説明

中空繊維の検査方法

【課題】
繊維型マイクロアレイの製造方法において、製造されるマイクロアレイの品質に悪影響を与えることなく、中空繊維配列体における中空繊維の損傷を検査する方法の提供。
【解決手段】
中空繊維配列体における中空繊維の検査方法であって、以下の工程;
1)マイクロウェルプレートのウェルに分注した水に中空繊維を浸漬する工程、
2)前記水を中空繊維の中空部に導入する工程、及び
3)中空繊維に導入された水量又はウェルに残存した水量を測定する工程
を含む前記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゲノム解析分野における繊維法マイクロアレイの製造工程における中空繊維配列体の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトゲノムの解読が完了して以降、遺伝子を解析する有用な手段としてDNAマイクロアレイ法が開発され、注目を集めている。DNAマイクロアレイとは、検出対象の生体関連物
質、例えば、研究対象細胞の発現遺伝子の塩基配列と相補関係にある多数のDNA断片をマ
イクロアレイと呼ばれる平面基盤上に固定化して、上記発現遺伝子とハイブリダイゼーシ
ョンさせることで遺伝子の発現状態を解析するデバイスである。
【0003】
このDNAマイクロアレイの製造方法は、今では様々な手法が開発されており、代表的な
ものとしては、半導体製造に用いられるフォトリソグラフィー法を利用してシリコンウエ
ハー上にオリゴヌクレオチドを逐次合成させる方法(特許文献1参照) や、スライドガラス上にDNA断片をピン等で直接スポッティングする方法(非特許文献1参照)がある。また、最近では中空繊維を利用した製造方法(以下、「繊維法マイクロアレイ法」とする)が開発されている。この繊維法マイクロアレイ法は、
1)中空繊維を多数本配列させたものを樹脂固定化して、中空繊維配列体の中空繊維の各中空部にゲル形成性重合性溶液を吸い上げ、中空部内で重合しゲル化して、ゲル充填中空繊維配列体を製造する工程、
2)このゲル充填中空繊維配列体を繊維軸方向に切断して薄片体を得る工程
からなるものである。
【0004】
この方法は、中空繊維配列体を製造したのち、これを薄片化することによりゲルスポットが整然と配列された多数のマイクロアレイを製造することができる。
【0005】
薄片体の樹脂マトリックス中のゲルスポットは、各々の中空繊維により完全に仕切られているため、上記スポッティング法などに見られるスポットの変形や滲みなどが生じ得ない。
【0006】
従って、繊維法マイクロアレイ製造方法は、DNA等の生体関連物質が固定化されたマイクロアレイの製造方法として有用な方法である。
【0007】
薄片体においてスポットの変形や滲みなどが生じないようにするには、各中空繊維の中空部に損傷がないことが前提となる。例えば、中空繊維中空部にピンホールや途中閉塞等があると、重合液を中空部へ十分に導入させることが出来ない。
【0008】
そこで、繊維法マイクロアレイ製造方法においては、中空繊維配列体の中空繊維にゲル溶液を導入させる前に、予備的に検査液を中空繊維の中空部に導入し、中空繊維に損傷がないことを検査する方法が知られている(特許文献2)。
【特許文献1】国際公開WO92/10092
【特許文献2】特開2005−127867号公報
【非特許文献1】Science 270, 467-470(1995)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述の検査方法は、製造されたマイクロアレイに重大な問題を引き起こす恐れがある。例えば、検査液として紫外吸収領域に吸収波長を有する物質や蛍光物質を含む溶液を使用すると、製造されたマイクロアレイを検出する際に、バックグラウンドの上昇などを生じる。また、検査液としてアクリルアミドモノマー溶液等を使用すると、これらの溶液が検査終了後も中空部に残存した場合に、各中空繊維間でゲル濃度が異なることとなる。
一方、繊維法マイクロアレイ製造方法においては、中空繊維開放端から重合液を導入させる工程で、中空繊維の曲がり、折れ等の原因により開放端がマイクロウェルプレートに浸漬していないと、重合液を中空部に十分に導入させることが出来ないという問題があった。
【0010】
本発明は、製造されるマイクロアレイの品質に悪影響を与えることなく、中空繊維配列体における中空繊維の損傷を検査する方法を提供することを目的とする。
また同時に、中空繊維配列体の中空繊維開放端のマイクロウェルプレートへ浸漬の成否を検出し得る方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、中空繊維に水を導入し、その導入量を測定することにより、製造されるマイクロアレイの品質に悪影響を与えることなく中空繊維配列体における中空繊維の損傷を検査できる方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、中空繊維配列体における中空繊維の検査方法であって、以下の工程;
