中胚葉および成体型内胚葉細胞集団
本発明は、中内胚葉および中胚葉の濃縮された細胞集団、ならびに、内胚葉の濃縮された細胞集団を提供する。本発明の細胞集団は、細胞置換療法の細胞を作製するのに有用である。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、2002年5月17日に提出された米国出願番号第60/381,617号および2003年2月4日に提出された第60/444,851号の特典を請求し、その開示は参照により本明細書に取り込む。
【0002】
本発明は、国立衛生研究所により授与された認可番号2R01HL48834-09および2R01HL65169-02の下で政府支援により行われた。政府は本発明に一部の権利を有し得る。
【0003】
胚発生中に、生体の組織は、外胚葉、中胚葉、および成体型内胚葉(definitive endoderm)という3つの主要な細胞集団から形成される。これらの細胞集団は、初期生殖細胞層としても知られるが、これは原腸陥入(gastrulation)として知られる過程を通じて形成される。嚢胚形成後、各初期生殖細胞層は、特定のセットの細胞集団および組織を産生する。中胚葉は血液細胞、内皮細胞、心筋および骨格筋、ならびに脂肪細胞を生じる。成体型内胚葉は、肝臓、膵臓、および肺を生じる。外胚葉は神経系、皮膚、および副腎組織を生じる。
【0004】
これらの生殖細胞層からの組織発達の過程には、複雑な分子変化を反映する複数の分化段階が含まれる。中胚葉およびその派生物に関連して、3つの異なる段階が規定されている。最初は、胚盤葉上層として知られる構造内の細胞からの中胚葉の誘導である。新生中胚葉としても知られる新しく形成された中胚葉は異なる位置に移動し、これは初期胚における将来の組織発達の部位となろう。パターン化として知られるこの過程は、特定の組織への初期分化段階を反映しているようである。特異化としても知られる最終段階には、パターン化された中胚葉亜集団からの別個の組織の生成が含まれる。近年の研究により、中胚葉は、別個の発達能を有する亜集団を示す連続的な波で誘導されることを示唆する証拠が提供された。最初に形成される中胚葉は胚外領域に移動し、造血細胞および内皮細胞を生じ、次の集団は発達中の胚の前方に移動し、心臓および頭蓋間葉に寄与する。これらの系統関係は、組織学的解析により初めて規定され、主に細胞追跡研究により確認されている。発生運命のこの分離は、発達生物学の分野でよく受け入れられており、現在までに、これらの系統に関係する以前には、中胚葉および内胚葉を単離する利用可能な方法はない。
【特許文献1】米国出願番号第60/381,617号
【特許文献2】米国出願番号第60/444,851号
【非特許文献1】Papaioannouら(1998)Bioessays 20:9-19
【非特許文献2】Wilsonら(1995)Development 121:877-86
【非特許文献3】Wilkinsonら(1990)Nature 343:657-9
【非特許文献4】Herrmannら(1991)Development 113:913-7
【非特許文献5】Papaioannouら(1998)
【非特許文献6】Smith(1997)Current Opinion in Genetics & Development 7:474-480
【非特許文献7】Evansら(1981)Nature 292:154-156
【非特許文献8】Thompsonら(1995)Proc.Nat'l.Acad.Sci.USA 92;7844
【特許文献3】米国特許第5,843,780号
【非特許文献9】Reubinoffら(2000)Nature Biotech.18:399
【特許文献4】米国特許第6,110,739号
【非特許文献10】Odoricoら(2001)Stem Cells 19:193-204
【非特許文献11】Grompeら(1993)Genes & Dev.7:2298
【非特許文献12】Oversturfら(1996)Nature Genet.12:266-273
【非特許文献13】Kennedyら(1997)Nature 386:488-93
【非特許文献14】Bradyら((1990)Meth.in Mol.and Cell Bio.2:17-25)
【非特許文献15】Smith(2001)Annu.Rev.Cell Dev.Biol.17:435-62
【非特許文献16】Hooperら(1987)Nature 326:292
【非特許文献17】Rogersら(1991)Development 113:815-24
【非特許文献18】Shalabyら(1995)Nature 376:62-6
【非特許文献19】Palisら(1999)Development 126:5073-84
【非特許文献20】Faloonら(2000)Development 127:1931-41
【非特許文献21】Shivdasaniら(1995)Nature 373:432-4
【非特許文献22】Wangら(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.93:3444-9
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、中胚葉および成体型内胚葉細胞集団を単離する方法を提供する。これらの細胞集団は、細胞増殖および分化に影響を及ぼす薬剤を同定するのに、組織発達に関与する遺伝子を同定するのに、および、細胞置換療法のための分化細胞および組織を作製するのに有用である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、中内胚葉および中胚葉細胞の濃縮された細胞集団を提供する。中内胚葉細胞は、本明細書において、短尾(brach+)を発現し、分化誘導条件の存在下で、中胚葉および中胚葉誘導体(心筋および骨格筋、平滑筋、内皮および造血細胞を含む)を産生でき、また、内胚葉および内胚葉誘導体(肝臓細胞および膵臓細胞を含む)も産生できる細胞として定義されている。中胚葉細胞は、本明細書において、brach+であり、分化誘導条件の存在下で、心筋および骨格筋、血管平滑筋、内皮および造血細胞を産生でき、内胚葉および内胚葉誘導体は産生できない、細胞として定義されている。
【0007】
本発明はさらに、内胚葉細胞の濃縮された細胞集団を提供する。内胚葉細胞は、本明細書において、短尾(brach+)を発現せず、分化誘導条件の存在下で、肺細胞、肝臓細胞、および膵臓細胞を産生できる細胞として定義されている。
【0008】
本発明はまた、中内胚葉および中胚葉細胞の濃縮された細胞集団、および内胚葉細胞の濃縮された細胞集団を単離する方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、本発明の細胞集団の増殖、分化、または生存に影響を及ぼす薬剤を同定する方法を提供する。特定の系統および組織の細胞分化および発達に関与する遺伝子を同定する方法も提供する。
【0009】
brach+細胞を特異的に認識する抗体も提供する。この抗体は、例えば、中内胚葉および内胚葉細胞集団を単離するのに有用である。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、in vitroで細胞を産生する方法を提供する。このような細胞は、例えば、細胞置換療法に有用である。
【0011】
本発明はまた、選択マーカーをコードするDNAが短尾遺伝子座に存在し、よって、1つの短尾対立遺伝子が不活性化されており、選択マーカーが短尾遺伝子座が転写される細胞において発現されているゲノムを有するトランスジェニック非ヒト哺乳動物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
胚形成中において、中胚葉の形成は、生体プランの確立において、ならびに、血液、内皮、心臓および骨格筋などの複数の臓器系の発達において重要なステップである。しかし、中胚葉形成を制御する分子機序はあまり明確になっていない。培養物中における胚幹(ES)細胞の分化に基づいたモデルシステムを使用して、造血、内皮、心臓筋および骨格筋、ならびに脂肪細胞系統を含む中胚葉に由来する集団を研究してきた。in vitroでのモデルは、中胚葉の誘導および特異化を支持するが、これらの分化事象は、ES細胞から産生された胚様体(ES)として知られる複雑なコロニー中で起こる。中胚葉形成および組織発達をより良く理解するために、形成された時にEBからの中胚葉細胞集団を単離することが有利であろう。しかし、新生中胚葉細胞集団に特異的な抗体が十分に明確ではないために、抗体を使用した細胞選別によりこれらの集団を単離することは不可能であった。
【0013】
短尾(Tとしても知られる)は、T-ボックス遺伝子として知られる転写因子のファミリーの創設メンバーであり、マウスにおいて天然突然変異として最初に同定された。Papaioannouら(1998)Bioessays 20:9-19。ヘテロ接合型マウスは生存可能であるが、野生型動物よりも短い尾を有している。p.c.約10日目に死亡するホモ接合型突然変異体は脊索を欠失しており、後側中胚葉組織の発達において欠陥を示す。キメラ動物の解析により、短尾は、中胚葉細胞の移動特性に影響を及ぼすことが示された。Wilsonら(1995)Development 121:877-86。発現解析により、短尾について独特かつ興味深いパターンが判明した。それは、原条により移入している全ての細胞ならびに新生および初期移動中胚葉において一過的に発現している。Wilkinsonら(1990)Nature 343:657-9;Herrmannら(1991)Development 113:913-7。発現は、沿軸、外側、および胚外中胚葉において迅速にダウンレギュレートされ、条斑の退行後、尾芽および脊索に限局される。このパターンが得られたので、短尾は、初期中胚葉の最善のマーカーの1つであると考えられ、この系統の発達を追跡するのに使用される。短尾は、解析した全ての種において同定されており、このことは、中胚葉発達におけるその役割は系統発生全体を通じて保存されていることを示唆する。Papaioannouら(1998)。
【0014】
本発明によれば、選択マーカー遺伝子は、短尾遺伝子座に組換え標的されている。ES細胞分化開始後に、選択マーカーは、短尾発現を反映するパターンで発現されることが発見された。選択マーカーにより、EBから短尾陽性(Brach+)細胞の選別が可能となり、これにより、中内胚葉および中胚葉細胞の濃縮された細胞集団の単離および特徴づけが可能となった。
【0015】
本発明によれば例示される選択マーカーは、強化緑色蛍光タンパク質(EGFPまたはGFP)である。細胞選別を容易にする他の選択マーカーも当業者には知られており、本発明でも使用し得る。GFPをコードするcDNAは当分野で知られており(そして市販されている、例えばCA州パロアルトのクロンテックからプラスミドpEGFP.C1として)、当分野で既知の方法により標的化ベクター(GFP-Bry)を作製することにより短尾遺伝子座に標的化し得る。ベクターは、好ましくは、短尾遺伝子の最初のエキソンのおよそ3分の2を、GFP発現カセットで置換するように設計されている。
【0016】
ヒトおよびマウスを含む数多くの種に由来する短尾遺伝子が当分野で知られており、例えば、Smith(1997)Current Opinion in Genetics & Development 7:474-480に考察されている。GFP発現カセットは、好ましくは、GFPcDNA、および、下流短尾エキソンの翻訳を防ぐための1つ以上の翻訳終止コドンを含む。カセットはさらに、短尾遺伝子の下流領域の転写を防ぐためのSV40ポリアデニル化シグナル配列をコードするエキソンを含み得る。
【0017】
ベクターは、当分野で既知の方法によりES細胞に導入され、相同的組換えによりGFP-Bry構築体は組み込まれる。ES細胞は、当分野で既知であり、例えばEvansら(1981)Nature 292:154-156、Thompsonら(1995)Proc.Nat'l.Acad.Sci.USA 92;7844、米国特許第5,843,780号、およびReubinoffら(2000)Nature Biotech.18:399により開示された方法により、胚盤胞から単離し得る。好ましい実施形態において、ES細胞はマウスまたはヒトES細胞である。成功裏な標的化後に、短尾開始コドンはGFPの開始コドンとなり、その結果、標的化短尾対立遺伝子は破壊される。得られた細胞はGFP-Bry ES細胞と称される。GFP-Bry ES細胞は、本明細書において、1つの短尾対立遺伝子が不活性化され、GFPが、短尾調節エレメントの制御下で発現されるES細胞として定義される。
【0018】
本発明によると、1つの短尾対立遺伝子が不活性化されているGFP-Bry ES細胞は生存可能であり、正常に発達および分化することが発見された。さらに、GFP発現は、内因性短尾発現を写すことが発見された。従って、brach+細胞は、GFPを発現する細胞を選択することにより単離し得る。GFPを発現する細胞は、簡便には、フローサイトメトリーにより、例えば蛍光活性化細胞選別(FACS)により単離し得る。蛍光特性に基づいて細胞を選別する方法は、当業者には公知である。
【0019】
前記に定義したような中内胚葉および中胚葉細胞の濃縮された細胞集団は、血清の存在下で、GFP+細胞を得るに十分な時間、例えばマウス細胞では約1から約4日間、GFP-Bry ES細胞を培養し、選別し、例えばフローサイトメトリーによりGFP+細胞を単離することにより得られ得る。単離された細胞集団は、少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%、または少なくとも約99%の中内胚葉および中胚葉細胞を含む。中内胚葉および中胚葉の相対量は、血清中の培養時間を調整することにより変化させ得、より短い培養時間では、造血および内皮系統にパターン化された中内胚葉および中胚葉の存在に傾き、より長い培養時間では、心筋および骨格筋系統にパターン化された中胚葉の存在に傾く。例えば、中胚葉の濃縮された細胞集団は、血清中で約2.5から約4.5日間培養し、その後、GFP+細胞を選別し、単離することにより得られ得る。血清の存在下における培養は、本明細書において、動物血清、例えばウシ胎児血清(FCS)を補充した培地中での培養として定義される。好ましい実施形態において、培地には、約5%から約25%の血清が補充されている。最適濃度は血清バッチ依存的であり得、当業者により決定できる。
【0020】
中内胚葉および中胚葉細胞の濃縮された細胞集団は、ヒトおよびマウス細胞におけるin vitroでの分化時間の差異を説明するために血清中での培養時間の長さを長くした類似の方法により、ヒトES細胞から作製したGFP-Bry ES細胞から得られ得る。従って、ヒトES細胞から作製したGFP-Bry ES細胞を、GFP+細胞を得るのに十分な時間、例えば約2から約18日間、血清中で培養し、その後、GFP+細胞を選別し、単離する。
【0021】
マウスおよびヒトの両方の細胞集団について、単離した細胞が、中胚葉を超えて、例えば血管芽細胞まで分化したかどうかを、チロシンキナーゼ受容体、ヒトKDR、またはマウスFlk-1の存在についてアッセイすることにより容易に決定できる。KDRおよびFlk-1は、中内胚葉および新生中胚葉には発現されていないが、これらの細胞が血管芽細胞/プレ赤血球集団に分化すると、KDRまたはFlk-1発現が検出可能である。KDR+およびflk-1+細胞は、KDRまたはFlk-1に対する抗体を使用してフローサイトメトリーにより同定し得る。このような抗体は当分野で既知であり、標準的な抗体作製法を使用して作製し得る。中内胚葉および中胚葉の濃縮された細胞集団はさらに、細胞選別により、KDR+およびflk-1+細胞を除去することにより濃縮することができる。
【0022】
図17に示したように、本発明によると、中内胚葉は、内胚葉および中胚葉の両方ならびにその対応する系統を生じる、以前には同定されていなかった細胞集団であることが発見された。in vitro培養物中での血清の存在または非存在を使用して、どの系統が中内胚葉から産生されるかを指示できることがさらに発見された。特に、内胚葉細胞の濃縮された細胞集団は、血清の存在下でマウスES細胞から作製したGFP-Bry ES細胞を約2から4日間培養し、例えばフローサイトメトリーによりGFP+細胞を選別し、単離し、その後、血清の非存在下でGFPを約1から約10日間培養することにより得られ得る。単離された細胞集団は、少なくとも50%、好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%、または少なくとも約99%の前記に定義したような内胚葉細胞を含む。
【0023】
内胚葉細胞の濃縮された細胞集団は、血清の存在下で約2から10日間GFP-Bry ES細胞を培養し、GFP+細胞を選別し、単離し、その後、血清の非存在下でGFP+細胞を約1から約15日間培養することにより、ヒトES細胞から作製したGFP-Bry ES細胞から得られ得る。
【0024】
内胚葉細胞の濃縮された集団はさらに、前記したようなKDR+またはFlk-1+細胞を同定および選別することにより濃縮し得る。
【0025】
本発明によると、内胚葉の濃縮された細胞集団は、血清の非存在下で成長因子アクチビンの存在下で約2から約10日間GFP-Bry胚性幹細胞を培養し、短尾を発現する細胞を単離することにより得られることがさらに発見された。アクチビンの量は、胚性幹細胞から内胚葉への分化を誘導するのに十分なものである。このような分化は、例えばHNF3β、Mixl-1、Sox17、Hex-1、またはpdx-1を含む、内胚葉発達に関連した遺伝子の発現についてアッセイすることにより測定し得る。好ましい実施形態において、アクチビンの濃度は少なくとも約30ng/mlである。別の好ましい実施形態において、アクチビンの濃度は約100ng/mlである。
【0026】
中胚葉の濃縮された細胞集団は、血清の非存在下、アクチビンの存在下、約2から約10日間GFP-Bry胚性幹細胞を培養し、短尾を発現する細胞を単離することにより得られ得る。アクチビンの量は、胚性幹細胞から中胚葉への分化を誘導するのに十分であるが、内胚葉への分化を誘導するには不十分である。中胚葉への分化は、例えばGATA-1を含む、中胚葉発達に関連した遺伝子の発現、および、内胚葉発達に関連した遺伝子の不在についてアッセイすることによりにより測定し得る。好ましい実施形態において、アクチビンの濃度は、30ng/ml未満である。別の好ましい実施形態において、アクチビンの濃度は約3ng/mlである。
【0027】
本発明はさらに、前記した細胞集団の増殖、分化、または生存に影響を及ぼす薬剤を同定する方法を提供する。この方法には、前記した細胞集団の1つに由来する細胞を、試験する薬剤の非存在下および存在下で培養し、前記薬剤が細胞集団の増殖、分化、または生存に影響を及ぼすかどうかを決定することが含まれる。試験する薬剤は、天然または合成、1つの化合物または混合物、小分子またはポリマー(ポリペプチド、多糖、ポリヌクレオチドなどを含む)、抗体またはその断片、天然または合成化合物のライブラリー由来の化合物、合理的な薬物設計から得られた化合物、または細胞集団に対する効果を、当分野で既知のアッセイ、例えば米国特許第6,110,739号に記載のような標準的な増殖および分化アッセイを使用して評価し得る任意の薬剤であり得る。このような薬剤は、インビボおよびin vitroでの細胞増殖および分化の制御に有用である。
【0028】
本発明はさらに、特定の系統および組織の細胞分化および発達に関与する遺伝子を同定する方法を提供する。この方法には、種々の培養時間後に本発明のGFP+細胞集団を単離し、異なる集団の遺伝子発現プロファイルを比較し、集団において独特に発現されている遺伝子を同定することが含まれる。好ましい実施形態において、マイクロアレイ解析およびサブトラクティブハイブリダイゼーションを使用して、遺伝子発現プロファイルを比較する。
【0029】
別の実施形態において、本発明は、短尾陽性(brach+)細胞を認識するが、短尾陰性(brach-)細胞は認識しない抗体の作製方法を提供する。動物に免疫誘発形態の本発明の細胞を注入することによりポリクローナル抗体を作製し得る。また、GFP+細胞には存在するが、GFP-細胞には存在しない細胞表面マーカーを同定し、マーカーまたはその断片に対する抗体を作製することにより、抗体を作製し得る。抗体はモノクローナルまたはポリクローナルであり得、断片、遺伝工学した抗体、単鎖抗体などであり得る。抗体は、当分野で公知の方法により作製し得る。このような抗体は、中内胚葉および中胚葉などのbranch+細胞を同定および単離するのに有用である。
【0030】
本発明はまた、in vitroで哺乳動物細胞を作製する方法も提供する。1つの実施形態において、この方法には、中胚葉から心筋、平滑筋、内皮、または造血細胞への分化に効果的な条件下で、中内胚葉および中胚葉細胞の濃縮された細胞集団に由来する細胞を培養することが含まれる。in vitroで種々の細胞型への分化に効果的な条件は、当分野で既知である。別の実施形態において、この方法には、内胚葉から肝臓細胞または膵臓細胞への分化に効果的な条件下で、内胚葉細胞の濃縮された細胞集団に由来する細胞を培養することが含まれる。このような分化における効果的な条件は、当分野で既知である。インスリン産生膵臓島細胞の産生が特に考えられる。
【0031】
本発明により実証されたように、異なる年齢のEBから単離されたbrach+細胞は異なる発達能を有する。約3日目のマウスEBのBrach+/Flk-細胞は、効率的に、造血および内皮系統を生じるが、約3から10日目のEBの細胞は、心筋細胞系統の細胞を生じる。従って、中内胚葉および中胚葉の濃縮された細胞集団を得るのに使用したES細胞の培養時間を調整することにより、当業者は、造血および内皮系統または心筋細胞系統の効率的な産生を選択できる。
【0032】
このような細胞は、例えば、限られた数の細胞型の破壊または機能不全により生じる疾患の処置における、細胞置換療法に有用である。このような疾患には、糖尿病、肝不全、心不全、心臓血管疾患および他の血管の疾患、デュシェンヌ筋ジストロフィー、骨形成不全、および骨髄移植により治療可能な疾患、例えば白血病および貧血が含まれる。Odoricoら(2001)Stem Cells 19:193-204参照。
【0033】
本発明の細胞集団は、細胞置換療法のための分化細胞および組織を作製するのに有用である。細胞置換療法における本発明の細胞集団の適切性は、少数の細胞型の破壊または機能不全に関連した疾患の動物モデルに細胞を移植することにより評価し得る。例えば、本明細書に参照により取り込んだ、例えばGrompeら(1993)Genes & Dev.7:2298により開示されたフマリルアセト酢酸(FAH)欠損マウスは、肝不全のモデルを提供する。FAH欠損マウスは、NTBC(2-(2-ニトロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル)-1,3-シクロヘキセジオン)で処置するか、または正常な肝細胞を移植しなければ、進行的な肝不全および尿細管傷害に苦しむ。従って、これらのマウスは、EBから作製した未熟な肝細胞の特徴を有する細胞の能力について試験する上で理想的なモデルを提供する。NTBCから取り出したFAH欠損マウスに肝細胞を移植する方法は当分野で既知であり、例えばOversturfら(1996)Nature Genet.12:266-273に開示されている。正常な肝機能はマウスの生存により示され、また、血清アスパルテートトランスアミナーゼレベル、血漿ビリルビンレベルを測定することにより、および、再生肝臓の正常な構造を決定することにより評価し得る。
【0034】
特定の細胞型の破壊または機能不全から生じる他の疾患の動物モデルは当分野で既知である。このようなモデルは、本発明の他の細胞集団を評価するために同じように使用し得る。
