説明

中空粒子、赤外線反射フィルム及び赤外線反射体

【課題】空隙率が高く、小粒径で、かつ温湿度等の環境変化に強い球状の中空粒子、これを用いた赤外線反射フィルム及び赤外線反射体を提供することにある。
【解決手段】シェルがシリカ(SiO)と金属酸化物(MOx)を含有し、その組成がモル比で、
1<(Si/M)<100
で、かつ体積換算平均粒子径が、10〜200nmであることを特徴とする中空粒子。
(式中、Mは第3族、第4族、第5族、第13族またはSiを除く第14族の金属元素を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小粒径で空隙率が高く、湿度等の環境変化に強い中空粒子、それを用いた赤外線反射フィルム及び赤外線反射体に関する。
【背景技術】
【0002】
中空粒子のうち、略球状で空隙率が高く、可視光の波長より十分に小さいものは、均一分散の容易性と屈折率の低さ、及び透明性の高さにより、光学フィルムへの用途が広がっている。たとえば、中空粒子をバインダー中に分散、塗工して得られる低屈折率の膜は、反射防止層用に需要が高まっている。これは、基材に対し表面層を低屈折率化する必要があるためで、たとえば基材の屈折率が1.6程度の場合、反射率を1.3以下にすることが好ましく、空隙率の高い中空粒子を併用することが有利なためである。一方、低屈折率層と高屈折率層を交互に積層させた積層膜は、太陽光中の近赤外線を反射することから熱線の遮断に効果のあることが知られている。また、低屈折率層と高屈折率層の屈折率差が大きいほど、積層数を減らしても十分な効果が得られるため、低屈折率層の屈折率を下げることが好ましい。
【0003】
中空粒子をより低屈折率化するには、(1)屈折率の低いシェル材料の使用、(2)中空粒子の空隙率を上げる、の2種の手法が考えられる。(1)は、屈折率の低さとナノサイズの粒子の作りやすさから、実質的にシリカ系の材料に限られている。(2)では、元々の粒子径が小さいため、空隙率を上げるには中空粒子のシェル部を薄くする必要があるが、これまで知られているシリカを主にする中空粒子では、およそ5nm程度が実質的な下限であり、それ以下にすると乾燥時の毛管現象や、吸湿(膨潤)⇔乾燥(収縮)に伴う機械的な負荷により、中空粒子が破壊されるやすい。特に100nm以下の粒子外径で空隙率を50%以上とすることは実質的に困難であった。
【0004】
中空粒子の製造方法としては、例えば、エアロゾル法により基本粒子を製造し加熱及び乾燥する方法、金属化合物水性ゾルを噴霧及び乾燥し焼成する方法、W/O型またはO/W/O型エマルジョンを調製し加熱して水及び油を除去する方法等が提案されている。しかしながら、これらの製法により得られた中空粒子は、そのシェルが厚くなりやすいため、空隙率が上がりにくい。空隙率を上げるとシェルの強度が低下しやすいという欠点があった。これは、シェル中の溶媒が揮発する過程で、コア(中空化する部分)が高い流動性を有し不安定であることに起因すると考えられる。
【0005】
これらの課題を解決するために、特許文献1では、炭酸カルシウム等の強固な支持体粒子上にケイ酸塩を酸処理により沈積させてシリカシェルを形成した後、分離、乾燥し、酸で支持体粒子を溶出する製造方法が提案されている。本法は、水系でコストの低減が期待される手法であるが、実際には、ケイ酸Naと同時に酸で分解する炭酸カルシウムから遊離したCaイオンが速やかにシリカのシラノールと結合し、シリカのシラノール同士の縮合による粒子の融着があり、強固なシェル形成を妨げるため、温湿度等の環境変化に耐える、強度の高いシェルを作製するのは容易ではない。
【0006】
また、特許文献2では、以下のような製造方法が提案されている。透過型電子顕微鏡法による一次粒子径が20〜200nmの炭酸カルシウムを水系にて調製し、その後アルコール中に分散させる。そこに、アンモニア水、水、シリコンアルコキシドを、所定量となるように添加することにより、シリカでコーティングされた炭酸カルシウムを調製する。その後、酸を添加して、シリカナノ中空粒子を得ることができる。しかしながら、この製造方法は多量のアルコール系溶媒を使用するため、装置的な負荷が大きく低コスト化は容易ではない。また、シリカ単独の組成からなるシリカのシェルであるため、シェル自体が強固でなく、空隙率の高い中空粒子を作製することも困難であった。
【0007】
さらに、特許文献3では、水系で、凝集の少ない中空粒子を作製する方法が提案されている。しかし、この製造方法は無機酸での処理後、水熱反応を利用するため、装置が大掛かりになるだけでなく、あくまで水が多い系での処理であるため、シラノールの縮合が必ずしも十分には進まず、粒子の十分な強度を得にくいという課題が残っている。
【0008】
特許文献4では、シリカとアルミナからなる微小コア上にシリカのシェルを設けた後、コアのみを溶解することでシリカのシェルを残した粒子を作製している。しかし、やはりシリカ単体からなるシェルであるため、その強度には上限があり、実質5nmの厚みでも温湿度の環境変化に耐えられるシェルにすることは困難であった。
【0009】
このように従来は、空隙率が高く、かつ環境変化にも耐えられる十分な強度を持った中空粒子を得ることが難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2000−500113号公報
【特許文献2】特開2005−263550号公報
【特許文献3】特開2009−234854号公報
【特許文献4】特開2001−233611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、空隙率が高く、小粒径で、かつ温湿度等の環境変化に強い球状の中空粒子、これを用いた赤外線反射フィルム及び赤外線反射体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
【0013】
1.シェルがシリカ(SiO)と金属酸化物(MOx)を含有し、その組成がモル比で、
1<(Si/M)<100
で、かつ体積換算平均粒子径が、10〜200nmであることを特徴とする中空粒子。
(式中、Mは第3族、第4族、第5族、第13族またはSiを除く第14族の金属元素を表す。)
2.前記Mが第3族イットリウム、第4族ジルコニウム、第4族チタン、第5族ニオブ及び第13族ガリウムから選ばれる1種であることを特徴とする前記1に記載の中空粒子。
【0014】
3.前記シェルが、第2族元素をSiに対する質量比で100〜500000ppm含有することを特徴とする前記1または2に記載の中空粒子。
【0015】
4.前記第2族元素がカルシウムまたはマグネシウムであることを特徴とする前記3に記載の中空粒子。
【0016】
5.基材上に、低屈折率層と、該低屈折率層に隣接し該低屈折率層より屈折率が0.1以上高い高屈折率層とを有するユニットを有する赤外線反射フィルムであって、該低屈折率層が、前記1〜4のいずれか1項に記載の中空粒子を含有することを特徴とする赤外線反射フィルム。
【0017】
6.前記5に記載の赤外線反射フィルムを具備することを特徴とする赤外線反射体。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、空隙率が高く、小粒径で、かつ温湿度等の環境変化に強い球状の中空粒子、これを用いた赤外線反射フィルム及び赤外線反射体を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1で得られた本発明の中空粒子4の電子顕微鏡写真である。
