説明

中継装置

【課題】接続されるネットワーク間でスキャン伝送の送信周期が異なる場合であっても通信効率よく確実にスキャン伝送データを中継することが可能な中継装置を実現すること。
【解決手段】 プロセス制御用のネットワークを構成する機器間でスキャン伝送方式を用いて送信されるスキャン伝送データを、互いに通信規格が異なる複数のネットワーク間で中継する中継装置において、第1のネットワークから受信したスキャン伝送データを第2のネットワークの通信規格に則ったデータに変換する中継制御手段と、前記第2のネットワークにおける前記スキャン伝送データの送信周期を記憶する記憶手段と、前記中継制御手段により変換されたスキャン伝送データを、前記第2のネットワークの送信周期で前記第2のネットワークへスキャン伝送方式を用いて送信する第1の伝送制御手段を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセス制御用のネットワークを構成する機器間でスキャン伝送方式を用いて送信されるスキャン伝送データを、互いに通信規格が異なる複数のネットワーク間で中継する中継装置に関し、特に通信効率よく確実にスキャン伝送データを中継する中継装置に関する。
【0002】
具体的には、石油化学、鉄鋼、紙パルプ、食品、薬品、電力等の幅広い分野のプラント運転制御および安全確保に用いられている分散制御システムおよび安全計装システムにおけるネットワーク間のスキャン伝送を中継する中継装置に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、分散制御システムおよび安全計装システムでは、複数のフィールド機器、これらフィールド機器を制御する複数の制御装置が、接続線、電気通信回線を介して接続され、LAN(Local Area Network)等のネットワークを構成し、測定データやプロセス制御用の制御データ等の送受信を行っている。
【0004】
ここで、制御装置間では、バルブの操作値や流量計の流量値などのデータ通信が行われている。このようなシステムは例えば特開2005−176161号公報等に記されている。
【0005】
なお、フィールド機器には、たとえば、差圧計、流量計、温度計、監視カメラ、アクチュエータ、コントローラなどの各種フィールド機器がある。
【0006】
プラント制御に使用するデータ共有では、一般的に、制御装置、ネットワークスイッチなどの中継器、フィールド機器(以下これらを総じて、通信局という)が自機の接続するネットワーク内、外の複数の制御機器、ネットワークスイッチ、フィールド機器などの通信局へサイクリックに同報通知する「スキャン伝送」を利用している場合が多い。
【0007】
ここで、スキャン伝送とは、制御装置が自機の情報を、ブロードキャスト伝送を応用してネットワーク内または外の複数の制御装置や通信局等に、自機の情報を同時に送信するものである。
【0008】
ネットワークを構成する複数の制御装置は、それぞれがスキャン伝送により伝送されるスキャン伝送データを記憶するためのメモリを備え、各制御装置から送出されるデータを高速で、サイクリック伝送して全制御装置のメモリのデータが同一の内容に更新される。
【0009】
ここで、スキャン伝送は、1対多の同報通知であり、1対多のユニキャスト通信に比べて送信回数が少なくて済むため、帯域を節約することができ、リアルタイム性が求められる制御ネットワークにとって有効な通信方法である。
【0010】
たとえば、下記特許文献1(特開2005−094289号公報)にあるような、スキャン伝送を異なるネットワーク間で中継する中継装置が発明されている。
【0011】
図3は、従来の中継装置の一例を示した構成図である。
図3において、中継装置1は、ネットワークN1とネットワークN2と相互に接続され、ネットワークN1からのスキャン伝送データをネットワークN2に転送し、ネットワークN2からのスキャン伝送データをネットワークN1に転送する。
【0012】
具体的には、中継装置1は、ネットワークN1からのスキャン伝送データを受信し、ネットワークN2からのスキャン伝送データを送信するN1用通信手段11と、ネットワークN2からのスキャン伝送データを記憶するN1用送信バッファ12と、ネットワークN2からのスキャン伝送データを受信し、ネットワークN1からのスキャン伝送データを送信するN2用通信手段13と、ネットワークN1からのスキャン伝送データを記憶するN2用送信バッファ14と、ネットワークN1(またはN2)のデータをネットワークN2(またはN1)用のプロトコルに変換する中継制御手段15、を備える。
また中継装置1は、CPU(Central Processing Unit)などの中継装置の機能を制御する演算制御部16を備え、主に中継制御手段15の機能ブロックを有する。
【0013】
以下、ネットワークN1、N2は、互いに通信規格(プロトコル)が異なり、設計思想や利用可能な資源の違いから、それぞれのネットワークにおいて、スキャン伝送の送信周期が異なる、N1の方がN2よりも送信周期が短いものとして説明する。
