説明

中継送受信機と通信方式

【課題】複雑な回路構成を要することなく同期捕捉や中継可否の判断、あるいはRSSIの測定を行う事が出来る中継送受信機と、これに使用される通信方式の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の中継送受信機は、通信方式にOFDMA/TDD方式を採用する移動体通信システムにおいて、基地局と移動局を中継する中継送受信機である。中継送受信機は、基地局から通常の下り方向制御チャネルとは別に追加された追加制御チャネルを受信して、追加制御チャネルに基づきフレーム同期を行う同期捕捉手段と、追加制御チャネルに基づき中継可否を判断する中継可否判断手段と、追加制御チャネルのRSSIを測定し、これを基に下り方向の受信信号の利得制御を行う利得制御手段の少なくとも一つを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信方式にOFDMA(Orthogonal Frequency Division Muletiple Access)/TDD(Time Division Duplex)方式を採用するXGP(Next Generation Personal Handy Phone System)システムの屋外基地局と移動局の間に配置される中継送受信機と、その通信方式に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信において、移動局を屋内で使用している場合、屋外基地局の電波が建物の壁で減衰して十分な受信電界強度を得られず、安定した通信が出来ない不感地帯が発生する。これを解消するために、屋外基地局の電波を受けられる建物の窓際などに中継送受信機を置いて、中継送受信機で下り方向と上り方向の電波を受信し、この受信波を増幅、再送信することで不感地帯を解消することが出来る。
【0003】
TDD方式を採用する通信システムでは、下り方向と上り方向で同一周波数を使用しており、下り方向と上り方向を時分割多重している。従って、中継送受信機は下り方向と上り方向のフレームを認識して分離する必要があり、フレーム同期が必要となる。
【0004】
例えば、XGPシステムと同じ通信方式を採用するモバイルWiMAX(WorldWide Interoperability for Microwave Access)システムでは、下り方向のフレームの先頭シンボルに既知のデータパターンを持つプリアンブルが配置されている(非特許文献2参照)。中継送受信機はこのプリアンブルを相関器で検出することによってフレーム構造を理解し、下り方向と上り方向の通信信号を中継することが出来る。
【0005】
XGPシステムでは、下り方向と上り方向のフレームをそれぞれ4つのタイムスロットに分割しており、夫々のタイムスロットに配置される通信チャネルには、先頭のシンボルに既知のデータパターンを持つトレーニングシンボルが配置されている(非特許文献1参照)。モバイルWiMAX同様、中継送受信機はこのトレーニングシンボルを相関器で検出することでタイムスロットの先頭を認識できる。しかしながら、この方法ではどのタイムスロットに配置された通信チャネルでトレーニングシンボルを検出したか認識できないため、下り方向と上り方向のフレーム構造は検出できない。
【0006】
通信方式にTDMA(Time Division Multiple Access)/TDD方式を採用するPHSシステムは、XGPシステムと同様に下り方向と上り方向のフレームをそれぞれ4つのタイムスロットに分割している(非特許文献3参照)。このタイムスロットの絶対スロット番号を認識する方法として、例えば特許文献1に記載の方法によれば、下り方向の制御チャネルを受信、復調して、このチャネルに含まれる絶対スロット番号を取得することによって、フレーム同期を行う。
【0007】
また、移動体通信には規格の異なる複数のシステムが存在し、中継送受信機は自システムの電波を判断して、自システムの電波のみ中継する必要がある。例えば、PHSシステムでは通信チャネル内に識別符号が埋め込まれている。特許文献2に記載の方法によれば、自システムを識別するための情報を中継送受信機内のメモリに記憶して、この記憶した自システムを識別するための情報と、下り制御チャネルに埋め込まれた識別符号を照合して、一致していた場合に中継を行うようにする。
