説明

中空異形微粒子

【課題】樹脂成形体においては全光線透過率及び光拡散性等の光学特性の一層の向上、また化粧品においては使用感、ソフトフォーカス性及び持続性等の一層の向上等、近年における要求の高度化に充分に応えることができる中空異形微粒子、その製造方法及びその用途を提供する。
【解決手段】表面(11)に複数の凹部(21)を有しており、内部(31)に一つの中空部(41)を有していて、表面(11)と中空部(41)とが長径(L)の方向に沿う1本の割れ目(51)を介して連絡されている全体として紡錘形状の中空異形微粒子であって、長径(L)の平均値が0.1〜30μm、短径(L)の平均値/長径(L)の平均値=0.3〜0.8であることを特徴とする中空異形微粒子を用いた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は中空異形微粒子、その製造方法及びその用途に関する。様々な材料の微粒子が多方面にわたり様々な目的で実用に供されている。その形状は多くが不定形であり、そのままでも有用であって、工業材料として重要な役割を担っている。しかし、近年では、種々の用途においてその要求される特性が高度化するに伴い、微粒子の形状を制御したものが望まれる場面が多くなってきている。このような要求の高度化の例としては、デイスプレー部品や光拡散板等の分野での光学特性の向上、電子部品分野でのサイズの微小化、化粧品における使用性の向上等が挙げられる。本発明はかかる要望の高度化に適応した中空異形微粒子、その製造方法及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、形状を制御した微粒子として、無機材料製のものや有機材料製のもの等、多くの提案がなされている。これらのうちで有機材料製のものについては、ポリスチレン系微粒子(例えば、特許文献1〜2参照)、ポリウレタン系微粒子(例えば、特許文献3参照)、ポリイミド系微粒子(例えば、特許文献4参照)、有機シリコーン系微粒子(例えば、特許文献5参照)等の提案がある。しかし、これら従来の微粒子はその形状が真球状又は概ね球状のものであるため、近年における前記したような要求の高度化に対応できないという問題がある。一方、形状を制御した微粒子としては、中空で凹凸のある微粒子(例えば、特許文献6参照)、表面に多数の小さい窪みを有する概ね球状の微粒子(例えば、特許文献7参照)、ラグビーボール様の微粒子(例えば、特許文献8参照)、半球状の微粒子(例えば、特許文献9参照)等の非球状の微粒子について多くの提案がある。しかし、これら従来の微粒子にはそれぞれに特徴があるものの、近年における前記したような要求の高度化に充分に応えることができていないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−103804号公報
【特許文献2】特開平11−292907号公報
【特許文献3】特開平11−116649号公報
【特許文献4】特開平11−140181号公報
【特許文献5】特開昭61―159427号公報
【特許文献6】特開平7−157672号公報
【特許文献7】特開2000−191788号公報
【特許文献8】特開2003−171465号公報
【特許文献9】特開2003−128788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、近年における要求の高度化、例えば樹脂成形体においては全光線透過率及び光拡散性等の光学特性の一層の向上、また化粧品においては使用感、ソフトフォーカス性及び持続性等の一層の向上に充分に応えることができる中空異形微粒子、その製造方法及びその用途を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、表面に特定の大きさの複数の凹部を有しており、内部に表面と連絡された一つの中空部を有していて、全体として紡錘形状を呈する特定の大きさの中空異形微粒子が正しく好適であることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、表面(11)に複数の凹部(21)を有しており、内部(31)に一つの中空部(41)を有していて、表面(11)と中空部(41)とが長径(L)の方向に沿う1本の割れ目(51)を介して連絡されている全体として紡錘形状の中空異形微粒子であって、長径(L)の平均値が0.1〜30μm、短径(L)の平均値/長径(L)の平均値=0.3〜0.8であることを特徴とする中空異形微粒子に係る。また本発明は、かかる中空異形微粒子の製造方法、かかる中空異形微粒子を用いた化粧品及び樹脂組成物に係る。
【0007】
先ず、本発明に係る中空異形微粒子について説明する。本発明に係る中空異形微粒子は、表面(11)に複数の凹部(21)を有しており、内部(31)に一つの中空部(41)を有していて、表面(11)と中空部(41)とが長径(L)の方向に沿う1本の割れ目(51)を介して連絡されている全体として紡錘形状の中空異形微粒子である。なかでも、本発明に係る中空異形微粒子としては、ポリシロキサン架橋構造体から成るものが使用場面においてより有用であり、好ましい。このポリシロキサン架橋構造体は、シロキサン単位が3次元の網目構造を形成した構造体である。ポリシロキサン架橋構造体を構成するシロキサン単位の種類や割合は特に制限されないが、かかるシロキサン単位としては、下記の化1で示されるシロキサン単位、化2で示されるシロキサン単位及び化3で示されるシロキサン単位から構成されたものが好ましい。
【0008】
【化1】