【0014】
このような構成で、中継装置1は以下の動作(1−1)〜(1−4)、(2−1)〜(2−4)を行なう。
【0015】
中継装置1がネットワークN1からネットワークN2へスキャン伝送データを中継する場合は以下の動作を行なう。
(1−1)N1用通信手段11は、ネットワークN1内のいずれかの制御装置からスキャン伝送データを受信する。
(1−2)演算制御部16は、N1用通信手段11からのスキャン伝送データをN2用バッファ14に格納する。
(1−3)中継制御手段15は、N2用バッファ14からスキャン伝送データを読み出し、ネットワークN2のプロトコルに変換(加工)して、N2用通信手段13に出力する。
(1−4)N2用通信手段13は、ネットワークN2のプロトコル用に変換されたスキャン伝送データをネットワークN2へと送信する。
このとき中継装置1がネットワークN2へ送信するスキャン伝送の送信周期は、ネットワークN1でのスキャン伝送送信周期と等しい。
【0016】
中継装置1がネットワークN2からネットワークN1へスキャン伝送データを中継する場合は以下の動作を行なう。
(2−1)N2用通信手段13は、ネットワークN2内のいずれかの制御装置からスキャン伝送データを受信する。
(2−2)演算制御部16は、N2用通信手段13からのスキャン伝送データをN1用バッファ12に格納する。
(2−3)中継制御手段15は、N1用バッファ12からスキャン伝送データを読み出し、ネットワークN1のプロトコルに変換(加工)して、N1用通信手段11に出力する。
(2−4)N1用通信手段11は、ネットワークN2のプロトコル用に変換されたスキャン伝送データをネットワークN1へと送信する。
このとき中継装置1がネットワークN1へ送信するスキャン伝送の送信周期は、ネットワークN2でのスキャン伝送送信周期と等しい。
【0017】
この結果、従来の中継装置は、プロトコルの異なる2つのネットワーク間のスキャン伝送を中継することができる。
【0018】
このような、従来の中継装置を記載した文献としては特許文献1などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2005−094289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、従来の中継装置は、送信周期が短いネットワークから送信周期が長いネットワークへ中継する際に、中継先ネットワークにとっては不必要なスキャン伝送データを中継することになるので、通信帯域を余分に使用してしまうという問題点があった。このため、不要なスキャン伝送データにより中継先ネットワークの通信局(制御装置、ネットワークスイッチなど)の受信負荷が上がり、通信の実時間性が低下してしまうという問題点があった。
【0021】
また、従来の中継装置は、中継装置がスキャン伝送を送信周期が長いネットワークから送信周期が短いネットワークへ中継する際、トランジェントエラーによりスキャン伝送データが失われると、次の中継のタイミングまでデータ更新が行われないので、中継先ネットワークの制御装置または通信局(制御装置、ネットワークスイッチなど)が想定している遅延時間以内でデータ更新が行われない可能性があるという問題点があった。このため、プロセス制御に最新のデータが用いられず、最適な制御を実行できないという問題点があった。
【0022】
本発明は上述の問題点を解決するものであり、その目的は、接続されるネットワーク間でスキャン伝送の送信周期が異なる場合であっても、通信効率よく確実にスキャン伝送データを中継することが可能な中継装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
このような目的を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
プロセス制御用のネットワークを構成する機器間でスキャン伝送方式を用いて送信されるスキャン伝送データを、互いに通信規格が異なる複数のネットワーク間で中継する中継装置において、
第1のネットワークから受信したスキャン伝送データを第2のネットワークの通信規格に則ったデータに変換する中継制御手段と、
前記第2のネットワークにおける前記スキャン伝送データの送信周期を記憶する記憶手段と、
前記中継制御手段により変換されたスキャン伝送データを、前記第2のネットワークのスキャン伝送における送信周期で前記第2のネットワークへスキャン伝送方式を用いて送信する第1の伝送制御手段を備えたことを特徴とする中継装置。
【0024】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の中継装置において、
前記記憶手段が、前記第1のネットワークにおける前記スキャン伝送データの送信周期を記憶し、
前記中継制御手段が、前記第2のネットワークから受信したスキャン伝送データを前記第1のネットワークの通信規格に則ったデータに変換し、
