説明

中継局、無線通信端末、無線通信システムおよび無線通信方法

【課題】 無線通信端末の位置を把握し安定した通信品質を確保すると共に、無線通信を維持したままシームレスなハンドオーバを実現することを目的とする。
【解決手段】 本発明の中継局130は、無線通信端末の通信を中継しているとき、無線通信端末との通信品質を監視して無線通信端末の位置を推定する位置推定部350と、無線通信端末の位置に応じて、無線通信端末との無線通信のQoSを切り換え、ハンドオーバ基準を切り換えさせる接続制御部352と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信端末と基地局との通信を中継可能な中継局、無線通信システムおよび無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、PHS(Personal Handy phone System)端末や携帯電話等に代表される無線通信
端末が普及し、場所や時間を問わず通話や情報入手が可能となった。特に昨今では、入手可能な情報量も増加の一途を辿り、大容量のデータをダウンロードするため高速かつ高品質な無線通信方式が取り入れられるようになってきた。
【0003】
このような高速デジタル無線通信方式の一つとして、IEEE802.11やWiMAX(例えば、非特許文献1)に代表されるOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)方式が挙げられる。OFDM方式は、データの多重化
方式の一つに分類され、単位時間軸上で多数の搬送波を利用し、変調対象となる信号波の位相が隣り合う搬送波間で直交するように搬送波の帯域を一部重ね合わせて周波数帯域を有効利用する方式である。また、OFDMが個別のユーザ毎に時分割でサブチャネルを割り当てているのに対して、複数のユーザが全サブチャネルを共有し、各ユーザにとって最も伝送効率のよいサブチャネルを割り当てるOFDMA(Orthogonal Frequency Division
Multiplex Access:直交周波数分割多元接続)も提供されている。
【0004】
上述したWiMAX等次世代の高速無線通信方式において2.5GHz帯またはそれ以上の高周波数帯を使用する場合、障害物が多い等の電波状態が悪い領域では基地局1つに対する通信可能範囲(カバレージ)が小さくなり、周囲を全て覆うには多数の基地局を配設しなければならない。さらに、このような1つの基地局の通信可能範囲が小さい領域を電車や自動車等の移動体で通過すると、接続先となる基地局を切り換えるハンドオーバが頻発し、通信品質の低下や消費電力の増大を招く。
【0005】
そこで、移動体内に、基地局と無線通信端末とを中継する中継局を固設し、移動体内における通信電力を安定させる技術が開示されている。しかし、このような中継局は、増幅器やフィルタで構成され、信号波形を維持しつつ電力を増幅する機能のみ有し、通信の制御機能が付加されていなかった。従って、通信品質の低下や消費電力の無駄な消費に対する考慮がなされていなかった。
【0006】
このような中継局の発展技術として、航空機内に中継局を設置し、その中継局を通じて地上通信網に接続された基地局アンテナに無線通信端末を通信接続する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。ここでは、搭乗者が所有する端末を用いて衛星を介さずに地上通信網と通信でき、航空機内にいながらにしてインターネット通信や通話といったサービスを受けることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−159448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述した航空機内の中継局では、無線通信端末と中継局との間の無線通信方式と、無線通信端末と基地局との間の無線通信方式が相異しており、さらに、中継局と基地
局との間では、別途中継局専用の無線通信方式を準備する必要があった。従って、無線通信を遂行する前段階処理負荷および設備コストの増大を招いていた。
【0009】
また、航空機に乗降する際には一旦通信を切断しなければならないといった事情から、無線通信端末における基地局または中継局との接続が一旦切断されることが前提となり、通信の接続状態を維持したまま接続先を切り換える無線通信端末のハンドオーバに関しては考慮されていない。
【0010】
移動体等の小さな空間での無線通信を可能にするワイヤレスLANを現在の無線通信システムに組み合わせ、中継局にその機能を付加したとしても、無線通信端末は、通常の基地局と中継局とで相異する無線通信方式による無線通信が強いられ、その切り換え時には切り換え前の通信情報を利用できず、毎回通信経路を新たに確立する必要があった。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑み、無線通信端末の位置を把握し安定した通信品質を確保すると共に、無線通信を維持したままシームレスなハンドオーバを実現することが可能な中継局、無線通信システムおよび無線通信方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の代表的な構成は、無線通信端末と基地局との通信を中継可能な中継局であって、無線通信端末と基地局との通信を中継している場合に、無線通信端末と自局との通信品質を監視する監視部と、監視した結果に応じて、無線通信端末と基地局とが自局を介さずに通信するように無線通信端末を制御する接続制御部と、を備えることを特徴とする。かかる中継局は、人が乗降可能な移動体に設置され、監視部の監視結果に応じて無線通信端末の位置を推定する位置推定部をさらに備えてもよい。
【0013】
位置推定部は、無線通信端末の位置、特に移動体の内外(乗降)いずれに位置しているかを把握し、接続制御部がその位置に応じて無線通信端末に適した通信状態を提供する。このように無線通信端末に適した通信状態を提供することで、移動体内に留まっていても安定したQoS(Quality of Service )を確保することができ、移動体外に離脱したと