【0009】
【化2】

【0010】
【化3】

【0011】
化2及び化3において、
,R,R:ケイ素原子に直結した炭素原子を有する有機基
【0012】
化2中のR、化3中のR及びRとしては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アラルキル基等の炭素数1〜12の有機基が挙げられるが、なかでもメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基が好ましく、メチル基がより好ましい。化2中のR、化3中のR及びRがかかる有機基である場合、化2や化3で示されるシロキサン単位のうちで好ましいシロキサン単位としては、メチルシロキサン単位、エチルシロキサン単位、プロピルシロキサン単位、ブチルシロキサン単位、フェニルシロキサン単位等が挙げられる。
【0013】
ポリシロキサン架橋構造体を前記したようなシロキサン単位で構成する場合、各シロキサン単位の構成割合は特に制限されないが、化1で示されるシロキサン単位を20〜45モル%、化2で示されるシロキサン単位を50〜75モル%及び化3で示されるシロキサン単位を5〜27モル%(合計100モル%)の構成割合とするのが好ましい。
【0014】
本発明に係る中空異形微粒子は、以上説明したように、表面(11)に複数の凹部(21)を有しており、内部(31)に一つの中空部(41)を有していて、表面(11)と中空部(41)とが長径(L)の方向に沿う1本の割れ目(51)を介して連絡されている全体として紡錘形状を呈する中空異形微粒子であるが、更に長径(L)の平均値が0.1〜30μm、短径(L)の平均値/長径(L)の平均値=0.3〜0.8の範囲内にある中空異形微粒子であり、好ましくは長径(L)の平均値が0.5〜20μmの範囲内にある中空異形微粒子である。
【0015】
本発明に係る中空異形微粒子は、長径(L)の方向に沿って1本の割れ目(51)を有する。この割れ目(51)は、実質的に閉じている場合、明らかに開いている場合、双方が混在する場合があるが、いずれの場合も有用である。かかる割れ目(51)に中空部(41)がつながっている。中空部(41)の大きさは特に制限されないが、その存在が本発明の所期効果を発揮する上で重要である。
【0016】
本発明に係る中空異形微粒子はその表面(11)に複数の凹部(21)を有している。凹部(21)の大きさは特に制限されないが、凹部(21)の最大径(m)の平均値/長径(L)の平均値=0.01〜0.30の範囲にあるものが好ましい。かかる凹部の存在が、本発明の所期の効果を発揮する上で重要である。
【0017】
本発明に係る中空異形微粒子において、長径(L)の平均値、短径(L)の平均値、凹部(21)の最大径(m)の平均値はいずれも、本発明の中空異形微粒子の走査電子顕微鏡像から抽出した任意の20個についてそれぞれを測定し、その平均を求めた値である。
【0018】
本発明に係る中空異形微粒子の特性を示す指標の一つとして吸油量の高さがある。かかる吸油量は特に制限されないが、50〜150ml/100gの範囲にあるものが好ましい。
【0019】
次に、本発明に係る中空異形微粒子の製造方法について説明する。本発明に係る中空異型微粒子は、下記の化4で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物を20〜45モル%、化5で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物を50〜75モル%及び化6で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物を5〜27モル%(合計100モル%)となる割合で用いて、先ず化4で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物からこれを塩基性触媒存在下で水と接触させて加水分解することによりシラノール化合物を生成させ、次にこのシラノール化合物と化5で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物及び化6で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物とを塩基性触媒及びカチオン性界面活性剤を存在させた水性条件下で縮合反応させることにより得ることができる。
【0020】
【化4】

