説明

中空糸膜モジュールとその濾別残渣の除去方法

【課題】
濾別される物質を高濃度含む流体の濾過に使用しても、目詰まりを起こしにくく、かつ一旦目詰まりを起こしても、濾別残渣を迅速かつ容易に除去できる中空糸膜モジュールの構造とその濾別残渣の除去方法に関する。
【解決方法】
濾過で表面に沈積した濾別残渣を物理的に除去する機構を備えてなる中空糸膜モジュールであって、該中空糸膜モジュールの中空糸膜フィルターは、該フィルター中空部に、該中空部内面との間に該フィルターの長さ方向に連通する隙間を持つ補強用芯材を挿通され、各中空糸間を非接触で配列でき、該芯材の少なくとも一方の端を該支持部材に固定されて直立、並列されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空糸膜モジュールとその濾別残渣の除去方法に係わり、更に詳しくは、濾別される物質を高濃度含む流体の濾過に使用しても、目詰まりを起こしにくく、かつ一旦目詰まりを起こしても、濾別残渣を迅速かつ容易に除去できる中空糸膜モジュールの構造とその濾別残渣の除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
中空糸膜モジュールは、複数の中空糸膜フィルターの集積体からなり、通常、単位空間の中の濾過面積をより広くするために、中空糸膜の直径をより細くし、かつより密集させて集積させている。
その結果、隣り合うフィルター管の隙間が狭くなりすぎて、互いに接触したり、あるいは絡み合ったりした状態で使用されているのが現状である。
【0003】
隣同士で接触したり、絡み合ったりしても、濁度の低い流体の濾過に適用された場合、このことが、大きな問題になることはないが、濁度の高い流体の濾過に適用した場合、隣同士で接触したり、あるいは絡み合ったりすると、汚濁粒子の粘着沈積による積層化閉塞現象が起き、濾過膜表面積の大幅な減少を引き起こす原因になる。そして一旦この現象が起きると、フィルター表面に沈積した汚濁粒子は逆洗浄だけでは容易に剥離、除去することが難しくなる。このため表面の沈積粒子を掻き取る等の物理的な手段で強制的に除去すると、中空糸膜フィルターは本来細くて軟弱なために、フィルターの膜が切断されたり膜表面が損傷されたりする。
【0004】
従来の中空糸膜モジュールを、濁度の高い流体の濾過に適用した場合の汚濁粒子の粘着沈積による積層化閉塞現象の原因は、中空糸膜フィルターが密集し過ぎであることもその一因ではあるが、最大の原因はフィルターが軟弱過ぎて、隣同士が接触、あるいは絡み合ってしまうことである。
【0005】
軟弱なフィルターの機械的強度を改善するために、中空糸膜そのものを補強することが下記特許文献1〜4に記載されている。
【0006】
特許文献1(特開平11−319519)には、中空糸膜そのものの中に螺旋状に補強材を埋め込んで補強することが記載されている。
【0007】
特許文献2(特開2001−334131)には、中空糸膜の外表面に補強材を螺旋状に巻きつけて補強することが記載されている。
【0008】
特許文献3(特開2004−42024)には、中心から放射状に伸びる補強用リブで中空糸膜の耐圧強度や引張強度の不足を補強することが記載されている。
【0009】
特許文献1、特許文献2に記載された発明では、補強材は共に螺旋状に埋め込まれ、あるいは巻きつけられて補強されているが、長尺の中空糸膜のタワミを防いで直立させることは困難であり、目詰まり原因の隣同士の接触、絡み合いは防止できない。また特許文献1、2の発明は、共に、汎用されている中空糸膜フィルターそのものには適用できない欠点がある。また製造コストも汎用品に比べて高い欠点がある。
【0010】
特許文献3に記載された発明では、目詰まり原因の隣同士の接触、絡み合いの防止は可能であるが、リブの存在によって中空糸膜表面の気孔が塞がれているので、中空糸膜表面の有効濾過面積が減少し、濾過能力が低下する。また中空糸膜フィルターとリブを一体成形することが必要であり、汎用されている中空糸膜フィルターそのものには適用しがたい欠点がある。また製造コストも極めて高くなる欠点がある。
【0011】
また特許文献4(特開2009−11965)には、上端が自由端になった中空糸膜モジュールにおいて、中空糸膜を自立させるために、中空糸膜を二つ折りにして、その折り返し部を自由端として、その自由端を吊り下げて支持することで自立させることが記載されている。また吊り下げて支持することで、中空糸膜同士を離間させて絡みを防ぐことが記載されている。
【0012】
特許文献4に記載された発明では、中空糸膜そのものの強度は改善されていないので、沈着物を物理的な手段で除去すると、フィルターの切断、損傷が起こる。また自立させ、離間、絡み防止に吊り下げ機構が必須で構造が複雑である。また両端を固定する構造の中空糸膜モジュールには適用できない問題もある。
【0013】
特許文献5(特開2004−25112)には、中空糸膜表面に洗浄水を吹き付ける時に中空糸膜配列面に網状体を付設して中空糸膜フィルターの絡み、損傷を防ぐことが記載されている。
【0014】
特許文献5に記載された発明では、洗浄水と空気による洗浄のみに限られるために、濾別残渣の付着が軽度のものに限定され、強固に付着した濾別残渣の除去には適用しがたい欠点がある。また中空糸膜の配列体を多段に配列したものでは、内部まで十分に洗浄が難しい欠点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平11−319519
【特許文献2】特開2001−334131
【特許文献3】特開2004−42024
【特許文献4】特開2009−11965
【特許文献5】特開2004−25112
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第一の課題は、密集した中空糸膜同士の接触と絡みを防止して、その濾別残渣を迅速かつ容易に除去できる新規な構造の中空糸膜モジュールを提供することにある。