【図2】実施例1で得られた本発明の中空粒子9の電子顕微鏡写真である。
【図3】実施例1で得られた比較例の中空粒子23の電子顕微鏡写真である。
【図4】中空粒子質量分率とシェルの屈折率を示すグラフである。
【図5】中空粒子空隙率とシェルの屈折率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、シェルがシリカ(SiO)と金属酸化物(MOx)を含有し、その組成をモル比で、
1<(Si/M)<100
で、かつ体積換算平均粒子径を10〜200nmとすることにより、空隙率が高く、小粒径で、かつ温湿度等の環境変化に強い球状の中空粒子が得られることを見出し本発明に至った次第である。式中、Mは第3族、第4族、第5族、第13族またはSiを除く第14族の金属元素を表す。
【0021】
以下、本発明の中空粒子、それを用いる赤外線反射フィルム及びそれを具備した赤外線反射体について説明する。
【0022】
《中空粒子》
中空粒子は、シェルにより内部が中空化された状態になった粒子である。本発明の中空粒子はその屈折率の低いことに価値があるため、シェルとして屈折率が2を超えるような高い材料(酸化チタン、酸化ジルコニウム等)を、シェル材料として多量に用いることは好ましくない。逆にシリカのように屈折率の低い材料(1.46)を用いることが好ましい。ただし、高屈折率材料であってもシリカと併用することでシェルの強度を増し、シェル厚5nm以下に薄膜化しても、シェル厚5nmのシリカシェル以上に強度を上げることができれば、高屈折率材料を使用することによる屈折率上のデメリットを補う可能性があり、その併用は好ましいことになる。本発明では、特定の金属からなる金属酸化物を特定の比率で含有させることで、そのような効果を得られることを見出した。さらに、第2族の元素、特にカルシウムまたはマグネシウムを含有することで、その効果を一層高めることができることを見出した。なお、特許文献4には、中空粒子の内部に、中空の前駆体となったSi以外の金属酸化物が残されていてもよいとの記載があるが、それをシェル部の強化に用いることは意図されていないため、本発明とは本質的に異なる。
【0023】
一方、中空粒子の大きさにも適当な範囲が存在する。中空粒子が、例えば体積換算平均粒子径が200nmを超えると、シェル厚がたとえ5nm以上あっても空隙率を80%以上の高率とすることができる。しかしこのような粒子は可視光の波長(400〜700nm)に対して同等の大きさであるため、いわゆるレイリー散乱による光の散乱が大きくなり光学的な用途への適用は困難である。そのため体積換算平均粒子径が、可視光波長の1/4以下、すなわち100nm以下で光の波長に対し十分に小さいことがより好ましい。さらに好ましくは60nm以下である。外径60nmでシェル厚5nmの粒子の空隙率は、およそ50%であるが、5nm以下にすると強度が低下しやすくなるため、シリカ単体のシェルとする場合、50%程度が実用の空隙率上限となる。しかし本発明では、シリカ単体に比して強度の高いシェルを提供することができるため、シェルを薄くすることが可能となり空隙率をさらに上げられる。ただし、強度の向上には限界があり、外形が小さすぎると空隙率を上げるためにシェルの厚みを非常に薄くする必要が生じるため、体積換算平均粒子径を10nm未満とすることは実用上必要な空隙率を得ることができなくなるため好ましくない。さらに好ましくは15nm以上である。
【0024】
体積換算平均粒子径は、透過電子顕微鏡(TEM)を用いて100個以上の粒子直径を測定し、粒子形状を球形と仮定して体積換算の平均粒子径を算出する。
【0025】
本発明の中空粒子について、さらに詳細に説明する。本発明における、金属酸化物(MOx)のMは、第3族、第4族、第5族、第13族またはSiを除く第14族の金属元素のうち少なくとも1つから選ばれる。それらのうち、特にイットリウム(3族)、ジルコニウム(4族)、チタン(4族)、ニオブ(5族)、ガリウム(13族)のうち少なくとも1種であることが好ましい。これらの金属は、金属酸化物としてシリカと複合化される。シリカとこれらの金属酸化物の複合化状態は、均一に交じり合っていて、シリカの微粒子をこれらの金属酸化物がつなぐような構造をとっていてもよい。シリカ以外の金属酸化物が単独の粒子を形成する状態は、シリカとの複合化により得られる効果が低くなるため好ましくない。酸化物形成時の金属原子Mの価数は、金属の種類によって決まるが、3価、4価ないし5価であることが好ましい。価数がそれ以外の値の場合、結合が不安定になったり、シリカとの複合化が進みにくくなったりするためである。
【0026】
MとSiとのモル比は、1<(Si/M)<100の範囲である。この範囲でSiとMが存在すると、シェルの強度向上効果が得られる。さらに好ましくは、2<(Si/M)<80である。
【0027】
なお、本発明において、各族のRa以上の原子番号である重元素は、放射性の元素が多く、実用的ではないため本願への適用は好ましくない。また、ランタノイド系の元素も希少性が高く、本発明における用途には好ましくない。
【0028】
〔中空粒子の製造方法〕
SiOと金属酸化物(MOx)との複合化は、液相中、気相中で作製することができるが、その生産性、均一性から液相中での作製が好ましい。液相中でも各種の手法で作製することができるが、コアとなる粒子の表面にシェルとなる材料を付着させ、その後コアを何らかの方法で除去する手法を用いるが好ましい。
【0029】
コアとなる粒子は、固体、液体(ミセル)、気体(気泡)等各種が使用可能であるが、その周囲に作製されるシェルの安定性が高く、かつ小粒径化が可能なことから、固体の微粒子を用いることが好ましい。固体の微粒子としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化亜鉛、シリカとアルミナの複合酸化物、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、りん酸カルシウム等、各種の無機化合物のほか、デンドリマー等を含むポリマー超微粒子や、フラーレン、シルセスキオキサンのようなカゴ状構造等も利用可能である。これらのうち、カルシウム塩、マグネシウム塩の化合物の超微粒子は、安価でかつ粒径を制御しやすく、シェル作製後に内部の溶解も簡易に行えることからその利用が特に好ましい。
【0030】
具体的に、コア粒子にシェルを設ける方法を述べる。
(1)SiOとMOxを同時に原料化合物から析出させる方法
SiOの原料として、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸塩類、TEOS、TMOSに代表されるSiのエトキシド、メトキシド等のアルコキシド類、SiClといった塩化物に代表されるハロゲン化物、Si−N結合を有するシラザン等を用いることができる。
【0031】
MOxの原料についても金属塩(硝酸、硫酸、ハロゲン、りん酸等)、カルボン酸、アミン等の配位子を有する金属錯体、アルコキシド等、液体ないし液相に溶解する化合物であれば特に限定なく用いることができる。これらの化合物を、SiO、MOxの原料とも複数組み合わせてもよい。
【0032】
これらを、コアとなる粒子の存在下で同時に分解反応させ、酸化物とすることで、それらが複合化された状態のシェルをコア上に設けることができる。コア表面にシェルが形成されるかどうかは、複合酸化物とコアの表面電位に依存し、互いの極性が反対であることが好ましい。例えば炭酸カルシウムをコアに用いる場合、等電点がpH:9程度であるため、これより若干低いpH領域で複合シェルを作製すると均一なシェルを形成できることが多い。
