中赤外分光法を用いて生物学的プロセスを測定するための方法及び装置
本発明は、中赤外分光法を用いて生物学的プロセスを測定するための方法及び装置に関する。この方法は、生物学的活動期中の生物学的プロセスの試料中に中赤外信号を指向させる工程、及び中赤外信号から試料スペクトルを検出して試料スペクトルを形成する工程を含む。この方法は、参照媒体を通して参照スペクトルを生成させる工程;及び試料スペクトルと参照スペクトルを組み合わせて調整試料スペクトルを形成する工程を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中赤外分光法を用いて生物学的プロセスを測定するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
分析装置及び/又は方法は、プロセスを測定及び/又はモニターしようとするものである。ガスクロマトグラフィー、質量分析法、高速液体クロマトグラフィー、及び熱量測定法は、プロセスを測定するために用いられる公知の機器及び/又は手順を代表するものである。最近の環境問題及び限定された天然資源のために、生物学的プロセスによって産生される物質のような非化石物質から誘導される物質の開発及び使用が促進されている。しかしながら、分析装置及び方法において上記の方法を用いても、生物学的プロセスにおいて確実にオンラインで操作しながら、生物学的プロセスの反応物質、生成物、及び/又は副生成物を検出するなどの生物学的プロセスを測定するための更なる方法及び装置に関する必要性及び要望が未だ存在する。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、中赤外分光法を用いて生物学的プロセスを測定するための方法及び装置に関する。この方法及び装置によって、生物学的プロセスにおいて確実にオンラインで操作しながら、生物学的プロセスの反応物質、生成物、及び/又は副生成物を検出することができる。
【0004】
第1の態様によれば、本発明は生物学的プロセスを測定する方法を包含する。この方法は、中赤外信号を生物学的活動期中の生物学的プロセスの試料中に指向させる工程、及び中赤外信号から試料スペクトルを検出して試料スペクトルを形成する工程を含む。この方法は、参照媒体を通して参照スペクトルを生成させる工程、及び試料スペクトルと参照スペクトルを組み合わせて調整試料スペクトルを形成する工程を含む。
【0005】
第2の態様によれば、本発明は生物学的プロセスを測定する第2の方法に関する。この第2の方法は、中赤外信号を生物学的プロセスの初期試料中に指向させる工程、及び中赤外信号から試料スペクトルを検出して初期試料スペクトルを形成する工程を含む。第2の方法は、参照媒体を通して初期参照スペクトルを生成させる工程を含む。第2の方法は、初期試料スペクトルと初期参照スペクトルを組み合わせて調整初期試料スペクトルを形成する工程、及び中赤外信号を生物学的プロセスの1以上のその後の試料中に指向させる工程を含む。第2の方法は、中赤外信号から試料スペクトルを検出して1以上のその後の試料スペクトルを形成する工程、及び1以上のその後の試料スペクトルのそれぞれに対応する参照媒体を通して1以上のその後の参照スペクトルを生成させる工程を含む。第2の方法は、1以上のその後の試料スペクトルと対応する1以上のその後の参照スペクトルを組み合わせて1以上の調整されたその後の試料スペクトルを形成する工程、及び1以上の調整されたその後の試料スペクトルのそれぞれから調整初期試料スペクトルを減算して1以上の差スペクトルを形成する工程を含む。
【0006】
第3の態様によれば、本発明は生物学的プロセスを測定するための装置に関する。この装置は、中赤外分光計、及び分光計に光学的に接続されており、生物学的プロセスの少なくとも一部と流体連絡するように適合されているプローブを含む。この装置は、分光計と光学的に接続されている参照媒体を含む。
【0007】
本明細書中に含まれ、その一部を構成する添付の図面は、本発明の複数の態様を示し、明細書と一緒に本発明の特徴、有利性、及び原理を説明するように働く。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、一態様による生物学的プロセスを図示する。
【図2】図2は、一態様による初期参照スペクトルを示す。
【図3】図3は、一態様による初期試料スペクトルを示す。
【図4】図4は、一態様による調整初期試料スペクトルを示す。
【図5】図5は、一態様による調整されたその後の試料スペクトルを示す。
【図6】図6は、一態様による差スペクトルを示す。
【図7】図7は、一態様による方法のフロー図を図示する。
【図8】図8は、一態様による開放位置のプローブハウジングを図示する。
【図9】図9は、閉止位置の図8のプローブハウジングを図示する。
【図10】図10は、一態様による生物学的プロセスを図示する。
【図11】図11は、一態様による糖のスペクトルを示す。
【図12】図12は、一態様によるグルコースのスペクトルを示す。
【図13】図13は、一態様による麦芽エキスのスペクトルを示す。
【図14】図14は、一態様によるエタノールのスペクトルを示す。
【図15】図15は、一態様による実験装置の構成を示す。
【図16】図16は、一態様による発酵スペクトルを示す。
【図17】図17は、一態様による時間依存スペクトルを示す。
【図18】図18は、一態様による生及び減算スペクトルを示す。
【図19】図19は、一態様による成分モデルの正確性のグラフを示す。
【図20】図20は、一態様による比重モデルの正確性のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、中赤外分光法を用いて生物学的プロセスを測定するための方法及び装置に関する。一態様によれば、本発明には、独立した光ファイバー参照ループを用いて分光計の間隙空間の吸光度スペクトルを測定してバックグラウンドスペクトルを生成させることを含ませることができる。この方法には、接種の直後に生物学的プロセスの吸光度スペクトルを測定して初期スペクトルを生成させることを含ませることができる。この方法には、初期スペクトルからバックグラウンドスペクトルを減算して参照スペクトルを生成させることを含ませることができる。その後の時点において独立した光ファイバー参照ループを用いて分光計の間隙空間の吸光度スペクトルを測定して第2のバックグラウンドスペクトルを生成させることを本発明に含ませることができる。また、その後の時点において生物学的プロセスの吸光度スペクトルを測定してその後のスペクトルを生成させることをこの方法に含ませることができる。この方法には、第2のバックグラウンドスペクトルとその後のスペクトルの比をとってプロセススペクトルを生成させることを含ませることができる。この方法には、プロセススペクトルから参照スペクトルを減算して生成物スペクトルを生成させることを含ませることができる。
【0010】
理論には縛られないが、この方法によって、水蒸気、二酸化炭素などのような分光計の正確性及び/又は特異性を低下させる可能性があるスペクトル内の特徴を補正することができる。この方法によって、バックグラウンド及び/又は汚染物質のピークによって隠される特徴を増大させることができる。
【0011】
一態様によれば、本発明は、少なくとも部分的に次の等式:
吸光度(A)=−log(I/I0)=a.b.c
A=−log(Is/Is0)
=−log(Is/Ir.Ir/Is0)
=−log(Is/Ir)−log(Ir/Is0)
=−log(Is/Ir)+log(Is0/Ir)
=Asr−As0r
(ここで、s=試料、及びr=参照ループ)
によって示すことができる。
【0012】
図1は、一態様による生物学的プロセス10を図示する。生物学的プロセス10は反応容器を用いる。生物学的プロセス10は、光ファイバーケーブル14によって分光計16に接続されている中赤外プローブ12を用いて測定することができる。分光計16はまた、光ファイバーケーブル14によって参照媒体18にも接続されている。
【0013】
図2は、初期参照スペクトルを、x軸上の波数(cm−1)とy軸上の吸光度(吸光度単位)のグラフとして示す。初期参照スペクトルは、約800cm−1〜約1,100cm−1の間に水蒸気の特徴を含む。初期参照スペクトルは、約2,300cm−1〜約2,400cm−1の間に二酸化炭素の特徴を含む。
【0014】
図3は、初期試料スペクトルを、x軸上の波数(cm−1)とy軸上の吸光度(吸光度単位)のグラフとして示す。
図4は、調整初期試料スペクトルを、x軸上の波数(cm−1)とy軸上の吸光度(吸光度単位)のグラフとして示す。図4の調整初期試料スペクトルは、図3の初期試料スペクトルと図2の初期参照スペクトルを組み合わせることから導き出した。
【0015】
図5は、調整したその後の試料スペクトルを、x軸上の波数(cm−1)とy軸上の吸光度(吸光度単位)のグラフとして示す。図5の調整したその後の試料スペクトルは、その後の試料スペクトル(図示せず)とその後の参照スペクトル(図示せず)を組み合わせることから導き出した。
【0016】
図6は、差スペクトルを、x軸上の波数(cm−1)とy軸上の吸光度(吸光度単位)のグラフとして示す。図6の差スペクトルは、図5のその後の参照スペクトルから図4の調整初期試料スペクトルを減算することから導き出した。差スペクトルは、600cm−1〜1,800cm−1の間のスペクトルを示す。差スペクトルは、ケモメトリクスモデル作成のために好適である可能性がある。
【0017】
図7は、一態様による生物学的プロセスを測定する方法のフロー図を図示する。ブロックAは、参照媒体を通して初期参照スペクトルを生成させる工程を表す。ブロックBは、中赤外信号を生物学的プロセスの初期試料中に指向させ、中赤外信号から試料スペクトルを検出して初期試料スペクトルを形成する工程を表す。ブロックCは、初期試料スペクトル(ブロックB)と初期参照スペクトル(ブロックA)を組み合わせて調整初期試料スペクトル(ブロックC)を形成する工程を表す。
【0018】
ブロックDは、参照媒体を通して1以上のその後の参照スペクトルを生成させる工程を表す。ブロックEは、中赤外信号を生物学的プロセスの1以上のその後の試料中に指向させ、中赤外信号から試料スペクトルを検出して、1以上のその後の参照スペクトルのそれぞれに対応する1以上のその後の試料スペクトルを形成する工程を表す。ブロックFは、1以上のその後の試料スペクトル(ブロックE)と対応する1以上のその後の参照スペクトル(ブロックD)を組み合わせて1以上の調整されたその後の試料スペクトル(ブロックF)を形成する工程を表す。
【0019】
ブロックGは、1以上の調整されたその後の試料スペクトル(ブロックF)のそれぞれから調整初期試料スペクトル(ブロックC)を減算して1以上の差スペクトル(ブロックG)を形成する工程を表す。
【0020】
図8は、一態様による、生物学的プロセス10に対して開放位置の遮断器具26を有するプローブ12及びプローブハウジング20を図示する。プローブ12は、生物学的プロセス10と接触し、フラッシュ流体28によって洗浄することができるプローブ表面22を有する。プローブハウジング20は、保持リング、排出スロット、充填スロット、プロセススロット、シールリング、及び場合によっては溝を含む。望ましくは、プローブハウジング20は、開放、中間、及び/又は閉止位置の間で移動可能及び/又はスライド可能な環状構造を含む。
【0021】
図9は、一態様による、生物学的プロセス10(図示せず)に対して閉止位置の遮断器具26を有する図8のプローブ12及びプローブハウジング20を図示する。
図10は、一態様による生物学的プロセス10を図示する。プローブ12を、プローブハウジング20を通して生物学的プロセス10中に挿入する。プローブ12は分光計16に接続されている。プローブハウジング20は、フラッシュ流体28のためのフラッシュシステム34と接続されている。フラッシュシステム34は、接続パイプ、配管、バルブ、接続金具、ポンプ、貯留槽などを含む。フラッシュシステム34はコントローラー32を有し、これも分光計16に接続されているコンピューター30に接続されている。
【0022】
一態様によれば、本発明には生物学的プロセスを測定する方法を含ませることができる。この方法には、中赤外信号を、生物学的活動期中の生物学的プロセスの試料中に指向させる工程、及び中赤外信号から試料スペクトルを検出して試料スペクトルを形成する工程を含ませることができる。この方法には、参照媒体を通して参照スペクトルを生成させる工程、及び試料スペクトルと参照スペクトルを組み合わせて調整試料スペクトルを形成する工程を含ませることができる。
【0023】
測定とは、広範には、構成成分のモルパーセントのような量及び/又は分量の確認、検出、計測、測定などを指す。構成成分及び/又は成分は、モル基準、質量基準、体積基準などのような任意の公的な基準で測定することができる。
【0024】
プロセスとは、広範には、例えば結果及び/又は成果を導く工程、動作、及び/又は事象を指す。プロセスは、連続的、不連続的、バッチ式、半連続的、反バッチ式などであってよい。
【0025】
生物とは、広範には、古細菌、細菌、及び/又は真核生物のような生体系、生命プロセス、及び/又は生存有機体を指す。一態様によれば、生物には、酵素、タンパク質などのような生物由来の化合物が包含される。一態様によれば、その寿命が少なくとも約1,000年前に終了したもののような化石物質及び/又は古代物質は生物から排除される。
【0026】
生物学的プロセスには、発酵、細胞培養、好気呼吸、嫌気呼吸、異化反応、同化反応、生体内変化、糖化、液化、加水分解、解重合、重合などのような生体系及び/又は工程から誘導される任意の好適な生体系及び/又は生体物を含ませることができる。
【0027】
指向とは、広範には、指示、到達、投影、照射、照明などを指す。
信号とは、広範には、検出可能な物理量及び/又はインパルスのような情報を伝達及び/又は伝えるために用いる対象物を指す。一態様によれば、信号は適当な周波数を有する安定した光線を含む。他の態様においては、信号には、波長、周波数、振幅、位相などの変化を有する変動信号及び/又はパルス信号を含ませることができる。
【0028】
