説明

中継装置および通信システム

【課題】ネットワークを介して、無線通信機の特性を活かした通信の中継を可能にした通信システムを提供する。
【解決手段】
データ伝送網であるネットワークと、ネットワークに接続された複数の中継装置と、複数の中継装置に各々接続された複数の中継用トランシーバと、を備え、中継装置は、ネットワークから入力される音声パケットを受信して中継用トランシーバに入力するとともに、その音声パケットの信号レベルがしきい値以上のとき中継用トランシーバにPTT信号出力する。また、中継用トランシーバから入力されたオーディオ信号を、予め定められた宛先アドレスを付した音声パケットとしてネットワークに出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トランシーバの通信をネットワークで中継するための中継装置および通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークを介してリアルタイムに音声信号を伝送する手順として一般的に用いられるRTP(Real−time Transport Protocol:リアルタイム・トランスポート・プロトコル)は、通常、呼制御手順であるSIP(Session
Initiation Protocol:セッション・イニシエーション・プロトコル)と組み合わされてIP電話等のVoIP(Voice over Internet
Protocol:ボイス・オーバー・インターネット・プロトコル)技術に適用されている(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4074633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、無線通信機(トランシーバ)による通信をネットワークで中継したいという要請がある。これにより、小電力のトランシーバで広域の通信を行うことができるうえ、外界から電波の届きにくい場所にある通信機との通信も可能になる。
【0005】
しかし、SIPを用いたVoIP技術では、呼手順を用いて特定の相手を呼び出したのち音声パケット送受信を開始するため、手順が面倒であるうえ相手を呼び出すまでに時間が掛かり、無線通信の特性である即時性、即応性に欠けるという問題点があった。また、
SIPを遮断するルータやファイアウォールを越えた中継ができないという問題点もあった。
【0006】
この発明は、ネットワークを介して、無線通信機の特性を活かした通信の中継を可能にした中継装置および通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明である中継装置は、データ通信網であるネットワークに接続されるネットワークインタフェースと、半二重無線通信機であるトランシーバが接続される無線機インタフェースと、前記ネットワークインタフェースから入力される音声パケットを受信する音声パケット受信部と、前記音声パケット受信部が受信した音声パケットをオーディオ信号に変換して前記無線機インタフェースを介して出力するデコード部と、前記音声パケット受信部が音声パケットを受信しているとき、または、前記オーディオ信号のレベルが第1のしきい値を超えているとき、前記トランシーバを送信モードに切り換える信号であるPTT信号を前記無線機インタフェースを介して出力するPTT制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、音声パケットの送信先のアドレスを記憶した記憶部と、前記無線機インタフェースから入力されたオーディオ信号をパケット化し、前記アドレスを宛先アドレスとして付した音声パケットを作成して前記ネットワークインタフェースを介して出力する音声パケット送信部と、をさらに備え、
前記PTT制御部は、前記無線機インタフェースから入力されたオーディオ信号のレベルが第2のしきい値を超えているとき、または、前記無線インタフェースから前記オーディオ信号の転送を指示する信号(スケルチ解除信号,PTT信号等)が入力されたときPTT信号を出力しないことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記音声パケット送信部は、前記無線機インタフェースから入力されたオーディオ信号のレベルが前記第2のしきい値を超えているときのみ、前記音声パケットを作成して前記ネットワークインタフェースを介して出力することを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