(2)SiOとMOxを別々に原料化合物から析出させる方法
上記(1)に示される原料を、少なくとも1種を先に反応させシェルを形成させた後、他種を加え複合化させることもできる。たとえば、SiOのみを小さな粒子径に析出させ、コア粒子の表面に吸着させる。この時点では、粒子間には強固な結合が進んでおらず反応活性な状態である。ここに、他種の金属酸化物原料、ないし超微粒子状態の酸化物を添加し、シリカの表面に吸着、結合後、熟成させることでコア粒子の表面で複合化された状態のシェルを得ることができる。この方法の利点は、(a)シリカの析出反応は他の金属酸化物の生成に比して遅い場合があり、単独であれば粒子径(シェル厚)にあわせたタイミングでシェル化反応をさせやすいこと、(b)シリカ単独でもある程度の強度を有するシェルが形成できるため、シリカシェルを出発として、それを上回るような強度向上が計りやすいこと、すなわちシリカの屈折率の低さを損ないにくいこと等が挙げられる。ただし、(1)の手法と比較して、制御すべきパラメータが多くなり、装置的な負荷が増大するといったデメリットも存在する。手法は適宜選択できる。
【0033】
これらの反応は、各種の液体中で行うことができる。水やアルコール系溶媒が好ましいが、より好ましくは50質量%以上が水である液体中である。特に、環境、装置的な負荷を低減できるよう、80質量%以上が水である液体中が好ましい。
【0034】
本発明では、コア粒子の除去として、コアを溶解する物質の添加のほか、気相中での焼成/酸化による除去、エネルギー線による分解、昇華等各種の手法が適用可能である。中でも、コアを炭酸カルシウムや酸化マグネシウム等、アルカリ性の材料を用い、塩酸等の無機酸や酢酸等の有機酸の水溶液、ないし有機溶剤溶液を添加して溶解する手法が好ましい。
【0035】
本発明においては、シリカと第3族、第4族、第5族、第13族またはSiを除く第14族の金属元素との複合酸化物からなるシェルに、さらに第2族元素をSiに対する質量比で100〜500000ppm含有されていることが好ましく、1000〜50000ppm含有されていることがより好ましい。第2族元素の働きは、必ずしも明確でないが、イオン的な相互作用によりシェルの複合酸化物化による強度向上を促進していると考えられる。シェルを構成する金属酸化物との違いは、酸、アルカリ、キレート化合物等によりシェル内から抽出可能であり、シェル中に強固に取り込まれていない点である。逆に複合シェルをなす金属は酸化物以外では安定な構造をとりにくいため、酸化物であることが必要であるが、第2属元素は必ずしも酸化物である必要はない。ハロゲン化物、水酸化物、硫酸、硝酸、燐酸、炭酸等の塩、酢酸等との有機酸塩であってもよい。
【0036】
第2族元素を含有させるには、(1)シェル形成時に取り込まれるようにあらかじめ原料を加えておく方法、(2)シェル形成後に適宜加える方法、が考えられるが、どちらの手法をとることも可能である。(1)の方法でシェル形成時に取り込まれるようにするには、各種金属酸化物原料と同時に、第2族元素を可溶性の塩として加えることが好ましい。各種無機塩のほか、有機酸塩、炭酸塩等の形態で加えることが好ましい。また第2族元素を含有するコアを用いて中空のシェルを作製すると、自動的にシェル内に第2族元素が含有されることから、コアにこのような粒子を用いることが好ましい。コアに含有される第2族元素の溶解性が低くても、シェル形成材の原料が添加された時点である程度の溶解度が確保できればよい。例えば、TiClのような塩化物は、酸化物に変化する時点で強酸であるHClを放出する。このとき、第2族元素であるCaが、CaCO等の比較的溶解度の低い塩であっても塩酸により溶解度が増すため、シェル形成中に容易にCaイオンが取り込まれる。最後にコアを除去する工程で、ある程度、第2族元素を残すように酸等で処理することで、第2族元素の含有量は調整できる。(2)の手法では、(1)と同様に、シェル形成後に各種の可溶性塩を加えることでシェルに第2族元素を導入することが可能になる。
【0037】
第2族元素の量が少ないと、その強度向上効果が十分に発揮されず、逆に多すぎると強度向上を阻害する働きがあるため、好ましくない。Siに対する質量比で100〜500000ppm含有することが好ましく、1000〜50000ppm含有することがより好ましい。第2族元素の種類としては、その効果の出やすさから、マグネシウム及びカルシウムが好ましい。
【0038】
次に、本発明の中空粒子の用途を説明する。
【0039】
《樹脂フィラー》
樹脂の光散乱性、機械的物性等の制御のため、各種のフィラーが用いられる。これらのフィラーのうち、中空のガラスビーズ状のフィラーは、通常ミクロンオーダーの大きさがあるため、光を強く散乱、反射し、光の遮蔽性を上げるために用いられる。本発明の中空粒子は、光遮蔽効果よりも、透明、軽量で、かつ表面の光反射を低下させる用途に適する。下記の反射防止フィルムにもあるように、空気と樹脂の表面での屈折率差が大きいとその表面反射が大きくなるためである。代表的な用途として、下記に詳細を述べる反射防止フィルム、射出成型、押出し成型等で得られる各種樹脂成型体への適用が考えられる。樹脂成型体では、その表面への機能の付与の観点で、本発明のような中空粒子が実用化された例がないが、逆にこれまでにない機能の付与が可能な材料となることが容易に想定できる。
【0040】
《反射防止フィルム》
本発明の中空粒子を用いてその物性の効果が特に有効に発揮される光学材料として、反射防止膜が挙げられる。反射防止膜は、各種ディスプレーの最表面に設けられ、外光の反射を防止して、ディスプレー表示の視認性を高めるのに大きな効果を発揮する。反射防止膜に必要な物性は、空気層(屈折率n0)から屈折率n1の媒体へ入射する時の反射率Rを小さくすることである。
【0041】
R=(n1−n0)/(n1+n0)
例えば、汎用的な素材であるPET基材は、屈折率を1.63程度に見積もれる。このPETでシミュレーションすると、屈折率1.4の層を設けた際の最低反射率は1%弱であり、この系で最低反射率を0にするために必要な屈折率は1.277程度と非常に低くなる。空隙率50%のシリカ中空粒子であっても、その空隙率は1.23程度であり、バインダー中に30体積%で分散させても屈折率を1.3以下にすることは、バインダーの選定を非常に困難にする。PET表面に表面層の接着層やハードコート等、別の機能を有する層を設けようとすると、屈折率は1.63よりさらに低下することが多いため、一層の低屈性率層でこのような低屈折率層を設けることは困難となる。より性能向上させるためには、高屈折率の層と低屈折率の2層以上の層を積層して反射界面を増やしたマルチコートという手法をとる場合が多い。しかし、本発明の中空粒子は空隙率が大きいので、一層でも反射率の低い反射防止膜を作製することが可能になる。もちろん、2層以上の積層膜であっても、低屈折率層の屈折率を容易に制御できるためその使用は可能である。
【0042】
《赤外線反射フィルム》
本発明の高空隙率(低屈折率)の中空粒子を含有させると、層の屈折率を大きく低下させられることから、層数が減じられ、コスト、性能上効果が大きいのは赤外線反射フィルムである。
【0043】
以下、本発明の赤外線反射フィルムの構成要素、及び本発明を実施するための形態等について詳細な説明をする。
【0044】