【0021】
【化5】


【0022】
【化6】

【0023】
化4,化5及び化6において、
,R,R:ケイ素原子に直結した炭素原子を有する有機基
X,Y,Z:炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルコキシ基を有するアルコキシエトキシ基、炭素数2〜4のアシロキシ基、炭素数1〜4のアルキル基を有するN,N−ジアルキルアミノ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子又は水素原子
【0024】
化5中のR、化6中のR及びRとしては、アルキル基、フェニル基、アルコキシアルキル基等の反応性の無い有機基、エポキシ基、ビニル基、(メタ)アクリロイルアルキル基、メルカプト基等の反応性を有する有機基が挙げられる。
【0025】
なかでも、化4〜化6のシラノール基形成性ケイ素化合物としては、R、R、Rの各々が炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基であるものが、入手の容易さ、製造の安定化の容易さ等から好ましい。
【0026】
化4で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物は、結果として化1で示されるシロキサン単位を形成することとなる化合物である。化4中のXは、1)メトキシ基やエトキシ基等の、炭素数1〜4のアルコキシ基、2)メトキシエトキシ基やブトキシエトキシ基等の、炭素数1〜4のアルコキシ基を有するアルコキシエトキシ基、3)アセトキシ基やプロピオキシ基等の、炭素数2〜4のアシロキシ基、4)ジメチルアミノ基やジエチルアミノ基等の、炭素数1〜4のアルキル基を有するN,N−ジアルキルアミノ基、5)ヒドロキシル基、6)塩素原子や臭素原子等のハロゲン原子、又は7)水素原子である
【0027】
化4で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、トリメトキシエトキシシシラン、トリブトキシエトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラプロピオキシシラン、テトラ(ジメチルアミノ)シラン、テトラ(ジエチルアミノ)シラン、シランテトラオール、クロルシラントリオール、ジクロルジシラノール、テトラクロルシラン、クロルトリハイドロジェンシラン等が挙げられるが、なかでもテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシランが好ましい。
【0028】
化5で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物は、結果として化2で示されるシロキサン単位を形成することとなる化合物である。化5中のYは前記した化4中のXと同様であり、また化5中のRは前記した化2中のRと同様である。
【0029】
化5で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリブトキシシラン、ブチルトリブトキシシラン、フェニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、メチルトリス(2−ブトキシエトキシ)シラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリプロピオキシシラン、メチルシラントリオール、メチルクロルジシラノール、メチルトリクロルシラン、メチルトリハイドロジェンシラン等が挙げられるが、なかでも化2中のRについて前記したように、結果としてメチルシロキサン単位、エチルシロキサン単位、プロピルシロキサン単位、ブチルシロキサン単位又はフェニルシロキサン単位を形成することとなるシラノール基形成性ケイ素化合物が好ましく、メチルシロキサン単位を形成することとなるシラノール基形成性ケイ素化合物がより好ましい。
【0030】
化6で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物は、結果として化3で示されるシロキサン単位を形成することとなる化合物である。化6中のZは前記した化4中のXと同様であり、また化6中のR、Rは前記した化3中のR、Rと同様である。
【0031】
化6で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物としては、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジプロピルジブトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、メチルフェニルメトキシエトキシシラン、ジメチルブトキシエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジメチルジプロピオキシシラン、ジメチルジ(ジメチルアミノ)シラン、ジメチルジ(ジエチルアミノ)シラン、ジメチルシランジオール、ジメチルクロルシラノール、ジメチルジクロルシラン、ジメチルジハイドロジェンシラン等が挙げられるが、なかでも化3中のR、Rについて前記したように、結果としてジメチルシロキサン単位、ジエチルシロキサン単位、ジプロピルシロキサン単位、ジブチルシロキサン単位又はメチルフェニルシロキサン単位を形成することとなるシラノール基形成性ケイ素化合物が好ましく、ジメチルシロキサン単位を形成することとなるシラノール基形成性ケイ素化合物がより好ましい。
