説明

中継用導波管

【課題】本発明においては、接続部の位置及び角度の調整が可能であり、従来型のものに比べて、生産性が良く、同時に強度においても優れた中継用導波管を提供する。
【解決手段】中継用導波管の管状部の管壁の外表面に、長さ方向の略中央の位置で、管軸方向と略垂直の方向に延びる断面形状が略V字状のV字溝40(第1の溝)を設け、V字溝40が設けられた管壁と対向する管壁の外表面に、V字溝40と平行に、断面形状が倒コ字状の凹溝50を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波等の伝送に使用される導波管を配管する際に用いられるものであり、一対の導波管の接続を可能とする中継用導波管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
導波管を組み合わせて立体回路を構成する場合に、各導波管の製作誤差、或は組み立て誤差等を補う目的として、従来から、ベローズ形状の導波管が使用されていた(図9参照)。
また、ベローズ形状の導波管よりも生産性において優れるものとして、管壁の外表面に複数個の溝を設けることによって、接続部の位置及び角度の調整が可能となっている導波管も使用されていた(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】実公昭41−018451号公報
【特許文献2】実公昭45−018273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ベローズ形状の導波管にあっては、生産効率が高いとは言えず、特許文献1及び特許文献2に記載されている導波管にあっても、ベローズ形状の導波管に比して生産性において有利であるものの、管状部全体に、溝を複数個設ける必要があり、特に、溝が多数設けられる場合には、管壁に厚みが薄い部分が連続して形成されることとなり、導波管の強度の確保が難しいものであった。
本発明は、上記の点に鑑み、接続部の位置及び角度の調整が可能で、生産性が良く、同時に強度においても優れた中継用導波管を提供すること、を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の中継用導波管は、一対の導波管の接続を可能とするものであって、前記一対の導波管の管路と同じ形で同じ大きさの管路を有する管状部と、前記管状部の両端の開口部に設けられ、前記一対の導波管に接続される接続部とを有しており、前記管状部は、折曲可能な構造に成形されており、前記管状部が折り曲げられた際に谷部となる側の管壁の外表面に、管軸方向と所定の角度をなし、断面形状が略V字状である第1の溝が設けられ、前記管状部が折り曲げられた際に山部となる側の管壁の外表面に、管壁を延伸させるための第2の溝が、前記第1の溝と平行に、設けられている。このように、管状部の管壁の外表面に溝が設けられ、この溝に沿って管状部を折曲することにより、接続部の位置及び角度の調整が可能であり、また、各管壁の所定の箇所にのみ溝が形成されることから、従来に比べ、生産性がよく、全体の強度も確保される。
【0005】
また、ある実施の態様では、前記管状部は4つの管壁により断面矩形状に形成されており、前記第1の溝は、前記4つの管壁のそれぞれの外表面に1つずつ、隣接する管壁の溝同士の端部が一致しない配置で設けられ、前記第2の溝は、前記第1の溝の設けられた管壁に対向する管壁の外表面に、前記第1の溝と平行に設けられている。このように、前記4つ管壁のそれぞれの外表面に第1の溝が設けられることから、接続部は第1の溝に応じた複数方向への位置及び角度の調整が可能となり、また、各溝は、その位置を異ならせ、連続しないように設けられていることから、中継用導波管の強度を確保される。
【0006】
また、ある実施の態様では、前記管状部は4つの管壁により断面矩形状に形成されており、前記第1の溝は、前記4つの管壁のうち1つの管壁の外表面にのみ設けられ、前記第2の溝は、前記第1の溝の設けられた管壁に対向する管壁の外表面に、前記第1の溝と平行に設けられている。このように、前記第1の溝が設けられるのは、管状部の一つの管壁の外表面のみであり、前記第2の溝もそれに対向する管壁の外表面にのみ設けられることから、従来に比べて、生産性が良く、また、溝によって管壁が薄くなってしまう箇所が少なく、中継用導波管全体の強度が確保される。
【0007】
また、ある実施の態様では、前記管状部が折り曲げられた際に、折曲部位によって二分される前記管状部の2つの部分のうち、一方の部分と、他方の部分とを連結固定して、前記管状部を、曲げられた状態で保持する保持機構が設けられている。この保持機構によって、管状部を所定の角度で固定することができ、また、中継用導波管全体の強度も増すこととなる。
【0008】
さらに、ある実施の態様では、溝に、離脱可能な溝充填材が埋設されることから、溝部の厚みが補充され、中継用導波管の強度が増すこととなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、接続部の位置及び角度の調整が可能であり、さらに、従来型のものに比べて、生産性が良く、同時に強度においても優れているものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態例を説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1乃至図4を参照して、第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態による中継用導波管の側面図である。図2の(a)は、断面図であり、(b)は、A−A部分拡大図である。図3の(a)は、第1実施形態による中継用導波管の折り曲げられた状態の断面図あり、(b)は、B−B部分拡大図である。図4は、折り曲げられ、他の導波管と接続された状態の側面図である。