【0017】
またその第二の課題は、上端が自由端となる構造の中空糸膜モジュールにおいて、吊り下げ機構等を使用することなく、中空糸膜そのものを直立、自立、離間させて、中空糸膜同士の接触と絡みを防止できる新規な構造の中空糸膜モジュールを提供することにある。
【0018】
またその第三の課題は、逆洗では除去が困難な中空糸膜フィルター表面の濾別残渣を迅速かつ容易に除去できる新規な除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者は上記課題に関して鋭意研究を行い、下記の知見を得た。
【0020】
即ち、第一の課題を達成する手段は下記の通りである。
【0021】
本発明者は、中空糸膜フィルター中空部に補強用芯材を挿通し、この芯材の少なくとも一方の端を支持部材に固定することで、フィルターを直立させて、フィルター中空部を機械的にバックアップ補強することが可能になり、濾別残渣を物理的手段で強制的に除去する際、フィルターに作用する曲げ、延伸の力に抗して中空糸膜フィルターの破断、損傷を防止できることを見出した。そして、その芯材の挿通方法としては芯材の下端から上端まで全長に渡って、中空糸膜中空部内面と芯材の間に連通する隙間を持つ構造にすることで、濾過した流体はこの連通した隙間を通して外にスムースに排出できることを見出した。
【0022】
そして、前記フィルター内面と補強用芯材の隙間の空隙率は10%以上が好ましいことを見出した。
【0023】
本発明で、濾別される物質を高濃度含む流体とは、下記のような状態の流体を意味する。即ち、汚濁粒子を含む流体を中空糸膜フィルターで濾過した時、濾過の初期段階では濾過能力は高いが、暫く定常状態を続けた後、濾過の継続にしたがって濾過残渣の閉塞に伴って濾過能力は漸次低下してゆき、ついには濾過不能におちいる。
かかる状態に陥った時、濾過能力を回復させる為に、濾過したきれいな流体(たとえば水)を使って、濾過時と逆方向の圧力を印加して逆洗浄すると、表面に沈着した濾別残渣が剥がれ落ちて、通常、濾過能力は回復するが、汚濁粒子の含量が高くなると、中空糸膜同士の接触や絡みによる汚濁粒子の粘着沈積、積層化閉塞が起きやすくなり、かかる状態になると、表面に沈着した濾別残渣を逆洗浄で剥がして実用的なレベルまで濾過機能を回復させるには極めて長時間かかり、実用的には、実質、使用不能の状態になる。
本発明の濾別される物質を高濃度含む流体とは、かかる高濃度領域の流体を意図するものである。
【0024】
かかる高濃度領域の流体は、濁度表示すると、一つの目安として、汚濁粒子の含量が概ね100ppm以上である。なお濾別残渣の剥れ難さは、濁度(汚濁粒子の含有量:ppm)だけに依存するのではなく、汚濁粒子の粒径、形状、化学的活性度、中空糸膜フィルターの目の粗さ等によっても変わってくるので、本発明が、汚濁粒子の含量100ppm以上の流体だけを意味するものではないことは言うまでも無いことである。
【0025】
本発明が目的とする高濃度領域の流体の濾過能力は、前記定常状態において、濾過されて中空糸膜フィルターの内側から外に排出される単位時間当たりの濾過量がきれいな水を濾過した時の概ね50%程度になる。
つまり高濃度領域の流体を濾過した時は、濾過量が減少するために、中空糸膜フィルターの内径の本来の排出能力の50%未満程度しか排出されないことになる。
【0026】
〔空隙率の限定理由〕
中空糸膜に芯材を挿通した時、中空糸膜内径と芯材の隙間が狭まり、濾過された流体をフィルターの外に排出する能力が落ちてくるが、高い濁度の流体を濾過した時は、濾過量が減少するために、中空糸膜内径に余裕が生じ、中空糸膜内径と芯材の隙間の空隙率が50%以上確保できれば、前記した芯材を挿通しない状態での定常状態の濾過流量を遅滞無く外に排出できる。つまり空隙率が50%以上確保できれば、中空部に補強材を挿通しても、芯材を挿通しない場合と同等の濾過排出能力が得られる。
空隙率が50%未満では、濾過した流体の排出に遅滞が起こり結果的にフィルターの濾過排出能力が低下する。なお、濾過さえ出来れば濾過能力を問わない場合は、芯材を入れることによる空隙率にこだわることはない。
【0027】
〔内径、引張強度の限定理由〕
中空糸膜は内径が小さくなるほど、濾過面積(表面積)と内径断面積の比(2/R)が大きくなり、中空糸膜単位体積あたりの濾過能力は高くなる。
汎用されている中空糸膜を例にとって説明すると、
汎用されている中空糸膜の内径は、概ね、最小径内径0.5mm〜最大内径3mmであり、この内径に対して、空隙率50%の場合では、芯材のとりうる内径は芯材最小径0.35mm〜芯材最大径2.12mmとなる。
一方、空隙率10%の場合では、芯材のとりうる内径は空隙率50%の場合よりもより大きい径の補強用芯材を使用できる。
たとえば内径0.5mmの中空糸膜では、芯材径0.48mm、内径3mmの中空糸膜では、芯材径2.86mmとなる。
なお、2/Rは、中空糸膜の表面積を断面の面積で除した値であり、中空糸膜単位体積あたりの濾過能力示す指標となる。
【0028】
したがって、汎用されている中空糸膜(内径0.5〜3mm)では、50%空隙率の場合では、芯材最小径0.35mmの芯材をまっすぐ伸ばして中空糸膜に挿通して、中空糸膜をバックアップして、濾別残渣を払拭除去する時の曲げの力で芯材が変形しない強度を有する芯材を選択する必要がある。たとえば汎用されている中空糸膜の最小内径(0.5mm)のものに対しては、最高強度群の材料、たとえば高硬線が好ましい。高硬線とは、硬鋼線、硬鉄線たとえばピアノ線、ステンレス鋼線、W線等である。因みに引張強度2000MPaのピアノ線、ステンレス鋼線を、直径0.35mmの芯材に適用すると、192MPaの荷重に耐える芯材が得られることになる。
10%空隙率で、361MPaの荷重に耐える芯材が得られることになる。
【0029】
