説明

中空糸膜外部血液灌流型人工肺

【課題】血小板の粘着および活性化が少なく、かつ、血漿成分の漏出が少ない中空糸膜外部血液灌流型人工肺を提供する。
【解決手段】中空糸膜外部血液灌流型人工肺1は、多数のガス交換用多孔質中空糸膜3をハウジング2内に収納し、中空糸膜3の外面側に血液が流れ、中空糸膜3の内部に酸素含有ガスが流れるタイプの人工肺である。中空糸膜3の外面を含む外面層3aに炭素数1〜4のアルコキシ基及び炭素数1〜4のアルキル基よりなるアルコキシアルキル(メタ)アクリレートを主成分としてなる合成高分子18が被覆されており、かつ中空糸膜3の内部層3bおよび中空糸膜の内面層3cには、合成高分子が実質的に存在していないものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体外血液循環において、血液中の二酸化炭素を除去し、血液中に酸素を添加するための中空糸膜型人工肺に関する。特に、中空糸膜外部血液灌流型人工肺に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質膜を使用した中空糸膜型人工肺は、心臓疾患の開心術時における体外循環装置や循環補助用人工心肺装置として、一般に広く使用されている。膜型人工肺は主に中空糸膜を用い、その中空糸膜を介して血液のガス交換を行うものである。
人工肺への血液の灌流方式として、中空糸膜の内側に血液を流し、中空糸膜の外側にガスを流す内部灌流方式と、逆に血液を中空糸膜外側へ流し、ガスを中空糸膜の内側へ流す外部灌流方式とがある。
【0003】
外部灌流型人工肺は、内部灌流型人工肺より、膜面積あたりのガス交換性能が高く、かつ圧力損失も小さいことから、主流になってきている。しかし、外部灌流型人工肺は、血液の流れに乱れを発生させているため血小板系の粘着、活性化に影響を与えやすいので、この点については、内部灌流型人工肺の方が優れているといわれている。
【0004】
そして、特開昭62−172961号公報には、ベンジルアルキルアンモニウム−ヘパリン複合体をコーティングした人工肺が開示されているが、使用中、血液中に脱離していくという欠点がある。
【0005】
また、親水性高分子を被覆することも考えられるが、ガス交換膜として多孔質膜を使用する場合、血漿成分が細孔にしみ込み、血漿リークを起こし、ガス交換能が低下する場合があった。
【特許文献1】特開昭62−172961号公報
【特許文献2】特開平4−152952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さらに、特開平4−152952号には、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートからなる生体適合性材料が開示されている。さらに、人工肺用膜として応用できることが記載されているが、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートにより人工肺用中空糸膜を直接製造することは容易ではない。また、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートのメタノール溶液を用いて、人工肺用中空糸膜にコーティングすると、中空糸膜の細孔内へのアルコキシアルキル(メタ)アクリレートの流入に起因し、人工肺の使用時に血漿成分が細孔にしみ込み、血漿リークを起こし、ガス交換能が低下するおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、血小板の粘着および活性化が少なく、かつ、血漿成分の漏出が少ない中空糸膜外部血液灌流型人工肺を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するものは、多数の疎水性高分子材料からなるガス交換用多孔質中空糸膜をハウジング内に収納し、前記中空糸膜の外面側に血液が流れ、該中空糸膜の内部に酸素含有ガスが流れる中空糸膜外部血液灌流型人工肺であって、血液接触部となる前記中空糸膜の外面を含む外面層に、炭素数1〜4のアルコキシ基及び炭素数1〜4のアルキル基よりなるアルコキシアルキル(メタ)アクリレートの1種または2種以上の単独重合体または共重合体あるいは該アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとこれと共重合し得る単量体(分子内にヒドロキシル基を有しない)との共重合体を主成分とする合成高分子が被覆されており、かつ前記中空糸膜の内部層および内面層には、前記合成高分子が実質的に存在しておらず疎水性が保持されている中空糸膜外部血液灌流型人工肺である。
【0009】
また、上記目的を達成するものは、多数の疎水性高分子材料からなるガス交換用多孔質中空糸膜をハウジング内に収納し、前記中空糸膜の外面側に血液が流れ、該中空糸膜の内部に酸素含有ガスが流れる中空糸膜外部血液灌流型人工肺であって、血液接触部となる前記中空糸膜の外面を含む外面層に下記化学式1で表される繰り返し単位を構成成分とするアルコキシアルキル(メタ)アクリレートの1種または2種以上の単独重合体または共重合体あるいは該アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとこれと共重合し得る単量体(分子内にヒドロキシル基を有しない)との共重合体を主成分とする合成高分子が被覆されており、かつ前記中空糸膜の内部層および前記中空糸膜の内面層には、前記合成高分子が実質的に存在しておらず疎水性が保持されている中空糸膜外部血液灌流型人工肺である。
【0010】
【化1】


(R1は炭素数1〜4のアルキレン、R2は炭素数1〜4のアルキル、R3はHまたはCH3をそれぞれ表す)
