説明

中空糸膜モジュール及びその製造方法

【課題】 端部が固定部材で固定された中空糸膜に曲げ応力が作用したときの根本における破断や切り裂けを防止するために、中空糸膜の根本を樹脂で被覆して補強する場合、被覆樹脂として、その被覆量が容易に制御でき、中空糸膜自身の機械的な特性を残しながらそのネットワーク骨格の表面を被覆し、かつこの程度の被覆量で補強効果を発揮するようにする。
【解決手段】 中空糸膜の破断時における引張り応力及び弾性率よりもおよそ10倍以上大きな引張り応力及び弾性率を有し、破断時の伸びが5〜20%の熱可塑性樹脂を、中空糸膜を変性させない溶剤に2〜15%溶解した溶液を、中空糸膜束集束固定部近傍の中空糸膜に塗布若しくは浸漬して含浸させたのち、溶剤を乾燥する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、精密ろ過、限外ろ過などに使用される、中空糸膜モジュール及びその製造方法に関し、より詳しくは、中空糸膜束の固定部材近傍の中空糸膜が損傷し難い中空糸膜モジュール及び製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】中空糸膜はすでに精密ろ過、限外ろ過などの様々な分野で使用されているが、温度変動が大きい、あるいはエアーバブルで中空糸膜を激しく揺動させる等、さらに過酷な条件での使用も望まれている。このような過酷な使用条件下ではしばしば中空糸膜束の固定部近傍で中空糸膜が切断したり、破れるという問題が発生している。
【0003】この点を改善するために、固定部近傍の中空糸膜束外縁を可撓性帯などで保護する方法(実開昭55−99703号公報、特開昭58−183916号公報、特開昭59−147603号公報、特開昭61−178902号公報、特開昭63−158103号公報)、固定部材よりも柔らかい熱硬化性樹脂で被覆する方法(特開昭59−4403号公報、特開平2−107318号公報)、あるいは、これらを組み合わせた保護ネットと固定部材表面に弾性樹脂層を設ける方法(特開平4−334529号公報、特開平5−23550号公報)が知られている。
【0004】しかしながら、特開平4−334529号公報で詳しく検討されているように、保護ネット単独の場合、弾性樹脂層単独の場合、及び、特に比較例3に示されているように保護ネットを長くした場合、のいずれにおいてもリークが発生することからこれらの方法でも十分とは言えない。
【0005】中空糸膜が固定部近傍で損傷を受ける原因は、この近傍の中空糸膜に曲げ応力が集中し、この力に耐えられないからである。したがって、このような力に対する中空糸膜自身の強度を向上させなければ根本的な解決にはならない。しかしながら、従来の方法では必ずしも固定部近傍に集中する曲げ応力に耐えるほど中空糸膜自身の強度が向上しているとは言えない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明では、まず未処理の中空糸膜の固定部近傍で曲げ応力が集中したとき、どの程度中空糸膜の強度が低下するか調べた。図1は、その測定方法を示す略図である。図中1、2はそれぞれ中空糸膜及び固定部材である。矢印Fは中空糸膜1の引張り方向であり、αは固定部材2の面と引張り方向のなす角度である。使用した中空糸膜は、内、外径が500μm、800μm、孔径が0.2μm、破断引張り強度が170g/本(破断引張り応力56Kg/cm2 )、破断時の伸びが60%であり、ウレタン樹脂Aからなる固定部材の破断引張り強度は500Kg/cm2 、破断時の伸びは20%である。
【0007】図2は、角度αと引張り強度の関係を示すが、角度によらず中空糸膜1の破断は固定部材2の近傍の根本1Aで発生し、かつ角度が小さくなるにしたがって引張り強度は低下した。約60°までは垂直方向に比べて低下は少ないが、約30°では垂直方向に比べて約1/5まで低下した。このとき、中空糸膜1は、固定部材2の近傍の根本1Aで引き裂かれるように切れる様子が観察された。同様な結果は、破断強度が110Kg/cm2 、破断時の伸びが80%の他のウレタン樹脂Bを固定部材に用いたときにも得られた。
