説明

中継通信システム

【課題】中継通信装置における呼確立の動作による負荷を軽減する中継通信システムを得る。
【解決手段】端末が収容される第一の通信ネットワークと、複数の第一の通信ネットワーク間にある第二の通信ネットワークと、第一の通信ネットワークと第二の通信ネットワークとを連結する中継通信装置とを備える中継通信システムにおいて、前記中継通信装置は、中継通信装置同士で予め第二の通信ネットワーク内に所要の呼を確立するシグナリング処理機能部と、呼を通過可能に、パケットをカプセル化/カプセル化解除するカプセル化処理機能部と、カプセル化したパケットを、呼を通して転送する呼判定処理機能部と、カプセル化解除されたパケットを、自装置の配下の端末に転送する通信制御機能部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼制御/呼管理を前提としないプライベート網と、呼制御/呼管理を伴うグローバル網と、プライベート網とグローバル網とを連結する中継通信装置と、を備える中継通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
端末が所属するプライベート網とグローバル網とにおける通信を比較した場合、プライベート網では安価に高速な通信ができるが、グローバル網では、プライベート網における通信に比較して低速かつ高価である。そのため、グローバル網では、様々なシステムを用いて高速化を図るが、プライベート網では既に高速な通信が容易に行えるため、今後ともシステムが大きくは変わらない可能性がある。そこで、グローバル網におけるゲートウェイ装置間の通信では、その通信方式をプライベート網とは異なる通信方式に変更する手法は有効な手段といえる。
【0003】
その手段のひとつとして、近年ではもともとIP電話のために開発された呼制御プロトコルを用い、グローバル網において呼(以下、セッションという)を確立し、呼制御および呼管理を実現する技術が有望視されている。この技術においては、プライベート網の呼制御プロトコルに対応していない端末からの通信データを、グローバル網に確立したセッションを通すための中継通信装置を、グローバル網とプライベート網との接点に設置する。
【0004】
このとき、中継通信装置は最大でプライベート網に収容される端末の数だけ通信を取り扱うこととなるので、中継通信装置に非常に大きな負荷がかかることとなる。このことに対応して、例えば特許文献1によれば、VoIP(Voice over Internet Protocol)パケットの中継通信装置は、異なる発信端末から同じ宛先へのVoIPパケットを統合し、統合されたパケットについてルーティングすることによって、中継通信装置にかかる負荷を軽減する。
【0005】
【特許文献1】特開2005−311910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、中継通信装置は、配下の通信端末の個別の通信コネクションの接続要求に対して夫々セッションを確立する。そのため、短時間で多数の接続要求が行われると、それぞれの接続要求に対してセッションを確立するため、このことも中継通信装置に大きな負荷をかける一因となるという問題があった。上記特許文献1の技術は、この問題を解決していない。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、中継通信装置におけるセッション確立の動作による負荷を軽減する中継通信システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、端末が収容される呼制御機能を前提としない複数の第一の通信ネットワークと、前記複数の第一の通信ネットワーク間にあって呼制御/呼管理機能を有する第二の通信ネットワークと、前記第一の通信ネットワークと前記第二の通信ネットワークとを連結する中継通信装置とを備える中継通信システムにおいて、前記中継通信装置は、中継通信装置同士で予め前記第二の通信ネットワーク内に所要の呼を確立するシグナリング処理機能部と、前記中継通信装置が自装置の配下の第一の通信ネットワーク内の端末を送信元とし、別の第一の通信ネットワーク内の端末を送信先としたパケットを捉えたとき、該送信先の端末が所属する第一の通信ネットワークを配下にする中継通信装置との間で確立されている呼を前記パケットが通過可能になるように、前記呼に特有の所定のヘッダを用いて前記パケットをカプセル化し、前記中継通信装置が前記別の第一の通信ネットワーク内の端末から自装置の配下の第一の通信ネットワーク内の端末を送信先として前記呼を通過して送信されてきたカプセル化されたパケットを捉えたとき、該パケットから前記所定のヘッダを外してカプセル化解除する、カプセル化処理機能部と、自装置のカプセル化処理機能部がカプセル化したパケットを、前記呼を通して前記別の第一の通信ネットワークを配下とする中継通信装置に転送する呼判定処理機能部と、前記カプセル化解除されたパケットを、自装置の配下の第一の通信ネットワークに所属する前記パケットの送信先の端末に転送する通信制御機能部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、中継通信装置は、予め別の中継通信装置との間にセッションを確立しておき、パケットを前記するセッションを通過できるようにカプセル化するので、異なる通信コネクションのパケットであっても、夫々の通信コネクションに対して夫々のセッションを確立することなく同一のセッションを通過できるようになるので、中継通信装置におけるセッション確立の動作による負荷を軽減する中継通信システムを得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明にかかる中継通信システムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