【0011】
さらに、前記合成高分子がポリメトキシエチルアクリレートであることが好ましい。
そして、前記中空糸膜外部血液灌流型人工肺は、例えば、血液流入口と血液流出口とを有するハウジングと、該ハウジング内に収納された多数のガス交換用多孔質中空糸膜からなる中空糸膜束と、該中空糸膜束の両端部を上記ハウジングに液密に支持する一対の隔壁とを有し、該隔壁と上記ハウジング内面および上記中空糸膜外面間に形成された血液室と、前記中空糸膜内部に形成されたガス室と、該ガス室と連通するガス流入口およびガス流出口とを有するものである。
また、前記中空糸膜外部血液灌流型人工肺は、例えば、側面に血液流通用開口を有する内側筒状部材と、該内側筒状部材の外面に巻き付けられた多数のガス交換用多孔質中空糸膜からなる筒状中空糸膜束と、該筒状中空糸膜束を前記内側筒状部材とともに収納するハウジングと、前記中空糸膜の両端を開口した状態で、前記筒状中空糸膜束の両端部を前記ハウジングに固定する隔壁と、前記ハウジング内に形成された血液室と連通する血液流入口および血液流出口と、前記中空糸膜内部と連通するガス流入口およびガス流出口とを有するものである。
そして、前記合成高分子は、前記中空糸膜外部血液灌流型人工肺の血液接触部全体に被覆されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の人工肺では、中空糸膜の血液接触部である中空糸膜の外面もしくは外面層に上述の合成高分子が被覆されているので、血小板の粘着および活性化が少ない。また、中空糸膜の内部層および中空糸膜の内面層には、この合成高分子が実質的に存在していないことより、中空糸膜の内部層および中空糸膜の内面層は、形成素材の疎水性状態を維持しているため、血漿のリークが極めて少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
そこで、本発明の中空糸膜外部血液灌流型人工肺を実施例を用いて説明する。
図1は、本発明の中空糸膜外部血液灌流型人工肺の一実施例の断面図である。図2は、本発明の中空糸膜外部血液灌流型人工肺に使用されているガス交換用多孔質中空糸膜の拡大断面図である。図3は、本発明の中空糸膜外部血液灌流型人工肺の他の実施例の断面図である。
【0014】
本発明の中空糸膜外部血液灌流型人工肺1は、多数のガス交換用多孔質中空糸膜3をハウジング2内に収納し、中空糸膜3の外面側に血液が流れ、中空糸膜3の内部に酸素含有ガスが流れるタイプの人工肺であり、さらに、血液接触部となる中空糸膜3の外面もしくは外面層3aに炭素数1〜4のアルコキシ基及び炭素数1〜4のアルキル基よりなるアルコキシアルキル(メタ)アクリレートを主成分としてなる合成高分子18が被覆されており、かつ中空糸膜3の内部層3bまたは中空糸膜の内面層3cには、合成高分子が実質的に存在していないものである。
【0015】
また、中空糸膜外部血液灌流型人工肺1は、表現を変えれば、多数のガス交換用多孔質中空糸膜3をハウジング2内に収納し、中空糸膜3の外面側に血液が流れ、血液接触部となる中空糸膜3の内部に酸素含有ガスが流れるタイプの人工肺であり、さらに、中空糸膜3の外面もしくは外面層3aに下記化学式1で表される繰り返し単位を構成成分とするアルコキシアルキル(メタ)アクリレートを主成分としてなる合成高分子18が被覆されており、かつ中空糸膜3の内部層3bまたは中空糸膜の内面層3cには、合成高分子が実質的に存在していないものである。
【0016】
【化1】


(Rは炭素数1〜4のアルキレン、Rは炭素数1〜4のアルキル、RはHまたはCHをそれぞれ表す)
【0017】
この実施例の中空糸膜型人工肺1は、血液流入口6と血液流出口7とを有するハウジング2と、ハウジング2内に収納された多数のガス交換用多孔質中空糸膜3からなる中空糸膜束と、中空糸膜束の両端部をハウジング2に液密に支持する一対の隔壁4,5とを有し、隔壁4,5とハウジング2の内面および中空糸膜3の外面間に形成された血液室12と、中空糸膜3の内部に形成されたガス室と、ガス室と連通するガス流入口8およびガス流出口9とを有するものである。
【0018】
具体的には、この実施例の中空糸膜型人工肺1は、筒状ハウジング2と、筒状ハウジング2内に収納されたガス交換用中空糸膜3の集合体と、中空糸膜3の両端部をハウジング2に液密に保持する隔壁4,5とを有し、筒状ハウジング2内は、第1の流体室である血液室12と第2の流体室であるガス室とに区画され、筒状ハウジング2には血液室12と連通する血液流入口6および血液流出口7が設けられている。
【0019】
そして、筒状ハウジング2の端部である隔壁4の上方には中空糸膜3の内部空間であるガス室に連通する第2の流体流入口であるガス流入口8を有するキャップ状のガス流入側ヘッダー10が取り付けられている。よって、隔壁4の外面とガス流入側ヘッダー10の内面により、ガス流入室13が形成されている。このガス流入室13は、中空糸膜3の内部空間により形成されるガス室と連通している。
【0020】
同様に、隔壁5の下方に設けられ中空糸膜3の内部空間に連通する第2の流体流出口であるガス流出口9を有するキャップ状のガス流出側ヘッダー11が取り付けられている。よって、隔壁5の外面とガス流出側ヘッダー11の内面により、ガス流出室14が形成されている。
【0021】
中空糸膜3は、多孔質膜であって、内径100〜1000μm、肉厚は5〜200μm、好ましくは10〜100μm、より好ましくは、10〜20μm、空孔率は、5〜90%、好ましくは10〜80%、より好ましくは30〜60%、また細孔径は0.01〜5μm、好ましくは0.01〜1μmのものである。また、多孔質膜に使用される材質としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート等の疎水性高分子材料が用いられる。好ましくは、ポリオレフィン系樹脂であり、特に好ましくは、ポリプロピレンであり、延伸法または固液相分離法により壁に微細孔が形成されたものがより好ましい。