本発明の目的に対しては、芯材に100MPa以上の荷重に耐える強度があれば、払拭除去で容易に除去でき、芯材が変形して中空糸膜が切れたりすることはないので、最小径の芯材に対しては、ピアノ線、ステンレス鋼線で十分である。
濾別残渣の付着力が強く、残渣の除去が難しい場合には、空隙率10%程度まで芯材直径を大きくすれば、50%空隙率の場合と比較して3〜4倍の力を負荷しても芯材が変形して中空糸膜が切れたりすることはない。
【0030】
〔フィルター相互の離隔と濾別残渣の除去機構〕
前記したように、本発明が意図する汚濁粒子が高濃度領域含まれる流体を中空糸膜モジュールで濾過した時、フィルター表面に沈積した濾別残渣は、逆洗浄で迅速かつ容易に除去することは困難である。従って濾別残渣を除去する手段として逆洗浄のみでは実用的とはいいがたい。
【0031】
本発明では、中空糸膜フィルターに前記した補強用芯材を挿通して、中空糸膜フィルターを補強して直立させて、中空糸膜フィルターを相互に離隔させて絡み合いや接触を防止した状態で、逆洗浄と前記した物理的除去機構を併用すると、フィルター表面に沈積した残渣は迅速かつ容易に除去できることを見出した。また補強して直立させて相互に離隔させて、絡み合いや接触を防止することで、フィルターが目詰りを起こして濾過不能になるまでの時間、つまり沈積物を除去して次の除去までの濾過可能時間も大幅延長できることも見出した。
【0032】
特に、逆洗浄と前記した物理的除去機構を併用する際、同時併用、つまり逆洗浄の圧力を印加しながら、物理的に除去すると最も効果的に除去できることを見出した。
【0033】
逆洗浄と物理的除去機構の併用が沈積物の除去に著しい効果があるのは、下記の理由によるものと推察される。
即ち、逆洗浄の圧力は、沈積物をフィルターとの接触面から浮き上がらせる効果があり、このことが物理的な除去を容易にするものと推察される。
また逆洗浄によって液体(たとえば濾過した水)が中空糸膜と芯材の間に充填され、中空糸膜表面まで液体が浸透して湿潤化することで、沈積物と中空糸膜表面の結合が弛緩されて、このことが沈積物の剥離を容易にするものと推察される。
【0034】
なお、濾過する流体が高濃度汚泥の様な水分含量の少ない場合、たとえば水分量が90%以下の高濃度泥状体の場合、この泥状体から水を取り去る作業は水の濾過と言うよりもむしろ脱水という表現が適切であるが、この場合、目詰りが頻繁に起き、しかもひとたび目詰りが起きると濾別残渣の除去が難しくなる。
物理的な手段で除去する際、たとえ逆洗浄を併用しても、より高負荷の力を作用させることが必要となる。強い払拭力、高圧洗浄、強力振動等が必要となるので、中空糸膜フィルターの損傷が激しく、中空糸膜の破断等の事故が発生しやすくなるので、補強用芯材の直径はより太くすることが望ましく、結果的には補強用芯材と中空糸膜内径との間の空隙率は減少することになる。
【0035】
補強用芯材直径を太く出来る限界は、空隙率10%までである。
空隙率が10%未満になると、逆洗浄の水圧を負荷しても濾別残渣を浮きあがらせることが難しくなり、物理的除去に逆洗浄を併用しても、中空糸膜表面の濾別残渣を除去することが困難になる。また残渣を物理的に除去する作業を継続すると中空糸膜フィルターの断裂が起こり易くなる。
従って空隙率は10%以にすることが好ましい。つまり空隙率10%以上に設定して、この条件下で高負荷圧力に耐える芯材の材質を選定することが必要になる。
たとえば直径が最小の、0.5mmの中空糸膜フィルターでも、補強用芯材にピアノ線を使用すれば、10%空隙率で、361MPaの力を負荷しても中空糸膜を切断することなく残渣を物理的に除去する作業を継続できる。
【0036】
本発明では、濾別残渣を物理的に除去する際、中空糸膜表面は物理的な除去手段で擦れるために、中空糸膜の表面損傷や切断が起きやすくなる。
逆洗浄による液体(たとえば濾過した水)が中空糸膜と芯材の間に充填され、中空糸膜表面まで液体が浸透して表面に液膜が被覆されることで、表面に潤滑性が発現して、中空糸膜の表面損傷や切断防止になる。
【0037】
物理的除去に逆洗浄を併用することは、濾別残渣の除去を容易にし、かつ中空糸膜の表面損傷や切断防止に著しい効果がある。
なお液膜が存在して中空糸膜表面が液膜で湿潤化された場合、液膜が存在しない状態の場合に比較して、中空糸膜の破断、損傷率は1/50〜1/100に低下する。つまりフィルターの寿命が50〜100倍に伸びる。
【0038】
本発明で濾別残渣を物理的に除去する機構とは、ハケ、ブラシ、スクレパー等の払拭手段で掻き取る機構、水、空気等の圧力流体を吹き付けて吹砕する機構、振動、超音波で剥離する機構、および外から物理的な力を負荷して堆積物を除去する機構全般を意味する。払拭、吹砕、振動、超音波で剥離、その他の物理的除去手段は必要に応じて適宜併用しても良い。たとえば払拭機構に洗浄ノズル等の吹砕機構を併設しても良い。
前記した物理的除去機構の中で、払拭機構が最も効果的であり、払拭に洗浄機構を併用すると更に効果的である。
【0039】
〔払拭機構〕
物理的に除去する機構は、直立して並列されたフィルターの長さ方向に沿って水平移動させる機構を備えている。
たとえば物理的に除去する機構が、払拭と洗浄機構の併用の場合、フィルター表面の残渣をハケ、ブラシ等の払拭手段で掻き取りながら水平移動、往復動して残渣を除去する。この時、必要に応じて払拭手段に洗浄機構(水、空気の噴射ノズル)を一体的に取り付け、水、空気を適宜噴射して残渣を軟弱化、あるいは結合を緩くしてハケ、ブラシで掻き取る。
【0040】
複数の中空糸膜フィルターを並列に配列した中空糸膜フィルターの並列配列体(横1列型中空糸膜モジュール)が多段に積み重ねられた時は、並列に配列された各フィルター間の隙間から、フィルターの長さ方向に交差する方向に、最上段から最下段のフィルターまで届く長さのハケ、ブラシ、スクレパー等の払拭手段を差し込み、この交差する方向に差し込んだ払拭手段をフィルターの長さ方向に水平に往復動させて、フィルター表面に沈着した濾別残渣を掻き取って除去する。この時必要に応じて、他の手段(洗浄機構)等を併用する。