しても切り換わった適切なQoSにより、無線通信を維持したままシームレスなハンドオーバを実現することが可能となる。
【0014】
位置推定部は、通信品質を示す値が所定値以上かつ通信品質が所定変動幅内で安定しているときに無線通信端末が移動体内に存在すると判断できる。
【0015】
移動体内から移動体外に出た場合、移動体を覆う金属が電波を遮蔽する障壁になるので無線品質が大きく劣化する。また、移動体外に出た後、移動体がさらに移動すると中継局と無線通信端末との距離が大きくなるので、通信品質はさらに劣化することとなる。従って、通信品質を示す値が所定値以上かつ通信品質が所定変動幅内で安定しているときに無線通信端末の移動体内の存在を判断でき、それ以外の状態では無線通信端末が移動体外に存在すると判断できる。また、位置推定部は、移動体内外を判別するだけでなく、その切り換わり時点を判別できるため、無線通信端末と中継局がハンドオーバが困難なほど離れる前に無線通信端末にハンドオーバを促すことが可能となり、無線通信を維持したままシームレスなハンドオーバをさらに確実に実現することが可能となる。
【0016】
接続制御部は、無線通信端末が移動体内に存在するとき通信品質の高いQoSを、無線通信端末が移動体外に存在するとき移動性の高いQoSを選択させてもよい。
【0017】
移動体内では、無線通信を妨げる障壁もなく、また、移動体といった小空間内で中継局と無線通信端末との距離の変化もほとんどないので、通信環境が非常に良い。従って、無
線通信端末が移動体内に存在する場合は、通信品質の高いQoSを選択させることができ、かつ、消費電力を低減できる。移動体外では、通信品質が保証されないので、移動性の高いQoSを選択させると共に消費電力の低減をキャンセルしなくてはならない。
【0018】
接続制御部は、無線通信端末が移動体内に存在するときハンドオーバの抑制を指示し、無線通信端末が移動体外に存在するとき自局以外の基地局へのハンドオーバを指示してもよい。
【0019】
上述したように移動体内では、中継局との良好な通信環境が形成されるため、一時的に通信品質の良い基地局が存在したとしても無闇にハンドオーバすべきではない。また、移動体外では、距離が広がる可能性の高い中継局との無線通信をいつまでも維持すべきではない。従って、無線通信端末は、移動体内に存在するときにはハンドオーバの閾値が高められる等の措置によってハンドオーバが抑制され、移動体外に存在するときにはその閾値が下げられかつ当該中継局以外の他の基地局に無線通信が移行される。
【0020】
接続制御部は、無線通信端末が移動体外に存在するとき自局が無線通信を遂行している基地局へのハンドオーバを指示してもよい。
【0021】
中継局は最適な無線通信先として任意の基地局を選択している。従って、直前まで中継局の近傍に存在していた無線通信端末も中継局が無線通信している基地局が最適な無線通信先となる可能性が高い。中継局は自局との無線通信が良好なこの基地局の情報を無線通信端末に提供することで、無線通信端末は早期に基地局との無線通信を確立することが可能となる。
【0022】
当該中継局は、基地局に対して無線通信端末として機能する端末機能部と、無線通信端末に対して基地局として機能する基地局機能部と、をさらに備えてもよい。
【0023】
かかる構成により、中継局は、基地局と接続する場合に無線通信端末として機能し、中継局を無線通信端末同様に取り扱うことができる。
【0024】
端末機能部は、基地局と無線通信端末との間で用いられる無線通信方式によって基地局と無線通信を行ってもよい。
【0025】
かかる構成により、中継局と基地局との間の無線通信方式を新たに準備する必要が無くなり、無線通信端末の処理負荷および設備コストを削減することができる。また、中継局の端末機能部は移動体内の無線通信端末と同等の状況に置かれるので、無線通信端末に代わって通信品質等を推測し、かつ無線通信端末にその情報を伝達することが可能となる。
【0026】
本発明の代表的な他の構成は、無線通信端末と、無線通信端末と無線通信を行う基地局と、無線通信端末と基地局との通信を中継可能な中継局とを備える無線通信システムであって、無線通信端末は、基地局または中継局と無線通信を確立する端末無線通信部と、中継局からのハンドオーバ基準に従って、ハンドオーバを要求するハンドオーバ要求部と、を備え、中継局は、無線通信端末と基地局との通信を中継している場合に、無線通信端末と自局との通信品質を監視する監視部と、監視部の監視結果に応じて無線通信端末の位置を推定する位置推定部と、無線通信端末の位置に応じて、無線通信端末との無線通信のQoSを切り換え、無線通信端末のハンドオーバ基準を切り換えさせる接続制御部と、を備え、基地局は、無線通信端末からのハンドオーバ要求に応じて、中継局と自局とのハンドオーバを実行する基地局無線通信部を備えることを特徴とする。
【0027】
本発明の代表的な他の構成は、無線通信端末と、無線通信端末と無線通信を行う基地局
と、無線通信端末と基地局との通信を中継可能な中継局とを用いて無線通信を実行する無線通信方法であって、無線通信端末は、中継局と無線通信を確立し、中継局は、無線通信端末の通信品質を監視して無線通信端末の位置を推定し、中継局は、無線通信端末の位置に応じて、無線通信端末との無線通信のQoSを切り換え、無線通信端末のハンドオーバ基準を切り換えさせ、無線通信端末は、中継局からのハンドオーバ基準に従って、指示された基地局へのハンドオーバ要求を実行し、基地局は、無線通信端末からのハンドオーバ要求に応じて、中継局から自局へのハンドオーバを実行することを特徴とする。
【0028】
上述した中継局の技術的思想に基づく構成要素やその説明は、当該無線通信システムや無線通信方法にも適用可能である。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように本発明の中継局によれば、無線通信端末の位置を把握し安定した通信品質を確保すると共に、無線通信を維持したままシームレスなハンドオーバを実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】無線通信システムの概略的な構成を示したブロック図である。