【0032】
本発明に係る有機シリコーン微粒子を製造するに当たっては、以上説明した化4で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物、化5で示されるシラノール基形成性化合物及び化6で示されるシラノール基形成性化合物を、化4で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物を20〜45モル%、化5で示されるシラノール基形成性化合物を50〜75モル%及び化6で示されるシラノール基形成性化合物を5〜27モル%(合計100モル%)の割合で用い、先ず化4で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物からこれを塩基性触媒存在下で水と接触させて加水分解することによりシラノール化合物を生成させる。加水分解するための塩基性触媒は従来公知のものを用いることができる。これには例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア等の無機塩基類や、トリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、ドデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムハイドロオキサイド、ナトリウムメトキシド等の有機塩基類が挙げられる。加水分解時における触媒量は、原料として用いた化4で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物に対し通常0.001〜0.5質量%の濃度で存在させるのが好ましい。
【0033】
次に前記のように生成させたシラノール化合物と化5で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物及び化6で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物とを塩基性触媒及びカチオン性界面活性剤を存在させた水性条件下で縮合反応させる。縮合反応させるための塩基性触媒としては、前記した加水分解するための塩基性触媒と同様、従来公知のものを用いることができる。縮合反応するための塩基性触媒は、原料として用いたシラノール基形成性ケイ素化合物の合計量に対し0.001〜0.5質量%の濃度で存在させるのが好ましい。
【0034】
塩基性触媒と共に反応系に加えるカチオン性界面活性剤としては、従来公知のものを使用できる。かかるカチオン性界面活性剤としては、ラウリルトリメチルアンモニウムエトサルフェート、トリブチルメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルラウリルアンモニウム、トリメチルオレイルアンモニウム等の第4級アンモニウム塩、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。カチオン性界面活性剤は、原料として用いたシラノール基形成性ケイ素化合物の合計量に対し通常0.001〜0.55質量%の濃度で存在させるのが好ましい。
【0035】
水/シラノール基形成性ケイ素化合物全量の仕込み割合は、通常、10/90〜70/30(質量比)とする。触媒の使用量は、その種類及びシラノール基形成性ケイ素化合物の種類によっても異なるが、シラノール基形成性ケイ素化合物の全量に対して1質量%以下とするのが好ましい。また反応温度は、通常0〜40℃とするが、加水分解反応によって生成させたシラノール化合物の即製的な縮合反応を避けるために30℃以下とするのが好ましい。
【0036】
前記のように生成させたシラノール化合物を含有する反応液を引き続き縮合反応に供し、全体として中空の紡錘形状を呈する有機シリコーン微粒子を生成させる。本発明に係る製造方法では、縮合反応の触媒として加水分解における触媒を使用できるので、加水分解により生成させたシラノール化合物を含有する反応液をそのまま又はこれに更に触媒を加え、30〜80℃に加温して反応を続けることにより縮合反応させて有機シリコーン微粒子をその水性懸濁液として得ることができる。本発明の製造方法では、かかる水性懸濁液のpHを、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリにより8〜10の範囲となるように調整することが好ましい。またかかる水性懸濁液中の有機シリコーン微粒子の固形分濃度を、水の使用量を調整することにより、2〜20質量%の範囲となるようにすることが好ましく、5〜15質量%の範囲となるようにすることがより好ましい。
