説明

中華麺用小麦粉組成物、および電子レンジ加熱調理用中華麺

【課題】比較的細麺であっても、電子レンジ加熱調理時の戻りが良好で、加熱調理後の食感が良好であり、更に、加熱調理後の茹で伸びを抑制できる中華麺用小麦粉組成物を提供すること。
【解決手段】電子レンジ加熱により調理される中華麺に用いる小麦粉組成物であって、原料が春播きのハード系白小麦からなる小麦粉を少なくとも含有し、前記中華麺は、その断面の長径が1.2〜1.7mmである中華麺用小麦粉組成物を提供する。本発明に係る中華麺用小麦粉組成物を用いた電子レンジ加熱調理用中華麺は、生麺と同等の品質を備える簡便性の高い電子レンジ加熱対応商品として、利用することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中華麺用小麦粉組成物に関する。より詳しくは、電子レンジ加熱により調理される中華麺に用いる小麦粉組成物、および電子レンジ加熱調理用中華麺に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンビニエンスストアを始めとした市場動向では、簡便性を重視した電子レンジ加熱対応商品の優位性が高まっている。麺類においても、あらかじめ茹でおいた「茹で麺」をゼラチンスープや具材とともに容器に入れ、そのままレンジアップして喫食する商品が広く出回っている。このような電子レンジ加熱対応の茹で麺は、短時間で湯戻りするという湯戻りの良さ、喫食時の茹で伸びの抑制が品質設計上の大きな課題となっている。
【0003】
電子レンジ加熱対応の茹で麺に限らず、中華麺の品質を向上させるために、その原料として様々な小麦粉が用いられている。例えば、茹でたてを喫食する生中華麺では、DNS(Dark Northern Spring)やHRW(Hard Red Winter)、1CW(No.1 Canada Western Red Spring)を原料とする準強力粉が主原料として使用される。しかし、これらの準強力粉を使用した中華麺を予め茹でおきし、電子レンジ加熱対応の中華麺とした場合、レンジアップ時の戻りが悪く、食感の粘りが感じられず硬くてもろい傾向となる。そのため、中力粉やタピオカ澱粉を配合して調整する必要がある。
【0004】
このように、電子レンジ加熱対応の中華麺の品質を向上させる技術としては、例えば、特許文献1には、澱粉の熱変化開始温度(T)が80℃以上で、吸熱エネルギー(ΔH)が0.3J/乾物g以下である小麦を製粉して得られた小麦粉を用いることにより、電子レンジなどのマイクロ波調理器によって従来よりも一層短い時間で簡単に調理できる中華麺が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、かん粉の重量に基づいてナトリウム塩の含有割合が80重量%以上であるかん水を用いて製造することにより、加熱調理後の茹で伸びの少ないマイクロ波調理用生中華麺が開示されている。
【0006】
更に、特許文献3には、小麦粉に0.1〜5重量%の動植物性蛋白質を添加することにより、高出力の電子レンジでも満足に調理でき、簡単且つ短時間で、満足ゆく食感に調理でき、更に、茹でた後の伸びを抑制できる電子レンジ調理用生中華麺が開示されている。
【0007】
ところで、中華麺は、製造時の切り出し刃などによって、その麺線の太さが異なり、麺線の太さの違いにより、その品質も異なるため、品質を向上させる技術も麺線の太さに応じて工夫する必要がある。例えば、16番以下の切刃で切り出した麺幅(断面の長径)約1.8mm以上の麺線では、DNS(Dark Northern Spring)やHRW(Hard Red Winter)、1CW(No.1 Canada Western Red Spring)を原料とする準強力粉だけを用いた場合、電子レンジ加熱後に硬さが残り粘りも不足し、硬くてもろい食感となってしまう。
【0008】
この問題を解消するために、電子レンジ加熱調理用中華麺では、穀粉部分に中力粉やタピオカ澱粉(加工澱粉;エーテル化、アセチル化)を配合するなどして、粘弾性のバランスを調整することができる。一般に、中力粉やタピオカ澱粉は、レンジアップ時の戻りは早く、粘りのある食感となるが、一方で、温かいスープに浸かっていると5分程度で茹で伸びした歯応えのない状態となりやすいのが問題である。しかし、麺線形状が太い場合(麺幅(断面の長径)約1.8mm以上)は、茹で伸びの進行が遅く、通常の喫食の時間であれば準強力粉と中力粉、タピオカ澱粉の配合比率により品質の範囲内に設計することができる。