【図2】PHS端末のハードウェア構成を示した機能ブロック図である。
【図3】PHS端末の外観を示した斜視図である。
【図4】基地局の概略的な構成を示したブロック図である。
【図5】中継局の概略的な構成を示したブロック図である。
【図6】PHS端末が移動体内に存在するときの位置関係を示した説明図である。
【図7】PHS端末が移動体外に離脱したときの位置関係を示した説明図である。
【図8】モバイルIPによるデータ転送のイメージを示した説明図である。
【図9】中継局の登録処理を説明するための説明図である。
【図10】中継局のハンドオーバ処理を説明するための説明図である。
【図11】PHS端末における中継局との無線確立処理を説明するための説明図である。
【図12】PHS端末における中継局からの離脱処理を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0032】
PHS端末や携帯電話等に代表される無線通信端末は、所定間隔をおいて配される複数の基地局との広帯域の無線通信システムを構築し、この無線通信システムを通じて他のPHS端末や通信網上のサーバと通信を遂行する。本実施形態では、このような無線通信端末を含んでなる無線通信システムにおける、QoSの維持とハンドオーバの基準設定に関して説明する。
【0033】
ここでは、本実施形態の理解を容易にするため、まず無線通信システムの概略的な構成を説明し、その後で無線通信端末の具体的な動作を説明する。また、ここでは、無線通信端末としてPHS端末を挙げているが、かかる場合に限られず、携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistant)、デジタルカメラ、音楽プ
レイヤー、カーナビゲーション、ポータブルテレビ、ゲーム機器、DVDプレイヤー、リモートコントローラ等無線通信可能な様々な電子機器を無線通信端末として用いることもできる。また、移動体は、自動車、バス、電車(列車)、船舶、航空機等、人が乗降可能な乗り物を示している。
【0034】
(無線通信システム100)
図1は、無線通信システム100の概略的な構成を示したブロック図である。当該無線通信システム100は、PHS端末110(110A、110B)と、基地局120(120A、120B)と、中継局130と、ISDN(Integrated Services Digital Network)回線、インターネット、専用回線等で構成される通信網140と、中継サーバ150
とを含んで構成される。
【0035】
かかる無線通信システム100において、ユーザが自身のPHS端末110Aから他のPHS端末110Bへの通信回線の接続を行う場合、PHS端末110Aは、通信可能範囲内にある基地局120Aに無線接続要求を行う。無線接続要求を受信した基地局120Aは、通信網140を介して中継サーバ150に通信相手との通信接続を要求し、中継サーバ150は、他のPHS端末110Bの位置登録情報を参照し、他のPHS端末110Bの無線通信範囲内にある基地局120Bを選択して基地局120Aと基地局120Bとの通信経路を確保し、PHS端末110AとPHS端末110Bの通信を確立する。
【0036】
このときユーザが移動体160としての例えば電車に乗った場合、PHS端末110Aは、基地局120Aと直接ではなく、中継局130を介した間接通信に切り換わる。かかる中継局130は、移動体160に固定され移動体160と共に移動し、移動体内を通信可能領域とする。移動体内に乗ってきたユーザが有するPHS端末110Aと中継局130とは、空き座席を探す等の動作が生じない限り互いの位置関係が変化することなく共に移動し、また両者の間を遮蔽する障壁も無いため、安定した無線通信を確保することが可能となる。従って、PHS端末110Aは、移動体160の移動に拘わらず、中継局130を介して他のPHS端末110Bとの通信を維持することができる。以下、無線通信システム100の構成要素であるPHS端末110、基地局120、中継局130について個々に説明する。
【0037】
(PHS端末110)
図2は、PHS端末110のハードウェア構成を示した機能ブロック図であり、図3は、PHS端末110の外観を示した斜視図である。PHS端末110は、端末制御部210と、端末メモリ212と、表示部214と、操作部216と、音声入力部218と、音声出力部220と、端末無線通信部222とを含んで構成される。
【0038】
端末制御部210は、中央処理装置(CPU)を含む半導体集積回路によりPHS端末110全体を管理および制御する。端末制御部210は、端末メモリ212のプログラムを用いて、通話機能、メール送受信機能、撮像機能、音楽再生機能、TV視聴機能も遂行する。また、端末制御部210は、中継局130からのハンドオーバ基準に従って、ハンドオーバを要求するハンドオーバ要求部230としても機能する。端末メモリ212は、ROM、RAM、EEPROM、不揮発性RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、端末制御部210で処理されるプログラムや音声データ等を記憶する。
【0039】
表示部214は、液晶ディスプレイ、EL(Electro Luminescence)等で構成され、端末メモリ212に記憶された、または通信網140を介してアプリケーション中継サーバ(図示せず)から提供される、WebブラウザやアプリケーションのGUI(Graphical User Interface)を表示することができる。操作部216は、キーボード、十字キー、ジョイスティック等のスイッチから構成され、ユーザの操作入力を受け付ける。
【0040】
音声入力部218は、マイク等の音声認識手段で構成され、通話時に入力されたユーザの音声をPHS端末110内で処理可能な電気信号に変換する。音声出力部220は、スピーカで構成され、PHS端末110で受信した通話相手の音声信号を音声に変えて出力する。また、着信音や、操作部216の操作音、アラーム音等も出力できる。
【0041】