実施の形態1では、呼制御プロトコルとして、広く採用されているSIP(Session Initiation Protocol)を用いることとして説明する。図1は、本発明にかかる中継通信システムの実施の形態1のネットワーク構成の一例を示す図である。
【0012】
図1に示す中継通信システム1においては、呼制御を伴わないプライベート網11および12が、中継通信装置111および112を夫々介して、グローバル網10に接続されている。グローバル網10は、呼制御/呼管理を伴うネットワークである。プライベート網11およびプライベート網12は、夫々端末101および端末102を収容している。端末101および端末102はコンピュータ端末であり、UDP(User Datagram Protocol)で通信を行うものとする。
【0013】
次に、中継通信装置111および112の機能構成について説明する。図2は、中継通信装置111および中継通信装置112の機能構成を説明する図である。双方の中継通信装置の機能構成は同様であるので、機能構成についての説明は、中継通信装置111についてのみ説明する。
【0014】
図2において、中継通信装置111は、シグナリング処理機能部211と、SIPセッション判定処理機能部212と、カプセル化処理機能部213と、通信制御機能部214と、を有する。中継通信装置111は、制御部、記憶部、および通信部を備えるコンピュータであり、制御部、記憶部、および通信部の協働により、上記各機能部が生成される。
【0015】
シグナリング処理機能部211は、通信制御機能部214に指令し、他の中継通信装置(ここでは中継通信装置112)との間で予めSIPのセッションを確立させる機能を有する。SIPのセッションは、送信元の端末のアドレスと、送信元の端末のポート番号と、送信先の端末のアドレスと、送信先の端末のポート番号と、によって個別に確立されるものであるが、シグナリング処理機能部211が予め確立するセッションは、中継通信装置111と中継通信装置112との間で一意の通信となるように、予め定められたアドレスとポート番号に基づいて作成された擬似UDPパケットに基づいて確立される。確立されたセッションは、シグナリング処理機能部211が要求した帯域幅と優先度とが確保されている。
【0016】
カプセル化処理機能部213は、他の端末(ここでは端末102)に宛てたUDPパケットを端末101から通信制御機能部214を介して受信したとき、該UDPパケットをシグナリング処理機能部211の働きにより予め確立された、UDPパケットの宛先の端末102を配下に持つ中継通信装置112とのセッションを通過させるために、該UDPパケットに、前記する予め定められたアドレスとポート番号に基づいて作成された擬似UDPヘッダを付加することによってカプセル化し、SIPセッション判定処理機能部212に受け渡す。また、セッションを通して受信したカプセル化されたパケットを、通信制御機能部214を介して受信したとき、擬似UDPヘッダを外すことによってカプセル化解除し、通信制御機能部214に受け渡す。
【0017】
カプセル化前のUDPパケットと、カプセル化後のUDPパケットとを、模式的に示した図を図3に示す。
【0018】
図3において、カプセル化前のUDPパケットはIPヘッダ301、UDPヘッダ302およびデータ部303を有する。一方、擬似UDPヘッダでカプセル化したパケットは、前記するUDPパケットのIPヘッダ301、UDPヘッダ302およびデータ部303に、擬似UDPヘッダを構成するIPヘッダ311、UDPヘッダ312およびカプセル化の情報313が付加されたものである。カプセル化の情報313は、IPヘッダ301、UDPヘッダ302およびデータ部303が、擬似UDPヘッダでカプセル化されたパケットのデータ部にあるという情報を記述している。これにより、IPヘッダ301、UDPヘッダ302およびデータ部303は、カプセル化されたパケットのデータ部として扱われる。つまり、カプセル化後のパケットに示すIPヘッダ301’、UDPヘッダ302’、データ部303’は、夫々IPヘッダ301、UDPヘッダ302、データ部303と全く同等である。
【0019】
図2に戻って、SIPセッション判定処理機能部212は、カプセル化処理機能部213により擬似UDPヘッダでカプセル化されたパケットを受け取ると、該パケットの擬似UDPヘッダを解析して中継通信装置112と自装置111とのセッションを通過されるパケットであると判定し、通信制御機能部214に指令して該パケットを該セッションと通して中継通信装置112に送信させる。