前記第2のネットワークから受信し前記中継制御手段により変換されたスキャン伝送データを、前記第1のネットワークの送信周期で前記第1のネットワークへスキャン伝送方式を用いて送信する第2の伝送制御手段を、備えたことを特徴とする。
【0025】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の中継装置において、
前記第1の伝送制御手段に前記スキャン伝送データを前記第2のネットワークの送信周期で前記第2のネットワークへ伝送させ、前記第2の伝送制御手段に前記スキャン伝送データを前記第1のネットワークの送信周期で前記第1のネットワークへ伝送させる周期調節手段を、備えたことを特徴とする。
【0026】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の中継装置において、
前記第1のネットワークに接続される機器の識別子が格納される第1のデータテーブルと、前記第2のネットワークに接続される機器の識別子が格納される第2のデータテーブルとを予め記憶し、
この識別子と第1のネットワークまたは第2のネットワークから受信したスキャン伝送データの送信元の識別子が第2のデータテーブルまたは第1のデータテーブル中の識別子と一致しないときは、スキャン伝送データを中継する通信局情報管理手段を備えたことを特徴とする。
【0027】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の中継装置において、
前記第1のネットワークまたは前記第2のネットワークに接続される機器のスキャン伝送の各タイミングとは異なるタイミングで第2の伝送制御手段または第1の伝送制御手段にスキャン伝送データを送信させるタイミング調整手段を備えたことを特徴とする。
【0028】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の中継装置において、
前記第1のネットワークまたは前記第2のネットワークに接続される機器から受信する前記スキャン伝送データを2個以上結合させて第2のネットワークまたは第1のネットワークにスキャン伝送方式を用いて送信するスキャン伝送データ結合手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る中継装置によれば、第1のネットワークから受信したスキャン伝送データを第2のネットワークの通信規格に則ったデータに変換する中継制御手段と、第2のネットワークにおけるスキャン伝送データの送信周期を記憶する記憶手段と、中継制御手段により変換されたスキャン伝送データを、第2のネットワークの送信周期で第2のネットワークへスキャン伝送方式を用いて送信する第1の伝送制御手段を備えたことにより、接続されるネットワーク間でスキャン伝送の送信周期が異なる場合であっても、中継装置がその差を吸収し、通信効率よく確実にスキャン伝送データを中継できる点で有効である。
【0030】
また、本発明に係る中継装置によれば、上述の構成にすることにより、下記の効果A、B、Cが期待できる。
A:中継装置がスキャン伝送を送信周期が短いネットワークから送信周期が長いネットワークへ中継する際、中継先ネットワークにとって不必要なフレーム(スキャン伝送データ)は中継されず、余分な帯域の使用を防ぐことができる。
B:必要なフレーム(スキャン伝送データ)のみが中継されるため、中継先ネットワークの通信局(制御装置、ネットワークスイッチなど)の受信負荷の増加は最小限となり、実時間性の低下を防ぐことができる。
C:中継装置がスキャン伝送を送信周期が長いネットワークから送信周期が短いネットワークへ中継する際、トランジェントエラーによりスキャン伝送データが失われても、中継先ネットワークの通信局(制御装置、ネットワークスイッチなど)が想定している遅延時間以内でデータ更新が行われることになる点で有効である。
【0031】
また本発明によれば、通信局情報管理手段が受信したスキャン伝送データが正常である場合にのみ中継先のネットワークに送信し、異常データであるときは中継先のネットワークに送信することなく破棄することにより、異常データが中継先ネットワークに送信されて余分な通信帯域の使用や通信局のプロセッサパワーおよびメモリの消費を防ぐことができる。このため、通信効率よく確実にスキャン伝送データを中継できる点で有効である。
【0032】
また、本発明によれば、タイミング調整手段が、自機(中継装置2)を含む全通信局に対して送信できるタイミングをあらかじめ割り当てることにより、一時に通信がラッシュする事態を避けることができ、当該ネットワークのリアルタイム性が向上できる。このため、通信効率よく確実にスキャン伝送データを中継できる点で有効である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る中継装置の一実施例の構成図である。
【図2】本発明に係る中継装置の他の実施例の構成図である。
【図3】従来の中継装置の一例を示した構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
<第1の実施例>