【0037】
本発明に係る中空異形微粒子は、前記の水性懸濁液から分離し、例えば金網を通して抜き取り、遠心分離や加圧濾過等により固形分を30〜70質量%に調整した含水物として用いることができ、また更に乾燥したものを用いることもできる。乾燥したものは、水性懸濁液を金網に通して抜き取り、遠心分離や加圧濾過等により脱水し、その脱水物を100〜250℃で加熱乾燥する方法により得られ、また水性懸濁液をスプレードライヤーにより直接100〜250℃で加熱乾燥する方法によっても得られる。これらの乾燥物は、例えばジェットミル粉砕機を用いて解砕するのが好ましい。
【0038】
かくして得られる本発明に係る中空異形微粒子は、表面に複数の凹部(21)を有し、内部(31)に一つの中空部(41)を有していて、表面(11)と中空部(41)とが長径(L)の方向に沿う1本の割れ目(51)を介して連絡されている全体として紡錘形状を呈する中空異形微粒子であって、長径(L)の平均値が0.1〜30μm、短径(L)の平均値/長径(L)の平均値=0.3〜0.8の範囲内にあるものである。
【0039】
最後に、本発明に係る化粧品原料と樹脂組成物について説明する。本発明に係る化粧品原料は前記した本発明に係る中空異形微粒子を含有する化粧品原料である。
【0040】
本発明に係る化粧品原料は、これを液状、クリーム状又はプレス状の基礎化粧品やメークアップ化粧品の成分として用いた場合、その優れた光学特性や高い吸油量等により、凹凸感が少なくギラツキの少ないソフトフォーカス効果、肌へののりや密着感において優れ、皮脂による化粧落ちに対して有用である。本発明に係る化粧品原料の使用量は、適用する化粧品の使用形態により適宜選択するが、例えばプレス状メークアップ化粧品においては0.5〜50質量%となるようにするのが好ましく、また液状メークアップ化粧品においては0.1〜30質量%となるようにするのが好ましい。
【0041】
本発明に係る化粧品原料と共に用いることができる他の原料としては、体質顔料、白色顔料、パール顔料、着色顔料(染料)、結合油剤、水、界面活性剤、増粘剤、防腐剤、酸化防止剤、香料等が挙げられる。所望の化粧品は、本発明に係る化粧品原料と共にかかる他の原料を均一に分散させる公知の方法で調製できる。
【0042】
また本発明に係る樹脂組成物は、前記した本発明に係る中空異形微粒子を含有する樹脂組成物であり、それから得られる各種の樹脂成形体の特性改良のために有用である。例えば照明器具やデイスプレー部品等、高度な光学特性が要求される樹脂成形体の場合、光の効率的な利用や機能の高度化等から、光透過性及びヘイズが共に高く、光拡散性の良好なものが望まれるようになっているが、本発明に係る樹脂組成物は、かかる特性を満足する樹脂成形体を得るために有用である。本発明に係る中空異形微粒子の使用量は、本発明に係る樹脂組成物から前記のような樹脂成形体を製造する場合、樹脂組成物中において0.1〜5質量%となるようにするのが好ましいが、本発明に係る樹脂組成物を別に製造した樹脂成形体の表面に塗布する場合、塗布膜の強度が許される限り、樹脂組成物中において30質量%程度まで含有させることができる。
【発明の効果】
【0043】
以上説明した本発明によると、近年における要求の高度化、例えば樹脂成形体においては全光線透過率及び光拡散性等の光学特性の一層の向上、また化粧品においては使用感、ソフトフォーカス性及び持続性等の一層の向上に充分応えることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る中空異形微粒子を略示する拡大正面図。
【図2】図1と同じ中空異形微粒子を略示する拡大平面図。
【図3】図2のA−A線断面図。
【図4】本発明に係る中空異形微粒子を例示する4000倍の走査型電子顕微鏡写真。
【図5】本発明に係る中空異形微粒子を短径に沿う方向の断面で例示する10000倍の走査型電子顕微鏡写真。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0046】
図1〜図3に略示した本発明に係る中空異形微粒子は、表面11に複数の凹部21を有しており、内部31に一つの中空部41を有していて、表面11と内部31とが長径Lの方向に沿う1本の割れ目51を介して連絡されている全体として紡錘形状を呈し、長径Lの平均値が0.5〜20μm、短径Lの平均値/長径Lの平均値=0.3〜0.8、凹部21の最大径mの平均値/長径Lの平均値=0.01〜0.30の範囲内にある中空異形微粒子である。かかる中空異形微粒子は、実際のところ、図4の走査型電子顕微鏡写真で例示するような形状となっており、またその短径Lに沿う方向の縦断面が図5の走査型電子顕微鏡写真で例示するような構造となっている。
【0047】
試験区分1(中空異形微粒子等の合成)
・実施例1{中空異形微粒子(P−1)の合成}