【0020】
通信制御機能部214は、自装置111の配下の端末101から、端末102に宛てたUDPパケットを受信したとき、該パケットをカプセル化処理機能部213に送信する。また、中継通信装置112から、カプセル化されたパケットを受信すると、該パケットをカプセル化処理機能部213に送信する。また、カプセル化処理機能部213から、カプセル化解除されたUDPパケットを受信すると、宛先を確認して自装置111の配下の端末101に該パケットを送信する。また、通信制御機能部214は、シグナリング処理機能部211の指令により、セッション確立のためのメッセージの送受信を行う。また、通信制御機能部214は、SIPセッション判定処理機能部212の指令により、カプセル化されたパケットを、前記予め確立したセッションを通して中継通信装置112に送信する。
【0021】
なお、中継通信装置112も中継通信装置111と同様な構成となっているが、パケットの転送の流れを説明するために、各機能部に、シグナリング処理機能部211、SIPセッション判定処理機能部212、カプセル化処理機能部213、および通信制御機能部214というように、中継通信装置111の各機能部と異なる符号を付与した。また、特に断りが無い限り、中継通信装置と表記する場合は、中継通信装置111および/または中継通信装置112を、中継通信装置間と表記する場合は、中継通信装置111と中継通信装置112との間を指すこととする。
【0022】
次に、本発明の中継通信システムの実施の形態1の動作を説明する。図4は、実施の形態1の中継通信システムの動作を説明するシーケンス図である。
【0023】
図4において、まず、中継通信装置111および中継通信装置112の間に、シグナリング処理機能部211および221により、擬似UDPパケットによるセッションが確立される(ステップS1)。セッション確立の動作は、具体的には、シグナリング処理機能部211が「INVITE」メッセージを送信して発呼し、前記INVITEメッセージを受信した中継通信装置112においては、シグナリング処理機能部221が「200 OK」メッセージを送信して応答する。該応答を受信した中継通信装置111においては、シグナリング処理機能部211が「ACK」メッセージを送信する。中継通信装置112が、該「ACK」メッセージを受信して、両方の中継通信装置間にセッションが確立される。「INVITE」メッセージのボディ部にSDP(Session Description Protocol)の規格に従って帯域幅や優先度などの設定がなされ、確立されたセッションは、設定された分の帯域と優先度が確保されている。
【0024】
次に、中継通信装置111が端末101から端末102に宛てたUDPパケットを受信すると、通信制御機能部214は該パケットをカプセル化処理機能部213に送信し、該パケットに擬似UDPヘッダを付加してカプセル化し、該カプセル化されたパケットは、SIPセッション判定処理機能部212により中継通信装置112に宛てて転送される(ステップS2)。
【0025】
カプセル化されたパケットを中継通信装置112が受信すると、該パケットは、通信制御機能部224を経由してカプセル化処理機能部223に受け渡されてカプセル化解除され、該カプセル化解除されたパケットは通信制御機能部224を経由して端末102に送信される(ステップS3)。
【0026】
このように、異なるプライベート網に属する端末同士のUDPパケット通信において、他の端末へ送信されたUDPパケットは、夫々のプライベート網とグローバル網との接点において中継通信装置間により擬似UDPヘッダを用いてカプセル化されることにより、中継通信装置同士でグローバル網に予め確立された、帯域幅と優先度が確保されたセッションを通過できるようになる。
【0027】
次に、このように動作する本発明の実施の形態1による中継通信システムにおいて、端末101が端末102に宛ててUDP1、UDP2、UDP3、・・・、UDPnと複数の異なる通信を行った場合について説明する。異なる通信とは、送信元および/または送信先のポート番号が異なる場合などの通信を含む。
【0028】
この場合の実施の形態1による中継通信システムの動作を説明する図を図5に示す。図5において、複数の異なるUDPパケットUDP1〜UDPnは、中継通信装置111が転送する毎に、前記予め確立したセッションを通過させるために、擬似UDPヘッダを付加してカプセル化して転送し、中継通信装置112は、前記カプセル化されたパケットを受信する毎に、受信したカプセル化されたパケットをカプセル化解除して端末102に転送する。
【0029】
このように、異なるプライベート網に属する端末同士のUDP通信において、中継通信装置は、複数の異なるUDPパケットを同じセッションを通過できるように前記UDPパケットをカプセル化する。
【0030】
次に、図6に示すように、図1のネットワーク構成に加えて、プライベート網11がさらに端末103を、プライベート網12がさらに端末104を、夫々有するネットワーク構成をとる場合における、実施の形態1の中継通信システムの動作を説明する。
【0031】
