。そこで、中空状膜2を効率良く親水化しつつ、親水化剤の使用量および親水化剤を洗い流すための清澄水の使用量を抑えるために、親水化剤を中空状膜2の内側に保持する時間(浸漬時間)を設けることが好ましい。浸漬時間を設けるタイミングは、親水化剤を導入した後でも良いし、加圧導入した後でも良い。使用する親水化剤の量や濃度などで必要な浸漬時間が異なるが、作業効率を上げる観点から、数分から1時間程度で適宜設定するのが好ましい。
【0023】
親水化剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、またはそれらの混合液、グリセリンなどの有機溶剤やその水溶液、界面活性剤水溶液、脱気水などが例示される。これらの中では疎水性膜と相性の良さの目安といわれるSP値(溶解度パラメーター)が比較的近いエタノール、イソプロピルアルコールなどの有機溶剤やその水溶液が好ましい。
【0024】
前述した有機溶剤を使用後は、ろ過水のTOC濃度が高くなるため、一般的に清澄水で洗い流すリンス作業を行うが、使用する親水化剤の量は従来の方法と比べると大幅に低減されているので、リンスが必要な有機溶剤などを用いた場合でも、洗浄に必要な清澄水の使用量や時間も大幅に低減される。また、リンス作業を必要としない観点では、脱気水を使用することが好ましい。有機溶剤やその水溶液の濃度は高いほど、脱気水は脱気の程度が高いほど親水化の効果が大きいので、処理時間は短くなる。好ましくは、99%以上の有機溶剤、溶存空気濃度が飽和溶存空気濃度の50%以下にまで脱気された水を使用すると良い。また、親水化剤の液温は温度が高いほど粘性が下がり、処理時間が短くなるので好ましいため、膜が熱による収縮をせず、親水化剤の沸点に達しない液温に適宜設定するとよい。
【0025】
親水化剤を導入する際の中空状膜の外側の圧力は、リークテスト時の圧力のまま行っても良いし、大気開放圧力で行っても良い。しかし、リークテスト時の圧力で行うと、エアリークした中空状膜からは常にエアが入り込み、親水化剤の導入が困難である。また、大気開放圧力にしてしまうと、保持していた全ての中空状膜の内側の水が抜けてしまい、作業時間が長引けば乾燥していない膜まで乾燥してしまう可能性があるので、中空状膜の内側の水を保持しつつ、エアリークした中空状膜からのエアリーク量を最小限に抑える観点から、中空状膜の外側の圧力は中空状膜の内側のヘッド圧よりわずかに高い圧力にしておくことが好ましい。
【0026】
また、中空状膜の内側に親水化剤を導入または加圧導入して保持後、中空状膜の外側を減圧すると、親水化剤が中空状膜の内側から外側に出て行き、中空状膜の細孔内のエアが抜けやすくなるので好ましい。さらには、中空状膜の内側に親水化剤の導入中や導入後、加圧導入中や加圧導入後に中空状膜の外側を減圧させても同様の効果が出るので好ましい。図示はしていないが減圧させる方法としては、中空状膜の外側が大気開放圧力の状態であれば減圧ポンプを取り付けて減圧させても良いし、中空状膜の外側を加圧している状態であれば、例えば、図4に示すエア抜きバルブ23を開にしてエア抜きすることで減圧させても良い。装置を簡略化させる点で、エア抜きバルブを設けて減圧させる方法がより好ましい。減圧時間としては、特に限定されないが、膜が乾燥しないよう数秒〜1分程度で適宜設定すると良い。減圧を行った後は中空状膜の内側にあった水がなくなるので、中空状膜の外側を減圧させる場合は、親水化処理の最後の工程として行うことが好ましい。
【0027】
次に、図4〜6を用いて本発明の親水化処理前に行う、エアリークが発生している中空状膜を特定するためのリークテストについて説明する。
【0028】
リークテストは、中空状膜モジュールの親水化処理終了後、あるいはろ過運転期間中に定期的に実施される。エアリークを検知するためのリークテスト方法については、膜モジュール単位でエアリークを検出する方法、膜単位でエアリークを検出する方法、またはその両方ができる方法など、様々である。一般に、ろ過運転期間中は、中空状膜モジュールの膜外側または膜内側に加圧エアを導入し、設定した圧力に到達した際に前記加圧エアの導入を停止して加圧側を密閉し、密閉後の高圧空間における圧力の経時変化から膜のリーク診断する方法(圧力保持試験)や中空状膜モジュールの膜外側または膜内側に加圧エアを導入し、設定した圧力に到達した際のエア透過量を測定してリーク診断する方法である、膜エレメントや膜モジュール単位で検出するリークテスト方法で行われる。リーク検知後は、後述の膜単位でエアリークを検出する方法でリークが発生している膜を特定し、リークが発生している膜の補修などを行う。