赤外線反射フィルムの基本的な光学特性としては、高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.1以上であることが好ましい。また、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率としては、50%以上で、かつ、波長900〜1400nmの領域に反射率50%を超える領域を有することが好ましい。
【0045】
一般に、赤外線反射フィルムにおいては、高屈折率層と低屈折率層の屈折率の差は大きいほど、少ない層数で赤外線反射率を高くすることができる観点で好ましいが、本発明では、高屈折率層と低屈折率層から構成されるユニットの少なくとも1つが、隣接する高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.1以上であることを特徴とし、好ましくは0.3以上であり、特に好ましくは0.4以上である。
【0046】
特定波長領域の反射率は、隣接する2層の屈折率差と積層数で決まり、屈折率の差が大きいほど、少ない層数で同じ反射率を得られる。この屈折率差と必要な層数については、市販の光学設計ソフトを用いて計算することができる。例えば、赤外線反射率90%以上を得るためには、屈折率差が0.1より小さいと100層を越える層数が必要となり、生産性が低下するだけでなく、積層界面での散乱が大きくなり、透明性が低下し、また故障なく製造することも非常に困難になる。反射率の向上と層数を少なくする観点からは、屈折率差に上限はないが、実質的には1.40程度が限界である。
【0047】
〔赤外線反射フィルムの構成〕
次いで、本発明の赤外線反射フィルムにおける高屈折率層と低屈折率層の基本的な構成概要について説明する。
【0048】
本発明の赤外線反射フィルムにおいては、基材上に、高屈折率層と低屈折率層から構成され、該高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.1以上であるユニットを少なくとも1つ積層した構成であればよいが、好ましい高屈折率層と低屈折率層の層数としては、上記の観点から、総層数の範囲としては100層以下、すなわち50ユニット以下であり、より好ましくは40層(20ユニット)以下であり、さらに好ましくは20層(10ユニット)以下である。
【0049】
また、本発明の赤外線反射フィルムにおいては、高屈折率層の好ましい屈折率としては1.80〜2.50であり、より好ましくは1.90〜2.20である。また、低屈折率層の好ましい屈折率としては1.10〜1.60であり、より好ましくは1.20〜1.50である。
【0050】
本発明の赤外線反射フィルムにおいては、基材に隣接する層が、酸化珪素を含む低屈折率層で、最表層も酸化珪素を含む低屈折率層である層構成が好ましい。
【0051】
本発明において、高屈折率層、低屈折率層の屈折率は、下記の方法に従って求めることができる。
【0052】
基材上に屈折率を測定する各屈折率層を単層で塗設したサンプルを作製し、このサンプルを10cm×10cmに断裁した後、下記の方法に従って屈折率を求める。分光光度計として、U−4000型(日立製作所社製)を用いて、各サンプルの測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止して、5度正反射の条件にて可視光領域(400〜700nm)の反射率を25点測定して平均値を求め、その測定結果より平均屈折率を求める。
【0053】
〔赤外線反射フィルムの構成要素〕
以下、本発明の赤外線反射フィルムの各構成要素の詳細について説明する。
【0054】
〔基材〕
本発明の赤外線反射フィルムに適用する基材としては、フィルム支持体であることが好ましく、フィルム支持体は、透明であっても不透明であってもよく、種々の樹脂フィルムを用いることができ、ポリオレフィンフィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリ塩化ビニル、3酢酸セルロース等を用いることができ、好ましくはポリエステルフィルムである。
【0055】
ポリエステルフィルム(以降ポリエステルと称す)としては、特に限定されるものではないが、ジカルボン酸成分とジオール成分を主要な構成成分とするフィルム形成性を有するポリエステルであることが好ましい。
【0056】
主要な構成成分のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルチオエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸等を挙げることができる。
【0057】
また、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビスフェノールフルオレンジヒドロキシエチルエーテル、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、シクロヘキサンジオール等を挙げることができる。
【0058】
これらを主要な構成成分とするポリエステルの中でも透明性、機械的強度、寸法安定性等の点から、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジオール成分として、エチレングリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールを主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。中でも、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを主要な構成成分とするポリエステルや、テレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールからなる共重合ポリエステル、及びこれらのポリエステルの二種以上の混合物を主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。
【0059】
本発明に係るフィルム支持体の厚みは、10〜300μmであることが好ましく、より好ましくは20〜150μmである。また、本発明のフィルム支持体は、2枚を重ねたものであってもよく、この場合、その種類が同じでも異なってもよい。
【0060】
〔低屈折率層〕
本発明に係る低屈折率層は、本発明の中空粒子を含有する。このとき、適当な皮膜形成性バインダーを溶解した媒体中に本発明の中空粒子を分散し、塗布・乾燥することで低屈折率層の作製に使用することが好ましい。
【0061】
分散媒としては、水、アルコール(例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)、及びケトン(例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、ケトンアルコール(例えばジアセトンアルコール)、プロピレンモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が好ましい。
【0062】
液中の分散濃度に特に限定はないが、凝集せず、良好な塗布状態を形成できる濃度が好ましい。中空粒子と、皮膜形成能を有するバインダーの量(体積)比(F/B)は、0.2〜3が好ましい。3を越えると、均一で平滑な塗布膜の形成が困難になり、0.2未満では、中空粒子の体積含有率が低くなるため、十分な屈折率低下作用が発揮できない。
【0063】
