説明

中空糸膜モジュール

【課題】高機能性膜モジュールにおいて、導通流体による機械的なダメージを軽減し、安定した性能を維持できるモジュールを提供する。
【解決手段】複数の中空糸膜1からなる中空糸膜束と、前記中空糸膜束1を収容する束ケース9と、中空糸膜束の両端部を接着封止した隔壁樹脂4からなる封止固定部と、中空糸膜の両端面が前記隔壁樹脂に開口した中空糸膜開口部3と、前記束ケースの側面に流体導通用のケース開口部を有する中空糸膜モジュールであって、導通流体による中空糸膜束1の揺動及び押圧を軽減するために、中空糸膜束1を内包する網状物2について、その構成生地の開口率、繊維ピッチ、繊維径、初期引張応力を特定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空糸膜モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
中空糸膜モジュールは、膜面積が大きく装置を小型化できるため、種々の用途に利用されている。この中空糸膜モジュールは、図1、図2を用いて1つの例を示すと、複数の中空糸膜1からなる中空糸膜束6と、前記中空糸膜束6を収容する束ケース9と、中空糸膜束6の両端部を接着封止した隔壁樹脂4からなる封止固定部と、中空糸膜1の両端面が前記隔壁樹脂に対して開口した中空糸膜開口部3と、前記束ケース9の側面に流体導通用のケース開口部5を有している。ここで束ケースの側面とは、収容された中空糸膜の外側部分と相対する面である。束ケースとはその両端に隔壁樹脂による中空糸開口端を形成し、Oリングなどのシール材により処理流体と被処理流体とを分離できる構成物をいう。また、この例では処理流体および被処理流体それぞれの中空糸膜内側入口13,中空糸膜外側入口15と中空糸膜内側出口14,中空糸膜外側出口16を備えた中空糸膜外側部分のポート部12、及び中空糸膜内側部分のヘッダー部11と、処理/被処理それぞれの流体を分離・封止する弾性のOリング10などを備えて、構成される。また、束ケース自体に出入流体のポート部および接合用のノズルを備えたものを使用することも可能である。
【0003】
中空糸膜モジュールの側面、すなわち束ケースの側面に設けた流体のケース開口部5付近では、流体をモジュール内に流した場合に流体の強い流れが中空糸膜束に当り、中空糸膜を動かすことがある。また、流体の出入口が中空糸膜端部の樹脂封止部分の近傍にある場合には、封止部分との境界面から中空糸膜が破損する場合がある。この様な中空糸膜の破損が生じると、中空糸膜および隔壁樹脂によって隔離された流体が他の流体側へ混入し、不利益を生じることになる。
【0004】
これらの問題点を解決するため、幾つかの中空糸膜モジュールがこれまでに提案されている。例えば、特許文献1には、ポリエチレン性のネットで中空糸膜束の周囲を保護し、逆洗時の衝撃に対処する方法が提案されている。また、特許文献2にはポリプロピレン樹脂からなる円筒状保護ネットと仕切りネットで中空糸膜束を保護する技術が提案されている。さらに、特許文献3には、中空糸膜束を小束に分割して保護ネットと端部の仕切り板で束間の流量を確保する技術が提案されている。
【0005】
しかし、これらはいずれも保護ネットのなかで中空糸膜束が固定されていない、あるいは保護ネット間に隙間があるため、特に流体が気体であるような、流体の勢いが強い場合には、中空糸膜は激しく揺動し、保護ネットにこすられて損傷するおそれや、保護ネットが揺動するなどして、保護ネットの構成繊維に流体の圧力で押圧されて中空糸膜を損傷するおそれがあった。
【0006】
一方で、中空糸膜の機械的強度を高めて、保護ネットなしでのモジュールを構成した例(特許文献4)もあるが、膜の要求特性を向上させると機械的特性が低減する傾向があり、十分な対策には成り得ない。
【0007】
また、中空糸膜と隔壁樹脂との境界に弾性樹脂を配置して、中空糸膜が揺動して損傷する際の衝撃を軽減するなどの試みが行われている(特許文献5、特許文献6)が、中空糸膜の機械的特性が低い場合には必ずしも十分な効果が得られていない。
【0008】