記記憶部は、送信先のアドレスとして、マルチキャストアドレスを記憶していることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1〜4の発明において、前記音声パケット受信部が、特定の音声パケットを受信したとき、前記PTT制御部は、前記無線機インタフェースからいかなる信号が入力されているかにかかわらず、PTT信号を出力することを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記特定の音声パケットは、予め設定されている優先ポート番号宛の音声パケットであることを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明である通信システムは、データ伝送網であるネットワークと、該ネットワークに接続された複数の中継装置であって、請求項2乃至請求項6のいずれかに記載されたものと、前記複数の中継装置の無線機インタフェースに各々接続され、受信したオーディオ信号を前記中継装置に出力するとともに、前記中継装置から前記音声パケットから変換されたオーディオ信号および前記PTT信号を入力する複数の中継用トランシーバと、を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項8の発明である通信システムは、データ伝送網であるネットワークと、該ネットワークに接続された複数の中継装置であって、請求項5または請求項6に記載されたものと、前記複数の中継装置の無線機インタフェースに各々接続され、受信したオーディオ信号を前記中継装置に出力するとともに、前記中継装置から前記音声パケットから変換されたオーディオ信号および前記PTT信号を入力する複数の中継用トランシーバと、を備え、前記複数の中継装置の少なくとも1台の音声パケット送信部が、前記特定の音声パケットを送信することを特徴とする。
【0015】
請求項9の発明は、請求項7,8の発明において、前記複数の中継装置の一部または全部の無線機インタフェースに、中継用トランシーバに代えて、マイクおよびスピーカが接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、ネットワークを介して無線通信機の特性を活かした即時性、即応性のある通信の中継が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施形態である通信システムの構成図である。
【図2】通信システムの中継装置のブロック図である。
【図3】中継装置の記憶部の記憶内容を示す図である。
【図4】中継装置の制御部の動作を示すフローチャートである。
【図5】この発明の他の実施形態である通信システムの構成図である。
【図6】通信システムの中継装置のブロック図である。
【図7】中継装置の記憶部の記憶内容を示す図である。
【図8】中継装置2の制御部の動作を示すフローチャートである。
【図9】複数のユニットを備えたマルチチャンネルの中継装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を参照してこの発明の通信中継装置および通信システムについて説明する。
図1は、この発明の実施形態である通信システムの構成図である。この通信システムは、ネットワーク1を介して無線通信機であるトランシーバ4,5の通信を中継するシステムである。ネットワーク1はたとえばEthernet(登録商標)で構成されるLANやインターネットが適用可能である。このネットワーク1に複数の中継装置2(2−1,2−2)が接続されている。各中継装置2(2−1,2−2)には、それぞれトランシーバ3(3−1,3−2)が中継用トランシーバとして接続されている。トランシーバ3−1,3−2は、いわゆるプッシュ・トゥ・トーク(Push to Talk:PTT)形式の無線通信装置であり、通信形態は半二重通信である。なお、トランシーバ3−1、トランシーバ3−2は同じ形式のものである必要はない、すなわち相互に通信可能な形式のものである必要はない。
【0019】
トランシーバ3−1の通信圏内(エリアA)には、1または複数台(図示では2台)のトランシーバ4(4−1,2)が存在している。また、トランシーバ3−2の通信圏内(エリアB)にも、1または複数台(図示では2台)のトランシーバ5(5−1,2)が存在している。トランシーバ3−1とトランシーバ4、および、トランシーバ3−2とトランシーバ5とは相互に通信可能な形式のものである必要がある。
