中鎖トリグリセリド油と組み合わせた3−HPA産生性ラクトバチルス菌株を使用して哺乳動物の免疫機能を向上させる方法
【課題】
選択された3−ヒドロキシプロピオンアルデヒド(3−HPA)産生乳酸菌と中鎖トリグリセリド油を用いる哺乳動物の免疫機能を向上させる方法を提供する。
【解決手段】
ヒトを含めた哺乳動物の免疫機能を向上させるための製品であって、中鎖トリグリセリド油と組み合わせた3−HPA産生性乳酸菌を含む製品。発育不全の脂肪代謝のヒトの免疫機能を向上させるための薬剤であって、中鎖トリグリセリド油に3−HPA産生性ラクトバチルスロイテリ(Lactobacillus reuteri)の菌株を含む上記薬剤。
選択された3−ヒドロキシプロピオンアルデヒド(3−HPA)産生乳酸菌と中鎖トリグリセリド油を用いる哺乳動物の免疫機能を向上させる方法を提供する。
【解決手段】
ヒトを含めた哺乳動物の免疫機能を向上させるための製品であって、中鎖トリグリセリド油と組み合わせた3−HPA産生性乳酸菌を含む製品。発育不全の脂肪代謝のヒトの免疫機能を向上させるための薬剤であって、中鎖トリグリセリド油に3−HPA産生性ラクトバチルスロイテリ(Lactobacillus reuteri)の菌株を含む上記薬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物が改善された免疫効果を得るための製品にMCT(中鎖トリアシルグリセリド)油とある種のラクトバチルス菌株との組合せを使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
栄養上、通常脂肪又は油と呼ばれる物質は、化学者及び栄養学者が脂質として分類しているいくつかの物質の1つである。脂肪は特徴として水に不溶性であり、アルコール等の一定の溶媒にのみ溶解する。脂肪はそれらの組成が炭水化物に似ているが、1グラム当たりより高いエネルギー生成を提供する。それらは炭水化物よりおよそ2倍から2.5倍の間の高いエネルギーを含有する。残念ながら、脂肪は新陳代謝のためにそれらが使用する酸素に無駄が多く、その結果燃焼が困難である。体は様々なプロセスに対して脂肪を必要とし、例えばそれらは細胞壁の構成に使用され、それらは脂肪溶解性ビタミン類(ビタミンA、D、E及びK)のための輸送機構を提供する。
【0003】
脂肪の種類には3種類−トリグリセリド、コレステロール及びリン脂質がある。食品中に見出される脂肪及び油は主としてトリグリセリドである傾向がある。トリグリセリドはアルコールであるグリセロールと3個の脂肪酸鎖から構成されている。トリグリセリドは我々が摂取し、我々の体内に貯蔵する脂肪の大部分を成している。それらは3つのはっきりと区別できる群、飽和、一不飽和及びポリ不飽和に分類される。その脂肪の分類は、それらの化学組成と関係している。飽和脂肪酸は、閉鎖された化学構造を有しており、それらの炭素原子は水素で「飽和」されており、他の化合物がそれと結合することを不可能にしている。一不飽和脂肪酸は、1個の二重結合及び2個の遊離炭素を有しており、そこに水素の他の化学結合が起こり得る。最後に、ポリ不飽和脂肪酸は、2個以上の二重結合を有しており、結合させることができる多数の遊離炭素を有する。これらの二重結合は、不飽和脂肪を、ほとんど不活性な飽和脂肪より生物学的に活性にする。
【0004】
トリグリセリドの成分である脂肪酸は、炭素原子、酸素原子、及び水素原子の様々な長さの鎖からなっている。炭素鎖の長さがこれらの鎖が、短鎖、中鎖及び長鎖トリグリセリドとして分類される原因となっている。中鎖トリグリセリド(MCT)は、脂肪のその他の形態よりそれらを生物学的により入手しやすくする特異的性質を有する(Osborn H.T.ら、Comprehensive Reviews in Food Science and Food Safety、第1巻、93〜103頁、2002年)。MCT類は、体がエネルギーを利用できるようにするために使用する脂肪によってとられる通常の経路を回避する。体がそれを使用する前に貯蔵する必要のある他の脂肪とは異なり、MCT類が必要とするプロセシングはわずかであり、その結果、体のエネルギーシステムにおける使用に素早く利用することができる。中鎖トリグリセリドのもう1つの重要な特徴は、いかに多く摂取されても体がそれを体脂肪として貯蔵できないことである。
【0005】