また、モジュールの中央部に開口芯材を有するラジアルフローを含むタイプの束の外周に保護ネットを配置した例(特許文献7)や、モジュールの流体が導通する開口部に保護ネットを貼り付けた例(特許文献8)もあるが、これらについても、中空糸膜と保護ネットとの干渉による中空糸膜の損傷については、何ら提示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭61−291007号公報
【特許文献2】特開平9−299768号公報
【特許文献3】特開平3−165818号公報
【特許文献4】特開2003−326139号公報
【特許文献5】特開平6−296835号公報
【特許文献6】特開平4−334529号公報
【特許文献7】特開2008−256225号公報
【特許文献8】特開2007−283292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のとおり、中空糸膜束を保護するネットがあっても、特に流体の勢いが強い場合にはこの力で保護ネットが変形したり、中空糸膜の変形が増大することで、こすりや押圧で中空糸膜が破損する場合がある。そこで、流体の勢いを低減させたり、保護ネットの形状により、中空糸膜を変形しにくくする工夫が求められた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題の解決手段として、中空糸膜束を網状物で包み、網状物の開口率を制御し、更に、網状物を構成する繊維の中空糸膜軸方向のピッチが中空糸膜を損傷しないように選択することを特徴とする。
【0012】
網状物の開口率を制御することによって流体の勢いを均一化して低減させ、流体の移動時に中空糸膜束の揺動を抑えることができ、さらに網状物のピッチを選択することで、流動抵抗による中空糸膜の変形を軽減して、こすれや押圧による中空糸膜の損傷を抑え、長時間の安定使用を維持できる中空糸膜モジュールを提供する。
【0013】
本発明は、下記の(1)〜(7)の構成によって達成される。
(1)複数の中空糸膜からなる中空糸膜束と、前記中空糸膜束を収容する束ケースと、中空糸膜束の両端部を接着封止した隔壁樹脂からなる封止固定部と、中空糸膜の両端面が前記隔壁樹脂に開口した中空糸膜開口部と、前記束ケースの側面に流体導通用のケース開口部を有する中空糸膜モジュールであって、中空糸膜束がさらに網状物に内包されており、前記網状物の開口率が25%以上65%以下で、かつ前記網状物を構成する繊維の中空糸膜軸方向のピッチが中空糸膜外径の2倍以下であることを特徴とする中空糸膜モジュール。
(2)前記網状物の初期引張抵抗力が5kgf以上である請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
(3)中空糸膜の初期引張抵抗力が5kgf以下である請求項1または2に記載の中空糸膜モジュール。
(4)中空糸膜充填率が30%以上70%以下である請求項1から3のいずれかに記載の中空糸膜モジュール。
(5)前記網状物の長さ方向および巾方向における121℃1時間湿熱処理時の収縮率が3%以下である請求項1から4のいずれかに記載の中空糸膜モジュール。
(6)中空糸膜が加湿膜である請求項1から5のいずれかに記載の中空糸膜モジュール。
(7)中空糸膜が熱交換膜である請求項1から5に記載の中空糸膜モジュール。
【発明の効果】
【0014】
本発明の中空糸膜モジュールは、中空糸膜束を網状物で包み、更に、網状物を構成する繊維の形状が中空糸膜を損傷しないように構成されるため、流体の移動時に中空糸膜束の揺動を抑え、流動抵抗による網状物構成繊維への押圧による変形を軽減して糸の損傷を抑え、機械的特性の低い高機能性膜についても、長時間の安定使用を維持できる中空糸膜モジュールを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る円形中空糸膜モジュールの一例を示す断面図である。
【図2】図1の円形中空糸膜モジュールに収納された円形束ケースに収容された円形の網状物に内包された中空糸膜束の構成図である。