中赤外とは、広範には、約4,000cm−1〜約400cm−1の間、約3,000cm−1〜約1,000cm−1の間、約1,500cm−1〜約2,500cm−1の間などの波数のような可視光よりも長いがマイクロ波よりも短い波長を有する電磁スペクトルの部分を指す。中赤外光は、約30μm〜約2.5μmの間、約25μm〜約5μmの間などのような任意の好適な波長を有していてよい。中赤外を用いて、対称伸縮、非対称伸縮、はさみ、横揺れ、縦揺れ、ひねりなどのような基準振動及び関連する回転−振動構造を調べることができる。
【0029】
中へとは、広範には、進入、導入、挿入、包含などを指す。
試料とは、広範には、例えば全体の品質及び/又は特徴を有するより大きな全体及び/又は群の代表的な一部及び/又は部分を指す。一態様によれば、試料は、生物学的反応容器の内容物の一部から採取することができる。一態様によれば、試料は、生物学的反応容器中に直接挿入することによって採取することができる。試料は、その場で採取、オンラインで採取、オフラインで採取、外部で採取などしたバルク相から取り出すことができる。
【0030】
間とは、広範には、一定時間又は期間全体を指す。
生物学的活動期とは、広範には、細胞代謝、生体内変化、細胞成長などのような活性な生物学的プロセスの期間中を指す。一態様によれば、生物学的活動期は不活性期及び/又は休眠期を含む。他の態様においては、一態様によれば、生物学的プロセス内で大きな細胞活性を有しない接種の直前及び/又は直後のような不活性期及び/又は休眠期は生物学的活動期から除外することができる。一態様によれば、生物学的活動期は、誘導期、指数増殖期、対数期、定常期、衰退期、死滅期などを含む。
【0031】
検出とは、広範には、現存、存在、事実などを発見、決定、測定することを指す。
スペクトルとは、広範には、例えば連続範囲及び/又は不連続範囲を含んでいてよい一定範囲の周波数及び/又は波長を指す。スペクトルは、それぞれの波長において、どのくらい多くの透過光が存在するかを示して、どのくらい多くのエネルギーが吸収されたかを示すことができる。
【0032】
望ましくは、複数のピーク及び/又は谷を有する試料スペクトルは、生物学的プロセスの元素、化合物、分子、構成成分などに対応する。試料スペクトルは、活動化期中、第1の転換期中、第2の転換期中、第3の転換期中、第4の転換期中、終了期中などのような生物学的プロセス中の任意の好適な時間及び/又は期間に対応し及び/又はこれを表すことができる。質量基準で少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%などのような試料スペクトルに対応する利用できる供給材料の任意の好適な量を変換することができる。
【0033】
試料スペクトルは、少なくとも約1回/秒、少なくとも約1回/分、少なくとも約1回/5分、少なくとも約1回/10分、少なくとも約4回/時、少なくとも約1回/時、少なくとも約1回/4時間、少なくとも約1回/8時間、少なくとも約2回/日、少なくとも約1回/日、少なくとも約1回/2日、少なくとも約1回/5日、少なくとも約1回/週、少なくとも約1回/2週などのような任意の好適な頻度でとることができる。
【0034】
生成とは、広範には、製造、収集、創造、存在させることなどを指す。
参照とは、広範には、情報源のような参照又は参考にするものを指す。
参照媒体とは、広範には、例えば生物学的プロセスの読み値の品質及び/又は内容を向上させるのに有用な任意の好適な物質を指す。参照媒体としては、水、発酵物質、空気、光ファイバーケーブルなどを挙げることができる。参照媒体には、それを通して中赤外信号を指向させることができる媒体の閉鎖試料を含ませることができる。発酵物質は、発酵サイクルの開始点、発酵サイクルの中間点、発酵サイクルの終了点などのようなプロセスにおける任意の好適な時点を示すものであってよい。参照媒体は、空気バックグラウンド、水バックグラウンド、分光計の内部に対応するバックグラウンドなどを与えることができる。理論には縛られないが、光ファイバーループによって、分光計の操作(内部条件)の変化に伴って時間と共に変化する可能性がある特徴を除去することができる。光ファイバーループには、分光計の光源から検出器に接続する単一の光ファイバーケーブルを含ませることができる。一態様によれば、光ファイバーループには他の機器及び/又は媒体は用いない。
【0035】
理論には縛られないが、分光計内の条件の変動によって生物学的プロセスからの信号におけるノイズ及び/又は明確性の欠如が生起する可能性がある。参照スペクトルを用いることによって、試料スペクトル内のノイズを除去及び/又は排除することができる。ノイズは、分光計内の水蒸気含量(湿分)、二酸化炭素含量などの変化によって生起する可能性がある。例えば、発酵システムをモニターする場合は、試料スペクトルは微生物を接種した後の発酵の開始時においてとることができる。分光計は密封することができるが、分光計内の水蒸気含量は生物学的プロセス中に変化する可能性があるので、その後の試料には分光計によって検出されるような水蒸気の変化からのノイズが含まれる可能性がある。参照媒体を用いることによって、スペクトルからのノイズを減少及び/又は除去することができる。
【0036】
組合せとは、広範には、試料スペクトル及び参照スペクトルの、加算、減算、乗算、除算、対数をとること、指数をとること、比をとること、変換(ラプラス、フーリエなど)を完了すること、導関数をとること、積分をとること、及び/又は任意の他の好適な数学的操作を行うことを指す。一態様によれば、参照スペクトルを試料スペクトルから減算して、調整試料スペクトルを形成及び/又は作成することができる。
【0037】
望ましくは、本発明の方法及び装置は、生物学的プロセスに関するリアルタイム及び/又はオンラインのデータ又は情報を与えることができる。プローブは、例えばプロセスの場又は外側においてプロセスと接続することができる。
【0038】
中赤外信号は、試料中に、約1ミクロン〜約10ミクロンの間、約2ミクロン〜約8ミクロンの間、約3ミクロン〜約7ミクロンの間、約4ミクロン〜約6ミクロンの間、少なくとも約2ミクロン、少なくとも約3ミクロンなどのような任意の好適な深さで進入させることができる。試料を通して中赤外信号を通過させることによって、透過信号及び/又は反射信号を形成することができる。
【0039】
参照スペクトル、試料スペクトル、及び/又は調整試料スペクトルは、分子伸縮、分子変角などに対応する値を有することができる。参照スペクトル、試料スペクトル、及び/又は調整試料スペクトルは、炭素単結合(約900cm−1〜約1,500cm−1の間)、炭素二重結合(約1,500cm−1〜約1,800cm−1の間)、炭素三重結合(約2,100cm−1〜約2,300cm−1の間)、炭素−酸素結合、炭素−窒素結合、酸素−水素結合(約3,300cm−1〜約3,500cm−1の間、窒素−水素結合などに対応する値を有することができる。炭素二重結合としては、炭素−炭素結合、炭素−酸素結合、炭素−窒素結合などを挙げることができる。炭素三重結合としては、炭素−炭素結合、炭素−窒素結合などを挙げることができる。
【0040】
参照スペクトル、試料スペクトル、及び/又は調整試料スペクトルは、アセトン、アセトアルデヒド、エタノール、ブタノール、ペンタノール、イソプレノール、イソプレン、ブチルアルデヒド、酢酸、乳酸、ピルビン酸、グリセロール、ペントース、ヘキソース、脂肪アルコール、脂肪酸、アシルグリセリド(モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドを含む)、二酸化炭素、一酸化炭素などのような任意の好適な物質、元素、化合物、及び/又は分子に対応する値を有することができる。
【0041】
一態様によれば、生物学的プロセスは、再生可能な物質の産生及び/又は製造を含む。再生可能な物質とは、広範には、自然の生態サイクル及び/又は資源によって交換することができる源及び/又はプロセスから少なくとも部分的に誘導される物質及び/又は物を指す。再生可能な物質としては、広範には、化学物質、化学中間体、溶媒、モノマー、オリゴマー、ポリマー、バイオ燃料、バイオ燃料中間体、バイオガソリン、バイオガソリンブレンド材料、バイオディーゼル、無公害ディーゼル、再生可能ディーゼル、バイオディーゼルブレンド材料、バイオ蒸留物などを挙げることができる。望ましくは、しかしながら必須ではないが、再生可能な物質は、植物、藻類、バクテリア、菌類などのような生体から誘導することができる。
【0042】
バイオ燃料とは、広範には、環境を破壊しないで製造することができ、及び/又は大気に対する正味の炭素放出が減少しているか又は無いもののような再生可能な源から誘導される燃料又は燃焼源として用いるのに好適な成分又は流れを指す。一態様によれば、例えば地下から採鉱又は採掘される物質は、再生可能な物質から排除される可能性がある。望ましくは、再生可能な資源としては、単細胞有機体、多細胞有機体、植物、菌類、バクテリア、藻類、栽培作物、非栽培作物、木材などを挙げることができる。バイオ燃料は、例えば、陸上車、海上船舶、航空機などにおいて用いるための輸送用燃料として用いるのに好適である可能性がある。バイオ燃料は、水蒸気の発生及び/又は発電のような動力生成において用いるのに好適である可能性がある。
【0043】
バイオガソリンとは、広範には、メタン、水素、シンガス(合成)、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジメチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、エチル−tert−ブチルエーテル、ヘキサノール、脂肪族化合物(直鎖、分岐、及び/又は環式)、ヘプタン、イソオクタン、シクロペンタン、芳香族化合物、エチルベンゼンなどのような、直接使用するか及び/又は再生可能な源から誘導されるガソリンプール及び/又はオクタン供給物中にブレンドするのに好適な成分又は流れを指す。ブタノールとは、広範には、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、他の異性体などの生成物及び誘導体を指す。バイオガソリンは、自動車用ガソリン内燃エンジンのような火花点火エンジンにおいて用いることができる。一態様によれば、バイオガソリン及び/又はバイオガソリンブレンドは、産業において認められている燃料の標準規格を満足するか又はこれに合致する。
【0044】
バイオディーゼルとは、広範には、脂肪酸エステル、トリグリセリド、脂質、脂肪アルコール、アルカン、ナフサ、蒸留範囲の物質、パラフィン系物質、芳香族物質、脂肪族化合物(直鎖、分岐、及び/又は環式)などのような、直接使用するか及び/又は再生可能な源から誘導されるディーゼルプール及び/又はセタン供給物中にブレンドするのに好適な成分又は流れを指す。バイオディーゼルは、自動車用ディーゼル内燃エンジンのような圧縮エンジンにおいて用いることができる。他の態様においては、バイオディーゼルはまた、ガスタービン、加熱器、ボイラーなどにおいて用いることもできる。一態様によれば、バイオディーゼル及び/又はバイオディーゼルブレンドは、産業において認められている燃料の標準規格を満足するか又はこれに合致する。
【0045】
バイオ蒸留物とは、広範には、直接使用するか、又は再生可能な源から誘導される航空機燃料(ジェット)、潤滑油ベースストック、灯油燃料などの中にブレンドするのに好適で、約100℃〜約700℃の間、約150℃〜約350℃の間などの沸点範囲を有する成分又は流れを指す。
【0046】
一態様によれば、生物学的プロセスはアルコールへのバイオマス発酵を含む。バイオマスとは、広範には、少なくとも部分的にリグノセルロース源のような生体物質から誘導される植物及び/又は動物材料及び/又は物質を指す。
【0047】
リグノセルロース系とは、広範には、植物性物質のようなセルロース、ヘミセルロース、リグニンなどを含むことを指す。リグノセルロース材料としては、サトウキビ、サトウキビ滓、エネルギー用サトウキビ、エネルギー用サトウキビ滓、コメ、稲わら、トウモロコシ、トウモロコシ藁、小麦、小麦藁、メイズ、メイズ藁、モロコシ、モロコシ藁、サトウモロコシ、サトウモロコシ藁、綿、綿くず、サトウダイコン、サトウダイコンパルプ、大豆、菜種、ジャトロファ、スイッチグラス、ミスカンサス、他の芝類、木材、軟材、硬材、樹皮、木くず、おがくず、紙、紙くず、農業廃棄物、肥料、肥やし、下水、都市固形廃棄物、任意の他の好適なバイオマス材料などのような任意の好適な物質を挙げることができる。
【0048】
一態様によれば、中赤外信号を指向させる工程は、生物学的プロセスの少なくとも一部と流体連絡している内表面からの中赤外信号の少なくとも約1回の反射及び/又はバウンスを有する減衰全反射を用いる。反射及び/又はバウンスの数は、少なくとも約1、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約3.4、少なくとも約4、少なくとも約6、少なくとも約8、少なくとも約10、少なくとも約12などのような任意の好適な数であってよい。
【0049】
中赤外信号から試料スペクトルを検出して試料スペクトルを形成する工程には、生物学的プロセスの試料から反射及び/又は伝達される中赤外信号を検出することを含ませることができる。
【0050】
一態様によれば、この方法にはまた、生物学的活動期の前の生物学的プロセスの初期試料中に中赤外信号を指向させる工程、及び中赤外信号から試料スペクトルを検出して生物学的活動期の前の初期試料スペクトルを形成する工程を含ませることもできる。この方法には、生物学的活動期の前の参照媒体を通して初期参照スペクトルを生成させる工程、及び初期試料スペクトルと初期参照スペクトルを組み合わせて調整初期試料スペクトルを形成する工程を含ませることができる。この方法にはまた、調整初期試料スペクトルを調整試料スペクトルから減算するか、及び/又は調整試料スペクトルと組み合わせて差スペクトルを形成する工程を含ませることもできる。
【0051】
初期とは、広範には、初期段階のような開始時に関することを指す。
生物学的活動期の前とは、広範には、生物学的プロセスに微生物を接種又は添加する前及び/又はその直後、例えば約10分未満、約5分未満、約2分未満などのような大きな細胞活性を有しない期間を指す。生物学的活動期の前には、糖又は水のような供給材料及び液体を生物学的プロセス容器中に充填した後の一定時間を含ませることができる。
【0052】
減算及び/又は組み合わせて差スペクトルを形成することには、調整試料スペクトルの形成に関して上記に記載した任意の好適な数学的操作及び/又は手法を含ませることができる。
【0053】