【0009】
一方、18〜24番の切刃で切り出した麺幅(断面の長径)約1.2〜1.7mmの麺線では、穀粉部分に中力粉やタピオカ澱粉(加工澱粉;エーテル化、アセチル化)を配合すると、温かいスープに浸った時に簡単に汁を吸って茹で伸びし、歯応えがない状態になってしまうという問題があった。穀粉の中でもタピオカ澱粉は、茹で伸びが特に早いため、細麺(麺幅(断面の長径)約1.2〜1.7mm)の問題を解決するためには、麺に用いる穀粉部分を小麦粉だけで構成することが望ましい。
【0010】
しかしながら、準強力粉、強力粉だけで作った麺線は、レンジアップ時の戻りが悪く、硬さはあるが粘りのない食感となってしまう。現に、1CW(No.1 Canada Western Red Spring)、DNS(Dark Northern Spring)、HRW(Hard Red Winter)、PH(Prime Hard)などを原料とした準強力粉、強力粉を用いた麺線では、レンジアップ時の食感や茹で伸びに関する品質を生麺と同等に再現できていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−308974号公報
【特許文献2】特開平11−243886号公報
【特許文献3】特開2001−299257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
断面の長径が約1.2〜1.7mmの電子レンジ加熱調理用中華麺では、穀粉部分に中力粉やタピオカ澱粉を配合すると茹で伸びし易くなるという問題があり、一方、準強力粉、強力粉だけで麺線を形成すると、レンジアップ時の戻りが悪く、硬さはあるが粘りのない食感となってしまうという問題があった。
【0013】
そこで、本発明では、断面の長径が1.2〜1.7mmの細麺であっても、電子レンジ加熱調理時の戻りが良好で、加熱調理後の食感が良好であり、更に、加熱調理後の茹で伸びを抑制できる中華麺用小麦粉組成物を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、中力粉と準強力粉、強力粉の配合比率、および準強力粉、強力粉のタイプの選定について鋭意研究を行った結果、強力粉原料の小麦の種類に着目することにより、前記課題を解決し得る中華麺用小麦粉組成物を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0015】
即ち、本発明ではまず、電子レンジ加熱により調理される中華麺に用いる小麦粉組成物であって、
原料が春播きのハード系白小麦からなる小麦粉を少なくとも含有し、
前記中華麺は、その断面の長径が1.2〜1.7mmである中華麺用小麦粉組成物を提供する。
本発明に係る中華麺用小麦粉組成物は、その組成中に原料が春播きのハード系白小麦からなる小麦粉が少なくとも含有されていれば、その配合比は特に限定されないが、本発明においては、小麦粉組成物100重量部に対して15〜50重量部含有させることが好ましい。
本発明に係る中華麺用小麦粉組成物に含有する小麦粉は、その原料として春播きのハード系白小麦が用いられていれば、その小麦の種類は特に限定されないが、本発明においては、春播きのハード系白小麦として、Canada Western Hard White Spring(CWHWS)を用いることが好ましい。
以上説明した本発明に係る中華麺用小麦粉組成物は、電子レンジ加熱調理用中華麺に好適に用いることが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る中華麺用小麦粉組成物は、断面の長径が1.2〜1.7mmの電子レンジ加熱調理用中華麺に用いた場合であっても、電子レンジ加熱調理時の戻り、および加熱調理後の食感を向上させることができ、更に、加熱調理後の茹で伸びを抑制することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための好適な形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0018】