【0012】
本実施形態における中継用導波管は、管状部20が4つの管壁により断面矩形状に形成されており、その両端の開口部の外周に接続部30を設けたものである。材質は、銅等の容易に変形することのできる金属である。なお、以下において、前記4つの管壁のうち、上面と下面に相当する幅の広い管壁の外表面をE面と、側面に相当する幅の狭い管壁の外表面をH面と言う。図1においては、H面の一つが正面を向いている。
【0013】
図1及び図2を参照して、本実施形態に係る中継用導波管の構成を説明する。
本実施形態においては、一つのE面(図1においては、上面側の管壁の外表面)と一つのH面(図1においては、正面側の管壁の外表面)とに、長さ方向の略中央の位置で、管軸方向と略垂直の方向に延びるV字溝40(第1の溝)が設けられている。V字溝40の溝の内側面のなす角度θ(図2の(b)参照)は任意の角度とすることができるが、本実施形態においては、中継用導波管が曲げられる角度と同じ角度とする。なお、この第1の溝は断面形状が略V字状であれば良く、本実施形態では、V字状としているが、角部がやや丸みを帯びたものなど、V字状に近似したその他の断面形状とすることも可能である。
【0014】
さらに、V字溝40が設けられた管壁と対向する管壁の外表面には、V字溝40と平行に、断面形状が倒コ字状の凹溝50(第2の溝)が設けられている。なお、この第2の溝は管壁の厚みを薄くするものであれば良く、倒コ字状以外の断面形状のものとすることも可能である。
【0015】
次に、図3及び図4を参照して、本実施形態の中継用導波管の使用態様を説明する。ここでは、配管後に端部の位置がずれた導波管同士を接続する場合の例を挙げる。
本実施形態の中継用導波管を使用する場合には、V字溝40が設けられた箇所に力を加え、同時に両端の接続部にはそれと逆の方向の力を加えることにより、管状部20を折り曲げる。その際、V字溝40の設けられた管壁は谷部を形成し、凹溝50の設けられた管壁は山部を形成する。接続される導波管の接続部の位置及び角度に応じて、管状部20の折曲角度を変え、接続部30の位置及び角度の調整を行う。このとき、本実施形態のように、V字溝40の溝の内側面のなす角度θを管状部20が曲げられる角度と同じ角度とすると、V字溝40の溝の内側面の上端部40aが、相互に当接することにより、管状部20の曲がり幅をロックするロック機構として働くこととなる(図2の(b)及び図3の(b)参照。)。
【0016】
接続部30の位置及び角度の調整を行った後に、本実施形態の中継用導波管の接続部と、接続される他の導波管の接続部とを突き合わせて、両者に設けられた貫通孔にボルトを挿入しナットを螺合して固定することにより、中継用導波管と他の導波管とを連結する(図4参照。)。
【0017】
この第1実施形態の中継用導波管によれば、管状部の管壁の外表面に溝が設けられたので、この溝に沿って管状部を折曲することにより、接続部の位置及び角度の調整が可能であり、また、管壁全体ではなく、各管壁の所定の箇所にのみ溝が形成されることから、従来型のものに比べて、生産性がよく、全体の強度も確保されるという効果が得られる。
【0018】
なお、本実施形態では、既に端部の位置のずれてしまった導波管同士を接続するために用いる例を挙げたが、この中継用導波管は、通常の導波管と同様に、端部の位置がずれていない導波管同士を接続する場合にも用いることが出来る。その場合には、接続後に、中継用導波管が接続された導波管の位置がずれてしまった場合であっても、中継用導波管が折曲することにより、そのずれを吸収し、接続部が外れてしまうことなどを防止することが出来る。
【0019】
(第2実施形態)
次に、図5を参照して、第2実施形態について説明する。
図5は、第2実施形態の中継用導波管の斜視図である。この第2実施形態においては、E面及びH面に、それぞれの面毎に位置をずらして、端部が連続しないように、第1のV字溝41、第2のV字溝42、第3のV字溝43及び第4のV字溝44を設ける。その他の構成は前記第1実施形態と同様であり、図中、第1実施形態との対応部分には、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0020】
このように、第2実施形態によれば、管状部の全ての管壁の外表面にV字溝が設けられることから、V字溝の数に応じた複数の方向に接続部の角度を変化させることができるという効果が得られる。また、溝が、管軸方向で位置を異ならせて設けられ、管状部の全周に亘って連続することがないため、溝によって管壁が薄くなってしまう箇所が連続することがなくなり、中継用導波管全体の強度が確保されるものである。
【0021】
(第3実施形態)
次に、図6を参照して、第3実施形態について説明する。
図6は、第3実施形態の中継用導波管の斜視図である。この第3実施形態においては、E面又はH面の4つの面のいずれか一面のみに、V字溝40を設け、V字溝40が設けられた管壁と対向する管壁の外表面に、V字溝40と平行に、断面形状が倒コ字状の凹溝50を設ける。その他の構成は前記第1実施形態と同様であり、図中、第1実施形態との対応部分には、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0022】
このように、第3実施形態によれば、接続部の角度及び位置を調整できるのみならず、V字溝が設けられるのは、管状部の一つの管壁の外表面のみであり、凹溝もそれに対向する管壁の外表面にのみ設けられることから、従来型のものに比べて、生産性が良く、また、溝によって管壁が薄くなってしまう箇所が少なく、中継用導波管全体の強度が確保されるという効果が得られる。