差スペクトルは、例えば物質の濃度変化を示すために、生物学的プロセスの開始時からその後の時点への生物学的プロセスの透過率の変化を示す。差スペクトルは、生物学的プロセス中に形成される化合物及び/又は生成物に関して有用である可能性がある。他の期間(前及び/又は後)に対応する更なる差スペクトルは本発明の範囲内である。
【0054】
場合によっては及び/又は或いは、生物学的プロセスによって消費される化合物(供給材料)に関しては、試料の調整スペクトル又はその一部を初期調整試料スペクトルから減算することができる。一態様によれば、差スペクトルの絶対値によって、差スペクトルに基づいて化合物からの濃度変化を示すことができる。望ましくは、スペクトルによって、濃度の増加(通常は生成物及び/又は副生成物)及び/又は濃度の減少(通常は反応物質)を示すことができる。
【0055】
一態様によれば、この方法には更に、1以上のスペクトルをディスプレイスクリーン(モニター)上に表示する;1以上のスペクトルを印刷基材(紙)上に印刷する;1以上のスペクトルを記録媒体(磁気ディスク、フラッシュメモリー、レーザー読み取り可能なディスク)の上に記録する;などの工程を含ませることができる。このプロセスには、任意の好適な有形の結果及び/又は成果を含ませることができる。
【0056】
生及び/又は未加工のスペクトルデータは、ケモメトリクスモデルを適用することによって有用なデータに変換することができる。ケモメトリクスとは、広範には、例えば数学的及び/又は統計的方法又は手法を適用及び/又は使用することによって、化学プロセスについて得た測定値を系の状態に関連づける科学的手法を指す。ケモメトリクスを用いて、発酵ブロス(系の状態)のような生物学的プロセスにおいて存在する成分の既知濃度と、生物学的プロセスから集められる中赤外スペクトル(プロセスに関して得られる測定値)との間の関係(較正モデル)を構築することができる。ケモメトリクスモデルは、データ中の変動及び/又は相関に基づくことができる。
【0057】
スペクトルデータは、元々のデータセット内の観察される変動への異なる寄与に基づいて新しいデータのセットに変換することができる。新しいデータセットは、例えば主成分のファクターのようなそれぞれの波数における吸光度の線形結合から得られる直交成分から構成することができる。次にモデル内のそれぞれの成分に関する複数のファクターを制限して、プロセスに関する情報を最大にするファクターを予測モデル内に含ませるようにすることができる。
【0058】
一態様によれば、本発明には生物学的プロセスを測定する方法を含ませることができる。この方法には、生物学的プロセスの初期試料中に中赤外信号を指向させる工程、及び中赤外信号から試料スペクトルを検出して初期試料スペクトルを形成する工程を含ませることができる。この方法には、参照媒体を通して初期参照スペクトルを生成させる工程、及び初期試料スペクトルと初期参照スペクトルを組み合わせて調整初期試料スペクトルを形成する工程を含ませることができる。この方法には、生物学的プロセスの1以上のその後の試料の中に中赤外信号を指向させる工程、及び中赤外信号から試料スペクトルを検出して1以上のその後の試料スペクトルを形成する工程を含ませることができる。この方法には、1以上のその後の試料スペクトルのそれぞれに対応する参照媒体を通して1以上のその後の参照スペクトルを生成させる工程、及び1以上のその後の試料スペクトルと対応する1以上のその後の参照スペクトルを組み合わせて1以上の調整されたその後の試料スペクトルを形成する工程を含ませることができる。この方法には、1以上の調整されたその後の試料スペクトルのそれぞれから調整初期試料スペクトルを減算して1以上の差スペクトルを形成する工程を含ませることができる。
【0059】
一態様によれば、本明細書で開示する任意の方法の工程は、本明細書で明確に示す数、頻度、及び順番で実施することができる。他の態様においては、方法の複数の工程を、並べ替え、繰り返し、省略などすることができる。
【0060】
その後とは、広範には、後でのように、時間、順番、場所などの次のものを指す。その後には、約1回/分、約1回/10分、約1回/時間、約1回/2時間、約1回/4時間、約1回/8時間、約1回/日などのような任意の好適な期間及び/又は頻度を含ませることができる。
【0061】
一態様によれば、中赤外信号は、約4,000cm−1〜約400cm−1の間の波数を有していてよく、参照媒体としては光ファイバーケーブルを挙げることができる。生物学的プロセスとしては、ペントース及び/又はヘキソースからエタノールへのようなアルコールへのバッチバイオマス発酵を挙げることができる。
【0062】
この方法にはまた、例えばバッチプロセスにおける一定時間中の成分の濃度変化を測定するために、1以上の差スペクトルを組み合わせて1以上の時間依存スペクトルを生成させる工程を含ませることもできる。
【0063】
一態様によれば、本発明には生物学的プロセスを測定するための装置を含ませることができる。この装置及び/又は機器には、中赤外分光計、及び分光計に光学的に接続されているプローブを含ませることができる。プローブは、生物学的プロセスの少なくとも一部と流体連絡するように適合させることができる。この装置には、例えば別のチャンネル及び/又は光源の上に、分光計と光学的に接続されている参照媒体を含ませることができる。
【0064】
方法の態様の任意の部分に関連して上記に記載した任意及び/又は全ての特質及び/又は特徴を、本発明の装置の態様に適用することができる。
分光計とは、広範には、発光源、及び発光源からの分散度及び/又は透過率を測定するための検出器を有する分析装置のような、光及び/又はスペクトルの波長を測定するために用いる装置を指す。望ましくは、分光計は周囲環境から密閉及び/又は隔離することができる。一態様によれば、分光計は、約4,000cm−1〜約400cm−1の間の波数を有する信号を生成させる。分光計には、例えば好適なヒートシンクによる好適な温度への冷却及び/又は冷凍を含ませることができる。運転温度としては、約100℃未満、ほぼ雰囲気条件、約0℃未満、約−100℃未満、約−190℃未満などを挙げることができる。
【0065】
プローブとは、広範には、プロセスの少なくとも一部の中に挿入するのに好適な試験機器を指す。プローブには、ダイヤモンド、サファイアなどのような結晶を含ませることができる。望ましくは、しかしながら必須ではないが、プローブは減衰全反射を用いることができる。
【0066】
光学接続には、光ファイバーケーブル、鏡面管、可視経路(照準線)などのような任意の好適な導管及び/又はケーブルを含ませることができる。一態様によれば、この装置においては光導波管の使用は排除される。
【0067】
流体連絡とは、広範には、例えば直接挿入、配管接続、パイプ接続などによってプロセスの少なくとも流体及び/又は液体部分を接触させることを指す。
方法に関連して上記で議論したように、装置の参照媒体としては、水、空気、発酵物質、光ファイバーケーブルなどを挙げることができる。
【0068】
同様に方法に関連して上記で議論したように、プローブは、生物学的プロセスの少なくとも一部と流体連絡している内表面からの中赤外信号の少なくとも1回の反射を有することができる。
【0069】
この装置には、コンピューターのような、分光計に接続されている任意の他の好適な装置を含ませることができる。コンピューターには、プロセッサー、記憶装置、表示装置、印刷装置、ソフトウエアプログラムなどのような任意の好適な部品を含ませることができる。
【0070】
一態様によれば、この装置には、プローブ表面の少なくとも一部を横切るか及び/又はこれの上にフラッシュ流体を流すか及び/又は通過させるフラッシュ機構を有するように適合されているプローブハウジングを含ませることができる。理論には縛られないが、生物学的プロセス中の固体及び/又は他の物質は、プローブの表面を汚染するか及び/又はそれに付着して信号品質を低下させる可能性がある。プローブハウジングは、炭素鋼、ステンレス鋼、ニッケル合金、他の合金、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、フルオロポリマー、工業用樹脂、他のポリマー、複合材料などのような任意の好適な材料で製造及び/又は構成することができる。
【0071】
フラッシュ流体としては、水、発酵ブロス、エタノール、メタノール、プロパノール、糖溶液、酢酸、空気、窒素、アルゴン、二酸化炭素、他の溶媒、他の希釈剤などのような任意の好適な物質を挙げることができる。フラッシュ流体は、遠心ポンプ、容積型ポンプなどのような動力機器を用いることができる。フラッシュ流体は、貯留槽、タンク、ビン、フィルターなどのような1以上の貯蔵容器を用いることができる。フラッシュ流体及び/又は洗浄溶液は、前進流及び/又は逆流の両方を与える歯車ポンプを用いることができる。
【0072】
望ましくは、しかしながら必須ではないが、プローブハウジングは、例えば洗浄モード及び/又は運転を与えるために、生物学的プロセスからのプローブの移動可能な遮断を与えることができる。プローブハウジングは、湿潤したプローブ部品のその場での滅菌を与えることができる。外側のプローブハウジングは、水蒸気処理又は他の好適な手順によって洗浄することができる。
【0073】
一態様によれば、プローブハウジングには、例えば概して環状の同心構造を有する、プローブ表面の少なくとも一部を生物学的プロセスに曝露する第1の位置と、プローブ表面の少なくとも一部をフラッシュ流体に曝露する第2の位置の間で移動可能な遮断装置を含ませることができる。遮断装置には、例えば歯車ポンプを前進及び/又は逆進に電気的に切り替えることにより、水圧によって開放位置と閉止位置との間で移動するフルオロポリマープローブシールを含ませることができる。
【0074】
プローブは、約1回/時、約1回/日、約1回/2日、約1回/週などのような任意の好適な頻度でフラッシングすることができる。
【実施例】
【0075】
実施例1:
エタノール(99.8体積%)、D(+)グルコース、糖(サッカロース)、麦芽エキス、及び醸造用イーストの標準試料が、生物学的プロセスに関する中赤外(MIR)法の能力及び感度を示すために用いた成分であった。
【0076】
図11は、一態様による糖標準試料に関するスペクトルを、x軸上の波数(cm−1)とy軸上の吸光度(吸光度単位)によって示す。図12は、一態様によるグルコース標準試料に関するスペクトルを、x軸上の波数(cm−1)とy軸上の吸光度(吸光度単位)によって示す。図13は、一態様による麦芽エキス標準試料に関するスペクトルを、x軸上の波数(cm−1)とy軸上の吸光度(吸光度単位)によって示す。図14は、一態様によるエタノール標準試料に関するスペクトルを、x軸上の波数(cm−1)とy軸上の吸光度(吸光度単位)によって示す。
【0077】
滅菌ビーカー内において80gの麦芽エキスを500mLの沸騰水で溶解することによって、発酵プロセスを行った。120gの糖(グルコース)をビーカーに加えて水溶液を形成した。次に、水溶液を反応容器中に移し、プロセスの間中にわたって連続撹拌及び温度制御を行った。更に500mLの水を水溶液に加えた。0.5gのイーストを温水中に約15分間溶解させた後、水溶液に加えた。
【0078】
Billerica, Massachusetts,米国のBruker Optics Inc.からのBruker IFS/66 FT-IR分光計を用いて分光データを得た。West Lothian,スコットランドのFibre Photonics Ltd.又はBruker Optonics Inc.からの2重バウンスダイヤモンド減衰全反射(ATR)プローブを用いて、発酵プロセスのMIRスペクトルを35℃において1時間毎に記録した。多結晶質赤外(PIR)光ファイバーケーブルによって、ATRプローブを分光計に接続した。プローブは、8cm−1の解像度において2,500cm−1〜600cm−1の範囲、及びスペクトルあたり128の累積スキャンを有していた。それぞれの実験の開始時において初期バックグラウンドスペクトルをとった。分光計に、KBr(臭化カリウム)ビームスプリッター、及びChelmsford, Massachusetts,米国のBrooks Automation, Inc.からのCryotigerクーラーを取り付けた。クーラーを検出器に接続した。Cryotigerクーラーは、別の液体窒素冷却システムの必要性を排除した低温冷却器システムであった。
【0079】
次に、75時間のグルコース発酵中にスペクトルを記録するためにATRプローブを反応容器中に挿入した。図15は、実施例1において用いた実験装置構成を示す。実験装置構成には、反応容器内の生物学的プロセス10が含まれる。プローブ12を生物学的プロセス10中に挿入し、分光計16及び検出器40並びにコンピューター30に接続した。実験装置構成には、スターラー36及び温度制御機器38が含まれる。
【0080】
図16は、発酵からのスペクトルを、x軸上の波数(cm−1)とy軸上の吸光度(吸光度単位)によって示す。時間経過と共に、エタノールが増加するのに対応してピークが増大した。重なっているピークは一変量較正するのが困難である可能性があるので、多変数部分最小二乗法を適用した。ケモメトリクスを用いて、主成分分析を用いることによってスペクトルを分析した。主成分分析のプロットは、グルコース及び麦芽エキスの消費と合致する下向きの傾向を示した。このプロットはまた、約55時間後に大きな変化がなかったことも示し、これは発酵イースト活性が終了したことを示す。
【0081】
第1の誘導予備処理及び第2の誘導予備処理に基づくグルコース、麦芽エキス、及びエタノールの混合物による20種の較正標準試料を用いて、部分最小二乗モデルを形成した。相関の結果は、0.998〜0.905の間の、決定係数R2に関する測定値/予測値を示した。
【0082】
実施例1の結果は、中赤外分光法を多変数ケモメトリクス較正と組み合わせると、発酵プロセスのオンラインモニタリングを与えることができることを示した。第1及び第2の誘導スペクトルは、主成分分析スコア及びローディングプロットと組み合わせて、グルコースのエタノールへの生体内変化に関する説明的な情報を与えた。部分最小二乗モデルによって、3種類の成分又は分析対象物(グルコース、麦芽エキス、及びエタノール)に関する良好な評価が与えられ、これは、プロセスモニタリングのためにバイオプロセス成分の濃度を正確に予測することができることを示す。
【0083】