<中華麺用小麦粉組成物>
本発明に係る中華麺用小麦粉組成物は、電子レンジ加熱により調理される中華麺に用いる小麦粉組成物であって、原料が春播きのハード系白小麦からなる小麦粉を少なくとも含有する。そして、特に、断面の長径が1.2〜1.7mmである中華麺に用いる小麦粉組成物である。
【0019】
本発明では、原料が春播きのハード系白小麦からなる小麦粉を、断面の長径が1.2〜1.7mmの電子レンジ加熱調理用中華麺に用いた場合に、その品質特性(電子レンジ加熱調理時の戻り、加熱調理後の食感、加熱調理後の茹で伸びの抑制)を改善させることを見出した。
特筆すべきは、中華麺用に非常に優れた適性があることが知られているPH(Prime Hard、冬播きのハード系白小麦)であっても、電子レンジ加熱調理用中華麺という特殊用途では、茹で伸びが早いという欠点を克服できないにもかかわらず、春播きのハード系白小麦からなる小麦粉を用いることで、電子レンジ加熱調理用中華麺の茹で伸びを遅延させるだけでなく食感を含めた品質全般を飛躍的に高めることが可能となった点である。
【0020】
より具体的に説明すると、後述する実施例に示す通り、春播きのハード系白小麦を原料とした小麦粉を用いて製造した中華麺は、春播きのハード系赤小麦(1CW(No.1 Canada Western Red Spring)、DNS(Dark Northern Spring))、冬播きのハード系赤小麦(HRW(Hard Red Winter))、冬播きのハード系白小麦(PH(Prime Hard))などを原料とした小麦粉を用いて製造した中華麺に比べ、電子レンジ加熱調理時の戻りが良好で、食感もソフトでありながらモチモチとした弾力があり、更に、茹で伸びが遅いという特徴があることが確認された。
【0021】
本発明に係る中華麺用小麦粉組成物に含有する春播きのハード系白小麦を原料とする小麦粉の配合比は、本発明の効果を損なわなければ特に限定されず、自由に設定することができる。本発明では特に、後述する実施例で示す通り、小麦粉組成物100重量部に対して15〜50重量部含有させることが好ましい。
【0022】
本発明に係る中華麺用小麦粉組成物に含有する小麦粉は、その原料として春播きのハード系白小麦が用いられていれば、その小麦の種類は特に限定されない。例えば、代表的な銘柄としてはCanada Western Hard White Spring(CWHWS)、Hard White Spring(HWS)などが挙げられ、これらを原料とする小麦粉を1種または2種以上自由に選択して用いることができる。より具体的には、CWHWSの品種としては、Kanata、AC Snowbird、AC Snowstarなどが、HWSの品種としては、AC Karma、AC Snowbird、AC Vista、Explorer、Loloなどが挙げられる。この中でも特に本発明においては、AC Snowbirdを用いることが好ましい。
なお、本願でいう春播きのハード系白小麦には、二粒系のデュラム小麦は含まれない。
【0023】
本発明に係る中華麺用小麦粉組成物は、春播きのハード系白小麦を原料とした小麦粉を少なくとも含有していれば、他の配合組成は特に限定されず、中華麺用小麦粉として用いることが可能な小麦粉を、1種または2種以上自由に選択して混合することができる。例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラムセモリナなどの通常の小麦粉が挙げられる。
【0024】
また、本発明に係る中華麺用小麦粉組成物には、本発明の効果を損なわない限り、中華麺に通常用いる原料を1種または2種以上、自由に選択して混合することができる。例えば、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチなどの澱粉(これらをエーテル化、エステル化、アセチル化、α化などを行った加工澱粉を含む)、米粉、大麦粉などの穀粉、グルテン、卵粉、かんすい、食塩などの無機塩類、油脂類、乳化剤、増粘剤などを挙げることができる。
【0025】
<電子レンジ加熱調理用中華麺>
本発明に係る中華麺用小麦粉組成物は、電子レンジ加熱調理用中華麺に好適に用いることができる。本発明に係る電子レンジ加熱調理用中華麺に用いる小麦粉組成物の特徴は、前述した中華麺用小麦粉組成物と同一であるため、ここでは説明を省略する。