例えば、端末101が端末104へ、端末103が端末104へ、UDPパケットを送信する場合、夫々のUDPパケットについて、パケットを受信した中継通信装置111は、同一の予め確立されたセッションを通過できるように、パケットをカプセル化する。また、該パケットを受信した中継通信装置112は、カプセル化を解除し、該カプセル化解除されたパケットを端末104に転送する。
【0032】
このように、送信元および/または送信先の端末が異なるUDPパケットであっても、経由する中継通信装置が同じであれば、擬似UDPヘッダによりカプセル化されることにより、同じセッションを通過できる。
【0033】
ところで、以上の説明においては、端末101〜104はUDPによる通信を行うとして説明したが、中継通信装置において通信の種類が判別可能であれば、どのような形式の通信方式であってもかまわない。また、端末101〜104は、中継通信装置において判別可能な種類の通信を行うものであれば、コンピュータに限る必要はなく、例えばネットワークカメラ、デジタルテレビ、ネットワークレコーダー、AV機器などであってもよい。
【0034】
また、セッションは、予め定められたアドレスとポート番号に基づいて作成された擬似UDPに基づいて確立されるとしたが、中継通信装置が配下の端末から最初に受信したパケットに記述される送信元および送信先のアドレスおよびポート番号に基づいて確立されるようにし、それ以降のパケットについて、前記確立されたセッションを通過させるようにしてもよい。
【0035】
また、中継通信装置は、パケットを予め確立したセッションを通過させるために、擬似UDPヘッダによりカプセル化するとして説明したが、同じセッションを通過させることができるものであれば擬似ヘッダの通信方式は問わず、例えばTCP(Transmission Control Protocol)による擬似ヘッダであってもかまわない。
【0036】
また、中継通信装置間に確立するセッションが従うプロトコルについては明記しなかったが、中継通信装置間のネットワークに適したプロトコルにより行われることとしてよい。例えば、中継通信装置111および112間がIPv6のネットワークであった場合は、IPv6によりセッションを確立する。そのとき、中継通信装置111が配下の端末より受信するプライベート網12に属する端末宛のパケットがIPv4によるものであった場合には、中継通信装置111は、IPv6のフォーマットにおいてカプセル化を行う。このように、プライベート網におけるネットワークプロトコルと中継通信装置間のネットワークプロトコルが異なる場合は、中継通信装置においてパケットのフォーマットを適切に変換して転送するようにするとよい。
【0037】
また、呼制御プロトコルとしてSIPを採用して説明したが、中継通信装置間でセッションを確立でき、確立したセッションに対して帯域幅や優先度のサービスが付加できるプロトコルであれば、使用する呼制御プロトコルの種類を問わない。
【0038】
このように、実施の形態1による中継通信システムによれば、中継通信装置は、予め別の中継通信装置との間にセッションを確立しておき、パケットを該セッションを通過できるようにカプセル化するので、異なる通信コネクションのパケットであっても、夫々の通信コネクションに対して夫々のセッションを確立することなく同一のセッションを通過できるようになるので、中継通信装置におけるセッション確立の動作による負荷を軽減する中継通信システムを得ることができる。
【0039】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2による中継通信システムは、予め確立しておいたセッションを通過させる通信の帯域消費量に応じてセッションに確保される帯域幅を変更することが特徴である。実施の形態2による中継通信システムの中継通信装置の構成およびネットワーク構成は、実施の形態1と同等であるので、説明を省略し、ここでは実施の形態2の特徴である帯域幅の変更の動作についてのみ説明する。
【0040】
実施の形態2における中継通信システムにおいては、通信制御機能部214は、セッションを通過する通信を監視し、シグナリング処理機能部211は前記する監視結果に基づいて所定のタイミングでボディ部にSDP規格に基づいて所望の帯域幅を設定した「UPDATE」メッセージを送信する。これにより、セッションを切断されることなくセッションが確保する帯域幅の変更が行われる。
【0041】
ここで、前記する所定のタイミングとは、セッションが確保している帯域幅とセッションを通る通信とに基づいて決定されるタイミングであり、管理者により予め設定される。例えば、セッションを通る通信コネクションの本数が変化したタイミングであってよい。また、通信制御機能部214が、定期的にセッション内の帯域消費量を計測するようにし、その都度、中継通信装置間のセッションの帯域幅を所望の帯域幅に変更するようにしてよい。
【0042】
前記する所望の帯域幅の設定は、どのように設定されてもよい。例えば、セッションを通過する通信の帯域消費量が、セッションが確保する帯域の50%〜80%の範囲に収まるようにしてよい。このようにする場合、例えば中継通信装置が定期的に帯域消費量を計測し、使用帯域がセッションの確保する帯域の50%を下回ったとき、帯域幅を減少させるように変更し、使用帯域がセッションの帯域の80%を上回ったとき、帯域幅を増加させるように変更するようにするとよい。ただし、初期状態や、通信の本数がゼロになった場合は、セッションを終了するのは好ましくないので、例外として50%を下回っていても帯域幅の変更をしないようにするとよい。