【0008】次に、特開昭59−4403号公報に準じて、図3のように、あらかじめこのウレタン樹脂Bを薄く被覆して被覆層3を形成した中空糸膜1を使って図1と同様にして測定を行った。この場合、図1の場合に比べて改善効果は見られたものの、ウレタン樹脂の中空糸膜への染み込み程度によって大きく測定値が変動した。また、予測されるように、被覆する樹脂の強度が中空糸膜よりも小さい場合には補強効果は期待できない。逆に、あらかじめ強度の大きいウレタン樹脂Aを被覆した中空糸膜を用いた場合には、被覆層3が薄いときには固定部材2の近傍の根本1Aで脆く折れ、厚いときには被覆部分と被覆されていない部分の界面1Bで引き裂かれた。
【0009】これらの結果から、柔軟な固定部材(ウレタン樹脂B)を使用しても中空糸膜を被覆するのでなければ中空糸膜の強度を向上させる効果は乏しく、また、熱硬化性樹脂を被覆した場合には、樹脂自身の特性だけでなく、中空糸膜への染み込み量にもよる変動が大きく、その制御は困難であると言える。
【0010】熱硬化性樹脂で被覆した場合をさらに詳しく観察すると、樹脂は、中空糸膜のネットワーク骨格の表面をその空孔を残しながら被覆しているというよりも文字通り緻密な樹脂層を形成している。したがって、被覆部分の中空糸膜の機械的な特性はこの被覆層によってほとんど決定される。そのため樹脂自身の特性及び染み込み量に大きく影響され、制御が困難になっている。
【0011】以上の考察によれば、中空糸膜を効果的に補強する被覆樹脂は、その被覆量が容易に制御でき、中空糸膜自身の機械的な特性を残しながらそのネットワーク骨格の表面を被覆し、かつこの程度の被覆量で補強効果を発揮するものでなければならない。また、このような特性を熱硬化性樹脂の中から見出すことは困難である。
【0012】
【課題を解決するための手段】かくして本発明は、「中空糸膜の破断時における引張り応力及び弾性率よりもおよそ10倍以上大きな引張り応力及び弾性率を有し、破断時の伸びが5〜20%の熱可塑性樹脂で、中空糸膜束集束固定部近傍の中空糸膜を被覆したことを特徴とする中空糸膜モジュール」であり、「中空糸膜の破断時における引張り応力及び弾性率よりもおよそ10倍以上大きな引張り応力及び弾性率を有し、破断時の伸びが5〜20%の熱可塑性樹脂を、中空糸膜を変性させない溶剤に2〜15%溶解した溶液を、中空糸膜束集束固定部近傍の中空糸膜に塗布若しくは浸漬して含浸させたのち、溶剤を乾燥することを特徴とする中空糸膜モジュールの製造方法」である。
【0013】ここで、熱可塑性樹脂で中空糸膜束集束固定部近傍の中空糸膜を被覆する場合に、熱可塑性樹脂で中空糸膜の空孔のすべてを埋没させないようにすることが、中空糸膜の切断を防止する意味での補強効果においてより好ましい。
【0014】ここで、前記中空糸膜がポリスルホン系樹脂からなり、前記熱可塑性樹脂がポリビニルブチラール又はポリスチレン系樹脂であることが好適であり、中空糸膜にこれらの熱可塑性樹脂を被覆する場合には、ポリビニルブチラールをエタノールで溶解した溶液又はポリスチレン系樹脂をシクロヘキサンで溶解した溶液を塗布若しくは浸漬した後、それら溶剤を乾燥するのである。
【0015】本発明によれば、被覆樹脂は中空糸膜よりもはるかに大きい機械的な強度を有するので少量被覆するだけで大きな補強効果が得られ、その希薄な溶液を用いて被覆するので被覆量のバラツキが小さい。この結果、従来使用された可撓性帯や保護ネットなどの補強体は必ずしも必要でなくなり、モジュールの製造も簡単になる。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明に使用する中空糸膜は、補強樹脂の溶液が浸透する孔径を有する限外ろ過や精密ろ過などに利用する中空糸膜である。その素材には特に制限はないが、例えば、セルロース系、ポリスルホン系、ふっ素樹脂系、ポリオレフィン系、ポリビニルアルコール系などが使用できる。
【0017】中空糸膜モジュールの形態としては、中空糸膜の開口部を一カ所に集束固定したもの、両端で固定したもの、いずれでもよい。図4に、中空糸膜の開口部を一カ所に集束固定した構造のカートリッジ型の中空糸膜モジュール10を例示している。この中空糸膜モジュール10を簡単に説明すれば、中央部でループ状に折り返された中空糸膜11の束はその一端部で円筒12の一端に集束固定部13にてポッティングされ、中空糸膜11の端部はこの集束固定部13(固定部材2に相当する)の端面に開口し、前記円筒12の端部にはヘッダー14が固着されている。そして、円筒12の孔15および底の穴16を通って中空糸膜11の表面に供給された被処理液は、中空糸膜11の外側から内側へろ過し、ろ過液は集束固定部13の先端から前記ヘッダー14の出口17に集まり、図示しないハウジングのろ過液出口から取り出される。ここで、前記中空糸膜モジュール10は、ヘッダー14に設けたOリング18を介してハウジングのろ過室とろ過液室を区画する仕切機構に装着されている。