MCT油は天然に存在し、最も豊富な供給源はココナッツ油である。ほとんどのMCT油は、ココナッツ油から精製される。MCT油は、無味で低粘度の透明淡色の液体である。MCT油は、それが体内で代謝されるとき脂肪よりむしろ炭水化物のように挙動するために興味深い。体のために好ましい燃料は、炭水化物であり、体は炭水化物のその蓄積を他の燃料を使う前に使い尽くす。炭水化物は素早く作用し−運動選手はエネルギーを供給するためにグルコースの錠剤を取り込み、我々がアルコールを飲むと体は急に熱くなる−一般的に炭水化物は食べて数時間の内に消費され、我々が頻繁に食べるのはそのためである。一方、脂肪の主な役割は、エネルギーを貯蔵することである−動物は冬の厳しさに備えるために太る。長鎖脂肪(即ち通常種)は、消化器系によってカイロミクロンと呼ばれる化学物質に転化され、これらは次に循環系に入る前にリンパ系によって体の周辺に運ばれる。これは比較的進行がゆっくりであり、そのため脂肪は炭水化物よりゆっくり代謝する。他の脂肪とは異なり、MCT油は、リンパ系には進入せず、代わりにそれはそれが代謝される肝臓に直接運ばれ、そのため炭水化物と同様にエネルギーを素早く放出し、その過程で多くのケトン類を生ずる。MCTは、医療用栄養素、例えば経静脈栄養又は経腸栄養を含む様々な栄養製品に通常使用される。
【0006】
上記のようなMCT類は、また、より直接的な健康効果を有することが報告されている。例えば、Tufano M.A.らは、「異なる全静脈栄養療法で処置したマウスにおけるリポ多糖類に対する生存、サイトカイン放出及び食細胞機能(Survival to lipopolysaccharide,cytokine release and phagocyte functions in mice treated with different total parenteral nutrition regimens)(Immunopharmacol Inumunotoxicol.1995年8月;17(3):493〜509)の中で、長鎖トリグリセリド(LCT)及び中鎖トリグリセリド(MCT)による完全静脈栄養(TPN)の宿主防御に対する効果について報告した。リポ多糖類(LPS)抗原投与後の生存、大腸菌の血中クリアランス、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)及びインターロイキン−6(IL−6)のインビボ及びインビトロにおける産生を試験した。BALB/cマウスにおいて、LCT類は、対照と比較して死亡率を25%減少させた。LCTプラスMCTの混合物で行ったTPNは、死亡率を50%減少させた。
【0007】
注射されるトリグリセリド、特にMCTの濃度の臨床的な微調整は、有力な抗腫瘍効果及び正常な免疫系の維持を提供することを期待することができる(Kimoto Y.ら、「中鎖トリグリセリドの抗腫瘍効果及び体の自己防衛システムに対するその影響(Antitumor effect of medium−chain triglyceride and its influence on the self−defense system of the body)」;Cancer Detect Prev.1998;22(3):219〜24)。上記のようなMCT油は、また、例えば欧州特許第0756827号及び米国特許第6589576号に栄養剤の一部として述べられているが、ラクトバチルスとの組合せではない。さらに、欧州特許出願第1344458A1号は、ラクトバチルス等のプロバイオティック有機体を、好ましくは最小容量0.02cm3でその上MCT油を含む様々なバリアで場合により被覆したペレットを作製して保護する概念を開示している。この研究は、本発明の核心、即ち、改善された免疫効果のために、液体生成物中で選択された3−HPA(β−ヒドロキシ−プロピオンアルデヒド)を産生するラクトバチルスの菌株をMCT油と組み合わせるものに接近するものではない。
【0008】
一般に受け入れられている定義によるプロバイオティックは、宿主動物にその腸の微生物バランスを改善することによって有利に影響を与える生きた微生物の食品サプリメントである。最初は家畜用の動物飼料の補足を指していたがその定義はヒトの状況にも容易に適用される。ヒトによるプロバイオティック類の主な消費は、腸に寄生する種類のラクトバチルス及びビフィズス菌を含有する酪農系食品の形をしたものである。プロバイオティックの消費が腸管微生物叢の組成に影響することはその定義の中に内在する。腸の生態系に対するプロバイオティックのこの効果は、消費者に対して何か有益な仕方で影響を与えることが画策される。プロバイオティック類の作用を介する腸環境に対する変化に由来する多数の潜在的利点が立証されており、特に腸の感染症に対する抵抗力の増大、下痢の持続時間の減少、血圧の低下、血中コレステロール濃度の低減、アレルギーの減少、末梢血白血球による食作用の刺激、サイトカイン遺伝子発現の調節、アジュバント効果、腫瘍の後退、発癌物質又は発癌補助物質産生の減少等が挙げられる。
【0009】