端末無線通信部222は、通信網140における基地局120または中継局130との無線通信を行う。端末無線通信部222には、TDMS(時分割多重接続:Time Division Multiple Access)方式、OFDM方式、OFDMA方式等様々な無線通信方式を適用
することができる。
【0042】
(基地局120)
図4は、基地局120の概略的な構成を示したブロック図である。基地局120は、基地局制御部250と、基地局メモリ252と、基地局無線通信部254と、基地局有線通信部256とを含んで構成される。
【0043】
基地局制御部250は、中央処理装置(CPU)を含む半導体集積回路により基地局120全体を管理および制御する。基地局メモリ252は、ROM、RAM、EEPROM、不揮発性RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、基地局制御部250で処理されるプログラム等を記憶する。
【0044】
基地局無線通信部254は、PHS端末110または中継局130と、例えばOFDMA方式等による無線通信を確立し、PHS端末110または中継局130との通信状態に応じて、変調方式を適応的に変更することもできる(適応変調)。また、基地局無線通信部254は、PHS端末110からのハンドオーバ要求に応じて、中継局130と自局とのハンドオーバを実行する。基地局有線通信部256は、通信網140を介して中継サーバ150を含む様々なサーバと接続することができる。
【0045】
(中継局130)
図5は、中継局130の概略的な構成を示したブロック図である。中継局130は、中継局制御部310と、中継局メモリ312と、中継局無線通信部314とを含んで構成される。
【0046】
中継局制御部310は、中央処理装置(CPU)を含む半導体集積回路により中継局130全体を管理および制御する。中継局メモリ312は、ROM、RAM、EEPROM、不揮発性RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、中継局制御部310で処理されるプログラム等を記憶する。中継局無線通信部314は、PHS端末110と基地局120とに接続され、PHS端末110と基地局120とを中継する。また、中継局無線通信部314は、監視部348、位置推定部350、接続制御部352、端末機能部354、基地局機能部356、位置登録情報制御部358、チャネル情報制御部360、認証情報制御部362として機能する。
【0047】
監視部348は、当該中継局130がPHS端末110の通信を中継しているとき、PHS端末110との通信品質を監視する。
【0048】
位置推定部350は、監視部348の監視結果に応じてPHS端末110の位置、特に移動体内に存在するか否かを推定する。ここで、通信品質は、電界強度、SNR(Signal
to Noise Ratio)、BER(Bit Error Rate)といった通信の品質を表している。
【0049】
図6は、PHS端末110が移動体内に存在するときの位置関係を示した説明図である
。位置推定部350は、常時、微弱な定量信号を移動体内に発信(ブロードキャスト)しており、PHS端末110は、中継局130からのレポートリクエストコマンド等による電波強度測定指令を通じて、中継局130から発信されたこの定量信号の電波強度を所定時間間隔で測定し、電波強度情報として中継局130に返信する。
【0050】
位置推定部350は、PHS端末110からの電波強度情報が所定量を超えており、かつ所定変動幅内で安定している場合、そのPHS端末110は移動体内に存在すると判断する。移動体160は、電波を遮蔽する金属で覆われている場合が多く、移動体の内と外とでは通信品質が著しく異なる。また、移動体内では、PHS端末110と中継局130との距離や空間の位置関係に変化がないので、低電力で安定した通信を実行することができる。従って、位置推定部350は、通信品質が高く、安定していることによってPHS端末110が移動体内に存在することを推定できる。
【0051】
ここで、位置推定部350は、定量信号の電波強度を測定することでその距離を推定しているが、かかる場合に限られず、PHS端末110の送信電力を把握することができれば、送信電力と受信信号の電波強度とから電力劣化を導出し距離を推定したり、PHS端末110との電波往路の伝播遅延を測定して距離を推定したりすることも可能である。
【0052】
図7は、PHS端末110が移動体外に離脱したときの位置関係を示した説明図である。PHS端末110のユーザが移動体内から移動体外に出た場合、移動体160を覆う金属が電波を遮蔽する障壁になるので無線品質が大きく劣化する。また、移動体外に出た後、移動体160が白抜き矢印で示したようにさらに移動すると中継局130とPHS端末110との距離が大きくなるので、通信品質はさらに劣化することとなる。従って、通信品質を示す値が所定値以下または通信品質が所定変動幅外に逸脱してしまい位置推定部350は、PHS端末110が移動体外に存在すると判断することとなる。
【0053】
また、位置推定部350は、移動体内外を判別するだけでなく、その切り換わり時点を判別できるため、PHS端末110と中継局130とがハンドオーバが困難なほど離れる前に、後述する接続制御部352によってPHS端末110にハンドオーバを促すことが可能となる。かかる構成により、移動体160の移動によってハンドオーバがなされる前に一旦通信が切断してしまい、PHS端末110の位置登録等の初期設定から再度設定しなくてはならない等の問題を回避できる。こうして、無線通信を維持したままシームレスなハンドオーバを確実に実現することが可能となる。
【0054】
接続制御部352は、PHS端末110の位置に応じて、PHS端末110の無線通信のQoSを切り換え、PHS端末110のハンドオーバ基準を切り換えさせる。
【0055】
QoSに関して、接続制御部352は、PHS端末110が移動体内に存在すると位置推定部350が推定している間、PHS端末110との無線通信として通信品質の高いQoSを選択させ、PHS端末110が移動体外に存在すると位置推定部350が推定した場合、移動性の高いQoSを選択させる。ここでQoSは、通信速度、変調方式、出力電圧を含むサービスの品質を示し、通信品質に応じて任意に調整することができる。