Cyrotiger検出器によって、液体窒素冷却を有する検出器の必要なしに連続的にスペクトルを獲得することが容易になった。ダイヤモンドATRプローブは、発酵実験中に汚染されなかった。
【0084】
実施例2:
10Lのスケールで4つの小麦粉の発酵を行い、中赤外分光法を用いてモニターした。分析のために幾つかの試料を発酵反応器から採取した。グルコース、グリセロール、及びエタノールに関するケモメトリクスモデルを形成した。また、その場での滅菌も試験した。付属装置を取り付けたBottmingen,スイスのINFOS HTからのTechfos-Sステンレス鋼バイオリアクターを用いた。ATRプローブを反応器の予備の底部口内に配置した。反応器の底部上のサンプリング位置から試料を回収した。
【0085】
4つの発酵を4週間にわたって行った。小麦粉及び水の混合物を、83℃において液化酵素によって、次に60℃において糖化酵素によって処理することによって、発酵ブロスを調製した。ブロスを発酵容器中に無菌状態で移し、その後、再水和イースト及び15体積%の消泡剤溶液10mLを接種した。
【0086】
実験Aにおいては、24℃の温度、媒体1Lあたり1.74gのイースト接種割合、及び350rpmの撹拌速度において、純粋な精白小麦粉を用いた。実験Bにおいては、24℃の温度、媒体1Lあたり1.74gのイースト接種割合、及び350rpmの撹拌速度において、純粋な精白小麦粉を用いた。実験Cにおいては、27℃の温度、媒体1Lあたり1.74gのイースト接種割合、及び350rpmの撹拌速度において、純粋な精白小麦粉を用いた。実験Dにおいては、27℃の温度、媒体1Lあたり3.01gのイースト接種割合、及び500rpmの撹拌速度において、純粋な精白小麦粉を用いた。
【0087】
実施例1において用いた2バウンスATRプローブを用いて発酵系をモニターした。試料の獲得には、独立光ファイバー参照ループからの参照スペクトル、発酵中の試料スペクトルの測定、及び参照スペクトルと試料スペクトルとの比をとって、発酵中のそれぞれの期間に関する調整試料スペクトルを形成することを含んでいた。サンプリングは、4つの発酵のそれぞれあたり合計で約2,000の生スペクトルに関して各5分間繰り返した。生スペクトルは、初期調整試料スペクトル(接種の直後)を調整試料スペクトルから減算して、時間と共に変化しない特徴を除去することによって形成した。
【0088】
発酵あたり約20の試料に関する作業期間中においておよそ2時間毎に、発酵容器から発酵ブロス試料を取り出した。幾つかの試料の一部を用いて、既知量のグルコース、グリセロール、及び/又はエタノールを加えて調整試料を形成することによってケモメトリクスモデルを形成した。第2の指示プローブを用いて、調整試料に関するスペクトルを生成させた。調整試料を遠心分離及び濾過し、その後、得られた上澄み液について高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた。
【0089】
HPLC分析は、針の汚染、屈折率の制限、及び他の糖類の共溶出の幾つかの問題を有していた。HPLCの問題は、HPLCデータと中赤外データとの間の誤差を人為的に増加させる可能性がある。
【0090】
較正試料の組には、反応器内から直接の59の試料、及び調整試料からの61の試料が含まれていた。確認の組のために更に24の試料を保持した。
主成分分析(PCA)を用いてデータにケモメトリクスモデルを適用した。図17は、x軸上の時間(時)、及びy軸(左側の目盛り)上のグルコース濃度A(g/L)、y軸(右側の目盛り)上のエタノール濃度B(g/L)による発酵プロットを示す。データ点はHPLCデータを表し、線として示される中赤外スペクトルデータに関する良好な相関を示している。図18は、生スペクトルデータAに対して減算スペクトルデータB(より少ないノイズ)を用いることの利益を示す。
【0091】
図19は、x軸上のHPLCグリセロール濃度(g/L)、及びy軸上の予測グリセロール濃度(g/L)による、グリセロールに関する成分モデルの正確性を示す。予測は、5.71g/Lの減算スペクトルに関する予測の二乗平均平方根誤差を有していた。成分の濃度が適度に一定であった期間中の成分の予測濃度の標準偏差をとることによって、モデルの正確性を調べた。標準偏差は0.11g/L〜0.85g/Lの範囲であった。
【0092】
また、中赤外スペクトルに基づいて発酵混合物の比重又は密度を予測するようにモデルを形成した。比重モデルの較正のために40の試料を用い、確認のために20の試料を用いた。図20は、x軸上の測定比重(g/mL)、及びy軸上の予測比重(g/mL)のプロットを示す。二乗平均平方根誤差予測は僅か0.0014g/Lであった。
【0093】
3.4バウンスのATRプローブを用いて試料を再び試験し、上記で議論した2バウンスプローブの結果と同様の結果を得た。
水を反応器内で121℃に15分間昇温することによってプローブについて水蒸気滅菌を行い、その後、雰囲気温度に冷却した。滅菌の前には、プローブは5,949カウントの水中の光スループットを有しており、滅菌後においては水中で6,030カウントであった。プローブは感度の明らかな損失なしに滅菌された。プローブの滅菌は成功であった。
【0094】
本発明を生物学的プロセスに関連してここに記載したが、当業者であれば、本発明はかかる生物学的用途に限定されないことを容易に認識することができる。本明細書中に開示されている方法及び装置に関するより広く変化する用途及び/又は使用は、本発明の範囲内である。
【0095】
ここで用いる「有する」、「含む」、及び「包含する」という用語は、開かれた包含的な表現である。また、「から構成される」という用語は、閉じられた排他的な表現である。特許請求の範囲又は明細書における任意の用語の解釈においては不明確さが存在するが、明細書作成者の意図は開かれた包含的な表現である。
【0096】
ここで用いる「など」という用語は、リスト中の任意及び全ての個々の事項及び/又は構成要素並びにこれらの組合せに関するサポート、並びに個々の事項及び/又は構成要素並びにこれらの組合せの均等物に関するサポートを与える。
【0097】
方法又はプロセス中の工程に関する順番、数、順序、及び/又は繰り返しの限界に関しては、他に明確に与えられていない限りにおいて、明細書作成者は、本発明の範囲に対して、工程に関する順番、数、順序、及び/又は繰り返しの限界が含まれることは意図しない。
【0098】
範囲に関し、範囲は、上界及び/又は下界を伴わない範囲を含む上限値及び下限値の間に含まれる全ての可能な範囲に関するサポートを与えるように、上限値と下限値の間の全ての点を包含するように解釈すべきである。
【0099】
本発明の範囲又は精神から逸脱することなく開示されている構造及び方法において種々の修正及び変更を行うことができることは当業者に明らかであろう。特に、任意の1つの態様の記載は、2以上の構成要素及び/又は限定の組合せ及び/又は変化を与える他の態様の記載と自由に組み合わせることができる。本発明の他の態様は、ここに開示する発明の詳細及び実施を考察することによって当業者に明らかとなるであろう。明細書及び実施例は例示のみのものと考えられ、発明の真の範囲及び精神は特許請求の範囲によって示されると意図される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、中赤外分光法を用いて生物学的プロセスを測定するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
分析装置及び/又は方法は、プロセスを測定及び/又はモニターしようとするものである。ガスクロマトグラフィー、質量分析法、高速液体クロマトグラフィー、及び熱量測定法は、プロセスを測定するために用いられる公知の機器及び/又は手順を代表するものである。最近の環境問題及び限定された天然資源のために、生物学的プロセスによって産生される物質のような非化石物質から誘導される物質の開発及び使用が促進されている。しかしながら、分析装置及び方法において上記の方法を用いても、生物学的プロセスにおいて確実にオンラインで操作しながら、生物学的プロセスの反応物質、生成物、及び/又は副生成物を検出するなどの生物学的プロセスを測定するための更なる方法及び装置に関する必要性及び要望が未だ存在する。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、中赤外分光法を用いて生物学的プロセスを測定するための方法及び装置に関する。この方法及び装置によって、生物学的プロセスにおいて確実にオンラインで操作しながら、生物学的プロセスの反応物質、生成物、及び/又は副生成物を検出することができる。
【0004】
第1の態様によれば、本発明は生物学的プロセスを測定する方法を包含する。この方法は、中赤外信号を生物学的活動期中の生物学的プロセスの試料中に指向させる工程、及び中赤外信号から試料スペクトルを検出して試料スペクトルを形成する工程を含む。この方法は、参照媒体を通して参照スペクトルを生成させる工程、及び試料スペクトルと参照スペクトルを組み合わせて調整試料スペクトルを形成する工程を含む。
【0005】
第2の態様によれば、本発明は生物学的プロセスを測定する第2の方法に関する。この第2の方法は、中赤外信号を生物学的プロセスの初期試料中に指向させる工程、及び中赤外信号から試料スペクトルを検出して初期試料スペクトルを形成する工程を含む。第2の方法は、参照媒体を通して初期参照スペクトルを生成させる工程を含む。第2の方法は、初期試料スペクトルと初期参照スペクトルを組み合わせて調整初期試料スペクトルを形成する工程、及び中赤外信号を生物学的プロセスの1以上のその後の試料中に指向させる工程を含む。第2の方法は、中赤外信号から試料スペクトルを検出して1以上のその後の試料スペクトルを形成する工程、及び1以上のその後の試料スペクトルのそれぞれに対応する参照媒体を通して1以上のその後の参照スペクトルを生成させる工程を含む。第2の方法は、1以上のその後の試料スペクトルと対応する1以上のその後の参照スペクトルを組み合わせて1以上の調整されたその後の試料スペクトルを形成する工程、及び1以上の調整されたその後の試料スペクトルのそれぞれから調整初期試料スペクトルを減算して1以上の差スペクトルを形成する工程を含む。
【0006】
第3の態様によれば、本発明は生物学的プロセスを測定するための装置に関する。この装置は、中赤外分光計、及び分光計に光学的に接続されており、生物学的プロセスの少なくとも一部と流体連絡するように適合されているプローブを含む。この装置は、分光計と光学的に接続されている参照媒体を含む。
【0007】
本明細書中に含まれ、その一部を構成する添付の図面は、本発明の複数の態様を示し、明細書と一緒に本発明の特徴、有利性、及び原理を説明するように働く。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、一態様による生物学的プロセスを図示する。
【図2】図2は、一態様による初期参照スペクトルを示す。
【図3】図3は、一態様による初期試料スペクトルを示す。
【図4】図4は、一態様による調整初期試料スペクトルを示す。
【図5】図5は、一態様による調整されたその後の試料スペクトルを示す。
【図6】図6は、一態様による差スペクトルを示す。
【図7】図7は、一態様による方法のフロー図を図示する。
【図8】図8は、一態様による開放位置のプローブハウジングを図示する。
【図9】図9は、閉止位置の図8のプローブハウジングを図示する。
【図10】図10は、一態様による生物学的プロセスを図示する。
【図11】図11は、一態様による糖のスペクトルを示す。
【図12】図12は、一態様によるグルコースのスペクトルを示す。
【図13】図13は、一態様による麦芽エキスのスペクトルを示す。
【図14】図14は、一態様によるエタノールのスペクトルを示す。
【図15】図15は、一態様による実験装置の構成を示す。
【図16】図16は、一態様による発酵スペクトルを示す。
【図17】図17は、一態様による時間依存スペクトルを示す。
【図18】図18は、一態様による生及び減算スペクトルを示す。
【図19】図19は、一態様による成分モデルの正確性のグラフを示す。
【図20】図20は、一態様による比重モデルの正確性のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、中赤外分光法を用いて生物学的プロセスを測定するための方法及び装置に関する。一態様によれば、本発明には、独立した光ファイバー参照ループを用いて分光計の間隙空間の吸光度スペクトルを測定してバックグラウンドスペクトルを生成させることを含ませることができる。この方法には、接種の直後に生物学的プロセスの吸光度スペクトルを測定して初期スペクトルを生成させることを含ませることができる。この方法には、初期スペクトルからバックグラウンドスペクトルを減算して参照スペクトルを生成させることを含ませることができる。その後の時点において独立した光ファイバー参照ループを用いて分光計の間隙空間の吸光度スペクトルを測定して第2のバックグラウンドスペクトルを生成させることを本発明に含ませることができる。また、その後の時点において生物学的プロセスの吸光度スペクトルを測定してその後のスペクトルを生成させることをこの方法に含ませることができる。この方法には、第2のバックグラウンドスペクトルとその後のスペクトルの比をとってプロセススペクトルを生成させることを含ませることができる。この方法には、プロセススペクトルから参照スペクトルを減算して生成物スペクトルを生成させることを含ませることができる。
【0010】
理論には縛られないが、この方法によって、水蒸気、二酸化炭素などのような分光計の正確性及び/又は特異性を低下させる可能性があるスペクトル内の特徴を補正することができる。この方法によって、バックグラウンド及び/又は汚染物質のピークによって隠される特徴を増大させることができる。
【0011】
一態様によれば、本発明は、少なくとも部分的に次の等式:
吸光度(A)=−log(I/I0)=a.b.c
A=−log(Is/Is0)
=−log(Is/Ir.Ir/Is0)
=−log(Is/Ir)−log(Ir/Is0)
=−log(Is/Ir)+log(Is0/Ir)
=Asr−As0r
(ここで、s=試料、及びr=参照ループ)
によって示すことができる。
【0012】