反応容器にイオン交換水2000gを採り、この中に30%水酸化ナトリウム0.11gを加えて溶解した。更にテトラエトキシシラン199.7g(0.96モル)を加え、15℃で60分間、撹拌下に加水分解を行なった。別の反応容器にラウリルトリメチルアンモニウムエトサルフェート0.7g及び30%水酸化ナトリウム2.68gをイオン交換水350gに溶解した水溶液を調製して10℃に冷却し、撹拌下、この中に同温度に調整した前記の加水分解物溶液を徐々に滴下した。更にジメチルジメトキシシラン93.6g(0.78モル)及びメチルトリメトキシシラン267.9g(1.97モル)を加え、全体を30℃以下に保ちながら、1時間静置した。同温度で4時間保持した後、60℃まで加温して同温度で5時間反応させ、白色の懸濁液を得た。得られた懸濁液を一夜静置した後、デカンテーションにより液相を除去して得た白色固体相を常法により水洗し、乾燥して、中空異形微粒子(P−1)を得た。中空異形微粒子(P−1)について、以下の走査型電子顕微鏡による微粒子表面の観察及び測定並びに断面の観察、元素分析、ICP発光分光分析、FT−IRスペクトル分析、NMRスペクトル分析を行なったところ、この中空異形微粒子(P−1)は、表面(11)に複数の凹部(21)を有しており、内部(31)に一つの中空部(41)を有していて、表面(11)と中空部(41)とが長径の方向に沿う1本の割れ目(51)を介して連絡されている全体として紡錘形状の中空異型微粒子であって、長径(L)の平均値が7.6μm、短径(L)の平均値/長径(L)の平均値=0.55であり、その構成単位として化1で示されるシロキサン単位を26モル%、化2で示されるシロキサン単位を53モル%及び化3で示されるシロキサン単位を21モル%(合計100モル%)の割合で有する有機シリコーン微粒子であった。
【0048】
・中空異形微粒子(P−1)の形状、長径(L)の平均値、短径(L)の平均値、凹部(21)の最大径(m)の平均値:走査型電子顕微鏡(日立社製のSEMEDX TypeN)を用い、2000〜5000倍で観察してSEM像を得た。このSEM像のなかから任意に20個の中空異形微粒子(P−1)を観察し、長径(L)、短径(L)及び表面(11)の凹部(21)の最大径(m)を実測し、その平均値を求めた。
・中空異形微粒子(P−1)の中空部の確認:FIB(FB−2100形集束イオンビーム加工観察装置)を用いて、得られた中空異形微粒子の断面出しを実施した。得られた中空異形微粒子の断面を走査型電子顕微鏡(日立社製のS−4800形)を用い、8000〜15000倍で観察してSEM像を得た。このSEM像から中空異形微粒子の中空部の有無を確認した。
【0049】
・中空異形微粒子(P−1)の吸油量の測定:JIS−K5101−13−1(2004)に準拠して測定した。
【0050】
・中空異形微粒子(P−1)の結合シロキサン単位の分析:中空異形微粒子(P−1)5gを精秤し、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液250mlに加え、中空異形微粒子中の加水分解性基を全て水溶液に抽出処理した。抽出処理液から超遠心分離により中空異形微粒子を分離し、分離した中空異形微粒子を水洗した後、200℃で5時間乾燥したものを、元素分析、ICP発光分光分析、FT−IRスペクトル分析に供して、全炭素含有量及びケイ素含有量を測定すると共に、ケイ素−炭素結合、ケイ素―酸素―ケイ素結合を確認した。これらの分析値、固体の29SiについてCP/MASのNMRスペクトルの積分値、原料に用いた化5で示されるシラノール形成性ケイ素化合物のRの炭素数及び化6で示されるシラノール形成性ケイ素化合物のR及びRの炭素数より、化1示されるシロキサン単位の割合、化2で示されるシロキサン単位の割合及び化3で示されるシロキサン単位の割合を算出した。
【0051】
・実施例2〜7{中空異形微粒子(P−2)〜(P−7)の合成}
実施例1と同様にして、中空異形微粒子(P−2)〜(P−7)を合成し、実施例1と同様の観察、測定及び分析を行なった。
【0052】
・比較例1{微粒子(R−1)の合成}
反応容器にイオン交換水100g、酢酸0.01g及び10%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリム水溶液1.8gを採り、均一な水溶液とした。この水溶液にテトラエトキシシラン56.2g(0.27モル)、メチルトリメトキシシラン74.8g(0.55モル)及びジメチルジメトキシシラン21.6g(0.18モル)を加え、30℃で30分間加水分解した。次に別の反応容器にイオン交換水700g、30%水酸化ナトリウム水溶液0.48gを加え、均一な水溶液とした。この水溶液を撹拌しながら前記の加水分解液を徐々に加え、15℃で5時間、さらに80℃で5時間反応を行ない、懸濁液を得た。この懸濁液を一夜静置した後、デカンテーションにより液相を除去し、得られた白色固体相を常法により水洗し、乾燥して、微粒子(R−1)を得た。微粒子(R−1)について、実施例1と同様の観察、測定及び分析を行なった。以上で合成した各例の中空異型微粒子等の内容を表1〜3にまとめて示した。
【0053】
【表1】