図1は、本発明に係る中継装置の一実施例の構成図であり、図3と共通する部分には同一の符号を付けている。
図3との相違は、主に、図1ではスキャン伝送データの各ネットワークにおける各送信周期を記憶する記憶手段を有する点、中継制御手段により第2のネットワークの通信規格に則ったデータ形式に変換されたスキャン伝送データを、第2のネットワークの送信周期で第2のネットワークへスキャン伝送方式を用いて送信する第1の伝送制御手段を備えた点が相違する。
【0035】
(構成の説明)
図1において、本発明に係る中継装置2は、第1のネットワークの一例であるネットワークN1と第2のネットワークの一例であるネットワークN2と相互に接続され、ネットワークN1からのスキャン伝送データをネットワークN2に転送し、ネットワークN2からのスキャン伝送データをネットワークN1に転送する。
【0036】
ネットワークN1、N2は、複数のフィールド機器、これらフィールド機器を制御する複数の制御装置が、接続線、電気通信回線を介して接続されることにより構成される。
【0037】
ネットワークN1、N2では、フィールド機器、制御装置による測定データやプロセス制御用の制御データ等の送受信がネットワークスイッチなどの通信局を介して行われている。
また、ネットワークN1、N2に接続される制御装置、ネットワークスイッチなどの中継器、フィールド機器(以下これらを総じて、通信局という)は、プラント制御に使用するデータ共有として、ネットワーク内外の複数の通信局へサイクリックに同報通知するスキャン伝送を実行する。
【0038】
中継装置2は、ネットワークN1からのスキャン伝送データ(以下、第1のスキャン伝送データという)を受信し、ネットワークN2からのスキャン伝送データ(以下、第2のスキャン伝送データという)をネットワークN1のスキャン伝送データの送信周期でネットワークN1の通信規格に則ったデータ形式でスキャン伝送方式に基づき送信する第1の伝送制御手段の一例であるN1用通信手段21と、ネットワークN2からのスキャン伝送データを記憶する第1のバッファの一例であるN1用送信バッファ22と、第2のスキャン伝送データを受信し、第1のスキャン伝送データをネットワークN2のスキャン伝送データの送信周期でネットワークN2の通信規格に則ったデータ形式でスキャン伝送方式に基づき送信する第2の伝送制御手段の一例であるN2用通信手段23と、ネットワークN1からのスキャン伝送データを記憶する第2のバッファの一例であるN2用送信バッファ24を、備える。
【0039】
さらに、中継装置2は、ネットワークN1(またはN2)のデータをネットワークN2(またはN1)用のプロトコルに変換する中継制御手段25と、スキャン伝送データのネットワークN1、ネットワークN2における各送信周期(以下、第1の送信周期、第2の送信周期という)を記憶する記憶手段26と、N1用通信手段21に第2のスキャン伝送データを第1の送信周期でネットワークN1へ伝送させ、N2用通信手段23に第1のスキャン伝送データを第2の送信周期でネットワークN2へ伝送させる周期調節手段27も備える。
【0040】
また、中継装置は、CPU(Central Processing Unit)などの演算制御部29を備え、主に中継制御手段25、周期調節手段27の機能ブロックを有する。これらの各手段はバスにより相互に接続されるようなそれぞれ独立した機器から構成されるものであってもよい。
【0041】
具体的には演算制御部29は、記憶手段26に格納されているOSなどを起動して、このOS上で記憶手段に格納されたプログラムを読み出して実行することにより、主に、中継制御手段25、周期調節手段27などの各機能を統合的に制御し、中継装置全体を制御して、プロトコルの異なる2つのネットワーク間のスキャン伝送を中継する。
【0042】
記憶手段26は、ハードディスク、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などであり、各送信周期、スキャン伝送データを各ネットワークのプロトコルに適合するように加工するために必要なプロトコル情報およびネットワークN1とN2間でスキャン伝送データを中継する際の送信先への経路が示されているネットワーク経路情報、中継装置として動作するためのOS、プログラムやアプリケーション等を記憶する。
【0043】
中継制御手段25は、N1用送信バッファ22に格納されているネットワークN2からのスキャン伝送データを、記憶手段26に記憶されるプロトコル情報に基づいて、ネットワークN1用のプロトコルに則ったデータに変換する。
また、中継制御手段25は、N2用送信バッファ24に格納されているネットワークN1からのスキャン伝送データを記憶手段26に記憶されるプロトコル情報に基づき、ネットワークN2用のプロトコルに則ったデータに変換する。
【0044】
また特に図示しないが、中継装置2は、N1用通信手段21、N2用通信手段23がスキャン伝送データを送信する周期を、記憶手段26に記憶されている各送信周期のうちいずれの周期にするかを設定可能な表示画面をモニタなどの表示手段に表示する表示制御手段も有する。