【0022】
筒状ハウジング2は、ポリカーボネート、アクリル・スチレン共重合体、アクリル・ブチレン・スチレン共重合体などの疎水性合成樹脂により形成されている。ハウジング2は、例えば円筒状であり、透明体であることが好ましい。透明体で形成することにより、内部の確認を容易に行うことができる。
【0023】
そして、この実施例では、ハウジング2内には、その軸方向に向けて並列に約5,000〜100,000本の多数の多孔質中空糸膜3が収納されている。さらに、中空糸膜3はハウジング2の両端に中空糸膜3の両端がそれぞれ開口した状態で隔壁4,5により液密状態に固定されている。隔壁4,5は、ポリウレタン、シリコーンゴムなどのポッティング剤で形成される。ハウジング2内の上記隔壁4,5ではさまれた部分は、中空糸膜3の内部側のガス室と中空糸膜3の外側の血液室12とに仕切られている。
【0024】
ガス流入口8を有するガス流入側ヘッダー10およびガス流出口9を有するガス流出側ヘッダー11が、ハウジング2に液密に取り付けられている。これらヘッダーも、上述のハウジングに用いられる疎水性合成樹脂により形成されている。これらの取り付けは、ハウジング2に超音波、高周波、誘導加熱などを用いた融着、接着剤を用いた接着または機械的に嵌合させることにより行われる。また、締め付けリング(図示しない)を用いて行ってもよい。よって、この中空糸膜型人工肺1の血液接触部(ハウジング2の内面、中空糸膜3の外面)は、全て疎水性材料により形成されている。
【0025】
そして、図2に示すように、この中空糸膜型人工肺1の少なくとも血液接触部となる中空糸膜3の外面もしくは外面層3aに炭素数1〜4のアルコキシ基及び炭素数1〜4のアルキル基よりなるアルコキシアルキル(メタ)アクリレートを主成分としてなる合成高分子もしくは上述の式1で表される繰り返し単位を構成成分とするアルコキシアルキル(メタ)アクリレートを主成分としてなる合成高分子18が被覆されており、かつ中空糸膜の内部層3bまたは中空糸膜の内面層3cには、この合成高分子が実質的存在していない。合成高分子が実質的存在していないとは、中空糸膜の内部層または内面層が膜の基材自身が持つ疎水性の特性がそのまま保持されている状態のことでありこれによって血漿成分のリークを防止することを示すものである。特に、中空糸膜の内部層3bおよび中空糸膜の内面層3cに合成高分子が実質的存在していないことが好ましい。また、中空糸膜3は、中央にガス室を形成する通路3dを備えている。
【0026】
このため、中空糸膜3の血液接触部での血小板の粘着および活性化が少なく、かつ、中空糸膜3より血漿成分の漏出が少ない。つまり、血液接触部である中空糸膜3の外面もしくは外面層3a(この実施例では、外面層)が合成高分子18により被覆されていることにより、血小板の粘着および活性化が少なく、この実施例では、中空糸膜の内部層3bおよび中空糸膜の内面層3cには、この合成高分子が存在していないため、中空糸膜の内部層3bおよび中空糸膜の内面層3cは、形成素材の疎水性状態を維持しており、高い血漿のリーク防止作用を備えている。
【0027】
また、上記合成樹脂は、人工肺の中空糸膜だけでなく血液接触部全体に被覆されていてもよい。このようにすれば、人工肺の血液接触部全体において、血小板の粘着および活性化を少なくできるとともに、血液接触面の接触角が低くなるので、プライミング作業が容易となる。
【0028】
また、血液接触部とならない中空糸膜もしくは中空糸膜の部分(例えば、隔壁中に埋没する部分)には、合成高分子が被覆されていなくてもよい。このような部分は、血液と接触しないので、合成高分子を被覆しなくても特に問題とならない。
【0029】
アルコキシアルキル(メタ)アクリレートを主成分としてなる合成高分子は、下記のごときアルコキシアルキル(メタ)アクリレートの1種または2種以上の単独重合体または共重合体あるいは該アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとこれと共重合し得る単量体との共重合体である。
【0030】
アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとは、アルコキシアルキルアクリレート、アルコキシアルキルメタアクリレートの両者を含むものであり、具体的には、メトキシメチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、メトキシプロピルアクリレート、エトキシメチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、エトキシプロピルアクリレート、エトキシブチルアクリレート、プロポキシメチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、メトキシブチルアクリレート、メトキシメチルメタアクリレート、メトキシエチルメタアクリレート、エトキシメチルメタアクリレート、エトキシエチルメタアクリレート、プロポキシメチルメタアクリレート、ブトキシエチルメタアクリレート等があり、このうち、特にメトキシエチルアクリレートが好ましい。
【0031】
アルコキシアルキル(メタ)アクリレートと共重合し得る単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、ブチルメタアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタアクリレート、エチレン、プロピレン等がある。