【0041】
あるいは下記構造でも良い。
即ち、縦横複数並列配列体つまり横にも複数並べ、これを縦方向に複数並べた配列でもよい。
この場合、ブラシの羽根の長さを、手前に配列された中空糸膜から一番奥に配列された中空糸膜まで到達できる長い羽根のブラシにして、しかも最上段の中空糸膜から最下段の中空糸膜まで届く、縦横長さの長いブラシを用いて、一番奥の中空糸膜まで差込み、これを水平に往復動させて濾別残渣を掻き取る。
ブラシは対向する側からも位置を少しずらせて差込み、両方から挟み込むようにして掻き取ると更に良い。
【0042】
〔移動方向〕
物理的に除去する機構は、直立して並列されたフィルターの長さ方向に沿って水平移動させることが好ましい。フィルターの長さ方向に交差する方向に移動させた場合、中空糸膜の破断、損傷が発生し易くなるので好ましくない。
【0043】
〔補強用芯材が存在する場合としない場合の中空糸膜フィルターの耐久性〕
芯材が存在しない場合、払拭手段を直角方向に移動させて掻き取ると、20〜50回繰り返すだけで中空糸膜フィルターは破断されて修復不能になる場合もあるが、同じ直角方向に移動させても、補強用芯材が存在する場合には中空糸膜の耐久性は1500〜16000回に伸びる。
【0044】
本発明において、中空糸膜フィルターを補強して直立させる芯材は、片方、又は両方の端で支持部材に固定されることが必要である。また濾過するべき汚濁流体側と中空糸膜の内部の空間とは、気密隔離が必須である。
【0045】
補強用芯材の材料は、0.5mm内径の中空糸膜に対しては、引張荷重100MPa以上、3mm内径に対しては引張荷重30MPa以上に耐える材料の中から選択すればよい。0.5〜3mmの中間径のものに対しては、少なくとも100MPa以上の荷重に耐える強度を持つ材料を適宜選択すればよい。
100MPa以上の荷重に耐える強度を持つ線材としては、たとえば下記の様な材料である。
金属材料:鋼線(ステンレス、普通鋼、特殊鋼)、W、Mo線、硬合金線、加工硬化線等
有機材料:ナイロン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリカーボネ―ト、ポリプロピレン、フェノール樹脂等
無機材料:炭化珪素繊維、ガラス繊維等
前記したように、これらの材料は中空糸膜の内径に応じて、最適な強度のものを選択して使用すればよい。
【0046】
補強用芯材の断面形状には特別な制約はない。中空糸膜内面と芯材の全長に亘り連通する隙間が形成できる形状であって、前記した強度の条件を満たす材料であれば、いかなる形状でも使用できる。即ち、円形、異形、四角、三角、多角形、いかなる形状でも良いが、強度の観点から最も好ましいのは、鋼線である。
鋼線は単線でも良いし、あるいは複数本併せた複合線でも良い。
鋼線は、直立するように伸直加工したものが最も好ましい。
【0047】
補強芯材の表面に、細菌感染防止のための除菌、殺菌、消臭用の触媒あるいは薬剤(徐放性)を担持することで濾過した液体の除菌、殺菌、消臭等が可能になる。
【0048】
触媒あるいは薬剤を担持させる手段は、下記の方法が有効である。
即ち、芯材の銀メッキ、銅メッキは除菌、殺菌用に効果的である。また除菌、殺菌効果のある粒子を樹脂に混ぜて塗布することも効果的である。
その他、担持方法については、コーティング、塗装、ドブ漬けなどのような手段でもよく、特に限定するものではない。
【0049】
本発明の第二の課題を解決するための手段は、下記の通りである。
即ち、複数の中空糸膜フィルターを間隔を空けて配列し、この中空糸膜フィルターの下端開口部を集合槽に開口して固定し、上端は気密封止して自由端とした構造の中空糸膜モジュールにおいて、このフィルター中空部に補強用芯材を挿通して、この芯材端部はフィルター下端開口側の集合槽に固定し、フィルター自由端側の芯材端部はフィルターと一体的に接合、封止して中空糸膜フィルターを補強用芯材で補強して直立させ、自立性に極めて優れた一端が自由端構造の中空糸膜モジュールが得られることを見出した。
そして、その芯材として、芯材の下端から上端まで全長に渡って中空糸膜中空部内面と芯材の間に連通する隙間を持つ構造にすることで、濾過した流体はこの連通した隙間を通して外にスムースに排出できる。
【0050】
前記したように、前記フィルター内面と補強用芯材の隙間の空隙率は10%以上確保できれば濾別残渣を除去できるので、濾過不能に陥ることはない。なお、濾過さえ出来れば濾過能力を問わない場合は、芯材を入れることによる空隙率にこだわることはない。
【0051】
補強用芯材の断面形状については、前記したように特別な制約はない。
中空糸膜内面と芯材の全長に亘り連通する隙間が形成できる形状であって、前記した引張応力に耐える強度を満たす材料であれば、いかなる形状でも使用できる。
即ち、円形、異形、四角、三角、多角形、いかなる形状でも良いが、一端が自由端構造の中空糸膜モジュールに対しては、直立、自立性の最も優れた鋼線が最も好ましい。
鋼線は単線でも良いし、あるいは複数本併せた複合線でも良い。
鋼線は、直立するように伸直加工したものが最も好ましい。
【0052】
本発明の流体とは、気体や液体中に、濾別される物質が混合された流動体を意味し、濾別される物質の種類は無機、有機質粉粒体から体積を持つ微小生物、細菌類を含む。流動体の性状は液状、スラリー状から粘土のような塑性流動体も含む。たとえば液体が水系の場合、水分量の方が多い液状体から、水分量の方が少ないスラリー状、更に水分が少ない粘土のような塑性流動体まで包含する。
【0053】
本発明の第三の課題を解決するための方法は、前記したように下記の通りである。