ここで、ネットワークN1とネットワークN2に対してスキャン伝送データを中継する送信周期は、それぞれユーザーによって図示しない入力手段、表示画面などを介してあらかじめ設定される。
【0045】
以下、ネットワークN1、N2は、互いに通信規格(プロトコル)が異なり、設計思想や利用可能な資源等の違いから、それぞれのネットワークにおいて、スキャン伝送の送信周期が異なる、N1の方がN2よりも送信周期が短いものとして説明する。
【0046】
(動作説明)
このような構成で、中継装置2は以下の動作(3−1)〜(3−5)、(4−1)〜(4−5)を行なう。
【0047】
中継装置1がネットワークN1からネットワークN2へスキャン伝送データを中継する場合は以下の動作を行なう。
(3−1)N1用通信手段21は、ネットワークN1内のいずれかの制御装置からスキャン伝送データを受信する。
(3−2)演算制御部29は、N1用通信手段21からのスキャン伝送データをN2用バッファ24に格納する。
(3−3)周期調節手段27は、ネットワークN2でスキャン伝送データが送信されている第2の送信周期を記憶手段26から読み出し、中継制御手段25に第2の送信周期に合致する送信のタイミングを示すタイミング情報を中継制御手段25、N2用通信手段23に送信する。
(3−4)中継制御手段25は、受信したタイミング情報に基づき、そのタイミングよりも予め定められた時間分だけ前にN2用バッファ24からスキャン伝送データを読み出し、ネットワークN2のプロトコルに変換(加工)して、N2用通信手段23に出力する。
(3−5)N2用通信手段23は、第2の送信周期に合致するタイミングでネットワークN2のプロトコル用に変換されたスキャン伝送データをネットワークN2へと送信する。
【0048】
このため、中継装置2がネットワークN1から受信したスキャン伝送データをネットワークN2へ送信するスキャン伝送の送信周期は、ネットワークN2でのスキャン伝送送信周期と等しくなることになる。
【0049】
中継装置1がネットワークN2からネットワークN1へスキャン伝送データを中継する場合は以下の動作を行なう。
(4−1)N2用通信手段23は、ネットワークN2内のいずれかの制御装置からスキャン伝送データを受信する。
(4−2)演算制御部29は、N2用通信手段23からのスキャン伝送データをN1用バッファ22に格納する。
(4−3)周期調節手段27は、ネットワークN1でスキャン伝送データが送信されている第1の送信周期を記憶手段26から読み出し、中継制御手段25に第1の送信周期に合致する送信のタイミングを示すタイミング情報を中継制御手段25、N1用通信手段21に送信する。
(4−4)中継制御手段25は、受信したタイミング情報に基づき、そのタイミングよりも予め定められた時間分だけ前にN1用バッファ22からスキャン伝送データを読み出し、ネットワークN1のプロトコルに変換(加工)して、N1用通信手段21に出力する。
(4−5)N1用通信手段21は、第1の送信周期に合致するタイミングでネットワークN2のプロトコル用に変換されたスキャン伝送データをネットワークN1へと送信する。
【0050】
このため、中継装置2がネットワークN2から受信したスキャン伝送データをネットワークN1へ送信するスキャン伝送の送信周期は、ネットワークN1でのスキャン伝送送信周期と等しくなることになる。
【0051】
この結果、本発明に係る中継装置は、第1のネットワークから受信したスキャン伝送データを第2のネットワークの通信規格に則ったデータに変換する中継制御手段と、第2のネットワークにおけるスキャン伝送データの送信周期を記憶する記憶手段と、中継制御手段により変換されたスキャン伝送データを、第2のネットワークの送信周期で第2のネットワークへスキャン伝送方式を用いて送信する第1の伝送制御手段を備えたことにより、接続されるネットワーク間でスキャン伝送の送信周期が異なる場合であっても、通信効率よく確実にスキャン伝送データを中継できる点で有効である。
【0052】
また、本発明に係る中継装置は、上述の構成にすることにより、中継装置が接続されているプロトコルの異なる2つのネットワーク間でスキャン伝送の送信周期が異なる場合に、中継装置がその差を吸収し、それぞれのネットワークにとって適切な周期でスキャン伝送を中継することが可能となる。
この結果、特に、下記の効果A、B、Cが期待できる。
A:中継装置がスキャン伝送を送信周期が短いネットワークから送信周期が長いネットワークへ中継する際、中継先ネットワークにとって不必要なフレーム(スキャン伝送データ)は中継されず、余分な帯域の使用を防ぐことができる。
B:必要なフレーム(スキャン伝送データ)のみが中継されるため、中継先ネットワークの通信局(制御装置、ネットワークスイッチなど)の受信負荷の増加は最小限となり、実時間性の低下を防ぐことができる。
C:中継装置がスキャン伝送を送信周期が長いネットワークから送信周期が短いネットワークへ中継する際、トランジェントエラーによりスキャン伝送データが失われても、中継先ネットワークの通信局(制御装置、ネットワークスイッチなど)が想定している遅延時間以内でデータ更新が行われることになる点で有効である。