【0008】
また、屋内で移動局が中継送受信機の再送信する電波を安定して受信するために、中継送受信機は、屋外基地局の送信する電波を受けて、この電波のRSSI(Received Signal Strength Indicator)を測定し、RSSIに基づいて再送信の利得制御を行い、下り方向の送信電力を一定に保っている。
【0009】
例えば特許文献3に記載されている方法によれば、モバイルWiMAXシステムの中継送受信機はこのプリアンブルの時間領域で送信電力を検波して、検波電圧を元に送信電力制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−78065号公報
【特許文献2】特開2005−79944号公報
【特許文献3】特開2009−171392号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】ARIB STD−T95 Version 1.2
【非特許文献2】IEEE Std802.16e−2005
【非特許文献3】RCR STD−28 5.3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
XGPシステムでは、PHSシステムと同様に、下り方向制御チャネルのCCI(Common Control Information)に絶対スロット番号情報が含まれている。中継送受信機は、この下り方向制御チャネルを受信・復調してCCIを解析すれば、絶対スロット番号情報を取得してフレーム同期することが出来る。
【0013】
また、XGPシステムでは、PHSシステムと同様に、下り方向制御チャネルのBS−Info(Base Station Information)に基地局を識別する符号が埋め込まれている。中継送受信機は、この下り方向制御チャネルを受信・復調してBS−Infoを解析することにより基地局識別符号を取得し、特許文献2の方法で所望の電波のみを中継することが出来る。
【0014】
しかしながら、XGPシステムの通信方式はOFDMA/TDDであり、これは時間軸方向に下り方向と上り方向をそれぞれ4つのタイムスロットで分割して、更に周波数軸方向にサブキャリアを幾つかのSCH(Subchannnel)で分割したPRU(Physical Resorce Unit)という単位で通信チャネルを配置している。また、通信チャネルの符号化方式には畳み込み符号を採用している。したがって、通信チャネルを復調するには、FFT(Fast Fourier Transform)回路とビタビ復号器が必要になる。これらの回路は回路規模が大きく、特に非再生方式の中継送受信機には本来必要のない回路である。
【0015】
また、XGPシステムの通信チャネルには、先頭のシンボルにWiMAXのプリアンブルに相当するトレーニングシンボルが配置されている。しかしながら、トレーニングシンボルの時間領域で検出される検波電圧は、周波数軸方向の通信チャネルの多重数によって変動する。そのため、特定の通信チャネル、例えば、下り方向の制御チャネルを復調して、その制御チャネルのトレーニングシンボル領域のRSSIを測定する必要がある。
【0016】
よって、下り方向の制御チャネルから所望の電波を判断し、且つフレーム同期、RSSI測定を行うために、中継送受信機にFFT回路とビタビ復号器を実装する必要があり、装置のコストが高くなり、且つ消費電力が増大するという問題がある。
【0017】
そこで、本発明は上述の問題点に鑑み、複雑な回路構成を要することなく同期捕捉や中継可否の判断、あるいはRSSIの測定を行う事が出来る中継送受信機と、これに使用される通信方式の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の中継送受信機は、通信方式にOFDMA/TDD方式を採用する移動体通信システムにおいて、基地局と移動局を中継する中継送受信機であって、基地局から通常の下り方向制御チャネルとは別に追加された追加制御チャネルを受信して、追加制御チャネルに基づきフレーム同期を行う同期捕捉手段と、追加制御チャネルに基づき中継可否を判断する中継可否判断手段と、追加制御チャネルのRSSIを測定し、これを基に下り方向の受信信号の利得制御を行う利得制御手段の少なくとも一つを備える。
【0019】