【0035】
本発明はまた、選択マーカーをコードするDNAが短尾遺伝子座に存在し、よって、1つの短尾対立遺伝子が不活性化され、短尾遺伝子が転写される細胞において選択マーカーが発現されている、トランスジェニック非ヒト哺乳動物を提供する。好ましい実施形態において、哺乳動物はマウスであり、選択マーカーはGFPである。特に、トランスジェニックマウスは、GFPをコードするDNA配列が短尾調節エレメントに作動可能に連結している導入遺伝子を含むゲノムを有し、前記導入遺伝子は、短尾を正常に発現する細胞において発現されている。トランスジェニックマウスは、前記したGFP-Bry ES細胞を胚盤胞に注入することにより得られ得、これはその後、偽妊娠雌にインプラントする。トランスジェニック子は、branch+/-に関連した短い尾の表現型により、および分子解析により同定される。このようなトランスジェニック動物は、初期胚(これから本発明の方法により使用する中胚葉を単離する)を得るのに、そして、短尾遺伝子を発現する任意の成体細胞子集団の同定、単離および特徴づけに有用である。このような細胞は、新規幹細胞集団を示し得る。
【0036】
本明細書に引用した全ての参考文献のその全体を本明細書に取り込む。
【0037】
以下の実施例は本発明をさらに説明するためのものである。
【実施例1】
【0038】
材料および方法
ES細胞増殖および分化。ES細胞を、15%ウシ胎児血清(FCS)、ペニシリン、ストレプトマイシン、LIF(1%ならし培地)、および1.5×10-4Mモノチオグリセロール(MTG;シグマ)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、照射胚支持細胞上に維持した。分化開始の2日前に、細胞を同じ培地中のゼラチン化プレートに移した。EBの産生のために、ES細胞をトリプシン処理し、異なる培養物中に種々の密度で播種した。EBの分化は、15%FCS、2mM L-グルタミン(ギブコ/BRL)、トランスフェリン(200μg/ml)、0.5mMアスコルビン酸(シグマ)、および4.5×10-4M MTGを補充したIMDM中、60mmペトリ等級皿中で実施した。培養物は、加湿チャンバー中で、5%CO2/空気混合物中で37℃で維持した。
【0039】
血清を含まない培地。2つの異なる血清を含まない培地を、以下の実施例の異なる態様において使用した:ノックアウトSR(ギブコBRL)およびStemPro34(ギブコBRL)を補充したIIMD。
【0040】
メチルセルロースコロニーアッセイ。A)芽球コロニー:芽細胞コロニーを作製するために(BL-CFCアッセイ)、EB由来細胞を、10%FCS(ハイクローン)、血管内皮増殖因子(VEGF;5ng/ml)、c-kitリガンド(KL;1%ならし培地)、IL-6(5ng/ml)および25%D4T内皮細胞ならし培地(Kennedyら(1997)Nature 386:488-93)を補充した1%メチルセルロース中、0.5×1.5×105細胞/mlで播種した。移行コロニーをVEGFの非存在下で作製した。コロニーは4日間の培養後に評価した。B)造血コロニー:原始的および成体型造血コロニーの増殖のために、細胞を、10%血漿由来血清(PDS;Antech)、5%タンパク質非含有ハイブリドーマ培地(PFHM-II;ギブコ-BRL)と以下のサイトカインを含む1%メチルセルロース中に播種した:c-kitリガンド(KL;1%ならし培地)、エリスロポエチン(2U/ml)、IL-11(25ng/ml)、IL-3(1%ならし培地)、GM-CSF(3ng/ml)、G-CSF(30ng/ml)、M-CSF(5ng/ml)、IL-6(5ng/ml)およびトロンボポエチン(TPO;5ng/ml)。培養物を37℃、5%CO2中に維持した。原始赤血球コロニーを培養の5〜6日目に評価し、一方、成体型赤血球(BFU-E)、マクロファージ、および多系統コロニーは、培養の7〜10日目に計測した。c-kitリガンドは、KL発現ベクター(親切にもジェネティクス・インスチチュートから提供された)でトランスフェクトしたCHO細胞により調整された培地から得られた。IL-3は、IL-3を発現しているベクターでトランスフェクトしたX63AG8-653ミエローマ細胞により調整された培地から得られた。VEGF、GM-CSF、M-CSF、IL-6、IL-11、アクチビン、BMP2、BMP4、bFGF、FGF8、およびIhhは、R&Dシステムズから購入した。
【0041】
再凝集培養物。細胞を、24ウェルのペトリ等級プレート中、15%FCS(またはノックアウトSR)、2mM L-グルタミン(ギブコ/BRL)、0.5mMアスコルビン酸(シグマ)、および4.5×10-4M MTGを補充したIMDM1mlあたり、2×105で培養した。これらを使用して、細胞がウェルの底に付着するのを防いだ。
【0042】
心筋アッセイ。GFP+細胞を、15%血清代替添加物で補充したIMDM中で再凝集した。20時間後、凝集物を、10%血清代替添加物(血清非含有)を有するIMDM中、24または96ウェルプレートのウェル中で培養した。ウェルはゼラチンで予め処理しておいた。培養物を、拍動細胞の発達について毎日モニタリングした。拍動細胞は、通常、培養の2から6日目に検出された。
【0043】
細胞表面マーカー染色およびFACS解析。標準的な条件を使用して、細胞を染色した。染色した懸濁液はFACScan(Becton Dickinson、CA)で解析した。
【0044】
遺伝子発現解析。ポリA+RT-PCR解析のために、Bradyら((1990)Meth.in Mol.and Cell Bio.2:17-25)の方法を使用した。逆転写、ポリAテーリング、およびPCR手順を記載の通りに実施し、ただし、X-dtオリゴヌクレオチドは5'-GTTAACTCGAGAATTC(T)24-3'まで短くした。PCR反応からの増幅産物はアガロースゲル上で分離し、Zeta-プローブGTメンブラン(Biorad)に転写するか、または、スロットブロット装置(Schleicher&Schuell)を用いてメンブランに転写した。得られたブロットは、遺伝子の3'領域に対応する32PランダムプライムcDNA断片(Ready-to-Goラベリング、ファルマシア)を用いてハイブリダイズした(β-H1を除いて全て)。β-H1-特異的プローブは、その3'末端において8塩基の相同性を共有する2つのオリゴヌクレオチド、(5'-TGGAGTCAAAGAGGGCATCATAGACACATGGG-3'、5'-CAGTACACTGGCAATCCCATGTG-3'をアニーリングすることにより調製した。このβ-H1特異的オリゴヌクレオチドは、クレノウ平滑化反応を使用して、32Pで標識した。遺伝子特異的PCRのために、全RNAを、RNイージーミニキットを用いて各試料から抽出し、RNase非含有DNase(キアゲン)で処理した。2μgの全RNAを、OmniscriptRTキット(キアゲン)を使用してランダムヘキサマーを用いてcDNAに逆転写した。PCRを、適切なオリゴヌクレオチドを使用して実施した。PCR反応を、2.5UのTaqポリメラーゼ(プロメガ)、PCR緩衝液、2.5mM MgCl2、0.2μMの各プライマーおよび0.2mM dNTPを用いて実施した。サイクリング条件は以下の通りであった;94℃で5分間、その後、35サイクルの増幅(94℃で1分間変性、60℃で1分間アニーリング、72℃で1分間伸張)、最後に72℃で7分間インキュベート。
【実施例2】
【0045】
標的化ES細胞の作製
適切な培養条件下で、胚幹(ES)細胞は分化し、広域な系統からの発達中の細胞集団を含む、胚様体(EB)として知られる3次元のコロニーを形成する。Smith(2001)Annu.Rev.Cell Dev.Biol.17:435-62。これらのEB由来集団の中で、造血、内皮、心筋および骨格筋系統のものを含む、中胚葉誘導体を検出できる。
【0046】
EBにおける中胚葉の開始を追跡し、この集団を示す細胞を単離するために、緑色蛍光タンパク質(GFP)を短尾遺伝子座に標的化した。標的化構築体は、最初のエキソンに、GFPcDNA、および人工イントロン、SV40ポリ(A)配列およびloxPフランキングneoカセットを含み、図1に示す。チミジンキナーゼ(TK)遺伝子は、無作為な組込みに対して選択するために、標的化構築体の3'末端に含められた。標的化ベクターは以下の通りに作製した。
【0047】
全マウス短尾(Bry)遺伝子を有するBACクローンを、プライマー5'-AAGGAGCTAACTAACGAGATGAT-3'および5'-TACCTTCAGCACCGGGAACAT-3'を用いて129/Ola株ゲノムライブラリー(Genome Systems)をPCRスクリーニングすることにより単離した。これらのプライマーは、それぞれ、第一および第二Bryエキソン内にアニーリングし、約600bpの診断バンドを増幅する。2kbを超える5'フランキング領域と共にBry遺伝子の1エキソンを有する約3kb長のPstI制限断片を同定し、BACからプラスミドpBSK(Stratagene)にサブクローニングすると、pBSK.Bry-5'構築体が得られた。開始コドンのすぐ上流の約2kbの領域をシークエンスして、ベクター作製のための適切なプライマーアニーリング部位を同定した。
【0048】
オリゴ5'-GCTAGCTAATGGATCCA-3'/5'-GATCTGGATCCATTAGCTAGCTGCA-3'および5'-GATCTTAATGAACGGCAGGTGGGTGCGCGTCCGGAG-3'/5'TCGACTCCGGACGCGCACCCACCTGCCGTTCATTAA-3'を、プラスミドpBSKのPstI/SalI部位に挿入し、2つの連続的な翻訳終止コドンおよび人工的な3'スプライス部位を有する新しくてより適切なポリリンカーを創造した(構築体pBry-AA)。プラスミドpEGFP.C1(クロンテック)をNheI/BglIIで二重消化し、終止コドンを含まないEGFPをコードする得られた約760bpのDNA断片を、pBRY-AAのNheI/BglII部位にクローニングすると、構築体pBry-ABが得られた。loxPが側にあるネオマイシン耐性遺伝子を有するプラスミドpL2-Neo2のXhoI/SalI断片を、pBry-ABのSalI部位に挿入すると、プラスミドpBry-AC(EGFPおよびNeoの同じ方向への転写)が得られた。
【0049】
共通スプライスドナー部位、人工イントロン、スプライスアクセプター部位、およびSV40ポリアデニル化配列を含む短いエキソンを有する556bpのXmal/MluI断片を、市販の発現ベクターpBK-CMV(Stratagene)から切り出した。この断片を以下のようにプラスミドpBry-ACに挿入した:XmaI末端を最後のEGFPコドンに続くBspEI部位に連結し、一方、Mlu末端は、リンカーとしてのオリゴ5'-CGCGTTACTAGTAAGACGTCT-3'/5'-CCGGAGACGTCTTACTAGTAA-3'と共に、loxP-neo-loxPカセットの直ぐ上流に位置するBspEI部位に挿入した。得られた構築体:pBry-AE。HSVチミジンキナーゼ遺伝子をコードする約1.9kbのXhoI/SalI断片を、pBry-AEのXhoI部位に挿入し、無作為な組込みに対する選択を可能とした(構築体pBry-AH)。相同性の「短い腕」をコードするNotI/Eco47III断片をpBry-AFから切り出し、pBry-AHのNotI/Eco47III部位にクローニングすると、プラスミドpBry-Alが得られた。相同性の「長い腕」は、SalIを用いてpBry-AKから切り出し、正しい方向で、pBry-AIのSalI部位に挿入すると、最終標的化ベクターBが得られた。
【0050】
胚性幹細胞(E14.1、129/Ola Hooperら(1987)Nature 326:292)を、NotI線形化標的化ベクターpBry-AMを用いて電気穿孔した。トランスフェクトした細胞を有する4つの皿をG418一重選択にかけ、別の4つの皿はG418+ガンシクロビル(Ganc)二重選択にかけた。相同的組換え事象を受けたクローンを、「相同性の短い腕」の直ぐ上流のBry遺伝子の5'領域におけるゲノム配列にアニーリングする1つのプライマー(5'-CAGGTAGAACCCACAACTCCGAC-3')、EGFP(流断バンド;約1.3kb)の5'部分にアニーリングする他方のプライマー(5'-CCGGACACGCTGAACTTGTGGC-3')を用いたPCRにより同定した。正しく標的化したクローンは、サザンブロット解析により確認した:候補クローンのゲノムDNAはHincIIで消化し、標的構築体の外に位置するプローブにハイブリダイズさせた。プローブは、オリゴヌクレオチド対5'-ACAGGATCCCTAAGCCTCAAAAGAGTCGCT-3'/5'-TCTTGGATCCTCCTATCCTATCCCGAAGCTCCT-3'を使用して、PCRによりBry5'フランキング領域(BryATG開始コドンに対して-2018から-1249)から得られた。384G418一重および80G418+Ganc二重選択クローンをスクリーニングし、その4つの中でそれぞれ3つが陽性であることが判明し、これは、標的化効率1.04%および3.75%に対応する。2つの陽性クローンを、改変Creリコンビナーゼ発現ベクターで一過的にトランスフェクトし、neo遺伝子を除去した。これらの標的化クローンは、本明細書では以後、GFP-BryES細胞と称する。
【0051】
短尾は、発達中のEBにおいて一過的に発現され、その開始は、造血および内皮系統の確立を規定する遺伝子の発現より前である。GFP-BryES細胞におけるGFP発現が、EB発達中の短尾遺伝子の発現を反映するかどうかを決定するために、GFP発現を評価した。
【0052】
6日間のEB分化期間中の典型的な発現パターンを図2Aに示す。この実験では、低いレベルのメッセージが、分化24時間以内に検出された。発現は次の48時間かけてアップレギュレートされ、4日目まで持続し、その後、6日目の分化までに検出不可能なレベルまで鋭く下降した。FACS解析により定義したようなGFP発現は類似の時間的なパターンを追随した。低いレベルのGFP+細胞(約5%)が早くも分化2日目に検出された。半数を超える(65%)EB由来細胞が3日目にGFPを発現し、殆ど全ての細胞が分化4日目に陽性であった。PCRにより観察したように、発現は、この時点以後鋭く下降し、6日目までにあるとしても僅かなGFP+が存在していた。この急速なGFP発現の下降により、より長い期間では細胞内に持続されないことが示された。分化3日目および4日目の高い比率のGFP+細胞により、これらの条件下でのEB内での中胚葉の発達は広範であることが示唆される。一緒に考えると、これらの知見により、GFP発現は正確に、EB発達中の短尾遺伝子の発現を反映することが示される。
【0053】
単一短尾対立遺伝子の不活性化が、ES細胞のin vitroでの発達能に対して有害な作用を及ぼす可能性を評価した。示したように、ヘテロ接合型マウスは穏和な表現型を示す。GFP-BryES細胞が造血環境において検出可能な欠陥を示すかどうかを決定するために、それらから産生したEBを、造血前駆体および芽球コロニー形成細胞(BL-CFC)含有量および遺伝子発現パターンについて解析した。図3Aおよび3Bのデータにより、GFP-BryES細胞は、野生型細胞に比べて、同等な数の原始的(EryP)および成体型(Eryd、Mac、Mac/Ery、およびMix)造血前駆体およびBL-CFCを産生することが示される。遺伝子発現パターン(図3C)により、前駆体解析が確認され、GFP-Bryから産生されたEBと野生型ES細胞から産生されたEBの間の差異がほとんどないことが示される。両方のセットのEBが、最初の3日間の分化においてRex-1発現の下降を示した。Rex-1は、ES細胞に発現され、分化を受けるとダウンレギュレートされる、転写因子である。Rogersら(1991)Development 113:815-24。Rex-1の下降の後に、典型的な一過性の短尾発現の波が生じ、その直後には造血および内皮系統の発達に関与する遺伝子の開始が起こる。これらの系統の確立に必須である受容体チロシンキナーゼであるFlk-1(Shalabyら(1995)Nature 376:62-6)は、分化3日目から6日目の間に発現される。造血転写因子であるGATA-1、および胚および成体グロビン遺伝子のβH1およびβmajorは、分化4日目に低いレベルで検出された。3つ全ての遺伝子の発現が、次の24時間かけてアップレギュレートされ、この発達段階における原始赤血球系統の増殖および成熟が反映される。Palisら(1999)Development 126:5073-84。本実施例で観察された前駆体数および遺伝子発現パターンは、前の研究に見られるものと一致し、造血系の確立に至る分子プログラムは、標的化GFP-BryES細胞では無傷であることを示す。
【実施例3】
【0054】
短尾+細胞の単離
短尾+細胞をGFP発現に基づいて単離できるかどうかを決定するために、3.5日目のEBのGFP+個体を選別し、適切な遺伝子の発現について解析した。図4Aは、GFP陽性(2)および陰性(1)集団の単離に使用したゲートを示す。RT-PCR解析により、短尾発現はGFP+画分に限られることが判明し、GFP発現に基づいた細胞選別を短尾+細胞の単離に使用できることが示された。造血および内皮発達の最も古いマーカーの1つであるFlk-1は、GFP-画分よりもGFP+画分により高いレベルで存在し、少なくとも短尾+細胞の亜集団において発現されていることが示される。短尾およびFlk-1とは対照的に、初期神経発達に関与している遺伝子であるPax-6は[79、80]、GFP-画分においてより高いレベルで発現されており、この系統の前駆体は短尾陰性であることに一致している。これらの細胞選別研究により、短尾遺伝子座の制御下でのGFPの発現により、EBからの短尾+細胞の単離、特徴づけ、および操作の新規マーカーが提供されることが示される。
【0055】
本実施例は、GFP+細胞を、細胞選別により、3.5日目のEBから単離できることを実証する。GFP+およびGFP-画分の遺伝子発現解析により、短尾発現は主に陽性画分に分離されることが示され、この知見は、GFPに基づいた分画は、短尾陽性細胞の単離法を提供することを明確に実証する。短尾に加えて、初期造血および内皮発達に関与する受容体チロシンFlk-1もまた、陰性画分よりも陽性画分において、より高いレベルで発現されている。これに対し、初期外胚葉および神経外胚葉のマーカーであるRex-1およびPax-6は、GFP-画分において発現されている。これらの知見により、短尾に関連したGFPの発現を使用して、外胚葉から中胚葉を分離できることが実証される。
【実施例4】
【0056】
Flk-1発現に基づいた短尾陽性細胞の亜集団への分離
Flk-1は、初期胚において造血および内皮系統の確立に必須であることが示され、BL-CFCを含むこれらの系統の最も初期の前駆体で発現されている[Faloonら(2000)Development 127:1931-41]。血液および血管発達における中心的な役割から、GFP+集団内でのその発現は、これらの系統への特異化を受けている中胚葉の亜集団を規定すると仮定された。この可能性をさらに調査するために、EBを、いくつかの発達段階において、GFPおよびFlk-1陽性細胞の存在について解析した。図5Aに示した実験において、3.0日目のEB集団の4.8%がGFPを発現したが、Flk-1は発現せず、一方、細胞の1.2%が両方のマーカーを発現した。両方の画分のサイズは次の12時間かけて劇的に増加し、GFP+/Flk-1-およびGFP+/Flk-1+細胞は、それぞれ、全EB集団の52%および26%を示す。GFPおよびFlk-1発現により規定される3つの集団の発達能を評価するために、GFP-/Flk-1-(画分2)、GFP+/Flk-1-(画分3)、およびGFP+/Flk-1+(画分4)細胞を、両時点で単離し、BL-CFCおよび2゜EB含量および遺伝子発現パターンについて解析した。画分の能力を、予め選別した集団(画分1)の能力と比較した。BL-CFCの大半が、3.0および3.5日目の分化の両日にGFP+/Flk-1+画分に見出された(図5B)。以前の研究により、全てのBL-CFCがFlk-1を発現することが示されていたのでこれは驚くべきことではない。2゜EBは、GFP-/Flk-1-画分に限定され、この知見は、それらが、初期EBにおける残留の非分化ES細胞から得られるという事実と一致する。GFP+/Flk-1-画分は、これらの培養で使用した条件下では殆どコロニーを生じなかった。遺伝子発現解析により、2つの時点で単離した集団の間で興味深い差異が判明した(図5C)。ES細胞マーカーであるRex-1は、GFP-画分よりもGFP+画分においてより低いレベルで発現され、このことは、これらの集団は分化を受けていることを示す。短尾は、両時点でGFP+画分において発現されていた。レベルは、3.5日目のEBから単離したGFP+/Flk-1+画分よりもGFP+/Flk-1-の方が高いようであり、このことは、この発現は、これらの細胞が造血および内皮系統へと成熟するにつれてダウンレギュレートされ得ることを示唆する。期待したように、Flk-1は、両時点でGFP+/Flk-1+細胞において主に発現されていた。原始的および成体型の両方の造血発達に必須であるヘリックス・ループ・ヘリックス転写因子であるSclは(Shivdasaniら(1995)Nature 373:432-4)、GFP+/Flk-1+画分に限定されているようである。同様に、成体型造血系の確立に必要とされる転写因子のRunx1は(Wangら(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.93:3444-9)、GFP+/Flk-1+画分に最も容易に検出された。3.0日目のEBから単離したGFP+/Flk-1-画分には幾分Runx1が発現されていた。分化3日目には3つの全ての画分において結節が発現されている。3.5日目には、GFP+/Flk-1+画分における発現レベルは、他の画分よりも有意に低いようである。Wnt3aおよびWnt8aは顕著に制限された発現パターンを示し、両時点においてGFP+/Flk-1-画分にのみ見出され、これは、系統制限マーカーの発現前の初期中胚葉機能に一致している。BMP2は両方のGFP+画分に発現され、一方、BMP4は、主に、GFP+Flk-1+細胞に見出され、これは、これらの分子は、この系における別個の発達段階において役割を果たしていることを示す。BL-CFC能およびGFP+/Flk-1+細胞の遺伝子発現パターンにより、それらはマウス胚に見られる胚外中胚葉を代表することが示される。
【0057】
本実施例は、3日目および3.5日目のEBの短尾画分は、Flk-1発現に基づいて2つの画分に分離できることを実証する:短尾+/Flk-1-(GFP+/Flk-1-)および短尾+/Flk-1+(GFP+/Flk-1+)(図5A)。機能的研究により、造血および内皮の両方の細胞を産生できる前駆体(BL-CFC)は(GFP+/Flk-1+)画分に分離することが実証され、このことは、Flk-1のアップレギュレーションは、これらの系統に関与していることを示唆する(図5B)。遺伝子発現研究により、GFP+/Flk-1-およびGFP+/Flk-1+集団の間の差異が実証された(図5C)。
【実施例5】
【0058】
GFP/FLK画分間の発達関係