【図3】複数の網状物に内包された不定形中空糸膜小束から構成された、円形の中空糸膜束の例である。
【図4】本発明に係る矩形中空糸膜モジュールの他の一例を示す断面図である。
【図5】図4の矩形中空糸膜モジュールに収納された矩形束ケース、および矩形束ケースに収容された、矩形の網状物に内包された中空糸膜束のX方向矢視図である。
【図6】図4の矩形中空糸膜モジュールに収納された矩形束ケース、および矩形束ケースに収容された矩形の網状物に内包された中空糸膜束のY方向矢視図である。
【図7】図5および図6の矩形束ケースに収容された矩形の網状物に内包された中空糸膜束の例である。
【図8】網状物の開口率の計算例である。
【図9】網状物の代替として多孔板を用いた場合の開口率の計算例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図を用いて詳細に本発明を説明する。
【0017】
図1は上述のとおり、本発明に係る円形中空糸膜モジュールの一例を示す断面図、図4は矩形中空糸膜モジュールの一例を示す断面図である。
【0018】
図2、図3および図7に示すように、予めモジュールに必要な膜交換性能および透過抵抗を考慮して設定された複数の中空糸膜を束ねてなる中空糸膜束6および中空糸膜小束7が、図2は円筒状の網状物2、図3では不定形筒状の網状物2、図7では矩形の網状物2》内に内包されている。さらに図1,図4に示したようにそれらを固定する束ケース9に収容されている。これらの束ケース9は、中空糸膜内/外側にそれぞれ出入り口ポートを設けたヘッダー部11およびポート部12、シール用のOリング10とともに支持具17で固定されてモジュールを構成する。
【0019】
また、この場合、予め網状物2を組み込んだ束ケース内に、易滑性のフィルム等を使って所定の中空糸膜束を組み込むことも可能である。
【0020】
中空糸膜束6の両端部は隔壁樹脂4により束ケース9の両端部にそれぞれ固定され、中空糸膜束6の端面は開口状態にされている。
【0021】
網状物としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ナイロン系樹脂、フッ素含有樹脂、AS樹脂、ABS樹脂等からなるプラスチックネット、あるいはステンレス等の金属からなる金属ネットが用いられるが、モジュールの使用目的によってその材質を適宜選択する必要がある。例えば、加湿膜モジュールや熱交換モジュールでは耐熱性、耐湿熱性が要求され、ポリエチレンテレフタレート樹脂やフッ素含有樹脂が好ましく用いられる。網状物の構成は本発明の目的である糸束の変形を防止するために、伸縮が少なく、伸張時の初期弾性率の高い、特に中空糸膜の長さ方向に高い構成であることが好ましい。
【0022】
網状物は、流体の流動抵抗によって中空糸膜に損傷を来さないよう、適当な構成繊維径及び構成繊維間ピッチで決定される開口率を有するように選択する必要がある。網目の開口率が大きくなると、特に中空糸膜外側流れの出口付近において、その構成繊維に接触する中空糸膜への押圧が高くなり、繰り返しの使用によって、中空糸膜が損傷してしまう。また、網目の開口率が小さすぎる場合には、網目を通過する流体の流動抵抗が過大となり、操作条件を大幅に制限することになる。従って、網目の開口率は、25%以上65%以下であることが必須である。好ましくは30%以上60%以下に設定する。
【0023】
図8にその1例を示した、網状物の場合は、開口率は次の(1)式で表される。
【0024】
開口率:((B−A)×(b−a))/(B×b)×100 (1)式
ここで、Bは長さ方向配置繊維間ピッチ,bは巾方向配置繊維間ピッチであり、Aは長さ方向配置繊維径,aは巾方向配置繊維径である。
【0025】
また、網状物は図9にその1例を示したような多孔版での代替も可能であり多孔板の場合では、開口率は次の(2)式で表される。
【0026】
開口率:π(C^2+c^2)/16/(D×d)×100 (2)式