即ち、濾別される物質を高濃度含む流体を中空糸膜モジュールで濾過して、中空糸膜表面に沈積された濾別残渣を除去する際、中空糸膜フィルター中空部内面との間に、このフィルターの長さ方向に連通する隙間を持つ補強用芯材を挿通して、この中空糸膜フィルターを補強して支持部材に直立、並列させて配列して、フィルターの長さ方向に沿って、濾別残渣を物理的に除去する手段を移動させて残渣を物理的に除去することで、フィルターを破断することなく濾別残渣を除去できる。
そして、この物理的除去にフィルターの逆洗浄を併用すると、濾別残渣を迅速かつ容易に除去できる。
そして物理的除去と逆洗浄は、同時併用が最も好ましい。そして、この逆洗浄で、フィルター内径と補強用芯材の隙間を液体の液膜で埋めて、フィルター表面を湿潤、潤滑化することで、濾別残渣をより迅速かつ容易に除去できる。
【0054】
複数の中空糸膜フィルターを並列に配列した中空糸膜フィルターの並列配列体(横1列型中空糸膜モジュール)が多段に積み重ねられた時は、各段と段の間の隙間から、フィルターの長さ方向に交差する方向に最上段から最下段のフィルターまで届く長さの物理的除去手段を差し込み、この交差する方向に差し込んだ除去手段をフィルターの長さ方向に水平に往復動させてフィルター表面に沈着した濾別残渣を掻き取って除去する。
【0055】
あるいは下記方法でも良い。
即ち、縦横に複数並列配列体つまり横にも複数並べ、これを縦方向に複数並べた配列の場合、ブラシの羽根の長さを、手前に配列された中空糸膜から一番奥に配列された中空糸膜まで到達できる長い羽根のブラシにして、しかも最上段の中空糸膜から最下段の中空糸膜まで届くような縦横長さの長いブラシを一番奥の中空糸膜まで差込み、これを水平に往復動させて濾別残渣を掻き取る。
ブラシは対向する側からも位置を少しずらせて差込み、両方から挟み込むようにして掻き取ると更に良い。
【0056】
物理的除去手段は、横1列型中空糸膜モジュールでも、縦横複数並列配列モジュールでも、何れも場合においても両側から挟むようにして横に往復動させると最も効果的に濾別残渣を除去できる。
物理的除去手段としては、払拭が効果的であり、払拭に加えて洗浄、振動等、他の除去手段を併用すると更に効果的である。
【0057】
前記したように、本発明の濾過すべき流体とは、気体や液体中に濾別される物質が混合された流動体を意味し、むしろ液体成分が少なく、気体成分が多い場合も存在する。たとえば気体中に少量の液体が含まれる流体の中から液体分を濾過する場合、たとえば、これは空気中の水分の濾別、つまり脱湿の場合に相当し、この場合、水分が大量に濾別されて排出されることは無く、中空糸膜と芯材の間には十分な水分が充填されておらず、水膜は形成されていない。かかる場合、逆洗浄で水膜を形成するためには、中空糸膜内径側の出口を単に空気圧で加圧するだけでなく、十分水分を補給して、あるいは出口側から水を注入して、水圧を印加するようにすると、十分な水膜を形成させることが出来る。
本発明の逆洗浄では、逆加圧する時の流体が過不足で液膜が十分に形成されない場合と、流体が十分に存在して液膜が十分に形成される場合の状態を包含し、液膜が十分に形成されない場合に、液膜を形成させる時には、逆加圧する時、新たに流体を補給すると言うことである。
【発明の効果】
【0058】
本発明は下記の効果を有する。
1 濁度の高い汚濁水から直接、真水まで濾過できる。
2 逆洗浄では除去することが不可能な汚濁粒子を高濃度領域含む流体の濾別残渣を、中空糸膜フィルターを破断、損傷させること無く除去できる。
3 一端が自由端となる構造の中空糸膜モジュールにおいて、吊り下げ等の補助機構を使用することなく、中空糸膜そのものを自立させ、直立させることができる。また離間させて絡みを防止できる。
4 現在汎用されている中空糸膜モジュールにそのまま適用できる。
5 構造が簡単で、安価に製造できる。
6 中空糸膜フィルターを接触させることなく、より高密度で配列することができるので、芯材の無い場合に比べて濾過可能面積が広くなる。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図面によって本発明を説明する。なお本図面は、発明の趣旨をよりよく理解させるために具体的に説明するものであり、本発明がこれのみに限定されるものでないことはもちろんである。
【0060】
図1は、補強用芯材の両端を固定した構造の1列型中空糸膜モジュールの全体構造を説明する図である。
図2は、中空糸膜フィルターと補強用芯材の取付固定構造を説明する図である。
図3は、図1の中空糸膜モジュールを多段に重ね、各段の隙間に濾別残渣を物理的に除去する機構(払拭と洗浄)差し込んで配置した構造の説明図である。
【0061】
図1、図2において、1は中空糸膜の支持部材である。
本図においては、支持部材1は剛性のパイプからなり、中は中空である。
中空糸膜フィルター2で汚濁粒子を濾過された液体がパイプの中を流れて図示していない集合槽(タンク)に集められる。
【0062】
補強用芯材3は、中空糸膜フィルター2の片側からもう一方の端まで挿通されており、補強用芯材3の両端にはねじが取り付けられており、対向する両側の支持部材1(剛性パイプ)を貫通して、図2に示すように、支持部材1(剛性パイプ)にボルトで固定されている。
なお補強用芯材3と支持部材を結合する手段は、ネジとボルトで締結することに限定されるものではなく、その他接着、溶接等、既存の接合、接着、機械的締結手段は全て採用すること手が出来る。
【0063】
中空糸膜フィルター2の両端は、図2に示すように、対向する両側の支持部材1(剛性パイプ)に差し込まれて接着されている。この時、汚濁粒子を含む濾過する流体が、パイプの中に流れ込まないように気密接着5されている。
【0064】
中空糸膜フィルターは、両端を真直ぐに張られた補強用芯材3で中から補強されているためには、支持部材1(剛性パイプ)に取り付けられて接着された状態では、撓むこともなく、真直ぐに張られることになり、隣り合う中空糸膜フィルター間で絡むことも接触することもなく、図1に示すような中空糸膜フィルターを直立、並列に配列した中空糸膜フィルターの並列配列体(1列型中空糸膜モジュール)が完成する。