【0029】
エアリークの原因としては、ポッティング不良、中空状膜の損傷、破断および乾燥が挙げられる。この中で、乾燥によるエアリークは、出荷や保管時に気密性が悪かったり、装置インストール時の作業に時間が掛かり過ぎたりするといった要因で、少なくとも部分的に中空状膜が乾燥してしまうことで発生する。本発明の中空状膜の親水化方法を実施するためのリークテストについては、乾燥によってエアリークが発生している中空状膜が特定できれば特に限定されないが、エアリークが発生している中空状膜を特定後の親水化工程にスムーズに移行できるという観点から、次に示すリークテストが好ましい。
【0030】
まず、リークテストに用いるろ過装置は、例えば、図4に示すように、原水を貯留するための原水タンク14と、原水を固液分離するための中空状膜モジュール15と、原水を中空状膜モジュール15に供給する原水ポンプ16と、原水供給時に開となる原水バルブ17と、膜ろ過時に開となるろ過バルブ18と、膜ろ過時に閉となる原水排水バルブ19と、排水工程時に開となる排水バルブ20と、エアを供給するためのコンプレッサ21と、エア供給時に開となるエアバルブ22と、エア抜き時に開となるエア抜きバルブ23とを備えている。
【0031】
原水バルブ17、ろ過バルブ18を開、原水排水バルブ19、排水バルブ20、エアバルブ22、エア抜きバルブ23を閉として原水ポンプ16を稼動させ、通常ろ過を行って中空状膜モジュール15内(中空状膜の内側および外側)に水を満たす。ろ過を停止後、全バルブを閉として、キャップ4を取り外す。その後、図5に示すように中空状膜モジュールの中空状膜の開口部端面に水を溜める部材24を取り付け、原水バルブ17、ろ過バルブ18、原水排水バルブ19、排水バルブ20を閉とした後、エアバルブ22を開にして、コンプレッサのエアを一定圧力で加圧導入する。このときの圧力は、ろ過に供する液体における膜のバブルポイント以下に設定して実施する。
【0032】
このように、前述したリークテストを実施することで、中空状膜モジュール15内の水が膜の外側から内側にろ過されるため、中空状膜モジュール15内の膜外側の水位が徐々に低下し、やがて中空状膜モジュール15内の膜外側がエアで満たされる。ここで、中空状膜の細孔内が水で満たされれば、表面張力が働くのでエアが膜を通ることはない。しかし、図6に示すように乾燥した部分25の中空状膜2はエアが中空状膜2の細孔内を通過し中空状膜2の内側から中空状膜モジュールの中空状膜2の開口部端面へと上昇し出てくる。中空状膜モジュールの中空状膜2の開口部端面には水を張ってあるので、目視により気泡26を確認し、エアリークした中空状膜を特定することができる。
【0033】
中空状膜の形状としては、中空状の形状をしていれば特に限定されず、中空糸型でも管状型(チューブラー型)でも良い。材質としては、特に限定しないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、酢酸セルロース、ポリビニルアルコールおよびポリエーテルスルホンからなる群から選ばれる少なくとも1種類を含んでいるものを用いることができる。この中で、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどの疎水性樹脂からなる膜は、機械的強度や耐薬品性が優れる観点から好ましい。
【0034】
本発明における中空状膜モジュールとしては、外圧式でも内圧式であっても良いが、前処理の簡便さの観点から外圧式である方が好ましい。また、原水の入った浸漬槽に浸漬させてポンプやサイフォン等で吸引ろ過する浸漬型膜エレメント等であっても、膜エレメントをケーシングに入れて中空状膜外側を加圧できるような膜モジュールの形態にすれば、本発明を適用することができる。
【実施例】
【0035】
以下に本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
中空状膜モジュールとして、東レ(株)製の分画分子量15万Daのポリフッ化ビニリデン製中空糸UF膜(内径0.9mm、外径1.5mm、長さ2000mm)で、外圧100kPaによるリークテストで、エア透過量が10mL/minである、膜面積72mの加圧型中空糸膜モジュール1本を準備した。前記膜モジュールを図4に示すろ過装置にインストールし、ろ過運転前に外圧100kPaにてリークテストを実施したところ、エア透過量が100mL/minと高く出ていたため、圧力を保持したまま膜モジュールのキャップを取り外し、膜モジュールの中空糸膜の開口部端面の観察を行った。その結果、中空糸膜の3本からリークしていたことが分かった。