L.ロイテリ(L.reuteri)を含む多岐にわたるラクトバチルス種の菌株が、プロバイオティック製剤に使用されてきた。ラクトバチルスロイテリは、天然に存在する動物の消化管の生息動物の1つであり、ヒトを含めた健康な動物の腸内にごく普通に見出される。それは抗菌作用を有することが知られている。例えば、米国特許第5439678号、同第5458875号、同第5534253号、同第5837238号、及び同第5849289号を参照されたい。L.ロイテリ細胞が、グリセロールが存在する嫌気条件下で成長する場合、それらはβ−ヒドロキシ−プロピオンアルデヒド(3−HPA)として知られる抗菌物質を産生する。
【0010】
3−HPAは、わずかなラクトバチルスによって細胞から分泌される代謝中間体である。3−HPAを搬出することが知られているそのような細菌種としては、L.ロイテリ、L.コリンホルミス(L.coryneformis)、L.コリノイデス(L.collinoides)、L.ヒルガルディ(L.hilgardii)等が挙げられる(Claisse Oら、J Food Prot.2001年1月;64(6):833〜7)(Sauvageot Nら、Int J Food Microbiol.2000年4月、10;55(1〜3):167〜70)。3−HPAは、病原菌を殺す菌株を産生する能力をある程度説明する抗微生物特性を有することが長いこと知られている。L.ロイテリ及びL.コリンホルミスを含む乳酸菌もまたそれらの宿主生物の免疫系に対して影響を有することが示されている。例えば、Wagner RDらによる「免疫不全マウスにおけるカンジダ症に対するプロバイオティック細菌の生物学的効果(Biotherapeutic effects of probiotic bacteria on candidiasis in immunodeficient mice)」(Infect Immune 1997年10月、65:4165〜72)を参照されたい。しかしながら、菌株の間で効果の差異が存在し、効果を高める方法、例えば、国際公開第2004/034808号において提供されているCD4+細胞を補充し、毒素を束縛する菌株を選択する方法が必要である。宿主免疫細胞の活性のラクトバチルスによる刺激又は修正の正確なメカニズムは依然としてほとんど明らかになっていない。多くの研究は、成長培地に放出される選択された乳酸菌から生じる特定の物質は宿主細胞の免疫反応の調節に関与していることを示している。これらの物質は、タンパク質、ペプチド及び核酸であると一般に考えられる。例えば、PenaらのCell Microbiol.2003年4月;5(4):277〜85を参照されたい。
【0011】
本明細書の発明は、ヒトを含めたいくつかの動物における一定のラクトバチルスの免疫調節効果を向上させるための方法、即ち、3−HPA産生性の選択されたラクトバチルスをMCT油と組み合わせることによる新規な方法を提供する。この組合せの効果は、これまでに知られている免疫調節に加えてのそれらのラクトバチルスによる抗菌効果である。それはその3−HPAの産生及びこの物質によるリンパ球の増殖に対する直接効果によって引き起こされる。3−HPA又はその前駆物質のグリセロール、又はその代謝産物の1,3−プロパンジオール及び3−OH−プロピオン酸は、哺乳動物における免疫系の有力な修飾因子としてはこれまで記載されていない。
【0012】
いくつかのラクトバチルスによる有効な抗菌作用の可能性が知られており、一定の免疫調節効果も知られていたが、免疫調節効果の実質的な改善が3−HPA産生性菌株においてそれらをMCT油と組み合わせることによって可能であることはこれまで知られていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、適当な条件下で3−HPAを産生することが知られているラクトバチルス菌株を用意し、免疫調節を向上させるためにそれらをMTC油と組み合わせることである。本発明のさらなる目的は、ヒトを含む動物に投与するための前記菌株とMCT油とを含有する製品を提供することである。
その他の目的及び利点は、以下の開示及び添付の特許請求の範囲からより完全に明らかとなろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本明細書の発明は、哺乳動物における免疫機能を選択された3−HPA産生性ラクトバチルスをMCT油と共に使用して向上させる方法である。この組合せの効果はこれまでに知られている免疫調節に加えてのそれらのラクトバチルスによる抗菌効果である。それはそれらの3−HPAの産生及びこの物質によるリンパ球の増殖に対する直接効果によって引き起こされる。その他の本発明の目的及び特徴は、以下の開示及び添付の特許請求の範囲からより完全に明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】食作用アッセイの結果を示す図である:A、細胞対照;B1、L.ロイテリライセート(800μg/ml);B2、L.ロイテリライセート(400μg/ml);B3、L.ロイテリライセート(200μg/ml);B4、L.ロイテリライセート(100μg/ml);B5、L.ロイテリライセート(50μg/ml);C1、L.モノサイトゲネスライセート(800μg/ml);C2、L.モノサイトゲネスライセート(400μg/ml);C3、L.モノサイトゲネスライセート(200μg/ml);C4、L.モノサイトゲネスライセート(100μg/ml);D、L.ロイテリ上澄み液(MRS);E、L.ロイテリ上澄み液(グリセロール溶液);F、L.ロイテリ+L.モノサイトゲネスライセート。
