説明

中継装置及び通信制御方法

【課題】妨害信号に起因する干渉の影響を抑えることのできる中継装置及び通信制御方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る中継装置101は、移動局と、移動局と通信接続を確立するための同期信号を送信する基地局と、中継装置101とからなる無線通信システムにおける中継装置101であって、移動局と無線信号を送受信する移動局側通信部123と、中継装置101の速度を検出する速度検出部118と、速度検出部118により検出された速度に応じて、同期信号を妨害する妨害信号を移動局側通信部123に送信させるかを決定する制御部121とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中継装置及び通信制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動局が基地局と通信するためには、移動局は基地局からの無線電波が届く範囲(サービスエリア)に位置する必要がある。しかし、山岳地帯や高層ビル等が建ち並ぶ市街地では、障害物が多いため無線電波が届きにくい領域が存在する。また、屋外に設置された基地局からは、電波が届かない領域(例えば、建物の内部や地下)が多く存在する。特に、IEEE標準規格802.16eを基に規格化されたWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)(登録商標)等の高速無線通信方式では、2.5GHz以上の高周波数帯の電波が使用されるが、このような電波は直進性が強く、障害物を回りこむ性質が弱い。そのため、WiMAX等は障害物の影響を強く受ける。このような電波が届かない領域をカバーするため、基地局と移動局との間の無線信号を中継する中継装置(レピータ)が必要となる。
【0003】
この中継装置は、サービスエリアを拡充できるという利点がある反面、中継装置が発する電波が他の電波との干渉を引き起こすという欠点がある。中継装置に起因する干渉の一つには、基地局と通信を行うドナーノード(MS(Mobile Station)部)と、移動局と通信を行うサービスノード(BS(Base Station)部)との間における相互干渉(回り込み干渉又は自己干渉)があげられる。例えば、ドナーノードの受信期間とサービスノードの送信期間が重なった場合、基地局からの送信波が、サービスノードの送信波と干渉を起こし、ドナーノードは、品質の劣化した基地局からの送信波を受信することになる。同様にして、ドナーノードの送信期間とサービスノードの受信期間が重なった場合にも、相互干渉は発生する。
【0004】
そこで、従来、相互干渉を抑制するための無線通信方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。当該方法では、図4のように、基地局Aが下り信号を送信する下りサブフレーム期間(第1期間)内に、ドナーノードの受信(Rx)期間とサービスノードの受信期間とが合わせられる。また、基地局Aが上り信号を受信する上りサブフレーム期間(第2期間)内に、ドナーノードの送信(Tx)期間とサービスノードの送信期間とが合わせられる。このようにドナーノードとサービスノードとの送受信期間とを揃える制御(以下、タイミング制御と略す)により、上述したような相互干渉について抑制することができる。なお、図4におけるDLは、下り回線(Down Link)を意味し、ULは、上り回線(Up Link)を意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−56711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、図5のように、タイミング制御されたサービスノードが周波数帯faの同期信号を移動局Aに送信し、サービスノードと移動局Aとは通信接続を確立するものとする。そして、移動局Aの周囲に基地局Bが存在し、基地局Bは、移動局Bとの通信接続のために周波数帯faの同期信号を送信するとする。基地局Bからの同期信号がサービスノードからの同期信号と異なるタイミングで移動局Aに届く場合、移動局Aは、サービスノードではなく基地局Bと通信接続を確立するおそれがある。
【0007】
タイミング制御により良好な通信状態での無線通信が可能な中継装置と移動局Aとの接続率を向上させるために、サービスノードは、基地局Bからの同期信号に干渉する妨害信号(プリアンブルマスク信号)を基地局Bの同期信号の送信タイミングに合わせて送信することが想定される。これにより、移動局Aは、基地局Bからの同期信号を検出することができなくなり、移動局Aが基地局Bと通信接続を確立することはなくなる。よって、移動局Aは、サービスノードと接続することができる。