【0065】
図2に示すように、中空糸膜フィルターと補強用芯材の間には濾過した液体を流すための隙間を確保することが必要であるが、隙間は両側でなく、片側だけでもよい。
【0066】
図1、2では、支持部材1(剛性パイプ)が濾過された液体を流す流路も兼ねているが、必ずしも同じである必要はない。
中空糸膜フィルターは、濾過された液体を流す流路に気密に接着することが必要であるが、補強用芯材は濾過された液体を流す流路に接合する必要は無いので、補強用芯材の支持部材と中空糸膜フィルターの支持部材は別々でも良い。
【0067】
中空糸膜フィルターの表面に沈積した濾別残渣は、払拭用ブラシ5を中空糸膜フィルターの長さ方向に平行に移動させて掻き取る。
払拭用ブラシ5はブラシ取付軸6に取り付けられ、取付軸6は中空糸膜フィルターの長さ方向に交差する角度に配置して、フィルターの長さ方向に沿って水平移動する機構(図示していない)に取り付けられており、水平に往復動する。
払拭用ブラシ5は中空糸膜フィルターの両側に配置して、中空糸膜フィルターを挟み込むようにして移動させて残渣を掻き取る。
【0068】
ブラシ取付軸6には、洗浄水噴射用のノズルも備えており、必要に応じて洗浄水を噴射して濾別残渣を吹砕する。
なお、必要に応じてその他の物理的除去手段を併設しても良い。
【0069】
中空糸膜フィルターは、内径0.5mm以上、実用的な長さとしては3m程度のものまで適宜選択できる。
仮に、中空糸膜フィルターの内径を最小径0.5mmで、空隙率10%とする場合補強用芯材の直径は最大径0.48mmまで選択できる。
中空糸膜フィルター同士の間隔は、概ね0.5mm以上が適切である。
【0070】
払拭ブラシの材質は、通常のハケ、ブラシ等に使用されている軟らかい樹脂の繊維をそのまま使用できる。
【0071】
図3は、図1の中空糸膜フィルターの並列配列体(横1列型中空糸膜モジュール)が4段積層された中空糸膜モジュールの説明図である。
各段の濾過された液体は、支持部材1(剛性パイプ)の中の流路を流れて、集合槽9に集められる。
払拭ブラシ6は各段の中空糸膜モジュールの間隙に、中空糸膜フィルターの長さ方向に交差する角度で差し込まれている。払拭ブラシの移動は、図1の場合と基本的には同じで、中空糸膜フィルターの長さ方向に平行移動する。
本図の場合、各段の中空糸膜モジュールの間隙に払拭ブラシ6とブラシ取付軸7が差し込まれている。
【0072】
払拭ブラシを取り付ける取付軸7は、中空糸膜フィルターの長さ方向に平行移動する取付基台8に取り付けられて固定されている。
取付基台8には、コロ11がついており、コロは図示していないレールの上を回動して取付基台8が中空糸膜フィルターの長さ方向に平行に動く。
取付基台8は、図示したような回転するベルト10に取り付けられており、ベルト10の移動で左右に往復動するようになっている。
なお、取付基台8が平行に動く機構は、本例のみに限定されるものでないことは言うまでも無いことで、少なくとも払拭ブラシを取り付ける取付軸7を中空糸膜フィルターの長さ方向に平行移動できる機構であれば、いかなる機構でも良い。
【0073】
図4は、縦横複数並列配列体つまり横にも複数並べ、これを縦方向に複数並べて配列した中空糸膜モジュールの説明図である。
支持部材(剛性パイプ)1には、縦4列横3列に複数配列された中空糸膜モジュールで濾過された液体が集められる。
図1の場合と同じく、補強用芯材3と中空糸膜フィルター2は、支持部材(剛性パイプ)1に固定されている。補強用芯材はボルト4で固定されている。
払拭用ブラシは、手前に配列された中空糸膜から一番奥に配列された中空糸膜まで到達できる長い羽根を持っている。またブラシの長さは、最上段の中空糸膜から最下段の中空糸膜まで届く長さを持っている。
縦横長さを調節したブラシを一番奥の中空糸膜まで差込み、これを水平に往復動させて濾別残渣を掻き取る。また、対向する側にも同じ長さのブラシを位置を少しずらせて差込み、中空糸膜モジュールを両方からブラシで挟み込むようにして残渣を掻き取る。
本図の場合も図示していないが、水の噴射ノズル等を必要に応じて併設すればよい。
【0074】
図5は、一端が自由端となった中空糸膜モジュールの全体構造を説明する図である。
図6は、図5の中空糸膜フィルターと補強用芯材の自由端側の封止構造を説明する図である。
図7は、図5の中空糸膜フィルターと補強用芯材を集合槽に固定する構造を説明する図である。
【0075】
本発明の中空糸膜フィルター2には、直立する補強用芯材3が挿通されて補強されているために、図5に示すように、一端が自由端の中空糸膜モジュールでも各中空糸膜フィルターは直立しており、隣の中空糸膜フィルターと絡み合うことはない。
【0076】
自由端の先端部では、汚濁流体と濾過したきれいな流体が混ざり合うことがないように、補強用芯材3と中空糸膜フィルターは気密接着5されている。
【0077】
また集合槽9に差し込まれた中空糸膜フィルター2は、集合槽9のハウジング12と気密接着されてハウジング12に固定されている。
また補強用芯材3は、集合槽9の中に固定されている芯材固定板13の図のような芯材差込孔に差し込まれて接着されて固定されている。
中空糸膜フィルターがハウジング12に接着固定された部分では、補強用芯材3との間に隙間14が形成されており、濾過した流体はここから集合槽に流入する。
なお、補強用芯材3を集合槽9の中に固定する手段は本図の構造のみに限定されるものではないことは言うまでも無く、固定できる手段であればいかなる手段でも良い。
【0078】
【実施例1】
【0079】
図1に示した構造の1列型中空糸膜モジュールを使って、芯材の挿通効果を確認するため、芯材のある場合とない場合について、下記の試験条件下で濾別残渣の払拭テストを実施した。