また、本発明の中継送受信機で使用される通信方式では、追加制御チャネルのPRU構造は通常の下り方向制御チャネルのPRU構造と同一であり、追加制御チャネルのトレーニングシンボルは通常の下り方向制御チャネルのトレーニングシンボルと同一形式であり、追加制御チャネルのトレーニングシンボル以外のシンボルにトレーニングシンボルと同じOFDMデータを載せることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の中継送受信機は、基地局から通常の下り方向制御チャネルとは別に追加された追加制御チャネルを受信して、追加制御チャネルに基づきフレーム同期を行う同期捕捉手段と、追加制御チャネルに基づき中継可否を判断する中継可否判断手段と、追加制御チャネルのRSSIを測定し、これを基に下り方向の受信信号の利得制御を行う利得制御手段の少なくとも一つを備える。追加制御チャネルの各スロットにおけるOFDMデータの有無に基づきフレーム同期や中継可否の判断を行えば、チャネルの復調を行うことなく同期捕捉や中継可否判断が行える。また、追加制御チャネルのサブキャリアの振幅検波出力からRSSIを測定すれば、チャネルの復調を行う必要がない。よって、チャネルの復調のためのFFT回路やビタビ復号回路といった大規模な回路構成が不要である。
【0021】
また、本発明の中継送受信機が使用する通信方式では、追加制御チャネルのPRU構造は通常の下り方向制御チャネルのPRU構造と同一であり、追加制御チャネルのトレーニングシンボルは通常の下り方向制御チャネルのトレーニングシンボルと同一形式であり、追加制御チャネルのトレーニングシンボル以外のシンボルにトレーニングシンボルと同じOFDMデータを載せる。これにより、基地局の既存のハードウェアを利用して追加制御チャネルの送信機能を実装することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施の形態1の追加制御チャネルのPRU構造を示す図である。
【図2】実施の形態1の追加制御チャネルのシンボル構成を示す図である。
【図3】実施の形態1の追加制御チャネルで絶対スロット番号を報知する原理を示す図である。
【図4】実施の形態1の追加制御チャネルで絶対スロット番号を報知する原理を示す図である。
【図5】実施の形態1の追加制御チャネルで絶対スロット番号を報知する原理を示す図である。
【図6】実施の形態1の追加制御チャネルで絶対スロット番号を報知する原理を示す図である。
【図7】実施の形態1の中継送受信機の構成図である。
【図8】実施の形態1の中継送受信機が備える振幅検波器の構成を示す図である。
【図9】実施の形態2の中継送受信機が備える振幅検波器の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施の形態1)
<追加制御チャネル>
本実施の形態の中継送受信機は、基地局と移動局との中継を行うものである。基地局は、下り方向に制御チャネルを送信する。ここで制御チャネルとは、通信用のチャネルを割り当てるために使用される基本チャネルのことである。本実施の形態では、基地局は通常の制御チャネル(以下、通常制御チャネルと称す)とは別に、図1に示すPRU構造の制御チャネル(以下、追加制御チャネルと称す)を下り方向に送信する。例えば、追加制御チャネルは、通常制御チャネルと同一SCH、同一スロットで、且つ通常制御チャネルの50msec後に送信される。
【0024】
図1において、縦軸はサブキャリアF1〜F24を示しており、横軸はシンボルS1〜S19を示している。追加制御チャネルのサブキャリアF1とF13はDCキャリアあるいはガードキャリアであり、振幅を0とする。OFDMデータが載るのはサブキャリアF2〜F12、そしてF14〜F24である。
【0025】
以下、追加制御チャネルの各シンボルについて説明する。図2(a)は、シンボルS1,S2の構造を示しており、GI(Guard Inteval)と連続した2つのOFDMデータ(第1OFDMデータ、第2OFDMデータ)で構成される。これは通常制御チャネルのトレーニングシンボルと同一の構造である。ただし、追加制御チャネルのトレーニングシンボルのトレーニングインデックスは、通常制御チャネルのトレーニングインデックスと異なる値をとるものとする。
【0026】