【0023】
(第4実施形態)
次に、図7を参照して、第4実施形態について説明する。
図7は、第4実施形態の中継用導波管の斜視図である。この第4実施形態においては、管状部20が折り曲げられた際に、折曲部位によって二分される管状部20の2つの部分のうち、一方の部分20aと、他方の部分20bとを連結固定して、管状部20を、曲げられた状態で保持する保持機構60を設ける。保持機構60は、管状部20の二分された部分20a、20bにそれぞれ取り付けられる固定部61と、固定部61を連結する連結部材62と、連結部材62を固定部61に固定するためのボルト63から構成される。本実施形態のその他の構成は前記第1実施形態と同様であり、図中、第1実施形態との対応部分には、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0024】
このように、第4実施形態によると、第1実施形態の効果に加えて、保持機構によって、管状部を所定の角度で固定することができ、また、中継用導波管全体の強度がさらに増すという効果が得られる。
【0025】
(第5実施形態)
さらに、図8を参照して、第5実施形態について説明する。
図8は、第5実施形態の中継用導波管の断面図である。この第5実施形態においては、V字溝40と凹溝50とに、溝充填材70a、70bが、離脱自在に埋設されている。本実施形態のその他の構成は前記第1実施形態と同様であり、図中、第1実施形態との対応部分には、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0026】
このように、第5実施形態によると、溝充填材によって、溝部の厚みが補充されることから、溝によって管壁の強度が下がるのを防止し、また、管状部の意図しない折り曲がりを防止することができる。なお、管状部を折曲する際には、必要な箇所の溝充填材を剥離し、容易にV字溝を再形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態による中継用導波管の側面図である。
【図2】(a)は、第1実施形態による中継用導波管の断面図であり、(b)は、A−A部分拡大図である。
【図3】(a)は、第1実施形態による中継用導波管の折り曲げた状態の断面図であり、(b)は、B−B部分拡大図である。
【図4】第1実施形態による中継用導波管が他の導波管と接続された状態の側面図である。
【図5】第2実施形態による中継用導波管の斜視図である。
【図6】第3実施形態による中継用導波管の斜視図である。
【図7】第4実施形態による中継用導波管の斜視図である。
【図8】(a)は、第5実施形態による中継用導波管の断面図であり、(b)は、C−C部分拡大図である。
【図9】(a)は、従来の導波管の側面図であり、(b)は、断面図である。
【符号の説明】
【0028】
10 中継用導波管
20、200 管状部
20a、20b 折曲部位によって二分された管状部の部分
30、300 接続部
40、41、42、43、44 V字溝
40a V字溝の内側面の上端部
50 凹溝
60 保持機構
61 固定部
62 連結部材
63 ボルト
70a、70b 溝充填材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の導波管の接続を可能とする中継用導波管であって、
前記一対の導波管の管路と同じ形で同じ大きさの管路を有する管状部と、
前記管状部の両端の開口部に設けられ、前記一対の導波管に接続される接続部とを有しており、
前記管状部は、折曲可能な構造に成形されており、
前記管状部が折り曲げられた際に谷部となる側の管壁の外表面に、管軸方向と所定の角度をなし、断面形状が略V字状である第1の溝が設けられ、
前記管状部が折り曲げられた際に山部となる側の管壁の外表面に、管壁を延伸させるための第2の溝が、前記第1の溝と平行に、設けられている、
中継用導波管。
【請求項2】
前記管状部は4つの管壁により断面矩形状に形成されており、前記第1の溝は、前記4つの管壁のそれぞれの外表面に1つずつ、隣接する管壁の溝同士の端部が一致しない配置で設けられ、前記第2の溝は、前記第1の溝の設けられた管壁に対向する管壁の外表面に、前記第1の溝と平行に設けられている、
請求項1に記載の中継用導波管。
【請求項3】
前記管状部は4つの管壁により断面矩形状に形成されており、前記第1の溝は、前記4つの管壁のうち1つの管壁の外表面にのみ設けられ、前記第2の溝は、前記第1の溝の設けられた管壁に対向する管壁の外表面に、前記第1の溝と平行に設けられている、
請求項1に記載の中継用導波管。
【請求項4】
前記管状部が折り曲げられた際に、折曲部位によって二分される前記管状部の2つの部分のうち、一方の部分と、他方の部分とを連結固定して、前記管状部を、曲げられた状態で保持する保持機構が設けられている、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の中継用導波管。
【請求項5】
前記第1の溝及び前記第2の溝に、溝充填材が離脱自在に埋設されている、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の中継用導波管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−278594(P2009−278594A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130718(P2008−130718)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(000219004)島田理化工業株式会社 (205)
【Fターム(参考)】