【0056】
例えば、移動体内では、上述したように、無線通信を妨げる障壁もなく、また、移動体160といった小空間内で中継局130とPHS端末110との距離の変化もほとんどないので、通信環境が非常に良い。従って、図6に示したように、PHS端末110が移動体内に存在する場合は、通信品質の高いQoSを選択させることができ、かつ、消費電力を低減できる。また、図7に示したように移動体外に移動した場合、通信品質が保証されないので、接続制御部352は、移動性の高いQoSを選択させると共に消費電力の低減をキャンセルしなくてはならない。
【0057】
また、ハンドオーバ基準に関して、接続制御部352は、PHS端末110が移動体内に存在するときハンドオーバの抑制を指示し、PHS端末110が移動体外に存在するとき自局以外の基地局120へのハンドオーバを指示する。従来の無線通信システムではハンドオーバの要求はPHS端末110からに限られていたが、WiMAX等次世代の高速無線通信方式ではハンドオーバ要求を双方向で実行できる。従って、接続制御部352からPHS端末110に対してハンドオーバを要求することが可能となる。
【0058】
上述したように移動体内では、中継局130との良好な通信環境が形成されるため、一時的に通信品質の良い基地局120が存在したとしても無闇にハンドオーバすべきではない。また、移動体外では、距離が広がる可能性の高い中継局130との無線通信をいつまでも維持すべきではない。従って、PHS端末110は、図6に示したように移動体内に存在するときにはハンドオーバの閾値が高められる等の措置によってハンドオーバが抑制され、図7に示したように移動体外に存在するときにはその閾値が下げられかつ当該中継局130以外の他の基地局120に無線通信が移行される。
【0059】
接続制御部352は、PHS端末110が移動体外に存在するとき自局以外の基地局120へのハンドオーバを指示するだけでなく、自局が無線通信を遂行している基地局120へのハンドオーバを指示してもよい。
【0060】
中継局130は最適な無線通信先として任意の基地局120を選択している。従って、直前まで中継局130の近傍に存在していたPHS端末110も中継局130が無線通信している基地局120が最適な無線通信先となる可能性が高い。中継局130は自局との無線通信が良好なこの基地局120の情報をPHS端末110に提供することで、PHS端末110は早期に基地局120との無線通信を確立することが可能となる。
【0061】
さらに接続制御部352は、PHS端末110との通信状態に応じて、変調方式を適応的に変更することもできる(適応変調)。
【0062】
以上説明したように、位置推定部350は、PHS端末110の位置、特に移動体の内外(乗降)いずれに位置しているかを把握し、接続制御部352がその位置に応じてPHS端末110に適した通信状態を提供する。このようにPHS端末110に適した通信状態を提供することで、移動体内に留まっていても安定したQoSを確保することができ、移動体外に離脱したとしても切り換わった適切なQoSにより、無線通信を維持したままシームレスなハンドオーバを実現することが可能となる。
【0063】
端末機能部354は、基地局120に対してPHS端末110として機能する。中継局130は、図5に示すように端末機能部354を例えば4つ備え、それぞれが独立して基地局120と接続する。4つの端末機能部354は、1つの基地局120と接続することも、複数の基地局120にそれぞれ接続することも可能である。4つの端末機能部354には例えばその10倍となる40台程度のPHS端末110を収容することができる。これは1つの端末機能部354のリソースで複数のPHS端末110の通信を時間方向および帯域方向に分割して許容できるからである。従って、当該無線通信システム100は、データ通信やVoIP(Voice over Internet Protocol)による音声通信は勿論、リアルタイム通信を要する音声通信にも適用可能である。
【0064】
端末機能部354では、後で詳述するように、中継局130の基地局120に対するハンドオーバが生じたとしても複数の端末機能部354それぞれのハンドオーバ時点を重畳させず、順次切り換える。従って、1つの端末機能部354がその切り換え時点において無線通信が途切れたとしても、他の端末機能部354と基地局120との無線通信が途切
れていないので、PHS端末110と基地局120との通信を維持することができ、シームレスなハンドオーバが可能となる。
【0065】
また、端末機能部354は、基地局120とPHS端末110との間で用いられる無線通信方式、ここでは、WiMAXによって基地局120と無線通信を行っている。かかる無線通信方式は、規格範囲内で中継局用に特化されたMACフィジカルレイヤで構成される。
【0066】
かかる構成により、中継局130と基地局120との間の無線通信方式を新たに準備する必要が無くなり、PHS端末110の処理負荷および設備コストを削減することができる。また、中継局130の端末機能部354は移動体内のPHS端末110と同等の状況に置かれるので、PHS端末110に代わって通信品質等を推測し、かつPHS端末110にその情報を伝達することが可能となる。
【0067】
基地局機能部356は、PHS端末110に対して基地局として機能する。基地局機能部356は、図5に示すように基本的に1つで構成され、移動体内の全てのPHS端末110との通信を担う。また、船舶、航空機等のある程度広い空間に適用される場合、複数で構成することもできる。かかる基地局機能部356により、移動体内における1または複数のPHS端末110は、実際には中継局130と接続されているものの、あたかも基地局120に接続されているが如く通信を維持することができる。
【0068】
位置登録情報制御部358は、基地局機能部356に接続しているPHS端末110のMACアドレス、IPアドレス、位置登録情報の管理を行う。また、本実施形態では、PHS端末110との接続先が基地局120であっても中継局130であっても、PHS端末110からの無線通信方式が等しくなるように、中継局130では、モバイルIPの外部エージェント(Foreign Agent)として機能する。