【0032】
また、共重合性単量体としては、分子内にヒドロキシル基やカチオン性基を有しないものが好ましい。共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれでもよく、ラジカル重合やイオン重合、マクロマーを利用した重合等の公知の方法により合成することができる。
【0033】
いずれの共重合体の場合も、共重合する単量体の比率は50%以下であることが好ましい。50%を越えるとアルコキシアルキル(メタ)アクリレートによる効果が低下してしまうからである。
【0034】
このようにして得られるアルコキシアルキル(メタ)アクリレート重合体の重量平均分子量は10,000から1,000,000、好ましくは20,000から100,000が好ましい。
【0035】
また、中空糸膜外部血液灌流型人工肺としては、図3に示すようなタイプのものであってもよい。
この実施例の中空糸膜外部血液灌流型人工肺20は、側面に血液流通用開口32を有する内側筒状部材31と、内側筒状部材31の外面に巻き付けられた多数のガス交換用多孔質中空糸膜3からなる筒状中空糸膜束22と、筒状中空糸膜束22を内側筒状部材31とともに収納するハウジング23と、中空糸膜3の両端を開口した状態で、筒状中空糸膜束22の両端部をハウジングに固定する隔壁25,26と、ハウジング23内に形成された血液室17と連通する血液流入口28および血液流出口29と、中空糸膜3の内部と連通するガス流入口24およびガス流出口27とを有するものである。
【0036】
図3は、本発明の中空糸膜型人工肺の他の実施例を示す断面図であり、図4は、図3のA−A線断面図である。
この実施例の中空糸膜外部血液灌流型人工肺20は、図3および図4に示すように、ハウジング23は、内側筒状部材31を収納する外側筒状部材33を備え、筒状中空糸膜束22は内側筒状部材31と外側筒状部材33間に収納されており、さらに、ハウジング23は、内側筒状部材内と連通する血液流入口または血液流出口の一方と、外側筒状部材内部と連通する血液流入口または血液流出口の他方とを備えている。
【0037】
具体的には、この実施例の人工肺20では、ハウジング23は、外側筒状部材33、内側筒状部材内に収納され、先端が内側筒状部材31内で開口する内筒体35を備える。内筒体35の一端(下端)には、血液流入口28が形成されており、外側筒状部材の側面には、外方に延びる2つの血液流出口29a,29bが形成されている。なお、血液流出口は、一つであってもよい。
【0038】
そして、筒状中空糸膜束22は、内側筒状部材31の外面に巻き付けられている。つまり、内側筒状部材31が筒状中空糸膜束22のコアとなっている。内側筒状部材31の内部に収納された内筒体35は、先端部が第1の隔壁25付近にて開口している。また、内側筒状部材31より、突出する下端部に血液流入口28が形成されている。
【0039】
そして、内筒体35、中空糸膜束22が外面に巻き付けられた内側筒状部材31、さらに、外側筒状部材33は、それぞれがほぼ同心的に配置されている。そして、中空糸膜束22が外面に巻き付けられた内側筒状部材31の一端(上端)および外側筒状部材33の一端(上端)は、第1の隔壁25により、両者の同心的位置関係が維持されるとともに、内側筒状部材内部および外側筒状部材33と中空糸膜の外面との間により形成される空間が外部と連通しない液密状態となっている。
【0040】
また、内筒体35の血液流入口28より若干上方となる部分、中空糸膜束22が外面に巻き付けられた内側筒状部材31の他端(下端)および外側筒状部材33の他端(下端)は、第2の隔壁26により、両者の同心的位置関係が維持されるとともに、内筒体35と内側筒状部材内部間に形成される空間および外側筒状部材33と中空糸膜の外面との間により形成される空間が外部と連通しない液密状態となっている。また、隔壁25,26は、ポリウレタン、シリコーンゴムなどのポッティング剤で形成される。
【0041】
よって、この実施例の人工肺20では、内筒体35の内部により形成される血液流入部17a、内筒体35と内側筒状部材間に形成される実質的に筒状空間となっている第1の血液室17b、中空糸膜束22と外側筒状部材33との間に形成される実質的に筒状空間となっている第2の血液室17cを備え、これらにより血液室17が形成されている。
【0042】
そして、血液流入口28から流入した血液は、血液流入部17a内に流入し、内筒体35(血液流入部17a)内を上昇し、内筒体35の上端35a(開口端)より流出し、第1の血液室17b内に流入し、内側筒状部材31に形成された開口32を通過して、中空糸膜に接触し、ガス交換がなされた後、第2の血液室17cに流入し、血液流出口29a,29bより流出する。
【0043】
また、外側筒状部材33の一端には、ガス流入口24を備えるガス流入用部材41が固定されており、同様に、外側筒状部材33の他端には、ガス流出口27を有するガス流出部材42が固定されている。なお、内筒体35の血液流入口28は、このガス流出部材42を貫通して外部に突出している。
【0044】
外側筒状部材33としては、円筒体、多角筒、断面が楕円状のものなどが使用できる。好ましくは円筒体である。また、外側筒状部材の内径は、32〜164mm程度が好適であり、有効長(全長のうち隔壁に埋もれていない部分の長さ)は、10〜730mm程度が好適である。
【0045】