図1は、一態様による生物学的プロセス10を図示する。生物学的プロセス10は反応容器を用いる。生物学的プロセス10は、光ファイバーケーブル14によって分光計16に接続されている中赤外プローブ12を用いて測定することができる。分光計16はまた、光ファイバーケーブル14によって参照媒体18にも接続されている。
【0013】
図2は、初期参照スペクトルを、x軸上の波数(cm−1)とy軸上の吸光度(吸光度単位)のグラフとして示す。初期参照スペクトルは、約800cm−1〜約1,100cm−1の間に水蒸気の特徴を含む。初期参照スペクトルは、約2,300cm−1〜約2,400cm−1の間に二酸化炭素の特徴を含む。
【0014】
図3は、初期試料スペクトルを、x軸上の波数(cm−1)とy軸上の吸光度(吸光度単位)のグラフとして示す。
図4は、調整初期試料スペクトルを、x軸上の波数(cm−1)とy軸上の吸光度(吸光度単位)のグラフとして示す。図4の調整初期試料スペクトルは、図3の初期試料スペクトルと図2の初期参照スペクトルを組み合わせることから導き出した。
【0015】
図5は、調整したその後の試料スペクトルを、x軸上の波数(cm−1)とy軸上の吸光度(吸光度単位)のグラフとして示す。図5の調整したその後の試料スペクトルは、その後の試料スペクトル(図示せず)とその後の参照スペクトル(図示せず)を組み合わせることから導き出した。
【0016】
図6は、差スペクトルを、x軸上の波数(cm−1)とy軸上の吸光度(吸光度単位)のグラフとして示す。図6の差スペクトルは、図5のその後の参照スペクトルから図4の調整初期試料スペクトルを減算することから導き出した。差スペクトルは、600cm−1〜1,800cm−1の間のスペクトルを示す。差スペクトルは、ケモメトリクスモデル作成のために好適である可能性がある。
【0017】
図7は、一態様による生物学的プロセスを測定する方法のフロー図を図示する。ブロックAは、参照媒体を通して初期参照スペクトルを生成させる工程を表す。ブロックBは、中赤外信号を生物学的プロセスの初期試料中に指向させ、中赤外信号から試料スペクトルを検出して初期試料スペクトルを形成する工程を表す。ブロックCは、初期試料スペクトル(ブロックB)と初期参照スペクトル(ブロックA)を組み合わせて調整初期試料スペクトル(ブロックC)を形成する工程を表す。
【0018】
ブロックDは、参照媒体を通して1以上のその後の参照スペクトルを生成させる工程を表す。ブロックEは、中赤外信号を生物学的プロセスの1以上のその後の試料中に指向させ、中赤外信号から試料スペクトルを検出して、1以上のその後の参照スペクトルのそれぞれに対応する1以上のその後の試料スペクトルを形成する工程を表す。ブロックFは、1以上のその後の試料スペクトル(ブロックE)と対応する1以上のその後の参照スペクトル(ブロックD)を組み合わせて1以上の調整されたその後の試料スペクトル(ブロックF)を形成する工程を表す。
【0019】
ブロックGは、1以上の調整されたその後の試料スペクトル(ブロックF)のそれぞれから調整初期試料スペクトル(ブロックC)を減算して1以上の差スペクトル(ブロックG)を形成する工程を表す。
【0020】
図8は、一態様による、生物学的プロセス10に対して開放位置の遮断器具26を有するプローブ12及びプローブハウジング20を図示する。プローブ12は、生物学的プロセス10と接触し、フラッシュ流体28によって洗浄することができるプローブ表面22を有する。プローブハウジング20は、保持リング、排出スロット、充填スロット、プロセススロット、シールリング、及び場合によっては溝を含む。望ましくは、プローブハウジング20は、開放、中間、及び/又は閉止位置の間で移動可能及び/又はスライド可能な環状構造を含む。
【0021】
図9は、一態様による、生物学的プロセス10(図示せず)に対して閉止位置の遮断器具26を有する図8のプローブ12及びプローブハウジング20を図示する。
図10は、一態様による生物学的プロセス10を図示する。プローブ12を、プローブハウジング20を通して生物学的プロセス10中に挿入する。プローブ12は分光計16に接続されている。プローブハウジング20は、フラッシュ流体28のためのフラッシュシステム34と接続されている。フラッシュシステム34は、接続パイプ、配管、バルブ、接続金具、ポンプ、貯留槽などを含む。フラッシュシステム34はコントローラー32を有し、これも分光計16に接続されているコンピューター30に接続されている。
【0022】
一態様によれば、本発明には生物学的プロセスを測定する方法を含ませることができる。この方法には、中赤外信号を、生物学的活動期中の生物学的プロセスの試料中に指向させる工程、及び中赤外信号から試料スペクトルを検出して試料スペクトルを形成する工程を含ませることができる。この方法には、参照媒体を通して参照スペクトルを生成させる工程、及び試料スペクトルと参照スペクトルを組み合わせて調整試料スペクトルを形成する工程を含ませることができる。
【0023】
測定とは、広範には、構成成分のモルパーセントのような量及び/又は分量の確認、検出、計測、測定などを指す。構成成分及び/又は成分は、モル基準、質量基準、体積基準などのような任意の公的な基準で測定することができる。
【0024】
プロセスとは、広範には、例えば結果及び/又は成果を導く工程、動作、及び/又は事象を指す。プロセスは、連続的、不連続的、バッチ式、半連続的、反バッチ式などであってよい。
【0025】
生物とは、広範には、古細菌、細菌、及び/又は真核生物のような生体系、生命プロセス、及び/又は生存有機体を指す。一態様によれば、生物には、酵素、タンパク質などのような生物由来の化合物が包含される。一態様によれば、その寿命が少なくとも約1,000年前に終了したもののような化石物質及び/又は古代物質は生物から排除される。
【0026】
生物学的プロセスには、発酵、細胞培養、好気呼吸、嫌気呼吸、異化反応、同化反応、生体内変化、糖化、液化、加水分解、解重合、重合などのような生体系及び/又は工程から誘導される任意の好適な生体系及び/又は生体物を含ませることができる。
【0027】
指向とは、広範には、指示、到達、投影、照射、照明などを指す。
信号とは、広範には、検出可能な物理量及び/又はインパルスのような情報を伝達及び/又は伝えるために用いる対象物を指す。一態様によれば、信号は適当な周波数を有する安定した光線を含む。他の態様においては、信号には、波長、周波数、振幅、位相などの変化を有する変動信号及び/又はパルス信号を含ませることができる。
【0028】
中赤外とは、広範には、約4,000cm−1〜約400cm−1の間、約3,000cm−1〜約1,000cm−1の間、約1,500cm−1〜約2,500cm−1の間などの波数のような可視光よりも長いがマイクロ波よりも短い波長を有する電磁スペクトルの部分を指す。中赤外光は、約30μm〜約2.5μmの間、約25μm〜約5μmの間などのような任意の好適な波長を有していてよい。中赤外を用いて、対称伸縮、非対称伸縮、はさみ、横揺れ、縦揺れ、ひねりなどのような基準振動及び関連する回転−振動構造を調べることができる。
【0029】
中へとは、広範には、進入、導入、挿入、包含などを指す。
試料とは、広範には、例えば全体の品質及び/又は特徴を有するより大きな全体及び/又は群の代表的な一部及び/又は部分を指す。一態様によれば、試料は、生物学的反応容器の内容物の一部から採取することができる。一態様によれば、試料は、生物学的反応容器中に直接挿入することによって採取することができる。試料は、その場で採取、オンラインで採取、オフラインで採取、外部で採取などしたバルク相から取り出すことができる。
【0030】
間とは、広範には、一定時間又は期間全体を指す。
生物学的活動期とは、広範には、細胞代謝、生体内変化、細胞成長などのような活性な生物学的プロセスの期間中を指す。一態様によれば、生物学的活動期は不活性期及び/又は休眠期を含む。他の態様においては、一態様によれば、生物学的プロセス内で大きな細胞活性を有しない接種の直前及び/又は直後のような不活性期及び/又は休眠期は生物学的活動期から除外することができる。一態様によれば、生物学的活動期は、誘導期、指数増殖期、対数期、定常期、衰退期、死滅期などを含む。
【0031】
検出とは、広範には、現存、存在、事実などを発見、決定、測定することを指す。
スペクトルとは、広範には、例えば連続範囲及び/又は不連続範囲を含んでいてよい一定範囲の周波数及び/又は波長を指す。スペクトルは、それぞれの波長において、どのくらい多くの透過光が存在するかを示して、どのくらい多くのエネルギーが吸収されたかを示すことができる。
【0032】
望ましくは、複数のピーク及び/又は谷を有する試料スペクトルは、生物学的プロセスの元素、化合物、分子、構成成分などに対応する。試料スペクトルは、活動化期中、第1の転換期中、第2の転換期中、第3の転換期中、第4の転換期中、終了期中などのような生物学的プロセス中の任意の好適な時間及び/又は期間に対応し及び/又はこれを表すことができる。質量基準で少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%などのような試料スペクトルに対応する利用できる供給材料の任意の好適な量を変換することができる。
【0033】
試料スペクトルは、少なくとも約1回/秒、少なくとも約1回/分、少なくとも約1回/5分、少なくとも約1回/10分、少なくとも約4回/時、少なくとも約1回/時、少なくとも約1回/4時間、少なくとも約1回/8時間、少なくとも約2回/日、少なくとも約1回/日、少なくとも約1回/2日、少なくとも約1回/5日、少なくとも約1回/週、少なくとも約1回/2週などのような任意の好適な頻度でとることができる。
【0034】
生成とは、広範には、製造、収集、創造、存在させることなどを指す。
参照とは、広範には、情報源のような参照又は参考にするものを指す。
参照媒体とは、広範には、例えば生物学的プロセスの読み値の品質及び/又は内容を向上させるのに有用な任意の好適な物質を指す。参照媒体としては、水、発酵物質、空気、光ファイバーケーブルなどを挙げることができる。参照媒体には、それを通して中赤外信号を指向させることができる媒体の閉鎖試料を含ませることができる。発酵物質は、発酵サイクルの開始点、発酵サイクルの中間点、発酵サイクルの終了点などのようなプロセスにおける任意の好適な時点を示すものであってよい。参照媒体は、空気バックグラウンド、水バックグラウンド、分光計の内部に対応するバックグラウンドなどを与えることができる。理論には縛られないが、光ファイバーループによって、分光計の操作(内部条件)の変化に伴って時間と共に変化する可能性がある特徴を除去することができる。光ファイバーループには、分光計の光源から検出器に接続する単一の光ファイバーケーブルを含ませることができる。一態様によれば、光ファイバーループには他の機器及び/又は媒体は用いない。
【0035】
理論には縛られないが、分光計内の条件の変動によって生物学的プロセスからの信号におけるノイズ及び/又は明確性の欠如が生起する可能性がある。参照スペクトルを用いることによって、試料スペクトル内のノイズを除去及び/又は排除することができる。ノイズは、分光計内の水蒸気含量(湿分)、二酸化炭素含量などの変化によって生起する可能性がある。例えば、発酵システムをモニターする場合は、試料スペクトルは微生物を接種した後の発酵の開始時においてとることができる。分光計は密封することができるが、分光計内の水蒸気含量は生物学的プロセス中に変化する可能性があるので、その後の試料には分光計によって検出されるような水蒸気の変化からのノイズが含まれる可能性がある。参照媒体を用いることによって、スペクトルからのノイズを減少及び/又は除去することができる。
【0036】
組合せとは、広範には、試料スペクトル及び参照スペクトルの、加算、減算、乗算、除算、対数をとること、指数をとること、比をとること、変換(ラプラス、フーリエなど)を完了すること、導関数をとること、積分をとること、及び/又は任意の他の好適な数学的操作を行うことを指す。一態様によれば、参照スペクトルを試料スペクトルから減算して、調整試料スペクトルを形成及び/又は作成することができる。
【0037】
望ましくは、本発明の方法及び装置は、生物学的プロセスに関するリアルタイム及び/又はオンラインのデータ又は情報を与えることができる。プローブは、例えばプロセスの場又は外側においてプロセスと接続することができる。
【0038】
中赤外信号は、試料中に、約1ミクロン〜約10ミクロンの間、約2ミクロン〜約8ミクロンの間、約3ミクロン〜約7ミクロンの間、約4ミクロン〜約6ミクロンの間、少なくとも約2ミクロン、少なくとも約3ミクロンなどのような任意の好適な深さで進入させることができる。試料を通して中赤外信号を通過させることによって、透過信号及び/又は反射信号を形成することができる。
【0039】
参照スペクトル、試料スペクトル、及び/又は調整試料スペクトルは、分子伸縮、分子変角などに対応する値を有することができる。参照スペクトル、試料スペクトル、及び/又は調整試料スペクトルは、炭素単結合(約900cm−1〜約1,500cm−1の間)、炭素二重結合(約1,500cm−1〜約1,800cm−1の間)、炭素三重結合(約2,100cm−1〜約2,300cm−1の間)、炭素−酸素結合、炭素−窒素結合、酸素−水素結合(約3,300cm−1〜約3,500cm−1の間、窒素−水素結合などに対応する値を有することができる。炭素二重結合としては、炭素−炭素結合、炭素−酸素結合、炭素−窒素結合などを挙げることができる。炭素三重結合としては、炭素−炭素結合、炭素−窒素結合などを挙げることができる。
【0040】
参照スペクトル、試料スペクトル、及び/又は調整試料スペクトルは、アセトン、アセトアルデヒド、エタノール、ブタノール、ペンタノール、イソプレノール、イソプレン、ブチルアルデヒド、酢酸、乳酸、ピルビン酸、グリセロール、ペントース、ヘキソース、脂肪アルコール、脂肪酸、アシルグリセリド(モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドを含む)、二酸化炭素、一酸化炭素などのような任意の好適な物質、元素、化合物、及び/又は分子に対応する値を有することができる。
【0041】
