説明

中空部品の洗浄方法及び洗浄アセンブリならびにタービンブレードの整備方法

【課題】低出力で洗浄時間を短縮し、かつタービンブレードの外側面への起こりうる損傷を減らすブレードの内側面を洗浄する方法及び装置を提供する。
【解決手段】タービンブレード28を洗浄する方法及び装置は、このブレード28を通って流れる洗浄液14及び、この洗浄液14の流れを介してタービンブレード28の内側面36に伝達する超音波15を発生させるトランスデューサ16を用いる。トランスデューサ16により放出される超音波15によって、内側キャビティ34内の洗浄液14を介して伝達し、かつタービンブレード28の内側面36に向かって伝達するエネルギが発生する。タービンブレード28の内側面36に接触する超音波15によって、汚れや垢が除去される。これによって、タービンブレード28を、低出力で短時間でかつ効率的に洗浄することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にタービンブレードの洗浄に関し、特にタービンブレードの内側面を洗浄する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、タービンブレードは、修理及び整備に先立って徹底的に洗浄される。内側キャビティは、洗浄するのが困難であるとともに、単調でかつ時間のかかる過程が要求される。従来のタービンブレードの洗浄は、超音波洗浄法を用いる。従来の超音波洗浄法は、高周波の超音波を洗浄液で満たされたタンクに放出するトランスデューサを用いる。トランスデューサからのエネルギが、タンクの壁を介して洗浄液に伝達される。超音波は、洗浄液を介してタービンブレードの外側面に進行する。それから、超音波の一部が、タービンブレードを介してこのブレードの内側面に伝達する。その後、超音波によって、タービンブレードの内側面から汚れが浮き上がって除去される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
不都合にも、エネルギを伝達しなければならない多数の面及び媒体を通過することによって、汚れを一掃するためにタービンブレード内に実際に存在するエネルギ量が減少する。エネルギは、タンクの壁、洗浄液及び、タービンブレードによって流出かつ吸収され、トランスデューサから放出されたエネルギのごく一部のみが、タービンブレードの内側面に実際に到達する。結果的にこれらの過程は、非効率的で時間がかかる。さらに、エネルギの一部のみが、タービンブレードの内側面を洗浄するようにこのブレードを実際に貫通するので、極めて高レベルのエネルギが必要となる。大量のエネルギが、タービンブレードの外側面に強い衝撃を与え、場合によってはタービンブレードの精細な特徴部及びエッジが変形する。
【0004】
従って、過度の量のエネルギを必要とせず、洗浄時間を短縮し、かつタービンブレードの外側面への起こりうる損傷を減らす、タービンブレードの内側面を洗浄する方法及び装置を開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、タービンブレードの外側面に接触することなくブレードの内側面を洗浄する方法ならびに装置である。本発明の方法は、タービンブレードの内側面を洗浄するために、タービンブレードを通って流れる洗浄液と組み合わせてトランスデューサを用いる。
【0006】
本発明による装置及び方法は、タービンブレードを通って流れる洗浄液と、洗浄液の流れを介して超音波を発生させるトランスデューサと、を備える。洗浄液は、タービンブレードの外側面に接触することなくブレードの内側キャビティを通って流れるように案内される。トランスデューサは、洗浄液中に浸漬されるとともに、タービンブレードを通って流れる洗浄液によって伝達される超音波を発生させる。タービンブレードが、洗浄液中に浸漬されることはない。洗浄液の流れの中で超音波を発生させることによって、洗浄液がタービンブレードの外側面に接触することなくブレードの内側面から汚れや他の蓄積した垢が除去される。
【0007】
故に、本発明に従ってタービンブレードアセンブリを洗浄し、かつ整備する方法ならびに装置が、より少ない時間で過度のエネルギを用いることなく、洗浄液がタービンブレードアセンブリの外側面に接触することなしにタービンブレードの内側面を洗浄するために提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1を参照すると、中空の部品を洗浄する洗浄アセンブリ10は、洗浄液14で満たされたタンク12を備える。洗浄液14は、好ましくは濃度30%〜45%の水酸化カリウムからなる。洗浄液の特定の量及び種類がこの開示で明記されているが、洗浄液の他の濃度及び混合も、本発明の意図する範囲内である。洗浄アセンブリ10は、流路本体(flow body)18内に取り付けられたトランスデューサ16をさらに備える。トランスデューサ16は、高周波の超音波を発するタイプのものである。流路本体18は、洗浄液14の流れを中空の部品の内部に案内するノズル24を備える。トランスデューサ16は、所望の超音波周波数を発生させるために制御装置22によって制御される。