ここで、Dは長さ方向配置孔間ピッチ(長さ方向配置繊維間ピッチに相当),dは巾方向配置孔間ピッチ(巾方向配置繊維間ピッチに相当)であり、Cは長さ方向配置孔径(長さ方向配置繊維径に相当),cは巾方向配置孔径(巾方向配置繊維径に相当)である。
【0027】
多孔版の形状が円でない場合には、上式に準じた計算式を使用する。
【0028】
また、構成繊維間ピッチは、中空糸膜径との関係で決定される。すなわち中空糸膜径が太い場合に比較して、中空糸膜径が細い場合には変形割合を抑えるために、構成繊維間ピッチを細かくする必要がある。この場合、構成繊維間のピッチは挿通された中空糸膜外径の2倍以下であることが好ましい。網状物の中空糸膜繊維軸方向のピッチおよび機械的特性が重要となる。
【0029】
さらに、構成繊維の繊維径も中空糸膜への押圧時に応力集中が起きないよう適当な大きさに設定する必要があるが、上記の網目開口率および構成繊維間ピッチを維持することで、自ずから設定される。一方で、本発明における重要な要件である網状物の剛性によって中空糸膜束の揺動を抑制する観点からみれば、構成繊維数が少ないすなわち単糸繊維径は大きい方が好ましい。
【0030】
前記網状物を構成する生地の初期引張抵抗力は5kgf以上であることが好ましい。中空糸膜を支える網状物は中空糸膜にかかる抗力を受け止め、その変形を抑える必要があり、生地の初期引張抵抗力が5kgf未満では、その効果を発揮し得ない場合がある。
【0031】
中空糸膜の初期引張抵抗力は5kgf以下である場合に、本発明の効果は一層発揮される。中空糸膜の初期引張抵抗力が低い場合には、中空糸膜自身の抗力が小さいため変形し易くなり、本発明における網状物によって中空糸膜の変形を抑制するという効果が一層発揮される。
【0032】
前記網状物は、モジュールが湿熱環境下で使用される場合の変形を避けるため、その長さ方向および巾方向における121℃1時間湿熱処理時の収縮率が3%以下であることが好ましい。長さ方向とは中空糸膜束の長さ方向を指し、巾方向とは中空糸膜束の円周方向を指す。
【0033】
上記のような、中空糸膜束を束ケース内に配置する場合、流体の流動抵抗による束の揺動を極力抑えるため、密着して配置する事が好ましい。ここで密着して配置するとは、当該束の変位・力が、これに隣接する束、もしくはケース壁に直接伝達し、揺動が軽減されるよう配置することを意味する。この状況は、該モジュールの中空糸膜外側に1200L/分で空気を流したとき、目視で中空糸膜束の揺動が観察されないことを意味する。これによって、束の変位を抑え、中空糸膜の損傷を軽減することができる。
【0034】
このため、中空糸膜束のケースへの充填率(中空糸膜充填率)を適宜選択する必要があり、通常は中空糸膜束の充填率を30〜70%に設定することが好ましく、より好ましくは40〜60%の範囲に設定する。さらに必要に応じて、中空糸膜にスペーサヤーンを巻き付けるなど、通気性のかさ高加工材を付与する方法も有効な手段である。
【0035】
ここで中空糸膜充填率とは、中空糸膜外径を基準とする中空糸膜の断面積が、束ケース内側の断面積に占める割合とした。
【実施例】
【0036】
中空糸膜の作製
ポリスルホン樹脂(ソルベー社製P3500)18部、ポリビニルピロリドン(ISP社製K30)9部、およびジメチルアセトアミド72部、水1部からなる製膜原液を90℃で溶解後、50℃に保温し、1.0/0.7mmからなる2重管口金からジメチルアセトアミド40部、水60部からなる芯液と同時に吐出させ、30℃の乾式部350mmを通り、水90部、ジメチルアセトアミド10部の凝固浴40℃に浸漬させ、凝固させた。次いで凝固させた中空糸膜を80℃の水洗浴で洗浄後、中空糸膜2本に170dtexのポリエステル加工糸を巻き付け、カバリングを行った後に、巻き取りカセに巻き取った。巻き取った中空糸膜を50℃の乾熱乾燥機で24時間乾燥を行い、中空糸膜束を得た。
【0037】
中空糸膜の初期引張抵抗力
JIS L 1013の8.10初期引張抵抗度の測定法に準じて、試長50mm、引張速度50mm/分の条件で、テンシロン(ORIENTEC社製RTM−100)を用いて初期抵抗度を測定し、中空糸膜1本あたりの初期抵抗力(kgf/中空糸膜)に換算して評価した。