図5に観察された発現パターンは、3つの画分が、GFP-/Flk-1-細胞が、GFP+/Flk-1-細胞を生じ、これは次いでGFP+/Flk-1+細胞を生じるという発達の連続的系列であるという解釈と一致する。これらの画分が共通の発達経路内の特定の段階を示すかどうかを決定するために、各々を3日目のEBから単離し、20時間培養し、その後、GFPおよびFlk-1発現について再度解析した。BL-CFCおよびEryp-CFC能は、培養前および培養後に、各集団について決定した。単離した細胞を、EB分化に使用したのと同じ培地中、ペトリ等級24ウェルプレート中、1×105細胞またはそれ以上の密度で培養した。これらの条件下で、細胞は急速に再凝集し、EB様構造を形成し、細胞数の増殖または減少は殆ど示さずに正常な発達プログラムを追随しているようである。20時間の再凝集培養後に、GFP-/Flk-1-細胞は、有意なGFP+/Flk-1-細胞集団ならびに少数のGFP+/Flk-1+を生じた。GFP+/Flk-1-細胞は、同じ培養期間中にかなりのGFP+/Flk-1+細胞の集団を生じた。GFP+/Flk-1+集団は、再凝集培養後に幾分のGFPおよびFlk-1発現を失うようであった。結果を図6に示す。前駆体能の変化は、表面マーカーの変化と一致していた。3つの中で最も未熟であるGFP-/Flk-1-画分は、培養前または培養後に、検出不可能な数のBL-CFCおよびEryp-CFCを含んでいた。GFP+/Flk-1-画分はまた、培養前にBL-CFCおよびEryp-CFCを殆ど含んでいなかった。しかし、培養後、BL-CFC能は、劇的に、105細胞あたり74から1564まで増加し、これはFlk-1発現の増加と一致する。Eryp-CFCの頻度は、培養期間中には変化しなかった。GFP+/Flk-1+画分は、培養前に、BL-CFCを含んでいたが、Eryp-CFCは殆ど含んでいなかった。BL-CFCは培養後に検出されなかったが、しかし、集団は今ではEryp-CFCを含んでいた。表面マーカー解析と一緒に考えると、これらの前駆体データは、プレ中胚葉(GFP-/Flk-1-)から中胚葉/プレ血管芽細胞(BL-CFC)集団(GFP+/Flk-1-)への、血管芽細胞/プレ赤血球集団(GFP+/Flk-1+)への、後血管芽細胞/赤血球集団(おそらくGFP10/Flk-110)への発達進行を支持する。特定の集団における全ての細胞が20時間の培養期間後に分化するわけではなく、出発表現型を有する細胞が、GFP-/Flk-1-およびGFP+/Flk-1-培養物中には残留していた。
【0059】
この実施例は、単離し、20〜24時間再培養した場合、3日目のEBから単離した3つの各集団は、これらの集団が発達の連続的系列を示すパターンで分化し続けることを示す。例えば、GFP-/Flk-1-は、GFP+/Flk-1-細胞を生じ、これはついでGFP+/Flk-1+を生じる。これらの細胞表面特徴の変化は、期待される発達能の変化に関連していた。GFP+/Flk-1-画分には、培養前の僅かな造血/内皮前駆体(BL-CFC)が含まれていた。培養後、これらの前駆体は検出され、3日目のEBからのGFP+/Flk-1-画分は、造血能および内皮能を有するFlk-1+細胞を生じる能力を含むということを明らかに実証する。
【実施例6】
【0060】
GFP/Flk-1-細胞の能力
前の実施例により、3.0日目のEBから単離されたGFP+/Flk-1-細胞は、一晩培養した後に、GFP+/Flk-1+細胞およびBL-CFCを効率的に産生したことが実証された。このプレ-BL-CFC能は、この発達段階においてGFP+/Flk-1-画分に特異的であるかどうかを決定するために、異なる年齢のEBからのGFP+/Flk-1-細胞を、BL-CFCを生じる能力についてアッセイした。図7Aに示したように、BL-CFCを産生する能力は、3日目のGFP+/Flk-1-細胞において最も強かった。この発達能は3.5日目の分化までに劇的に減少し、4.0日目にはほぼ存在しなかった。これらの同じEB由来の新しく単離したGFP+/Flk-1+画分のBL-CFC含量はこの期間かけて増加し、このことは、分化が正常に進行していたことを示す。異なる段階のEB細胞の再凝集培養物中のFlk-1発現パターンは、BL-CFCデータと一致していた。再凝集した3.0日目のGFP+/Flk-1-細胞の培養物には、全集団の40%超過を示した別個のFlk-1画分が含まれていた(図7B)。3.5および4.0日目の培養物中のFlk-1発現は有意に低く、別個のピークよりも全集団の肩から構成されていた。
【実施例7】
【0061】
GFPおよびFlk-1亜集団の心筋能
造血および内皮中胚葉の発達の後に心臓および頭蓋中胚葉が発達するマウス胚における事象の順序を考えて、単離集団の心筋能を決定した。この解析のために、異なる集団の培養物からの凝集物を、マイクロタイターまたは24ウェルプレート中の血清非含有培地中に移し、心筋細胞を示す、拍動細胞塊の発達についてモニタリングした。これらの条件は、再凝集細胞からの心筋細胞の効率的な発達を支持することが知られている。これらの塊内の細胞の心筋細胞性質の独立的な確認として、代表群を顕微鏡スライドに写し、固定し、トロポニンTの心臓特異的イソ型の存在について染色した。解析した全ての拍動細胞塊が、トロポニンT陽性細胞を含むことが判明し、これは、それらが心筋細胞であることを示す。このアッセイを使用して、異なる段階のEBからの再凝集したGFP+/Flk-1-およびGFP+/Flk-1+画分の心筋細胞能を決定した。比較のために、新しく単離したGFP+/Flk-1+細胞および培養したGFP+/Flk-1-細胞のBL-CFC能を解析した。
【0062】
【表1】
【0063】
表1に示したように、異なる画分のBL-CFC能は、前の実験で観察されたものと類似していた。3つの異なるEB集団から単離したGFP+/Flk-1+細胞により、最も高い数が3.5および4.0日目に見られるBL-CFCが得られた。GFP+/Flk-1-細胞におけるプレ-BL-CFC能は、2.75日目に最大であり、3.5および4.0日目に有意に減少した。画分の心筋細胞能は逆パターンを示した。3.5および4.0日目のGFP+/Flk-1-細胞の移した凝集物のかなりの比率(>80%)が拍動心筋細胞を生じた。拍動細胞は、最初期(2.75日目)のGFP+/Flk-1-細胞から産生した凝集物には観察されなかった。拍動細胞は、3つのいずれの発達段階においてもEBから単離したGFP+/Flk-1+細胞から産生した凝集物には検出されなかった。この解析からの知見は、異なる段階で単離したGFP+/Flk-1-細胞は異なる能力を有するという概念と一致する。早期に発達したものは、血管芽細胞の運命を有するようであり、一方、後期に発達したものは心臓系統およびおそらく他の集団を生じるようである。GFP+/Flk-1+集団は、心筋能を失っているようであり、血管芽細胞系統に限定され得る。これらの知見から、早期に発達している(2.75〜3.0日目)GFP+/Flk-1-細胞は、プレ血管芽細胞中胚葉と称され、3.5から4.0日の間に発達した集団はプレ心臓中胚葉と称される。3.0〜3.5日目のGFP+/Flk-1+集団はBL-CFCを生じるが、後期EB(4.0日目)から単離したものは、原始的赤血球前駆体を含み、これは造血関与の開始を示す。この発達能から、GFP+/Flk-1+集団は血管芽細胞中胚葉と称される。
【0064】
実施例5および6は、異なる年齢のEBから単離したGFP+細胞が、異なる発達能を有することを実証する。前の実施例に示したように、3日目のEBに由来するGFP+/Flk-1-細胞は、造血および内皮系統の両方を効率的に産生する。これらの細胞は、拍動細胞塊の欠失により実証されるように、心臓細胞(心臓組織)を生じなかった。これに対し4日目のEBに由来するGFP+細胞は、培養後にFlk-1+細胞およびBL-CFCを殆ど生じなかった。しかし、この集団は、心筋系統の細胞は産生した。これらの知見により、異なる年齢のEBから単離されたGFP+(短尾+)画分は、異なる発達運命を有する別個の集団にパターン化されるようになることが実証される。前の実施例で使用した条件および観察された能力に加えて、他の能力も、条件および添加剤を変化させることにより観察され得る。
【実施例8】
【0065】
血清に由来する因子の役割
短尾+細胞の発達における血清の役割を評価するために、EBを血清の非存在下で分化した。EBはこれらの条件下で発達したが、正常条件で見られたものより幾分小さかった。血清の非存在下において、これらのEB内にはGFP+細胞は検出されず、このことから、中胚葉はこれらの条件下で誘導されないことが示される(図8)。有意な数のGFP+/Flk-1-およびGFP+/Flk-1+細胞が、血清を培養物に添加した場合に発達した。これらの知見により、血清内に見られる成分は、短尾+細胞の発達および分化を誘導できることが明らかに実証される。この過程に役割を果たし得る因子の同定における最初のステップとして、BMP4(20ng/ml)を、血清非含有培養物中の発達中のEBに加えた。この濃度では、BMP4は、分化3日間以内に有意な短尾+細胞の集団を誘導した。しかし、血清とは対照的に、BMP4は、この期間中に、GFP+/Flk-1+集団の発達は支持しなかった。BMP4が、血清の存在下で誘導されるGFP+/Flk-1-細胞からGFP+/Flk-1+細胞を誘導できるかどうかを決定するために、GFP+/Flk-1-細胞を、血清の存在下で3日間分化したEBから単離した。これらの細胞を、培地のみの中、血清を含む培地中、またはBMP4を含む培地中で再凝集した。図8の下の列に示したように、GFP+/Flk-1-細胞は、血清の非存在下で再凝集させた場合には実質的に分化しなかった。期待したように、同じ集団が、血清を培養物に添加した場合には、大きなGFP+/Flk-1+集団を生じた。一次分化培養物中での知見に一致して、BMP4は、培養したGFP+/Flk-1-細胞から有意な数のGFP+/Flk-1+細胞の発達を誘導できなかった。
【0066】
図9は、前の実施例に基づいた中胚葉発達の段階を要約する。ステップ1は、中胚葉誘導およびプレ造血および内皮(プレ血管芽細胞)へのパターン化を示す。ステップ2は、造血および内皮系統への特異化を示す。ステップ3および4は、プレ心臓運命へのパターン化を示す。
【実施例9】
【0067】
細胞集団の内胚葉能の単離および特徴づけ
アフリカツメガエルおよびゼブラフィシュなどのモデル系を使用しての研究により、中胚葉および内胚葉は、中内胚葉として知られる共通の前駆集団から発達することが示唆された。中内胚葉発達段階がEBに存在するかどうかを決定するために、内胚葉系統の発達条件を確立した。この系統の発達のための培養条件を確立する最初のステップとして、分化培養物中の血清の量を変化させた。EBを、血清の存在下および非存在下で産生し(SP34およびその後IMDMプラスSR)、外胚葉、内胚葉および中胚葉発達に関連した遺伝子の発現について異なる段階でアッセイした。外胚葉系統では、神経系統の発達を、PAX6、Wntl、neruoD、および神経フィラメント(NFL)の発現を解析して評価した。これらの遺伝子は、異なる神経発達段階で発現されることが知られている。内胚葉発達の初期段階を、HNF3βの発現によりモニタリングした。内胚葉発達および特異化の後期段階を評価するために、肝臓発達に関与する遺伝子を解析した。これらには、Hex、α-フェトプロテイン(AFP)、HNF4、アルブミン(Alb)、α-1-アンチトリプシン(AAT)およびチロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)が含まれた。中胚葉発達は、短尾およびGATA-1の発現によりモニタリングした。遺伝子発現パターンに加えて、神経発達を、EBからの神経突起の成長をモニタリングすることによりアッセイした。これらの神経突起の神経性質は、βIII-チューブリン発現により実証された。中胚葉発達はまた、EB中の造血前駆体の列挙により評価した。図10は、10日間の分化期間におよぶEBの発達能に対する血清の影響を示す。血清の存在下では(血清)、この系統の発達に関連した遺伝子の発現の欠如から実証されるように、神経-外胚葉の分化は殆どない。HNF3βは、分化の初期段階(2〜3日目)で発現され、その後、ダウンレギュレートされる。期待したように、GATA-1は、これらの条件下で産生されたEBで発現される。これらの遺伝子の発現パターンは、血清の非存在下で(血清-)増殖したEB中で基本的に逆転していた。これらのEBは、神経外胚葉に関連した全ての遺伝子を発現したが、中胚葉/造血マーカーGATA-1は発現しなかった。HNF3βは、これらの条件下で増殖した後期EB(10日目)で発現された。GFP発現によりモニタリングされる短尾発現パターンは、これらの知見と一致していた。血清の存在下で産生されるEBは、分化2日目から5日目に存在するかなりの短尾+集団を産生した(図11、-B-系)。短尾は、血清の非存在下で増殖させたEBには検出されなかった(図11、-H-系)。造血前駆体アッセイにより、これらの知見が確認された。血清中で産生したEBは前駆体を含んでいたが(図12、斑点の棒)、血清の非存在下で増殖させたものは含んでいなかった(図12、実線の棒、眼に見えない)。最後に、EBの神経突起能の評価は、これらの種々の解析と一致していた。血清中で増殖したEBはどれも神経突起を生じなかった。これに対し、血清の非存在下で産生されたものの85%がこの活性を示した(図13)。一緒に考えると、これらの知見により、特異的系統の産生における培養条件(血清)の重要性が実証される。それらはまた、血清完全条件も血清非含有条件も外胚葉発達に最適ではないことを実証する。
【0068】
血清中で産生された初期段階EBにおけるHNF3の強力なアップレギュレーションにより、血清は確立には重要であるけれども、内胚葉系統の成熟には重要ではないことが示唆された。この可能性を試験するために、EBを血清の存在下で2日間開始し、その後、血清を含まない条件(SR)に切り替えた。図14に示したように、これらの条件(血清+/-)下で産生されたEBは、分化の3日目から5日目の間にHNF3βを発現した。AFPは分化5日目にアップレギュレートされた。GATA-1発現レベルは、血清で刺激したEBで見出されるものと比較して減少した。次に、血清+/-条件下で産生された6日目のEBを、増殖因子bFGFの存在下で組織培養等級皿に播種した(それらを付着させる)。皿をゼラチンまたはマトリゲルで覆膜し、基質がさらなる内胚葉分化に影響を及ぼすかどうかを決定した。5日後、培地を交換し、追加の因子をこれらの培養物に加えて、肝臓系統の発達を促進した。実験概略およびデータを図15に示す。この実験において、AFPは6日目のEB段階において発現されていなかった。その発現レベルは、ゼラチンまたはマトリゲル上でbFGFの存在下で培養した場合にアップレギュレートされた。低レベルのALBもこの段階で検出された。試験した全ての条件でさらなる培養期間の後にALB発現が増加した。AATおよびTATもまた最後の培養ステップの後に発現された。最も高いレベルのTATが、EB由来細胞をbFGFおよびDexの存在下で培養した場合に見出された。これらの知見により、内胚葉系統の細胞を産生することが可能であり、適切な条件下では、発達中の肝臓に関連した遺伝子を発現する細胞を生じることが明らかに示される。
【0069】
これらの内胚葉細胞が短尾+または短尾-細胞から発達したかをさらに決定した。この疑問を解決するために、GFP(Bry)+およびGFP(Bry)-細胞を、細胞選別により2.5日目のEBから単離した。これらの集団を再凝集させ、6日目までクラスターとして培養した。6日目に、組織培養等級皿中、bFGFを含む培地中に4日間(計10日間)移動した。遺伝子発現解析により、HNF3βを発現する細胞はGFP+画分(2.5日目)に分離することが示された(図16)。培養が経過するにつれて、この遺伝子は、GFP-画分から産生された細胞において発現された。これは、より後期の発現段階においてHNF3βは、非内胚葉集団において発現されるという事実を反映する。AFP、HEX、ALB、およびHNF4は全て、GFP+画分の誘導体において発現されたが、GFP-細胞から産生された細胞集団においては発現されなかった。これに対し、神経外胚葉のマーカーであるPAX6およびneuroDは、主に、GFP-画分から産生された細胞において見出された。これらの知見により、内胚葉系統は短尾+集団(これは中内胚葉も生じる)から確立され、これらの系統は、共通の前駆体である中内胚葉から得られることが示される。
【0070】
短尾発現細胞の肝臓能をさらに評価するために、bry+およびbry-画分の両方から得られた細胞集団を、α-フェトプロテイン(AFP)、アルブミン(ALB)、およびトランスサイレチン(TTR)などの初期肝臓細胞発達を示す遺伝子、および、系統の成熟を示す遺伝子(α1-アンチトリプシン(AAT)、チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)、およびカルバモイルリン酸シンターゼI(CPase)を含む)の発現について解析した。β-アクチン発現を対照として使用した。細胞を、bry+およびbry-集団へと選別する前および選別後に解析した。胎児肝臓および成体肝臓対照も解析した。全てのこれらの遺伝子の発現は、bry+集団から得られた細胞に限られ、このことは、肝細胞特徴を有する細胞が、短尾発現細胞から発達することを示す。
【実施例10】
【0071】
EBにおける中胚葉および内胚葉発達の動態
実施例6に記載した予備的な動態解析により、別個の発達運命を有する中胚葉の亜集団が、一定の時間的様式で産生されることが実証された。より詳細な動態解析により、分化の2.5日目から4.0日目の間のGFP+Flk1-(本明細書では以後GFP+集団と称される)の動的発達が示された(図18)。単離し再凝集した場合、2.5および3.0日目のGFP+画分は、最初期段階の造血および内皮関与を示す芽細胞コロニー(図19において血管芽細胞能として示す)を産生した。このGFP+細胞の集団は、殆ど心筋細胞(心臓)能を示さなかった。初期GFP+細胞とは対照的に、3.5日目のEBから単離したものは、有意に減少したBL-CFC能を示したが、心筋細胞への分化において効率的であった。4日目のEBから単離されたGFP+細胞は心筋細胞は産生せず、BL-CFCを産生する能力も殆どなく、このことは、それらはいくつかの他の中胚葉系統に運命づけられ得ることを示唆する。遺伝子発現解析により、これらの機能的アッセイが支持され、4つのGFP+画分間の分子差異が実証された(図20)。いくつかの遺伝子が全ての集団で発現されたが、他のものは興味深い異なるパターンを示した。造血発達に重要であり心臓分化に阻害的であると考えられている遺伝子であるWnt3aは、2.5および3.0日目の集団において発現され、3.5および4.0日目の細胞においてダウンレギュレートされていた。このパターンは、これらの集団の造血/血管から心筋への発達能における変化に一致している。興味深い第二のパターンは、遺伝子Mix1-1のパターンである。中胚葉および内胚葉の発達に役割を果たすこの遺伝子は、2.5および3.0日目のGFP集団には発現されているが、3.5および4.0日目の画分は発現されなかった。一緒に考えると、本実施例の知見により、異なる発達能を有する中胚葉集団は、EB内では一定の時間的パターンで産生されることが明らかに実証される。さらに、中胚葉/内胚葉遺伝子Mixl-1の発現解析により、内胚葉能を有する細胞もまた、特定の時期に、すなわち分化の2.5日目から3.0日目の間に産生されることが示される。
【0072】
内胚葉発達の動態をさらに調査するために、3.0および4.0日目のEBに由来するGFP+細胞を単離し、肝細胞様細胞への分化を促進する条件下で培養した。図21に示したように、3.0日目から単離したGFP+細胞(+/-)はHNF3βの発現により規定される内胚葉能を示したが、4.0日目から単離した細胞は示さなかった。これらの知見により、内胚葉は、分化4日目以前の特定の時期にGFP+集団内で産生されることが示される。
【実施例11】
【0073】
インビボでのGFP+集団の発達能
GFP+集団の内胚葉能をさらに評価するために、GFP+およびGFP-の2.5日目のEB細胞を、肝細胞分化を促進することが知られる条件下で14日間培養し、その後、レシピエントSCIDベージュマウスの腎臓被膜下に移植した。数匹のマウスを移植直後に屠殺し、移植片を有する腎臓を切片化し、切片を、Hep1およびAFPに対する抗体で染色した。Hep1は肝細胞の特異的マーカーであり、一方、AFPは、成体型内胚葉および肝臓系統の未熟細胞に発現される。切片内の細胞のいくつかは、Hep1に陽性で染色されたが、Hep1+細胞の近傍にある他の細胞は、AFPを発現することが判明した。Hep1+またはAFP+細胞は、GFP-陰性細胞の移植片には全く見られなかった。これらの知見によりPCRデータが支持され、培養条件が、Hep1の発現により規定される未熟肝細胞の特徴を有する細胞の発達を支持することが実証される。
【0074】
これらの移植実験により、移植直後の移植片における肝細胞様細胞の存在が実証されるが、移植組織は奇形腫として知られる腫瘍のような塊を生じるので、これらの集団の成熟を時間をかけてモニタリングすることが困難であった。奇形腫は、中胚葉起源であり、短尾を発現することが知られる混入未分化ES細胞からまたはGFP+始原的生殖細胞から発達するようである。
【実施例12】
【0075】
アクチビンによる中胚葉および内胚葉の誘導
内胚葉能を有する細胞をさらに濃縮するために、他のモデルシステムでこの細胞集団を誘導することが知られる増殖因子の効果を試験した。アフリカツメガエルの研究により、アクチビンは、培養物中で、外胚葉から中胚葉および内胚葉の両方を誘導することが示された。特に興味深いのは、アクチビンが、このモデルにおいて、使用した異なる濃度で異なる細胞型を誘導するというモルフォゲンとして挙動するという観察であった。アクチビンがES/EB系で類似の能力を示すかどうかを決定するために、それを以下のプロトコルを使用してEB培養物に加えた。ES細胞は、血清を含まないStem Pro34培地中で2日間分化させた。この段階で、発達中のEBを収集し、血清代替添加物(血清非含有)および100ng/mlの濃度のアクチビンを補充したIMDM中で再度培養した。EBを異なる日に収集し、GFP+発現、ならびに、内胚葉、中胚葉および外胚葉発達を示す遺伝子の発現についてアッセイした。図22A,Bで示したように、この量のアクチビンは、GFPにより測定したところ短尾を誘導した。GFP誘導の動態は、血清中で分化したEBに比べて遅延していたが、この濃度のアクチビンは、分化6日目までにかなりの数の短尾陽性細胞(60%)を誘導した。分子解析により、アクチビン誘導細胞は、HNF3β、Mixl-1、Soxl7、Hex-1、およびpdx-1を含む内胚葉発達に関連した幅広い遺伝子を発現することが示された(図23C)。GATA-1などの造血発達に関連した遺伝子およびPAX6などの神経外胚葉分化を示すものは、アクチビンにより誘導されなかった。
【0076】
アクチビンが、ES分化モデルにおいて形態形成特性を示すかどうかを決定するために、異なる濃度の因子をEB培養物に加えた。1ng/mlという僅かなアクチビンが、GFP+発現(全集団の10%)を培養7日目までに誘導した(図23A)。GFP+細胞の頻度は、3ng/mlで刺激した培養物中で40%まで増加し、30ng/mlで50%を超えるプラトーレベルに達した。これらの集団の遺伝子発現解析により、異なる濃度のアクチビンが、異なる発達プログラムを誘導することが示された。1または3ng/mlのアクチビンの存在下で分化したEBは、あったとしても弱い、内胚葉発達を示す遺伝子の発現を示した(図23A)。HNF3β、Soxl7、Hex-1は全て、10、30、または100ng/mlのアクチビンで刺激した培養物中で誘導された。Pdx-1発現は、最高量のアクチビンを要求し、100ng/mlで刺激したEBにおいて最善に誘導された。GATA1もc-fmsも、どの濃度のアクチビンにおいても発現されなかった。PAX6発現パターンは、内胚葉遺伝子のパターンと逆であり、アクチビン濃度の増加と共にダウンレギュレートされた。
【0077】
アクチビン誘導EBは、造血関与に関連した遺伝子を発現せず、このことは、この発達プログラムは誘導されないことを示す。これらのEBの造血能をさらに評価するために、それらを前駆体能について解析した。分子解析から期待したように、これらのEBは、認め得る数の原始的(Ep)または成体的(mac/mix)造血前駆体を含んでいなかった(図24A)。しかし、これらのアクチビン誘導EBをさらに血清で2.5日間刺激した場合、いくらかの造血前駆体を産生し、このことは、それらが中胚葉能を含むことを示す(図24B)。