バインダーの種類に特に制限はないが、水系の塗布であれば、PVA、PVP、ゼラチン等のバインダー、溶剤系であれば、アクリル、ウレタン、シリコーン、フッ素系等のバインダーが適用可能である。これらのバインダーが低分子量成分を多く含有していると、乾燥、硬化後も中空粒子内部に留まり、空隙率を下げ、屈折率低減効果に悪影響を与えることから、溶媒を含有させるか、中空粒子内部に浸透しうる低分子成分の含有率を下げた状態で用いることが好ましい。
【0064】
皮膜作製には、上記の揮発性溶媒添加系のほか、熱可塑性バインダーを熱溶融した状態で中空粒子を分散、含有させ、そのままフィルム化する手法も可能である。
【0065】
〔高屈折粒子層〕
本発明に係る高屈折率層は、(1)高屈折率材料の溶解液・分散液の塗布乾燥、(2)蒸着、スパッタ等の気相法、(3)高屈折率の樹脂フィルムを用いることができる。
【0066】
(1)の具体例として、溶液、分散液中に金属酸化物粒子を含有することが好ましい。金属酸化物粒子としては、TiO、ZnO、ZrOが好ましく、高屈折率層を形成するための後述の金属酸化物粒子含有組成物の安定性の観点ではTiO(二酸化チタン)がより好ましい。また、TiOの中でもルチル型が、触媒活性が低いために高屈折率層や隣接した層の耐候性が高くなり、さらに屈折率が高いことから好ましい。二酸化チタン微粒子の好ましい平均一次粒子径(体積平均粒径)は、4〜50nmであり、より好ましくは4〜30nmである。
【0067】
本発明に係る酸化チタン粒子の体積平均粒径とは、粒子そのものをレーザー回折散乱法、動的光散乱法、あるいは電子顕微鏡を用いて観察する方法や、屈折率層の断面や表面に現れた粒子像を電子顕微鏡で観察する方法により、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、それぞれd1、d2・・・di・・・dkの粒径を持つ粒子がそれぞれn1、n2・・・ni・・・nk個存在する酸化チタン粒子の集団において、粒子1個当りの体積をviとした場合に、体積平均粒径mv={Σ(vi・di)}/{Σ(vi)}で表される体積で重み付けされた平均粒径である。
【0068】
高屈折率層で用いられるバインダーに特に制限はないが、低屈折率層と異なり、比較的低分子量成分を含有していても使用が可能である。そのため、活性剤、分散剤等の分散性改良剤のほか、紫外線吸収剤、可塑剤、酸化防止剤、防黴剤、硬化剤、増粘剤等、低屈折率層よりも添加剤を多量に加えることも可能である。
【0069】
(2)の具体例としては、蒸着、スパッタ、CVD等、各種の手法が適用可能である。低屈折率層と異なり、空隙という不均一構造を形成する必要がなく、均質な膜でよいため、通常の気相法による成膜手法が適用可能である。また、低屈折率層が、シェルがほとんど閉じた形状の中空粒子を含有しているだけで、層の表面に微小なクラック等がほとんど存在していないことも、これらの成膜手法の適用を可能にしている。高屈折率層としては、酸化チタンのほか、ジルコニア、酸化亜鉛等の材料が適用可能である。
【0070】
(3)の具体例としては、芳香環やイオウ原子を有する高屈折率樹脂の適用が挙げられる。低屈折率層の屈折率は、1.45以下になる場合が多いため、高屈折率層用の樹脂としては屈折率1.55以上のものが好ましい。PC(1.584)、ポリスチレン(1.592)、PET(1.576)、PEN(1.64)、PPS(1.77)、その他、フルオレンを有する化合物等が挙げられる。
【0071】
〔赤外線反射フィルムの製造方法〕
これら材料のフィルム化には、溶融成膜、溶液成膜等各種の手法の適用が可能である。また赤外光反射に必要な厚みに調節するため、プレス、延伸等の手法を用いることができる。一層ずつ厚みを調整後低屈折率層との接合に適用してもよいが、低屈折率層を挟み込んでから、一括して延伸し膜厚を調整することも可能である。以下に詳細を述べる。
【0072】
(高屈折率層、低屈折率層とも塗布により作製する方法)
本発明の赤外線反射フィルムの製造方法では、基材上に低屈折率層と低屈折率層に隣接した高屈折率層から構成されるユニットを積層して形成されるが、具体的には低屈折率層と高屈折率層とを交互に塗布、乾燥して積層体を形成することが好ましい。
【0073】
塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許第2,761,419号、同第2,761,791号明細書に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布方法、エクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。
【0074】
同時重層塗布を行う際の高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液の粘度としては、スライドビード塗布方式を用いる場合には、5〜100mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは10〜50mPa・sの範囲である。また、カーテン塗布方式を用いる場合には、5〜1200mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは25〜500mPa・sの範囲である。
【0075】
塗布後の層間混合を抑制するため、冷却により急速に高粘度化することが望ましい。現実的には、冷風により15℃程度まで冷却することが好ましいので、塗布液の15℃における粘度としては、100mPa・s以上が好ましく、100〜30,000mPa・sがより好ましく、さらに好ましくは3,000〜30,000mPa・sであり、最も好ましいのは10,000〜30,000mPa・sである。
【0076】
塗布及び乾燥方法としては、低屈折率層塗布液と高屈折率層塗布液を30℃以上に加温して、塗布を行った後、形成した塗膜の温度を1〜15℃に一旦冷却し、10℃以上で乾燥することが好ましく、より好ましくは、乾燥条件として、湿球温度5〜50℃、膜面温度10〜50℃の範囲の条件で行うことである。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜均一性の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。同時重層塗布は、製造コスト、大面積化の面から好ましい方法である。
【0077】
(低屈折率層を高屈折率樹脂基材上に塗布する方法)
高屈折率の基材上に、バインダー溶液に本発明の中空粒子を分散した液を塗布して低屈折率層を作製できるほか、溶融した熱可塑性樹脂中にフィラーとして本発明の中空粒子を練りこみ、そのままフィルムダイ、いわゆるTダイを用いて溶融押出し製膜することもできる。低屈折率層、高屈折率層とも、100〜200nmの厚さに調整する必要があるため、液を塗布して乾燥させた場合、あるいはTダイを用いて溶融成膜した場合も、延伸やカレンダーによって厚みを調整する。溶融押出しを用いる場合、共押出し法により多層の多層フィルムを作製し、それらをさらに積層した後に延伸、カレンダーを行うことで、工程数を減らすことも可能である。
【0078】
(その他の添加剤)
本発明に係る高屈折率層と低屈折率層に適用可能な各種の添加剤を以下に列挙する。例えば、特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号等の公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等の公報に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0079】