【0038】
網状物の初期引張抵抗力
上記と同様に、JIS L 1013の8.10初期引張抵抗度の測定法に準じて、試長50mm、引張速度5mm/分の条件で、テンシロン(ORIENTEC社製RTM−100)を用いて初期抵抗度を測定し、網状物1cmあたりの初期抵抗力(kgf/cm)に換算して評価した。
【0039】
中空糸膜耐久試験
初めに、図1の円形モジュールユニットまたは図4の矩形モジュールユニットの中空糸膜内側出口14および中空糸膜外側入口15を閉じ、中空糸膜内側入口13から50kPa空気圧をかける。このとき中空糸膜外側出口16から出てくる空気量を測定し、漏れのないことを確認する。次に、中空糸膜内側入口13および中空糸膜内側出口14を閉じ、中空糸膜外側入口15から中空糸膜外側から2000L/分の割合で6時間、空気を通過させた後、再度、中空糸膜内側出口14および中空糸膜外側入口15を閉じ、中空糸膜内側入口13から50kPa空気圧をかけて、このとき中空糸膜外側出口16から出てくる空気量を測定する。
【0040】
湿熱処理収縮率
網状物を15cm×15cmに切り出して試料とし、その中央に、構成繊維と平行(長さ方向)および直角(巾方向)になるよう、約10cm×10cmの正方形を描き、正確にその各辺の長さを0.1mm単位で測定する。次に、該試料をオートクレーブ中にいれ、121℃1時間の湿熱処理を行う。処理後、試料を採りだし、再度、正方形の各辺の寸法を0.1mm単位で正確に測定する。長さ方向および巾方向それぞれについて、以下の式で収縮率を算出する。
【0041】
収縮率(%) = (処理前の長さ − 処理後の長さ)/(処理前の長さ)×100
以下に実施例を挙げ、図を参照しながら本発明の中空糸膜型膜モジュールの製造方法を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
[実施例1]
外径820μm、膜厚95μmで初期引張抵抗力2.6kgfのポリスルホン製中空糸膜1570本からなる中空糸膜束6を、開口率46%、網目ピッチ840μmで、初期引張抵抗力172kgf、長さ方向及び巾方向の湿熱処理収縮率がそれぞれ2.9%、2.2%であるポリエステル製ネットを構成生地とする内径43mmの、図2に示すような円筒型の網状物2内に、易滑性のフィルム等を用いて挿通した。その中空糸膜束を同様な易滑性フィルムを用いてポリスルホン樹脂からなり、その側面にケース開口部5を有する内径44mmの束ケース9に挿通した。中空糸膜束両端を封止後、遠心ポッティングを行って、両端をカットし、中空糸膜を開口させた。この束ケース9を、両端に中空糸膜内側流体出入り口を有するヘッダー部11と、中空糸膜外側流体出入り口を設けたポート部12とを、それぞれがOリング10でシールされるように支持具17を用いて組み込み、図1に示すような円形モジュールを作成した。このモジュールを用いて、中空糸膜耐久試験を行った結果、漏洩空気量は1L/分以下であり、中空糸膜の損傷は認められなかった。
【0043】
[実施例2]
外径800μm、膜厚90μmで初期引張抵抗力2.4kgfのポリスルホン製中空糸膜990本からなる中空糸膜束を、開口率46%、網目ピッチ850μmで初期引張抵抗力43kgf、長さ方向及び巾方向の湿熱処理収縮率がそれぞれ0.9%、0.1%であるポリエステル製ネットを構成生地とする17mm×63mmの、図7に示すような、矩形の網状物2内に、易滑性のフィルム等を用いて挿通し、中空糸膜束2個を作成した。その中空糸膜束を同様な易滑性フィルムを用いて、アルミニウム製の外寸法が縦40mm、横70mm、長さ180mmの、図5および図6に示すような矩形状のアルミニウムからなる束ケース9に挿通した。中空糸膜束両端を封止後、遠心ポッティングを行って、両端をカットし、中空糸膜を開口させた。この束ケースを2個作製し、図4に示したような両端に中空糸膜内側流体出入り口および中空糸膜外側流体出入り口を設け、それぞれがシリコンシーラントでシールされたアルミニウム製矩形ハウジング3に組み込んで、矩形モジュールを作成した。このモジュールを用いて、中空糸膜耐久試験を行った結果、漏洩空気量は1L/分以下であり、中空糸膜の膜の損傷は認められなかった。