【図2】リンパ球増殖アッセイの結果を示す図である:B、Con A(6.25μg/ml);C、PWM(5μg/ml);D、PHA(6.25μg/ml);E、LPS(2.5μg/ml);F1、L.ロイテリライセート(400μg/ml);F2、L.ロイテリライセート(200μg/ml);F3、L.ロイテリライセート(100μg/ml);F4、L.ロイテリライセート(50μg/ml);G1、L.ロイテリ上澄み液(MRS100μl);G2、L.ロイテリ上澄み液(MRS 50μl);H1、L.ロイテリ上澄み液(グリセロール溶液100μl);H2、L.ロイテリ上澄み液(グリセロール溶液50μl)。
【図3】RL(L.ロイテリ)処理及びPC(陽性対照)処理におけるL.モノサイトゲネス(6日)の投与後3日の細菌数を示す図である。
【図4a】L.モノサイトゲネスの播種後3日(6日)及び2週間(17日)の主な免疫細胞を分析した結果を示す図である。特に、(β)TCR+CD3−T細胞を示す。
【図4b】L.モノサイトゲネスの播種後3日(6日)及び2週間(17日)の主な免疫細胞を分析した結果を示す図である。特に、CD4+CD25+T細胞を示す。
【図4c】L.モノサイトゲネスの播種後3日(6日)及び2週間(17日)の主な免疫細胞を分析した結果を示す図である。特に、CD8+T細胞を示す。
【図4d】L.モノサイトゲネスの播種後3日(6日)及び2週間(17日)の主な免疫細胞を分析した結果を示す図である。特に、CD4/CD8比を示す。
【図4e】L.モノサイトゲネスの播種後3日(6日)及び2週間(17日)の主な免疫細胞を分析した結果を示す図である。特に、(γ,δ)TCR+CD25+T細胞を示す。
【図4f】L.モノサイトゲネスの播種後3日(6日)及び2週間(17日)の主な免疫細胞を分析した結果を示す図である。特に、NK+CD28+細胞を示す。
【図4g】L.モノサイトゲネスの播種後3日(6日)及び2週間(17日)の主な免疫細胞を分析した結果を示す図である。特に、NK+細胞を示す。
【図5】本発明の製品のための製造プロセスの例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
グリセロールでの培養に応じて物質又は代謝産物を産生及び搬出する乳酸菌は、驚いたことに、宿主の免疫系の全体的な向上及び感染症と闘う能力と合致する免疫系の重要な細胞成分を刺激することが見出された。物質(油、脂肪及び脂質等)の供給及び消化管中の代謝を通してグリセロールを発生することが期待できる条件は、グリセロールから3−HPAを産生させる上記の乳酸菌と組み合わせると、宿主の免疫系を刺激する。MCT油は、以下でさらに説明するように、本明細書の発明のかかる添加物として最も適している。かくして、上記乳酸菌を上記製剤中に入れて宿主に供給することは有利である。
【0017】
本発明の好ましい一実施形態は、MCT油及び3−HPA産生性乳酸菌を含有し、発育不全の脂肪代謝の人々、例えばほとんどの普通の乳児及び歩き始めの幼児、それとまた、脂肪代謝障害を有する大人の消化管への経口送達用又は経管栄養法用として処方され、使用される製品である。その理由は、例えば本発明のMCT油の脂肪代謝は、消化管中で普通はグリセロールではなくむしろモノアシルグリセロール(1個の脂肪酸がまだ結合しているグリセロール)を発生するということである。これらのモノアシルグリセロールは、腸壁上で摂取され、肝臓で処理されて新たな脂質となり、循環する。しかしながら、例えば、人乳と共に分泌された胆汁酸塩刺激リパーゼは、位置特異性に欠けることが分かった、即ち、それは乳化したトリアシルグリセロールをグリセロールと脂肪酸に加水分解した。それは、また、ミセル状のsn−2モノアシルグリセロール(「sn」は、アシルグリセロールのグリセロール主鎖上の脂肪酸の位置を表し、例えばsn−2では、脂肪酸は、グリセロール主鎖の中間の位置にある)を加水分解した。これはsn−1及びsn−3エステル結合の加水分解に対して顕著な優先性を有する膵リパーゼと対照を成している。