【0026】
本発明に係る電子レンジ加熱調理用中華麺は、前述した本発明に係る中華麺用小麦粉組成物を少なくとも用いて製造され、その断面の長径が1.2〜1.7mmと比較的細いことを特徴とする。
【0027】
なお、中華麺における太麺と細麺の境界は明確ではないが、切刃番手18番を太麺とする場合と細麺とする場合が見受けられ、概ね切刃番手18番を境に太麺と細麺に区別するのが一般的と考えられる。
【0028】
前述したとおり、比較的太い麺線の場合(断面の長径約1.8mm以上)、強力粉、準強力粉、中力粉、およびタピオカ澱粉などの配合比率により、電子レンジ加熱調理用の中華麺として、ある程度品質を向上させることが可能であった。しかしながら、比較的細い麺線の場合(断面の長径1.2〜1.7mm)、強力粉、準強力粉、中力粉、タピオカ澱粉などの配合比率だけでは、電子レンジ加熱調理用の中華麺としての品質が保てないのが実情であった。
【0029】
しかし、本発明では、今まで電子レンジ加熱調理用の中華麺には用いられていなかった春播きのハード系白小麦を原料とした小麦粉を少なくとも含有する小麦粉組成物を用いて、電子レンジ加熱調理用中華麺を製造することにより、電子レンジ加熱調理時の戻り、および加熱調理後の食感を向上させ、更に、加熱調理後の茹で伸びを抑制することに成功した。
【0030】
本発明に係る電子レンジ加熱調理用中華麺は、その断面の長径が1.2〜1.7mmに調整されれば、具体的な製造方法は特に限定されず、公知の中華麺製造方法を自由に選択して用いることができる。製造方法の一例を、以下に説明する。
【0031】
まず、前述の本発明に係る中華麺用小麦粉組成物に、食塩、かんすい、水などを所定量加えて混合、混練し、生地を形成する。次に、形成した生地を、例えば平板状に圧延して所定厚みに調整(通常は切断幅とほぼ同じ厚み、又は切断幅よりも薄く調整される)した後に、切断、切り出しなどを行い、その断面の長径が1.2〜1.7mmに調整した麺線を製造する。
【0032】
最終の断面の長径が1.2〜1.7mmに調整されれば、切断、切り出しを行う場合の手段は特に限定されない。また機械製麺で通常用いられる切刃の種類(例えば、丸刃、角刃など)は特に限定されないが、切刃番手で18〜24番を用いることで、麺幅(断面の長径)1.2〜1.7mmの中華麺を得ることができる。
なお、平麺と呼ばれるタイプの麺では、一般的に圧延による厚みが切断幅よりも薄く調整されるため、麺線の断面の長径は切刃による切断幅により決定される。また圧延による厚みを切断幅よりも厚く調整する特殊な平麺とする場合は、圧延による厚みを1.2〜1.7mmに調整すればよい。
【0033】
また圧延・切断の工程を経る製麺方法以外の手段、例えば押し出しによる製麺方法や引き伸ばしによる製麺方法であっても、麺線の断面の長径が1.2〜1.7mmに調整される方法であれば、本発明の中華麺を得ることが可能である。
【0034】
断面の長径を1.2〜1.7mmに調整された麺線は、所定時間、所定の温度の湯中で茹で処理を行う。なお、麺線表面を強化するために、湯で処理前に、蒸熱処理や遠赤外線処理などの加熱処理を行うことも自由である。茹で上げた麺線は、所定の温度の水で冷却する。この際、冷却する水には、pH調整剤、ほぐれ性改良剤、アルコール、着味剤などを1種または2種以上含有させることも自由である。冷却した麺線を、所定の時間水きりすることで、本発明に係る電子レンジ加熱調理用中華麺を製造することができる。
【0035】
製造した電子レンジ加熱調理用中華麺は、そのまま中華麺単体として流通させる事も可能であるが、コンビニエンスストアやスーパーマーケットにおける電子レンジ加熱用簡易食品として、所定の耐熱容器に、ゼラチン等で固めた中華スープと一緒に収容して流通させることも可能である。
【0036】
容器に収容する場合、本発明に係る電子レンジ加熱調理用中華麺の耐熱容器への収容方法は、電子レンジ加熱調理後に容易に食することが可能であれば特に限定されない。例えば、容器の底部から、ゼラチン等で固めた中華スープ、耐熱性シート、本発明に係る電子レンジ加熱調理用中華麺という順に収容することで、そのまま電子レンジ加熱調理することが可能であり、電子レンジ加熱調理後は、前記耐熱性シートを取り除くだけで、喫食することが可能である。
【実施例】