図2(b)は、シンボルS3〜S19の構造を示している。シンボルS3〜S19は、GIとOFDMデータから構成される、図に示すようにシンボルS3〜S19のGIとOFDMデータは、シンボルS1,S2のGIの一部と第1OFDMデータと同一のデータである。
【0027】
シンボルS3〜S6は、追加制御チャネルを送信している絶対スロット番号情報を報知するためのシンボルである。また、これらのシンボルは自システムを識別する固有パターンを兼ねる。例えば、追加制御チャネルが下り方向の第1スロットで送信されている場合は、図3に示すようにシンボルS3にOFDMデータを載せ、シンボルS4〜S6にはOFDMデータを載せず振幅を0とする。なお、図3ではサブキャリアF24についてのみ記載しているが、サブキャリアF2〜F12,F14〜F23についても同様である。
【0028】
また、追加制御チャネルが下り方向の第2スロットで送信されている場合は、図4に示すようにシンボルS4にOFDMデータを載せ、シンボルS3,S5,S6にOFDMデータを載せず振幅を0とする。追加制御チャネルが下り方向の第3スロットで送信されている場合は、図5に示すようにシンボルS5にOFDMデータを載せ、シンボルS3,S4,S6にOFDMデータを載せず振幅を0とする。追加制御チャネルが下り方向の第4スロットで送信されている場合は、図6に示すようにシンボルS6にOFDMデータを載せ、シンボルS2〜S5にOFDMデータを載せず振幅を0とする。
【0029】
シンボルS7は、中継可否情報を示すためのシンボルとする。すなわち、中継可を報知する場合にはシンボルS7にOFDMデータを載せ、中継不可を報知する場合にはOFDMデータを載せず振幅を0とする。
【0030】
シンボルS8〜S19には、OFDMデータを載せる。これは、他の基地局が制御チャネル送信前のキャリアセンスにおいて追加制御チャネルの送信スロットを未使用スロットと判断しないよう、追加制御チャネルのスロット内平均電力を上げるためである。
【0031】
本実施の形態の中継送受信機で用いられる通信方式において、追加制御チャネルのPRU構造は通常の下り方向制御チャネルのPRU構造と同一であり、追加制御チャネルのトレーニングシンボルは通常の下り方向制御チャネルのトレーニングシンボルと同一形式であり、追加制御チャネルのトレーニングシンボル以外のシンボルはトレーニングシンボルと同じOFDMデータである。これにより、基地局の既存のハードウェアを使用して追加制御チャネルの送信機能を実装することが出来る。
【0032】
また、追加制御チャネルのトレーニングシンボルのトレーニングインデックスは、通常の下り方向制御チャネルのトレーニングシンボルのトレーニングインデックスとは異なる値を持つ。よって、移動局は追加制御チャネルと通常の下り方向制御チャネルとを区別でき、移動局の動作に悪影響を及ぼさない。
【0033】
<中継送受信機>
図7は、本実施の形態の中継送受信機の構成の一例を示す図である。中継送受信機は、基地局との電波の送受信を行う基地局側アンテナ101と、移動局と電波の送受信を行う移動局側アンテナ105と、基地局から受信した下り方向の電波を増幅する下り方向増幅器106と、移動局から受信した上り方向の電波を増幅する上り方向増幅器103と、を備える。
【0034】
さらに、中継送受信機は、基地局側アンテナ101の入出力を、上り方向増幅器103と下り方向増幅器106のいずれかに切り替える基地局側切替器102と、移動局側アンテナ105の入出力を、上り方向増幅器103と下り方向増幅器106のいずれかに切り替える移動局側切替器104と、を備える。
【0035】
また、中継送受信機は、受信電波の自己相関値を出力する相関器107と、振幅検波を行う振幅検波器108と、振幅検波器108の出力から信号解析を行い絶対スロット番号を検出する信号解析器109と、絶対スロット番号の検出結果と自己相関値出力によって自システムの電波か否かを判断する制御部110と、絶対スロット番号の検出結果と自己相関値出力と振幅検波出力に基づいて追加制御チャネルのトレーニングシンボル領域のRSSIを求めるAGC(Automatic Gain Control)111と、を備える。
【0036】
次に、中継送受信機の動作を説明する。基地局側切替器102は、中継送受信機のフレーム同期が確立していない状態で、接続を下り方向増幅器106側に切り替える。移動局側切替器104は、接続を下り方向増幅器106と上り方向増幅器103のどちらにも切り換えずOFFの状態にする。この状態で、追加制御チャネルを載せた電波を基地局側アンテナ101が受信する。