【0018】被覆樹脂は、中空糸膜の破断時の引張り応力及び弾性率よりもおよそ10倍以上の引張り応力及び弾性率を持つことが必要である。このような特性を有する樹脂で、中空糸膜束集束固定部近傍の中空糸膜を被覆することによって、中空糸膜の強度を補強することができる。この際、被覆樹脂で中空糸膜の空孔のすべてを埋没させることなく、中空糸膜のネットワーク骨格を被覆することによって、中空糸膜の切断を防止する意味での補強効果がより高くなる。これらの値が小さいときには、被覆量を多くしなければならず、前記したように被覆量の制御が困難になるだけでなく、固定部材の近傍の根本1Aで脆く折れたり、界面1Bで引き裂ける。
【0019】被覆樹脂の破断時の伸びは、中空糸膜の素材にほぼ等しいことが望ましい。中空糸膜のネットワーク骨格の表面に薄く被覆したとき、例えば、この値が中空糸膜の素材よりも著しく小さい場合には被覆層の破断が中空糸膜よりも先に発生し、逆に著しく大きい場合には中空糸膜の破断を抑えることができず、いずれの場合でも補強効果は乏しい。前記した中空糸膜の素材の破断時の伸びは5〜20%程度であり、したがって、被覆樹脂の破断時の伸びもこの程度であることが望ましい。
【0020】被覆層の長さは固定部材の根本から2〜50mmの範囲で中空糸膜の長さなどを考慮して決定されるが、5〜30mmがより好ましい。短すぎると曲げ応力を緩和する効果が乏しく、長すぎても効果はなく、かつ中空糸膜の有効膜面積が少なくなる。ここで、固定部材の中に埋没している中空糸膜の根本近傍では、通常固定部材が中空糸膜表面の薄い層までしか侵入していないので、固定部材が侵入していないところも補強樹脂で被覆されるために、中空糸膜の被覆が集束固定する前でも後でもあまり効果は変わらない。
【0021】中空糸膜同士が被覆樹脂で接着すると、引き離すときに中空糸膜が破れることがあるので、被覆量は、中空糸膜の重量の2〜20%の範囲に設定することが好ましく、5〜15%がより好ましい。この範囲であれば、中空糸膜同士が接着して互いに引き離す時に破れることはない。また、この範囲の被覆量のときには、中空糸膜の空孔のすべてを被覆樹脂が埋没させることなく、多数の空孔が残っている様子が顕微鏡で観察される。
【0022】本発明に使用する被覆用の熱可塑性樹脂は、中空糸膜の構造を変えない溶剤に溶解しなければならない。その溶液の濃度は、樹脂の分子量、直接的には粘度によるが、2〜15重量%の範囲が好ましく、より好ましくは5〜10%である。被覆用の熱可塑性樹脂の溶液の粘度が大きいと被覆量が多量になり、中空糸膜同士が接着するので、およそ0.1Pa・s以下、0.05Pa・s以下がより好ましい。
【0023】前記例示したセルロース系樹脂、ポリスルホン系樹脂及びふっ素系樹脂からなる中空糸膜の場合には、被覆用の熱可塑性樹脂の溶剤してメタノール、エタノールなどのアルコール、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの無極性有機溶剤などが使用可能である。多くの有機溶剤に対して耐溶剤性のあるポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂からなる場合には、アセトンなどのケトン類、酢酸メチルなどのエステル類も好適な溶剤である。
【0024】これらに溶解し、前記した機械的な特性を有する熱可塑性樹脂として、ポリビニルブチラール、ポリスチレン及びスチレンを主成分とする共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸エステルなどの疎水性樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、セルロース誘導体などの親水性樹脂が挙げられる。これらの内で、疎水性樹脂は、被覆層が疎水性になり、この部分ではろ過されず、汚染物の蓄積による固定部近傍の中空糸膜の劣化が防止できるためにより好ましい。