【0020】
この通信システムでは、エリアAのトランシーバ4(4−1,2)が送信した音声信号(通話音声)で変調された電波信号を中継トランシーバ3−1が受信して復調し、復調された音声信号を中継装置2−1、ネットワーク1、中継装置2−2を介して中継用トランシーバ3−2に入力し、中継用トランシーバ3−2がこの音声信号を重畳した電波信号をエリアBのトランシーバ5(5−1,2)に向けて送信する。また、この通信システムでは、逆に、エリアBのトランシーバ5(5−1,2)が送信した電波信号を中継トランシーバ3−2が受信して復調し、復調された音声信号を中継装置2−2、ネットワーク1、中継装置2−1を介して中継用トランシーバ3−1に入力し、中継用トランシーバ3−1がこの音声信号で変調された電波信号をエリアAのトランシーバ4(4−1,2)に向けて送信する。
【0021】
図2は中継装置2のブロック図である。中継装置2は、下流(中継トランシーバ3側)の端部に無線機インタフェース21を備え、上流(ネットワーク1側)の端部にネットワークインタフェース22を備えている。無線機インタフェース21は、中継用トランシーバ3をつなぐケーブルのコネクタやバッファ回路等を有している。ネットワークインタフェース22は、ネットワークの物理層やデータリンク層を担当する回路部である。
【0022】
そして、無線機インタフェース21からネットワークインタフェース22の間に、上り方向に、A/Dコンバータ23、VOX(Voice Operation Transmission)処理部24および音声パケット送信部25が設けられ、下り方向に、音声パケット受信部26、VOX処理部27およびD/Aコンバータ28を備えている。また、中継装置2は、装置全体の動作を制御するマイコンである制御部20を備えている。制御部20は、各種データ等を記憶する記憶部20Aを備えている。
【0023】
図3は記憶部20Aの記憶内容の構成を示す図である。記憶部20Aには、ネットワーク1を介して音声パケットを送受信するための情報である自局IPアドレス、送信先IPアドレス、参加マルチキャストIPアドレス、自局ポート番号、送信先ポート番号などの情報が記憶されている。送信先IPアドレス、送信先ポート番号は特定(1つ)の相手先(中継装置2)に対して音声パケット(RTPパケット)を送信するとき、そのパケットに付される宛先情報である。また、マルチキャストで複数の相手先に対して音声パケットを送信するときは、参加しているマルチキャストグループのIPアドレスである参加マルチキャストIPアドレスおよび送信先ポート番号がRTPパケットに付される。また、中継装置2(音声パケット受信部26)は、自局IPアドレスまたは参加マルチキャストIPアドレス宛且つ自局ポート番号を指定したパケットのみ受信する。
記憶部20Aに記憶される情報および送信時に送信先IPアドレスを用いるか参加マルチキャストIPアドレスを用いるかは予め係員によって設定されている。
【0024】
図2において、無線機インタフェース21と中継用トランシーバ3とは、いわゆるマイクケーブルで接続される。マイクケーブルは、オーディオ入出力信号線、すなわち、中継用トランシーバ3が受信した音声信号を中継装置2に入力するためのスピーカ用信号線、中継装置2から中継用トランシーバ3に向けてオーディオ信号を出力するマイク用信号線、および、PTT信号線を有するケーブルである。
【0025】
ここで、この中継装置2は、汎用性を維持するため、中継用トランシーバ3と特殊な信号のやり取りは行わずマイクケーブルのみで接続される。したがって、マイクケーブルで外部接続可能なトランシーバであれば、どのような機種であってもこの中継装置2に接続して中継用トランシーバ3として使用することが可能である。
【0026】
無線機インタフェース21は、中継用トランシーバ3から入力されたオーディオ信号をA/Dコンバータ23に入力する。A/Dコンバータ23は、入力されたオーディオ信号をデジタル信号に変換してVOX処理部24および音声パケット送信部25に入力する。
【0027】
VOX処理部24は、中継用トランシーバ3から入力されたオーディオ信号のレベルを監視する。オーディオ信号のレベルが所定のしきい値を超えると、上り音声ありとして制御部20に上り転送要求信号を出力する。中継用トランシーバ3から入力されたオーディオ信号のレベルが所定のしきい値を超えた場合、中継用トランシーバ3がトランシーバ4から音声信号を受信して中継装置2に入力してきたと判断されるためである。