【0008】
しかし、サービスノードからの妨害信号が、移動局A以外の移動局に関する通信に影響を及ぼすおそれがある。例えば、図5のように、基地局Aと移動局Cとが周波数帯faで通信し、サービスノードからの電波が移動局Cに届く場合、サービスノードからの妨害信号が、基地局Aから移動局Cへの信号と干渉する。そのため、基地局Aと移動局Cとの間の通信が困難になるおそれがある。このような状況は、特に、移動車両等に設置された中継装置が、妨害信号と同じ周波数帯で通信する移動局の近くに移動するような場合に、発生しやすい。妨害信号による干渉により、基地局Aと移動局Cとの間のスループットが低下したり、基地局Aと移動局Cとの間の通信接続が切断されたりする。
【0009】
従って、上記のような問題点に鑑みてなされた本発明の目的は、妨害信号に起因する干渉の影響を抑えることのできる中継装置及び通信制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した諸課題を解決すべく、第1の観点に係る中継装置の発明は、
移動局と、前記移動局と通信接続を確立するための同期信号を送信する基地局と、中継装置とからなる無線通信システムにおける中継装置であって、
前記移動局と無線信号を送受信する移動局側通信部と、
前記中継装置の速度を検出する速度検出部と、
前記速度検出部により検出された速度に応じて、前記同期信号を妨害する妨害信号を前記移動局側通信部に送信させるかを決定する制御部と
を備える中継装置である。
【0011】
また、第2の観点に係る発明は、第1の観点に係る中継装置において、前記制御部は、前記速度が速度閾値未満となった場合、前記妨害信号の送信を停止するように前記移動局側通信部を制御することを特徴とするものである。
【0012】
また、第3の観点に係る発明は、第1又は第2の観点に係る中継装置において、前記制御部は、前記速度の低下に応じて前記妨害信号の送信出力を小さくして前記妨害信号を送信するように前記移動局側通信部を制御することを特徴とするものである。
【0013】
上述したように本発明の解決手段を装置として説明してきたが、本発明はこれらに実質的に相当する方法、プログラム、プログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものであり、本発明の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【0014】
例えば、本発明の第1の観点を方法として実現させた通信制御方法は、
移動局と、前記移動局と同期を確立するための同期信号を送信する基地局と、中継装置とからなる無線通信システムにおける中継装置の通信制御方法において、前記中継装置が、
前記中継装置の速度を検出するステップと、
検出された前記速度に応じて、前記同期信号を妨害する妨害信号を前記移動局に送信するかを決定するステップと
を含む通信制御方法である。
【発明の効果】
【0015】
上記のように構成された本発明に係る中継装置及び通信制御方法によれば、妨害信号に起因する干渉の影響を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る概略的な無線通信システム構成図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る中継装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係る中継装置の処理を示すフローチャートである。
【図4】図4は、従来の中継装置の送受信期間を示すタイムチャートである。
【図5】図5は、従来の妨害信号に起因する干渉の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る概略的な無線通信システム構成図である。無線通信システム11は、基地局BS(Base Station)(BS1及びBS2)と、移動局MS(Mobile Station)(MS1及びMS2)と、車両103に搭載されている中継装置101とから構成されている。無線通信システム11の通信方式がWiMAXである場合、無線通信システム11には、例えば時分割複信(TDD:Time Division Duplex)方式が採用される。中継装置101は、WiMAX等の無線通信方式において、基地局BS1と移動局MS1との間で送受信される無線信号を中継する。移動局MS1は、基地局BS1のセル(通信可能エリア)の範囲外に位置していても、中継装置101を介して基地局BS1と無線信号を送受信できる。