【0053】
なお、本発明に係る中継装置は、ユーザーにより送信周期が設定されるもの限定するものではなく、接続された2つのネットワークに対して中継するスキャン伝送における送信周期が中継装置2にあらかじめ設定されている(組み込まれている)ものでもよい。
この場合は、ユーザーのエンジニアリングミスによって発生するリスクを軽減することができる点で有効である。
【0054】
<第2の実施例>
なお、本発明に係る中継装置は、第1の実施例で説明した構成に加えて、接続されたネットワークに存在する通信局のアドレスを管理する通信局情報管理手段も備えるものでもよい。以下図2を用いて構成を具体的に説明する。
【0055】
図2は、本発明に係る中継装置の他の実施例の構成図であり第2の実施例〜第5の実施例における構成を説明する。図2では図1と共通する部分には同一の符号を付けている。
【0056】
図2において、本発明に係る中継装置2は、記憶手段26が、接続されたネットワークN1に接続される通信局(制御装置、ネットワークスイッチ、フィールド機器など)のネットワーク用のアドレスなどの識別子が格納される第1のデータテーブルと、ネットワークN2に接続される通信局のネットワーク用のアドレスなどの識別子が格納される第2のデータテーブルをそれぞれ記憶する。
【0057】
また、中継装置2は、演算制御部29が備える機能ブロック等として、記憶手段26に記憶された各データテーブルに基づき、ネットワークN1またはネットワークN2から受信したスキャン伝送データの送信元通信局(制御機器など)の識別子が第2のデータテーブルまたは第1のデータテーブル中の識別子と不一致であるときはスキャン伝送データを中継し、一致するときは異常データとして破棄する通信局情報管理手段30を備える。
【0058】
このような構成で、中継装置2はスキャン伝送を中継する際に、以下の動作を行なう。
以下、ネットワークN1からのスキャン伝送データをネットワークN2へ中継する場合を例として説明する。なおネットワークN2からのスキャン伝送データをネットワークN1へ中継する場合もこれとほぼ同じであるから説明を省略する。
【0059】
通信局情報管理手段30は、N1用通信手段21により受信したネットワークN1内のいずれかの制御装置からスキャン伝送データに基づき、送信元の通信局の識別子(アドレスなど)を抽出する。
また、通信局情報管理手段30は、抽出された識別子(送信元アドレス)と第2のデータテーブル中の識別子と比較する。
そして、中継装置2は、通信局情報管理手段30が比較の結果、不一致と判断する場合(いいかれば、送信元の通信局が中継先であるネットワークN2に重複して存在しない場合)には、当該スキャン伝送データは正常なデータであるとみなして、中継制御手段25、周期調節手段27によりスキャン伝送データを中継先ネットワークN2へ中継する。
一方、中継装置2は、通信局情報管理手段30が比較の結果、一致したと判断する場合(つまり送信元の通信局が中継先ネットワークに重複して存在している場合)には、当該スキャン伝送データを異常データとして破棄する。
【0060】
この結果、本発明の中継装置は、通信局情報管理手段が受信したスキャン伝送データが正常である場合にのみ中継先のネットワークに送信し、異常データであるときは中継先のネットワークに送信することなく破棄することにより、異常データが中継先ネットワークに送信されて余分な通信帯域の使用や通信局のプロセッサパワーおよびメモリの消費を防ぐことができる。このため、通信効率よく確実にスキャン伝送データを中継できる点で有効である。
【0061】
<第3の実施例>
なお、本発明に係る中継装置は、第1の実施例または第2の実施例で説明した構成に加えて、ネットワークN1またはネットワークN2に接続される機器、通信局のスキャン伝送の各タイミングとは異なるタイミングでスキャン伝送データを送信させる送信タイミング調節手段と、ネットワークN1またはN2の通信局と時刻同期を行う時刻同期手段、を備えるものでもよい。
【0062】
具体的には、本発明に係る中継装置2は、演算制御部29が備える機能ブロック等として、ネットワークN1またはネットワークN2に接続される通信局のスキャン伝送の各タイミングとは異なるタイミングでN2用通信手段23またはN1用通信手段21にスキャン伝送データを送信させるタイミング調整手段31と、ネットワークN1またはN2の通信局と時刻同期を行う時刻同期手段32を備える。
また、記憶手段26は、ネットワークN1またはネットワークN2に接続される通信局におけるスキャン伝送の各タイミングチャートを記憶する。
【0063】
このような構成で、中継装置2はスキャン伝送を中継する際に、次の動作を行なう。
以下、ネットワークN1からのスキャン伝送データをネットワークN2へ中継する場合を例として説明する。なおネットワークN2からのスキャン伝送データをネットワークN1へ中継する場合もこれとほぼ同じであるから説明を省略する。