一態様によれば、生物学的プロセスは、再生可能な物質の産生及び/又は製造を含む。再生可能な物質とは、広範には、自然の生態サイクル及び/又は資源によって交換することができる源及び/又はプロセスから少なくとも部分的に誘導される物質及び/又は物を指す。再生可能な物質としては、広範には、化学物質、化学中間体、溶媒、モノマー、オリゴマー、ポリマー、バイオ燃料、バイオ燃料中間体、バイオガソリン、バイオガソリンブレンド材料、バイオディーゼル、無公害ディーゼル、再生可能ディーゼル、バイオディーゼルブレンド材料、バイオ蒸留物などを挙げることができる。望ましくは、しかしながら必須ではないが、再生可能な物質は、植物、藻類、バクテリア、菌類などのような生体から誘導することができる。
【0042】
バイオ燃料とは、広範には、環境を破壊しないで製造することができ、及び/又は大気に対する正味の炭素放出が減少しているか又は無いもののような再生可能な源から誘導される燃料又は燃焼源として用いるのに好適な成分又は流れを指す。一態様によれば、例えば地下から採鉱又は採掘される物質は、再生可能な物質から排除される可能性がある。望ましくは、再生可能な資源としては、単細胞有機体、多細胞有機体、植物、菌類、バクテリア、藻類、栽培作物、非栽培作物、木材などを挙げることができる。バイオ燃料は、例えば、陸上車、海上船舶、航空機などにおいて用いるための輸送用燃料として用いるのに好適である可能性がある。バイオ燃料は、水蒸気の発生及び/又は発電のような動力生成において用いるのに好適である可能性がある。
【0043】
バイオガソリンとは、広範には、メタン、水素、シンガス(合成)、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジメチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、エチル−tert−ブチルエーテル、ヘキサノール、脂肪族化合物(直鎖、分岐、及び/又は環式)、ヘプタン、イソオクタン、シクロペンタン、芳香族化合物、エチルベンゼンなどのような、直接使用するか及び/又は再生可能な源から誘導されるガソリンプール及び/又はオクタン供給物中にブレンドするのに好適な成分又は流れを指す。ブタノールとは、広範には、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、他の異性体などの生成物及び誘導体を指す。バイオガソリンは、自動車用ガソリン内燃エンジンのような火花点火エンジンにおいて用いることができる。一態様によれば、バイオガソリン及び/又はバイオガソリンブレンドは、産業において認められている燃料の標準規格を満足するか又はこれに合致する。
【0044】
バイオディーゼルとは、広範には、脂肪酸エステル、トリグリセリド、脂質、脂肪アルコール、アルカン、ナフサ、蒸留範囲の物質、パラフィン系物質、芳香族物質、脂肪族化合物(直鎖、分岐、及び/又は環式)などのような、直接使用するか及び/又は再生可能な源から誘導されるディーゼルプール及び/又はセタン供給物中にブレンドするのに好適な成分又は流れを指す。バイオディーゼルは、自動車用ディーゼル内燃エンジンのような圧縮エンジンにおいて用いることができる。他の態様においては、バイオディーゼルはまた、ガスタービン、加熱器、ボイラーなどにおいて用いることもできる。一態様によれば、バイオディーゼル及び/又はバイオディーゼルブレンドは、産業において認められている燃料の標準規格を満足するか又はこれに合致する。
【0045】
バイオ蒸留物とは、広範には、直接使用するか、又は再生可能な源から誘導される航空機燃料(ジェット)、潤滑油ベースストック、灯油燃料などの中にブレンドするのに好適で、約100℃〜約700℃の間、約150℃〜約350℃の間などの沸点範囲を有する成分又は流れを指す。
【0046】
一態様によれば、生物学的プロセスはアルコールへのバイオマス発酵を含む。バイオマスとは、広範には、少なくとも部分的にリグノセルロース源のような生体物質から誘導される植物及び/又は動物材料及び/又は物質を指す。
【0047】
リグノセルロース系とは、広範には、植物性物質のようなセルロース、ヘミセルロース、リグニンなどを含むことを指す。リグノセルロース材料としては、サトウキビ、サトウキビ滓、エネルギー用サトウキビ、エネルギー用サトウキビ滓、コメ、稲わら、トウモロコシ、トウモロコシ藁、小麦、小麦藁、メイズ、メイズ藁、モロコシ、モロコシ藁、サトウモロコシ、サトウモロコシ藁、綿、綿くず、サトウダイコン、サトウダイコンパルプ、大豆、菜種、ジャトロファ、スイッチグラス、ミスカンサス、他の芝類、木材、軟材、硬材、樹皮、木くず、おがくず、紙、紙くず、農業廃棄物、肥料、肥やし、下水、都市固形廃棄物、任意の他の好適なバイオマス材料などのような任意の好適な物質を挙げることができる。
【0048】
一態様によれば、中赤外信号を指向させる工程は、生物学的プロセスの少なくとも一部と流体連絡している内表面からの中赤外信号の少なくとも約1回の反射及び/又はバウンスを有する減衰全反射を用いる。反射及び/又はバウンスの数は、少なくとも約1、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約3.4、少なくとも約4、少なくとも約6、少なくとも約8、少なくとも約10、少なくとも約12などのような任意の好適な数であってよい。
【0049】
中赤外信号から試料スペクトルを検出して試料スペクトルを形成する工程には、生物学的プロセスの試料から反射及び/又は伝達される中赤外信号を検出することを含ませることができる。
【0050】
一態様によれば、この方法にはまた、生物学的活動期の前の生物学的プロセスの初期試料中に中赤外信号を指向させる工程、及び中赤外信号から試料スペクトルを検出して生物学的活動期の前の初期試料スペクトルを形成する工程を含ませることもできる。この方法には、生物学的活動期の前の参照媒体を通して初期参照スペクトルを生成させる工程、及び初期試料スペクトルと初期参照スペクトルを組み合わせて調整初期試料スペクトルを形成する工程を含ませることができる。この方法にはまた、調整初期試料スペクトルを調整試料スペクトルから減算するか、及び/又は調整試料スペクトルと組み合わせて差スペクトルを形成する工程を含ませることもできる。
【0051】
初期とは、広範には、初期段階のような開始時に関することを指す。
生物学的活動期の前とは、広範には、生物学的プロセスに微生物を接種又は添加する前及び/又はその直後、例えば約10分未満、約5分未満、約2分未満などのような大きな細胞活性を有しない期間を指す。生物学的活動期の前には、糖又は水のような供給材料及び液体を生物学的プロセス容器中に充填した後の一定時間を含ませることができる。
【0052】
減算及び/又は組み合わせて差スペクトルを形成することには、調整試料スペクトルの形成に関して上記に記載した任意の好適な数学的操作及び/又は手法を含ませることができる。
【0053】
差スペクトルは、例えば物質の濃度変化を示すために、生物学的プロセスの開始時からその後の時点への生物学的プロセスの透過率の変化を示す。差スペクトルは、生物学的プロセス中に形成される化合物及び/又は生成物に関して有用である可能性がある。他の期間(前及び/又は後)に対応する更なる差スペクトルは本発明の範囲内である。
【0054】
場合によっては及び/又は或いは、生物学的プロセスによって消費される化合物(供給材料)に関しては、試料の調整スペクトル又はその一部を初期調整試料スペクトルから減算することができる。一態様によれば、差スペクトルの絶対値によって、差スペクトルに基づいて化合物からの濃度変化を示すことができる。望ましくは、スペクトルによって、濃度の増加(通常は生成物及び/又は副生成物)及び/又は濃度の減少(通常は反応物質)を示すことができる。
【0055】
一態様によれば、この方法には更に、1以上のスペクトルをディスプレイスクリーン(モニター)上に表示する;1以上のスペクトルを印刷基材(紙)上に印刷する;1以上のスペクトルを記録媒体(磁気ディスク、フラッシュメモリー、レーザー読み取り可能なディスク)の上に記録する;などの工程を含ませることができる。このプロセスには、任意の好適な有形の結果及び/又は成果を含ませることができる。
【0056】
生及び/又は未加工のスペクトルデータは、ケモメトリクスモデルを適用することによって有用なデータに変換することができる。ケモメトリクスとは、広範には、例えば数学的及び/又は統計的方法又は手法を適用及び/又は使用することによって、化学プロセスについて得た測定値を系の状態に関連づける科学的手法を指す。ケモメトリクスを用いて、発酵ブロス(系の状態)のような生物学的プロセスにおいて存在する成分の既知濃度と、生物学的プロセスから集められる中赤外スペクトル(プロセスに関して得られる測定値)との間の関係(較正モデル)を構築することができる。ケモメトリクスモデルは、データ中の変動及び/又は相関に基づくことができる。
【0057】
スペクトルデータは、元々のデータセット内の観察される変動への異なる寄与に基づいて新しいデータのセットに変換することができる。新しいデータセットは、例えば主成分のファクターのようなそれぞれの波数における吸光度の線形結合から得られる直交成分から構成することができる。次にモデル内のそれぞれの成分に関する複数のファクターを制限して、プロセスに関する情報を最大にするファクターを予測モデル内に含ませるようにすることができる。
【0058】
一態様によれば、本発明には生物学的プロセスを測定する方法を含ませることができる。この方法には、生物学的プロセスの初期試料中に中赤外信号を指向させる工程、及び中赤外信号から試料スペクトルを検出して初期試料スペクトルを形成する工程を含ませることができる。この方法には、参照媒体を通して初期参照スペクトルを生成させる工程、及び初期試料スペクトルと初期参照スペクトルを組み合わせて調整初期試料スペクトルを形成する工程を含ませることができる。この方法には、生物学的プロセスの1以上のその後の試料の中に中赤外信号を指向させる工程、及び中赤外信号から試料スペクトルを検出して1以上のその後の試料スペクトルを形成する工程を含ませることができる。この方法には、1以上のその後の試料スペクトルのそれぞれに対応する参照媒体を通して1以上のその後の参照スペクトルを生成させる工程、及び1以上のその後の試料スペクトルと対応する1以上のその後の参照スペクトルを組み合わせて1以上の調整されたその後の試料スペクトルを形成する工程を含ませることができる。この方法には、1以上の調整されたその後の試料スペクトルのそれぞれから調整初期試料スペクトルを減算して1以上の差スペクトルを形成する工程を含ませることができる。
【0059】
一態様によれば、本明細書で開示する任意の方法の工程は、本明細書で明確に示す数、頻度、及び順番で実施することができる。他の態様においては、方法の複数の工程を、並べ替え、繰り返し、省略などすることができる。
【0060】
その後とは、広範には、後でのように、時間、順番、場所などの次のものを指す。その後には、約1回/分、約1回/10分、約1回/時間、約1回/2時間、約1回/4時間、約1回/8時間、約1回/日などのような任意の好適な期間及び/又は頻度を含ませることができる。
【0061】
一態様によれば、中赤外信号は、約4,000cm−1〜約400cm−1の間の波数を有していてよく、参照媒体としては光ファイバーケーブルを挙げることができる。生物学的プロセスとしては、ペントース及び/又はヘキソースからエタノールへのようなアルコールへのバッチバイオマス発酵を挙げることができる。
【0062】
この方法にはまた、例えばバッチプロセスにおける一定時間中の成分の濃度変化を測定するために、1以上の差スペクトルを組み合わせて1以上の時間依存スペクトルを生成させる工程を含ませることもできる。
【0063】
一態様によれば、本発明には生物学的プロセスを測定するための装置を含ませることができる。この装置及び/又は機器には、中赤外分光計、及び分光計に光学的に接続されているプローブを含ませることができる。プローブは、生物学的プロセスの少なくとも一部と流体連絡するように適合させることができる。この装置には、例えば別のチャンネル及び/又は光源の上に、分光計と光学的に接続されている参照媒体を含ませることができる。
【0064】
方法の態様の任意の部分に関連して上記に記載した任意及び/又は全ての特質及び/又は特徴を、本発明の装置の態様に適用することができる。
分光計とは、広範には、発光源、及び発光源からの分散度及び/又は透過率を測定するための検出器を有する分析装置のような、光及び/又はスペクトルの波長を測定するために用いる装置を指す。望ましくは、分光計は周囲環境から密閉及び/又は隔離することができる。一態様によれば、分光計は、約4,000cm−1〜約400cm−1の間の波数を有する信号を生成させる。分光計には、例えば好適なヒートシンクによる好適な温度への冷却及び/又は冷凍を含ませることができる。運転温度としては、約100℃未満、ほぼ雰囲気条件、約0℃未満、約−100℃未満、約−190℃未満などを挙げることができる。
【0065】
プローブとは、広範には、プロセスの少なくとも一部の中に挿入するのに好適な試験機器を指す。プローブには、ダイヤモンド、サファイアなどのような結晶を含ませることができる。望ましくは、しかしながら必須ではないが、プローブは減衰全反射を用いることができる。
【0066】
光学接続には、光ファイバーケーブル、鏡面管、可視経路(照準線)などのような任意の好適な導管及び/又はケーブルを含ませることができる。一態様によれば、この装置においては光導波管の使用は排除される。
【0067】
流体連絡とは、広範には、例えば直接挿入、配管接続、パイプ接続などによってプロセスの少なくとも流体及び/又は液体部分を接触させることを指す。
方法に関連して上記で議論したように、装置の参照媒体としては、水、空気、発酵物質、光ファイバーケーブルなどを挙げることができる。
【0068】
同様に方法に関連して上記で議論したように、プローブは、生物学的プロセスの少なくとも一部と流体連絡している内表面からの中赤外信号の少なくとも1回の反射を有することができる。
【0069】
この装置には、コンピューターのような、分光計に接続されている任意の他の好適な装置を含ませることができる。コンピューターには、プロセッサー、記憶装置、表示装置、印刷装置、ソフトウエアプログラムなどのような任意の好適な部品を含ませることができる。
【0070】