【0043】
ここで、実施の形態2による中継通信システムの説明においては、中継通信装置が「UPDATE」メッセージを送信することによりセッションの帯域幅の変更を行うとしたが、変更の仕方は呼制御プロトコルの仕様に応じて異なる方法をとってよい。要は、セッションを切断することなくセッションが確保する帯域幅を変更するようにすればよい。
【0044】
このように、実施の形態2による中継通信システムによれば、中継通信装置が、予め確立しておいたセッション内を通過するパケットに関する通信コネクションの数および/またはセッション内の消費帯域に応じて、該セッションが確保する帯域幅を変化させるように構成したので、実施の形態1による中継通信システムに比してグローバル網の通信帯域を有効に使用することができる。
【0045】
実施の形態3.
実施の形態3による中継通信システムは、複数のセッションを確立したとき、パケットを通信コネクション毎に呼を選択して振り分けることが特徴となっている。実施の形態3による中継通信システムの中継通信装置の構成は、実施の形態1および2と同等であるので、説明を省略し、ここでは実施の形態3の特徴であるセッションを複数確立するネットワーク構成を説明する。
【0046】
プライベート網同士を接続するセッションが2本確立されているネットワーク構成の一例を説明する図を図7に示す。図7において、中継通信装置111および中継通信装置112は、シグナリング処理機能部211および221により、セッション401およびセッション402を確立している。
【0047】
このようなネットワーク構成において、中継通信装置111は、配下の端末101および103から端末104に宛てたUDPパケットを受信したとき、カプセル化処理機能部213は、予め設定されたルールに従って、セッション401またはセッション402のどちらのセッションを通過させるか判定し、通過させると判定されたセッションを通過できるように擬似UDPヘッダでカプセル化する。ここでは、端末101からのUDPパケットはセッション401、端末103からのUDPパケットはセッション402を夫々通過できるように擬似UDPヘッダでカプセル化されている。夫々カプセル化されたパケットは、SIPセッション判定処理機能部212により擬似UDPヘッダが解析されることにより、夫々セッション401およびセッション402を通して中継通信装置112に転送される。
【0048】
ここで、前記する予め設定されたルールとは、いかなるルールであってもよい。例えば、1つのセッションあたりが通過させる通信のコネクションの本数に制限を設け、制限以内のコネクション数の通信であればセッション401を通過させ、制限を越える分の通信を、セッション402を通過させるようにしてよい。また、セッション401に設定された帯域幅を超える分の通信を、セッション402を通過させるようにしてよい。
【0049】
また、配下の端末のアドレス毎に1つのセッションを設定してもよい。つまり、セッション401は端末101からのパケット、セッション402は端末103からのパケットを、夫々通過させるようにしてよい。また、宛先のアドレス毎に通過するセッションを設定してもよい。
【0050】
また、パケットの通信の優先度毎にセッションを確立し、パケットは優先度に応じてどのセッションを通過させるか振り分けられるようにしてよい。優先度とは、例えば、最優先、高優先、優先、およびベストエフォートのように、4段階に分けられるようにしてよい。
【0051】
また、端末101〜104においてパケットを作成したアプリケーションの種類毎またはアプリケーション毎に、利用するセッションを振り分けられるようにしてよい。アプリケーションの種類とは、例えば、Web、ストリーミング、および電話などが考えられる。また、パケットの宛先のポート番号毎に、利用するセッションを振り分けられるようにしてよい。
【0052】
ここで、パケットを前記するルールに従ってどのセッションを使用するかセッションに振り分ける場合において、予め確立するセッションが足りなくなったとき、新たにセッションを追加して確立するように構成してよい。また、実施の形態2における中継通信システムのように、帯域幅を変更するように構成してもよい。また、各セッションに設定される帯域幅および優先度は夫々異なっていてもよい。
【0053】
このように、実施の形態3による中継通信システムによれば、中継通信装置が相手の中継通信装置との間に予め複数の呼を確立している場合、相手の中継通信装置との間に確立した呼にパケットを通過させる端末間の通信コネクションの数および/または消費帯域および/または通信コネクションの種類を監視し、前記監視結果に基づいて通信コネクション毎にパケットを通過させる呼を選択するように構成したので、実施の形態1〜2による中継通信システムに比して、各通信コネクションを効率的に管理することができる。
【0054】
実施の形態4.