【0037】
基地局側アンテナ101が受信した追加制御チャネルを載せた電波は、基地局側切替器102を介して相関器107に入力される。相関器107は下に示す式(1)で求められる受信電波の自己相関値ACFを出力する。相関器107の出力する自己相関値のピークは追加制御チャネルのシンボルS2の後半に検出されることを利用して、中継送受信機は基地局が送信する追加制御チャネルのタイムスロットに対して同期できる。
【0038】
【数1】

【0039】
ここで、fRXは下り方向受信複素信号、fRX*はfRXの共役複素数、TはOFDM周期を示している。
【0040】
また、受信電波は振幅検波器108にも入力され、振幅検波器108は任意のサブキャリアの振幅検波を行う。振幅検波器108の構成の一例を図8に示す。振幅検波器108は、発振器203、ミキサ201、低域通過フィルタ202を備えている。発振器203は追加制御チャネルのサブキャリアF2〜F12,F14〜F24のうち一つのサブキャリアと同一の周波数を発振する。例えば、発振器203の発振周波数をサブキャリアF7と同一の周波数であるとすると、ミキサ201は、この発振器203が出力する正弦波を用いて受信電波をダウンコンバートする。ミキサ201でダウンコンバートされた信号を低域通過フィルタ202に通して、受信電波のサブキャリアF7を振幅検波した出力信号が得られる。
【0041】
振幅検波器108の出力信号の包絡線から、追加制御チャネルのシンボル単位でOFDMデータの有無が判断できる。振幅検波器108の出力信号と相関器107の自己相関値出力は信号解析器109に入力される。信号解析器109は、追加制御チャネルのシンボルS3〜S6毎の振幅検波出力から、絶対スロット番号情報を取得する。
【0042】
絶対スロット番号情報の取得は、図3〜図6を用いて既に説明したとおり、どこのシンボルにOFDMデータが載っているかを検出して行われる。OFDMデータの存在有無の判断は、例えば、予め設定した閾値と振幅検波出力を比較することにより行う。振幅検波出力が閾値を超えていれば、追加制御チャネルの該当するシンボルにOFDMデータがあると判断し、振幅検波出力が閾値を超えていなければ、追加制御チャネルの該当するシンボルにOFDMデータはないと判断する。
【0043】
また、信号解析器109は追加制御チャネルのシンボルS7の振幅検波出力から中継可否情報を取得する。既に説明したとおり、シンボルS7にOFDMデータが存在すれば中継可、存在しなければ中継不可である。OFDMデータの有無を判断する手法は、絶対スロット番号情報の取得の際と同様に、予め設定した閾値との比較により行う事が出来る。
【0044】
信号解析器109が出力する絶対スロット番号情報と中継可否情報は、相関器107の自己相関値出力と共に制御部110に入力される。絶対スロット番号情報が未検出であれば、制御部110は当該受信電波が自システムの電波ではないと判断し、中継送受信機の状態を維持する。すなわち、中継を行わない。また、中継可否情報が中継不可を示す場合も同様に中継を行わない。絶対スロット番号情報が有効で、且つ中継可否情報が中継可を示していれば、当該受信電波は自システムの電波であり、且つ中継可能であると判断し、更にフレーム同期が確立したとして、この絶対スロット番号と相関器107の自己相関値出力のピークを元に下り方向と上り方向のTDDフレームを生成する。
【0045】
信号解析器109の絶対スロット番号情報と相関器107の自己相関値出力は、振幅検波器108の出力信号と共にAGC111に入力される。有効な絶対スロット番号が検出されていれば、AGC111は追加制御チャネルを受信したと判断して、追加制御チャネルのトレーニングシンボル領域のRSSIを測定する。
【0046】
AGC111は、相関器107の自己相関値出力のピークを元にトレーニングシンボルの位置を判断し、その位置で振幅検波器108の出力信号から追加制御チャネルのトレーニングシンボルのRSSIを測定する。ここで求めるRSSIは、追加制御チャネルのサブキャリアを振幅検波した出力から求めているため、周波数軸方向の通信チャネルの多重数によって変動しないという利点がある。
【0047】