【0037】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0038】
<実験1:他麦種との比較>
実験1では、春播きのハード系白小麦を原料とした小麦粉を含有させた中華麺用小麦粉組成物と、他の強力粉を含有させた中華麺用小麦粉組成物との、電子レンジ加熱調理用中華麺に用いた場合の品質の違いについて検討した。なお、本実験例では、春播きのハード系白小麦の一例としてCWHWS(AC Snowbridの単品種品)を、他の強力粉の一例として1CW(No.1 Canada Western Red Spring)、DNS(Dark Northern Spring)、PH(Prime Hard)を原料とした小麦粉を用いた。
【0039】
1.電子レンジ加熱調理用中華麺の調整
(1)実施例1
小麦粉1000g(原料ホクシン70.0重量%、原料CWHWS(AC Snowbridの単品種品):30重量%)、乾燥卵白10g、食塩20g、粉末かんすい10g、水350gを、減圧下(△0.09MPa)でミキシングし生地を形成後、通常のロール製麺により中華麺を製造した(角刃22番;幅1.40mm×厚さ1.40mm)。これを沸騰水中で50秒茹でた後、冷水で冷却し、水を切って、実施例1に係る電子レンジ加熱調理用中華麺を得た。
【0040】
(2)比較例1
CWHWS(AC Snowbridの単品種品)を原料とした小麦粉の代わりに、1CWを原料とした小麦粉を用いた以外は、実施例1と同様の方法で比較例1に係る電子レンジ加熱調理用中華麺を得た。
【0041】
(3)比較例2
CWHWS(AC Snowbridの単品種品)を原料とした小麦粉の代わりに、DNSを原料とした小麦粉を用いた以外は、実施例1と同様の方法で比較例2に係る電子レンジ加熱調理用中華麺を得た。
【0042】
(4)比較例3
CWHWS(AC Snowbridの単品種品)を原料とした小麦粉の代わりに、PHを原料とした小麦粉を用いた以外は、実施例1と同様の方法で比較例3に係る電子レンジ加熱調理用中華麺を得た。
【0043】
(5)比較例4
CWHWS(AC Snowbridの単品種品)を原料とした小麦粉の代わりに、HRWを原料とした小麦粉を用いた以外は、実施例1と同様の方法で比較例3に係る電子レンジ加熱調理用中華麺を得た。
【0044】
2.電子レンジ加熱調理後の品質検査
電子レンジ加熱用容器に、底から、ゼラチンで固めた中華スープ、耐熱性シート、前記で調整した実施例1および比較例1〜4に係る電子レンジ加熱調理用中華麺130gの順にそれぞれ収納し、蓋をした後、これを5℃で24時間保管した。24時間経過後、電子レンジ加熱用容器ごと、出力1500Wの電子レンジで、100秒の加熱調理を行った。加熱調理後の各中華麺について、専門パネラー6人による硬さ、粘弾性、滑らかさ、5分後の茹で伸び、食味に関する官能検査を、下記の表1〜5に示す評価基準で行った。なお、官能検査の際の品温は、75〜85℃であった。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
【表5】

【0050】
3.結果
官能検査の結果を下記の表6に示す。なお、各電子レンジ加熱調理用中華麺を比較し易くするために、小麦粉組成物中の小麦粉配合比も合わせて記載した。
【0051】
【表6】

【0052】
表6に示す通り、実施例1(本発明に係る電子レンジ加熱調理用中華麺)は、全ての官能試験において良好な結果が得られた。
【0053】
一方、比較例1は、粘弾性は通常の品質の範囲内であったが、滑らかさが弱く、茹で伸びし易いという結果となった。比較例2は、電子レンジ加熱調理直後は硬すぎたが、時間が経過するに従い硬さ・粘弾性は通常の範囲内となった。しかし、比較例1と同様に、比較例2に関しても、滑らかさが弱く、茹で伸びし易いという結果となった。比較例3は、硬さ・粘弾性・滑らかさは通常の範囲内であったが、茹で伸びし易いという結果となった。比較例4は、食味は良好であったが、硬さ、粘弾性、滑らかさが全て劣っており、茹で伸びもし易いという結果になった。
【0054】
以上の結果から、中華麺用小麦粉組成物に春播きのハード系白小麦を原料とした小麦粉を含有させることにより、他の強力粉を含有させた中華麺用小麦粉組成物に比べ、電子レンジ加熱調理用中華麺に用いた場合に、その品質を向上させることが確認できた。