【0019】
基地局BS1は、中継装置101(後述するドナーノード)と周波数帯f1で通信し、移動局MS1は、中継装置101(後述するサービスノード)と周波数帯f2で通信しているとする。また、基地局BS2からの周波数帯f2の電波が移動局MS1に届くものとする。駅のホーム105上に位置する移動局MS2は、基地局BS1と周波数帯f2で通信しているとする。中継装置101は、移動及び停止を行うものである。例えば、中継装置101を搭載する車両103は、位置P1からホーム105に向かい移動し、位置P2で停止するとする。車両103の動きに伴い、中継装置101は、移動及び停止を行う。車両103が位置P2に位置する場合、中継装置101(サービスノード)からの周波数帯f2の電波は、移動局MS2に届くとする。
【0020】
なお、本発明は、車両103の停止場所が1つに限定されるものではなく、停止場所であるホームは複数存在することができる。また、図1において、基地局BSは2つ、移動局MSは2つ記載されているが、本発明はこの態様に限定されるものではない。例えば、基地局及び移動局の数を3つ以上とすることができる。
【0021】
図2は、本発明の一実施形態に係る中継装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【0022】
中継装置101は、基地局BSと通信を行うドナーノード(MS部)111と、移動局MSと通信を行うサービスノード(BS部)113とを備えている。中継装置101は、中継装置101が移動する状況であれば、一体型に限定されるものではなく、分離型であってもよい。一体型の中継装置101は、一つの筐体内にドナーノード111とサービスノード113とを備えるものである。分離型の中継装置101では、ドナーノード111とサービスノード113とをそれぞれ独立して配置することが可能である。分離型又は一体型のドナーノード111とサービスノード113とは、信号ラインにより接続される。
【0023】
まず、ドナーノード111の機能ブロックについて説明する。ドナーノード111は、基地局側通信部117と、速度検出部118と、記憶部119と、制御部121とを備えている。基地局側通信部117、速度検出部118及び記憶部119は、制御部121に接続されている。
【0024】
基地局側通信部117は、アンテナを介して基地局BSと無線信号を送受信する。基地局側通信部117は、受信した無線信号に対して低雑音での増幅及びダウンコンバート等を行うことによりベースバンド信号を生成し、制御部121に送る。また、基地局側通信部117は、ベースバンド信号に対してアップコンバート及び増幅等を行うことにより、無線信号を生成し、アンテナを介して当該無線信号を基地局BSに送信する。
【0025】
無線通信システム11に時分割複信方式が採用されている場合は、基地局側通信部117は、例えば、基地局BSから無線信号を基地局BSの下りサブフレーム期間(第1期間)で受信し、基地局BSへ無線信号を第1期間に続く基地局BSの上りサブフレーム期間(第2期間)で送信する。そして、連続する第1期間と第2期間との繰り返しにより、基地局側通信部117は、受信と送信を繰り返すことになる。
【0026】
速度検出部118は、中継装置101の速度(移動速度)を検出し、検出結果を制御部121に送るものであり、例えば加速度センサである。また、本発明は、速度検出部118が中継装置101の速度そのものを直接検出することに限定されるものではなく、速度検出部118は、例えば、中継装置101と一体となって動く車両103のタイヤの回転速度を測る回転速度センサとすることもできる。速度検出部118は、回転速度から車両103の速度を検出し、当該速度を中継装置101の速度とすることができる。なお、速度とは、速さと向きを厳密に含む概念ではなく、速さのみを意味することができる。なお、本実施形態では、ドナーノード111が、速度検出部118を有するが、本発明は、この態様に限定されるものではない。例えば、サービスノード113が、速度検出部を有し、当該速度検出部により検出された速度を中継装置101の速度として扱うことができる。
【0027】
記憶部119は、中継装置101の速度に関する速度閾値などの各種情報を記憶するものであり、ワークメモリなどとしても機能する。速度閾値については後述する。
【0028】