また、内側筒状部材31としては、円筒体、多角筒、断面が楕円状のものなどが使用できる。好ましくは円筒体である。また、内側筒状部材の外径は、20〜100mm程度が好適であり、有効長(全長のうち隔壁に埋もれていない部分の長さ)は、10〜730mm程度が好適である。そして、内側筒状部材31は、側面に多数の血液流通用開口32を備えている。開口32は、筒状部材の必要強度を保持する限り、総面積が大きいことが好ましい。このような条件を満足するものとしては、例えば、正面図である図5、図5の中央縦断面図である図6、さらに図5のB−B線断面図である図7に示すように、開口32を筒状部材の外周面に等角度間隔で複数(例えば、4〜24個、この実施例では、8個)設けた環状配置開口を、筒状部材の軸方向に等間隔で複数(この実施例では、8組)組設けたものが好適である。さらに、開口形状は、丸、多角形、楕円形などでもよいが、図5に示すような、長円形状のものが好適である。
【0046】
また、内筒体35としては、円筒体、多角筒、断面が楕円状のものなどが使用できる。好ましくは円筒体である。また、内筒体35の先端開口と第1の隔壁25との距離は、20〜50mm程度が好適である。また、内筒体35の内径は、10〜30mm程度が好適である。
【0047】
筒状中空糸膜束22の厚さは、5〜35mmが好ましく、特に、10mm〜28mmであることが好ましい。また、筒状中空糸膜束22の外側面と内側面間により形成される筒状空間に対する中空糸膜の充填率は、40〜85%が好ましく、特に45〜80%が好ましい。また、中空糸膜束22の外径は、30〜170mmが好ましく、特に、70〜130mmが好ましい。
ガス交換膜としては、上述したものが使用される。
【0048】
そして、中空糸膜束22は、内側筒状部材31に中空糸膜を巻き付けること、具体的には、内側筒状部材31をコアとして、中空糸膜ボビンを形成させ、形成された中空糸膜ボビンの両端を、隔壁による固定の後、コアである内側筒状部材31とともに中空糸膜ボビンの両端を切断することにより、形成することができる。なお、この切断により、中空糸膜は、隔壁の外面において開口する。
【0049】
特に、中空糸膜は、1本あるいは複数本同時に、実質的に平行で且つ隣り合う中空糸膜が実質的に一定の間隔となるように内側筒状部材31に巻きつけられることが好ましい。これにより、血液の偏流がより抑制できる。また、中空糸膜は、隣り合う中空糸膜との距離が、中空糸膜の外径の1/10〜1/1となっていることが好ましい。さらに、中空糸膜は、隣り合う中空糸膜との距離が、30μm〜200μmが好ましく、特に、好ましくは50μm〜180μmである。
【0050】
さらに、中空糸膜束22は、中空糸膜が、1本あるいは複数本(好ましくは、2〜16本)同時に、且つ隣り合うすべての中空糸膜が実質的に一定の間隔となるように内側筒状部材31に巻きつけられることにより形成されたものであるとともに、中空糸膜を内側筒状部材上に巻き付ける際に、内側筒状部材31を回転させるための回転体と中空糸膜を編み込むためのワインダーとが、下記演算式1で動くことによって内側筒状部材31に巻きつけられることにより形成されたものであることが好ましい。
【0051】
トラバース[mm/lot]・n(整数)=トラバース振り幅・2±(ファイバー外径+間隔)・巻き着け本数 (演算式1)
【0052】
このようにすることにより、より血液偏流の形成をより少ないものとすることができる。この時の巻取り用回転体の回転数とワインダー往復数の関係であるnは、1〜5であるべきで、好ましくは2〜4である。
【0053】
なお、上記実施例の人工肺では、血液が筒状中空糸膜束22の内側より流入し、中空糸膜束22を通過した血液が中空糸膜束22の外側に流れた後、人工肺20より流出するタイプのものとなっているが、これに限られるものではない。これと逆に、血液が筒状中空糸膜束22の外側より流入し、中空糸膜束22を通過した血液が中空糸膜束22の内側に流れた後、人工肺20より流出するタイプのものであってもよい。
【0054】
そして、この中空糸膜型人工肺20においても、図2に示すように、この中空糸膜型人工肺1の少なくとも中空糸膜3の外面もしくは外面層3aに炭素数1〜4のアルコキシ基及び炭素数1〜4のアルキル基よりなるアルコキシアルキル(メタ)アクリレートを主成分としてなる合成高分子もしくは上述の式1で表される繰り返し単位を構成成分とするアルコキシアルキル(メタ)アクリレートを主成分としてなる合成高分子18が被覆されており、かつ中空糸膜の内部層3bおよび中空糸膜の内面層3cには、この合成高分子が実質的に存在していない。また、中空糸膜3は、中央にガス室を形成する通路3dを備えている。
【0055】
この人工肺20では、中空糸膜は互いに接触するとともに何重にも積み重ねられたいわゆるボビン状となっている。このため、血液流路が複雑でかつ狭い部分を多く備え、ガス交換能には優れるが、血小板の粘着および活性化の点においては、ボビンタイプでない外部血液灌流型の人工肺より劣る場合がある。
【0056】
しかし、この中空糸膜型人工肺20においては、中空糸膜の血液接触部となる中空糸膜3の外面もしくは外面層3a(この実施例においては外面層)には、上述した合成高分子18が被覆されているので、中空糸膜3の血液接触面での血小板の粘着および活性化が少なく、また、中空糸膜の内部層3bおよび中空糸膜の内面層3cには、この合成高分子18が存在していないことより、中空糸膜の内部層3bおよび中空糸膜の内面層3cは、形成素材の疎水性状態を維持しているため、血漿のリークが極めて少ない。
【0057】
さらに、上記合成樹脂は、人工肺の中空糸膜だけでなく血液接触部全体に被覆されていてもよい。また、血液接触部とならない中空糸膜もしくは中空糸膜の部分(例えば、隔壁中に埋没する部分、中空糸相互の接触部)には、合成高分子が被覆されていなくてもよい。
【0058】
次に、本発明の中空糸膜外部血液灌流型人工肺の製造方法について説明する。