【0055】
<実験2>
実験1で春播きのハード系白小麦の一例として用いた品種:AC Snowbirdは、低アミロースの特徴を有している。そこで、実験2では、AC Snowbirdの特徴である低アミロースの影響を確認するため、低アミロースの小麦原料としてツルピカリを用いた場合との比較試験を行った。
【0056】
1.電子レンジ加熱調理用中華麺の調製
(1)実施例1
前記実験1で調製した実施例1に係る電子レンジ加熱調理用中華麺を、本実験例でも実施例1として用いた。
【0057】
(2)比較例5
CWHWS(品種:AC Snowbrid)を原料とした小麦粉の代わりに、ツルピカリを原料とした小麦粉を用いた以外は実施例1と同様の方法で比較例5に係る電子レンジ加熱調理用中華麺を得た。
【0058】
(3)比較例6
比較例5のホクシンを原料とした小麦粉の一部を、DNSを原料とした小麦粉に代替して、実施例1の小麦粉組成物とタンパク値を同等に調整(ホクシンを原料とする小麦粉40.0重量%、DNSを原料とした小麦粉30.0重量%)した以外は、実施例1と同様の方法で比較例6に係る電子レンジ加熱調理用中華麺を得た。
【0059】
(4)比較例7
比較例6のDNSを原料とした小麦粉の代わりに、PHを原料とした小麦粉を用いた以外は、実施例1と同様の方法で比較例7に係る電子レンジ加熱調理用中華麺を得た。
【0060】
2.電子レンジ加熱調理後の品質検査
実施例1および比較例5、6、7に係る電子レンジ加熱調理用中華麺について、実験例1と同様の方法で、電子レンジ加熱調理後の品質に関する官能検査を行った。
【0061】
3.結果
官能検査の結果を下記の表7に示す。なお、各電子レンジ加熱調理用中華麺を比較し易くするために、小麦粉組成物中の小麦粉配合比も合わせて記載した。
【0062】
【表7】

【0063】
表7に示す通り、実施例1(本発明に係る電子レンジ加熱調理用中華麺)は、全ての官能試験において良好な結果が得られた。
【0064】
一方、比較例5、比較例6および比較例7は、軟らかすぎて硬さ・粘弾性に関する品質が劣り、茹で伸びもし易く、食味も劣る結果となった。
【0065】
以上の結果から、AC Snowbirdの特徴に類似した他の麦種に代替して、AC Snowbirdの特徴を再現しても、その品質を向上させることができないことが分かった。即ち、電子レンジ加熱調理用中華麺の品質を向上させるためには、これに用いる小麦粉組成物に春播きのハード系白小麦を原料とした小麦粉を含有させることが必要であることが確認できた。
【0066】
<実験3:春播きのハード系白小麦を原料とする小麦粉の配合比の検討>
実験3では、本発明に係る中華麺用小麦粉組成物中の春播きのハード系白小麦を原料とした小麦粉の好適な配合比について検討した。なお、本実験例では、春播きのハード系白小麦の一例としてCWHWS(AC Snowbridの単品種品)を用いた。
【0067】
1.電子レンジ加熱調理用中華麺の調整
(1)実施例1
前記実験1で調整した実施例1に係る電子レンジ加熱調理用中華麺を、本実験例でも実施例1として用いた。なお、実験1および実験2において、実施例1は、全ての官能検査において良好な結果を示したため、本実験例では、実施例1を基準対照区とした。
【0068】
(2)実施例2
CWHWS(AC Snowbridの単品種品)を原料とした小麦粉10重量%、ホクシンを原料とした小麦粉90重量%とした以外は、実施例1と同様の方法で実施例2に係る電子レンジ加熱調理用中華麺を得た。
【0069】
(3)実施例3
CWHWS(AC Snowbridの単品種品)を原料とした小麦粉15重量%、ホクシンを原料とした小麦粉85重量%とした以外は、実施例1と同様の方法で実施例3に係る電子レンジ加熱調理用中華麺を得た。
【0070】
(4)実施例4
CWHWS(AC Snowbridの単品種品)を原料とした小麦粉20重量%、ホクシンを原料とした小麦粉80重量%とした以外は、実施例1と同様の方法で実施例4に係る電子レンジ加熱調理用中華麺を得た。
【0071】
(5)実施例5
CWHWS(AC Snowbridの単品種品)を原料とした小麦粉50重量%、ホクシンを原料とした小麦粉50重量%とした以外は、実施例1と同様の方法で実施例5に係る電子レンジ加熱調理用中華麺を得た。