《赤外線反射体》
本発明の赤外線反射フィルムは、近赤外線を反射し熱線の遮断に効果のあることから、幅広い分野に応用することができる。例えば、建物の屋外の窓や自動車窓等長期間太陽光に晒らされる設備に貼り合せ、赤外線遮蔽体として用いられる。例えば、熱線反射効果を付与する熱線反射フィルム等の窓貼用フィルムを貼合した遮蔽体、農業用ビニールハウス用フィルム等として、主として耐候性を高める目的で用いられる赤外線遮蔽体等がある。
【0080】
特に、本発明の赤外線反射フィルムを直接もしくは接着剤を介してガラスもしくはガラス代替樹脂基材に貼合せた部材(赤外線反射体)には好適である。
【0081】
接着剤は、窓ガラス等に貼り合わせたとき、赤外線反射フィルムが日光(熱線)入射面側にあるように設置したり(内貼り)、外側と内側のガラスもしくは基材の間に挟持すると(合せガラス)、水分等周囲ガスから封止でき耐久性の点で好ましい。
【0082】
適用可能な接着剤としては、光硬化性もしくは熱硬化性の樹脂を主成分とする接着剤を用いることができる。
【0083】
接着剤は紫外線に対して耐久性を有するものが好ましく、アクリル系粘着剤またはシリコーン系粘着剤が好ましい。さらに粘着特性やコストの観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。特に剥離強さの制御が容易なことから、アクリル系粘着剤の中で、溶剤系及びエマルジョン系の中で溶剤系が好ましい。アクリル溶剤系粘着剤として溶液重合ポリマーを使用する場合、そのモノマーとしては公知のものを使用できる。
【0084】
また、合わせガラスの中間層として用いられるポリビニルブチラール系樹脂、あるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂を用いてもよい。具体的には可塑性ポリビニルブチラール(積水化学工業社製、三菱モンサント社製等)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(デュポン社製、武田薬品工業社製、デュラミン)、変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー社製、メルセンG)等である。なお、接着層には紫外線吸収剤、抗酸化剤、帯電防止剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色、接着調整剤等を適宜添加配合してもよい。
【実施例】
【0085】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。
【0086】
実施例1
〔中空粒子1〜31の作製〕
ビーズ状のイオン交換樹脂(強酸性陽イオン交換樹脂 IR120B オルガノ社製)36.5mlを水150gに加えたものを35℃に保温し、激しく攪拌しながら25℃に保温した5号ケイ酸ソーダ(富士化学社製)7.5gを一気に添加した。さらに30分攪拌を続け、陽イオン交換樹脂を分離しシリカゾルを得た。9質量%に調整した炭酸カルシウム分散液(株式会社ニューライム ユニフレックス SS)100gに、上記シリカゾル130gと水100gを加え、ウルトラアペックスミル(UAM−015 寿工業製)で分散した。分散は、0.05mmφのジルコニアビーズを用い、回転数は周速6m/sec、30℃で10分行った。ここに、表1に示す各種の金属塩化物1N水溶液を、Si/Mモル比が表1に示す値になるように加え、さらに5分間上記の分散を継続した。その後得られた液を、攪拌しながら100℃で3時間攪拌し反応を終了させた。このときの液pHは、8.0〜8.5の範囲であった。
【0087】
得られた分散液と上澄み未反応液との分離、洗浄を遠心分離と加水を3回繰り返して行った後、110℃で3時間乾燥し、炭酸カルシウムをコアにしてシリカと他の金属酸化物の複合酸化物によりシェル化した粒子を得た。これに1質量%の酢酸水溶液を、炭酸カルシウムを溶解するのに十分な量加えコア粒子を溶解後、遠心分離と加水を3回繰り返して洗浄後に再び110℃、3時間乾燥し、複合酸化物シェルを有する中空粒子1〜31を得た。またZrClの添加量については、Si/Mモル比を変化させた。
【0088】
〔中空粒子4Bの作製〕
中空粒子4の作製において、イオン交換樹脂を含有した水を3℃に保温した以外は同様にしてシリカゾルを作製した。また、ウルトラアペックスミルによる分散を、0.015mmのビーズを用い周速を12m/secに上げて行った以外は、中空粒子4と同様にSiとMの複合化を行った。その後の工程は、中空粒子4の作製と同様にして行った。
【0089】
〔中空粒子4Cの作製〕
中空粒子4の作製において、イオン交換樹脂を含有した水を10℃に保温した以外は同様にしてシリカゾルを作製した。また、ウルトラアペックスミルによる分散を、0.03mmのビーズを用い周速を12m/secに上げて行った以外は、中空粒子4と同様にSiとMの複合化を行った。その後の工程は、中空粒子4の作製と同様にして行った。
【0090】
〔中空粒子4Dの作製〕
中空粒子4の作製において、イオン交換樹脂を含有した水を10℃に保温した以外は同様にしてシリカゾルを作製した。また、ウルトラアペックスミルによる分散を、0.03mmのビーズを用い周速を10m/secに上げて行った以外は、中空粒子4と同様にSiとMの複合化を行った。その後の工程は、中空粒子4の作製と同様にして行った。
【0091】
〔中空粒子4Eの作製〕
中空粒子4の作製において、シリカゾルを5nmの市販シリカゾル(スノーテックスOXS、日産化学製)を濃度が同じになるように純水で希釈して用い、炭酸カルシウムとしてPP(株式会社ニューライム製)を用いた以外は、中空粒子4と同様にSiとMの複合化を行った。その後の工程は、中空粒子4の作製と同様にして行った。
【0092】
〔中空粒子4Fの作製〕
中空粒子4の作製において、シリカゾルを9nmの市販シリカゾル(スノーテックスOS、日産化学製)を濃度が同じになるように純水で希釈して用い、炭酸カルシウムとしてPP(株式会社ニューライム製)を用い、その分散時間を3分に短縮した以外は、中空粒子4と同様にSiとMの複合化を行った。その後の工程は、中空粒子4の作製と同様にして行った。
【0093】
〔中空粒子4Gの作製〕
中空粒子4の作製において、シリカゾルを20nmの市販シリカゾル(スノーテックスO−40、日産化学製)を濃度が同じになるように純水で希釈して用い、炭酸カルシウムとして1〜3ミクロンの軽質タンカル(株式会社ニューライム製)を用いた以外は、中空粒子4と同様にSiとMの複合化を行った。その後の工程は、中空粒子4の作製と同様にして行った。
【0094】
〔中空粒子の評価〕
(シェル形成状態の評価)
上記で得られた中空粒子を、そのままの状態でTEM(日立製:HF−2000型)で各10枚の撮影し、複合酸化物によるシェルの形成状態を下記基準で評価した。
【0095】
5:加えたシリカ粒子の90%以上がシェル形状を保っている
4:加えたシリカ粒子の50%〜90%未満がシェル形状を保っている
3:加えたシリカ粒子の10%〜50%未満がシェル形状を保っている
2:加えたシリカ粒子の10%未満がシェル形状を保っている
1:加えたシリカ粒子のうちシェル形状を保っている粒子がない
シェル形状を保っている粒子が多い順に、中空粒子の強度が高いことを示す。