【0025】例えば、ポリスルホン系樹脂からなる中空糸膜の場合には、被覆用の熱可塑性樹脂としてポリビニルブチラール若しくはポリスチレン系樹脂が、その溶剤として各々エタノール若しくはシクロヘキサンが好例である。特に、ポリビニルブチラールは、ポリスルホン中空糸膜の補強効果に優れており、また、安全性の高い溶剤であるエタノールに溶解するので好ましい。
【0026】中空糸膜に熱可塑性の樹脂の溶液を含浸させる場合、前記したように中空糸膜を集束固定する前でも後でもよい。また、中空糸膜の先端は開口していてもいなくてもよい。いずれの場合でも、被覆の方法は、被覆箇所を前記の熱可塑性樹脂の2〜15重量%、好ましくは5〜10%の溶液に5〜10分間浸すか、被覆箇所にこの溶液を塗布すればよいが、浸漬する方がすべての中空糸膜が均等に被覆されるので好ましい。また、集束固定してから含浸させる方が作業が簡単である。
【0027】中空糸膜に含浸させた被覆樹脂の溶液の溶剤を乾燥して除去する際、前記例示した溶剤は揮発性が高いので、通常加温しないでそのまま1〜3時間放置するだけでよいが、さらに、被覆樹脂の熱変形温度以上で加温することによって補強効果が向上することもある。
【0028】先端が開口した中空糸膜を被覆樹脂の溶液に浸すと、当然中空糸膜の内側にもこの溶液が入り込むが、垂れ落ちない程度に液切りしてから開口端が上方になるようにして乾燥すると、粘度が低く、濃度も小さいので乾燥後は、樹脂が被覆された中空糸膜の内径は、被覆前とほとんど変わらない。開口端を下にして乾燥すると、開口端に薄い樹脂被膜ができることがあるが、そのときにはこの部分を切り落とせばよい。
【0029】乾燥後の中空糸膜は、予想したことではなかったが、互いに接着することなく、それぞれ独立に補強されている。このようにして被覆された樹脂の量は、中空糸膜に対し2〜20%、通常5〜15%である。
【0030】以上のようにして、固定部材との角度を小さくして引っ張ったときにも、中空糸膜自身の引張り強度の50%を下回らないだけでなく、固定部材の根本で切断しないほどの補強効果が発揮される。以下の実施例で本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
【0031】
【実施例】
(実施例1)
■評価試料の作成長さが約50cm、内、外径が500及び800μm、孔径が約0.2μmで、引張り強度が170g/本、破断時の伸びが60%の親水性ポリスルホン中空糸膜1700本を中央でループ状に折り返し、充填率(ただし、充填率は、中空糸膜の外径が占める面積と集束固定部の中空糸膜本数との積を、集束固定部の束の外径が占める面積で割った数である)が約60%になるように束ねて、破断強度が約500Kg/cm2 、破断時の伸びが約20%のウレタン樹脂で集束固定し、固定部の長さが約15mmになるように端部を切断して中空糸膜の端部を開口した。
【0032】これを集束固定部を下にして、重合度が約700のポリビニルブチラールの5重量%エタノール溶液に5分間浸し、固定部の根本から約2cmまで中空糸膜に含浸させた。中空糸膜束を引き上げてから、ポリビニルブチラールの溶液を軽く振って液切りしてから開口部をろ紙に乗せてそのまま3時間放置した。束の外側から中央までの中空糸膜の強度が測定できるように、集束固定部を中央で半分に分割した。
【0033】■補強効果の測定図1のようにして(ただし、引張り方向の内側に他の中空糸膜が無いようにした)束の外側から内側までの中空糸膜の引張り強度を角度αを変えながら測定した。位置による差はほとんど無く、その結果を、未処理のものと図2に一緒に示した。この図から補強効果は明らかである。
【0034】(実施例2)孔径が0.04μmである以外、実施例1とほぼ同じ特性のポリスルホン中空糸膜束を用いて、実施例1と同様にして補強効果の評価を行ったが、実施例1と同様な結果が得られた。
【0035】(実施例3)孔径が0.45μmである以外、実施例1とほぼ同じ特性のポリスルホン中空糸膜束を用いて、実施例1と同様にして補強効果の評価を行ったが、実施例1に比べて少しではあるが、強度がさらに向上した。