一態様によれば、この装置には、プローブ表面の少なくとも一部を横切るか及び/又はこれの上にフラッシュ流体を流すか及び/又は通過させるフラッシュ機構を有するように適合されているプローブハウジングを含ませることができる。理論には縛られないが、生物学的プロセス中の固体及び/又は他の物質は、プローブの表面を汚染するか及び/又はそれに付着して信号品質を低下させる可能性がある。プローブハウジングは、炭素鋼、ステンレス鋼、ニッケル合金、他の合金、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、フルオロポリマー、工業用樹脂、他のポリマー、複合材料などのような任意の好適な材料で製造及び/又は構成することができる。
【0071】
フラッシュ流体としては、水、発酵ブロス、エタノール、メタノール、プロパノール、糖溶液、酢酸、空気、窒素、アルゴン、二酸化炭素、他の溶媒、他の希釈剤などのような任意の好適な物質を挙げることができる。フラッシュ流体は、遠心ポンプ、容積型ポンプなどのような動力機器を用いることができる。フラッシュ流体は、貯留槽、タンク、ビン、フィルターなどのような1以上の貯蔵容器を用いることができる。フラッシュ流体及び/又は洗浄溶液は、前進流及び/又は逆流の両方を与える歯車ポンプを用いることができる。
【0072】
望ましくは、しかしながら必須ではないが、プローブハウジングは、例えば洗浄モード及び/又は運転を与えるために、生物学的プロセスからのプローブの移動可能な遮断を与えることができる。プローブハウジングは、湿潤したプローブ部品のその場での滅菌を与えることができる。外側のプローブハウジングは、水蒸気処理又は他の好適な手順によって洗浄することができる。
【0073】
一態様によれば、プローブハウジングには、例えば概して環状の同心構造を有する、プローブ表面の少なくとも一部を生物学的プロセスに曝露する第1の位置と、プローブ表面の少なくとも一部をフラッシュ流体に曝露する第2の位置の間で移動可能な遮断装置を含ませることができる。遮断装置には、例えば歯車ポンプを前進及び/又は逆進に電気的に切り替えることにより、水圧によって開放位置と閉止位置との間で移動するフルオロポリマープローブシールを含ませることができる。
【0074】
プローブは、約1回/時、約1回/日、約1回/2日、約1回/週などのような任意の好適な頻度でフラッシングすることができる。
【実施例】
【0075】
実施例1:
エタノール(99.8体積%)、D(+)グルコース、糖(サッカロース)、麦芽エキス、及び醸造用イーストの標準試料が、生物学的プロセスに関する中赤外(MIR)法の能力及び感度を示すために用いた成分であった。
【0076】
図11は、一態様による糖標準試料に関するスペクトルを、x軸上の波数(cm−1)とy軸上の吸光度(吸光度単位)によって示す。図12は、一態様によるグルコース標準試料に関するスペクトルを、x軸上の波数(cm−1)とy軸上の吸光度(吸光度単位)によって示す。図13は、一態様による麦芽エキス標準試料に関するスペクトルを、x軸上の波数(cm−1)とy軸上の吸光度(吸光度単位)によって示す。図14は、一態様によるエタノール標準試料に関するスペクトルを、x軸上の波数(cm−1)とy軸上の吸光度(吸光度単位)によって示す。
【0077】
滅菌ビーカー内において80gの麦芽エキスを500mLの沸騰水で溶解することによって、発酵プロセスを行った。120gの糖(グルコース)をビーカーに加えて水溶液を形成した。次に、水溶液を反応容器中に移し、プロセスの間中にわたって連続撹拌及び温度制御を行った。更に500mLの水を水溶液に加えた。0.5gのイーストを温水中に約15分間溶解させた後、水溶液に加えた。
【0078】
Billerica, Massachusetts,米国のBruker Optics Inc.からのBruker IFS/66 FT-IR分光計を用いて分光データを得た。West Lothian,スコットランドのFibre Photonics Ltd.又はBruker Optonics Inc.からの2重バウンスダイヤモンド減衰全反射(ATR)プローブを用いて、発酵プロセスのMIRスペクトルを35℃において1時間毎に記録した。多結晶質赤外(PIR)光ファイバーケーブルによって、ATRプローブを分光計に接続した。プローブは、8cm−1の解像度において2,500cm−1〜600cm−1の範囲、及びスペクトルあたり128の累積スキャンを有していた。それぞれの実験の開始時において初期バックグラウンドスペクトルをとった。分光計に、KBr(臭化カリウム)ビームスプリッター、及びChelmsford, Massachusetts,米国のBrooks Automation, Inc.からのCryotigerクーラーを取り付けた。クーラーを検出器に接続した。Cryotigerクーラーは、別の液体窒素冷却システムの必要性を排除した低温冷却器システムであった。
【0079】
次に、75時間のグルコース発酵中にスペクトルを記録するためにATRプローブを反応容器中に挿入した。図15は、実施例1において用いた実験装置構成を示す。実験装置構成には、反応容器内の生物学的プロセス10が含まれる。プローブ12を生物学的プロセス10中に挿入し、分光計16及び検出器40並びにコンピューター30に接続した。実験装置構成には、スターラー36及び温度制御機器38が含まれる。
【0080】
図16は、発酵からのスペクトルを、x軸上の波数(cm−1)とy軸上の吸光度(吸光度単位)によって示す。時間経過と共に、エタノールが増加するのに対応してピークが増大した。重なっているピークは一変量較正するのが困難である可能性があるので、多変数部分最小二乗法を適用した。ケモメトリクスを用いて、主成分分析を用いることによってスペクトルを分析した。主成分分析のプロットは、グルコース及び麦芽エキスの消費と合致する下向きの傾向を示した。このプロットはまた、約55時間後に大きな変化がなかったことも示し、これは発酵イースト活性が終了したことを示す。
【0081】
第1の誘導予備処理及び第2の誘導予備処理に基づくグルコース、麦芽エキス、及びエタノールの混合物による20種の較正標準試料を用いて、部分最小二乗モデルを形成した。相関の結果は、0.998〜0.905の間の、決定係数R2に関する測定値/予測値を示した。
【0082】
実施例1の結果は、中赤外分光法を多変数ケモメトリクス較正と組み合わせると、発酵プロセスのオンラインモニタリングを与えることができることを示した。第1及び第2の誘導スペクトルは、主成分分析スコア及びローディングプロットと組み合わせて、グルコースのエタノールへの生体内変化に関する説明的な情報を与えた。部分最小二乗モデルによって、3種類の成分又は分析対象物(グルコース、麦芽エキス、及びエタノール)に関する良好な評価が与えられ、これは、プロセスモニタリングのためにバイオプロセス成分の濃度を正確に予測することができることを示す。
【0083】
Cyrotiger検出器によって、液体窒素冷却を有する検出器の必要なしに連続的にスペクトルを獲得することが容易になった。ダイヤモンドATRプローブは、発酵実験中に汚染されなかった。
【0084】
実施例2:
10Lのスケールで4つの小麦粉の発酵を行い、中赤外分光法を用いてモニターした。分析のために幾つかの試料を発酵反応器から採取した。グルコース、グリセロール、及びエタノールに関するケモメトリクスモデルを形成した。また、その場での滅菌も試験した。付属装置を取り付けたBottmingen,スイスのINFOS HTからのTechfos-Sステンレス鋼バイオリアクターを用いた。ATRプローブを反応器の予備の底部口内に配置した。反応器の底部上のサンプリング位置から試料を回収した。
【0085】
4つの発酵を4週間にわたって行った。小麦粉及び水の混合物を、83℃において液化酵素によって、次に60℃において糖化酵素によって処理することによって、発酵ブロスを調製した。ブロスを発酵容器中に無菌状態で移し、その後、再水和イースト及び15体積%の消泡剤溶液10mLを接種した。
【0086】
実験Aにおいては、24℃の温度、媒体1Lあたり1.74gのイースト接種割合、及び350rpmの撹拌速度において、純粋な精白小麦粉を用いた。実験Bにおいては、24℃の温度、媒体1Lあたり1.74gのイースト接種割合、及び350rpmの撹拌速度において、純粋な精白小麦粉を用いた。実験Cにおいては、27℃の温度、媒体1Lあたり1.74gのイースト接種割合、及び350rpmの撹拌速度において、純粋な精白小麦粉を用いた。実験Dにおいては、27℃の温度、媒体1Lあたり3.01gのイースト接種割合、及び500rpmの撹拌速度において、純粋な精白小麦粉を用いた。
【0087】
実施例1において用いた2バウンスATRプローブを用いて発酵系をモニターした。試料の獲得には、独立光ファイバー参照ループからの参照スペクトル、発酵中の試料スペクトルの測定、及び参照スペクトルと試料スペクトルとの比をとって、発酵中のそれぞれの期間に関する調整試料スペクトルを形成することを含んでいた。サンプリングは、4つの発酵のそれぞれあたり合計で約2,000の生スペクトルに関して各5分間繰り返した。生スペクトルは、初期調整試料スペクトル(接種の直後)を調整試料スペクトルから減算して、時間と共に変化しない特徴を除去することによって形成した。
【0088】
発酵あたり約20の試料に関する作業期間中においておよそ2時間毎に、発酵容器から発酵ブロス試料を取り出した。幾つかの試料の一部を用いて、既知量のグルコース、グリセロール、及び/又はエタノールを加えて調整試料を形成することによってケモメトリクスモデルを形成した。第2の指示プローブを用いて、調整試料に関するスペクトルを生成させた。調整試料を遠心分離及び濾過し、その後、得られた上澄み液について高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた。
【0089】
HPLC分析は、針の汚染、屈折率の制限、及び他の糖類の共溶出の幾つかの問題を有していた。HPLCの問題は、HPLCデータと中赤外データとの間の誤差を人為的に増加させる可能性がある。
【0090】
較正試料の組には、反応器内から直接の59の試料、及び調整試料からの61の試料が含まれていた。確認の組のために更に24の試料を保持した。
主成分分析(PCA)を用いてデータにケモメトリクスモデルを適用した。図17は、x軸上の時間(時)、及びy軸(左側の目盛り)上のグルコース濃度A(g/L)、y軸(右側の目盛り)上のエタノール濃度B(g/L)による発酵プロットを示す。データ点はHPLCデータを表し、線として示される中赤外スペクトルデータに関する良好な相関を示している。図18は、生スペクトルデータAに対して減算スペクトルデータB(より少ないノイズ)を用いることの利益を示す。
【0091】
図19は、x軸上のHPLCグリセロール濃度(g/L)、及びy軸上の予測グリセロール濃度(g/L)による、グリセロールに関する成分モデルの正確性を示す。予測は、5.71g/Lの減算スペクトルに関する予測の二乗平均平方根誤差を有していた。成分の濃度が適度に一定であった期間中の成分の予測濃度の標準偏差をとることによって、モデルの正確性を調べた。標準偏差は0.11g/L〜0.85g/Lの範囲であった。
【0092】
また、中赤外スペクトルに基づいて発酵混合物の比重又は密度を予測するようにモデルを形成した。比重モデルの較正のために40の試料を用い、確認のために20の試料を用いた。図20は、x軸上の測定比重(g/mL)、及びy軸上の予測比重(g/mL)のプロットを示す。二乗平均平方根誤差予測は僅か0.0014g/Lであった。
【0093】
3.4バウンスのATRプローブを用いて試料を再び試験し、上記で議論した2バウンスプローブの結果と同様の結果を得た。
水を反応器内で121℃に15分間昇温することによってプローブについて水蒸気滅菌を行い、その後、雰囲気温度に冷却した。滅菌の前には、プローブは5,949カウントの水中の光スループットを有しており、滅菌後においては水中で6,030カウントであった。プローブは感度の明らかな損失なしに滅菌された。プローブの滅菌は成功であった。
【0094】
本発明を生物学的プロセスに関連してここに記載したが、当業者であれば、本発明はかかる生物学的用途に限定されないことを容易に認識することができる。本明細書中に開示されている方法及び装置に関するより広く変化する用途及び/又は使用は、本発明の範囲内である。
【0095】
ここで用いる「有する」、「含む」、及び「包含する」という用語は、開かれた包含的な表現である。また、「から構成される」という用語は、閉じられた排他的な表現である。特許請求の範囲又は明細書における任意の用語の解釈においては不明確さが存在するが、明細書作成者の意図は開かれた包含的な表現である。
【0096】
ここで用いる「など」という用語は、リスト中の任意及び全ての個々の事項及び/又は構成要素並びにこれらの組合せに関するサポート、並びに個々の事項及び/又は構成要素並びにこれらの組合せの均等物に関するサポートを与える。
【0097】
方法又はプロセス中の工程に関する順番、数、順序、及び/又は繰り返しの限界に関しては、他に明確に与えられていない限りにおいて、明細書作成者は、本発明の範囲に対して、工程に関する順番、数、順序、及び/又は繰り返しの限界が含まれることは意図しない。
【0098】
範囲に関し、範囲は、上界及び/又は下界を伴わない範囲を含む上限値及び下限値の間に含まれる全ての可能な範囲に関するサポートを与えるように、上限値と下限値の間の全ての点を包含するように解釈すべきである。
【0099】
本発明の範囲又は精神から逸脱することなく開示されている構造及び方法において種々の修正及び変更を行うことができることは当業者に明らかであろう。特に、任意の1つの態様の記載は、2以上の構成要素及び/又は限定の組合せ及び/又は変化を与える他の態様の記載と自由に組み合わせることができる。本発明の他の態様は、ここに開示する発明の詳細及び実施を考察することによって当業者に明らかとなるであろう。明細書及び実施例は例示のみのものと考えられ、発明の真の範囲及び精神は特許請求の範囲によって示されると意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的活動期中の生物学的プロセスの試料中に中赤外信号を指向させ;
中赤外信号から試料スペクトルを検出して試料スペクトルを形成し;
参照媒体を通して参照スペクトルを生成させ;そして
試料スペクトルと参照スペクトルを組み合わせて調整試料スペクトルを形成する;
ことを含む、生物学的プロセスを測定する方法。
【請求項2】
中赤外信号が約4,000cm−1〜約400cm−1の間の波数を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