なお、本実施形態では、ドナーノード111のみが、記憶部119を有するが、本発明は、この構成に限定されるものではない。例えば、サービスノード113のみが記憶部を有し、当該記憶部が、ドナーノード111及びサービスノード113の各種情報を記憶することもできる。また、ドナーノード111及びサービスノード113の双方が記憶部を有し、各々の記憶部が関連する各々のユニットの情報を記憶することもできる。
【0029】
制御部121は、ドナーノード111及びサービスノード113の各機能ブロックをはじめとしてドナーノード111及びサービスノード113の全体を制御及び管理する。ここで、制御部121は、CPU(中央処理装置)等の任意の好適なプロセッサ上で実行されるソフトウェアとして構成したり、処理ごとに特化した専用のプロセッサ(例えばDSP(デジタルシグナルプロセッサ))によって構成したりすることもできる。なお、本実施形態では、ドナーノード111のみが、制御部121を有するが、本発明は、この構成に限定されるわけではない。例えば、サービスノード113のみが制御部を有し、当該制御部が、ドナーノード111及びサービスノード113の全体を制御及び管理することができる。また、ドナーノード111及びサービスノード113の双方が制御部を有し、各々の制御部が関連する各々のユニットを制御及び管理することもできる。
【0030】
続いて、サービスノード113の機能ブロックについて説明する。サービスノード113は、移動局側通信部123を備えている。移動局側通信部123は、制御部121に接続されている。
【0031】
移動局側通信部123は、アンテナを介して移動局MSと無線信号を送受信する。移動局側通信部123は、受信した無線信号に対して低雑音での増幅及びダウンコンバート等を行うことによりベースバンド信号を生成し、制御部121に送る。また、移動局側通信部123は、ベースバンド信号に対してアップコンバート及び増幅等を行うことにより、無線信号を生成し、アンテナを介して当該無線信号を移動局MSに送信する。
【0032】
無線通信システム11に時分割複信方式が採用されている場合は、移動局側通信部123は、例えば、移動局MSから無線信号を第1期間内で受信し、移動局MSへ無線信号を第1期間に続く第2期間内で送信する。そして、連続する第1期間と第2期間の繰り返しにより、移動局側通信部123は、受信と送信を繰り返すことになる。移動局側通信部123と基地局側通信部117との送信期間が、且つ移動局側通信部123と基地局側通信部117との受信期間が揃うこと(タイミング制御)により中継装置101における相互干渉は抑制される。
【0033】
ここで、ドナーノード111の制御部121についてより詳細に説明する。図1において、移動局MS1には、中継装置101(サービスノード113)からの周波数帯f2の電波のみならず、基地局BS2からの周波数帯f2の電波も届く。そのため、移動局MS1が、通信接続を確立するための同期信号を中継装置101及び基地局BS2との双方から受信すると、移動局MS1は、基地局BS2と接続してしまったり、同期先が不確定になりそもそも通信接続の確立ができなかったりする。特に、中継装置101がタイミング制御により良好な通信状態を実現している場合、移動局MS1は、中継装置101と通信接続を確立することが望まれる。
【0034】
そこで、制御部121は、基地局BS2からの同期信号に干渉する妨害信号(プリアンブルマスク信号)を、当該同期信号の送信タイミングに合わせて送信するように移動局側通信部123を制御する。これにより、移動局MS1は、基地局BS2からの同期信号を検出できなくなり、中継装置101と通信接続を確立することになる。
【0035】
当該妨害信号は、中継装置101と移動局MS1との間の通信接続の確立を確実にするためのものであるが、この妨害信号は、当該妨害信号と同じ周波数帯f2で通信する移動局MS2に悪影響を及ぼすことがある。本実施形態では、車両103が位置P2に位置すると、中継装置101(サービスノード113)からの妨害信号は、基地局BS1から移動局MS2への周波数帯f2の同期信号に干渉する。中継装置101(サービスノード113)からの妨害信号による干渉が長い時間発生するほど、移動局MS2と基地局BS1との間の通信におけるスループットは低下し、また当該通信接続自体が切断される可能性も高まる。
【0036】