1)マイクロウェルプレートのウェルに分注した水に中空繊維を浸漬する工程、
2)前記水を中空繊維の中空部に導入する工程、及び
3)中空繊維に導入された水量又はウェルに残存した水量を測定する工程
を含む前記方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、中空繊維の損傷を検査する方法が提供される。本発明の方法によれば、マイクロウェルプレートに分注した水に中空繊維を浸漬し、前記水を中空繊維の中空部に導入し、中空繊維に導入された水量を測定することにより、大量の中空繊維束からなる中空繊維配列体中のピンホールや閉塞等といった中空繊維の損傷の有無を簡便且つ正確に確認することができる。また、中空繊維配列体中の損傷を有する中空繊維を簡便且つ正確に特定することができる。さらに、中空繊維開放端のマイクロウェルプレートへの浸漬の成否を正確に検査することができる。検査液として水を用いることにより、本発明による方法は検査後に製造されるマイクロアレイの品質に悪影響を与えることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
(1)中空繊維配列体
本発明において中空繊維配列体とは、図1に示したように中空繊維を複数整然と配列して束ね、包埋用樹脂(ポッティング用樹脂)で固めたものであり、種々の方法で作製することができる。例えば特開2001−239594号公報等の方法を用いて作製することができる。
【0015】
例えば、目的の配列パターンに従って配列させた繊維束に張力を与え、この繊維束の繊維間に樹脂を充填して繊維束を固定し、繊維配列体とすることができる。この方法は、三次元構造の繊維配列体の整列化プロセスとして治具を用いた高精度配列技術を導入したものである。
【0016】
この中空繊維配列体は、生体関連物質固定化ゲルマイクロアレイのいわゆる「前駆体」となるものであり、樹脂マトリックス上に生体関連物質を固定化したゲルを充填した中空繊維が整然と規則的に配列されたものである。この中空繊維配列体をスライスすることにより作製されたマイクロアレイは、生体関連物質のアッセイに用いうるデバイスとなる。
【0017】
なお、特開2000-270878号公報の記載によれば、中空繊維中空部に生体関連物質を固定化したゲルが充填された中空繊維配列体を繊維軸方向と垂直の方向に切断することによりマイクロアレイに用いる薄片を大量に作製することができる。
【0018】
生体関連物質としては、例えば、核酸、タンパク質、核酸タンパク質、抗原体、抗体、多糖類などが挙げられる。これらの生体関連物質は、市販品であってもよく、生細胞等から得られたものであってもよい。
【0019】
生体関連物質として核酸を用いる場合には、生細胞からのDNA又はRNAの調製は、以下のような公知の方法を用いることができる。例えば、DNAの抽出であればBlinらの方法(Blin et al., Nucleic Acids Res. 3: 2303 (1976))等により、RNAの抽出であれば、Favaloroらの方法(Favaloro et al., Methods Enzymol. 65: 718 (1980))等により行いうる。さらに、鎖状又は環状のプラスミドDNAや染色体DNA、これらを制限酵素により又は化学的に切断したDNA断片、試験管内で酵素等により合成されたDNA、あるいは化学合成したオリゴヌクレオチド等をも用いることができる。
【0020】
中空繊維配列体に用いる中空繊維の素材は特に限定はしないが、上述したように、マイクロアレイへ加工する際に繊維軸方向と垂直方向に切断する工程を経るため、加工性に優れた合成高分子材料が好ましい。例えば、ナイロン6、ナイロン66、芳香族ポリアミド等のポリアミド系の各種繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカーボネート等のポリエステル系の各種繊維、ポリアクリロニトリル等のアクリル系の各種繊維、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系の各種繊維、ポリメタクリル酸メチル等のポリメタクリレート系の各種繊維、ポリビニルアルコール系の各種繊維、ポリ塩化ビニリデン系の各種繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリウレタン系の各種繊維、フェノール系繊維、ポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレン等からなるフッ素系繊維、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系の材料が好ましい。