【0096】
また、TEM写真から任意に抽出した100個の粒子から体積平均粒子径(粒径)を求めた。
【0097】
(Si/M比率の測定)
上記TEMに付属するEDX(エネルギー分散型X線分光法)を用いて測定した。
【0098】
(中空粒子の空隙率評価)
本実施例においては、ISPジャパン社製のPVP/PVA(ポリビニルピロリドン−ポリビニルアセテート)コポリマー、W−635(PVP/PVA=6/4、屈折率n=1.50)をバインダーとし、粒子質量分率=0.1で2質量%にした水溶液を、ガラス上にアプリケータで塗布、150℃で乾燥させて1μm厚程度の皮膜を作製し、その屈折率を分光エリプソメーター(Horiba製、MM−16)で測定した。本実施例では波長589nmに対する値(n)で比較した。実際の空隙率、すなわち粒子全体に対する空隙体積の比をTEM写真から正確に求めることは困難であるが、ポリマーバインダーに分散して塗布乾燥することで皮膜を作製し、この皮膜の屈折率を測定すると、中空粒子内部の空隙が多いほど皮膜の屈折率も低下していく。このことから、中空粒子の空隙率の平均値を逆算することができる。シェルが強固で、乾燥による破壊が少ないほど、粒子のシェルが破壊されにくくなるため、空隙率の平均値は増大し、シェルが強固であると言い換えることもできる。空隙率に依存する屈折率の変化を式にすると下記のようになる。
【0099】
平均屈折率(navg)=x×n+(1−x)×n
ここで、xは粒子の中空粒子の体積分率(空隙含む)、nは中空粒子の屈折率、nはバインダーの屈折率である。さらに、
x=a/S/(a/S+(1+(1−a)/S
と表される。ここで、aは粒子の質量分率、Sは粒子の見かけ比重(粒子真比重×(1−V)、Vは空隙率)、Sはバインダーの比重である。
【0100】
シリカの屈折率は1.46で、TiOやZrOの屈折率は一般に2以上と高く、Si/M比率の測定(元素分析)の結果に基づいて、シェルの屈折率を算出した。
【0101】
シェルに取り込まれているTi、Zr原子の割合が、Siに比して少ない場合、シェルの屈折率を1.46、シリカの真比重=2、バインダーの比重を1.25とし、この関係をグラフにすると図4(PVP/PVA屈折率=1.50)のようになる。さらに、粒子空隙率と皮膜の屈折率を図5(PVP/PVA屈折率=1.50、粒子質量分率=0.1)に示す。これらの図から、皮膜の屈折率測定値から中空粒子の空隙率を逆算することができる。また、粒子の質量分率が同一であれば、皮膜の屈折率が低いほど空隙率が大きいことも分かる。測定した皮膜の屈折率から逆算し中空粒子の空隙率を求めた。
【0102】
評価の結果を表1に示す。
【0103】
【表1】

【0104】
毛管収縮力が強く働く水から、110℃、3時間乾燥しているため、シェル形状が維持されにくいが、比較例の中空粒子に比べ、本発明の中空粒子はそのシェル形状をとどめている。このことから本発明の中空粒子は、吸湿→乾燥に代表される環境変化に強いことが分かる。また、空隙率も高いことも、乾燥収縮により、中空部の体積が減っておらず、シェルが強固であることを示している。なお、中空粒子4Fでは、屈折率測定用に作製した皮膜の光散乱が大きく、フィッティングによる屈折率の測定ばらつきが大きくなった。中空粒子4Gでは皮膜の屈折率測定が不能になるほど光散乱が大きく、空隙率の算出ができなかった。
【0105】
中空粒子4、9、23の写真をそれぞれ図1〜3に示す。SiとZrを複合化した場合、体積平均粒子径30nmと粒径が小さく、シェル厚2〜3nm程度の中空粒子が多く形成されていることが分かる。
【0106】
中空粒子24〜31の比較から、Si/Mモル比を変化させ、SiとZrを複合化した場合、Si/Mモル比が2.9〜74ではシェル形状を保っている粒子が多く、1.2〜85ではシェル形状を保っている粒子があるが、0.8及び110ではシェル形状を保っている粒子がないことが分かる。
【0107】
また、本発明のように体積平均粒子径が10〜200nmのとき、その構造が乾燥に耐える強度を有していると同時に、光散乱が少ないという、光学的に好ましい性能を満たせることが分かる。
【0108】
実施例2
〔中空粒子32の作製〕
実施例1の中空粒子4の作製において、炭酸カルシウムを除去した後、十分な量の陽イオン交換樹脂(強酸性陽イオン交換樹脂IR120B)を加え、100℃で24時間加熱還流した。イオン交換樹脂による24時間処理により、CaがSiに対し50ppm程度になっていることが確認できた。なお、イオン交換樹脂処理前の中空粒子4のCaは1100ppmであった。
【0109】
その後、陽イオン交換樹脂を分離し、中空粒子のSiに対する質量比が1500ppmとなるようにBeの塩化物水溶液を添加し、100℃で3時間加熱後、遠心分離と加水を3回繰り返して洗浄し、110℃で3時間乾燥し、中空粒子32を作製した。
【0110】
〔中空粒子33〜76の作製〕
中空粒子32の作製において、Beの塩化物の種類とSiに対する質量比を変えて表2の種類と値になるように添加し、同様にして中空粒子33〜76を作製した。
【0111】
〔中空粒子の評価〕
(第2族元素の定量)
中空粒子の第2族元素の含有量は、HF/HNO/HClOによる分解後、HFをマスキングしてICPを用いて定量した。
【0112】
(シェル形成状態の評価)
実施例1と同様に評価した。なお、TEMでシェルの形成が確認できる粒子においては、その体積平均粒子径は25〜30nm程度であることが確認できた。
【0113】
評価の結果を表2に示す。
【0114】
【表2】

【0115】
表より、第2族元素が含有されているとシェルの強度が向上していることが分かる。第2族元素の量は、Siに対する質量比で100〜500000ppmが好ましく、1000〜50000ppmがより好ましいことが分かる。なお、Caを50ppm以下にしたものは、他の第2族元素を加えた系よりも、シェル形成量がかなり少なくなっていた。実施例1と同様に本発明の粒子は、吸湿→乾燥に代表される、環境変化に強いことが分かる。
【0116】
実施例3
〔赤外線反射フィルムの作製〕
(低屈折率層塗布液の調製)
実施例1の中空粒子4の作製で、ZrClを添加、100℃3時間の反応後、下記含有量となるようにPVAを加えた後、UAM−015で5分間分散処理を行った(周速6m/sec)。その後、実施例2と同様に、十分な量の酢酸を加え、コアである炭酸カルシウムを溶解後、限外ろ過装置を用いて、不純物となる各種水溶性塩類を除去した。さらに、十分な量の陽イオン交換樹脂(強酸性陽イオン交換樹脂 IR120B)を加え、100℃で24時間加熱還流し、陽イオン交換樹脂を分離した。中空粒子のSiに対する質量比(含量)が表3の値になるように、第2族元素のMgまたはCaの塩化物を添加し、100℃で3時間加熱した。得られた中空粒子分散液は、再び限外ろ過で洗浄し、中空粒子を得た。
【0117】
この粒子を下記の質量部になるよう調製し、赤外線反射フィルム1〜22の低屈折率用塗布液とした。
【0118】
中空粒子 39部
PVA−235(クラレ社製) 24部
界面活性剤(コータミン24P、5%水溶液、花王社製) 4部
ホウ酸(3%水溶液、東京化成社製) 4部
純水 941部
また、赤外線反射フィルム23〜24の低屈折率層塗布液は、従来のシリカ中空粒子(粒子径50nm、シェル厚約6nm、日揮触媒化成工業(株)製)のイソプロパノール分散液を、ロータリーエバポレーターを用いてイソプロピルアルコールから水に溶媒置換を行い、シリカ微粒子20質量%の分散液を用いた。赤外線反射フィルム24の低屈折率層塗布液は、従来のシリカ中空粒子20質量%の分散液を得て、それを上記のように39部になるよう調製して用いた。