本発明の実施の形態4による中継通信システムは、実施の形態1〜3の中継通信システムと同様の構成の中継通信システムにおいて、且つ端末間のパケットがTCPパケットであった場合において、擬似ヘッダを付加することによってオリジナルのTCPパケットに比較してパケットサイズが増加することに起因するフラグメントを起こらないようにすることが特徴である。
【0055】
まず、一般的なTCPパケットの通信の開始方法について簡単に説明する。
【0056】
TCPパケット通信は、データを送受信する前に端末間でTCPコネクションを確立することにより開始される。TCPコネクションを確立するためには、送信側の端末は、相手側の端末に対して、転送許可要求であるSYNフラグを立てたTCPパケットであるTCP SYNパケットを送信する。受信側の端末は、TCP SYNを受信すると、転送許可であるACKフラグを立て、且つ送信側の端末に対して転送許可要求するため、TCP SYN+ACKパケットを送信する。送信側の端末は、TCP SYN+ACKパケットを受信すると、転送許可するためにTCP ACKパケットを受信側の端末に向けて送信する。受信側の端末がTCP ACKパケットを受信すると、両端末間でTCPコネクションが開始され、送受信したいデータを埋め込んだTCPパケットが端末間を流れる。このような、TCP SYNパケット、TCP SYN+ACKパケット、およびTCP ACKパケットを送受信することによるTCPコネクションの確立方法は、通称、スリーウェイハンドシェイクと呼ばれる。
【0057】
実施の形態1〜3による中継通信装置は、パケットのデータに干渉しないで擬似ヘッダを用いてカプセル化するので、このようなスリーウェイハンドシェイクは、そのままカプセル化されて転送される。しかし、実施の形態4における中継通信装置は、擬似ヘッダが追加されることによってパケットサイズが増加することに起因するフラグメントを防ぐために、配下の端末から送られてくるパケットのうち、SYNフラグが立ったTCPパケットを検出し、TCP SYNパケットのオプションのMSS(Max Segment Size)を、擬似ヘッダ分の大きさを引いた値に書き換える。TCP SYNパケットの検出および書き換えの動作は、カプセル化処理機能部213により行われる。
【0058】
カプセル化前の通常のTCP SYNパケットと、擬似UDPヘッダを用いてカプセル化後のMSSの書き換え処理を施されたTCP SYNパケットと、を模式的に説明する図を図8に示す。
【0059】
図8において、IPヘッダ501、TCPヘッダ502、およびMSSにより1460byteの領域が確保されているデータ部503からなるTCP SYNパケットは、グローバル網に向けて転送されるとき、擬似ヘッダである、IPヘッダ511、UDPヘッダ512、およびカプセル化の情報513が付加されるとともに、元のTCP SYNパケットのTCPヘッダ502に相当するTCPヘッダ502’は、MSS値を擬似ヘッダのサイズ分xを引いた値である1460−x byteと書き換えられている。元のTCP SYNパケットにおいて確保されるデータ部503に対応するカプセル化後のデータ部503’のサイズは、1460−x byteとなる。IPヘッダ501’は、IPヘッダ501と等しい。
【0060】
また、受信側の端末が送信するTCP SYN+ACKパケットについても、受信側の端末を収容するプライベート網とグローバル網との接点の中継通信装置が、上記と同様にMSS値を買い換えてグローバル網に送り出す。
【0061】
このように、スリーウェイハンドシェイクにおいてMSS値が擬似ヘッダのサイズ分だけ少なく書き換えられたSYNフラグを立てたパケットを転送する。このようにして端末間でTCPコネクションを確立させることにより、該端末間で送受信されるTCPパケットにおいて、擬似ヘッダのサイズ増加分に起因するフラグメントは起こらないようにすることができる。
【0062】
このような動作を、シーケンス図を用いてさらに具体的に説明する。図9に、実施の形態4における中継通信システムにおいて、端末間でTCPコネクションが確立される動作を説明するシーケンス図を示す。このシーケンス図では、図1に示す端末101と端末102間でTCP通信を行うこととして説明している。
【0063】