【0054】
表1において、
使用量:原料として用いたシラノール基形成性ケイ素化合物の合計100モル%に対するモル%
加水分解触媒の濃度:化4で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物に対する触媒の濃度(質量%)
縮合触媒の濃度:原料として用いたシラノール基形成性ケイ素化合物の合計に対する触媒の濃度(質量%)
界面活性剤の濃度:原料として用いたシラノール基形成性ケイ素化合物の合計に対する界面活性剤の濃度(質量%)
SM−1:テトラエトキシシラン
SM−2:テトラメトキシシラン
SM−3:メチルトリメトキシシラン
SM−4:プロピルトリブトキシシラン
SM−5:フェニルトリメトキシシラン
SM−6:ジメチルジメトシキシラン
SM−7:メチルフェニルメトキシエトキシシラン
CA−1:水酸化ナトリウム
CA−2:アンモニア
CA−3:酢酸
C−1:ラウリルトリメチルアンモニウムエトサルフェート
C−2:トリブチルメチルアンモニウム=ジエチルホスフェート
A−1:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム





【0055】
【表2】

【0056】
表2において、
S−1:無水ケイ酸単位
S−2:メチルシロキサン単位
S−3:プロピルシロキサン単位
S−4:フェニルシロキサン単位
S−5:ジメチルシロキサン単位
S−6:メチルフェニルシロキサン単位
割合:モル%
1*:表面に複数の凹部と長径方向に沿う1本の割れ目を有する全体として紡錘形状
2*:周面に長手方向に沿う一本の割れ目を有する全体としてラグビーボール様
3*:微粒子の表面に複数の凹部がある。
4*:微粒子の表面は滑らかな表面である。
5*:微粒子の内部に一つの中空部がある。
6*:微粒子の内部に中空部が無い。
【0057】
【表3】

【0058】
表3において
長径(L)の平均値、短径(L)の平均値、凹部の最大径(m)の平均値:単位はμm
吸油量:単位はml/100g
【0059】
試験区分2
本発明に係る中空異形微粒子等の化粧品としての有用性を調べるため、以下の化粧品の調製及び評価を行なった。
【0060】
・化粧品の調製
表4に記載した質量比の割合の組成物を調製した。調製は、番号1〜7の顔料を表4記載の質量比となるようにミキサーを用いて混合し、このなかに、別に予め番号8〜12の成分を表4の質量比となるように採って40℃に加熱しておいた混合物を加え、再度混合した。この混合物を放置し、冷却した後、粉砕し、成形して、試料とした。
【0061】
・評価
前記の試料について、女性パネラー20名により、その使用性(使用時の伸び広がり)及び使用感(べとつき、凹凸感、持続性)を表5に示す評価基準で個々に評価した。結果は平均点を四捨五入して表6に示した。
【0062】
【表4】

【0063】
【表5】









【0064】
【表6】

【0065】
表6において、
R−2:球状シリコーン微粒子(竹本油脂製の商品名TAK−100)
R−3:球状ビニル系微粒子(ガンツ化成社製の商品名ガンツパールGSM1261)
R−4:タルク
【0066】
試験区分3
本発明に係る中空異形微粒子等の樹脂組成物としての有用性を調べるため、光学特性及び耐熱性の要求がより強いポリカーボネート樹脂を用いて以下の樹脂組成物の調製及び成形体の作製並びに評価を行なった。
【0067】
・樹脂組成物の調製及び成形体の作製
ポリカーボネート樹脂(帝人化成社製の商品名パンライトK1285)100部に本発明に係る中空異形微粒子0.7部を加え、混合後、直径40mmのベント付二軸押出機を用いて、樹脂温度280℃で溶融混練し、押し出しを行なってペレット状の樹脂組成物を得た。次いで、このペレット状の樹脂組成物を射出成形機によりシリンダー温度230℃、金型温度60℃で成形し、200×500mmで厚さ3mmの試験片を作製した。
【0068】
・評価
前記の試験片について、光学特性(全光線透過率、ヘイズ)及び耐熱着色性を次のように測定した。結果を表7に示した。
【0069】
・全光線透過率、ヘイズ:JIS−K7105(1981)に準拠し、日本電色社製の商品名NDH−2000を用いて測定した。
【0070】
・耐熱着色性:前記の試験片を200×200mmのサンプルフィルムとして切り出した。この切り出したサンプルフィルムを、温度80℃の熱風循環オーブンの中に入れて180分間保持した。その後、サンプルフィルムの加熱着色度合いを、色彩色差計(ミノルタ社製の商品名CR−300)を用いてb値で測定した。JIS−Z8729(2004)に準拠し、Δbを下記の数1から算出して、結果を表7に示した。
【0071】
【数1】