【0028】
制御部20は、VOX処理部24から上り転送要求信号が入力されると、その上りの音声信号をネットワーク1に送出するべく、音声パケット送信部25にパケット送信指示信号を出力する。このとき、制御部20は記憶部20Aから宛先情報である送信先IPアドレスや送信先ポート番号等を読み出して音声パケット送信部25に出力する。
【0029】
音声パケット送信部25は、パケット送信を指示する信号および宛先情報が入力されると、A/Dコンバータ23から入力された音声信号を音声パケット化してネットワーク1に送出する。音声パケット送信部25は、入力された音声信号をRTPパケットに分割し、このパケットにRTP/UDP/IPヘッダを付加してネットワークインタフェース22に出力する。このとき、ネットワークから送信先IPアドレス等を取得するのではなく、記憶部20Aに予め記憶されている送信先IPアドレス等を用いるため、中継用トランシーバ3から音声信号が入力されたとき即座にこの音声信号をネットワーク1に送出することが可能である。
【0030】
なお、VOX処理部24による上り音声あり/無しの判定は、チャタリングや誤検出を防止するため、若干の時間幅で行えばよい。また、音声信号を通話音声信号が属する周波数帯域に絞り込んで音声の有無を判定してもよい。
【0031】
VOX処理部24が上り音声の有無を判定するために若干の時間が必要であるため、A/Dコンバータ23と音声パケット送信部25との間に音声信号を遅延させる遅延部を挿入して音声信号と判定結果とのタイムラグを解消するようにしてもよい。
【0032】
音声パケット受信部26は、ネットワーク1からの音声パケットの受信を常時監視しており、ネットワーク1から受信したパケットのうち自局IPアドレスまたは参加マルチキャストIPアドレス宛、且つ、この通信用に開けている自局ポート番号宛のパケットを選別して受信する。音声パケット受信部26は、音声パケットを受信すると、その旨を制御部20に入力するとともに、この音声パケットを結合して音声信号(ストリーム信号)を復調する。この音声信号はVOX処理部27およびD/Aコンバータ28に入力される。D/Aコンバータ28は、入力されたデジタルの音声信号をアナログ信号に変換して無線機インタフェース21に入力する。この音声信号はマイクケーブルを介して中継用トランシーバ3に入力される。
【0033】
VOX処理部27は音声パケット受信部26から入力された音声信号のレベルを監視している。VOX処理部27は、音声信号が所定のしきい値を超えると、下り音声ありとして制御部20に下り転送要求信号を出力する。
【0034】
制御部20は、VOX処理部27から下り転送要求信号が入力されると、無線機インタフェース21に対してPTT信号を出力する。PTT信号は、マイクケーブルを介して中継用トランシーバ3に入力される。中継用トランシーバ3は、このPTT信号により送信モードに切り換えられ、マイクケーブルを介して入力されている音声信号を送信電波に重畳してトランシーバ4,5に向けて送信する。
【0035】
なお、VOX処理部27による下り音声あり/無しの判定は、チャタリングや誤検出を防止するため、若干の時間幅で行えばよい。また、音声信号を通話音声信号が属する周波数帯域に絞り込んで音声の有無を判定してもよい。
【0036】
VOX処理部27が下り音声の有無を判定するために若干の時間が必要であるため、音声パケット受信部26とD/Aコンバータ28との間に音声信号を遅延させる遅延部を挿入して音声信号と判定結果とのタイムラグを解消するようにしてもよい。
【0037】
このように、この通信システムでは、中継装置2(2−1,2−2)が中継用トランシーバ3からの音声信号の入力に応じて即座に音声パケット(RTPパケット)をネットワークに送出するとともに、ネットワークから音声パケットを受信すると、この音声パケットをオーディオ信号化して中継用トランシーバ3に入力してエリア内に送信させる。これにより、トランシーバ4,5のユーザは、PTTスイッチをオンして話し、PTTスイッチをオフして相手の音声を聴くという通常の無線通信と同じ要領でネットワークを介した通信を行うことができる。
【0038】
図4は、中継装置2の制御部20の監視動作を示すフローチャートである。この監視動作は所定時間(1フレーム時間)ごとに繰り返し実行される。制御部20は、VOX処理部24、27からの転送要求信号の入力を監視している(S11,S12)。VOX処理部24から上り転送要求信号が入力されると(S11でYES)、記憶部20Aから送信先のIPアドレス(グループID)やポート番号等を読み出し(S14)、これらを音声パケット送信部25に入力してA/Dコンバータ23から入力された音声信号をネットワーク1に送出させる。このS11,S14,S15の動作が送信モードの動作である。この送信モードの動作は1フレーム時間継続して実行される。