【0069】
図8は、モバイルIPによるデータ転送のイメージを示した説明図である。図8(a)では、PHS端末110が基地局120と直接通信を行っている。ここで、PHS端末110はホームエージェント(Home Agent)370に対してモバイルIPによってカプセル化されたIPデータをデータ転送している。図8(b)では、PHS端末110は中継局130を介して基地局120に接続されている。ここで、PHS端末110は、中継局130に対して図8(a)同様の転送を行うが、中継局130と基地局120との間では外部エージェントを特定するFAアドレスが用いられる。従って、中継局130と基地局120および基地局120とホームエージェント370との間は、カプセル化されたFAアドレスとIPデータとが転送される。位置登録情報制御部358は、このような中継局130のFAアドレスの管理も遂行する。
【0070】
また、中継サーバ150に対して中継局130もPHS端末110同様、移動が前提となるので、中継局130も中継サーバ150に位置登録される。従って、中継局130を介して基地局120と接続されるPHS端末110は、当該基地局120に対して中継局130の下位の端末として位置登録される。
【0071】
チャネル情報制御部360は、PHS端末110と基地局機能部356との通信品質に応じて両者間のQoSを制御すると共に、そのQoSを維持できるように端末機能部354と基地局120とのQoSも制御する。
【0072】
認証情報制御部362は、基地局機能部356に対する認証(AAA:Authentication(認証)、Authorization(認可)、Accounting(アカウンティング))サーバとして機能し
、PHS端末110への認証情報の転送を行う。
【0073】
(無線通信方法)
次に、PHS端末110と、基地局120と、中継局130とを用いて無線通信を実行する無線通信方法を詳細に説明する。ここでは、中継局130の動作を、(1)中継局130の登録、(2)中継局130のハンドオーバ、(3)PHS端末110における中継局130との無線確立、(4)PHS端末110における中継局130からの離脱、に分けて説明する。
【0074】
図9は、(1)中継局130の登録処理を説明するための説明図である。特に図9(a)には中継局130と基地局120の位置関係を、図9(b)には中継局130の登録処理を示したシーケンス図を表す。
【0075】
まず、中継局130の接続制御部352は、中継局内の各端末機能部354(354A、354B)に起動要求を行い(S400)、各端末機能部354A、254Bは、キャリアセンスを実行し、それぞれが通信品質の高い基地局120と独立して無線通信を確立する(S402)。
【0076】
各端末機能部354A、354Bは、基地局120との無線通信が確立されるとその完了通知を接続制御部352に送信する(S404)。接続制御部352は、完了通知に含まれるMACアドレス、IPアドレス、基地局処理能力(Capabilitiy)を位置登録情報
制御部358に送信し(S406)、また、認証キー、その認証キーの有効期限を認証情報制御部362に送信する(S408)。このような接続情報は、定期的に各端末機能部354から接続制御部352に通知され(S410)、その内容に応じて中継局130のハンドオーバがなされる。
【0077】
図10は、(2)中継局130のハンドオーバ処理を説明するための説明図である。特に図10(a)には中継局130と基地局120の位置関係を、図10(b)には中継局130のハンドオーバ処理を示したシーケンス図を表す。
【0078】
中継局130は端末機能部354A、354Bを通じて基地局120Aと通信を実行している(S450)。接続制御部352は、端末機能部354から定期的な接続情報の通知を受け(S452)、中継局130の移動によって現在接続されている基地局120Aとの通信の維持が困難になると、接続制御部352は、他の基地局120Bへのハンドオーバを試みる。かかるハンドオーバ時には、端末機能部354A、354Bを一度に切り換えず、タイミングをずらして順次切り換えている。
【0079】
まず、接続制御部352は、基地局120Aに接続されている2つの端末機能部354A、354Bのうち一方の端末機能部354Aのみにハンドオーバ指示を行い(S454)、端末機能部354Aは、基地局120Aにハンドオーバ要求を行う(S456)。
【0080】
ハンドオーバ要求を受信した基地局120Aは、中継サーバ150を介して切換先の基地局120Bに端末情報を通知し(S458)、また、端末機能部354Aに対してハンドオーバ応答を返信する(S460)。そして端末機能部354Aは、新たな接続先である基地局120Bに接続要求を行い(S462)、その接続応答(S464)をもって端末機能部354Aと基地局120Bとの通信接続が確立する(S466)。端末機能部354Aはハンドオーバが完了したことを接続制御部352に伝達する(S468)。
【0081】
接続制御部352は、端末機能部354Aのハンドオーバが完了すると、続いて端末機能部354Bへハンドオーバ要求を行う。かかるハンドオーバの動作は対象が端末機能部354Bであることを除いて、端末機能部354Aの処理(S454〜S468)と実質
的に等しいので、ここではその説明を省略する。
【0082】
接続制御部352は、端末機能部354Aおよび354Bのハンドオーバが完了すると、そのときの接続情報を位置登録情報制御部358および認証情報制御部362に送信する(S470)。
【0083】
上述したように、本実施形態における中継局130のハンドオーバでは、全ての端末機能部354が同時にハンドオーバを行わず、そのタイミングをずらして実施されるので、中継局130全体として通信が途切れることなく、安定した無線通信が可能となる。
【0084】
図11は、(3)PHS端末110における中継局130との無線確立処理を説明するための説明図である。特に図11(a)には中継局130、基地局120、PHS端末110の位置関係を、図11(b)にはPHS端末110における中継局130との無線確立処理を示したシーケンス図を表す。