【0072】
:加熱処理前のサンプルフィルムのb値
:加熱処理後のサンプルフィルムのb値
【0073】
【表7】

【0074】
表7において、
R−5:炭酸カルシウム
全光線透過率:%
耐熱着色性:Δbの値
【0075】
表6及び表7の結果からも明らかなように、本発明に係る中空異形微粒子は、化粧品原料として、また樹脂組成物として、高度の要求に充分に応えることができる。
【符号の説明】
【0076】
11 表面
21 凹部
31 内部
41 中空部
51 割れ目
長径
短径
凹部の最大径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面(11)に複数の凹部(21)を有しており、内部(31)に一つの中空部(41)を有していて、表面(11)と中空部(41)とが長径(L)の方向に沿う1本の割れ目(51)を介して連絡されている全体として紡錘形状の中空異形微粒子であって、長径(L)の平均値が0.1〜30μm、短径(L)の平均値/長径(L)の平均値=0.3〜0.8であることを特徴とする中空異形微粒子。
【請求項2】
長径(L)の平均値が0.5〜20μmの範囲にある請求項1記載の中空異形微粒子。
【請求項3】
凹部(21)の最大径(m)の平均値/長径(L)の平均値=0.01〜0.30である請求項1又は2記載の中空異形微粒子。
【請求項4】
吸油量が50〜150ml/100gのものである請求項1〜3のいずれか一つの項記載の中空異形微粒子。
【請求項5】
下記の化1で示されるシロキサン単位、化2で示されるシロキサン単位及び化3で示されるシロキサン単位から構成された有機シリコーン微粒子であって、化1で示されるシロキサン単位を20〜45モル%、化2で示されるシロキサン単位を50〜75モル%及び化3で示されるシロキサン単位を5〜27モル%(合計100モル%)の割合で有する有機シリコーン微粒子からなるものである請求項1〜4のいずれか一つの項記載の中空異形微粒子。
【化1】

【化2】

【化3】

(化2及び化3において、
,R,R:ケイ素原子に直結した炭素原子を有する有機基)
【請求項6】
化2中のR、化3中のR及びRが炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基である請求項5記載の中空異形微粒子。
【請求項7】
請求項5記載の中空異形微粒子の製造方法であって、下記の化4で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物を20〜45モル%、化5で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物を50〜75%及び化6で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物を5〜27モル%(合計100モル%)となる割合で用いて、先ず化4で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物からこれを塩基性触媒存在下で水と接触させて加水分解することによりシラノール化合物を生成させ、次にこのシラノール化合物と化5で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物及び化6で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物とを塩基性触媒及びカチオン性界面活性剤を存在させた水性条件下で縮合反応させることを特徴とする中空異形微粒子の製造方法。
【化4】

【化5】

【化6】

(化4、化5及び化6において、
,R,R:ケイ素原子に直結した炭素原子を有する有機基
X,Y,Z:炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルコキシ基を有するアルコキシエトキシ基、炭素数2〜4のアシロキシ基、炭素数1〜4のアルキル基を有するN,N−ジアルキルアミノ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子又は水素原子)
【請求項8】
化5中のR、化6中のR及びRが炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基である請求項7記載の中空異形微粒子の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか一つの項記載の中空異形微粒子を含有する化粧品原料。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか一つの項記載の中空異形微粒子を含有する樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−1537(P2011−1537A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88277(P2010−88277)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000210654)竹本油脂株式会社 (138)
【Fターム(参考)】