まず、人工肺(例えば、図1または図3のような構造のもの)を組み立てた後、人工肺の血液流通側に上述のアルコキシアルキル(メタ)アクリレートを主成分としてなる合成高分子含有液体もしくは溶解液を流通させ、血液接触部に上記合成高分子を被覆する。
【0059】
なお、この場合、溶媒として、合成高分子に対する溶解度パラメータ値が38〜40(MPa)1/2のものを用いることが好ましい。なお、溶媒が、多成分系である場合、例えば、2成分系である場合には、溶解度パラメーターは、下記演算式2より算出される。
【0060】
Aの溶解度パラメータ×Aの容量/全体容量+Bの溶解度パラメータ×Bの容量/全体容量 (演算式2)
【0061】
また、3成分系である場合には、溶解度パラメーターは、下記演算式3より算出される。
【0062】
Aの溶解度パラメータ×Aの容量/全体容量+Bの溶解度パラメータ×Bの容量/全体容量+Cの溶解度パラメータ×Cの容量/全体容量 (演算式3)
【0063】
そして、溶媒としては、中空糸膜の細孔の中央部まで浸透できないようなものを用いることが好ましく、このため、溶媒中にある程度の水を含有するものが好適である。このような点および上記合成高分子を溶解可能であることの両者を達成するものとしては、水:アルコールの2成分系溶媒が好適であり、特に、水とメタノールとエタノールの混合物が好適である。
【0064】
そして、液体中のアルコキシアルキル(メタ)アクリレートの濃度は、0.01wt%〜5.0wt%、好ましくは0.1wt%〜1.0wt%である なお、合成高分子液体の中空糸膜への被覆は、人工肺組立前に行ってもよく、被覆法としては、重合体の溶液を浸漬法、スプレー法等、公知の方法により行うことができる。
【実施例】
【0065】
[実施例1]
内径195μm、外径295μm、空孔率約35%の多孔質ポリプロピレン中空糸膜約20000本をハウジングに収納し、膜面積1.8mであり図1に示すような血液外部灌流型中空糸膜人工肺を作成した。
ポリメトキシエチルアクリレート(平均分子量70000)を水・メタノール・エタノール混合溶媒6:1:3(ポリメトキシエチルアクリレートに対する溶解度パラメーター38.8(MPa)1/2)に溶解し濃度0.5wt%の合成高分子溶液を作製した。
そして、上記の人工肺の血液流通側にこの合成高分子溶液を流し、人工肺の血液接触部全体に合成高分子を被覆し、本発明の中空糸膜外部血液灌流型人工肺を作製した。
【0066】
[比較例1]
上記合成高分子の被覆を行わない人工肺を比較例1とした。
【0067】
[比較例2]
内径195μm、外径295μm、空孔率約35%の多孔質ポリプロピレン中空糸膜約24000本をハウジングに収納し、膜面積2.0mである血液内部灌流型中空糸膜人工肺を作成した。
【0068】
[比較例3]
実施例1と同じポリメトキシエチルアクリレート(平均分子量70000)をメタノール単独溶媒(ポリメトキシエチルアクリレートに対する溶解度パラメーター29.7(MPa)1/2に溶解し濃度0.5wt%の合成高分子溶液を作製した。
そして、上記の人工肺の血液流通側にこの合成高分子溶液を流し、人工肺の血液接触部全体に合成高分子を被覆し、比較例3の人工肺を作製した。
【0069】
[実験1]
実施例1および比較例1ないし4の人工肺を体外循環回路中に組み込み、ヘパリン加入新鮮血200mlと乳酸リンゲル液350mlで充填し、37℃の血液温で1L/minで4時間灌流した。そして、血液中の血小板数、β−TGについて測定した。結果は、表1、表2に示す通りであった。なお、β−TGは、血小板の活性化を示すものである。また、循環後に、血漿リークの有無を確認した。結果は、表3に示す通りであった。
【0070】
[表1]
┌─────────┬───────────────────────┐
│ │ 循環中の血小板の変化(%,循環前との対比) │
├─────────┼───┬───┬───┬───┬───┬───┤
│ 循環時間(分) │ 0 │ 3 │ 30 │ 60 │ 120 │ 240 │
├─────────┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤
│ 実施例1 │ 100 │ 88 │ 91 │ 85 │ 87 │ 86 │
├─────────┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤
│ 比較例1 │ 100 │ 37 │ 1 │ 8 │ 20 │ 48 │
├─────────┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤
│ 比較例2 │ 100 │ 97 │ 69 │ 61 │ 80 │ 101 │
└─────────┴───┴───┴───┴───┴───┴───┘
【0071】
[表2]
┌─────────┬───────────────────┐
│ │ 循環中のβ−TGの変化(ng/ml)│
├─────────┼───┬───┬───┬───┬───┤
│ 循環時間(分) │ 3 │ 30 │ 60 │ 120 │ 240 │
├─────────┼───┼───┼───┼───┼───┤
│ 実施例1 │ 12 │ 19 │ 27 │ 39 │ 69 │
├─────────┼───┼───┼───┼───┼───┤
│ 比較例1 │ 344 │1527 │1643 │1747 │1853 │
├─────────┼───┼───┼───┼───┼───┤
│ 比較例2 │ 18 │ 280 │ 450 │ 542 │ 594 │
└─────────┴───┴───┴───┴───┴───┘