【0078】
PCR解析により、アクチビンは、HNF3βの発現ならびに内胚葉分化に関与することが知られる他の遺伝子の発現も誘導することが実証された。アクチビン誘導ESにおける内胚葉前駆体の比率をより良く見積もるために、100ng/mlのアクチビンで刺激した培養物からの細胞を、HNF3βおよびHex1に対する抗体で染色した。非誘導培養物からのEBを対照として使用した(アクチビン-)。アクチビン誘導集団のかなりの割合(全部の50〜60%と推定)が、HNF3βおよびHex1の両方を発現していた。非誘導EB中のどの細胞もこれらのタンパク質を発現しなかった。これらの知見により、EB内のかなりの数が、内胚葉系統であることが明らかに実証される。
【0079】
これらのアクチビン誘導集団の能力をさらに調査するために、GFP+細胞を、3ngまたは100ngで刺激したEBから単離し、肝細胞誘導条件下でさらに培養した(14日間)。図25に示したように、100ngの培養物からの細胞のみが、肝臓分化に一致するアルブミンを発現する細胞へと分化した。一緒に考えると、これらの研究からの知見により、アクチビンは、ES/EBシステムにおいてモルフォゲンとして機能し、高濃度が内胚葉誘導に必要とされることが示される。
【0080】
血清誘導短尾+細胞により産生された奇形腫が始原生殖細胞の存在から生じるならば、アクチビン誘導細胞は、移植にとってより良好な前駆体源となり得る。なぜなら、生殖細胞プログラムはこれらの条件下では誘導されないからである。この仮説を試験するために、GFP+およびGFP-細胞を、100ng/mlのアクチビンで誘導したEBから単離し、14日間培養して、肝細胞様細胞の分化を促進した。この培養期間後、細胞を収集し、レシピエント動物の腎臓被膜に移植した。移植の3週間後、マウスを屠殺し、腎臓を解析した。結果を図26A〜Cに示す。GFP-細胞で移植した全てのマウスが、3つ全ての生殖層に由来する細胞からなる、多系統奇形腫を発達した。これらの細胞は、腸上皮、骨、および骨格筋を含む、内胚葉および中胚葉由来組織からなる分化した細胞塊を生じる。いくつかの場合、皮膚もまた、GFP+細胞からの移植片に観察され、このことは、この系統が、bry+細胞から発達し得ることを示唆する。これらの知見により、bry+細胞からGFP+集団を産生することが可能であることが示される。これらの知見により、移植後に奇形腫を形成することなく分化組織を生じるGFP+集団を産生することが可能であることが示される。
【実施例13】
【0081】
bry+/c-kit-およびbry+/c-kit+細胞の発達能
前の実施例により、肝細胞系統は、中胚葉能および内胚葉能の両方を有するbry+細胞集団から発達することが明らかに示される。bry+画分の解析により、これらの細胞の亜集団は、受容体チロシンキナーゼc-kitを発現すること(図27A)、この集団は、Flk-1を発現する細胞とは別個であることが判明した。c-kit発現が、内胚葉能を有する細胞の分離に有用なマーカーであり得ることを決定するために、3日目の血清刺激EBからのbry+/c-kit-(+/-)およびbry+/c-kit+(+/+)細胞を肝細胞能についてアッセイした。図27Bに示したように、AFPおよびALB発現細胞は全てbry+/c-kit+集団から得られた。この画分の内胚葉能を推定するために、選別した細胞をカバーガラスに置き、HNF3βに対する抗体で染色した。80%を超えるbry+/c-kit+細胞がHNF3βタンパク質を発現し、10%未満のbry+/c-kit-細胞が陽性であった。これらの知見により、内胚葉前駆体は、短尾およびc-kitの両方を発現し、この集団には、内胚葉能を有する細胞が高度に濃縮されていることが示される。短尾およびc-kit発現に基づいて細胞を単離することにより、内胚葉前駆体の単離における新規な戦略が提供される。
【実施例14】
【0082】
図23に提示したPCR解析により、異なる濃度のアクチビンが異なる発達プログラムを誘導し、内胚葉能を有する細胞は、最も高いレベルのこの因子で誘導されることが示される。アクチビンの異なる応答を定量するために、異なる濃度のアクチビンで刺激した細胞をカバーガラスに付着させ、抗HNF3β抗体で染色した。100ng/mlのアクチビンで刺激した全EB集団の50%を超えるものがHNF3βを発現したが、3ng/mlで刺激した細胞の僅か10%が陽性であった。単にバックグラウンドレベルの染色が、非刺激集団で観察された。これらの知見により、高濃度のアクチビンが、強い内胚葉プログラムを刺激できることが実証され、これは全EB集団のかなりの割合を示す。
【0083】
アクチビン処理細胞の能力のさらなる評価として、異なる濃度のこの因子の存在下で分化した6日目のEBを、4日間、血清代替添加物培地に移し、その後、さらに4日間、肝細胞条件で再度播種した。14日間の培養後、各グループからの細胞を収集し、PCR発現解析にかけた。Myf5および骨格アクチンの発現をモニタリングして、さらなる中胚葉由来系統を示す骨格筋発達を評価した。肺特異的遺伝子であるサーファクタントタンパク質C(SP-C)を、AFPおよびALBに加えて、内胚葉分化マーカーとして含めた。図28に示したように、Myf5および骨格アクチンが、1ng/mlという僅かな量のアクチビンで刺激した培養物中に発現され、この発現は、因子の幅広い濃度で検出された。しかし、両方の遺伝子の発現は、最も高い濃度のアクチビン(100ng/ml)でダウンレギュレートされた。低量のアクチビンで刺激した培養物は、骨格筋の形態を有する細胞群が含まれていた。免疫染色により、これらの細胞は、骨格ミオシンおよびα-アクチニンの両方を発現することが実証され、このことは、それらが骨格筋系統であることを示す。骨格筋成長を生じた再播種されたEBの比率の評価は、遺伝子発現解析と一致し、3および10ng/mlで刺激したものが、図28に示したように最も強い骨格筋発達を示した。3つの内胚葉遺伝子の発現パターンは、骨格筋遺伝子で観察されたものとは異なっていた。低いアクチビン濃度ではどれも全く発現されず、最も高い濃度の因子で刺激した培養物中では全てが容易に検出された。PAX6の発現は非処理培養物および低い濃度の因子で処理したものに限られた。この解析からの知見により、異なる濃度のアクチビンは異なる発達プログラムを誘導し、低い濃度では中胚葉運命に傾き、高い濃度では内胚葉運命に傾くことを実証し、本明細書の前記の実施例12の知見が確認され発展する。さらに、これらの結果により、アクチビンにより誘導される内胚葉細胞は分化でき、肝細胞および肺特徴を有する細胞を生じることが示される。
【0084】
低および高濃度の因子で刺激したEBから単離された短尾陽性および陰性集団もまた、骨格筋および内胚葉遺伝子の発現について解析した。図29に示したように、myf5および骨格アクチン発現の両方が、3ng/mlのアクチビンで刺激したEBから単離したbry+集団から産生された集団に限定されていた。同様に、内胚葉遺伝子は、100ng/mlの因子の存在下で産生したEBから単離した短尾+由来細胞に発現されていた。これらの知見により、中胚葉および内胚葉は短尾+細胞から発達することがさらに実証される。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】短尾遺伝子座に緑色蛍光タンパク質(GFP)を標的化するのに使用したベクターおよび戦略のスキームを示す図である。
【図2A】発達中の胚様体におけるGFPおよび短尾の発現を示す図である。図2Aは、逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)により決定された短尾発現の動態を示す。図2Aの図の上の数字および図2Bのヒストグラムは、EB分化の日数を示す。
【図2B】発達中の胚様体におけるGFPおよび短尾の発現を示す図である。図2Bは、蛍光活性化細胞選別器(FACS)解析により決定されたGFP発現の動態を示す。図2Aの図の上の数字および図2Bのヒストグラムは、EB分化の日数を示す。
【図3A】野生型およびGFP-Bry ES細胞の発達能を示す図である。図3Aは、6日目のEBの発達能を示すヒストグラムである。(Mac/Ery:マクロファージおよび成体型赤血球細胞のコロニー;Mac:純粋なマクロファージコロニー;Eryd:成体型赤血球細胞のコロニー;Mix:多系統コロニー;Eryp:原始的赤血球コロニー。
【図3B】野生型およびGFP-Bry ES細胞の発達能を示す図である。図3Bは、EBの芽球コロニー形成細胞(BL-CFC)能を示したヒストグラムである。
【図3C】野生型およびGFP-Bry ES細胞の発達能を示す図である。図3Cは、野生型およびGFP-Bry細胞のEB発達中における遺伝子発現パターンを示す。レーンの上の数字は、EB分化日数を示す。
【図4A】GFPに基づいて単離されたEB画分の遺伝子発現プロファイルを示す図である。図4Aは、3.5日目のEBにおけるGFP発現プロファイルを示す。1および2は、GFP-およびGFP+画分の単離に使用したゲートを示す。
【図4B】GFPに基づいて単離されたEB画分の遺伝子発現プロファイルを示す図である。図4Bは、単離画分のRT-PCR発現解析を示す。
【図5A】GFPおよびFlk-1集団の単離および特徴づけを実証する図である。図5Aは、3.0日目および3.5日目のEBのGFP-/Flk-1-、GFP+/Flk-1-およびGFP+/Flk-1+画分の単離に使用したプロファイルおよびゲートを示す。ゲートの隣の数は3つの異なる集団を示す。
【図5B】GFPおよびFlk-1集団の単離および特徴づけを実証する図である。図5Bは、異なる画分の芽球コロニー(Blast)および二次EB(2゜)能を示す。
【図5C】GFPおよびFlk-1集団の単離および特徴づけを実証する図である。図5Cは、単離画分の発現解析を示す。上のパネルに示した発現は、Bradyら(1990)Meth.In Mol.And Cell Bio.2:17-25に記載のポリA+グローバル増幅PCR法を使用して評価した。下のパネルのデータは、遺伝子特異的オリゴヌクレオチドを使用してRT-PCR解析により得られた。各列の上の数字は、図5Aで命名したような細胞集団を示す。
【図6】単離された3日目のEB由来画分におけるGFPおよびFlk-1の発現を示す図である。上の列は、培養前(pre)の3つの画分の発現プロファイルを示す。下の列は、20時間培養した後(post)の同じ細胞集団のプロファイルを示す。各プロファイルの下の数字は、各集団のBL-CFCおよび原始的赤血球(EryP-CFC)能(播種した1×105細胞あたりの前駆体)を示す。
【図7A】培養前および培養後の単離細胞集団のBL-CFC能およびFlk-1発現を示す図である。図7Aにおいて、下の数字は細胞集団を意味し、1は選別前、3はGFP+/Flk-1-画分、4はGFP+/Flk-1+画分である。細胞を20時間培養し、その後、凝集物を解離し、BL-CFCについて解析した。データは、3、3.5、および4.0日目のEBから単離した細胞について示す。
【図7B】培養前および培養後の単離細胞集団のBL-CFC能およびFlk-1発現を示す図である。図7Bにおいて、上の列は、培養前の、3.0、3.5、および4.0日目のEBから単離したGFP+/Flk-1-細胞を示す。下の列は、培養後の(post)、同じ画分のFlk-1発現パターンを示す。棒の上の数字は、Flk-1+細胞の比率を示す。
【図8】各ヒストグラムの上に示した条件下で3.0日目のEB由来細胞における、短尾およびFlk-1+の発達に対する、BMP-4および胎児ウシ血清(FCS)の効果を実証する図である。図8Bは、指定した条件下で20時間培養したGFP+//Flk-1-細胞から作製した細胞集団における、短尾およびFlk-1の発現を示す。
【図9】EBにおける中胚葉形成および特異化の図解モデルである。
【図10】血清の存在下および非存在下におけるEBにおける遺伝子の発現を示す図である。
【図11】異なる条件下で作製したEBにおける短尾発現を示すグラフである。
【図12】血清の存在下および非存在下での神経分化を示した図解と6日目のコロニーアッセイの結果を示す棒グラフである。
【図13】血清の存在下および非存在下での神経分化を示した図解である。
【図14】2日間血清中で開始し、その後、血清を含まない条件下に切り替えたEBにおける遺伝子の発現を示す図である。
【図15】bFGFの存在下で培養したEBにおける遺伝子発現を示す図である。
【図16】bFGFの存在下で培養したBry+およびBry-細胞における遺伝子発現パターンを示す図である。
【図17】本発明の中胚葉および内胚葉集団、および、これらの集団から誘導細胞型への分化の図解である。
【図18】2.5、3.0、3.5、および4.0日間分化したEBにおけるGFP(短尾)およびFlk-1の発現の動態を示す図である。矢印は、その後の研究において解析のために使用する単離されたGFP+集団を示す。
【図19】4段階のEB分化から単離されたGFP+集団の血管芽細胞および心臓能を示す図である。各段階からの細胞を細胞選別により単離し、24時間再度凝集させ、造血能および心臓能について解析した。データは、再凝集培養物から回収した1×105細胞あたりの芽球コロニー(血管芽細胞)として、または、心筋分化を示す拍動細胞塊を生じる凝集物の%として示す。
【図20】4つのGFP+EB由来細胞集団における指定した遺伝子のRT-PCR発現解析を提供する図である。数字は、EB分化日数を示す。
【図21】3.0および4.0日目のEBから単離したGFP+集団におけるHNF3β発現を示す図である。Preは選別前の細胞を示し、-/-は、GFPまたはFlk-1を全く発現しない細胞であり、+/-はGFP+Flk-1-集団を示す。
【図22A】血清を含まない培養物中のEBの発達に対する、アクチビンの効果を実証する図である。A)100ng/mlのアクチビンの存在下で分化した6日目のEBにおけるGFP発現を示すFACSプロファイル。
【図22B】血清を含まない培養物中のEBの発達に対する、アクチビンの効果を実証する図である。B)100ng/mlのアクチビンを含む培養物におけるGFP誘導の動態。白丸は、アクチビンの存在下で分化したEBであり、黒い四角はアクチビンの非存在下で分化したEBである。
【図22C】血清を含まない培養物中のEBの発達に対する、アクチビンの効果を実証する図である。C)アクチビンの存在下(+アクチビン)または非存在下(-アクチビン)で増殖させた6日目のEBにおける指定した遺伝子のRT-PCR発現解析。数字は、EBの分化日数を示す。
【図23A】EBの発達能に対する種々の濃度のアクチビンの効果を示す図である。A)異なる濃度のアクチビンで誘導した7日目のEBにおけるGFP発現。
【図23B】EBの発達能に対する種々の濃度のアクチビンの効果を示す図である。B)異なる濃度のアクチビンで誘導した7日目のEBのRT-PCR発現解析。
【図24A】異なる濃度のアクチビンの存在下で分化したEBの造血前駆体含量を示す図である。A)7日目のEBの前駆体能、Epは、原始的赤血球前駆体であり、mac/mixは、成体型造血前駆体を示す。
【図24B】異なる濃度のアクチビンの存在下で分化したEBの造血前駆体含量を示す図である。B)血清に2.5日間暴露した後の7日目のアクチビンにより誘導されたEBの前駆体能。
【図25】エーテル3または100ng/mlのアクチビンで誘導したGFP+細胞からの細胞を発現しているアルブミンの発達を示す図である。GFP+およびGFP-は、分化6日目で単離され、肝細胞分化を支持すると前記された条件でさらに8日間培養した。
【図26A】bry+(図26A)およびbry-(26B)細胞集団の3週間目の腎移植片を示す図である。
【図26B】bry+(図26A)およびbry-(26B)細胞集団の3週間目の腎移植片を示す図である。
【図26C】図26Cは、bry+およびbry-集団の移植片の切片を示す図である。
【図27A】図27Aは、3日目の血清で刺激したEBから単離したbry+/c-kit+(+/+)およびbry+/c-kit-(+/-)を示すFACSプロファイルである。数字は、各画分における細胞の比率を示す。
【図27B】図27Bは、各画分の発現解析を示す図である。3日目は、選別の直後に解析した細胞を示す。15日目は、肝細胞条件下で15日間培養した細胞集団を示す。
【図28】異なる濃度のアクチビンで誘導したEBから得られた細胞集団の発現解析を示す図である。図の上の数字は、アクチビン濃度を示す。図の下の数字は、骨格筋成長を有するEB集団の比率の推定値を示す。
【図29】アクチビンにより誘導した集団から単離した短尾画分の発現解析を示す図である。図の上の数字はアクチビン濃度を示す。
【背景技術】
【0001】
本出願は、2002年5月17日に提出された米国出願番号第60/381,617号および2003年2月4日に提出された第60/444,851号の特典を請求し、その開示は参照により本明細書に取り込む。
【0002】
本発明は、国立衛生研究所により授与された認可番号2R01HL48834-09および2R01HL65169-02の下で政府支援により行われた。政府は本発明に一部の権利を有し得る。
【0003】
胚発生中に、生体の組織は、外胚葉、中胚葉、および成体型内胚葉(definitive endoderm)という3つの主要な細胞集団から形成される。これらの細胞集団は、初期生殖細胞層としても知られるが、これは原腸陥入(gastrulation)として知られる過程を通じて形成される。嚢胚形成後、各初期生殖細胞層は、特定のセットの細胞集団および組織を産生する。中胚葉は血液細胞、内皮細胞、心筋および骨格筋、ならびに脂肪細胞を生じる。成体型内胚葉は、肝臓、膵臓、および肺を生じる。外胚葉は神経系、皮膚、および副腎組織を生じる。
【0004】
これらの生殖細胞層からの組織発達の過程には、複雑な分子変化を反映する複数の分化段階が含まれる。中胚葉およびその派生物に関連して、3つの異なる段階が規定されている。最初は、胚盤葉上層として知られる構造内の細胞からの中胚葉の誘導である。新生中胚葉としても知られる新しく形成された中胚葉は異なる位置に移動し、これは初期胚における将来の組織発達の部位となろう。パターン化として知られるこの過程は、特定の組織への初期分化段階を反映しているようである。特異化としても知られる最終段階には、パターン化された中胚葉亜集団からの別個の組織の生成が含まれる。近年の研究により、中胚葉は、別個の発達能を有する亜集団を示す連続的な波で誘導されることを示唆する証拠が提供された。最初に形成される中胚葉は胚外領域に移動し、造血細胞および内皮細胞を生じ、次の集団は発達中の胚の前方に移動し、心臓および頭蓋間葉に寄与する。これらの系統関係は、組織学的解析により初めて規定され、主に細胞追跡研究により確認されている。発生運命のこの分離は、発達生物学の分野でよく受け入れられており、現在までに、これらの系統に関係する以前には、中胚葉および内胚葉を単離する利用可能な方法はない。
【特許文献1】米国出願番号第60/381,617号
【特許文献2】米国出願番号第60/444,851号
【非特許文献1】Papaioannouら(1998)Bioessays 20:9-19
【非特許文献2】Wilsonら(1995)Development 121:877-86
【非特許文献3】Wilkinsonら(1990)Nature 343:657-9
【非特許文献4】Herrmannら(1991)Development 113:913-7
【非特許文献5】Papaioannouら(1998)
【非特許文献6】Smith(1997)Current Opinion in Genetics & Development 7:474-480
【非特許文献7】Evansら(1981)Nature 292:154-156
【非特許文献8】Thompsonら(1995)Proc.Nat'l.Acad.Sci.USA 92;7844
【特許文献3】米国特許第5,843,780号
【非特許文献9】Reubinoffら(2000)Nature Biotech.18:399
【特許文献4】米国特許第6,110,739号
【非特許文献10】Odoricoら(2001)Stem Cells 19:193-204
【非特許文献11】Grompeら(1993)Genes & Dev.7:2298
【非特許文献12】Oversturfら(1996)Nature Genet.12:266-273
【非特許文献13】Kennedyら(1997)Nature 386:488-93
【非特許文献14】Bradyら((1990)Meth.in Mol.and Cell Bio.2:17-25)
【非特許文献15】Smith(2001)Annu.Rev.Cell Dev.Biol.17:435-62
【非特許文献16】Hooperら(1987)Nature 326:292
【非特許文献17】Rogersら(1991)Development 113:815-24
【非特許文献18】Shalabyら(1995)Nature 376:62-6
【非特許文献19】Palisら(1999)Development 126:5073-84
【非特許文献20】Faloonら(2000)Development 127:1931-41
【非特許文献21】Shivdasaniら(1995)Nature 373:432-4
【非特許文献22】Wangら(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.93:3444-9
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、中胚葉および成体型内胚葉細胞集団を単離する方法を提供する。これらの細胞集団は、細胞増殖および分化に影響を及ぼす薬剤を同定するのに、組織発達に関与する遺伝子を同定するのに、および、細胞置換療法のための分化細胞および組織を作製するのに有用である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、中内胚葉および中胚葉細胞の濃縮された細胞集団を提供する。中内胚葉細胞は、本明細書において、短尾(brach+)を発現し、分化誘導条件の存在下で、中胚葉および中胚葉誘導体(心筋および骨格筋、平滑筋、内皮および造血細胞を含む)を産生でき、また、内胚葉および内胚葉誘導体(肝臓細胞および膵臓細胞を含む)も産生できる細胞として定義されている。中胚葉細胞は、本明細書において、brach+であり、分化誘導条件の存在下で、心筋および骨格筋、血管平滑筋、内皮および造血細胞を産生でき、内胚葉および内胚葉誘導体は産生できない、細胞として定義されている。
【0007】
本発明はさらに、内胚葉細胞の濃縮された細胞集団を提供する。内胚葉細胞は、本明細書において、短尾(brach+)を発現せず、分化誘導条件の存在下で、肺細胞、肝臓細胞、および膵臓細胞を産生できる細胞として定義されている。
【0008】
本発明はまた、中内胚葉および中胚葉細胞の濃縮された細胞集団、および内胚葉細胞の濃縮された細胞集団を単離する方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、本発明の細胞集団の増殖、分化、または生存に影響を及ぼす薬剤を同定する方法を提供する。特定の系統および組織の細胞分化および発達に関与する遺伝子を同定する方法も提供する。
【0009】
brach+細胞を特異的に認識する抗体も提供する。この抗体は、例えば、中内胚葉および内胚葉細胞集団を単離するのに有用である。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、in vitroで細胞を産生する方法を提供する。このような細胞は、例えば、細胞置換療法に有用である。
【0011】