【0039】
一方、VOX処理部27から下り転送要求信号が入力されると(S12でYES)、無線機インタフェース21に対してPTT信号を出力する(S16)。これにより、ネットワーク1を介して受信されアナログ信号に変換された音声信号が中継用トランシーバ3から送信される。このS12,S16の動作が受信モードの動作である。この受信モードの動作は1フレーム時間継続して実行される。
【0040】
また、VOX処理部24,27の両方から転送要求信号が入力されない場合(S11,12でNO)には、何も処理を行わず(PTT信号を出力せず:S13)、上り/下り両方の監視動作を継続する。
【0041】
このフローチャートに示すように、上り転送要求信号(送信モード)は下り転送要求信号(受信モード)に優先している。すなわち、中継用トランシーバ3からの音声信号の入力およびネットワーク1からの音声信号の入力が同時にあった場合には、中継用トランシーバ3から入力された音声信号をネットワーク1に送出する処理が優先され、ネットワーク1から受信した音声信号は中継用トランシーバ3から送信されない。これは、半二重通信のトランシーバは、送信中は相手装置からの信号を受信できないことに対応させた処理である。
【0042】
なお、図4のフローチャートのS12→S16において、下り転送要求信号が入力されたときPTT信号を出力するようにしているが、ネットワーク1から音声パケットが入力されたことを条件としてPTT信号を出力するようにしてもよい。
【0043】
なお、図4のフローチャートにおいて、音声パケットの送信をユニキャストで行う場合は、S11,S14,S16の手順を経ることなく、無線機インタフェース21から入力されたオーディオ信号(無音の場合もあり)を常時パケット化してネットワーク1に送出しつづける構成にしてもよい。この場合、受信側は、入力されている音声パケットの信号レベルが所定のしきい値を超えたことに基づいてPTT信号を出力するようにすればよい。
【0044】
また、中継用トランシーバ3からスケルチ解除信号を入力可能な場合は、上記フローチャートのS11において、上り転送要求信号とともに(または上り転送要求信号に代えて)、スケルチ解除信号の入力を監視してもよい。
【0045】
なお、図1ではネットワーク1に中継装置2を2台接続した構成になっているが、中継装置2の台数は2台に限定されない。また、中継装置の無線インタフェース21に中継用トランシーバ3に代えて、マイクとスピーカを接続し、中継装置2をトランシーバ代わりに用いてネットワーク1を介した通信を行うようにしてもよい。
【0046】
図5は、この発明の他の実施形態である通信システムの構成を示す図である。この図において、図1に示した通信システムと同一構成の部分は同一番号を付して説明を省略する。この通信システムでは、図1の通信システムのネットワーク1にさらに中継装置12が接続されている。中継装置12には、緊急放送受信機6、マイク7(およびスピーカ8)が直接接続される。すなわち、中継装置12には、無線による相互通信を中継する中継用トランシーバ3に代えて、自身が目的の音声信号を出力する機器である緊急放送受信機6やマイク7が直接接続される。
【0047】
なお、中継装置12には、ネットワーク1から受信した音声パケットを再生するためのスピーカ8が接続されていてもよい。
【0048】
また、この通信システムでは、各中継装置2に、通常通信に用いる自局ポート番号(自局通常ポート番号)に加えて、緊急通信など優先的に受信すべき通信のために設定された自局ポート番号である自局優先ポート番号が設定されている。そして、中継装置12は、緊急放送受信機6やマイク7から入力された音声信号を優先的に受信されるべき音声信号として各中継装置2の優先ポート宛に送信し、他の通信音声に優先して各トランシーバ4,5に受信させる。
【0049】