【0009】
図示された実施例の中空の部品は、内側面36を有するキャビティ34を備えるタービンブレード28である。ノズル24は、タービンブレード28のキャビティ34内に挿入される。洗浄液14は、ポンプ26によってタンク12から流量調節装置20を介して流路本体18に圧送される。その後、洗浄液14は、ノズル24を通ってタービンブレード28のキャビティ34に案内される。トランスデューサ16によって、洗浄液14を介してタービンブレード28の内側面36に伝達される超音波15が発生する。超音波15がキャビティ34内に進行し、これによって、タービンブレードアセンブリ28の内側面36に付着した汚れや他の汚染物質が除去される。
【0010】
タービンブレード28は、根元部分32及びブレード部分30を備える。キャビティ34は、根元部分32からブレード部分30に延びている。ブレード部分30は、複数の開口部40を備える。根元部分32は、ノズル24が挿入される開口部38を備える。洗浄アセンブリ10は、タービンブレード28の内側面36に蓄積する汚れや垢(符号25で示される)を除去するために超音波を用いている。
【0011】
図示された実施例のトランスデューサ16は、300W前後の出力を備える。異なる出力定格を有する他のトランスデューサを用いることは、本発明の意図する範囲内である。トランスデューサ16によって発生した超音波15が、タービンブレード28の内側面36に接触するように洗浄液14を介して進行する。タービンブレード28の外側面は、洗浄液14にさらされず、その結果、トランスデューサ16によって発せられた超音波15の影響を受けない。
【0012】
図2を参照すると、タービンブレード28のキャビティ34内に配置されたノズル24の拡大図が示されている。キャビティ34の内側面36に洗浄液14が効率的に分配されるように、ノズル24が十分な長さでキャビティ34内に挿入されている。トランスデューサ16から発生したエネルギが、洗浄液14を介してキャビティ34の内側面36に向かって放出され、かつ伝達される。この振動及び洗浄液14を介して伝達される超音波周波数によって、汚れ(符号25で概略的に示される)が浮き上がって振動し、ひいてはタービンブレード28から除去されて洗い流される。
【0013】
ノズル24の特定の構造及び形状は、タービンブレード28の開口部38内に適合するように設計され、また開発される。特定の用途に要求される他のノズル形状もまた、本発明の意図する範囲内である。この実施例の開口部38は、スロット形状になっている。従って、ノズル24は、対応するほぼ長方形の部材であり、洗浄液14をタービンブレード28内に案内し、かつこのブレード28の内側面36から汚れ25を除去するために、トランスデューサ16から洗浄液14を介して超音波エネルギを伝達する。
【0014】
図3を参照すると、タービンブレード28が、根元部分32とともに図示されている。根元部分32は、外側面を含む。ある例においては、複数のタービンブレード28を同時に洗浄することが望ましい。マスク42が、キャビティ44を備えている。キャビティ44は、タービンブレード28の根元部分32を収容するように適合し、また設計される。マスク42は、タービンブレード28の洗浄中に、このブレード28の外側面を保護するだけでなく、ブレード28を洗浄用固定具46内に取り付ける取り付けブロックとしても機能する。
【0015】
図4を参照すると、洗浄用固定具46は、タンク48を備える。タンク48にマスク42が取り付けられている。初めに、マスク42が、タービンブレード28の各々に取り付けられ、その後このマスク42が、複数のブラケット50を介してタンク48に固定される。ブラケット50によって、各タービンブレード28が所望の方向に保持され、これにより、トランスデューサ16を各タービンブレード28内の開口部38に相対して配置することができる。各タービンブレード28は、タンク12の下部に配置された洗浄液14の上方に垂下している。故に、タービンブレード28の外側面は、洗浄液14即ちトランスデューサ16によって発生した超音波15にさらされない。
【0016】
洗浄液14は、ポンプ26によってタンク12からタンク48に戻るように圧送される。それから洗浄液14は、各タービンブレード28内の開口部40を通ってもとのタンク12に流れる。トランスデューサ16は、各タービンブレード28の上方に向けて配置されるとともに、各タービンブレード28内及びこれらのブレード28を通って流れる洗浄液14によって伝達かつ運搬される超音波15を発生させる。このように、本発明による洗浄アセンブリ10によって、タービンブレード28の内部の特徴部から汚れや他の蓄積した垢を除去するために、流動する洗浄液14、超音波15の双方が用いられる。