【0085】
PHS端末110は既に基地局120と無線通信を確立している(S500)。このとき基地局120は、自局に属している中継局130の基地局機能部356を隣接する基地局120としてPHS端末110に報知する(S502)。PHS端末110は、その情報に基づいて基地局機能部356から送信されている報知情報を取得し(S504)、ハンドオーバの準備を行う。PHS端末110は、基地局120からの隣接情報によりハンドオーバのタイミングを図ることができ、移動体内へのスムーズなハンドオーバが可能となる。
【0086】
PHS端末110は、基地局機能部356からの報知情報を通じて中継局130にキャリアセンスを行い、基地局機能部356からの電界強度が所定値以上であれば基地局120に対してハンドオーバ要求を行う(S506)。このとき、対象となる中継局130は移動体等の限られた空間での通信となるので、所定値を通常の基地局120に対する閾値より高い値に設定することができる。
【0087】
基地局120は、PHS端末110からハンドオーバ要求を受けて、中継サーバ150にハンドオーバを指示し、中継サーバ150の確認をとるとそのハンドオーバ要求が中継局130の端末機能部354を通じて接続制御部352に伝達される(S508)。そして、接続制御部352は、基地局機能部356にPHS端末110からの接続要求が到来するのを待機する(S510)。
【0088】
PHS端末110は、基地局120からのハンドオーバ応答(S512)に応じ、中継局130の基地局機能部356を通じて接続制御部352に接続要求を行い(S514)、接続制御部352は、PHS端末110に対して準備完了応答を行う(S516)。基地局機能部356は、準備完了応答に応じ、チャネル情報制御部360に対してチャネル確保要求を行い(S518)、チャネル情報制御部360は端末機能部354におけるチャネルの確保を実行する(S520)。こうしてPHS端末110と中継局130および中継局130と基地局120との無線通信が確立され(S522)、PHS端末110は通常の基地局120同様の無線通信を遂行することが可能になる。
【0089】
そして、接続制御部352は、位置推定部350によってPHS端末110が移動体内に存在することを確認すると、通信品質の高いQoSを選択させ、消費電力を低減し、さらに、PHS端末110のハンドオーバの閾値を高めてハンドオーバを抑制する(S524)。
【0090】
図12は、(4)PHS端末における中継局からの離脱処理を説明するための説明図で
ある。特に図12(a)には中継局130、基地局120、PHS端末110の位置関係を、図12(b)にはPHS端末における中継局からの離脱処理を示したシーケンス図を表す。
【0091】
PHS端末110は既に中継局130と無線通信を確立しており、かつ中継局130は基地局120との無線通信を確立している(S550)。このとき、位置推測部350は、基地局機能部356に微弱な定量信号を発信させ(S552)、PHS端末110は、中継局130から発信されたこの定量信号の電波強度を所定時間間隔で測定し(S554)、電波強度情報として中継局130に返信する(S556)。かかる電波強度情報は、位置推定部350によって解析される(S558)。
【0092】
ここで、電波強度情報に示された電波強度が、所定値以下または電波強度が所定変動幅を逸脱していると位置推定部350が判断した場合、電波強度の著しい劣化があったと見なし、即ち、PHS端末110が当該移動体160から離脱したと見なして、接続制御部352にその旨伝達する(S560)。接続制御部352は、基地局機能部356を通じてPHS端末110に対してハンドオーバ要求を行う(S562)。このとき、ハンドオーバ要求には自局が無線通信を確立している基地局120へのハンドオーバを候補とするように促し、移動性の高いQoSを選択させ、消費電力を通常に戻す。ここでは、ハンドオーバ要求をする際、自局と無線通信を確立している基地局120をハンドオーバ候補としているが、かかる場合に限られず、他の基地局を選択するように要求することもできるし、PHS端末110にハンドオーバ先の基地局を選択するように要求することも可能である。
【0093】
また、PHS端末110と中継局130とが通信をしている場合に、中継局130がPHS端末110にハンドオーバを要求する際のハンドオーバ基準は、基地局120とPHS端末110とが通信している場合に他の基地局へとハンドオーバする際のハンドオーバ基準とは異なるとしてもよい。さらに、PHS端末110と基地局120とが通信をしている場合に、他の基地局へとハンドオーバする際のハンドオーバ基準は、PHS端末110と基地局120とが通信している場合に中継局130へとハンドオーバする際のハンドオーバ基準とは異なるとしてもよい。
【0094】
また、接続制御部352は、並行して基地局120にハンドオーバに必要なPHS端末110の情報を送信する(S564)。基地局120は、中継局130からのハンドオーバ要求を受けて、中継サーバ150にハンドオーバを指示し、中継サーバ150の確認を得て、PHS端末110からの接続要求待ち状態になる(S566)。
【0095】
PHS端末110は、基地局120から送信される報知情報を取得し(S568)、ハンドオーバの準備を行う。PHS端末110は、この報知情報を通じて基地局120にキャリアセンスを行い、基地局120からの電界強度が所定値以上であれば、そのまま基地局120をハンドオーバ先とし、ハンドオーバ応答を中継局130に返信する(S570)。
【0096】
PHS端末110は、基地局120に接続要求を送信し(S572)。基地局120は、PHS端末110からの接続要求を受けて、PHS端末110に接続応答を返信する(S574)。こうしてPHS端末110と基地局120との無線通信が確立される(S576)。基地局機能部356は、ハンドオーバ応答に応じ、チャネル情報制御部360に対してチャネル解放要求を行い(S578)、チャネル情報制御部360は端末機能部354におけるチャネルの解放を実行する(S580)。
【0097】
かかる無線通信方法においても、PHS端末110の位置を把握し安定した通信品質を