【0021】
DNAマイクロアレイのように光学手法による検出手段を用いる場合には、ポリカーボネートやポリメチルメタクリレートのように光学的に透明性のあるものを用いることが更に好ましい。中空繊維の内外径は本発明においては特に限定するものではないが、単位面積あたりの繊維の本数が多く存在することが好ましいことから、繊維の外径は細いほうが好ましく、2mm以下、更に好ましくは1mm以下である。また、内径は0.02mm以上が好ましい。
(2)検査方法
本発明の検査方法は、中空繊維配列体における中空繊維の損傷の有無を検査するものである。
中空繊維に損傷があると、マイクロアレイの製造工程においてゲル溶液を中空繊維に導入するときに、中空部にゲル溶液が導入されにくくなる。ゲル溶液が導入されない中空部には生体関連物質が固定されないため、製造されたマイクロアレイの品質は低下する。したがって、損傷がない中空繊維を選別して損傷のある中空繊維を除去することが必要である。
【0022】
中空繊維の損傷とは、中空繊維配列体中の中空繊維に生ずるピンホールや閉塞等をいう。ピンホールとは、紡糸過程や中空繊維配列体製造工程において中空繊維に生じた物理的損傷(例えば微小な穴又は創傷)を意味し、閉塞又は途中閉塞とは、中空部が繊維原料又はゴミなどの微小粒子によって詰まった状態をいう。
【0023】
但し、中空繊維の損傷は、上記のピンホールや閉塞に限定されるものではなく、糸折れによる中空部の縮小、外的圧力による中空部の圧着などが含まれる。
本発明の検査方法は、中空繊維配列体中の損傷を有する中空繊維の位置を特定することもできる。
また、本発明の検査方法は、中空繊維開放端のマイクロウェルプレートへの浸漬の成否を検査することもできる。開放端がマイクロウェルプレートに浸漬していないと、重合液を中空部に十分に導入させることが出来ない。したがって、浸漬の成否を検査することは重要である。
(3)水
本発明の検査方法においては、検査液として水が用いられる。
本発明の検査方法は、中空繊維の中空部に検査液を導入することにより行われる。そして、検査工程終了後は導入した検査液を排出する必要がある。本発明においては、検査液として水を用いることにより、中空繊維の中空部に検査液が残存することによる弊害を除去することができる。
すなわち、検査液として水を使用する場合は、検査液排出後の前記中空繊維中空部の内壁表面に付着している水を完全に除去することは極めて容易となる。また、たとえ水が中空繊維中空部の内壁表面に残存していても、水が中空繊維を物理的又は化学的に損傷させることはないし、その後に中空繊維に導入されるゲル及び生体関連物質を変質ないし分解させることもない。さらには、水の吸収波長は900nm〜999nm であるから、水が中空繊維中空部に残存していても、光学的手法により行われるマイクロアレイの検出に影響を与えることはない。
(4)水の中空部への導入及びその装置
次に、水を中空繊維に導入する方法について説明する。水を中空繊維配列体に導入させる方法としては種々の方法を利用することができるが、図2に示される装置を使用することができる。以下に一例を挙げる。
【0024】
本発明において使用される好ましい装置を図2に示す。図2に示す充填装置は、真空容器3、マイクロウェルプレート設置用昇降台4、中空繊維配列体支持用支柱5及び真空ポンプ6により構成される。真空容器3は、容器内を真空ポンプ6によって減圧させ、減圧状態を保持できるようになっている。マイクロウェルプレート2は、水を導入するための容器であり、昇降台4の上に載せられる。マイクロウェルプレート2のウェルの数は限定されるものではなく、市販の1536穴、384穴、96穴、48穴のウェルプレート等を利用することができる。マイクロウェルプレート2のウェル内には、中空繊維中空部へ導入させる所定の液量の水が分注されている。
【0025】
昇降台4の上に、水を分注したマイクロウェルプレート2を配置する。図1に示したように、中空繊維配列体を、中空繊維の開放端部分がマイクロウェルプレートを向くように配置し、真空ポンプ6を作動させて真空容器3内を減圧状態又は真空状態にする。この状態で開放端がマイクロウェルプレート2 内の水に浸漬するように、昇降台4の高さを調節する。昇降台4は、中空繊維の開放端がウェル内の水に浸漬される位置で静止する。
【0026】
その後、真空ポンプ6のコルクを開けて真空容器3を常圧に戻すと、マイクロウェルプレート中の水が中空繊維開放端から中空部内へ導入される。
(5)水量の測定
【0027】