【0017】
図5を参照すると、本発明による方法が概略的に図示されており、またこの方法は、タービンブレード28を洗浄装置10に取り付ける第1のステップを備える。実施例の洗浄装置10は、単一のタービンブレード28を洗浄する流路本体18もしくは、複数のタービンブレード28を同時に洗浄する洗浄用固定具46を含み得る。タービンブレード28の取り付けステップは、符号54で示されるとともに、タービンブレード28内の開口部38に相対してトランスデューサ16を配置することも含む。
【0018】
タービンブレード28が洗浄アセンブリ10内に取り付けられると、洗浄液14が、符号56で示されるように、タービンブレード28を通って流れる。この実施例で用いられる洗浄液14は、濃度30%〜45%の水酸化カリウムである。他の濃度及び種類の洗浄液を用いることは、本発明の意図する範囲内であることが理解できる。
【0019】
符号58で示されるように、トランスデューサ16によって、予め定めた所望の周波数で超音波が放出される。トランスデューサ16がタービンブレード28を介してエネルギを伝達するために用いられる場合よりも、所定の周波数でより少ないエネルギが要求される。ステップ60で示されるように、超音波15が、洗浄液14を介してタービンブレード28の内側面36に伝達するので、より少ない出力を用いることができる。タービンブレードアセンブリ28の外側でトランスデューサ16を用い、タービンブレード28の内側面36を洗浄するように超音波洗浄を用いる例では、6Kw以上のエネルギが必要となり得る。本発明による方法では、トランスデューサ16が、タービンブレードアセンブリ28のキャビティ34内に挿入されるので、約0.3Kwのより少ない出力が必要となる。特定の用途及び、タービンブレード28の内側面36に付着している汚染物質ならびに汚れの度合いに応じて、他のレベルの出力を用いてもよい。
【0020】
この実施例では、洗浄アセンブリ10のポンプ26が、洗浄タンク12内に取り付けられる。ポンプ26によって、洗浄液14の再循環がもたらされる。この適用例においては、洗浄液14が、第1の開口部38を通って圧送され、その後、各タービンブレードアセンブリ28のブレード部分30内に配置された開口部40から出る。キャビティ34の内側面36に伝達される超音波エネルギに加えて、洗浄液14の流れが、ステップ62で示されるように、使用中に蓄積した汚れや垢を実質的に全て除去する所望の洗浄に影響を及ぼす。
【0021】
より少ない量のエネルギを用いる改良した洗浄方法によって、洗浄効率が向上し、また各タービンブレード28を洗浄するのに必要な時間が短縮される。従来技術の方法では、タービンブレード28を効率的に洗浄するのに数日を要する。本発明によって、タービンブレード28を数時間以内で洗浄することができる。さらに、超音波エネルギが、タービンブレードアセンブリ28の内側面36に伝達されるので、これらのブレードアセンブリ28の外側面が、超音波にさらされることによる起こり得る悪影響から保護される。従来技術の方法で理解できるように、極めて高い出力が、タービンブレードアセンブリ28を介して超音波エネルギを伝達するために要求される。タービンブレードアセンブリ28の外側面、鋭角及び、精細な面は、損傷を受けやすい。
【0022】
従って、本発明の方法及び装置によって、より少ない出力を用い、所望かつ精細な外部の特徴部への潜在的な損傷の可能性をより低くする、タービンブレード28を素早く効率的に洗浄する改良した洗浄方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明によるタービンブレード及び洗浄アセンブリの概略図。
【図2】タービンブレードに取り付けられたノズル及びトランスデューサの一部分の拡大図。
【図3】タービンブレード及びこのブレードの外側面を保護するマスクの概略図。
【図4】複数のタービンブレードを洗浄する固定具の概略図。
【図5】本発明に従ってタービンブレードを洗浄する方法のステップを示す流れ図。
【符号の説明】
【0024】
12…タンク
14…洗浄液
15…超音波
16…トランスデューサ
18…流路本体
20…流量調節装置
22…制御装置
23…汚れ
24…ノズル
26…ポンプ
28…タービンブレード
30…ブレード部分
32…根元部分
34…キャビティ
36…内側面
38、40…開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)中空の部品を通して洗浄液を流すステップと、
b)上記の中空の部品内の開口部を通して超音波を放出するステップと、
c)不要な物質を除去するために上記洗浄液の流れを介してエネルギを伝達し、かつ上記の中空の部品の内側面に対してエネルギを伝達するステップと、