生の人乳を与えられた乳児の腸内のように2つの酵素が共に作用している場合、膵リパーゼによって形成されたsn−2モノアシルグリセロールは、胆汁酸塩刺激リパーゼに対する優れた基質として役立った。(Pediatric Research、Vol 16、882〜885、人乳脂質の消化:胆汁酸塩刺激リパーゼによるsn−2モノアシルグリセロール加水分解の生理学的意義(Digestion of human milk lipids:physiologic significance of sn−2 monoacylglycerol hydrolysis by bile salt−stimulated lipase)、O.Hernell及びL.Blackberg)。従って、トリアシルグリセロール加水分解の最終生成物は、グリセロールと脂肪酸となり、sn−2モノアシルグリセロールと脂肪酸ではない。胆汁酸塩刺激リパーゼは、また、脂肪酸のアシルグリセロールへの取り込みの触媒作用をする程度が膵リパーゼよりはるかに少ない。胆汁酸塩刺激リパーゼのこれら2つの効果は共に腔内脂肪分解の全体的進行に対する促進効果を有する。十二指腸内の胆汁酸塩濃度が低い新生児においては、グリセロールと脂肪酸も、モノアシルグリセロールと脂肪酸よりはより容易に吸収されるはずである。従って、膵リパーゼに対する補完物として役立つことにより、胆汁酸塩刺激リパーゼは、例えば同様に乳児、及び脂肪の消化及び吸収に対する未発達の内在性メカニズムをもつその他のものにおける乳脂質の効率的利用を確保することができる。このため、例えば乳児は、その脂肪代謝が未熟であるのでそれらの母乳(及び特殊調整粉乳)から脂質を摂取する異なるシステムを有しており、従って、乳児を養育するためのサプリメントとして与えられる3−HPA産生性ラクトバチルスは、そのような場合は共に働くグリセロールのまあまあ良好な源を有するであろうが、代謝されて3−HPA産生及び本発明の免疫機能の向上のための基質となることができる脂肪の入手を確保するため、本発明のアイデアは、MCT油等の脂肪源を3−HPA産生性ラクトバチルスと共に送達すべきであるというものである。これが例えば乳児の免疫系の働きを向上させる助けとなる。
【0018】
上記の好ましい実施形態において、本発明の製品はレシピエントの免疫系の全体又は一部の向上のために消化管に送達される。消化管中の3−HPAの産生が免疫系の全体に影響することができる理由は、消化管中の免疫学的機能が豊富なことである。これは、例えば、粘膜及び腸内面で成長しているマクロファージ及びリンパ球等の細胞による。消化管は、人体の最も大きな免疫器官であるものと当分野の多くの専門家によって考えられている(「腸管内菌叢及びプロバイオティックスの概説(Overview of gut flora and probiotics)」、Holzapfel,W.H.ら、International Journal of Food Microbiology、1998年5月)。
【0019】
本発明の別の好ましい実施形態においては、例えばMCT油及び3−HPA産生性乳酸菌を含有するが、免疫系を強化するため及び皮膚障害と闘うために局所適用する類似の製品を使用することができる。皮膚上皮を通る拡散及び下の免疫細胞との相互作用は、例えば湿疹、座瘡及び創傷における病原体に対する免疫機能の向上並びに炎症の減少及び治癒が期待される。
【0020】
MCT油は、特異な脂質であり−それらは急速に開裂し、速やかにグリセロールを生じさせることができる−これが改善された免疫効果を与えるために本発明でMCTを使用する理由である。本発明によるプロバイオティック、予防薬及び薬剤製品は、栄養又は製薬用途に受け入れられる添加剤及び賦形剤を含むことができる。中鎖トリグリセリド油は、中鎖トリグリセリド、即ちグリセロールの中鎖脂肪酸エステルを含む油である。中鎖脂肪酸は、当技術分野で一般に知られており、6〜12個の炭素原子、好ましくは8〜10個の炭素原子を含むことができる、例えばカプリル酸及びカプリン酸等である。Karlshamn社によるAkomed Rは、本発明に合致する有用なMCT油の1例である。それは、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドを含む。
【0021】
以下の実施例から分かるように、本発明の製品に使用されるMCT油は、市場で容易に調達される。3−HPA産生性乳酸菌を単離する別の方法、例えばRodrigues E.らにより記載されている方法(Letters in Applied Microbiology 37巻3号259頁〜、2003年9月)を使用することができる。好ましい種の1つはL.ロイテリであり、好ましい菌株の1つはL.ロイテリATCC55730である。
【0022】
本発明の特徴は、本発明を限定するものと解釈すべきではない以下の実施例を参照することによってより明確に理解されよう。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