そこで、制御部121は、速度検出部118により検出された速度に応じて、前記同期信号を妨害する妨害信号を移動局側通信部123に送信させるかを決定する。例えば、速度検出部118により検出される速度が記憶部119に記憶されている速度閾値未満になると、妨害信号の送信を停止するように移動局側通信部123を制御し、速度が速度閾値以上になると、妨害信号を送信するように移動局側通信部123を制御することができる。速度閾値が大きいほど、移動局MS2が妨害信号による干渉の影響を受け続ける時間が短い段階で妨害信号の送信が停止される。そのため、速度閾値は、移動局MS2が妨害信号による干渉の影響を受け続けることが許容される時間によって任意に設定できる事項である。許容される時間とは、妨害信号により低下する移動局MS2の受信品質値、移動局MS2の通信に採用できる変復調方式、及び移動局MS2が実現したいスループットなどを勘案して定められるものである。受信品質値とは、例えば、CINR(Carrier to Interference and Noise Ratio:搬送波対干渉雑音比)やSINR(Signal to Interference and Noise Ratio:信号対干渉雑音比)である。また、妨害信号の影響を受ける移動局が複数存在する場合は、これらの移動局における妨害信号の影響の許容時間を総合的に勘案して、速度閾値を設定することもできる。
【0037】
また、制御部121は、妨害信号を移動局側通信部123に送信させることを決定した場合に、更に中継装置101の速度に応じて、妨害信号の送信出力を制御することもできる。例えば、中継装置101の速度が低下するにつれて、連続的に又は段階的に小さい送信出力で妨害信号を送信するように移動局側通信部123を制御することができる。妨害信号の送信出力が小さくなるほど、妨害信号に起因する干渉の影響を小さくすることができる。
【0038】
続いて、中継装置101(制御部121)が妨害信号の送信を制御する方法について、図1及び図3を参照して説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る中継装置の処理を示すフローチャートである。なお、車両103は、位置P1から位置P2に移動し、位置P2で停止するとする。そして、位置P1に位置するときの車両103は、速度閾値以上の速度で移動中であるとする。
【0039】
速度検出部118は、定期的又は不定期的に中継装置101の速度を検出する(ステップS101)。そして、速度検出部118が検出結果を制御部121に送ると、制御部121は、検出された速度を記憶部119に記憶されている速度閾値と比較する(ステップS102)。
【0040】
検出された速度が速度閾値以上であると(ステップS102のYes)、制御部121は、妨害信号が移動局MS2に関する通信に与える影響は小さいと判断し、妨害信号を移動局側通信部123に送信させることを決定する。つまり、妨害信号を送信するように移動局側通信部123を制御する(ステップS103)。検出された速度が速度閾値以上である限り、ステップS101〜S103の処理が繰り返さ、妨害信号は送信され続けることになる。また、制御部121は、検出された速度が小さくなるに従い、妨害信号の送信出力が小さくなるように移動局側通信部123を制御することもできる。
【0041】
車両103は、位置P2で停止するために、位置P2に近づくにつれて速度を低下させる。そのため、車両103が位置P1と位置P2との間のいずれかの場所において中継装置101の速度は速度閾値未満となる。
【0042】
速度検出部118により検出された速度が速度閾値未満になると(ステップS102のNo)、制御部121は、妨害信号が移動局MS2に関する通信に与える影響は大きいと判断し、妨害信号を移動局側通信部123に送信させないことを決定する。つまり、妨害信号の送信を停止するように移動局側通信部123を制御する(ステップS104)。車両103が位置P2に停止した後、次の駅に向かい移動を開始すると、中継装置101の速度は上昇する。そして、中継装置101の速度が速度閾値以上になると(ステップS102のYes)、制御部121は、妨害信号の送信を再開するように移動局側通信部123を制御することになる(ステップS103)。
【0043】
このように本実施形態では、中継装置101の制御部121は、速度検出部118により検出された速度に応じて、同期信号を妨害する妨害信号を移動局側通信部123に送信させるかを決定する。これにより、制御部121は、速度に応じて移動局側通信部123に妨害信号を停止させることができ、妨害信号に起因する干渉の影響を取り除くことができる。妨害信号が移動局MS2に関する通信に干渉しなくなるため、移動局MS2に関する通信におけるスループットの低下を防ぐことができる。
【0044】