を備えることを特徴とする中空の部品の内側面を洗浄する方法。
【請求項2】
上記の中空の部品の外側面が、上記洗浄液にさらされないようにこの部品を取り付けるステップを備えることを特徴とする請求項1に記載の中空の部品の内側面を洗浄する方法。
【請求項3】
上記の中空の部品の外側面にマスクを取り付け、かつ上記マスクを介して上記の中空の部品を取り付けるステップを備えることを特徴とする請求項1に記載の中空の部品の内側面を洗浄する方法。
【請求項4】
上記超音波を発生させるために、上記の中空の部品の開口部に隣接してトランスデューサを取り付けるステップを備えることを特徴とする請求項1に記載の中空の部品の内側面を洗浄する方法。
【請求項5】
上記の中空の部品の開口部内にノズルを有する流路本体を取り付けることを特徴とする請求項4に記載の中空の部品の内側面を洗浄する方法。
【請求項6】
上記トランスデューサは、上記流路本体内の洗浄液中に浸漬されることを特徴とする請求項5に記載の中空の部品の内側面を洗浄する方法。
【請求項7】
上記洗浄液は、少なくともある濃度の水酸化カリウムからなることを特徴とする請求項1に記載の中空の部品の内側面を洗浄する方法。
【請求項8】
上記の中空の部品は、根元部分内に上記開口部を有するタービンブレードであり、少なくとも1つの開口部を有する少なくとも部分的に中空のブレード部分を備えることを特徴とする請求項1に記載の中空の部品の内側面を洗浄する方法。
【請求項9】
上記根元部分の開口部を通して洗浄液を流し、かつ上記ブレード部分の少なくとも1つの開口部から上記洗浄液を出すステップを備えることを特徴とする請求項8に記載の中空の部品の内側面を洗浄する方法。
【請求項10】
洗浄液を備える流路本体と、
キャビティの内側面から汚れを攪拌して除去するために、上記洗浄液中に上記タービンブレード内の開口部を通して伝達する超音波を発生させるように、上記流路本体内に配置されたトランスデューサと、
を備えることを特徴とするタービンブレードのキャビティから汚れを除去する洗浄アセンブリ。
【請求項11】
上記流路本体は、上記タービンブレード内に洗浄液の流れを案内するために、上記タービンブレードの開口部を介して上記キャビティ内に取り付け可能なノズルを備えることを特徴とする請求項10に記載のタービンブレードのキャビティから汚れを除去する洗浄アセンブリ。
【請求項12】
上記タービンブレードの外側部分を保護するために、上記タービンブレードの外側部分に取り付け可能なマスクを備えることを特徴とする請求項10に記載のタービンブレードのキャビティから汚れを除去する洗浄アセンブリ。
【請求項13】
上記トランスデューサは、上記洗浄液を介して伝達される所望の周波数の超音波を放出するトランスデューサからなることを特徴とする請求項10に記載のタービンブレードのキャビティから汚れを除去する洗浄アセンブリ。
【請求項14】
上記タービンブレードは、ブレード部分の開口部を備え、洗浄液は、上記ブレード内の開口部を通って排出されることを特徴とする請求項13に記載のタービンブレードのキャビティから汚れを除去する洗浄アセンブリ。
【請求項15】
上記トランスデューサは、約0.3Kwのトランスデューサ出力を備えることを特徴とする請求項13に記載のタービンブレードのキャビティから汚れを除去する洗浄アセンブリ。
【請求項16】
複数のタービンブレードを取り付ける固定具と、上記タービンブレードの各々に隣接した対応する複数のトランスデューサと、を備えることを特徴とする請求項13に記載のタービンブレードのキャビティから汚れを除去する洗浄アセンブリ。
【請求項17】
根元部分の開口部及び少なくとも1つのブレード部分の開口部を有するタービンブレードを整備する方法であって、
この方法は、
a)上記タービンブレードの内側キャビティを通して洗浄液を流すステップと、
b)上記洗浄液を介して上記タービンブレードの内側面に対して超音波を放出するステップと、
c)上記タービンブレードから少なくとも1つの上記ブレード部分の開口部を通って上記洗浄液を排出するステップと、
を備えることを特徴とするタービンブレードを整備する方法。
【請求項18】
上記タービンブレードの内側面に対して上記超音波を案内するために、上記根元部分の開口部に隣接してトランスデューサの一部分を取り付けることを特徴とする請求項17に記載のタービンブレードを整備する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−90344(P2007−90344A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−256612(P2006−256612)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】