マクロファージにおける食作用活性の改善
概要
L.ロイテリ上澄み液を、グリセロール(50mM)の存在下及び非存在下で成長しているL.ロイテリATCC55730から得た。これらの上澄み液は、腹腔マクロファージ(SPF BALB/cの6週間のマウスから得た)を一夜の培養で前処理するために使用した。そのマクロファージは、次いでそれらの貪食能を測定するためにリステリアモノサイトゲネスを播種した。2時間の培養後、マクロファージ中の生存L.モノサイトゲネスの量を測定した。
【0024】
L.ロイテリ上澄み液なしの対照培養は、これら条件下におけるマクロファージ中に著しいL.モノサイトゲネスの生き残りを示した。グリセロール不在の中で成長させた細胞からのL.ロイテリ上澄み液によるマクロファージの前処理は、対照培養と比較して食作用のレベルに影響を及ぼさなかった(図1)。しかしながら、驚いたことに、グリセロールの存在下で成長させた細胞からのL.ロイテリ上澄み液によるマクロファージの前処理は、マクロファージ中のすべてのL.モノサイトゲネスの効果的な死滅をもたらした。かくして、グリセロール存在下でのL.ロイテリの成長は、細胞の食作用活性を刺激する原因となった。培地中のグリセロール単独(対照)は、上記効果を有さなかった(対照「H」は他の対照と同じ)。
【0025】
似ているがそれほど顕著ではないマクロファージの食作用活性の刺激を、用量依存的にマクロファージをL.ロイテリ又はL.モノサイトゲネス由来のライセートで前処理することによって誘発することができる。L.ロイテリ中のグリセロール誘発代謝は、抗原暴露によって誘発されるものより効果的な食作用活性の刺激をもたらした。
【0026】
実験の詳細
研究の方法
1.食作用アッセイ及びリンパ球増殖アッセイ。リンパ球及び腹腔マクロファージを特定の無菌のBALB/cマウス(6週間経過のもの)から分離し、宿主における免疫強化効果についてのアッセイを行った。腹腔マクロファージを用いる食作用アッセイ。
− 腹腔マクロファージの分離。BALB/cマウスを頚椎脱臼により犠牲にし、次いで5mlのイスコブ改変ダルベッコー培地(Iscove’s modified Dulbecco’s medium)(IMDM)を注入し、マッサージした。注入したIMDMを回収し、生きている細胞をトリパンブルー排除法により数え、実験では1×106個/mlに調整した最終濃度で使用した。
− 細菌ライセートの調製。ラクトバチルスロイテリSD2112及びリステリアモノサイトゲネスHPB3セロタイプ4bをMRS+0.02Mのグルコース培養液及びトリプシン大豆培養液(TBS)中でそれぞれ24時間培養し、8,000rpmで20分間遠心分離にかけて細胞ペレットを得た。その細胞ペレットを0.9%のNaCl溶液で2回洗浄した。次いでこのペレットを60℃で3時間加熱して不活性化し、タンパク質濃度をビシンコニン酸(BSA)タンパク質アッセイ法により計算し、5mg/mlに調整した。
− L.ロイテリ上澄み液の調製。L.ロイテリをMRS+0.02Mのグルコース培養液中で24時間培養し、遠心分離にかけてMRS培養液上澄み液を得た。その上澄み液を0.05Mのグリセロール溶液中に懸濁させて6時間培養し、次いでグリセロール溶液の上澄み液を回収した。回収された細胞ペレットの量は、最大2g/30ml(湿潤重量)であった。回収した上澄み液はすべてpHを7.3に調整した後使用した。
− 食作用アッセイ。腹腔マクロファージを、IMDM+10%ウマ血清中に1ウェル当り4×105個で懸濁させ、一晩の培養の間、L.ロイテリ、L.モノサイトゲネス細胞ライセート及びL.ロイテリ上澄み液の濃度を変動させて処理した。その濃度と条件は以下の通りである。
【表1】
MRS対照及びグリセロール溶液対照は、L.ロイテリで培養していない培養液のpHを調整して使用した。
【0027】
上記条件で処理した腹腔マクロファージをTBS中で培養し、0.9%NaCl溶液で洗浄した4×104個のL.モノサイトゲネス(HPB3セロタイプ4b、ゲンタマイシン感受性)を播種した。37℃2時間の培養後、そのマクロファージを洗浄し、次いで200μg/mlのゲンタマイシンで処理して細胞外の細菌を死滅させた。細胞を燐酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄し、0.5ml/ウェルのPBS+0.5%トライトンX−100で溶解し、細胞内微生物にさらした。次いで、細菌の数を、連続希釈に続いてPalcam寒天(Oxoid Inc、米国ニューヨーク州オグデンスブルグ)及びトリプシン大豆寒天(Oxoid Inc、米国ニューヨーク州オグデンスブルグ)を用いる薄層法により計算した。