本発明はまた、選択マーカーをコードするDNAが短尾遺伝子座に存在し、よって、1つの短尾対立遺伝子が不活性化されており、選択マーカーが短尾遺伝子座が転写される細胞において発現されているゲノムを有するトランスジェニック非ヒト哺乳動物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
胚形成中において、中胚葉の形成は、生体プランの確立において、ならびに、血液、内皮、心臓および骨格筋などの複数の臓器系の発達において重要なステップである。しかし、中胚葉形成を制御する分子機序はあまり明確になっていない。培養物中における胚幹(ES)細胞の分化に基づいたモデルシステムを使用して、造血、内皮、心臓筋および骨格筋、ならびに脂肪細胞系統を含む中胚葉に由来する集団を研究してきた。in vitroでのモデルは、中胚葉の誘導および特異化を支持するが、これらの分化事象は、ES細胞から産生された胚様体(ES)として知られる複雑なコロニー中で起こる。中胚葉形成および組織発達をより良く理解するために、形成された時にEBからの中胚葉細胞集団を単離することが有利であろう。しかし、新生中胚葉細胞集団に特異的な抗体が十分に明確ではないために、抗体を使用した細胞選別によりこれらの集団を単離することは不可能であった。
【0013】
短尾(Tとしても知られる)は、T-ボックス遺伝子として知られる転写因子のファミリーの創設メンバーであり、マウスにおいて天然突然変異として最初に同定された。Papaioannouら(1998)Bioessays 20:9-19。ヘテロ接合型マウスは生存可能であるが、野生型動物よりも短い尾を有している。p.c.約10日目に死亡するホモ接合型突然変異体は脊索を欠失しており、後側中胚葉組織の発達において欠陥を示す。キメラ動物の解析により、短尾は、中胚葉細胞の移動特性に影響を及ぼすことが示された。Wilsonら(1995)Development 121:877-86。発現解析により、短尾について独特かつ興味深いパターンが判明した。それは、原条により移入している全ての細胞ならびに新生および初期移動中胚葉において一過的に発現している。Wilkinsonら(1990)Nature 343:657-9;Herrmannら(1991)Development 113:913-7。発現は、沿軸、外側、および胚外中胚葉において迅速にダウンレギュレートされ、条斑の退行後、尾芽および脊索に限局される。このパターンが得られたので、短尾は、初期中胚葉の最善のマーカーの1つであると考えられ、この系統の発達を追跡するのに使用される。短尾は、解析した全ての種において同定されており、このことは、中胚葉発達におけるその役割は系統発生全体を通じて保存されていることを示唆する。Papaioannouら(1998)。
【0014】
本発明によれば、選択マーカー遺伝子は、短尾遺伝子座に組換え標的されている。ES細胞分化開始後に、選択マーカーは、短尾発現を反映するパターンで発現されることが発見された。選択マーカーにより、EBから短尾陽性(Brach+)細胞の選別が可能となり、これにより、中内胚葉および中胚葉細胞の濃縮された細胞集団の単離および特徴づけが可能となった。
【0015】
本発明によれば例示される選択マーカーは、強化緑色蛍光タンパク質(EGFPまたはGFP)である。細胞選別を容易にする他の選択マーカーも当業者には知られており、本発明でも使用し得る。GFPをコードするcDNAは当分野で知られており(そして市販されている、例えばCA州パロアルトのクロンテックからプラスミドpEGFP.C1として)、当分野で既知の方法により標的化ベクター(GFP-Bry)を作製することにより短尾遺伝子座に標的化し得る。ベクターは、好ましくは、短尾遺伝子の最初のエキソンのおよそ3分の2を、GFP発現カセットで置換するように設計されている。
【0016】
ヒトおよびマウスを含む数多くの種に由来する短尾遺伝子が当分野で知られており、例えば、Smith(1997)Current Opinion in Genetics & Development 7:474-480に考察されている。GFP発現カセットは、好ましくは、GFPcDNA、および、下流短尾エキソンの翻訳を防ぐための1つ以上の翻訳終止コドンを含む。カセットはさらに、短尾遺伝子の下流領域の転写を防ぐためのSV40ポリアデニル化シグナル配列をコードするエキソンを含み得る。
【0017】
ベクターは、当分野で既知の方法によりES細胞に導入され、相同的組換えによりGFP-Bry構築体は組み込まれる。ES細胞は、当分野で既知であり、例えばEvansら(1981)Nature 292:154-156、Thompsonら(1995)Proc.Nat'l.Acad.Sci.USA 92;7844、米国特許第5,843,780号、およびReubinoffら(2000)Nature Biotech.18:399により開示された方法により、胚盤胞から単離し得る。好ましい実施形態において、ES細胞はマウスまたはヒトES細胞である。成功裏な標的化後に、短尾開始コドンはGFPの開始コドンとなり、その結果、標的化短尾対立遺伝子は破壊される。得られた細胞はGFP-Bry ES細胞と称される。GFP-Bry ES細胞は、本明細書において、1つの短尾対立遺伝子が不活性化され、GFPが、短尾調節エレメントの制御下で発現されるES細胞として定義される。
【0018】
本発明によると、1つの短尾対立遺伝子が不活性化されているGFP-Bry ES細胞は生存可能であり、正常に発達および分化することが発見された。さらに、GFP発現は、内因性短尾発現を写すことが発見された。従って、brach+細胞は、GFPを発現する細胞を選択することにより単離し得る。GFPを発現する細胞は、簡便には、フローサイトメトリーにより、例えば蛍光活性化細胞選別(FACS)により単離し得る。蛍光特性に基づいて細胞を選別する方法は、当業者には公知である。
【0019】
前記に定義したような中内胚葉および中胚葉細胞の濃縮された細胞集団は、血清の存在下で、GFP+細胞を得るに十分な時間、例えばマウス細胞では約1から約4日間、GFP-Bry ES細胞を培養し、選別し、例えばフローサイトメトリーによりGFP+細胞を単離することにより得られ得る。単離された細胞集団は、少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%、または少なくとも約99%の中内胚葉および中胚葉細胞を含む。中内胚葉および中胚葉の相対量は、血清中の培養時間を調整することにより変化させ得、より短い培養時間では、造血および内皮系統にパターン化された中内胚葉および中胚葉の存在に傾き、より長い培養時間では、心筋および骨格筋系統にパターン化された中胚葉の存在に傾く。例えば、中胚葉の濃縮された細胞集団は、血清中で約2.5から約4.5日間培養し、その後、GFP+細胞を選別し、単離することにより得られ得る。血清の存在下における培養は、本明細書において、動物血清、例えばウシ胎児血清(FCS)を補充した培地中での培養として定義される。好ましい実施形態において、培地には、約5%から約25%の血清が補充されている。最適濃度は血清バッチ依存的であり得、当業者により決定できる。
【0020】
中内胚葉および中胚葉細胞の濃縮された細胞集団は、ヒトおよびマウス細胞におけるin vitroでの分化時間の差異を説明するために血清中での培養時間の長さを長くした類似の方法により、ヒトES細胞から作製したGFP-Bry ES細胞から得られ得る。従って、ヒトES細胞から作製したGFP-Bry ES細胞を、GFP+細胞を得るのに十分な時間、例えば約2から約18日間、血清中で培養し、その後、GFP+細胞を選別し、単離する。
【0021】
マウスおよびヒトの両方の細胞集団について、単離した細胞が、中胚葉を超えて、例えば血管芽細胞まで分化したかどうかを、チロシンキナーゼ受容体、ヒトKDR、またはマウスFlk-1の存在についてアッセイすることにより容易に決定できる。KDRおよびFlk-1は、中内胚葉および新生中胚葉には発現されていないが、これらの細胞が血管芽細胞/プレ赤血球集団に分化すると、KDRまたはFlk-1発現が検出可能である。KDR+およびflk-1+細胞は、KDRまたはFlk-1に対する抗体を使用してフローサイトメトリーにより同定し得る。このような抗体は当分野で既知であり、標準的な抗体作製法を使用して作製し得る。中内胚葉および中胚葉の濃縮された細胞集団はさらに、細胞選別により、KDR+およびflk-1+細胞を除去することにより濃縮することができる。
【0022】
図17に示したように、本発明によると、中内胚葉は、内胚葉および中胚葉の両方ならびにその対応する系統を生じる、以前には同定されていなかった細胞集団であることが発見された。in vitro培養物中での血清の存在または非存在を使用して、どの系統が中内胚葉から産生されるかを指示できることがさらに発見された。特に、内胚葉細胞の濃縮された細胞集団は、血清の存在下でマウスES細胞から作製したGFP-Bry ES細胞を約2から4日間培養し、例えばフローサイトメトリーによりGFP+細胞を選別し、単離し、その後、血清の非存在下でGFPを約1から約10日間培養することにより得られ得る。単離された細胞集団は、少なくとも50%、好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%、または少なくとも約99%の前記に定義したような内胚葉細胞を含む。
【0023】
内胚葉細胞の濃縮された細胞集団は、血清の存在下で約2から10日間GFP-Bry ES細胞を培養し、GFP+細胞を選別し、単離し、その後、血清の非存在下でGFP+細胞を約1から約15日間培養することにより、ヒトES細胞から作製したGFP-Bry ES細胞から得られ得る。
【0024】
内胚葉細胞の濃縮された集団はさらに、前記したようなKDR+またはFlk-1+細胞を同定および選別することにより濃縮し得る。
【0025】
本発明によると、内胚葉の濃縮された細胞集団は、血清の非存在下で成長因子アクチビンの存在下で約2から約10日間GFP-Bry胚性幹細胞を培養し、短尾を発現する細胞を単離することにより得られることがさらに発見された。アクチビンの量は、胚性幹細胞から内胚葉への分化を誘導するのに十分なものである。このような分化は、例えばHNF3β、Mixl-1、Sox17、Hex-1、またはpdx-1を含む、内胚葉発達に関連した遺伝子の発現についてアッセイすることにより測定し得る。好ましい実施形態において、アクチビンの濃度は少なくとも約30ng/mlである。別の好ましい実施形態において、アクチビンの濃度は約100ng/mlである。
【0026】
中胚葉の濃縮された細胞集団は、血清の非存在下、アクチビンの存在下、約2から約10日間GFP-Bry胚性幹細胞を培養し、短尾を発現する細胞を単離することにより得られ得る。アクチビンの量は、胚性幹細胞から中胚葉への分化を誘導するのに十分であるが、内胚葉への分化を誘導するには不十分である。中胚葉への分化は、例えばGATA-1を含む、中胚葉発達に関連した遺伝子の発現、および、内胚葉発達に関連した遺伝子の不在についてアッセイすることによりにより測定し得る。好ましい実施形態において、アクチビンの濃度は、30ng/ml未満である。別の好ましい実施形態において、アクチビンの濃度は約3ng/mlである。
【0027】
本発明はさらに、前記した細胞集団の増殖、分化、または生存に影響を及ぼす薬剤を同定する方法を提供する。この方法には、前記した細胞集団の1つに由来する細胞を、試験する薬剤の非存在下および存在下で培養し、前記薬剤が細胞集団の増殖、分化、または生存に影響を及ぼすかどうかを決定することが含まれる。試験する薬剤は、天然または合成、1つの化合物または混合物、小分子またはポリマー(ポリペプチド、多糖、ポリヌクレオチドなどを含む)、抗体またはその断片、天然または合成化合物のライブラリー由来の化合物、合理的な薬物設計から得られた化合物、または細胞集団に対する効果を、当分野で既知のアッセイ、例えば米国特許第6,110,739号に記載のような標準的な増殖および分化アッセイを使用して評価し得る任意の薬剤であり得る。このような薬剤は、インビボおよびin vitroでの細胞増殖および分化の制御に有用である。
【0028】
本発明はさらに、特定の系統および組織の細胞分化および発達に関与する遺伝子を同定する方法を提供する。この方法には、種々の培養時間後に本発明のGFP+細胞集団を単離し、異なる集団の遺伝子発現プロファイルを比較し、集団において独特に発現されている遺伝子を同定することが含まれる。好ましい実施形態において、マイクロアレイ解析およびサブトラクティブハイブリダイゼーションを使用して、遺伝子発現プロファイルを比較する。
【0029】
別の実施形態において、本発明は、短尾陽性(brach+)細胞を認識するが、短尾陰性(brach-)細胞は認識しない抗体の作製方法を提供する。動物に免疫誘発形態の本発明の細胞を注入することによりポリクローナル抗体を作製し得る。また、GFP+細胞には存在するが、GFP-細胞には存在しない細胞表面マーカーを同定し、マーカーまたはその断片に対する抗体を作製することにより、抗体を作製し得る。抗体はモノクローナルまたはポリクローナルであり得、断片、遺伝工学した抗体、単鎖抗体などであり得る。抗体は、当分野で公知の方法により作製し得る。このような抗体は、中内胚葉および中胚葉などのbranch+細胞を同定および単離するのに有用である。
【0030】
本発明はまた、in vitroで哺乳動物細胞を作製する方法も提供する。1つの実施形態において、この方法には、中胚葉から心筋、平滑筋、内皮、または造血細胞への分化に効果的な条件下で、中内胚葉および中胚葉細胞の濃縮された細胞集団に由来する細胞を培養することが含まれる。in vitroで種々の細胞型への分化に効果的な条件は、当分野で既知である。別の実施形態において、この方法には、内胚葉から肝臓細胞または膵臓細胞への分化に効果的な条件下で、内胚葉細胞の濃縮された細胞集団に由来する細胞を培養することが含まれる。このような分化における効果的な条件は、当分野で既知である。インスリン産生膵臓島細胞の産生が特に考えられる。
【0031】
本発明により実証されたように、異なる年齢のEBから単離されたbrach+細胞は異なる発達能を有する。約3日目のマウスEBのBrach+/Flk-細胞は、効率的に、造血および内皮系統を生じるが、約3から10日目のEBの細胞は、心筋細胞系統の細胞を生じる。従って、中内胚葉および中胚葉の濃縮された細胞集団を得るのに使用したES細胞の培養時間を調整することにより、当業者は、造血および内皮系統または心筋細胞系統の効率的な産生を選択できる。
【0032】
このような細胞は、例えば、限られた数の細胞型の破壊または機能不全により生じる疾患の処置における、細胞置換療法に有用である。このような疾患には、糖尿病、肝不全、心不全、心臓血管疾患および他の血管の疾患、デュシェンヌ筋ジストロフィー、骨形成不全、および骨髄移植により治療可能な疾患、例えば白血病および貧血が含まれる。Odoricoら(2001)Stem Cells 19:193-204参照。
【0033】
本発明の細胞集団は、細胞置換療法のための分化細胞および組織を作製するのに有用である。細胞置換療法における本発明の細胞集団の適切性は、少数の細胞型の破壊または機能不全に関連した疾患の動物モデルに細胞を移植することにより評価し得る。例えば、本明細書に参照により取り込んだ、例えばGrompeら(1993)Genes & Dev.7:2298により開示されたフマリルアセト酢酸(FAH)欠損マウスは、肝不全のモデルを提供する。FAH欠損マウスは、NTBC(2-(2-ニトロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル)-1,3-シクロヘキセジオン)で処置するか、または正常な肝細胞を移植しなければ、進行的な肝不全および尿細管傷害に苦しむ。従って、これらのマウスは、EBから作製した未熟な肝細胞の特徴を有する細胞の能力について試験する上で理想的なモデルを提供する。NTBCから取り出したFAH欠損マウスに肝細胞を移植する方法は当分野で既知であり、例えばOversturfら(1996)Nature Genet.12:266-273に開示されている。正常な肝機能はマウスの生存により示され、また、血清アスパルテートトランスアミナーゼレベル、血漿ビリルビンレベルを測定することにより、および、再生肝臓の正常な構造を決定することにより評価し得る。
【0034】
特定の細胞型の破壊または機能不全から生じる他の疾患の動物モデルは当分野で既知である。このようなモデルは、本発明の他の細胞集団を評価するために同じように使用し得る。
【0035】
本発明はまた、選択マーカーをコードするDNAが短尾遺伝子座に存在し、よって、1つの短尾対立遺伝子が不活性化され、短尾遺伝子が転写される細胞において選択マーカーが発現されている、トランスジェニック非ヒト哺乳動物を提供する。好ましい実施形態において、哺乳動物はマウスであり、選択マーカーはGFPである。特に、トランスジェニックマウスは、GFPをコードするDNA配列が短尾調節エレメントに作動可能に連結している導入遺伝子を含むゲノムを有し、前記導入遺伝子は、短尾を正常に発現する細胞において発現されている。トランスジェニックマウスは、前記したGFP-Bry ES細胞を胚盤胞に注入することにより得られ得、これはその後、偽妊娠雌にインプラントする。トランスジェニック子は、branch+/-に関連した短い尾の表現型により、および分子解析により同定される。このようなトランスジェニック動物は、初期胚(これから本発明の方法により使用する中胚葉を単離する)を得るのに、そして、短尾遺伝子を発現する任意の成体細胞子集団の同定、単離および特徴づけに有用である。このような細胞は、新規幹細胞集団を示し得る。
【0036】
本明細書に引用した全ての参考文献のその全体を本明細書に取り込む。
【0037】
以下の実施例は本発明をさらに説明するためのものである。
【実施例1】
【0038】
材料および方法
ES細胞増殖および分化。ES細胞を、15%ウシ胎児血清(FCS)、ペニシリン、ストレプトマイシン、LIF(1%ならし培地)、および1.5×10-4Mモノチオグリセロール(MTG;シグマ)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、照射胚支持細胞上に維持した。分化開始の2日前に、細胞を同じ培地中のゼラチン化プレートに移した。EBの産生のために、ES細胞をトリプシン処理し、異なる培養物中に種々の密度で播種した。EBの分化は、15%FCS、2mM L-グルタミン(ギブコ/BRL)、トランスフェリン(200μg/ml)、0.5mMアスコルビン酸(シグマ)、および4.5×10-4M MTGを補充したIMDM中、60mmペトリ等級皿中で実施した。培養物は、加湿チャンバー中で、5%CO2/空気混合物中で37℃で維持した。
【0039】
血清を含まない培地。2つの異なる血清を含まない培地を、以下の実施例の異なる態様において使用した:ノックアウトSR(ギブコBRL)およびStemPro34(ギブコBRL)を補充したIIMD。
【0040】
メチルセルロースコロニーアッセイ。A)芽球コロニー:芽細胞コロニーを作製するために(BL-CFCアッセイ)、EB由来細胞を、10%FCS(ハイクローン)、血管内皮増殖因子(VEGF;5ng/ml)、c-kitリガンド(KL;1%ならし培地)、IL-6(5ng/ml)および25%D4T内皮細胞ならし培地(Kennedyら(1997)Nature 386:488-93)を補充した1%メチルセルロース中、0.5×1.5×105細胞/mlで播種した。移行コロニーをVEGFの非存在下で作製した。コロニーは4日間の培養後に評価した。B)造血コロニー:原始的および成体型造血コロニーの増殖のために、細胞を、10%血漿由来血清(PDS;Antech)、5%タンパク質非含有ハイブリドーマ培地(PFHM-II;ギブコ-BRL)と以下のサイトカインを含む1%メチルセルロース中に播種した:c-kitリガンド(KL;1%ならし培地)、エリスロポエチン(2U/ml)、IL-11(25ng/ml)、IL-3(1%ならし培地)、GM-CSF(3ng/ml)、G-CSF(30ng/ml)、M-CSF(5ng/ml)、IL-6(5ng/ml)およびトロンボポエチン(TPO;5ng/ml)。培養物を37℃、5%CO2中に維持した。原始赤血球コロニーを培養の5〜6日目に評価し、一方、成体型赤血球(BFU-E)、マクロファージ、および多系統コロニーは、培養の7〜10日目に計測した。c-kitリガンドは、KL発現ベクター(親切にもジェネティクス・インスチチュートから提供された)でトランスフェクトしたCHO細胞により調整された培地から得られた。IL-3は、IL-3を発現しているベクターでトランスフェクトしたX63AG8-653ミエローマ細胞により調整された培地から得られた。VEGF、GM-CSF、M-CSF、IL-6、IL-11、アクチビン、BMP2、BMP4、bFGF、FGF8、およびIhhは、R&Dシステムズから購入した。
【0041】
再凝集培養物。細胞を、24ウェルのペトリ等級プレート中、15%FCS(またはノックアウトSR)、2mM L-グルタミン(ギブコ/BRL)、0.5mMアスコルビン酸(シグマ)、および4.5×10-4M MTGを補充したIMDM1mlあたり、2×105で培養した。これらを使用して、細胞がウェルの底に付着するのを防いだ。
【0042】
心筋アッセイ。GFP+細胞を、15%血清代替添加物で補充したIMDM中で再凝集した。20時間後、凝集物を、10%血清代替添加物(血清非含有)を有するIMDM中、24または96ウェルプレートのウェル中で培養した。ウェルはゼラチンで予め処理しておいた。培養物を、拍動細胞の発達について毎日モニタリングした。拍動細胞は、通常、培養の2から6日目に検出された。
【0043】
細胞表面マーカー染色およびFACS解析。標準的な条件を使用して、細胞を染色した。染色した懸濁液はFACScan(Becton Dickinson、CA)で解析した。
【0044】
遺伝子発現解析。ポリA+RT-PCR解析のために、Bradyら((1990)Meth.in Mol.and Cell Bio.2:17-25)の方法を使用した。逆転写、ポリAテーリング、およびPCR手順を記載の通りに実施し、ただし、X-dtオリゴヌクレオチドは5'-GTTAACTCGAGAATTC(T)24-3'まで短くした。PCR反応からの増幅産物はアガロースゲル上で分離し、Zeta-プローブGTメンブラン(Biorad)に転写するか、または、スロットブロット装置(Schleicher&Schuell)を用いてメンブランに転写した。得られたブロットは、遺伝子の3'領域に対応する32PランダムプライムcDNA断片(Ready-to-Goラベリング、ファルマシア)を用いてハイブリダイズした(β-H1を除いて全て)。β-H1-特異的プローブは、その3'末端において8塩基の相同性を共有する2つのオリゴヌクレオチド、(5'-TGGAGTCAAAGAGGGCATCATAGACACATGGG-3'、5'-CAGTACACTGGCAATCCCATGTG-3'をアニーリングすることにより調製した。このβ-H1特異的オリゴヌクレオチドは、クレノウ平滑化反応を使用して、32Pで標識した。遺伝子特異的PCRのために、全RNAを、RNイージーミニキットを用いて各試料から抽出し、RNase非含有DNase(キアゲン)で処理した。2μgの全RNAを、OmniscriptRTキット(キアゲン)を使用してランダムヘキサマーを用いてcDNAに逆転写した。PCRを、適切なオリゴヌクレオチドを使用して実施した。PCR反応を、2.5UのTaqポリメラーゼ(プロメガ)、PCR緩衝液、2.5mM MgCl2、0.2μMの各プライマーおよび0.2mM dNTPを用いて実施した。サイクリング条件は以下の通りであった;94℃で5分間、その後、35サイクルの増幅(94℃で1分間変性、60℃で1分間アニーリング、72℃で1分間伸張)、最後に72℃で7分間インキュベート。
【実施例2】
【0045】
標的化ES細胞の作製