また、本実施形態では、制御部121は、速度が速度閾値未満となった場合、妨害信号の送信を停止するように移動局側通信部123を制御することができる。中継装置101の速度が小さくなると、中継装置101の位置の変化が小さくなるので、中継装置101(サービスノード113)からの妨害信号が移動局MS2に届き続ける時間が長くなる。そのため、妨害信号に起因する干渉の影響を長い時間受けることになる。移動局MS2が妨害信号の影響を受けることのできる時間に対応する速度閾値を定めておくことにより、制御部121は、速度と速度閾値との比較のみに基づいて、妨害信号の送信及び停止を判断することができる。変化する中継装置101の周囲の電波環境に応じて、妨害信号の送信及び停止の判断基準を変化させる場合に比べ、処理の効率化を図ることができる。
【0045】
また、本実施形態では、制御部121は、速度の低下に応じて妨害信号の送信出力を小さくして妨害信号を送信するように移動局側通信部123を制御することができる。速度が低下するにつれて、妨害信号による干渉が移動局MS2に与える影響は大きくなる。よって、妨害信号の送信時においても、速度の低下に応じて妨害信号の送信出力を下げることにより、基地局BS2からの同期信号が中継装置101と移動局MS1との接続に与える影響を抑えつつ、移動局MS2が受ける妨害信号に起因する干渉の影響を抑えることができる。
【0046】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。
【0047】
例えば、各部材、各手段、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0048】
上述の本発明の実施形態の説明において、例えば、閾値「以上」または閾値「未満」のような表現の技術的思想が意味する内容は必ずしも厳密な意味ではなく、中継装置の仕様に応じて、基準となる値を含む場合又は含まない場合の意味を包含するものとする。例えば、閾値「以上」とは、閾値の比較対象である値が閾値に達した場合のみならず、閾値を超えた場合も含意し得るものとする。また、例えば閾値「未満」とは、閾値の比較対象である値が閾値を下回った場合のみならず、閾値に達した場合、つまり閾値以下になった場合も含意し得るものとする。
【符号の説明】
【0049】
11 無線通信システム
101 中継装置
103 車両
105 ホーム
111 ドナーノード
113 サービスノード
117 基地局側通信部
118 速度検出部
119 記憶部
121 制御部
123 移動局側通信部
BS1、BS2 基地局
MS1、MS2 移動局
f1、f2 周波数帯
P1、P2 位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局と、前記移動局と通信接続を確立するための同期信号を送信する基地局と、中継装置とからなる無線通信システムにおける中継装置であって、
前記移動局と無線信号を送受信する移動局側通信部と、
前記中継装置の速度を検出する速度検出部と、
前記速度検出部により検出された速度に応じて、前記同期信号を妨害する妨害信号を前記移動局側通信部に送信させるかを決定する制御部と
を備える中継装置。
【請求項2】
請求項1に記載の中継装置において、前記制御部は、
前記速度が速度閾値未満となった場合、前記妨害信号の送信を停止するように前記移動局側通信部を制御する
ことを特徴とする中継装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の中継装置において、前記制御部は、
前記速度の低下に応じて前記妨害信号の送信出力を小さくして前記妨害信号を送信するように前記移動局側通信部を制御する
ことを特徴とする中継装置。
【請求項4】
移動局と、前記移動局と同期を確立するための同期信号を送信する基地局と、中継装置とからなる無線通信システムにおける中継装置の通信制御方法において、前記中継装置が、
前記中継装置の速度を検出するステップと、
検出された前記速度に応じて、前記同期信号を妨害する妨害信号を前記移動局に送信するかを決定するステップと
を含む通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−115563(P2013−115563A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259179(P2011−259179)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】