【0072】
[表3]
┌─────────┬──────────────┐
│ │ 循環後の血漿リークの有無 │
├─────────┼──────────────┤
│ 循環時間(分)│ 240 │
├─────────┼──────────────┤
│ 実施例1 │ リークなし │
├─────────┼──────────────┤
│ 比較例1 │ リークなし │
├─────────┼──────────────┤
│ 比較例2 │ リークなし │
├─────────┼──────────────┤
│ 比較例3 │ リークあり │
└─────────┴──────────────┘
【0073】
[実施例2]
内側筒状部材としては、図5ないし図7に示すような形状で、外径が50mm、長さが188mmのものを用いた。この内側筒状部材に、内径195μm、外径295μm、空孔率約35%の多孔質ポリプロピレン中空糸膜を4本中空糸膜間隔を一定に保って巻き回し、さらに次に隣接する中空糸膜との中空糸膜間隔も以前に巻かれている中空糸膜間隔と同じとなるようにし、隣り合う中空糸膜間隔が一定となるように中空糸膜を巻き回し、中空糸膜ボビンを作成した。
そして、外側筒状部材内にこの中空糸膜ボビンを収納し、一端をポッテイング剤により固定した後切断し、さらに、中空糸膜ボビンの内部に内筒体を挿入した後、他端をポッテイング剤により固定し、内筒体を中心にして回転させながら、内筒体を切断することなく、固定された中空糸膜ボビンの他端を切断した。そして、ガス流入部材およびガス流出部材を取付け、図3に示すような形態の筒状中空糸膜束を備える人工肺を作成した。なお、膜面積は、2.5mとなるようにした。なお、中空糸膜間隔は、50μm、中空糸膜束の肉厚10mm、中空糸膜束の有効長153mm、中空膜束が形成する空間における中空糸膜の充填率は、65%であった。
ポリメトキシエチルアクリレート(平均分子量70000)を水・メタノール・エタノール混合溶媒6:1:3(ポリメトキシエチルアクリレートに対する溶解度パラメーター38.8(MPa)1/2)に溶解し濃度0.5wt%の合成高分子溶液を作製した。
そして、上記の人工肺の血液流通側にこの合成高分子溶液を流し、人工肺の血液接触部全体に合成高分子を被覆した。
【0074】
[比較例5]
上記合成高分子の被覆を行わない人工肺を比較例5とした。
【0075】
[比較例6]
実施例1と同じポリメトキシエチルアクリレート(平均分子量70000)をメタノール単独溶媒(ポリメトキシエチルアクリレートに対する溶解度パラメーター29.7(MPa)1/2)に溶解し濃度0.5wt%の合成高分子溶液を作製した。
そして、上記の人工肺の血液流通側にこの合成高分子溶液を流し、人工肺の血液接触部全体に合成高分子を被覆し、比較例6の人工肺を作製した。
【0076】
[実験3]
実施例2および比較例5,6の人工肺を体外循環回路中に組み込み、ヘパリン加入新鮮血200mlと乳酸リンゲル液350mlで充填し、37℃の血液温で1L/minで4時間灌流した。そして、血液中の血小板数、β−TGについて測定した。結果は、表4、表5に示す通りであった。なお、β−TGは、血小板の活性化を示すものである。また、循環後に、血漿リークの有無を確認した。結果は、表6に示す通りであった。
【0077】
[表4]
┌─────────┬───────────────────────┐
│ │ 循環中の血小板の変化(%,循環前との対比) │
├─────────┼───┬───┬───┬───┬───┬───┤
│ 循環時間(分) │ 0 │ 3 │ 30 │ 60 │ 120 │ 240 │
├─────────┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤
│ 実施例3 │ 100 │ 93 │ 88 │ 90 │ 91 │ 90 │
├─────────┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤
│ 比較例5 │ 100 │ 22 │ 3 │ 9 │ 25 │ 62 │
└─────────┴───┴───┴───┴───┴───┴───┘
【0078】
[表5]
┌─────────┬───────────────────┐
│ │ 循環中のβ−TGの変化(ng/ml) │
├─────────┼───┬───┬───┬───┬───┤
│ 循環時間(分) │ 3 │ 30 │ 60 │ 120 │ 240 │
├─────────┼───┼───┼───┼───┼───┤
│ 実施例3 │ 9 │ 22 │ 34 │ 44 │ 80 │
├─────────┼───┼───┼───┼───┼───┤
│ 比較例5 │ 431 │1490 │1457 │1507 │1577 │
└─────────┴───┴───┴───┴───┴───┘
【0079】
[表6]
┌─────────┬─────────────┐
│ │ 循環後の血漿リークの有無 │
├─────────┼─────────────┤
│ 循環時間(分)│ 240 │
├─────────┼─────────────┤
│ 実施例3 │ リークなし │
├─────────┼─────────────┤
│ 比較例5 │ リークなし │
├─────────┼─────────────┤
│ 比較例6 │ リークあり │
└─────────┴─────────────┘