次に、通常の中継動作について説明する。下り方向を中継する場合、基地局側切替器102と移動局側切替器104を下り方向増幅器106側に切り換えて、基地局側アンテナ101で受信した電波を下り方向増幅器106で増幅した後、移動局側アンテナ105から増幅した信号を送信する。一方、上り方向を中継する場合、基地局側切替器102と移動局側切替器104を上り方向増幅器103側に切り換えて、移動局側アンテナ105で受信した電波を上り方向増幅器103で増幅した後、基地局側アンテナ101から増幅した信号を送信する。
【0048】
AGC111は、追加制御チャネルで測定したRSSIを基に、下り方向の送信電力が一定になるよう下り方向増幅器106の利得を制御する。以降、信号解析器109で絶対スロット番号情報が未検出となるか、信号解析器109の出力の中継可否情報が中継不可となれば、中継を停止して、中継送受信器を初期状態に戻す。
【0049】
すなわち、本実施の形態の中継送受信機は、通信方式にOFDMA/TDD方式を採用する移動体通信システムにおいて、基地局と移動局を中継する中継送受信機であって、基地局から通常の下り方向制御チャネルとは別に追加された追加制御チャネルを受信して、追加制御チャネルに基づきフレーム同期を行う同期捕捉手段と、追加制御チャネルに基づき中継可否を判断する中継可否判断手段と、追加制御チャネルのRSSIを測定し、これを基に下り方向の受信信号の利得制御を行う利得制御手段の少なくとも一つを備える。追加制御チャネルによって簡単な回路構成によって同期捕捉や中継可否判断、利得制御を行う事が可能になる。
【0050】
また、本実施の形態の中継送受信機において、同期捕捉手段は、追加制御チャネルの第1の所定シンボル群におけるOFDMデータの有無パターンから絶対スロット番号情報を取得し、これに基づきフレーム同期を行い、中継可否判断手段は、追加制御チャネルの第2の所定シンボルにおけるOFDMデータの有無から中継可否情報を取得し、これと絶対スロット番号情報の取得状況に基づき中継可否を判断する。これにより、チャネルを復調することなく簡単な回路構成によって同期捕捉や中継可否判断を行う事が出来る。
【0051】
そして、本実施の形態の中継送受信機は、追加制御チャネルから自己相関値を求める相関器と、追加制御チャネルの所定のサブキャリアについて振幅検波する振幅検波器と、をさらに備え、同期捕捉手段は、振幅検波器の検波出力から第1の所定シンボル群の各シンボルにおけるOFDMデータの有無を判定し、中継可否判断手段は、振幅検波器の検波出力から第2の所定シンボルにおけるOFDMデータの有無を判定し、利得制御手段は、相関器が出力する自己相関値から追加制御チャネルのトレーニングシンボル領域を把握し、絶対スロット番号情報が有効である場合に、振幅検波器の検波出力から追加制御チャネルのトレーニングシンボル領域のRSSIを測定する。チャネルを復調するのに必要なFFT回路やビタビ復号回路に比べて振幅検波器は回路規模が小さいため、中継送受信機の装置コストや消費電力を低減する効果がある。
【0052】
<効果>
本実施の形態の中継送受信機によれば、既に述べた通り以下の効果を奏する。すなわち、本実施の形態の中継送受信機は、通信方式にOFDMA/TDD方式を採用する移動体通信システムにおいて、基地局と移動局を中継する中継送受信機であって、基地局から通常の下り方向制御チャネルとは別に追加された追加制御チャネルを受信して、追加制御チャネルに基づきフレーム同期を行う同期捕捉手段と、追加制御チャネルに基づき中継可否を判断する中継可否判断手段と、追加制御チャネルのRSSIを測定し、これを基に下り方向の受信信号の利得制御を行う利得制御手段の少なくとも一つを備える。追加制御チャネルによって簡単な回路構成によって同期捕捉や中継可否判断、利得制御を行う事が可能になる。
【0053】
また、同期捕捉手段は、追加制御チャネルの第1の所定シンボル群におけるOFDMデータの有無パターンから絶対スロット番号情報を取得し、これに基づきフレーム同期を行い、中継可否判断手段は、追加制御チャネルの第2の所定シンボルにおけるOFDMデータの有無から中継可否情報を取得し、これと絶対スロット番号情報の取得状況に基づき中継可否を判断する。追加制御チャネルのシンボルS3〜S6におけるOFDMデータの有無によって絶対スロット番号情報と中継可否情報を中継送受信装置に報知し、さらに絶対スロット番号情報が、自システムを識別する固有パターンともなることにより、中継送受信装置は追加制御チャネルのOFDMデータの有無パターンから絶対スロット番号情報と中継可否情報を取得し、且つ自システム宛の電波であるか否かを判別できる。よって、チャネルを復調する必要がなく、複雑な回路を必要としない。