【0028】
(実施例2)
リンパ球増殖の改良
概要
リンパ球は、BALB/cマウスの脾臓及び胸腺から用意し、グリセロール(50mM)が存在する及び存在しない中で成長するL.ロイテリATCC55730から得た上澄み液で培養した。L.ロイテリATCC55730は、3−HPAの周知の良好な産生株であり、本発明の選択基準に従うので選択した。対照の培養は、グリセロール単独、培地単独及び既知のリンパ球増殖刺激物質で実施した。
【0029】
既知の刺激物質(ConA、PWM、PHA及びLPS)は、リンパ球増殖の際立った刺激をもたらした。L.ロイテリ由来のライセートは、リンパ球の増殖の小さな用量依存性の刺激をもたらし、グリセロールなしの中で成長したL.ロイテリ由来の上澄み液による培養は、リンパ球増殖の大幅な上昇はもたらさなかった。驚いたことに、グリセロールが存在する中で成長したL.ロイテリ由来の上澄み液は、既知の刺激物質で見られるより高いレベルまでの顕著なリンパ球の増殖をもたらした(図2参照)。
【0030】
実験の詳細
リンパ球増殖アッセイ
− 脾臓及び胸腺リンパ球の分離。BALB/cマウスを頚椎脱臼により犠牲にし、それらの胸腺を分離し、ハンクス平衡塩溶液(HESS)中に浸し、ばらばらに引き裂いて単細胞を得た。その単細胞をHistopaque−1083(Sigma社)の二重層を通す遠心分離にかけてリンパ球を得た。これらの細胞をIMDMで2回洗浄し、生きている細胞をトリパンブルー排除法により数え、実験では1×107個/mlに調整した最終濃度で使用した。
− 細菌ライセートの調製。L.ロイテリ及びリステリアモノサイトゲネスライセートを食作用アッセイで述べたようにして調製した。
− L.ロイテリ上澄み液の調製。L.ロイテリ上澄み液もまた食作用アッセイで述べたようにして調製した。
− リンパ球増殖アッセイ。リンパ球増殖アッセイは、IMDM+10%ウマ血清中にウェル当り4×106個で懸濁させたリンパ球を用いて実施した。リンパ球は、様々な濃度のL.ロイテリ、L.モノサイトゲネス細胞ライセート及びL.ロイテリ上澄み液、並びに参照の刺激物質で処理し、その濃度及び条件は以下の通りである。
【表2】
表2に報告されている結果において、MRS対照及びグリセロール溶液対照は、L.ロイテリで培養していない培養液のpHを調整して使用し、以下の記号を使用した。ConA:コンカナバリンA、PWM:ヤマゴボウマイトジェン、PHA:フィトヘムアグルチニン、LPS:サルモネラエンテリカ(Salmonella enterica serovar Typhimurium)由来のリポポリサッカライド。
【0031】
ConAを含む刺激物質を、各条件と合致するリンパ球を含有するウェル中に加え、3時間後アラマーブルー(alamar blue)を10%の濃度で加えた。各刺激物質の添加後72時間に、リンパ球増殖のレベルは、OD570nm〜OD600nmの値で測定した。
【0032】
リンパ球増殖の結果は、(処理OD−培地対照OD)/細胞対照ODの値である刺激指数(SI)として表した。しかしながら、L.ロイテリ上澄み液処理群の場合は、IMDM+10%ウマ血清ではなく、J及びKの処理群の値を培地対照OD値として使用した。
【0033】
マウスインビボ抗原投与及び免疫細胞中の分配率の変化
特定の無菌のBALB/cマウス(6週間経過のもの)を4つのグループに分けた。L.ロイテリ及びL.モノサイトゲネスを5×108個/マウスに調製し、経口投与させた。L.モノサイトゲネスを投与する時間の30分前に、L.モノサイトゲネスの生存率を高めるために10%重炭酸ナトリウム0.25Mを投与した。
【0034】
【表3】
【0035】
L.ロイテリのL.モノサイトゲネスに対する保護作用を試験するために、すべての群のそれぞれ8匹のマウスを、L.モノサイトゲネスの投与後3日(6日)及び14日(17日)に犠牲にし、そこから血液、肝臓及び脾臓を採取した。加えて、L.ロイテリそれ自身の免疫機構における関与を試験するため、NC群及びR群両方のそれぞれ8匹のマウスを31日目にさらに検査した。
1)肝臓及び脾臓中のL.モノサイトゲネスの計算。各マウス群から採取した肝臓及び脾臓を計量し、10mlのPBS(pH7.0)を含有するワールパック(whirl pack)中で均一にした。連続希釈に続いて生きている細菌をPalcam寒天により数えた。
2)フローサイトメトリーを用いる免疫細胞アッセイ
− 血液からの白血球の分離。血液を2〜3匹の動物から取り出して溜め、1,500rpmで30分間、Histopaque−1083の二重層を通す遠心分離にかけ、その後リンパ球をリンパ球層から集めた。それを燐酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄し、RPMI−1640培地に懸濁させ、次いで生きている細胞をトリパンブルー排除法により数え、実験では1×107個/mlに調整した最終濃度で使用した。