適切な培養条件下で、胚幹(ES)細胞は分化し、広域な系統からの発達中の細胞集団を含む、胚様体(EB)として知られる3次元のコロニーを形成する。Smith(2001)Annu.Rev.Cell Dev.Biol.17:435-62。これらのEB由来集団の中で、造血、内皮、心筋および骨格筋系統のものを含む、中胚葉誘導体を検出できる。
【0046】
EBにおける中胚葉の開始を追跡し、この集団を示す細胞を単離するために、緑色蛍光タンパク質(GFP)を短尾遺伝子座に標的化した。標的化構築体は、最初のエキソンに、GFPcDNA、および人工イントロン、SV40ポリ(A)配列およびloxPフランキングneoカセットを含み、図1に示す。チミジンキナーゼ(TK)遺伝子は、無作為な組込みに対して選択するために、標的化構築体の3'末端に含められた。標的化ベクターは以下の通りに作製した。
【0047】
全マウス短尾(Bry)遺伝子を有するBACクローンを、プライマー5'-AAGGAGCTAACTAACGAGATGAT-3'および5'-TACCTTCAGCACCGGGAACAT-3'を用いて129/Ola株ゲノムライブラリー(Genome Systems)をPCRスクリーニングすることにより単離した。これらのプライマーは、それぞれ、第一および第二Bryエキソン内にアニーリングし、約600bpの診断バンドを増幅する。2kbを超える5'フランキング領域と共にBry遺伝子の1エキソンを有する約3kb長のPstI制限断片を同定し、BACからプラスミドpBSK(Stratagene)にサブクローニングすると、pBSK.Bry-5'構築体が得られた。開始コドンのすぐ上流の約2kbの領域をシークエンスして、ベクター作製のための適切なプライマーアニーリング部位を同定した。
【0048】
オリゴ5'-GCTAGCTAATGGATCCA-3'/5'-GATCTGGATCCATTAGCTAGCTGCA-3'および5'-GATCTTAATGAACGGCAGGTGGGTGCGCGTCCGGAG-3'/5'TCGACTCCGGACGCGCACCCACCTGCCGTTCATTAA-3'を、プラスミドpBSKのPstI/SalI部位に挿入し、2つの連続的な翻訳終止コドンおよび人工的な3'スプライス部位を有する新しくてより適切なポリリンカーを創造した(構築体pBry-AA)。プラスミドpEGFP.C1(クロンテック)をNheI/BglIIで二重消化し、終止コドンを含まないEGFPをコードする得られた約760bpのDNA断片を、pBRY-AAのNheI/BglII部位にクローニングすると、構築体pBry-ABが得られた。loxPが側にあるネオマイシン耐性遺伝子を有するプラスミドpL2-Neo2のXhoI/SalI断片を、pBry-ABのSalI部位に挿入すると、プラスミドpBry-AC(EGFPおよびNeoの同じ方向への転写)が得られた。
【0049】
共通スプライスドナー部位、人工イントロン、スプライスアクセプター部位、およびSV40ポリアデニル化配列を含む短いエキソンを有する556bpのXmal/MluI断片を、市販の発現ベクターpBK-CMV(Stratagene)から切り出した。この断片を以下のようにプラスミドpBry-ACに挿入した:XmaI末端を最後のEGFPコドンに続くBspEI部位に連結し、一方、Mlu末端は、リンカーとしてのオリゴ5'-CGCGTTACTAGTAAGACGTCT-3'/5'-CCGGAGACGTCTTACTAGTAA-3'と共に、loxP-neo-loxPカセットの直ぐ上流に位置するBspEI部位に挿入した。得られた構築体:pBry-AE。HSVチミジンキナーゼ遺伝子をコードする約1.9kbのXhoI/SalI断片を、pBry-AEのXhoI部位に挿入し、無作為な組込みに対する選択を可能とした(構築体pBry-AH)。相同性の「短い腕」をコードするNotI/Eco47III断片をpBry-AFから切り出し、pBry-AHのNotI/Eco47III部位にクローニングすると、プラスミドpBry-Alが得られた。相同性の「長い腕」は、SalIを用いてpBry-AKから切り出し、正しい方向で、pBry-AIのSalI部位に挿入すると、最終標的化ベクターBが得られた。
【0050】
胚性幹細胞(E14.1、129/Ola Hooperら(1987)Nature 326:292)を、NotI線形化標的化ベクターpBry-AMを用いて電気穿孔した。トランスフェクトした細胞を有する4つの皿をG418一重選択にかけ、別の4つの皿はG418+ガンシクロビル(Ganc)二重選択にかけた。相同的組換え事象を受けたクローンを、「相同性の短い腕」の直ぐ上流のBry遺伝子の5'領域におけるゲノム配列にアニーリングする1つのプライマー(5'-CAGGTAGAACCCACAACTCCGAC-3')、EGFP(流断バンド;約1.3kb)の5'部分にアニーリングする他方のプライマー(5'-CCGGACACGCTGAACTTGTGGC-3')を用いたPCRにより同定した。正しく標的化したクローンは、サザンブロット解析により確認した:候補クローンのゲノムDNAはHincIIで消化し、標的構築体の外に位置するプローブにハイブリダイズさせた。プローブは、オリゴヌクレオチド対5'-ACAGGATCCCTAAGCCTCAAAAGAGTCGCT-3'/5'-TCTTGGATCCTCCTATCCTATCCCGAAGCTCCT-3'を使用して、PCRによりBry5'フランキング領域(BryATG開始コドンに対して-2018から-1249)から得られた。384G418一重および80G418+Ganc二重選択クローンをスクリーニングし、その4つの中でそれぞれ3つが陽性であることが判明し、これは、標的化効率1.04%および3.75%に対応する。2つの陽性クローンを、改変Creリコンビナーゼ発現ベクターで一過的にトランスフェクトし、neo遺伝子を除去した。これらの標的化クローンは、本明細書では以後、GFP-BryES細胞と称する。
【0051】
短尾は、発達中のEBにおいて一過的に発現され、その開始は、造血および内皮系統の確立を規定する遺伝子の発現より前である。GFP-BryES細胞におけるGFP発現が、EB発達中の短尾遺伝子の発現を反映するかどうかを決定するために、GFP発現を評価した。
【0052】
6日間のEB分化期間中の典型的な発現パターンを図2Aに示す。この実験では、低いレベルのメッセージが、分化24時間以内に検出された。発現は次の48時間かけてアップレギュレートされ、4日目まで持続し、その後、6日目の分化までに検出不可能なレベルまで鋭く下降した。FACS解析により定義したようなGFP発現は類似の時間的なパターンを追随した。低いレベルのGFP+細胞(約5%)が早くも分化2日目に検出された。半数を超える(65%)EB由来細胞が3日目にGFPを発現し、殆ど全ての細胞が分化4日目に陽性であった。PCRにより観察したように、発現は、この時点以後鋭く下降し、6日目までにあるとしても僅かなGFP+が存在していた。この急速なGFP発現の下降により、より長い期間では細胞内に持続されないことが示された。分化3日目および4日目の高い比率のGFP+細胞により、これらの条件下でのEB内での中胚葉の発達は広範であることが示唆される。一緒に考えると、これらの知見により、GFP発現は正確に、EB発達中の短尾遺伝子の発現を反映することが示される。
【0053】
単一短尾対立遺伝子の不活性化が、ES細胞のin vitroでの発達能に対して有害な作用を及ぼす可能性を評価した。示したように、ヘテロ接合型マウスは穏和な表現型を示す。GFP-BryES細胞が造血環境において検出可能な欠陥を示すかどうかを決定するために、それらから産生したEBを、造血前駆体および芽球コロニー形成細胞(BL-CFC)含有量および遺伝子発現パターンについて解析した。図3Aおよび3Bのデータにより、GFP-BryES細胞は、野生型細胞に比べて、同等な数の原始的(EryP)および成体型(Eryd、Mac、Mac/Ery、およびMix)造血前駆体およびBL-CFCを産生することが示される。遺伝子発現パターン(図3C)により、前駆体解析が確認され、GFP-Bryから産生されたEBと野生型ES細胞から産生されたEBの間の差異がほとんどないことが示される。両方のセットのEBが、最初の3日間の分化においてRex-1発現の下降を示した。Rex-1は、ES細胞に発現され、分化を受けるとダウンレギュレートされる、転写因子である。Rogersら(1991)Development 113:815-24。Rex-1の下降の後に、典型的な一過性の短尾発現の波が生じ、その直後には造血および内皮系統の発達に関与する遺伝子の開始が起こる。これらの系統の確立に必須である受容体チロシンキナーゼであるFlk-1(Shalabyら(1995)Nature 376:62-6)は、分化3日目から6日目の間に発現される。造血転写因子であるGATA-1、および胚および成体グロビン遺伝子のβH1およびβmajorは、分化4日目に低いレベルで検出された。3つ全ての遺伝子の発現が、次の24時間かけてアップレギュレートされ、この発達段階における原始赤血球系統の増殖および成熟が反映される。Palisら(1999)Development 126:5073-84。本実施例で観察された前駆体数および遺伝子発現パターンは、前の研究に見られるものと一致し、造血系の確立に至る分子プログラムは、標的化GFP-BryES細胞では無傷であることを示す。
【実施例3】
【0054】
短尾+細胞の単離
短尾+細胞をGFP発現に基づいて単離できるかどうかを決定するために、3.5日目のEBのGFP+個体を選別し、適切な遺伝子の発現について解析した。図4Aは、GFP陽性(2)および陰性(1)集団の単離に使用したゲートを示す。RT-PCR解析により、短尾発現はGFP+画分に限られることが判明し、GFP発現に基づいた細胞選別を短尾+細胞の単離に使用できることが示された。造血および内皮発達の最も古いマーカーの1つであるFlk-1は、GFP-画分よりもGFP+画分により高いレベルで存在し、少なくとも短尾+細胞の亜集団において発現されていることが示される。短尾およびFlk-1とは対照的に、初期神経発達に関与している遺伝子であるPax-6は[79、80]、GFP-画分においてより高いレベルで発現されており、この系統の前駆体は短尾陰性であることに一致している。これらの細胞選別研究により、短尾遺伝子座の制御下でのGFPの発現により、EBからの短尾+細胞の単離、特徴づけ、および操作の新規マーカーが提供されることが示される。
【0055】
本実施例は、GFP+細胞を、細胞選別により、3.5日目のEBから単離できることを実証する。GFP+およびGFP-画分の遺伝子発現解析により、短尾発現は主に陽性画分に分離されることが示され、この知見は、GFPに基づいた分画は、短尾陽性細胞の単離法を提供することを明確に実証する。短尾に加えて、初期造血および内皮発達に関与する受容体チロシンFlk-1もまた、陰性画分よりも陽性画分において、より高いレベルで発現されている。これに対し、初期外胚葉および神経外胚葉のマーカーであるRex-1およびPax-6は、GFP-画分において発現されている。これらの知見により、短尾に関連したGFPの発現を使用して、外胚葉から中胚葉を分離できることが実証される。
【実施例4】
【0056】
Flk-1発現に基づいた短尾陽性細胞の亜集団への分離
Flk-1は、初期胚において造血および内皮系統の確立に必須であることが示され、BL-CFCを含むこれらの系統の最も初期の前駆体で発現されている[Faloonら(2000)Development 127:1931-41]。血液および血管発達における中心的な役割から、GFP+集団内でのその発現は、これらの系統への特異化を受けている中胚葉の亜集団を規定すると仮定された。この可能性をさらに調査するために、EBを、いくつかの発達段階において、GFPおよびFlk-1陽性細胞の存在について解析した。図5Aに示した実験において、3.0日目のEB集団の4.8%がGFPを発現したが、Flk-1は発現せず、一方、細胞の1.2%が両方のマーカーを発現した。両方の画分のサイズは次の12時間かけて劇的に増加し、GFP+/Flk-1-およびGFP+/Flk-1+細胞は、それぞれ、全EB集団の52%および26%を示す。GFPおよびFlk-1発現により規定される3つの集団の発達能を評価するために、GFP-/Flk-1-(画分2)、GFP+/Flk-1-(画分3)、およびGFP+/Flk-1+(画分4)細胞を、両時点で単離し、BL-CFCおよび2゜EB含量および遺伝子発現パターンについて解析した。画分の能力を、予め選別した集団(画分1)の能力と比較した。BL-CFCの大半が、3.0および3.5日目の分化の両日にGFP+/Flk-1+画分に見出された(図5B)。以前の研究により、全てのBL-CFCがFlk-1を発現することが示されていたのでこれは驚くべきことではない。2゜EBは、GFP-/Flk-1-画分に限定され、この知見は、それらが、初期EBにおける残留の非分化ES細胞から得られるという事実と一致する。GFP+/Flk-1-画分は、これらの培養で使用した条件下では殆どコロニーを生じなかった。遺伝子発現解析により、2つの時点で単離した集団の間で興味深い差異が判明した(図5C)。ES細胞マーカーであるRex-1は、GFP-画分よりもGFP+画分においてより低いレベルで発現され、このことは、これらの集団は分化を受けていることを示す。短尾は、両時点でGFP+画分において発現されていた。レベルは、3.5日目のEBから単離したGFP+/Flk-1+画分よりもGFP+/Flk-1-の方が高いようであり、このことは、この発現は、これらの細胞が造血および内皮系統へと成熟するにつれてダウンレギュレートされ得ることを示唆する。期待したように、Flk-1は、両時点でGFP+/Flk-1+細胞において主に発現されていた。原始的および成体型の両方の造血発達に必須であるヘリックス・ループ・ヘリックス転写因子であるSclは(Shivdasaniら(1995)Nature 373:432-4)、GFP+/Flk-1+画分に限定されているようである。同様に、成体型造血系の確立に必要とされる転写因子のRunx1は(Wangら(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.93:3444-9)、GFP+/Flk-1+画分に最も容易に検出された。3.0日目のEBから単離したGFP+/Flk-1-画分には幾分Runx1が発現されていた。分化3日目には3つの全ての画分において結節が発現されている。3.5日目には、GFP+/Flk-1+画分における発現レベルは、他の画分よりも有意に低いようである。Wnt3aおよびWnt8aは顕著に制限された発現パターンを示し、両時点においてGFP+/Flk-1-画分にのみ見出され、これは、系統制限マーカーの発現前の初期中胚葉機能に一致している。BMP2は両方のGFP+画分に発現され、一方、BMP4は、主に、GFP+Flk-1+細胞に見出され、これは、これらの分子は、この系における別個の発達段階において役割を果たしていることを示す。BL-CFC能およびGFP+/Flk-1+細胞の遺伝子発現パターンにより、それらはマウス胚に見られる胚外中胚葉を代表することが示される。
【0057】
本実施例は、3日目および3.5日目のEBの短尾画分は、Flk-1発現に基づいて2つの画分に分離できることを実証する:短尾+/Flk-1-(GFP+/Flk-1-)および短尾+/Flk-1+(GFP+/Flk-1+)(図5A)。機能的研究により、造血および内皮の両方の細胞を産生できる前駆体(BL-CFC)は(GFP+/Flk-1+)画分に分離することが実証され、このことは、Flk-1のアップレギュレーションは、これらの系統に関与していることを示唆する(図5B)。遺伝子発現研究により、GFP+/Flk-1-およびGFP+/Flk-1+集団の間の差異が実証された(図5C)。
【実施例5】
【0058】
GFP/FLK画分間の発達関係
図5に観察された発現パターンは、3つの画分が、GFP-/Flk-1-細胞が、GFP+/Flk-1-細胞を生じ、これは次いでGFP+/Flk-1+細胞を生じるという発達の連続的系列であるという解釈と一致する。これらの画分が共通の発達経路内の特定の段階を示すかどうかを決定するために、各々を3日目のEBから単離し、20時間培養し、その後、GFPおよびFlk-1発現について再度解析した。BL-CFCおよびEryp-CFC能は、培養前および培養後に、各集団について決定した。単離した細胞を、EB分化に使用したのと同じ培地中、ペトリ等級24ウェルプレート中、1×105細胞またはそれ以上の密度で培養した。これらの条件下で、細胞は急速に再凝集し、EB様構造を形成し、細胞数の増殖または減少は殆ど示さずに正常な発達プログラムを追随しているようである。20時間の再凝集培養後に、GFP-/Flk-1-細胞は、有意なGFP+/Flk-1-細胞集団ならびに少数のGFP+/Flk-1+を生じた。GFP+/Flk-1-細胞は、同じ培養期間中にかなりのGFP+/Flk-1+細胞の集団を生じた。GFP+/Flk-1+集団は、再凝集培養後に幾分のGFPおよびFlk-1発現を失うようであった。結果を図6に示す。前駆体能の変化は、表面マーカーの変化と一致していた。3つの中で最も未熟であるGFP-/Flk-1-画分は、培養前または培養後に、検出不可能な数のBL-CFCおよびEryp-CFCを含んでいた。GFP+/Flk-1-画分はまた、培養前にBL-CFCおよびEryp-CFCを殆ど含んでいなかった。しかし、培養後、BL-CFC能は、劇的に、105細胞あたり74から1564まで増加し、これはFlk-1発現の増加と一致する。Eryp-CFCの頻度は、培養期間中には変化しなかった。GFP+/Flk-1+画分は、培養前に、BL-CFCを含んでいたが、Eryp-CFCは殆ど含んでいなかった。BL-CFCは培養後に検出されなかったが、しかし、集団は今ではEryp-CFCを含んでいた。表面マーカー解析と一緒に考えると、これらの前駆体データは、プレ中胚葉(GFP-/Flk-1-)から中胚葉/プレ血管芽細胞(BL-CFC)集団(GFP+/Flk-1-)への、血管芽細胞/プレ赤血球集団(GFP+/Flk-1+)への、後血管芽細胞/赤血球集団(おそらくGFP10/Flk-110)への発達進行を支持する。特定の集団における全ての細胞が20時間の培養期間後に分化するわけではなく、出発表現型を有する細胞が、GFP-/Flk-1-およびGFP+/Flk-1-培養物中には残留していた。
【0059】
この実施例は、単離し、20〜24時間再培養した場合、3日目のEBから単離した3つの各集団は、これらの集団が発達の連続的系列を示すパターンで分化し続けることを示す。例えば、GFP-/Flk-1-は、GFP+/Flk-1-細胞を生じ、これはついでGFP+/Flk-1+を生じる。これらの細胞表面特徴の変化は、期待される発達能の変化に関連していた。GFP+/Flk-1-画分には、培養前の僅かな造血/内皮前駆体(BL-CFC)が含まれていた。培養後、これらの前駆体は検出され、3日目のEBからのGFP+/Flk-1-画分は、造血能および内皮能を有するFlk-1+細胞を生じる能力を含むということを明らかに実証する。
【実施例6】
【0060】
GFP/Flk-1-細胞の能力
前の実施例により、3.0日目のEBから単離されたGFP+/Flk-1-細胞は、一晩培養した後に、GFP+/Flk-1+細胞およびBL-CFCを効率的に産生したことが実証された。このプレ-BL-CFC能は、この発達段階においてGFP+/Flk-1-画分に特異的であるかどうかを決定するために、異なる年齢のEBからのGFP+/Flk-1-細胞を、BL-CFCを生じる能力についてアッセイした。図7Aに示したように、BL-CFCを産生する能力は、3日目のGFP+/Flk-1-細胞において最も強かった。この発達能は3.5日目の分化までに劇的に減少し、4.0日目にはほぼ存在しなかった。これらの同じEB由来の新しく単離したGFP+/Flk-1+画分のBL-CFC含量はこの期間かけて増加し、このことは、分化が正常に進行していたことを示す。異なる段階のEB細胞の再凝集培養物中のFlk-1発現パターンは、BL-CFCデータと一致していた。再凝集した3.0日目のGFP+/Flk-1-細胞の培養物には、全集団の40%超過を示した別個のFlk-1画分が含まれていた(図7B)。3.5および4.0日目の培養物中のFlk-1発現は有意に低く、別個のピークよりも全集団の肩から構成されていた。
【実施例7】
【0061】
GFPおよびFlk-1亜集団の心筋能
造血および内皮中胚葉の発達の後に心臓および頭蓋中胚葉が発達するマウス胚における事象の順序を考えて、単離集団の心筋能を決定した。この解析のために、異なる集団の培養物からの凝集物を、マイクロタイターまたは24ウェルプレート中の血清非含有培地中に移し、心筋細胞を示す、拍動細胞塊の発達についてモニタリングした。これらの条件は、再凝集細胞からの心筋細胞の効率的な発達を支持することが知られている。これらの塊内の細胞の心筋細胞性質の独立的な確認として、代表群を顕微鏡スライドに写し、固定し、トロポニンTの心臓特異的イソ型の存在について染色した。解析した全ての拍動細胞塊が、トロポニンT陽性細胞を含むことが判明し、これは、それらが心筋細胞であることを示す。このアッセイを使用して、異なる段階のEBからの再凝集したGFP+/Flk-1-およびGFP+/Flk-1+画分の心筋細胞能を決定した。比較のために、新しく単離したGFP+/Flk-1+細胞および培養したGFP+/Flk-1-細胞のBL-CFC能を解析した。
【0062】
【表1】
【0063】
表1に示したように、異なる画分のBL-CFC能は、前の実験で観察されたものと類似していた。3つの異なるEB集団から単離したGFP+/Flk-1+細胞により、最も高い数が3.5および4.0日目に見られるBL-CFCが得られた。GFP+/Flk-1-細胞におけるプレ-BL-CFC能は、2.75日目に最大であり、3.5および4.0日目に有意に減少した。画分の心筋細胞能は逆パターンを示した。3.5および4.0日目のGFP+/Flk-1-細胞の移した凝集物のかなりの比率(>80%)が拍動心筋細胞を生じた。拍動細胞は、最初期(2.75日目)のGFP+/Flk-1-細胞から産生した凝集物には観察されなかった。拍動細胞は、3つのいずれの発達段階においてもEBから単離したGFP+/Flk-1+細胞から産生した凝集物には検出されなかった。この解析からの知見は、異なる段階で単離したGFP+/Flk-1-細胞は異なる能力を有するという概念と一致する。早期に発達したものは、血管芽細胞の運命を有するようであり、一方、後期に発達したものは心臓系統およびおそらく他の集団を生じるようである。GFP+/Flk-1+集団は、心筋能を失っているようであり、血管芽細胞系統に限定され得る。これらの知見から、早期に発達している(2.75〜3.0日目)GFP+/Flk-1-細胞は、プレ血管芽細胞中胚葉と称され、3.5から4.0日の間に発達した集団はプレ心臓中胚葉と称される。3.0〜3.5日目のGFP+/Flk-1+集団はBL-CFCを生じるが、後期EB(4.0日目)から単離したものは、原始的赤血球前駆体を含み、これは造血関与の開始を示す。この発達能から、GFP+/Flk-1+集団は血管芽細胞中胚葉と称される。
【0064】
実施例5および6は、異なる年齢のEBから単離したGFP+細胞が、異なる発達能を有することを実証する。前の実施例に示したように、3日目のEBに由来するGFP+/Flk-1-細胞は、造血および内皮系統の両方を効率的に産生する。これらの細胞は、拍動細胞塊の欠失により実証されるように、心臓細胞(心臓組織)を生じなかった。これに対し4日目のEBに由来するGFP+細胞は、培養後にFlk-1+細胞およびBL-CFCを殆ど生じなかった。しかし、この集団は、心筋系統の細胞は産生した。これらの知見により、異なる年齢のEBから単離されたGFP+(短尾+)画分は、異なる発達運命を有する別個の集団にパターン化されるようになることが実証される。前の実施例で使用した条件および観察された能力に加えて、他の能力も、条件および添加剤を変化させることにより観察され得る。