【0037】
そこで、外圧100kPaからヘッド圧よりわずかに高い25kPaに落として保持したまま、図2に示すような先端の外径が0.5mmのテーパー状のポリプロピレン製親水化導入部材11と圧力計付き容積50mLのシリンジ(親水化剤送液装置10)を使って、リークが発生している中空糸膜1本あたりに、99wt%のエタノールを初めに5mL使って導入し、その後、10mLを40kPaの圧力で加圧導入した。計3本の中空糸膜にエタノールを導入後、外圧を25kPaに保ったまま約10分間浸漬した。
【0038】
浸漬終了後、再度リークテストを実施したところ、エア透過量は10mL/minであり、エアリークはなくなっていた。また、清澄水で洗い流すリンスを行わなくてもろ過水のTOC濃度はほとんど上昇しなかったため、そのままろ過運転を開始することができた。
【0039】
(比較例1)
中空糸膜の3本からエアリークが発生していること確認するまでは実施例1と同様にした。
【0040】
その後、99wt%のエタノール50Lを膜モジュール内に導入し、約10分間浸漬した。その後、リークテストを実施したところ、エア透過量は10mL/minであり、エアリークはなくなっていた。しかし、浸漬終了後、ろ過水のTOC濃度を下げるため、ろ過運転を開始する前に清澄水250Lを用いてエタノールを洗い流す必要があった。
【0041】
(比較例2)
中空糸膜の3本からエアリークが発生していること確認するまでは実施例1と同様にした。
【0042】
その後、99wt%のエタノール1Lを純水で50Lに希釈したエタノール溶液を膜モジュール内に導入し、約10分間浸漬した。その後、リークテストを実施したところ、エア透過量は92mL/minであり、エアリークは解消されなかった。
【符号の説明】
【0043】
1 :ケーシング
2 :中空状膜
3 :ポッティング材
4 :キャップ
5 :下部サイドノズル
6 :上部サイドノズル
7 :上部ノズル
8 :下部ノズル
9 :貫通孔
10:親水化剤送液装置
11:親水化剤導入部材
12:親水化剤
13:ろ過液
14:原水タンク
15:中空状膜モジュール
16:原水ポンプ
17:原水バルブ
18:ろ過バルブ
19:原水排水バルブ
20:排水バルブ
21:コンプレッサ
22:エアバルブ
23:エア抜きバルブ
24:水を溜める部材
25:乾燥した部分
26:気泡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の中空状膜の少なくとも片側が開口状態となるように接着固定されてなる中空状膜モジュールにおける中空状膜の親水化方法であって、中空状膜の内径よりも外径が小さい先端部を有する親水化剤導入部材を用いてエアリークが発生している中空状膜の開口部から親水化剤を導入することを特徴とする中空状膜の親水化方法。
【請求項2】
中空状膜の外側を加圧した後、親水化剤を導入し、中空状膜の内側に親水化剤を保持する、請求項1に記載の中空状膜の親水化方法。
【請求項3】
親水化剤を導入後、さらに中空状膜の外側にかかる圧力以上の圧力で親水化剤を加圧導入する、請求項1または2に記載の中空状膜の親水化方法。
【請求項4】
親水化剤の導入中、導入後、加圧導入中、加圧導入後および親水化剤の保持後からなる群から選ばれる少なくとも一部の間で中空状膜の外側を減圧する、請求項1〜3のいずれかに記載の中空状膜の親水化方法。
【請求項5】
中空状膜の材質がポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンからなる群から選ばれる少なくとも1種類を含んでいるものである、請求項1〜4のいずれかに記載の中空状膜の親水化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−66865(P2013−66865A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208560(P2011−208560)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】