【0072】
(6)実施例6
CWHWS(AC Snowbridの単品種品)を原料とした小麦粉60重量%、ホクシンを原料とした小麦粉40重量%とした以外は、実施例1と同様の方法で実施例6に係る電子レンジ加熱調理用中華麺を得た。
【0073】
(7)実施例7
CWHWS(AC Snowbridの単品種品)を原料とした小麦粉100重量%とした以外は、実施例1と同様の方法で実施例7に係る電子レンジ加熱調理用中華麺を得た。
【0074】
2.電子レンジ加熱調理後の品質検査
実施例1〜7に係る電子レンジ加熱調理用中華麺について、実験例1と同様の方法で、電子レンジ加熱調理を行った後、専門パネラー6人による硬さ、粘弾性、滑らかさ、5分後の茹で伸び、食味に関する官能検査を、下記の表8に示す評価基準で行った。なお、官能検査の際の品温は、75〜85℃であった。
【0075】
【表8】

【0076】
3.結果
官能検査の結果、実施例1〜7に係る電子レンジ加熱調理用中華麺について、硬さ、粘弾性、滑らかさ、5分後の茹で伸び、食味に関する品質は、従来の電子レンジ加熱調理用中華麺と比べると、全て良好であった。また、実施例1を基準対照区とした場合の官能検査の結果を下記の表9に示す。なお、各電子レンジ加熱調理用中華麺を比較し易くするために、小麦粉組成物中の小麦粉配合比も合わせて記載した。
【0077】
【表9】

【0078】
表9に示す通り、実施例4および5に係る加熱調理用中華麺は、総合評価において、対照区である実施例1と同等の結果が得られた。また、実施例3に係る加熱調理用中華麺は、総合評価において、対照区である実施例1よりやや劣るが、品質は良好であるという結果が得られた。
【0079】
以上の結果から、小麦粉組成物に春播きのハード系白小麦を原料とした小麦粉を含有させることにより、これを用いた電子レンジ加熱調理用中華麺の品質が向上することが確認でき、また、その好適な配合比としては、小麦粉組成物100重量部に対して、春播きのハード系白小麦を原料とした小麦粉が15〜50重量部であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明に係る中華麺用小麦粉組成物は、断面の長径が1.2〜1.7mmの比較的細い電子レンジ加熱調理用中華麺に用いた場合であっても、電子レンジ加熱調理時の戻り、および加熱調理後の食感を向上させることができ、更に、加熱調理後の茹で伸びを抑制することが可能である。そのため、コンビニエンスストア、スーパーマーケットなどを始めとした市場において、生麺と同等の品質を備える簡便性の高い電子レンジ加熱対応商品として、利用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子レンジ加熱により調理される中華麺に用いる小麦粉組成物であって、
原料が春播きのハード系白小麦からなる小麦粉を少なくとも含有し、
前記中華麺は、その断面の長径が1.2〜1.7mmである中華麺用小麦粉組成物。
【請求項2】
前記小麦粉を、小麦粉組成物100重量部に対して15〜50重量部含有する請求項1記載の中華麺用小麦粉組成物。
【請求項3】
前記春播きのハード系白小麦は、Canada Western Hard White Spring(CWHWS)である請求項1または2に記載の中華麺用小麦粉組成物。
【請求項4】
原料が春播きのハード系白小麦からなる小麦粉を、少なくとも含有する小麦粉組成物を用い、
断面の長径が1.2〜1.7mmである電子レンジ加熱調理用中華麺。
【請求項5】
前記小麦粉組成物は、小麦粉組成物100重量部に対して前記小麦粉を15〜50重量部含有する請求項4記載の電子レンジ加熱調理用中華麺。
【請求項6】
前記春播きのハード系白小麦は、Canada Western Hard White Spring(CWHWS)である請求項4または5に記載の電子レンジ加熱調理用中華麺。

【公開番号】特開2011−45252(P2011−45252A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193997(P2009−193997)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000187079)昭和産業株式会社 (64)
【Fターム(参考)】