【0119】
また、赤外線反射フィルム12の低屈折率用塗布液の調製において、中空粒子4を実施例1で作製した中空粒子4B〜4Gに変更し、中空粒子のSiに対する質量比(含量)が表3の値になるように、第2族元素のCaの塩化物を添加した以外は同様にして、赤外線反射フィルム25〜30の低屈折率用塗布液を得た。
【0120】
(高屈折率層塗布液)
(二酸化チタン分散液の作製)
二酸化チタンとしての濃度が100g/Lの、硫酸チタン水溶液を熱加水分解して得た二酸化チタン水和物を水に懸濁させた水性懸濁液10Lに濃度10モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液30Lを撹拌下で徐々に添加した、その後温度を90℃として5時間熟成した後、塩酸で中和し、ろ過、水洗した。得られた塩基処理二酸化チタンを40℃の純水に懸濁させた後、撹拌下でクエン酸を酸化チタンに対し0.4モル%加え昇温した。液温が95℃になったところで、濃塩酸を塩酸濃度が30g/Lになるよう加え、液温を維持しつつ3時間撹拌した。得られた二酸化チタン分散液は二酸化チタン粒子が20質量%でpHは1.4であった。
【0121】
マルバーン社製ゼータサイザーナノにより粒径測性を行ったところ、体積平均粒径は35nm、単分散度は16%であった。また、この二酸化チタン分散液を105℃で3時間乾燥させて粒子粉体を得て、日本電子データム社製JDX−3530型を用いてX線回折の測定を行ったところ、酸化チタン粒子の晶癖はルチル型であることを確認した。
【0122】
(高屈折率層塗布液の調製)
下記の添加物1)〜5)を、まず、1)二酸化チタン分散液を攪拌しながら50℃まで昇温した後、2)低分子量ゼラチンを添加して30分間攪拌した。次いで、3)高分子量ゼラチンと4)純水を添加し、90分間攪拌した後、5)界面活性剤を添加、混合し、pH=2.8の高屈折率層塗布液1を調製した。組成を質量部で示す。
1)20質量%二酸化チタン分散液2(ルチル型酸化チタン粒子) 60部
2)PVA−235 5%水溶液(クラレ社製) 225部
3)純水 150部
4)5.0質量%界面活性剤水溶液(コータミン24P、4級アンモニウム塩系カチオン性界面活性剤、花王社製) 0.45部
《赤外線反射フィルムの作製》
16層重層塗布可能なスライドホッパー塗布装置を用い、前記の低屈折率層塗布液及び高屈折率層用塗布液を45℃に保温しながら、45℃に加温した厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4300:両面易接着層)上に、それぞれ交互に8層ずつ、乾燥時の膜厚が低屈折率層は各層180nm、高屈折率層は各層130nmになるように計16層を毎秒100mの速度で同時重層塗布を行った。塗布直後、5℃の冷風を吹き付けてセットさせた。このとき、表面を指でふれても指に何もつかなくなるまでの時間(セット時間)は5分だった。セット完了後、80℃の温風を吹き付けて乾燥させて、赤外線反射フィルムを作製した。
【0123】
《赤外線反射フィルムの評価》
(屈折率の測定)
基材上に屈折率測定の対象層(高屈折率層、低屈折率層)をそれぞれ単層だけで塗設したサンプルを作製し、下記の方法に従って各高屈折率層及び低屈折率層の屈折率を求めた。
【0124】
分光光度計としてU−4000型(日立製作所社製)を用いて、各サンプルの測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止して、5度正反射の条件にて可視光領域(400〜700nm)の反射率の測定結果より、屈折率を求めた。
【0125】
(可視光透過率及び赤外線透過率の測定)
上記分光光度計(積分球使用、日立製作所社製、U−4000型)を用い、各試料の300〜2000nmの領域における透過率を測定した。可視光透過率は550nmにおける透過率の値を用い、これを可視光透過性の指標とした。
【0126】
赤外線透過率は1200nmにおける透過率の値を測定し、この値を赤外線反射性の指標として評価した。透過率が低いほど反射性が高い。
【0127】
(環境変化に対する耐性の評価)
上記単層試料及び重層試料について、20℃、相対湿度95%の環境と80℃、相対湿度40%の環境変化を、各々2時間(計4時間)のサイクルで100回繰り返した後、上記の屈折率、可視光透過率及び赤外線透過率の測定を行った。
【0128】
評価の結果を表4に示す。
【0129】
【表3】

【0130】
表より、本発明の中空粒子を用いた本発明の赤外線反射フィルムは、環境変化に耐えられることが確認できた。
【0131】
実施例4
〔赤外線反射体の作製〕
(近赤外反射体1の作製)
実施例3で作製した近赤外反射フィルム6を用いて近赤外反射体1を作製した。厚さ5mm、20cm×20cmの透明アクリル樹脂板上に、近赤外反射フィルム6をアクリル接着剤で接着して、近赤外反射体1を作製した。
【0132】
(近赤外反射体2の作製)
実施例3で作製した近赤外反射フィルム6を用いて近赤外反射体2を作製した。厚さ2mm、20cm×20cmの板ガラスを2枚用意し、近赤外反射フィルム6の両側に、厚さ0.5mmのポリビニルブチラールを配置した積層体を2枚のガラスの間に挟んで加圧加熱処理を行うことで合わせガラスである近赤外反射体2を作製した。
【0133】
〔赤外線反射体の評価〕
上記作製した近赤外反射体1、2は、サイズが大きいにもかかわらず、容易に利用可能であり、また、本発明の近赤外反射フィルムを利用することで、優れた近赤外反射性及び耐久性を確認することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェルがシリカ(SiO)と金属酸化物(MOx)を含有し、その組成がモル比で、
1<(Si/M)<100
で、かつ体積換算平均粒子径が、10〜200nmであることを特徴とする中空粒子。
(式中、Mは第3族、第4族、第5族、第13族またはSiを除く第14族の金属元素を表す。)
【請求項2】
前記Mが第3族イットリウム、第4族ジルコニウム、第4族チタン、第5族ニオブ及び第13族ガリウムから選ばれる1種であることを特徴とする請求項1に記載の中空粒子。
【請求項3】
前記シェルが、第2族元素をSiに対する質量比で100〜500000ppm含有することを特徴とする請求項1または2に記載の中空粒子。
【請求項4】
前記第2族元素がカルシウムまたはマグネシウムであることを特徴とする請求項3に記載の中空粒子。
【請求項5】
基材上に、低屈折率層と、該低屈折率層に隣接し該低屈折率層より屈折率が0.1以上高い高屈折率層とを有するユニットを有する赤外線反射フィルムであって、該低屈折率層が、請求項1〜4のいずれか1項に記載の中空粒子を含有することを特徴とする赤外線反射フィルム。
【請求項6】
請求項5に記載の赤外線反射フィルムを具備することを特徴とする赤外線反射体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−240864(P2012−240864A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110111(P2011−110111)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】