参照媒体が、水、発酵物質、空気、光ファイバーケーブル、又はこれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
中赤外信号が試料中に約1ミクロン〜約10ミクロン侵入する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
試料スペクトルが、分子伸張、分子変角、又はこれらの組合せに対応する値を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
試料スペクトルが、炭素−酸素結合、炭素−窒素結合、又はこれらの組合せに対応する値を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
中赤外信号の指向が、生物学的プロセスの少なくとも一部と流体連絡している内表面からの中赤外信号の少なくとも1回の反射を有する減衰全反射を用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
試料スペクトルが、アセトン、アセトアルデヒド、エタノール、ブタノール、ペンタノール、イソプレノール、イソプレン、ブチルアルデヒド、酢酸、乳酸、ピルビン酸、グリセロール、ペントース、ヘキソース、脂肪アルコール、脂肪酸、アシルグリセリド、二酸化炭素、一酸化炭素、又はこれらの組合せに対応する値を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
生物学的プロセスが再生可能物質の産生を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
生物学的プロセスがアルコールへのバイオマス発酵を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
中赤外信号から試料スペクトルを検出して試料スペクトルを形成することが、生物学的プロセスの試料から反射又は伝達される中赤外信号を検出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
生物学的活動期の前の生物学的プロセスの初期試料中に中赤外信号を指向させ;
中赤外信号から試料スペクトルを検出して、生物学的活動期の前の初期試料スペクトルを形成し;
生物学的活動期の前の参照媒体を通して初期参照スペクトルを生成させ;
初期試料スペクトルと初期参照スペクトルを組み合わせて調整初期試料スペクトルを形成し;そして
調整試料スペクトルから調整初期試料スペクトルを減算して差スペクトルを形成する;
ことを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
1以上のスペクトルをディスプレースクリーン上に表示するか;
1以上のスペクトルを印刷基材上に印刷するか;又は
1以上のスペクトルを記録媒体上に記録する;
ことを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
中赤外信号を生物学的プロセスの初期試料中に指向させ;
中赤外信号から試料スペクトルを検出して初期試料スペクトルを形成し;
参照媒体を通して初期参照スペクトルを生成させ;
初期試料スペクトルと初期参照スペクトルを組み合わせて調整初期試料スペクトルを形成し;
中赤外信号を生物学的プロセスの1以上のその後の試料中に指向させ;
中赤外信号から試料スペクトルを検出して1以上のその後の試料スペクトルを形成し;
1以上のその後の試料スペクトルのそれぞれに対応する参照媒体を通して1以上のその後の参照スペクトルを生成させ;
1以上のその後の試料スペクトルと対応する1以上のその後の参照スペクトルを組み合わせて1以上の調整したその後の試料スペクトルを形成し;そして
1以上の調整したその後の試料スペクトルのそれぞれから調整初期試料スペクトルを減算して1以上の差スペクトルを形成する;
ことを含む、生物学的プロセスを測定する方法。
【請求項15】
中赤外信号が約4,000cm−1〜約400cm−1の間の波数を有し;そして
参照媒体が光ファイバーケーブルを含む;
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
生物学的プロセスがアルコールへのバッチバイオマス発酵を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
1以上の差スペクトルを組み合わせて1以上の時間依存スペクトルを生成させることを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
中赤外分光計;
分光計に光学的に接続されており、生物学的プロセスの少なくとも一部と流体連絡するように適合されているプローブ;及び
分光計に光学的に接続されている参照媒体;
を含む、生物学的プロセスを測定するための装置。
【請求項19】
中赤外分光計によって約4,000cm−1〜約400cm−1の間の波数を有する信号を生成させる、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
参照媒体が、水、空気、発酵物質、光ファイバーケーブル、又は組合せを含む、請求項18に記載の装置。
【請求項21】
プローブが減衰全反射プローブを含む、請求項18に記載の装置。
【請求項22】
プローブがダイヤモンドを含む、請求項18に記載の装置。
【請求項23】
プローブが、生物学的プロセスの少なくとも一部と流体連絡している内表面からの中赤外信号の少なくとも1回の反射を有する、請求項18に記載の装置。
【請求項24】
プロセッサー;
記憶装置;
表示装置;
印刷装置;及び
ソフトウエアプログラム;
を含む中赤外分光計に接続されているコンピューターを更に含む、請求項18に記載の装置。
【請求項25】
プローブ表面の少なくとも一部を横切ってフラッシュ流体を流すフラッシュ機構を有するように適合されているプローブハウジングを更に含む、請求項18に記載の装置。
【請求項26】
プローブハウジングが、プローブ表面の少なくとも一部を生物学的プロセスに曝露する第1の位置、及びプローブ表面の少なくとも一部をフラッシュ流体に曝露する第2の位置の間で移動可能な遮断器具を含む、請求項25に記載の装置。
【請求項1】
生物学的活動期中の生物学的プロセスの試料中に中赤外信号を指向させ;
中赤外信号から試料スペクトルを検出して試料スペクトルを形成し;
参照媒体を通して参照スペクトルを生成させ;そして
試料スペクトルと参照スペクトルを組み合わせて調整試料スペクトルを形成する;
ことを含む、生物学的プロセスを測定する方法。
【請求項2】
中赤外信号が約4,000cm−1〜約400cm−1の間の波数を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
参照媒体が、水、発酵物質、空気、光ファイバーケーブル、又はこれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
中赤外信号が試料中に約1ミクロン〜約10ミクロン侵入する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
試料スペクトルが、分子伸張、分子変角、又はこれらの組合せに対応する値を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
試料スペクトルが、炭素−酸素結合、炭素−窒素結合、又はこれらの組合せに対応する値を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
中赤外信号の指向が、生物学的プロセスの少なくとも一部と流体連絡している内表面からの中赤外信号の少なくとも1回の反射を有する減衰全反射を用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
試料スペクトルが、アセトン、アセトアルデヒド、エタノール、ブタノール、ペンタノール、イソプレノール、イソプレン、ブチルアルデヒド、酢酸、乳酸、ピルビン酸、グリセロール、ペントース、ヘキソース、脂肪アルコール、脂肪酸、アシルグリセリド、二酸化炭素、一酸化炭素、又はこれらの組合せに対応する値を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
生物学的プロセスが再生可能物質の産生を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
生物学的プロセスがアルコールへのバイオマス発酵を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
中赤外信号から試料スペクトルを検出して試料スペクトルを形成することが、生物学的プロセスの試料から反射又は伝達される中赤外信号を検出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
生物学的活動期の前の生物学的プロセスの初期試料中に中赤外信号を指向させ;
中赤外信号から試料スペクトルを検出して、生物学的活動期の前の初期試料スペクトルを形成し;
生物学的活動期の前の参照媒体を通して初期参照スペクトルを生成させ;
初期試料スペクトルと初期参照スペクトルを組み合わせて調整初期試料スペクトルを形成し;そして
調整試料スペクトルから調整初期試料スペクトルを減算して差スペクトルを形成する;
ことを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
1以上のスペクトルをディスプレースクリーン上に表示するか;
1以上のスペクトルを印刷基材上に印刷するか;又は
1以上のスペクトルを記録媒体上に記録する;
ことを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
中赤外信号を生物学的プロセスの初期試料中に指向させ;
中赤外信号から試料スペクトルを検出して初期試料スペクトルを形成し;
参照媒体を通して初期参照スペクトルを生成させ;
初期試料スペクトルと初期参照スペクトルを組み合わせて調整初期試料スペクトルを形成し;
中赤外信号を生物学的プロセスの1以上のその後の試料中に指向させ;
中赤外信号から試料スペクトルを検出して1以上のその後の試料スペクトルを形成し;
1以上のその後の試料スペクトルのそれぞれに対応する参照媒体を通して1以上のその後の参照スペクトルを生成させ;
1以上のその後の試料スペクトルと対応する1以上のその後の参照スペクトルを組み合わせて1以上の調整したその後の試料スペクトルを形成し;そして
1以上の調整したその後の試料スペクトルのそれぞれから調整初期試料スペクトルを減算して1以上の差スペクトルを形成する;
ことを含む、生物学的プロセスを測定する方法。
【請求項15】
中赤外信号が約4,000cm−1〜約400cm−1の間の波数を有し;そして
参照媒体が光ファイバーケーブルを含む;
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
生物学的プロセスがアルコールへのバッチバイオマス発酵を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
1以上の差スペクトルを組み合わせて1以上の時間依存スペクトルを生成させることを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
中赤外分光計;
分光計に光学的に接続されており、生物学的プロセスの少なくとも一部と流体連絡するように適合されているプローブ;及び
分光計に光学的に接続されている参照媒体;
を含む、生物学的プロセスを測定するための装置。
【請求項19】
中赤外分光計によって約4,000cm−1〜約400cm−1の間の波数を有する信号を生成させる、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
参照媒体が、水、空気、発酵物質、光ファイバーケーブル、又は組合せを含む、請求項18に記載の装置。
【請求項21】
プローブが減衰全反射プローブを含む、請求項18に記載の装置。
【請求項22】
プローブがダイヤモンドを含む、請求項18に記載の装置。
【請求項23】
プローブが、生物学的プロセスの少なくとも一部と流体連絡している内表面からの中赤外信号の少なくとも1回の反射を有する、請求項18に記載の装置。
【請求項24】
プロセッサー;
記憶装置;
表示装置;
印刷装置;及び
ソフトウエアプログラム;
を含む中赤外分光計に接続されているコンピューターを更に含む、請求項18に記載の装置。
【請求項25】
プローブ表面の少なくとも一部を横切ってフラッシュ流体を流すフラッシュ機構を有するように適合されているプローブハウジングを更に含む、請求項18に記載の装置。
【請求項26】
プローブハウジングが、プローブ表面の少なくとも一部を生物学的プロセスに曝露する第1の位置、及びプローブ表面の少なくとも一部をフラッシュ流体に曝露する第2の位置の間で移動可能な遮断器具を含む、請求項25に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2013−505462(P2013−505462A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530905(P2012−530905)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/047120
【国際公開番号】WO2011/037727
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(503259381)ビーピー・コーポレーション・ノース・アメリカ・インコーポレーテッド (84)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/047120
【国際公開番号】WO2011/037727
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(503259381)ビーピー・コーポレーション・ノース・アメリカ・インコーポレーテッド (84)
【Fターム(参考)】
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