【実施例8】
【0065】
血清に由来する因子の役割
短尾+細胞の発達における血清の役割を評価するために、EBを血清の非存在下で分化した。EBはこれらの条件下で発達したが、正常条件で見られたものより幾分小さかった。血清の非存在下において、これらのEB内にはGFP+細胞は検出されず、このことから、中胚葉はこれらの条件下で誘導されないことが示される(図8)。有意な数のGFP+/Flk-1-およびGFP+/Flk-1+細胞が、血清を培養物に添加した場合に発達した。これらの知見により、血清内に見られる成分は、短尾+細胞の発達および分化を誘導できることが明らかに実証される。この過程に役割を果たし得る因子の同定における最初のステップとして、BMP4(20ng/ml)を、血清非含有培養物中の発達中のEBに加えた。この濃度では、BMP4は、分化3日間以内に有意な短尾+細胞の集団を誘導した。しかし、血清とは対照的に、BMP4は、この期間中に、GFP+/Flk-1+集団の発達は支持しなかった。BMP4が、血清の存在下で誘導されるGFP+/Flk-1-細胞からGFP+/Flk-1+細胞を誘導できるかどうかを決定するために、GFP+/Flk-1-細胞を、血清の存在下で3日間分化したEBから単離した。これらの細胞を、培地のみの中、血清を含む培地中、またはBMP4を含む培地中で再凝集した。図8の下の列に示したように、GFP+/Flk-1-細胞は、血清の非存在下で再凝集させた場合には実質的に分化しなかった。期待したように、同じ集団が、血清を培養物に添加した場合には、大きなGFP+/Flk-1+集団を生じた。一次分化培養物中での知見に一致して、BMP4は、培養したGFP+/Flk-1-細胞から有意な数のGFP+/Flk-1+細胞の発達を誘導できなかった。
【0066】
図9は、前の実施例に基づいた中胚葉発達の段階を要約する。ステップ1は、中胚葉誘導およびプレ造血および内皮(プレ血管芽細胞)へのパターン化を示す。ステップ2は、造血および内皮系統への特異化を示す。ステップ3および4は、プレ心臓運命へのパターン化を示す。
【実施例9】
【0067】
細胞集団の内胚葉能の単離および特徴づけ
アフリカツメガエルおよびゼブラフィシュなどのモデル系を使用しての研究により、中胚葉および内胚葉は、中内胚葉として知られる共通の前駆集団から発達することが示唆された。中内胚葉発達段階がEBに存在するかどうかを決定するために、内胚葉系統の発達条件を確立した。この系統の発達のための培養条件を確立する最初のステップとして、分化培養物中の血清の量を変化させた。EBを、血清の存在下および非存在下で産生し(SP34およびその後IMDMプラスSR)、外胚葉、内胚葉および中胚葉発達に関連した遺伝子の発現について異なる段階でアッセイした。外胚葉系統では、神経系統の発達を、PAX6、Wntl、neruoD、および神経フィラメント(NFL)の発現を解析して評価した。これらの遺伝子は、異なる神経発達段階で発現されることが知られている。内胚葉発達の初期段階を、HNF3βの発現によりモニタリングした。内胚葉発達および特異化の後期段階を評価するために、肝臓発達に関与する遺伝子を解析した。これらには、Hex、α-フェトプロテイン(AFP)、HNF4、アルブミン(Alb)、α-1-アンチトリプシン(AAT)およびチロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)が含まれた。中胚葉発達は、短尾およびGATA-1の発現によりモニタリングした。遺伝子発現パターンに加えて、神経発達を、EBからの神経突起の成長をモニタリングすることによりアッセイした。これらの神経突起の神経性質は、βIII-チューブリン発現により実証された。中胚葉発達はまた、EB中の造血前駆体の列挙により評価した。図10は、10日間の分化期間におよぶEBの発達能に対する血清の影響を示す。血清の存在下では(血清)、この系統の発達に関連した遺伝子の発現の欠如から実証されるように、神経-外胚葉の分化は殆どない。HNF3βは、分化の初期段階(2〜3日目)で発現され、その後、ダウンレギュレートされる。期待したように、GATA-1は、これらの条件下で産生されたEBで発現される。これらの遺伝子の発現パターンは、血清の非存在下で(血清-)増殖したEB中で基本的に逆転していた。これらのEBは、神経外胚葉に関連した全ての遺伝子を発現したが、中胚葉/造血マーカーGATA-1は発現しなかった。HNF3βは、これらの条件下で増殖した後期EB(10日目)で発現された。GFP発現によりモニタリングされる短尾発現パターンは、これらの知見と一致していた。血清の存在下で産生されるEBは、分化2日目から5日目に存在するかなりの短尾+集団を産生した(図11、-B-系)。短尾は、血清の非存在下で増殖させたEBには検出されなかった(図11、-H-系)。造血前駆体アッセイにより、これらの知見が確認された。血清中で産生したEBは前駆体を含んでいたが(図12、斑点の棒)、血清の非存在下で増殖させたものは含んでいなかった(図12、実線の棒、眼に見えない)。最後に、EBの神経突起能の評価は、これらの種々の解析と一致していた。血清中で増殖したEBはどれも神経突起を生じなかった。これに対し、血清の非存在下で産生されたものの85%がこの活性を示した(図13)。一緒に考えると、これらの知見により、特異的系統の産生における培養条件(血清)の重要性が実証される。それらはまた、血清完全条件も血清非含有条件も外胚葉発達に最適ではないことを実証する。
【0068】
血清中で産生された初期段階EBにおけるHNF3の強力なアップレギュレーションにより、血清は確立には重要であるけれども、内胚葉系統の成熟には重要ではないことが示唆された。この可能性を試験するために、EBを血清の存在下で2日間開始し、その後、血清を含まない条件(SR)に切り替えた。図14に示したように、これらの条件(血清+/-)下で産生されたEBは、分化の3日目から5日目の間にHNF3βを発現した。AFPは分化5日目にアップレギュレートされた。GATA-1発現レベルは、血清で刺激したEBで見出されるものと比較して減少した。次に、血清+/-条件下で産生された6日目のEBを、増殖因子bFGFの存在下で組織培養等級皿に播種した(それらを付着させる)。皿をゼラチンまたはマトリゲルで覆膜し、基質がさらなる内胚葉分化に影響を及ぼすかどうかを決定した。5日後、培地を交換し、追加の因子をこれらの培養物に加えて、肝臓系統の発達を促進した。実験概略およびデータを図15に示す。この実験において、AFPは6日目のEB段階において発現されていなかった。その発現レベルは、ゼラチンまたはマトリゲル上でbFGFの存在下で培養した場合にアップレギュレートされた。低レベルのALBもこの段階で検出された。試験した全ての条件でさらなる培養期間の後にALB発現が増加した。AATおよびTATもまた最後の培養ステップの後に発現された。最も高いレベルのTATが、EB由来細胞をbFGFおよびDexの存在下で培養した場合に見出された。これらの知見により、内胚葉系統の細胞を産生することが可能であり、適切な条件下では、発達中の肝臓に関連した遺伝子を発現する細胞を生じることが明らかに示される。
【0069】
これらの内胚葉細胞が短尾+または短尾-細胞から発達したかをさらに決定した。この疑問を解決するために、GFP(Bry)+およびGFP(Bry)-細胞を、細胞選別により2.5日目のEBから単離した。これらの集団を再凝集させ、6日目までクラスターとして培養した。6日目に、組織培養等級皿中、bFGFを含む培地中に4日間(計10日間)移動した。遺伝子発現解析により、HNF3βを発現する細胞はGFP+画分(2.5日目)に分離することが示された(図16)。培養が経過するにつれて、この遺伝子は、GFP-画分から産生された細胞において発現された。これは、より後期の発現段階においてHNF3βは、非内胚葉集団において発現されるという事実を反映する。AFP、HEX、ALB、およびHNF4は全て、GFP+画分の誘導体において発現されたが、GFP-細胞から産生された細胞集団においては発現されなかった。これに対し、神経外胚葉のマーカーであるPAX6およびneuroDは、主に、GFP-画分から産生された細胞において見出された。これらの知見により、内胚葉系統は短尾+集団(これは中内胚葉も生じる)から確立され、これらの系統は、共通の前駆体である中内胚葉から得られることが示される。
【0070】
短尾発現細胞の肝臓能をさらに評価するために、bry+およびbry-画分の両方から得られた細胞集団を、α-フェトプロテイン(AFP)、アルブミン(ALB)、およびトランスサイレチン(TTR)などの初期肝臓細胞発達を示す遺伝子、および、系統の成熟を示す遺伝子(α1-アンチトリプシン(AAT)、チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)、およびカルバモイルリン酸シンターゼI(CPase)を含む)の発現について解析した。β-アクチン発現を対照として使用した。細胞を、bry+およびbry-集団へと選別する前および選別後に解析した。胎児肝臓および成体肝臓対照も解析した。全てのこれらの遺伝子の発現は、bry+集団から得られた細胞に限られ、このことは、肝細胞特徴を有する細胞が、短尾発現細胞から発達することを示す。
【実施例10】
【0071】
EBにおける中胚葉および内胚葉発達の動態
実施例6に記載した予備的な動態解析により、別個の発達運命を有する中胚葉の亜集団が、一定の時間的様式で産生されることが実証された。より詳細な動態解析により、分化の2.5日目から4.0日目の間のGFP+Flk1-(本明細書では以後GFP+集団と称される)の動的発達が示された(図18)。単離し再凝集した場合、2.5および3.0日目のGFP+画分は、最初期段階の造血および内皮関与を示す芽細胞コロニー(図19において血管芽細胞能として示す)を産生した。このGFP+細胞の集団は、殆ど心筋細胞(心臓)能を示さなかった。初期GFP+細胞とは対照的に、3.5日目のEBから単離したものは、有意に減少したBL-CFC能を示したが、心筋細胞への分化において効率的であった。4日目のEBから単離されたGFP+細胞は心筋細胞は産生せず、BL-CFCを産生する能力も殆どなく、このことは、それらはいくつかの他の中胚葉系統に運命づけられ得ることを示唆する。遺伝子発現解析により、これらの機能的アッセイが支持され、4つのGFP+画分間の分子差異が実証された(図20)。いくつかの遺伝子が全ての集団で発現されたが、他のものは興味深い異なるパターンを示した。造血発達に重要であり心臓分化に阻害的であると考えられている遺伝子であるWnt3aは、2.5および3.0日目の集団において発現され、3.5および4.0日目の細胞においてダウンレギュレートされていた。このパターンは、これらの集団の造血/血管から心筋への発達能における変化に一致している。興味深い第二のパターンは、遺伝子Mix1-1のパターンである。中胚葉および内胚葉の発達に役割を果たすこの遺伝子は、2.5および3.0日目のGFP集団には発現されているが、3.5および4.0日目の画分は発現されなかった。一緒に考えると、本実施例の知見により、異なる発達能を有する中胚葉集団は、EB内では一定の時間的パターンで産生されることが明らかに実証される。さらに、中胚葉/内胚葉遺伝子Mixl-1の発現解析により、内胚葉能を有する細胞もまた、特定の時期に、すなわち分化の2.5日目から3.0日目の間に産生されることが示される。
【0072】
内胚葉発達の動態をさらに調査するために、3.0および4.0日目のEBに由来するGFP+細胞を単離し、肝細胞様細胞への分化を促進する条件下で培養した。図21に示したように、3.0日目から単離したGFP+細胞(+/-)はHNF3βの発現により規定される内胚葉能を示したが、4.0日目から単離した細胞は示さなかった。これらの知見により、内胚葉は、分化4日目以前の特定の時期にGFP+集団内で産生されることが示される。
【実施例11】
【0073】
インビボでのGFP+集団の発達能
GFP+集団の内胚葉能をさらに評価するために、GFP+およびGFP-の2.5日目のEB細胞を、肝細胞分化を促進することが知られる条件下で14日間培養し、その後、レシピエントSCIDベージュマウスの腎臓被膜下に移植した。数匹のマウスを移植直後に屠殺し、移植片を有する腎臓を切片化し、切片を、Hep1およびAFPに対する抗体で染色した。Hep1は肝細胞の特異的マーカーであり、一方、AFPは、成体型内胚葉および肝臓系統の未熟細胞に発現される。切片内の細胞のいくつかは、Hep1に陽性で染色されたが、Hep1+細胞の近傍にある他の細胞は、AFPを発現することが判明した。Hep1+またはAFP+細胞は、GFP-陰性細胞の移植片には全く見られなかった。これらの知見によりPCRデータが支持され、培養条件が、Hep1の発現により規定される未熟肝細胞の特徴を有する細胞の発達を支持することが実証される。
【0074】
これらの移植実験により、移植直後の移植片における肝細胞様細胞の存在が実証されるが、移植組織は奇形腫として知られる腫瘍のような塊を生じるので、これらの集団の成熟を時間をかけてモニタリングすることが困難であった。奇形腫は、中胚葉起源であり、短尾を発現することが知られる混入未分化ES細胞からまたはGFP+始原的生殖細胞から発達するようである。
【実施例12】
【0075】
アクチビンによる中胚葉および内胚葉の誘導
内胚葉能を有する細胞をさらに濃縮するために、他のモデルシステムでこの細胞集団を誘導することが知られる増殖因子の効果を試験した。アフリカツメガエルの研究により、アクチビンは、培養物中で、外胚葉から中胚葉および内胚葉の両方を誘導することが示された。特に興味深いのは、アクチビンが、このモデルにおいて、使用した異なる濃度で異なる細胞型を誘導するというモルフォゲンとして挙動するという観察であった。アクチビンがES/EB系で類似の能力を示すかどうかを決定するために、それを以下のプロトコルを使用してEB培養物に加えた。ES細胞は、血清を含まないStem Pro34培地中で2日間分化させた。この段階で、発達中のEBを収集し、血清代替添加物(血清非含有)および100ng/mlの濃度のアクチビンを補充したIMDM中で再度培養した。EBを異なる日に収集し、GFP+発現、ならびに、内胚葉、中胚葉および外胚葉発達を示す遺伝子の発現についてアッセイした。図22A,Bで示したように、この量のアクチビンは、GFPにより測定したところ短尾を誘導した。GFP誘導の動態は、血清中で分化したEBに比べて遅延していたが、この濃度のアクチビンは、分化6日目までにかなりの数の短尾陽性細胞(60%)を誘導した。分子解析により、アクチビン誘導細胞は、HNF3β、Mixl-1、Soxl7、Hex-1、およびpdx-1を含む内胚葉発達に関連した幅広い遺伝子を発現することが示された(図23C)。GATA-1などの造血発達に関連した遺伝子およびPAX6などの神経外胚葉分化を示すものは、アクチビンにより誘導されなかった。
【0076】
アクチビンが、ES分化モデルにおいて形態形成特性を示すかどうかを決定するために、異なる濃度の因子をEB培養物に加えた。1ng/mlという僅かなアクチビンが、GFP+発現(全集団の10%)を培養7日目までに誘導した(図23A)。GFP+細胞の頻度は、3ng/mlで刺激した培養物中で40%まで増加し、30ng/mlで50%を超えるプラトーレベルに達した。これらの集団の遺伝子発現解析により、異なる濃度のアクチビンが、異なる発達プログラムを誘導することが示された。1または3ng/mlのアクチビンの存在下で分化したEBは、あったとしても弱い、内胚葉発達を示す遺伝子の発現を示した(図23A)。HNF3β、Soxl7、Hex-1は全て、10、30、または100ng/mlのアクチビンで刺激した培養物中で誘導された。Pdx-1発現は、最高量のアクチビンを要求し、100ng/mlで刺激したEBにおいて最善に誘導された。GATA1もc-fmsも、どの濃度のアクチビンにおいても発現されなかった。PAX6発現パターンは、内胚葉遺伝子のパターンと逆であり、アクチビン濃度の増加と共にダウンレギュレートされた。
【0077】
アクチビン誘導EBは、造血関与に関連した遺伝子を発現せず、このことは、この発達プログラムは誘導されないことを示す。これらのEBの造血能をさらに評価するために、それらを前駆体能について解析した。分子解析から期待したように、これらのEBは、認め得る数の原始的(Ep)または成体的(mac/mix)造血前駆体を含んでいなかった(図24A)。しかし、これらのアクチビン誘導EBをさらに血清で2.5日間刺激した場合、いくらかの造血前駆体を産生し、このことは、それらが中胚葉能を含むことを示す(図24B)。
【0078】
PCR解析により、アクチビンは、HNF3βの発現ならびに内胚葉分化に関与することが知られる他の遺伝子の発現も誘導することが実証された。アクチビン誘導ESにおける内胚葉前駆体の比率をより良く見積もるために、100ng/mlのアクチビンで刺激した培養物からの細胞を、HNF3βおよびHex1に対する抗体で染色した。非誘導培養物からのEBを対照として使用した(アクチビン-)。アクチビン誘導集団のかなりの割合(全部の50〜60%と推定)が、HNF3βおよびHex1の両方を発現していた。非誘導EB中のどの細胞もこれらのタンパク質を発現しなかった。これらの知見により、EB内のかなりの数が、内胚葉系統であることが明らかに実証される。
【0079】
これらのアクチビン誘導集団の能力をさらに調査するために、GFP+細胞を、3ngまたは100ngで刺激したEBから単離し、肝細胞誘導条件下でさらに培養した(14日間)。図25に示したように、100ngの培養物からの細胞のみが、肝臓分化に一致するアルブミンを発現する細胞へと分化した。一緒に考えると、これらの研究からの知見により、アクチビンは、ES/EBシステムにおいてモルフォゲンとして機能し、高濃度が内胚葉誘導に必要とされることが示される。
【0080】
血清誘導短尾+細胞により産生された奇形腫が始原生殖細胞の存在から生じるならば、アクチビン誘導細胞は、移植にとってより良好な前駆体源となり得る。なぜなら、生殖細胞プログラムはこれらの条件下では誘導されないからである。この仮説を試験するために、GFP+およびGFP-細胞を、100ng/mlのアクチビンで誘導したEBから単離し、14日間培養して、肝細胞様細胞の分化を促進した。この培養期間後、細胞を収集し、レシピエント動物の腎臓被膜に移植した。移植の3週間後、マウスを屠殺し、腎臓を解析した。結果を図26A〜Cに示す。GFP-細胞で移植した全てのマウスが、3つ全ての生殖層に由来する細胞からなる、多系統奇形腫を発達した。これらの細胞は、腸上皮、骨、および骨格筋を含む、内胚葉および中胚葉由来組織からなる分化した細胞塊を生じる。いくつかの場合、皮膚もまた、GFP+細胞からの移植片に観察され、このことは、この系統が、bry+細胞から発達し得ることを示唆する。これらの知見により、bry+細胞からGFP+集団を産生することが可能であることが示される。これらの知見により、移植後に奇形腫を形成することなく分化組織を生じるGFP+集団を産生することが可能であることが示される。
【実施例13】
【0081】
bry+/c-kit-およびbry+/c-kit+細胞の発達能
前の実施例により、肝細胞系統は、中胚葉能および内胚葉能の両方を有するbry+細胞集団から発達することが明らかに示される。bry+画分の解析により、これらの細胞の亜集団は、受容体チロシンキナーゼc-kitを発現すること(図27A)、この集団は、Flk-1を発現する細胞とは別個であることが判明した。c-kit発現が、内胚葉能を有する細胞の分離に有用なマーカーであり得ることを決定するために、3日目の血清刺激EBからのbry+/c-kit-(+/-)およびbry+/c-kit+(+/+)細胞を肝細胞能についてアッセイした。図27Bに示したように、AFPおよびALB発現細胞は全てbry+/c-kit+集団から得られた。この画分の内胚葉能を推定するために、選別した細胞をカバーガラスに置き、HNF3βに対する抗体で染色した。80%を超えるbry+/c-kit+細胞がHNF3βタンパク質を発現し、10%未満のbry+/c-kit-細胞が陽性であった。これらの知見により、内胚葉前駆体は、短尾およびc-kitの両方を発現し、この集団には、内胚葉能を有する細胞が高度に濃縮されていることが示される。短尾およびc-kit発現に基づいて細胞を単離することにより、内胚葉前駆体の単離における新規な戦略が提供される。
【実施例14】
【0082】
図23に提示したPCR解析により、異なる濃度のアクチビンが異なる発達プログラムを誘導し、内胚葉能を有する細胞は、最も高いレベルのこの因子で誘導されることが示される。アクチビンの異なる応答を定量するために、異なる濃度のアクチビンで刺激した細胞をカバーガラスに付着させ、抗HNF3β抗体で染色した。100ng/mlのアクチビンで刺激した全EB集団の50%を超えるものがHNF3βを発現したが、3ng/mlで刺激した細胞の僅か10%が陽性であった。単にバックグラウンドレベルの染色が、非刺激集団で観察された。これらの知見により、高濃度のアクチビンが、強い内胚葉プログラムを刺激できることが実証され、これは全EB集団のかなりの割合を示す。
【0083】
アクチビン処理細胞の能力のさらなる評価として、異なる濃度のこの因子の存在下で分化した6日目のEBを、4日間、血清代替添加物培地に移し、その後、さらに4日間、肝細胞条件で再度播種した。14日間の培養後、各グループからの細胞を収集し、PCR発現解析にかけた。Myf5および骨格アクチンの発現をモニタリングして、さらなる中胚葉由来系統を示す骨格筋発達を評価した。肺特異的遺伝子であるサーファクタントタンパク質C(SP-C)を、AFPおよびALBに加えて、内胚葉分化マーカーとして含めた。図28に示したように、Myf5および骨格アクチンが、1ng/mlという僅かな量のアクチビンで刺激した培養物中に発現され、この発現は、因子の幅広い濃度で検出された。しかし、両方の遺伝子の発現は、最も高い濃度のアクチビン(100ng/ml)でダウンレギュレートされた。低量のアクチビンで刺激した培養物は、骨格筋の形態を有する細胞群が含まれていた。免疫染色により、これらの細胞は、骨格ミオシンおよびα-アクチニンの両方を発現することが実証され、このことは、それらが骨格筋系統であることを示す。骨格筋成長を生じた再播種されたEBの比率の評価は、遺伝子発現解析と一致し、3および10ng/mlで刺激したものが、図28に示したように最も強い骨格筋発達を示した。3つの内胚葉遺伝子の発現パターンは、骨格筋遺伝子で観察されたものとは異なっていた。低いアクチビン濃度ではどれも全く発現されず、最も高い濃度の因子で刺激した培養物中では全てが容易に検出された。PAX6の発現は非処理培養物および低い濃度の因子で処理したものに限られた。この解析からの知見により、異なる濃度のアクチビンは異なる発達プログラムを誘導し、低い濃度では中胚葉運命に傾き、高い濃度では内胚葉運命に傾くことを実証し、本明細書の前記の実施例12の知見が確認され発展する。さらに、これらの結果により、アクチビンにより誘導される内胚葉細胞は分化でき、肝細胞および肺特徴を有する細胞を生じることが示される。
【0084】
低および高濃度の因子で刺激したEBから単離された短尾陽性および陰性集団もまた、骨格筋および内胚葉遺伝子の発現について解析した。図29に示したように、myf5および骨格アクチン発現の両方が、3ng/mlのアクチビンで刺激したEBから単離したbry+集団から産生された集団に限定されていた。同様に、内胚葉遺伝子は、100ng/mlの因子の存在下で産生したEBから単離した短尾+由来細胞に発現されていた。これらの知見により、中胚葉および内胚葉は短尾+細胞から発達することがさらに実証される。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】短尾遺伝子座に緑色蛍光タンパク質(GFP)を標的化するのに使用したベクターおよび戦略のスキームを示す図である。