図6は、中継装置12のブロック図である。この図において、図2に示した中継装置2と同一構成の部分は同一番号を付して説明を省略する。中継装置12は、中継装置2とほぼ同一の構成であるが、インタフェース21′にスピーカ8が接続されない場合には、ネットワーク1から受信した音声パケットを再生する機器がないため下り系統の機器は必ずしも必要でない。また、図2の中継装置2では、制御部20から無線機インタフェース21に対してPTT信号を入力する構成であったが、この中継装置12ではインタフェース21′からマイク7のPTT信号を制御部20に対して入力する構成としてもよい。このOTT信号は、VOX処理部24の上り転送要求信号に代えて、音声パケット送信部25に対するパケット送信指示のトリガ信号として用いることができる。
【0050】
なお、中継装置12は、中継装置2と同様のハードウェア構成で実現できるため、同一の装置でソフトウェア等の設定を変更することにより中継装置2と中継装置12とを兼用可能にしてもよい。
【0051】
図7は、中継装置2、中継装置12の記憶部20Aの記憶内容を示す図である。同図(A)は中継装置2の記憶内容を示している。同図(B)は中継装置12の記憶内容を示している。この図において図3と同一の記憶内容については説明を省略する。
【0052】
図7(A)において、中継装置2の記憶部20Aには、自局IPアドレス、送信先IPアドレス、参加マルチキャストIPアドレス、自局通常ポート番号(21500)、自局優先ポート番号(21600)、送信先ポート番号(21500)などの情報が記憶されている。自局通常ポート番号は、通常の通信時に用いられるポート番号であり、このポート番号で音声パケットを受信したとき、制御部20は、図4に示したフローチャートと同様の処理を行う。自局優先ポート番号は、緊急放送等の優先的な放送に用いられるポート番号であり、このポート番号で音声パケットを受信したとき、制御部20は、他の通信(送信/受信)に優先してこの音声信号の受信を行う。
【0053】
図7(B)において、中継装置12の記憶部20Aには、自局IPアドレス、参加マルチキャストIPアドレス、自局通常ポート番号(21500)、自局優先ポート番号(21600)、送信先ポート番号(21600)などの情報が記憶されている。この装置は、予めマルチキャストIPアドレスに向けて、且つ優先ポート番号(21600)に向けて音声パケットを送信するように設定されている。したがって、この中継装置12から送信された音声パケットは他の中継装置2において優先的に受信される。なお、この図に示した通常ポート番号、優先ポート番号は例示であり、この番号に限定されない。
【0054】
図8は、図5の通信システムにおける中継装置2の制御部20の動作を示すフローチャートである。この図において、図4に示したフローチャートと同一手順には同一のステップ番号(S番号)を付して説明を省略する。S10では優先ポートからのパケット入力を監視している。優先ポートからパケットが入力されると、その音声パケットの音量を判別することなく、また、他のVOX処理部24,27の信号レベルを判定することなく、優先してPTT信号を出力する(S16)。これにより、優先ポートからの信号が入力されると、その信号を優先して中継用トランシーバ3に入力してトランシーバ4,5に送信する。これにより、緊急放送等を他の通信に優先して全トランシーバ4,5に向けて送信することができる。
【0055】
この実施形態では、優先ポート番号を定めて、優先ポートに到来した音声パケットをこの発明の「特定の音声パケット」としたが、通常のポートで通信を行い、音声パケットに特定のマークを付すことによって「特定の音声パケット」とすることも可能である。
【0056】
なお、中継装置12は、図8のフローチャートに示した動作を実行してもよいが、優先ポート番号を監視することなく、図4のフローチャートに示した動作を実行するようにしてもよい。この場合、S11の動作において、上り転送要求信号とともに(または上り転送要求信号に代えて)、マイク7からのPTT信号の入力を監視してもよい。
【0057】
図9は、図2、図6に示した構成の中継装置2,12をユニットとして複数設けたマルチチャンネルの中継装置の構成例を示す図である。この図の中継装置では、図2の中継装置2の構成を有する無線機中継ユニット31を3ユニット、図6の中継装置12の構成を有する受信機中継ユニット32を1ユニット備えている。さらに、これら中継ユニット31,32とネットワーク1との通信を制御するネットワーク通信制御部34、放送(拡声)設備へ音声信号を出力するオーディオ回路を備えた放送機器インタフェース35を備え、これら複数のユニット間のオーディオ信号の入出力を制御するパッチベイ33を備えている。
【0058】