【0054】
そして、中継送受信機は、追加制御チャネルから自己相関値を求める相関器と、追加制御チャネルの所定のサブキャリアについて振幅検波する振幅検波器と、をさらに備え、同期捕捉手段は、振幅検波器の検波出力から第1の所定シンボル群の各シンボルにおけるOFDMデータの有無を判定し、中継可否判断手段は、振幅検波器の検波出力から第2の所定シンボルにおけるOFDMデータの有無を判定し、利得制御手段は、相関器が出力する自己相関値から追加制御チャネルのトレーニングシンボル領域を把握し、絶対スロット番号情報が有効である場合に、振幅検波器の検波出力から追加制御チャネルのトレーニングシンボル領域のRSSIを測定する。振幅検波出力を基にOFDMデータの有無を判定し、さらにRSSIを測定するため、チャネルを復調する必要がない。振幅検波器は回路規模が小さいため、中継送受信機の装置コストや消費電力を低減する効果がある。
【0055】
本実施の形態の中継送受信機で用いられる通信方式によれば、既に述べたとおり以下の効果を奏する。すなわち、本実施の形態の中継送受信機で用いられる通信方式において、追加制御チャネルのPRU構造は通常の下り方向制御チャネルのPRU構造と同一であり、追加制御チャネルのトレーニングシンボルは通常の下り方向制御チャネルのトレーニングシンボルと同一形式であり、追加制御チャネルのトレーニングシンボル以外のシンボルはトレーニングシンボルと同じOFDMデータである。これにより、基地局の既存のハードウェアを使用して追加制御チャネルの送信機能を実装することが出来る。
【0056】
また、追加制御チャネルを一つのPRUで基地局から送信するようにしたので、下り方向のスループットを下げないという効果が得られる。
【0057】
また、追加制御チャネルのトレーニングシンボルのトレーニングインデックスは、通常の下り方向制御チャネルのトレーニングシンボルのトレーニングインデックスとは異なる値を持つ。よって、移動局は追加制御チャネルと通常の下り方向制御チャネルとを区別でき、移動局の動作に悪影響を及ぼさない。
【0058】
(実施の形態2)
本実施の形態の中継送受信機は、実施の形態1の中継送受信機と比較して振幅検波器108の構成が異なるが、それ以外の構成は同一である。図9に、本実施の形態の振幅検波器108の構成を示す。図9中、同一又は対応する構成要素には図8で付したものと同一の参照符号を付している。
【0059】
本実施の形態の振幅検波器は、発振器203と、ミキサ201と、低域通過フィルタ202と、発振器206と、ミキサ204と、低域通過フィルタ205と、合成器207を備える。
【0060】
発振器203は、追加制御チャネルのサブキャリアF2〜F12,F14〜F24のいずれかと同一の周波数の信号を発振する。例えば、発振器203の発振周波数はサブキャリアF7と同一周波数であるとすると、ミキサ201は、この発振器203が出力する正弦波を用いて受信電波をダウンコンバートする。ミキサ201でダウンコンバートされた信号を低域通過フィルタ202に通して、受信電波のサブキャリアF7を振幅検波した出力信号が得られる。
【0061】
一方、発振器206は、追加制御チャネルのサブキャリアF2〜F12,F14〜F24のいずれかと同一の周波数で、且つ発振器203の発振周波数とは別の周波数の信号を発振する。例えば、発振器206の発振周波数はサブキャリアF19と同一周波数であるとすると、ミキサ204は、この発振器206が出力する正弦波を用いて受信電波をダウンコンバートする。ミキサ204でダウンコンバートされた信号を低域通過フィルタ205に通して、受信電波のサブキャリアF19を振幅検波した出力信号が得られる。
【0062】
低域通過フィルタ202と低域通過フィルタ205でそれぞれ振幅検波した信号は合成器207に入力され、合成器207からサブキャリアF7とサブキャリアF19を振幅検波した合成信号が出力される。この合成した振幅検波信号を用いて、実施の形態1と同様の方法で信号解析器109において絶対スロット番号情報を取得し、AGG111において追加制御チャネルのトレーニングシンボル領域のRSSIを測定することが出来る。
【0063】