【図2A】発達中の胚様体におけるGFPおよび短尾の発現を示す図である。図2Aは、逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)により決定された短尾発現の動態を示す。図2Aの図の上の数字および図2Bのヒストグラムは、EB分化の日数を示す。
【図2B】発達中の胚様体におけるGFPおよび短尾の発現を示す図である。図2Bは、蛍光活性化細胞選別器(FACS)解析により決定されたGFP発現の動態を示す。図2Aの図の上の数字および図2Bのヒストグラムは、EB分化の日数を示す。
【図3A】野生型およびGFP-Bry ES細胞の発達能を示す図である。図3Aは、6日目のEBの発達能を示すヒストグラムである。(Mac/Ery:マクロファージおよび成体型赤血球細胞のコロニー;Mac:純粋なマクロファージコロニー;Eryd:成体型赤血球細胞のコロニー;Mix:多系統コロニー;Eryp:原始的赤血球コロニー。
【図3B】野生型およびGFP-Bry ES細胞の発達能を示す図である。図3Bは、EBの芽球コロニー形成細胞(BL-CFC)能を示したヒストグラムである。
【図3C】野生型およびGFP-Bry ES細胞の発達能を示す図である。図3Cは、野生型およびGFP-Bry細胞のEB発達中における遺伝子発現パターンを示す。レーンの上の数字は、EB分化日数を示す。
【図4A】GFPに基づいて単離されたEB画分の遺伝子発現プロファイルを示す図である。図4Aは、3.5日目のEBにおけるGFP発現プロファイルを示す。1および2は、GFP-およびGFP+画分の単離に使用したゲートを示す。
【図4B】GFPに基づいて単離されたEB画分の遺伝子発現プロファイルを示す図である。図4Bは、単離画分のRT-PCR発現解析を示す。
【図5A】GFPおよびFlk-1集団の単離および特徴づけを実証する図である。図5Aは、3.0日目および3.5日目のEBのGFP-/Flk-1-、GFP+/Flk-1-およびGFP+/Flk-1+画分の単離に使用したプロファイルおよびゲートを示す。ゲートの隣の数は3つの異なる集団を示す。
【図5B】GFPおよびFlk-1集団の単離および特徴づけを実証する図である。図5Bは、異なる画分の芽球コロニー(Blast)および二次EB(2゜)能を示す。
【図5C】GFPおよびFlk-1集団の単離および特徴づけを実証する図である。図5Cは、単離画分の発現解析を示す。上のパネルに示した発現は、Bradyら(1990)Meth.In Mol.And Cell Bio.2:17-25に記載のポリA+グローバル増幅PCR法を使用して評価した。下のパネルのデータは、遺伝子特異的オリゴヌクレオチドを使用してRT-PCR解析により得られた。各列の上の数字は、図5Aで命名したような細胞集団を示す。
【図6】単離された3日目のEB由来画分におけるGFPおよびFlk-1の発現を示す図である。上の列は、培養前(pre)の3つの画分の発現プロファイルを示す。下の列は、20時間培養した後(post)の同じ細胞集団のプロファイルを示す。各プロファイルの下の数字は、各集団のBL-CFCおよび原始的赤血球(EryP-CFC)能(播種した1×105細胞あたりの前駆体)を示す。
【図7A】培養前および培養後の単離細胞集団のBL-CFC能およびFlk-1発現を示す図である。図7Aにおいて、下の数字は細胞集団を意味し、1は選別前、3はGFP+/Flk-1-画分、4はGFP+/Flk-1+画分である。細胞を20時間培養し、その後、凝集物を解離し、BL-CFCについて解析した。データは、3、3.5、および4.0日目のEBから単離した細胞について示す。
【図7B】培養前および培養後の単離細胞集団のBL-CFC能およびFlk-1発現を示す図である。図7Bにおいて、上の列は、培養前の、3.0、3.5、および4.0日目のEBから単離したGFP+/Flk-1-細胞を示す。下の列は、培養後の(post)、同じ画分のFlk-1発現パターンを示す。棒の上の数字は、Flk-1+細胞の比率を示す。
【図8】各ヒストグラムの上に示した条件下で3.0日目のEB由来細胞における、短尾およびFlk-1+の発達に対する、BMP-4および胎児ウシ血清(FCS)の効果を実証する図である。図8Bは、指定した条件下で20時間培養したGFP+//Flk-1-細胞から作製した細胞集団における、短尾およびFlk-1の発現を示す。
【図9】EBにおける中胚葉形成および特異化の図解モデルである。
【図10】血清の存在下および非存在下におけるEBにおける遺伝子の発現を示す図である。
【図11】異なる条件下で作製したEBにおける短尾発現を示すグラフである。
【図12】血清の存在下および非存在下での神経分化を示した図解と6日目のコロニーアッセイの結果を示す棒グラフである。
【図13】血清の存在下および非存在下での神経分化を示した図解である。
【図14】2日間血清中で開始し、その後、血清を含まない条件下に切り替えたEBにおける遺伝子の発現を示す図である。
【図15】bFGFの存在下で培養したEBにおける遺伝子発現を示す図である。
【図16】bFGFの存在下で培養したBry+およびBry-細胞における遺伝子発現パターンを示す図である。
【図17】本発明の中胚葉および内胚葉集団、および、これらの集団から誘導細胞型への分化の図解である。
【図18】2.5、3.0、3.5、および4.0日間分化したEBにおけるGFP(短尾)およびFlk-1の発現の動態を示す図である。矢印は、その後の研究において解析のために使用する単離されたGFP+集団を示す。
【図19】4段階のEB分化から単離されたGFP+集団の血管芽細胞および心臓能を示す図である。各段階からの細胞を細胞選別により単離し、24時間再度凝集させ、造血能および心臓能について解析した。データは、再凝集培養物から回収した1×105細胞あたりの芽球コロニー(血管芽細胞)として、または、心筋分化を示す拍動細胞塊を生じる凝集物の%として示す。
【図20】4つのGFP+EB由来細胞集団における指定した遺伝子のRT-PCR発現解析を提供する図である。数字は、EB分化日数を示す。
【図21】3.0および4.0日目のEBから単離したGFP+集団におけるHNF3β発現を示す図である。Preは選別前の細胞を示し、-/-は、GFPまたはFlk-1を全く発現しない細胞であり、+/-はGFP+Flk-1-集団を示す。
【図22A】血清を含まない培養物中のEBの発達に対する、アクチビンの効果を実証する図である。A)100ng/mlのアクチビンの存在下で分化した6日目のEBにおけるGFP発現を示すFACSプロファイル。
【図22B】血清を含まない培養物中のEBの発達に対する、アクチビンの効果を実証する図である。B)100ng/mlのアクチビンを含む培養物におけるGFP誘導の動態。白丸は、アクチビンの存在下で分化したEBであり、黒い四角はアクチビンの非存在下で分化したEBである。
【図22C】血清を含まない培養物中のEBの発達に対する、アクチビンの効果を実証する図である。C)アクチビンの存在下(+アクチビン)または非存在下(-アクチビン)で増殖させた6日目のEBにおける指定した遺伝子のRT-PCR発現解析。数字は、EBの分化日数を示す。
【図23A】EBの発達能に対する種々の濃度のアクチビンの効果を示す図である。A)異なる濃度のアクチビンで誘導した7日目のEBにおけるGFP発現。
【図23B】EBの発達能に対する種々の濃度のアクチビンの効果を示す図である。B)異なる濃度のアクチビンで誘導した7日目のEBのRT-PCR発現解析。
【図24A】異なる濃度のアクチビンの存在下で分化したEBの造血前駆体含量を示す図である。A)7日目のEBの前駆体能、Epは、原始的赤血球前駆体であり、mac/mixは、成体型造血前駆体を示す。
【図24B】異なる濃度のアクチビンの存在下で分化したEBの造血前駆体含量を示す図である。B)血清に2.5日間暴露した後の7日目のアクチビンにより誘導されたEBの前駆体能。
【図25】エーテル3または100ng/mlのアクチビンで誘導したGFP+細胞からの細胞を発現しているアルブミンの発達を示す図である。GFP+およびGFP-は、分化6日目で単離され、肝細胞分化を支持すると前記された条件でさらに8日間培養した。
【図26A】bry+(図26A)およびbry-(26B)細胞集団の3週間目の腎移植片を示す図である。
【図26B】bry+(図26A)およびbry-(26B)細胞集団の3週間目の腎移植片を示す図である。
【図26C】図26Cは、bry+およびbry-集団の移植片の切片を示す図である。
【図27A】図27Aは、3日目の血清で刺激したEBから単離したbry+/c-kit+(+/+)およびbry+/c-kit-(+/-)を示すFACSプロファイルである。数字は、各画分における細胞の比率を示す。
【図27B】図27Bは、各画分の発現解析を示す図である。3日目は、選別の直後に解析した細胞を示す。15日目は、肝細胞条件下で15日間培養した細胞集団を示す。
【図28】異なる濃度のアクチビンで誘導したEBから得られた細胞集団の発現解析を示す図である。図の上の数字は、アクチビン濃度を示す。図の下の数字は、骨格筋成長を有するEB集団の比率の推定値を示す。
【図29】アクチビンにより誘導した集団から単離した短尾画分の発現解析を示す図である。図の上の数字はアクチビン濃度を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中内胚葉および中胚葉細胞が濃縮されている細胞集団。
【請求項2】
少なくとも約50%の中内胚葉および中胚葉細胞を含む、請求項1に記載の細胞集団。
【請求項3】
少なくとも約75%の中内胚葉および中胚葉細胞を含む、請求項1に記載の細胞集団。
【請求項4】
少なくとも約90%の中内胚葉および中胚葉細胞を含む、請求項1に記載の細胞集団。
【請求項5】
短尾を発現する細胞を得るに十分な時間の間、血清の存在下で胚性幹細胞を培養すること、および短尾を発現する前記細胞を単離することにより得られる、請求項1に記載の細胞集団。
【請求項6】
前記胚性幹細胞はヒト胚性幹細胞である、請求項5に記載の細胞集団。
【請求項7】
前記時間は約2から約18日間である、請求項6に記載の細胞集団。
【請求項8】
短尾を発現する細胞を得るのに十分な時間、血清の存在下で胚性幹細胞を培養すること、および短尾を発現する前記細胞を単離することを含む、請求項1に記載の細胞集団を単離する方法。
【請求項9】
選択マーカー遺伝子を前記胚性幹細胞の短尾遺伝子座に挿入し、選択マーカーを発現する細胞を選択することにより短尾を発現する細胞を単離する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
選択マーカーは強化緑色蛍光タンパク質である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
内胚葉細胞が濃縮された細胞集団。
【請求項12】
少なくとも約50%の内胚葉細胞を含む、請求項11に記載の細胞集団。
【請求項13】
少なくとも約75%の内胚葉細胞を含む、請求項11に記載の細胞集団。
【請求項14】
少なくとも約90%の内胚葉細胞を含む、請求項11に記載の細胞集団。
【請求項15】
血清の存在下で約2から約10日間の間ヒト胚性幹細胞を培養すること、短尾を発現する細胞を単離すること、および血清の非存在下で約1から約15日間の間、短尾を発現する前記細胞を培養することにより得られる、請求項11に記載の細胞集団。
【請求項16】
血清の存在下で約2から約10日間の間ヒト胚性幹細胞を培養すること、短尾を発現する細胞を単離すること、および血清の非存在下で約1から約15日間の間、短尾を発現する前記細胞を培養することを含む、請求項11の細胞集団を単離する方法。
【請求項17】
選択マーカー遺伝子を、前記胚性幹細胞の短尾遺伝子座に挿入し、選択マーカーを発現する細胞を選択することにより短尾を発現する細胞を単離する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
選択マーカーは強化緑色蛍光タンパク質である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
血清の非存在下、胚性幹細胞から内胚葉への分化を誘導するのに十分な量のアクチビンの存在下で胚性幹細胞を培養すること、および短尾を発現する細胞を単離することを含む、請求項11に記載の細胞集団を単離する方法。
【請求項20】
血清の非存在下、胚性幹細胞から中胚葉への分化を誘導するには十分であるが、胚性幹細胞から内胚葉への分化を誘導するには不十分である量のアクチビンの存在下で胚性幹細胞を培養すること、および短尾を発現する細胞を単離することを含む、中胚葉細胞の濃縮された細胞集団を単離する方法。
【請求項21】
請求項11に記載の細胞集団を単離すること、前記集団の亜集団を、肝細胞破壊または機能不全に関連した疾患を示す動物に移植すること、および肝機能についてアッセイすることを含む、成熟肝細胞として機能できる内胚葉細胞を同定する方法であって、前記動物の肝機能の改善は、成熟肝細胞として機能できる内胚葉細胞の同定を示す、方法。
【請求項22】
前記動物はフマリルアセト酢酸の欠損したマウスである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
試験する薬剤の存在下で請求項1に記載の細胞集団を培養すること、および前記薬剤の存在下および非存在下で前記細胞の増殖、分化、または生存を比較することを含む、中内胚葉および中胚葉細胞の増殖、分化、または生存に影響を及ぼす薬剤を同定する方法であって、前記薬剤の存在下における差異は、前記細胞の増殖、分化、または生存に影響を及ぼす薬剤の同定を示す、方法。
【請求項24】
試験する薬剤の存在下で請求項11に記載の細胞集団を培養すること、および前記薬剤の存在下および非存在下で前記細胞の増殖、分化、または生存を比較することを含む、内胚葉細胞の増殖、分化、または生存に影響を及ぼす薬剤を同定する方法であって、前記薬剤の存在下における差異は、前記細胞の増殖、分化、または生存に影響を及ぼす薬剤の同定を示す、方法。
【請求項25】
短尾を発現する細胞が得られる条件下で胚性幹細胞をインキュベートすること、2つの異なる培養時間の後に短尾を発現する2つの細胞集団を単離すること、前記2つの集団の遺伝子発現プロファイルを比較すること、集団において独特に発現されている遺伝子を同定することを含む、細胞分化に関与する遺伝子を同定する方法であって、集団において独特に発現されている遺伝子の同定は、細胞分化に関与する遺伝子の同定を示す、方法。
【請求項26】
選択マーカーを胚性幹細胞の短尾遺伝子座に挿入すること、前記細胞を培養すること、選択マーカーを発現する細胞を選択することにより短尾を発現する細胞を単離して、短尾を発現する単離細胞集団を得ること、および前記単離集団に対する抗体を産生することを含む、短尾を発現する細胞は認識するが、短尾を発現しない細胞は認識しない抗体を作製する方法。
【請求項27】
抗体はモノクローナルまたはポリクローナルである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
中胚葉から心筋、血管平滑筋、内皮、または造血細胞への分化に有効な条件下で、請求項1に記載の細胞集団を培養することを含む、哺乳動物細胞を作製する方法。
【請求項29】
内胚葉から肝細胞または膵細胞への分化に有効な条件下で請求項11に記載の細胞集団を培養することを含む、哺乳動物細胞を作製する方法。
【請求項30】
選択マーカーをコードするDNAが短尾遺伝子座に存在し、前記選択マーカーは短尾を発現する細胞において発現されている導入遺伝子を含むゲノムを有する、トランスジェニック非ヒト哺乳動物。
【請求項1】
中内胚葉および中胚葉細胞が濃縮されている細胞集団。
【請求項2】
少なくとも約50%の中内胚葉および中胚葉細胞を含む、請求項1に記載の細胞集団。
【請求項3】
少なくとも約75%の中内胚葉および中胚葉細胞を含む、請求項1に記載の細胞集団。
【請求項4】
少なくとも約90%の中内胚葉および中胚葉細胞を含む、請求項1に記載の細胞集団。
【請求項5】
短尾を発現する細胞を得るに十分な時間の間、血清の存在下で胚性幹細胞を培養すること、および短尾を発現する前記細胞を単離することにより得られる、請求項1に記載の細胞集団。
【請求項6】
前記胚性幹細胞はヒト胚性幹細胞である、請求項5に記載の細胞集団。
【請求項7】
前記時間は約2から約18日間である、請求項6に記載の細胞集団。
【請求項8】
短尾を発現する細胞を得るのに十分な時間、血清の存在下で胚性幹細胞を培養すること、および短尾を発現する前記細胞を単離することを含む、請求項1に記載の細胞集団を単離する方法。
【請求項9】
選択マーカー遺伝子を前記胚性幹細胞の短尾遺伝子座に挿入し、選択マーカーを発現する細胞を選択することにより短尾を発現する細胞を単離する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
選択マーカーは強化緑色蛍光タンパク質である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
内胚葉細胞が濃縮された細胞集団。
【請求項12】
少なくとも約50%の内胚葉細胞を含む、請求項11に記載の細胞集団。
【請求項13】
少なくとも約75%の内胚葉細胞を含む、請求項11に記載の細胞集団。
【請求項14】
少なくとも約90%の内胚葉細胞を含む、請求項11に記載の細胞集団。
【請求項15】
血清の存在下で約2から約10日間の間ヒト胚性幹細胞を培養すること、短尾を発現する細胞を単離すること、および血清の非存在下で約1から約15日間の間、短尾を発現する前記細胞を培養することにより得られる、請求項11に記載の細胞集団。
【請求項16】
血清の存在下で約2から約10日間の間ヒト胚性幹細胞を培養すること、短尾を発現する細胞を単離すること、および血清の非存在下で約1から約15日間の間、短尾を発現する前記細胞を培養することを含む、請求項11の細胞集団を単離する方法。
【請求項17】
選択マーカー遺伝子を、前記胚性幹細胞の短尾遺伝子座に挿入し、選択マーカーを発現する細胞を選択することにより短尾を発現する細胞を単離する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
選択マーカーは強化緑色蛍光タンパク質である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
血清の非存在下、胚性幹細胞から内胚葉への分化を誘導するのに十分な量のアクチビンの存在下で胚性幹細胞を培養すること、および短尾を発現する細胞を単離することを含む、請求項11に記載の細胞集団を単離する方法。
【請求項20】
血清の非存在下、胚性幹細胞から中胚葉への分化を誘導するには十分であるが、胚性幹細胞から内胚葉への分化を誘導するには不十分である量のアクチビンの存在下で胚性幹細胞を培養すること、および短尾を発現する細胞を単離することを含む、中胚葉細胞の濃縮された細胞集団を単離する方法。
【請求項21】
請求項11に記載の細胞集団を単離すること、前記集団の亜集団を、肝細胞破壊または機能不全に関連した疾患を示す動物に移植すること、および肝機能についてアッセイすることを含む、成熟肝細胞として機能できる内胚葉細胞を同定する方法であって、前記動物の肝機能の改善は、成熟肝細胞として機能できる内胚葉細胞の同定を示す、方法。
【請求項22】
前記動物はフマリルアセト酢酸の欠損したマウスである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
試験する薬剤の存在下で請求項1に記載の細胞集団を培養すること、および前記薬剤の存在下および非存在下で前記細胞の増殖、分化、または生存を比較することを含む、中内胚葉および中胚葉細胞の増殖、分化、または生存に影響を及ぼす薬剤を同定する方法であって、前記薬剤の存在下における差異は、前記細胞の増殖、分化、または生存に影響を及ぼす薬剤の同定を示す、方法。
【請求項24】
試験する薬剤の存在下で請求項11に記載の細胞集団を培養すること、および前記薬剤の存在下および非存在下で前記細胞の増殖、分化、または生存を比較することを含む、内胚葉細胞の増殖、分化、または生存に影響を及ぼす薬剤を同定する方法であって、前記薬剤の存在下における差異は、前記細胞の増殖、分化、または生存に影響を及ぼす薬剤の同定を示す、方法。
【請求項25】
短尾を発現する細胞が得られる条件下で胚性幹細胞をインキュベートすること、2つの異なる培養時間の後に短尾を発現する2つの細胞集団を単離すること、前記2つの集団の遺伝子発現プロファイルを比較すること、集団において独特に発現されている遺伝子を同定することを含む、細胞分化に関与する遺伝子を同定する方法であって、集団において独特に発現されている遺伝子の同定は、細胞分化に関与する遺伝子の同定を示す、方法。
【請求項26】
選択マーカーを胚性幹細胞の短尾遺伝子座に挿入すること、前記細胞を培養すること、選択マーカーを発現する細胞を選択することにより短尾を発現する細胞を単離して、短尾を発現する単離細胞集団を得ること、および前記単離集団に対する抗体を産生することを含む、短尾を発現する細胞は認識するが、短尾を発現しない細胞は認識しない抗体を作製する方法。
【請求項27】
抗体はモノクローナルまたはポリクローナルである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
中胚葉から心筋、血管平滑筋、内皮、または造血細胞への分化に有効な条件下で、請求項1に記載の細胞集団を培養することを含む、哺乳動物細胞を作製する方法。
【請求項29】
内胚葉から肝細胞または膵細胞への分化に有効な条件下で請求項11に記載の細胞集団を培養することを含む、哺乳動物細胞を作製する方法。
【請求項30】
選択マーカーをコードするDNAが短尾遺伝子座に存在し、前記選択マーカーは短尾を発現する細胞において発現されている導入遺伝子を含むゲノムを有する、トランスジェニック非ヒト哺乳動物。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図22C】
【図23A】
【図23B】
【図24A】
【図24B】
【図25】
【図26A】
【図26B】
【図26C】
【図27A】
【図27B】
【図28】
【図29】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図22C】
【図23A】
【図23B】
【図24A】
【図24B】
【図25】
【図26A】
【図26B】
【図26C】
【図27A】
【図27B】
【図28】
【図29】
【公表番号】特表2006−513727(P2006−513727A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−510829(P2005−510829)
【出願日】平成15年5月19日(2003.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2003/015658
【国際公開番号】WO2004/098490
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(502375437)マウント シナイ スクール オブ メディスン オブ ニューヨーク ユニバーシティー (11)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年5月19日(2003.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2003/015658
【国際公開番号】WO2004/098490
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(502375437)マウント シナイ スクール オブ メディスン オブ ニューヨーク ユニバーシティー (11)
【Fターム(参考)】
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