図9において、まず、予め中継通信装置間でSIPのセッションが確立される(ステップS1)。次に、中継通信装置111が、端末101から、端末102を相手としたTCPコネクションを開始するTCP SYNパケットを受信すると、中継通信装置111のカプセル化処理機能部213がTCP SYNパケットであることを検知し、MSS値を擬似ヘッダのサイズ分を小さく書き換えて擬似ヘッダでカプセル化し、SIPセッション判定処理機能部212により前記予め確立されたセッションを通して中継通信装置112に転送される(ステップS12)。中継通信装置112に到達したパケットは、カプセル化解除され、端末102に転送される。端末102に到達するTCP SYNパケットのMSS値は、擬似ヘッダのサイズ分だけ差し引かれた値となっている。
【0064】
端末102は、このパケットを受信すると、TCP SYN+ACKパケットを端末101宛てに送信する。TCP SYN+ACKパケットを受信した中継通信装置112は、該パケットのMSS値を擬似ヘッダのサイズ分を小さく書き換えて擬似ヘッダでカプセル化し、中継通信装置111に転送する(ステップS13)。中継通信装置111は、該パケットを受信すると、カプセル化を解除して端末101に転送する。端末101に到達するTCP SYN+ACKパケットのMSS値は、擬似ヘッダのサイズ分だけ差し引かれた値となっている。
【0065】
端末101は、このパケットを受信すると、端末102に宛ててTCP ACKパケットを送信する。該TCP ACKパケットのパケット化、およびパケット化解除については、実施の形態1〜3に等しいので説明を省略する。
【0066】
端末102がTCP ACKパケットを受信すると、端末101および端末102間でスリーウェイハンドシェイクが成立し、TCPコネクションが確立される(ステップS14)。ここで、MSS値は擬似ヘッダ分だけ少なく書き換えられたSYNフラグパケットを用いてスリーウェイハンドシェイクが成立しているので、このTCPコネクションを通過するTCPパケットのデータ部のデータ領域は、擬似ヘッダ分だけ少ない値に制限されることとなる。
【0067】
このように、実施の形態4による中継通信システムによれば、MSS値はカプセル化処理により増加するパケットサイズ分だけ少なく書き換えられたSYNフラグパケットを用いて端末間のTCPコネクションを確立するように構成したので、実施の形態1〜3による中継通信システムに比して、より効率のよいTCP通信を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上のように、本発明にかかる中継通信システムは、呼制御/呼管理を前提としないプライベート網と呼制御/呼管理を伴うグローバル網と、プライベート網とグローバル網との接点に配設される中継通信装置と、を備える通信システムに適用して有用である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施の形態1の中継通信システムのネットワーク構成の一例を示す図である。
【図2】実施の形態1の中継通信装置の機能構成を示す図である。
【図3】実施の形態1の中継通信システムにおける、カプセル化前のUDPパケットと、カプセル化後のUDPパケットとを、模式的に示す図である。
【図4】実施の形態1の中継通信システムの動作を説明するシーケンス図である。
【図5】実施の形態1の中継通信装置が、複数の異なる通信を行った場合の動作を説明するシーケンス図である。
【図6】実施の形態1の中継通信システムにおいて、各プライベート網に複数の端末が存在するネットワーク構成の一例を説明する図である。
【図7】実施の形態3の中継通信システムのネットワーク構成の一例を示す図である。
【図8】実施の形態4の中継通信システムにおける、カプセル化前の通常のTCP SYNパケットと、擬似UDPヘッダを用いてカプセル化後のMSSの書き換え処理を施されたTCP SYNパケットと、を模式的に説明する図である。
【図9】実施の形態4の中継通信システムの動作を説明するシーケンス図である。
【符号の説明】
【0070】
1 中継通信システム
10 グローバル網
11、12 プライベート網
101、102 端末
111、112 中継通信装置
211、221 シグナリング処理機能部
212、222 SIPセッション判定処理機能部
213、223 カプセル化処理機能部
214、224 通信制御機能部
301、301’ IPヘッダ
302、302’ UDPヘッダ
303、303’ データ部
311 IPヘッダ
312 UDPヘッダ
313 カプセル化の情報
401、402 セッション
501、501’ IPヘッダ