<効果>
本実施の形態の振幅検波器では、追加制御チャネルのサブキャリアF2〜F12,F14〜F24のうち2つの異なるサブキャリアを振幅検波して合成するため、ダイバーシティ効果が得られ、よりノイズ耐性の高い追加制御チャネルの受信が出来るとともに、安定したRSSI測定が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、通信方式にOFDMA/TDD方式を採用する移動体通信システムの基地局と移動局の間に配置される中継送受信機に利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
101 基地局側アンテナ、102 基地局側切替器、103 上り方向増幅器、104 移動局側切替器、105 移動局側アンテナ、106 下り方向増幅器、107 相関器、108 振幅検波器、109 信号解析器、110 制御部、111 AGC、201,204 ミキサ、202,205 低域通過型フィルタ、203,206 発振器、207 合成器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信方式にOFDMA/TDD方式を採用する移動体通信システムにおいて、基地局と移動局を中継する中継送受信機であって、
前記基地局から通常の下り方向制御チャネルとは別に追加された追加制御チャネルを受信して、
前記追加制御チャネルに基づきフレーム同期を行う同期捕捉手段と、
前記追加制御チャネルに基づき中継可否を判断する中継可否判断手段と、
前記追加制御チャネルのRSSIを測定し、これを基に下り方向の受信信号の利得制御を行う利得制御手段の少なくとも一つを備えることを特徴とする中継送受信機。
【請求項2】
前記同期捕捉手段は、前記追加制御チャネルの第1の所定シンボル群におけるOFDMデータの有無パターンから絶対スロット番号情報を取得し、これに基づきフレーム同期を行い、
前記中継可否判断手段は、前記追加制御チャネルの第2の所定シンボルにおけるOFDMデータの有無から中継可否情報を取得し、これと前記絶対スロット番号情報の取得状況に基づき中継可否を判断することを特徴とする、請求項1に記載の中継送受信機。
【請求項3】
前記追加制御チャネルから自己相関値を求める相関器と、
前記追加制御チャネルの所定のサブキャリアについて振幅検波する振幅検波器と、をさらに備え、
前記同期捕捉手段は、前記振幅検波器の検波出力から前記第1の所定シンボル群の各シンボルにおけるOFDMデータの有無を判定し、
前記中継可否判断手段は、前記振幅検波器の検波出力から前記第2の所定シンボルにおけるOFDMデータの有無を判定し、
前記利得制御手段は、前記相関器が出力する自己相関値から前記追加制御チャネルのトレーニングシンボル領域を把握し、前記絶対スロット番号情報が有効である場合に、前記振幅検波器の検波出力から前記追加制御チャネルのトレーニングシンボル領域のRSSIを測定することを特徴とする、請求項2に記載の中継送受信機。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の中継送受信機で使用される通信方式であって、
前記追加制御チャネルのPRU構造は前記通常の下り方向制御チャネルのPRU構造と同一であり、
前記追加制御チャネルのトレーニングシンボルは前記通常の下り方向制御チャネルのトレーニングシンボルと同一形式であり、
前記追加制御チャネルの前記トレーニングシンボル以外のシンボルに前記トレーニングシンボルと同じOFDMデータを載せることを特徴とする、通信方式。
【請求項5】
前記追加制御チャネルのトレーニングシンボルのトレーニングインデックスは、前記通常の下り方向制御チャネルのトレーニングシンボルのトレーニングインデックスとは異なる値を持つことを特徴とする、請求項4に記載の通信方式。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−181981(P2011−181981A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41219(P2010−41219)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(304058826)株式会社ウィルコム (56)
【Fターム(参考)】