中空繊維に導入された水量は、その水量を直接測定してもよく(直接測定法)、中空繊維への水の導入後にマイクロウェルプレートのウェルに残存した水量を測定することで中空繊維に導入された水量を算出してもよい(間接測定法)。本発明においては、マイクロウェルプレートのウェルに残存する水量を測定することが容易である点で、上記間接測定法が好ましい。
【0028】
間接測定法を採用する場合は、あらかじめウェル中の水量を測定しておき、その水を中空繊維に導入した後、再度ウェルに残存する水量を測定することにより、行うことができる。中空繊維に導入された水量は、水の導入前後でのウェル中の水量を比較することにより、算出される。
【0029】
水量の測定は、水の体積や重量を直接測定することにより行うことができる。または、水の導入前後でのウェル中の水面の高さを比較することにより、中空繊維に導入された水量を見積もることもできる。さらに、簡便かつ的確な検量を行うには、光学的手法を用いることもできる。
【0030】
水面の高さから水量を見積もる場合は、例として、カラー3Dレーザー顕微鏡VK−9500(キーエンス社)を用いることができる。これにより水面の高さを測定すると、384 ウェルプレート( コーニング社#3675)に分注した40μlの水と30.5μlの水との高さの差は1.03mmであった。
【0031】
光学的手法としては、例えば吸光度から水量を算出することができる。この場合、マイクロウェルプレートのウェルに残存している水の吸光度を市販のウェルプレート用分光光度計で測定すればよい。吸光度を測定するのに好ましい波長領域は、900nm〜 999nm、より好ましくは960nm〜980nmである。
中空繊維配列体中の中空繊維に損傷がないときは、水が中空繊維の中空部へ規定量導入され、ウェル中の水量が減少する。このとき、ウェル中の水面の高さは低下し、水の吸光度は低下する。これに対し、中空繊維配列体中の中空繊維に損傷があるときは、吸い上げ不良が生じ、中空繊維の中空部へ規定量の水を吸い上げることができない。従って、ウェル中の水量は、水の導入前後で大きく変化せず、ウェル中の水面の高さや水の吸光度も、水の導入前後で大きく変化しない。結果として、損傷のない中空繊維に対応するウェルと、損傷のある中空繊維に対応するウェルとを比較すると、各測定値には差が生じることになる。
【0032】
このように、水を中空繊維配列体中の中空繊維へ所定量充填させた後、マイクロウェルプレートの各ウェルに残存した水量を測定することで、中空繊維配列体中のピンホールや閉塞等といった中空繊維の損傷の有無を簡便かつ正確に確認することができる。検査液として水を用いることにより、本発明による方法が、製造されたマイクロアレイの品質に悪影響を与えることはない。
また、マイクロウェルプレート中で水が多く残存しているウェルの位置は、目視により容易に確認することができる。よって、ウェルと中空繊維の対応関係から、中空繊維配列体中の損傷のある中空繊維を容易に特定することもできる。
さらに、中空繊維開放端がマイクロウェルプレートへ浸漬していなければ、吸い上げ不良が生じ、中空繊維への水の導入量は少なくなる。これにより、中空繊維開放端が繊維末端部の曲がり、折れ等によりマイクロウェルプレートに浸漬していない状態についても検査することが可能である。
中空繊維に導入された水を排出し、一度使用したマイクロウェルプレートを用いて再度水の導入操作を行うことにより、吸い上げ不良が発生したウェルと正常に水が導入されたウェルとの水量の差をさらに大きくすることもできる。水量の差が大きくなると、水面の高さや吸光度の差から水量の差を検出することは、より容易になる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
(1)中空繊維配列体の製造(図1参照)
三菱エンジニアリング(株)製のポリカーボネートを溶融紡糸して得た長さ60cmの非多孔質中空繊維(内径180μm、外径280μ m)228本を19×12に配列させた中空繊維配列体1を作成した。228本の各中空繊維の一端は開放させ、もう一端は密封した。密封部位を0cmとし、開放端方向に向かって3cm〜17cmの間をウレタン樹脂で固めた。本実施例では損傷の有無の検査が可能であることを実証するために、予め228本中2本に閉塞(糸内部の詰まり)がある糸を使用して実験を行った。また1本は開放端がウェルに正常に浸漬しないように開放端から0.5cmのところで折り曲げた。
【0034】
次に、中空繊維配列体の各中空繊維は密封した糸端から開放した糸端までが37.5cmになるように開放した端を剪定した。このようにして中空部の容積が理論上9.54μlとなるようにし、中空繊維が228本の19×12配列させた中空繊維配列体を得た。
(2)中空繊維の検査
検査用ウェルプレートの作製
【0035】
384ウェルプレート(コーニング384 well #3675)のA3〜P21のウェルに、MillQ水を40μlずつ分注して検査用ウェルプレートを得た。
【0036】