複数の無線機中継ユニット31を備えたことにより、この中継装置では、1台の装置で複数のエリアにおける無線通信の中継が可能になる。また、ネットワーク1を介することなく、この装置内でエリア間の中継が可能になる。また、各無線機中継ユニット31−1,2,3にそれぞれ異なる様式の(たとえば通信周波数が異なる)トランシーバを接続して、同一エリアに設置することにより、同一エリア内に異なる様式のトランシーバが存在する場合に、それらのトランシーバ間の通信が可能になる。
【符号の説明】
【0059】
1 ネットワーク
2,12 中継装置
3 中継用トランシーバ
4,5 トランシーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ通信網であるネットワークに接続されるネットワークインタフェースと、
半二重無線通信機であるトランシーバが接続される無線機インタフェースと、
前記ネットワークインタフェースから入力される音声パケットを受信する音声パケット受信部と、
前記音声パケット受信部が受信した音声パケットをオーディオ信号に変換して前記無線機インタフェースを介して出力するデコード部と、
前記音声パケット受信部が音声パケットを受信しているとき、または、前記オーディオ信号のレベルが第1のしきい値を超えているとき、前記トランシーバを送信モードに切り換える信号であるPTT信号を前記無線機インタフェースを介して出力するPTT制御部と、
を備えた中継装置。
【請求項2】
音声パケットの送信先のアドレスを記憶した記憶部と、
前記無線機インタフェースから入力されたオーディオ信号をパケット化し、前記アドレスを宛先アドレスとして付した音声パケットを作成して前記ネットワークインタフェースを介して出力する音声パケット送信部と、
をさらに備え、
前記PTT制御部は、前記無線機インタフェースから入力されたオーディオ信号のレベルが第2のしきい値を超えているとき、または、前記無線インタフェースから前記オーディオ信号の転送を指示する信号が入力されたときPTT信号を出力しない請求項1に記載の中継装置。
【請求項3】
前記音声パケット送信部は、前記無線機インタフェースから入力されたオーディオ信号のレベルが前記第2のしきい値を超えているときのみ、前記音声パケットを作成して前記ネットワークインタフェースを介して出力する請求項2に記載の中継装置。
【請求項4】
前記記憶部は、送信先のアドレスとして、マルチキャストアドレスを記憶している請求項3に記載の中継装置。
【請求項5】
前記音声パケット受信部が、特定の音声パケットを受信したとき、前記PTT制御部は、前記無線機インタフェースからいかなる信号が入力されているかにかかわらず、PTT信号を出力する請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の中継装置。
【請求項6】
前記特定の音声パケットは、予め設定されている優先ポート番号宛の音声パケットである請求項5に記載の中継装置。
【請求項7】
データ伝送網であるネットワークと、
該ネットワークに接続された複数の中継装置であって、請求項2乃至請求項6のいずれかに記載されたものと、
前記複数の中継装置の無線機インタフェースに各々接続され、受信したオーディオ信号を前記中継装置に出力するとともに、前記中継装置から前記音声パケットから変換されたオーディオ信号および前記PTT信号を入力する複数の中継用トランシーバと、
を備えた通信システム。
【請求項8】
データ伝送網であるネットワークと、
該ネットワークに接続された複数の中継装置であって、請求項5または請求項6に記載されたものと、
前記複数の中継装置の無線機インタフェースに各々接続され、受信したオーディオ信号を前記中継装置に出力するとともに、前記中継装置から前記音声パケットから変換されたオーディオ信号および前記PTT信号を入力する複数の中継用トランシーバと、
を備え、
前記複数の中継装置の少なくとも1台の音声パケット送信部が、前記特定の音声パケットを送信する
通信システム。
【請求項9】
前記複数の中継装置の一部または全部の無線機インタフェースに、中継用トランシーバに代えて、マイクおよびスピーカが接続された請求項7または請求項8に記載の通信システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−135291(P2011−135291A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292592(P2009−292592)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】