【0064】
時刻同期手段32は、ネットワークN1またはN2の通信局と時刻同期を行うための制御データを送受信して時刻同期を行う。
【0065】
タイミング調整手段31は、記憶手段26のタイミングチャートに基づき、中継装置2がスキャン伝送データを送信するタイミングを割り当てる。たとえばタイミング調整手段31はネットワークN1、またはネットワークN2の通信局がスキャン伝送データを送信するタイミングを避けて、中継装置2がスキャン伝送データを送信できるタイミングを抽出して割り当てる。
【0066】
周期調節手段27は、ネットワークN1でスキャン伝送データが送信されている第1の送信周期を記憶手段26から読み出し、タイミング調整手段31によって割り当てられたタイミングであって中継制御手段25に第1の送信周期に合致する送信のタイミングを示すタイミング情報を中継制御手段25、N1用通信手段21に送信する。
【0067】
中継制御手段25は、受信したタイミング情報に基づき、そのタイミングよりも予め定められた時間分だけ前にN1用バッファ22からスキャン伝送データを読み出し、ネットワークN1のプロトコルに変換(加工)して、N1用通信手段21に出力する。
N1用通信手段21は、タイミング調整手段31によって割り当てられたタイミングであって第1の送信周期に合致するタイミングで、ネットワークN2のプロトコル用に変換されたスキャン伝送データをネットワークN1へと送信する。
【0068】
この結果、本発明の中継装置は、タイミング調整手段が、自機(中継装置2)を含む全通信局に対して送信できるタイミングをあらかじめ割り当てることにより、一時に通信がラッシュする事態を避けることができ、当該ネットワークのリアルタイム性が向上できる。このため、通信効率よく確実にスキャン伝送データを中継できる点で有効である。
【0069】
<第4の実施例>
なお、本発明に係る中継装置は、第1の実施例〜第3の実施例のいずれかで説明した構成に加えて、ネットワークN1またはネットワークN2に接続される通信局から受信するスキャン伝送データを2個以上結合させてスキャン伝送方式を用いて中継するスキャン伝送データ結合手段を備えるものでもよい。
【0070】
具体的には、本発明に係る中継装置2は、演算制御部29が備える機能ブロック等として、ネットワークN1またはネットワークN2に接続される制御装置や通信局から受信するスキャン伝送データを2個以上結合させて、ネットワークN1またはネットワークN2にスキャン伝送方式を用いて送信するスキャン伝送データ結合手段33を備える。
【0071】
このような構成で、中継装置2はスキャン伝送を中継する際に、次の動作を行なう。
以下、ネットワークN1からのスキャン伝送データをネットワークN2へ中継する場合を例として説明する。なおネットワークN2からのスキャン伝送データをネットワークN1へ中継する場合もこれとほぼ同じであるから説明を省略する。
【0072】
中継装置2は、スキャン伝送データ結合手段33が、ネットワークN1に対してスキャン伝送を中継するタイミングで、N1用送信バッファ22に格納してある順に複数のスキャン伝送データを結合して(組み合わせて)、一つのスキャン伝送データ(フレーム)として生成する。
このとき、スキャン伝送データ結合手段33は、この結合されたスキャン伝送データ(フレーム)を、予め定められた最大フレーム長をよりも短いフレーム長であるものを生成する。
【0073】
中継制御手段25は、スキャン伝送データ結合手段33により結合された複数のスキャン伝送データからなるデータを、ネットワークN2のプロトコルに変換(加工)して、N2用通信手段23に出力する。
【0074】
N2用通信手段23は、スキャン伝送データ結合手段33により結合された複数のスキャン伝送データからなる結合データを、第1の送信周期に合致するタイミングで、ネットワークN1へと送信する。
【0075】
なお、本実施例では、中継先ネットワークに存在するすべての通信局が、中継装置に加工された結合データ(フレーム)を受信すると、これを分割し、元来のスキャン伝送データ(フレーム)の内容を解釈する機能を有する。
【0076】
この結果、本発明の中継装置は、スキャン伝送データ結合手段33が、ネットワークN1に対してスキャン伝送を中継する際に、N1用送信バッファ22に格納してある順に複数のスキャン伝送データを結合して(組み合わせて)、一つのスキャン伝送データ(フレーム)として生成することにより、通信フレーム数を削減できる。
【0077】
また、本発明のようにスキャン伝送データ結合手段33が、複数のスキャン伝送データを結合して一つのスキャン伝送データとして送信することにより、通信のフレーム長が長いスキャン伝送データ1個とフレーム長が短いスキャン伝送データ複数個(多数)とで、いずれも合計データサイズが同じサイズである場合では、受信側のネットワークシステムにおいて複数個のスキャン伝送データを一つ一つ読み込む時間が軽減され、パフォーマンスを向上できる点で有効である。
【0078】
<第5の実施例>