水の導入による損傷検査
図2 に充填装置図を示した。真空容器として、本実施例では真空乾燥機(ヤマト科学社製DP43)を用いた。先に準備した検査用ウェルプレート2を真空乾燥機3内にあるエアーシリンダー式昇降台4(自主制作)の上にのせ、次いで(1)で作製した中空繊維配列体1を同じく真空乾燥機3内の支柱5に固定し、真空乾燥機3の扉を閉めた。
【0037】
真空乾燥機3 内を真空ポンプ( アルバック社製DVS-321)で4Torrまで減圧した後、昇降台4を上昇させて、中空繊維配列体1の開放端(228本)側を検査用ウェルプレート2のウェル中の水に浸漬させた。その後、パージバルブをゆっくりと開いて真空乾燥機3 内に外気を吹き込み、減圧を解いた。
【0038】
昇降台4 を降下させて、前記中空繊維配列体1の水に浸漬させた開放端とウェルプレート2を離し、真空乾燥機3 の扉を開けて、該ウェルプレート2を3内から取り出した。Bio-Tek社製ウェルプレート用分光光度計(μQUANT)でウェル中の水の吸光度を970nmで測定した。中空繊維配列体1 の中空部へ導入した水は真空乾燥機3を再び減圧(4Torr)にして中空繊維中空部から排出させた。
次に、中空繊維配列体1はそのままにし、測定したウェルプレートを再度昇降台4の上にのせ、真空乾燥機3の扉を閉めた。前述と同様に、真空乾燥機3 内を真空ポンプ( アルバック社製DVS-321)で4Torrまで減圧した後、昇降台4を上昇させて、中空繊維配列体1 の開放端(228本)側を検査用ウェルプレート2のウェル中の水に浸漬させた。パージバルブをゆっくりと開いて真空乾燥機3 内に外気を吹き込み、減圧を解いた。
【0039】
昇降台4 を降下させて、前記中空繊維配列体1 の水に浸漬させた糸端とウェルプレート2を離し、真空乾燥機3 の扉を開けて、該ウェルプレート2を3内から取り出して、Bio-Tek社製ウェルプレート用分光光度計(μQUANT) でウェル中の水の吸光度を970nmで再び測定した。中空繊維配列体1 の中空部へ導入した水は真空乾燥機3を減圧(4Torr)にして中空繊維中空部から排出させた。
【0040】
水量測定による検査結果
本実施例において、水を吸い上げる前の水の吸光度の測定結果(図3)、及び水を吸い上げた後の測定結果(図4及び5)を比較した。
【0041】
今回のテストでは、吸い上げ不良か否かの判定基準として、水を2回吸い上げた後における吸光度0.100を境界値として、0.100以下を正常吸い上げ値とし、0.100以上を吸い上げ不良値として判定を行った(図5)。その結果、予め損傷させた糸を浸漬した2箇所のウェルはわずかな吸光度の低下しか認められなかった。また開放末端から折り曲がっていた糸はウェルに正常に浸漬しなかったため、この部位に対応するウェルもわずかな吸光度の低下しか認められなかった。
また吸い上げ前後で吸光度に一様の低下が認められた残りに225箇所の各ウェルは、吸光度が平均して0.0897まで低下しており、規定量の水が中空部へ導入されていることを確認した。以上の結果から、損傷のある中空繊維と損傷のない中空繊維との判別が可能であることを確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】中空繊維配列体を示す図である。
【図2】充填装置を示す図である。
【図3】水吸い上げ前のウェルプレートの吸光度測定結果を示す図である。
【図4】水を1回吸い上げた後のウェルプレートの吸光度測定結果を示す図である。
【図5】水を2回吸い上げた後のウェルプレートの吸光度測定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1:中空繊維配列体
2:マイクロウェルプレート
3:真空容器
4:マイクロウェルプレート設置用昇降台
5:中空繊維配列体支持用支柱
6:真空ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空繊維配列体における中空繊維の検査方法であって、以下の工程;
1)マイクロウェルプレートのウェルに分注した水に中空繊維を浸漬する工程、
2)前記水を中空繊維の中空部に導入する工程、及び
3)中空繊維に導入された水量又はウェルに残存した水量を測定する工程
を含む、前記方法。
【請求項2】
請求項1において、1)及び2)の工程を複数回行った後、3)の工程を行う検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−150698(P2009−150698A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327238(P2007−327238)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】