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1は、本発明の中空糸膜外部血液灌流型人工肺の一実施例を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の中空糸膜外部血液灌流型人工肺に使用されている中空糸膜の拡大断面図である。
【図3】図3は、本発明の中空糸膜外部血液灌流型人工肺の他の実施例を示す断面図である。
【図4】図4は、図3のA−A線断面図である。
【図5】図5は、本発明の中空糸膜外部血液灌流型人工肺に使用される内側筒状部材の一例を示す正面図である。
【図6】図6は、図5に示した内側筒状部材の中央縦断面図である。
【図7】図7は、図5のB−B線断面図である。
【符号の説明】
【0081】
1 中空糸膜外部血液灌流型人工肺
2 ハウジング
3 中空糸膜
3a 外面層
3b 内部層
3c 内面層
4,5 隔壁
12 血液室
6 血液流入口
7 血液流出口
18 合成高分子
17 血液室
20 中空糸膜外部血液灌流型人工肺
32 血液流通用開口
31 内側筒状部材
22 筒状中空糸膜束
23 ハウジング
25,26 隔壁
28 血液流入口
29 血液流出口
24 ガス流入口
27 ガス流出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の疎水性高分子材料からなるガス交換用多孔質中空糸膜をハウジング内に収納し、前記中空糸膜の外面側に血液が流れ、該中空糸膜の内部に酸素含有ガスが流れる中空糸膜外部血液灌流型人工肺であって、血液接触部となる前記中空糸膜の外面を含む外面層に、炭素数1〜4のアルコキシ基及び炭素数1〜4のアルキル基よりなるアルコキシアルキル(メタ)アクリレートの1種または2種以上の単独重合体または共重合体あるいは該アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとこれと共重合し得る単量体(分子内にヒドロキシル基を有しない)との共重合体を主成分とする合成高分子が被覆されており、かつ前記中空糸膜の内部層および内面層には、前記合成高分子が実質的に存在しておらず疎水性が保持されていることを特徴とする中空糸膜外部血液灌流型人工肺。
【請求項2】
多数の疎水性高分子材料からなるガス交換用多孔質中空糸膜をハウジング内に収納し、前記中空糸膜の外面側に血液が流れ、該中空糸膜の内部に酸素含有ガスが流れる中空糸膜外部血液灌流型人工肺であって、血液接触部となる前記中空糸膜の外面を含む外面層に下記化学式1で表される繰り返し単位を構成成分とするアルコキシアルキル(メタ)アクリレートの1種または2種以上の単独重合体または共重合体あるいは該アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとこれと共重合し得る単量体(分子内にヒドロキシル基を有しない)との共重合体を主成分とする合成高分子が被覆されており、かつ前記中空糸膜の内部層および前記中空糸膜の内面層には、前記合成高分子が実質的に存在しておらず疎水性が保持されていることを特徴とする中空糸膜外部血液灌流型人工肺。
【化1】


(R1は炭素数1〜4のアルキレン、R2は炭素数1〜4のアルキル、R3はHまたはCH3をそれぞれ表す)
【請求項3】
前合成高分子がポリメトキシエチルアクリレートである請求項1または2に記載の中空糸膜外部血液灌流型人工肺。
【請求項4】
前記中空糸膜外部血液灌流型人工肺は、血液流入口と血液流出口とを有するハウジングと、該ハウジング内に収納された多数のガス交換用多孔質中空糸膜からなる中空糸膜束と、該中空糸膜束の両端部を上記ハウジングに液密に支持する一対の隔壁と、該隔壁と上記ハウジング内面および上記中空糸膜外面間に形成された血液室と、前記中空糸膜内部に形成されたガス室と、該ガス室と連通するガス流入口およびガス流出口とを有するものである請求項1ないし3のいずれかに記載の中空糸膜外部血液灌流型人工肺。
【請求項5】
前記中空糸膜外部血液灌流型人工肺は、側面に血液流通用開口を有する内側筒状部材と、該内側筒状部材の外面に巻き付けられた多数のガス交換用多孔質中空糸膜からなる筒状中空糸膜束と、該筒状中空糸膜束を前記内側筒状部材とともに収納するハウジングと、前記中空糸膜の両端を開口した状態で、前記筒状中空糸膜束の両端部を前記ハウジングに固定する隔壁と、前記ハウジング内に形成された血液室と連通する血液流入口および血液流出口と、前記中空糸膜内部と連通するガス流入口およびガス流出口とを有するものである請求項1ないし3のいずれかに記載の中空糸膜外部血液灌流型人工肺。
【請求項6】
前記合成高分子は、前記中空糸膜外部血液灌流型人工肺の血液接触部全体に被覆されている請求項1ないし5のいずれかに記載の中空糸膜外部血液灌流型人工肺。
【請求項7】
前記血液接触部となる前記中空糸膜の外面を含む外面層の前記合成高分子の被覆は、前記中空糸膜外部血液灌流型人工肺を組み立てた後、前記合成高分子を溶解可能でありかつ前記中空糸膜の細孔の中央部まで浸透できない溶媒を用いた前記合成高分子溶解液を流通させることにより形成されたものである請求項1ないし6のいずれかに記載の中空糸膜外部血液灌流型人工肺。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−142035(P2006−142035A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−347986(P2005−347986)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【分割の表示】特願平9−293248の分割
【原出願日】平成9年10月9日(1997.10.9)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】