確保すると共に、無線通信を維持したままシームレスなハンドオーバを実現することが可能となる。
【0098】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0099】
上述した実施形態では、PHS端末等を挙げて無線通信端末を説明したが、必ずしもPHS端末に限定されるわけではない。例えば、OFDM方式やOFDMA方式を用いた高速デジタル無線通信(例えば、WiMAX、次世代PHS等)により本無線通信システムを構築することは可能であり、その場合に無線通信端末や中継局はOFDM方式やOFDMA方式に対応した通信機能を持たせることとなる。
【0100】
なお、本明細書の無線通信方法における各工程は、必ずしもシーケンス図として記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、無線通信端末と基地局との通信を中継可能な中継局、無線通信システムおよび無線通信方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0102】
110…PHS端末(無線通信端末)
120…基地局
130…中継局
160…移動体
350…位置推定部
352…接続制御部
354…端末機能部
356…基地局機能部
358…位置登録情報制御部
360…チャネル情報制御部
362…認証情報制御部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信端末と基地局との通信を中継可能な中継局であって、
前記無線通信端末と基地局との通信を中継している場合に、該無線通信端末と自局との通信品質を監視する監視部と、
前記監視した結果に応じて、前記無線通信端末と基地局とが自局を介さずに通信するように前記無線通信端末を制御する接続制御部と、
を備えることを特徴とする中継局。
【請求項2】
前記中継局は、人が乗降可能な移動体に設置され、
前記監視部の監視結果に応じて前記無線通信端末の位置を推定する位置推定部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の中継局。
【請求項3】
前記位置推定部は、前記通信品質を示す値が所定値以上かつ該通信品質が所定変動幅内で安定しているときに前記無線通信端末が前記移動体内に存在すると判断することを特徴とする請求項2に記載の中継局。
【請求項4】
前記接続制御部は、前記無線通信端末が前記移動体内に存在するとき通信品質の高いQoSを、前記無線通信端末が前記移動体外に存在するとき移動性の高いQoSを選択させることを特徴とする請求項2または3に記載の中継局。
【請求項5】
前記接続制御部は、前記無線通信端末が前記移動体内に存在するときハンドオーバの抑制を指示し、前記無線通信端末が前記移動体外に存在するとき自局以外の基地局へのハンドオーバを指示することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の中継局。
【請求項6】
前記接続制御部は、前記無線通信端末が前記移動体外に存在するとき自局が無線通信を遂行している基地局へのハンドオーバを指示することを特徴とする請求項5に記載の中継局。
【請求項7】
前記基地局に対して無線通信端末として機能する端末機能部と、
前記無線通信端末に対して基地局として機能する基地局機能部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の中継局。
【請求項8】
前記端末機能部は、前記基地局と無線通信端末との間で用いられる無線通信方式によって前記基地局と無線通信を行うことを特徴とする請求項7に記載の中継局。
【請求項9】
無線通信端末と、該無線通信端末と無線通信を行う基地局と、該無線通信端末と該基地局との通信を中継可能な中継局とを備える無線通信システムであって、
前記無線通信端末は、
前記基地局または中継局と無線通信を確立する端末無線通信部と、
前記中継局からのハンドオーバ基準に従って、ハンドオーバを要求するハンドオーバ要求部と、
を備え、
前記中継局は、
前記無線通信端末と基地局との通信を中継している場合に、該無線通信端末と自局との通信品質を監視する監視部と、
前記監視部の監視結果に応じて前記無線通信端末の位置を推定する位置推定部と、
前記無線通信端末の位置に応じて、該無線通信端末との無線通信のQoSを切り換え、該無線通信端末のハンドオーバ基準を切り換えさせる接続制御部と、
を備え、
前記基地局は、
前記無線通信端末からのハンドオーバ要求に応じて、前記中継局と自局とのハンドオーバを実行する基地局無線通信部を備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項10】
無線通信端末と、該無線通信端末と無線通信を行う基地局と、該無線通信端末と該基地局との通信を中継可能な中継局とを用いて無線通信を実行する無線通信方法であって、
前記無線通信端末は、前記中継局と無線通信を確立し、
前記中継局は、該無線通信端末の通信品質を監視して該無線通信端末の位置を推定し、
前記中継局は、前記無線通信端末の位置に応じて、該無線通信端末との無線通信のQoS切り換え、該無線通信端末のハンドオーバ基準を切り換えさせ、
前記無線通信端末は、前記中継局からのハンドオーバ基準に従って、指示された基地局へのハンドオーバ要求を実行し、
前記基地局は、前記無線通信端末からのハンドオーバ要求に応じて、前記中継局から自局へのハンドオーバを実行することを特徴とする無線通信方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−143005(P2012−143005A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−100104(P2012−100104)
【出願日】平成24年4月25日(2012.4.25)
【分割の表示】特願2008−114689(P2008−114689)の分割
【原出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】