【0036】(実施例4)長さが約160cmである以外は実施例1と同様にして中空糸膜モジュールを作成した。このモジュールを水平にして水に埋没させ、集束固定部を固定して垂直方向に15cmの振幅で70rpmの振動数で1000回振動させた。この後でモジュールを観察したが、切れた中空糸膜はなく、また、中空糸膜の内側から100KPaの空気で加圧してももれは無かった。
【0037】(比較例1)被覆処理をしなかった以外、実施例4と同様な実験を行った結果、数十本の中空糸膜が集束固定部の根本で切れた。
【0038】(実施例5)実施例4で、水をベンガラの分散水に代え、モジュールの開口部から吸引ろ過した。ろ過後モジュールを引き上げて外観を観察したところ、集束固定部の根本からポリビニルブチラールを被覆した約2cmの部分までの中空糸膜は白いままで、その他の部分は赤く着色していた。
【0039】
【発明の効果】以上にしてなる本発明の中空糸膜モジュール及びその製造方法によれば、特定の性質を備えた熱可塑性樹脂で、中空糸膜集束固定部近傍の中空糸膜を被覆したことにより、曲げ応力が集中する固定部近傍の中空糸膜の根本を効果的に補強することができ、中空糸膜の破断や引き裂きを防止する上で有効である。特に、熱可塑性樹脂で、中空糸膜の空孔のすべてを埋没させることなく被覆すれば、その効果はより高くなる。また、特定の性質を備えた熱可塑性樹脂を被覆する方法としては、該熱可塑性樹脂を中空糸膜を変性させない溶剤に2〜15%溶解した溶液を、目的部分に塗布若しくは浸漬して含浸させたのち、溶剤を乾燥させるだけの簡単な作業で済むので、工業的にも有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】中空糸膜の引張り強度を固定部材との角度αを変えて測定する時の略図である。
【図2】本発明の中空糸膜の引張り強度と未処理の中空糸膜の引張り強度を比較して示したグラフである。
【図3】あらかじめ熱硬化性樹脂で被覆した中空糸膜を固定部材に埋没させた場合の強度を説明するための略図である。
【図4】中空糸膜モジュールの一例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
1 中空糸膜
1A 根本
1B 界面
2 固定部材
3 被覆層
10 中空糸膜モジュール
11 中空糸膜
12 円筒
13 集束固定部(固定部材)
14 ヘッダー
15 孔
16 穴
17 出口
18 Oリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】 中空糸膜の破断時における引張り応力及び弾性率よりもおよそ10倍以上大きな引張り応力及び弾性率を有し、破断時の伸びが5〜20%の熱可塑性樹脂で、中空糸膜束集束固定部近傍の中空糸膜を被覆したことを特徴とする中空糸膜モジュール。
【請求項2】 前記熱可塑性樹脂で、中空糸膜束集束固定部近傍の中空糸膜を、その空孔のすべてを埋没させることなく被覆してなる請求項1記載の中空糸膜モジュール。
【請求項3】 中空糸膜がポリスルホン系樹脂からなり、熱可塑性樹脂がポリビニルブチラールである請求項1又は2記載の中空糸膜モジュール。
【請求項4】 中空糸膜がポリスルホン系樹脂からなり、熱可塑性樹脂がポリスチレン系樹脂である請求項1又は2記載の中空糸膜モジュール。
【請求項5】 中空糸膜の破断時における引張り応力及び弾性率よりもおよそ10倍以上大きな引張り応力及び弾性率を有し、破断時の伸びが5〜20%の熱可塑性樹脂を、中空糸膜を変性させない溶剤に2〜15%溶解した溶液を、中空糸膜束集束固定部近傍の中空糸膜に塗布若しくは浸漬して含浸させたのち、溶剤を乾燥することを特徴とする中空糸膜モジュールの製造方法。
【請求項6】 中空糸膜がポリスルホン系樹脂からなり、熱可塑性樹脂がポリビニルブチラールであり、かつその溶剤がエタノールである請求項5記載の中空糸膜モジュールの製造方法。
【請求項7】 中空糸膜がポリスルホン系樹脂からなり、熱可塑性樹脂がポリスチレン系樹脂であり、かつその溶剤がシクロヘキサンである請求項5記載の中空糸膜モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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