502、502’ TCPヘッダ
503、503’ データ部
511 IPヘッダ
512 UDPヘッダ
513 カプセル化の情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末が収容される呼制御機能を前提としない複数の第一の通信ネットワークと、前記複数の第一の通信ネットワーク間にあって呼制御/呼管理機能を有する第二の通信ネットワークと、前記第一の通信ネットワークと前記第二の通信ネットワークとを連結する中継通信装置とを備える中継通信システムにおいて、
前記中継通信装置は、
中継通信装置同士で予め前記第二の通信ネットワーク内に所要の呼を確立するシグナリング処理機能部と、
前記中継通信装置が自装置の配下の第一の通信ネットワーク内の端末を送信元とし、別の第一の通信ネットワーク内の端末を送信先としたパケットを捉えたとき、該送信先の端末が所属する第一の通信ネットワークを配下にする中継通信装置との間で確立されている呼を前記パケットが通過可能になるように、前記呼に特有の所定のヘッダを用いて前記パケットをカプセル化し、前記中継通信装置が前記別の第一の通信ネットワーク内の端末から自装置の配下の第一の通信ネットワーク内の端末を送信先として前記呼を通過して送信されてきたカプセル化されたパケットを捉えたとき、該パケットから前記所定のヘッダを外してカプセル化解除する、カプセル化処理機能部と、
自装置のカプセル化処理機能部がカプセル化したパケットを、前記呼を通して前記別の第一の通信ネットワークを配下とする中継通信装置に転送する呼判定処理機能部と、
前記カプセル化解除されたパケットを、自装置の配下の第一の通信ネットワークに所属する前記パケットの送信先の端末に転送する通信制御機能部と、
を備えることを特徴とする中継通信システム。
【請求項2】
前記通信制御機能部は、自装置の配下の第一の通信ネットワークに所属する端末と前記相手の中継通信装置の配下の第一の通信ネットワークに所属する端末との間のパケット通信の通信コネクションについて、該通信コネクションの数および/または消費帯域を呼毎に監視し、
前記シグナリング処理機能部は、前記コネクションの数および/または消費帯域に応じて前記呼が確保する通信帯域を変化させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の中継通信システム。
【請求項3】
前記中継通信装置が相手の中継通信装置との間に予め複数の呼を確立している場合、
前記通信制御機能部は、自装置の配下の第一の通信ネットワークに所属する端末と前記相手の中継通信装置の配下の第一の通信ネットワークに所属する端末との間のパケット通信の通信コネクションについて、該通信コネクションの数および/または消費帯域および/または前記パケットの送信元の端末のアドレス、前記パケットの送信先のアドレス、前記パケットの送信の優先度、前記パケットを使用するアプリケーション、またはこれらの組み合わせの情報により区別される通信コネクションの種類を通信コネクション毎に監視し、
前記カプセル化処理機能部は、パケットのカプセル化を行う前に、前記通信コネクションの数および/または消費帯域および/または種類に基づいて、前記複数の呼のうちからパケットを通過させる呼を通信コネクション毎に選択する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の中継通信システム。
【請求項4】
前記中継通信装置が、自装置の配下の第一の通信ネットワークに所属する端末を送信元とし、別の中継通信装置の配下の第一の通信ネットワークに所属する端末を送信先とするSYNフラグを立てられたTCPパケットを捉えたとき、
前記カプセル化処理機能部は、前記TCPパケットをカプセル化する際、前記TCPパケットのMSSオプションに記述される値を、前記TCPパケットをカプセル化することにより増加する分のサイズを差し引いた値で書き換える、
ことを特徴とする請求項1〜3のうちの何れかひとつに記載の中継通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−152973(P2009−152973A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330139(P2007−330139)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】