【0044】
[比較例1]
実施例1と同様の中空糸膜2060本を用いて、開口率66%、網目ピッチ1540μmで、初期引張抵抗力32kgfのポリエステル製ネットを構成生地とする縦33mm、横63mm、長さ180mmの、図5および図6に示すような矩形の網状物2内に挿通した中空糸膜束内包保護ネットを作成した。実施例2と同様に、図4に示すようなアルミニウム製矩形モジュールを作成した。
【0045】
このモジュールを用いて、中空糸膜耐久試験を行った結果、漏洩空気量は20L/分以上となり、モジュールを解体して観察した結果、中空糸膜外側出口14付近でネットに押圧され変形、一部が切断した中空糸膜が観察された。
【0046】
[比較例2]
実施例2と同様の中空糸膜2910本を用いて、開口率60%、網目ピッチ2400μmで、初期引張抵抗力240kgfのポリエステル製ネットを構成生地とする内径63mm、長さ295mmの、図2に示すような円形の網状物2内に挿通した中空糸膜束を作成した。実施例1と同様に、図1に示すようなアルミニウム製円形モジュールを作成した。
【0047】
このモジュールを用いて、中空糸膜耐久試験を行った結果、漏洩空気量は20L/分以上となり、モジュールを解体して観察した結果、一部が切断した中空糸膜が観察された。
【符号の説明】
【0048】
1 中空糸膜
2 網状物
3 中空糸膜開口部
4 隔壁樹脂
5 ケース開口部
6 中空糸膜束
7 中空糸膜小束
8 分散板
9 束ケース
10 Oリング
11 ヘッダー部
12 ポート部
13 中空糸膜内側入口
14 中空糸膜内側出口
15 中空糸膜外側入口
16 中空糸膜外側出口
17 支持具
P 長さ方向(中空糸膜繊維軸方向)
Q 巾方向(中空糸膜径方向)
A 長さ方向配置繊維径
B 長さ方向配置繊維間ピッチ
a 巾方向配置繊維径
b 巾方向配置繊維間ピッチ
C 長さ方向配置孔径
D 長さ方向配置孔間ピッチ
c 巾方向配置孔径
d 巾方向配置孔間ピッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の中空糸膜からなる中空糸膜束と、前記中空糸膜束を収容する束ケースと、中空糸膜束の両端部を接着封止した隔壁樹脂からなる封止固定部と、中空糸膜の両端面が前記隔壁樹脂に開口した中空糸膜開口部と、前記束ケースの側面に流体導通用のケース開口部を有する中空糸膜モジュールであって、中空糸膜束がさらに網状物に内包されており、前記網状物の開口率が25%以上65%以下で、かつ前記網状物を構成する繊維の中空糸膜軸方向のピッチが中空糸膜外径の2倍以下であることを特徴とする中空糸膜モジュール。
【請求項2】
前記網状物の初期引張抵抗力が5kgf以上である請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項3】
中空糸膜の初期引張抵抗力が5kgf以下である請求項1または2に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項4】
中空糸膜充填率が30%以上70%以下である請求項1から3のいずれかに記載の中空糸膜モジュール。
【請求項5】
前記網状物の長さ方向および巾方向における121℃1時間湿熱処理時の収縮率が3%以下である請求項1から4のいずれかに記載の中空糸膜モジュール。
【請求項6】
中空糸膜が加湿膜である請求項1から5のいずれかに記載の中空糸膜モジュール。
【請求項7】
中空糸膜が熱交換膜である請求項1から5に記載の中空糸膜モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−167372(P2010−167372A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12637(P2009−12637)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】