払拭ブラシの構造と材質は、25mmの長さに短く切った直径0.3mmのステンレス軸のチャンネルブラシを使用。
ナイロン繊維を挟んで固定した2本のステンレス板は、図3に示した構造の取付基台に取り付けて往復動させた。
本例では、中空糸膜モジュールは単列、並列配列の横1列型中空糸膜モジュールであるので、ナイロンブラシは左右両側から挟むように配置した。
【0080】
〔使用した中空糸膜の材質〕
汎用的に使用されている2種の中空糸膜使用。メーカーは何れも株式会社クラレ製
種類1:ポリフッ化ビニリデン膜(PVDF)
種類2:ポリスルホン膜
【0081】
支持部材の剛性パイプには、20A鉄パイプを使用。
使用した中空糸膜フィルターの寸法は2種類使用
内径0.6mm×長さ500mm
内径1.2mm×長さ500mm
【0082】
〔芯材ありの構造〕
20本の中空糸膜フィルターに補強用芯材を挿通して、鉄パイプの両端に図2の構造で取り付けた。
各中空糸膜フィルターの間隔は、5mmとした。
〔中空糸膜の内径および芯材の種類と径〕
内径0.6mmの中空糸膜には、芯材として、直径0.4mmのピアノ線を使用。
内径1.2mmの中空糸膜には、芯材として、直径0.8mmのステンレス線を使用。
【0083】
〔芯材なしの構造〕
中空糸膜フィルターは、補強用芯材を相通することなく、そのまま鉄パイプの両端に図2の構造で取り付けた。
各中空糸膜フィルターの間隔は、5mmとした。
【0084】
芯材の両端は中心に貫通孔を明けたボルトに差し込んで半田付けして固定した。
両端のボルトを鉄パイプに貫通して差込み、伸張して両端をボルトで締めて固定した。中空糸膜は、鉄パイプに差し込んでシリコーン接着剤で気密接着した。
【0085】
〔濾過テスト〕
中空糸膜モジュールの部分のみ鉄製タンクに浸漬し、集合槽の部分はタンクの下に出し、タンクの底と鉄パイプの間の隙間は、パテ材料で埋めて水が漏れないようにシールしてタンクの中に汚濁粒子が1000ppm含まれる泥水を入れて濾過テストした。
濾過に際し、集合槽の中を、0.1トールの減圧に引いて吸引濾過した。
15分間継続して濾過すると、目詰りを起こして濾過不能になった。
【0086】
〔払拭テスト〕
逆洗浄なしの場合について、濾別残渣を払拭テストした時の中空糸膜フィルターの破断までの払拭回数を調査した。
なお、払拭ブラシの移動速度は1往復/10秒で動かした。
結果を表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
上記試験結果より、
芯材を挿通することによって、中空糸膜の切れ防止に顕著な効果があることが確認できた。
【0089】
【実施例2】
【0090】
払拭に逆洗浄を併用して、逆洗浄の併用効果を確認するためのテストを行った。
試験条件は、実施例1の芯材有の場合と同じ条件で試験した。
逆洗浄の条件は、中空糸膜フィルターの内径側から加圧水(2気圧)を注入。
水圧を加圧する時間間隔は、下記の2条件について実施した。
1:払拭と逆洗加圧を同時併用
2:1往復10秒払拭した後、逆洗加圧を20秒休み
試験結果を表2に示す。
【0091】
【表2】

【0092】
上記試験結果より、
逆洗浄を併用することで、濾別残渣を確実に除去できることが確認できた。
逆洗浄は同時併用が最も好ましいことが確認できた。
【0093】
【実施例3】
【0094】
(一端自由端の場合)
図5に示す構造の一端が自由端になった中空糸膜モジュールについて濾過テストした。
試験条件は下記のとおり。
外径1.25mm×内径0.75mm×長さ500mmのクラレ社製PVDF中空糸膜を使用した。
中空糸膜フィルターの本数:30本
補強用芯材には、外径0.5mm、長さ500mmのピアノ線を使用。
【0095】
ピアノ線を中空糸膜の一方の端から挿通して、中空糸膜のもう一方の端から少し外に出し、このピアノ線を少し外に出した側の中空糸膜とピアノ線の境目部分をシリコーン接着剤で気密に接着(図6に示す構造)した。
差込側のピアノ線は、図7に示す構造と同じく、鉄製の補強用芯材固定板の差込孔に差し込んで、同じくシリコーン接着剤で接着して固定した。
なお鉄製の補強用芯材固定板は、鉄製の集合槽の中で、集合槽のハウジングに接着固定されている。
ピアノ線で補強された中空糸膜フィルターを図5のように立てた時、若干のたわみはあるものの、隣同士で絡み合うことも無かった。
【0096】
〔濾過テスト〕
出来上がった一端自由端の中空糸膜モジュールを逆さにして、自由端側を泥水の中に浸漬して、集合槽側を減圧(0.1トール)して泥水を濾過した。
集合槽側から濾過されたきれいな水が得られた。
15分間濾過すると、目詰りを起こして濾過能力が落ちてきたので濾過を中止して、泥水から中空糸膜モジュールを引き上げた。
中空糸膜フィルターの表面には濾別した汚濁粒子が付着していた。
【0097】
水圧(2気圧)を印加して逆洗浄を行いながら、中空糸膜フィルターに洗浄水を吹き付けて、濾別残渣を除去することが出来た。
【0098】
【実施例4】
【0099】
〔汚濁粒子の濃度と空隙率を変化させた時の濾別残渣の除去テスト〕
テストには実施例1の装置を使用。
汚濁粒子が1000ppm含まれる濁水と、含水率90%の高濃度汚泥を使って、空隙率を変えた時の濾別残渣の除去テストを行った。
【0100】
使用した中空糸膜フィルターは、ポリフッ化ビニリデン膜(PVDF)。
外径1.25mm×内径0.75mm×長さ500mm。
芯材と中空糸膜の間隙を変えるために芯材の直径は下記のように変えた。
なお芯材にはピアノ線を用いた。
芯材と中空糸膜の間隙の空隙率が5%の時、芯材径は0.8mm
芯材と中空糸膜の間隙の空隙率が10%の時、芯材径は0.7mm
芯材と中空糸膜の間隙の空隙率が30%の時、芯材径は0.6mm
【0101】
上記空隙率の異なる3種類の中空糸膜フィルターに対して目詰まりが起きるまで濾過を行い、目詰まりを起こしたものに対して、中空糸膜に加圧水(2気圧)を逆注入しつつブラシで繰返し払拭して残渣を除去することを試みた。