なお、本発明に係る中継装置は、第1の実施例〜第4の実施例のいずれかで説明した構成に加えて、ネットワークN1、N2のスキャン伝送の送信周期を測定し記憶手段26に記憶する送信周期測定手段を備えるものでもよい。
【0079】
具体的には、本発明に係る中継装置2は、演算制御部29が備える機能ブロック等として、予め定められた時間だけ接続されたネットワークN1またはN2からのスキャン伝送データを受信し、当該時間と受信した回数とから(たとえば平均値を計算する等して)受信間隔を算出することにより、各ネットワークN1、N2におけるスキャン伝送の送信周期を測定し、記憶手段26に各送信周期を記憶する送信周期測定手段34を備える。
【0080】
この結果、本実施例に係る中継装置であれば、送信周期測定手段34が予め定められた時間だけスキャン伝送データを受信し、当該時間と受信した回数とから各ネットワークにおけるスキャン伝送の送信周期を算出することにより、第1の実施例で示したようにユーザーが送信周期を設定する場合に発生しうるエンジニアリングミスに係るリスクを伴うことなく、接続されたネットワークに対して適切な送信周期でスキャン伝送を中継することができる。
【符号の説明】
【0081】
2 中継装置
21 N1用通信手段(第1の伝送制御手段)
23 N2用通信手段(第2の伝送制御手段)
25 中継制御手段
26 記憶手段
27 周期調節手段
30 通信局情報管理手段
31 タイミング調整手段
33 スキャン伝送データ結合手段
34 送信周期測定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセス制御用のネットワークを構成する機器間でスキャン伝送方式を用いて送信されるスキャン伝送データを、互いに通信規格が異なる複数のネットワーク間で中継する中継装置において、
第1のネットワークから受信したスキャン伝送データを第2のネットワークの通信規格に則ったデータに変換する中継制御手段と、
前記第2のネットワークにおける前記スキャン伝送データの送信周期を記憶する記憶手段と、
前記中継制御手段により変換されたスキャン伝送データを、前記第2のネットワークのスキャン伝送における送信周期で前記第2のネットワークへスキャン伝送方式を用いて送信する第1の伝送制御手段を備えたことを特徴とする中継装置。
【請求項2】
前記記憶手段が、前記第1のネットワークにおける前記スキャン伝送データの送信周期を記憶し、
前記中継制御手段が、前記第2のネットワークから受信したスキャン伝送データを前記第1のネットワークの通信規格に則ったデータに変換し、
前記第2のネットワークから受信し前記中継制御手段により変換されたスキャン伝送データを、前記第1のネットワークのスキャン伝送における送信周期で前記第1のネットワークへスキャン伝送方式を用いて送信する第2の伝送制御手段を、備えたことを特徴とする請求項1記載の中継装置。
【請求項3】
前記第1の伝送制御手段に前記スキャン伝送データを前記第2のネットワークの送信周期で前記第2のネットワークへ伝送させ、前記第2の伝送制御手段に前記スキャン伝送データを前記第1のネットワークの送信周期で前記第1のネットワークへ伝送させる周期調節手段を、備えたことを特徴とする請求項2記載の中継装置。
【請求項4】
前記第1のネットワークに接続される機器の識別子が格納される第1のデータテーブルと、前記第2のネットワークに接続される機器の識別子が格納される第2のデータテーブルとを予め記憶し、
この識別子と第1のネットワークまたは第2のネットワークから受信したスキャン伝送データの送信元の識別子が第2のデータテーブルまたは第1のデータテーブル中の識別子と一致しないときは、スキャン伝送データを中継する通信局情報管理手段を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の中継装置。
【請求項5】
前記第1のネットワークまたは前記第2のネットワークに接続される機器のスキャン伝送の各タイミングとは異なるタイミングで第2の伝送制御手段または第1の伝送制御手段にスキャン伝送データを送信させるタイミング調整手段を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の中継装置。
【請求項6】
前記第1のネットワークまたは前記第2のネットワークに接続される機器から受信する前記スキャン伝送データを2個以上結合させて第2のネットワークまたは第1のネットワークにスキャン伝送方式を用いて送信するスキャン伝送データ結合手段を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の中継装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−239065(P2011−239065A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107131(P2010−107131)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】