試験条件は、実施例1の芯材有の場合と同じ条件で試験した。
【0102】
濾過テストの結果
結果を表3に示す。
【0103】
【表3】

【0104】
上記試験結果より、
空隙率10%未満では、払拭に逆洗浄を同時併用しても残渣の除去が難しいことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0105】
1.高濃度汚濁水の飲用化が可能。
2.含水物からの脱水処理、気体からの脱水、乾燥を、熱エネルギーを使用することなく行うことが出来る。低コスト、省エネ性に極めて優れる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】図1は、補強用芯材の両端を固定した構造の1列型中空糸膜モジュールの全体構造を説明する図である。
【図2】図2は、中空糸膜フィルターと補強用芯材の取付固定構造を説明する図である。
【図3】図3は、図1の中空糸膜モジュールを多段に重ね、各段の隙間に濾別残渣を物理的に除去する機構(払拭と洗浄)差し込んで配置した構造の説明する図である。
【図4】図4は、縦横複数並列した中空糸膜モジュールの説明図である。
【図5】図5は、一端が自由端となった中空糸膜モジュールの全体構造を説明する図である。
【図6】図6は、図5の中空糸膜フィルターと補強用芯材の自由端側の封止構造を説明する図である。
【図7】図7は、図5の中空糸膜フィルターと補強用芯材を集合槽に固定する構造を説明する図である。
【符号の説明】
【0107】
1 支持部材
2 中空糸膜フィルター
3 補強用芯材
4 ボルト
5 気密接着
6 払拭用ブラシ
7 ブラシ取付軸
8 取付基台
9 集合槽
10 ベルト
11 コロ
12 集合槽ハウジング
13 芯材固定板
14 隙間




【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾別される物質を高濃度含む流体の濾過に使用され、該濾過で表面に沈積した濾別残渣を物理的に除去する機構を備えてなる中空糸膜モジュールであって、該中空糸膜モジュールの中空糸膜フィルターは、該フィルター中空部に、該中空部内面との間に該フィルターの長さ方向に連通する隙間を持つ補強用芯材を挿通され、該芯材の少なくとも一方の端を該支持部材に固定されて直立、並列されてなることを特徴とする中空糸膜モジュール。
【請求項2】
前記濾別残渣を物理的に除去する手段は、濾別残渣を払拭および洗浄する機構と、該払拭および洗浄する機構を前記フィルターの長さ方向に沿って水平移動させる機構を備えてなることを特徴とする請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項3】
複数の中空糸膜フィルターが間隔を空けて配列され、該中空糸膜フィルターの一端が開口されて集合槽に固定され、他端が気密封止されて自由端となって自立してなる構造の中空糸膜モジュールにおいて、該中空糸膜フィルター中空部に、該中空部内面との間に、該フィルターの長さ方向に連通する隙間を持つ補強用芯材が挿通され、該芯材端部は、該フィルターの開口側の端部で、該フィルターと隙間を保った状態で該集合槽に固定され、該フィルター自由端側の該芯材端部は、該フィルターと一体的に気密接合されてなることを特徴とする中空糸膜モジュール。
【請求項4】
前記フィルター内面と補強用芯材の隙間の空隙率が10%以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項5】
前記補強用芯材が硬線である請求項1〜4のいずれか1項に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項6】
前記補強用芯材の表面に除菌、殺菌あるいは消臭効果のある触媒物質あるいは薬剤を被覆あるいは担持させてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項7】
濾別される物質を高濃度含む流体を中空糸膜モジュールで濾過し、該中空糸膜表面に沈積された濾別残渣を物理的に除去する方法であって、
該モジュールの中空糸膜フィルター中空部に、該中空部内面との間に該フィルターの長さ方向に連通する隙間を持つ補強用芯材を挿通して該中空糸膜フィルターを補強して支持部材に直立、並列させて配列してなると共に、該フィルターの長さ方向に沿って、該濾別残渣を物理的に除去する手段を移動させて該残渣を物理的に除去することを特徴とする中空糸膜モジュール濾別残渣の除去方法。
【請求項8】
前記濾別残渣を物理的に除去する際に、フィルターに逆洗浄の圧力を印加することを特徴とする請求項7に記載の中空糸膜モジュール濾別残渣の除去方法。
【請求項9】
前記逆洗浄と物理的除去を同時併用することを特徴とする請求項8に記載の中空糸膜モジュール濾別残渣の除去方法。
【請求項10】
前記逆洗浄で、前記フィルター内径と補強用芯材の隙間を液体の液膜で埋めて前記フィルター表面を湿潤、潤滑化することを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の中空糸膜モジュール濾別残渣の除去方法。
【請求項11】
前記中空糸膜内面と補強用芯材の隙間の空隙率が10%以上である請求項7〜10のいずれか1項に記載の中空糸膜モジュール濾別残渣の除去方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−235205(P2011−235205A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106276(P2010−106276)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(310011011)クリアーシステム株式会社 (4)
【Fターム(参考)】