− 白血球表面モノクローナル抗体を用いるフローサイトメトリーアッセイ。分離した白血球を20%のヤギの血清を含有する第1の洗浄用緩衝液(PBS450ml、ACD50ml、20%NaN35ml、γグロブリンなしのウマの血清10ml、250mMのEDTA20ml、0.5%フェノールレッド1ml)中に懸濁させ、4℃で10分間感作させた。遠心分離後、底がV型の96個のウェルのマイクロプレートの各ウェルに、白血球表面抗原に対して特異的な100μlのモノクローナル抗体及び血液から分離した白血球の1×107個/mlの50μlを加え、その後4℃で30分間感作させた。二重の染色を行い、使用した試薬は表4におけるものと同じである。第1の洗浄用緩衝液で3回洗浄した後、残っている白血球を、ウマの血清が除去されている以外は第1の洗浄用緩衝液と同じである4℃の第2の洗浄用緩衝液で3回洗浄し、2%ホルマリン溶液中で固定した。2,000を超える染色細胞をフローサイトメトリーによって検査し、CellQuestプログラム(Becton Dickinson社)を用いてデータ分析を行った。
【0036】
【表4】
【0037】
結果及び考察
1)腹腔マクロファージを用いる食作用アッセイ
腹腔マクロファージを用いる食作用アッセイの結果を図1に示す。図のように腹腔マクロファージの食作用アッセイの結果は、L.ロイテリグリセロール溶液上澄み液及びL.ロイテリ+L.モノサイトゲネスライセートによる処理の場合最も高いことが確認された(p<0.05)。言い換えると、L.ロイテリグリセロール溶液上澄み液は、100μl又は50μlの処理には関わりなく同一の効果を有しており、マクロファージによって貪食されたL.モノサイトゲネスをほとんど完全に死滅させた。L.ロイテリ+L.モノサイトゲネスライセートの各400、200及び100μl/mlの混合処理もまたマクロファージによって貪食されたL.モノサイトゲネスを実質的に死滅させた。L.ロイテリライセート単独で処理した群は、上記の2つの処理群より小さい食作用活性を有しており、L.モノサイトゲネスが食作用後でさえ生きていたが、L.ロイテリライセート処理群(B)の食作用活性は、L.モノサイトゲネスライセート処理群(C)のそれより高いことが分かった(P<0.05)。これらの結果に照らして、L.ロイテリライセートそれ自身及びその代謝産物は、腹腔マクロファージの食作用活性を、特に病原体のライセート、例えばL.モノサイトゲネスの存在下で高めることができることが認められた。MRS培養液の上澄み液で処理した群が腹腔マクロファージの食作用活性を高めることができないことが分かり、一方でグリセロール溶液上澄み液により処理した群が高い食作用活性を示したことを考慮すると、食作用活性を高める物質は、グリセロール代謝産物であると推定され、高い抗菌能力を有するロイテリンである可能性もあるものと推定される。この問題は、後に続く実験によりさらに研究する必要があるものと思われる。
【0038】
L.モノサイトゲネスライセートにより処理した群も、その活性はL.ロイテリライセート処理の群のそれより低いけれども若干高められた食作用活性を有することが見出された。この結果は、生きているL.モノサイトゲネスによる処理によって得られた結果ではないと考えるべきであり、特に注目に値することは食作用活性が高濃度のL.モノサイトゲネスライセートにより処理された群において、むしろ減少することが確認されたことである。これは高濃度のL.モノサイトゲネスライセート中に存在するいくつかの毒性因子によってマクロファージの活力が阻害される結果のようである。
【0039】
2)リンパ球増殖アッセイ
図2に示した結果は、脾臓及び胸腺から分離したリンパ球を用いたリンパ球増殖アッセイにより得た。脾臓及び胸腺から分離したリンパ球の増殖は、L.ロイテリ上澄み液(グリセロール溶液)処理の群において最高であることが確認された(p<0.05)。
【0040】
実験で使用した増殖を測定する方法はアラマーブルーアッセイである。その原理は、細胞増殖によって試薬が減少する程度にある。その値が、L.ロイテリ上澄み液(グリセロール溶液)がアルデヒドの3HPAを含有するという理由によってアルデヒドの酸化が原因で試薬が還元されたために高く測定されたかもしれないことを排除することはできない。しかしながら、L.ロイテリ上澄み液(グリセロール溶液)処理の群の細胞増殖は、顕微鏡観察のもとでもまた最高であることが確認されたので、L.ロイテリ上澄み液(グリセロール溶液)のリンパ球増殖能力は認めることができたものと判断される。
【0041】
L.ロイテリライセート単独で処理した群も若干のリンパ球増殖活性を有することが確認されたが、この活性は、参照の刺激物質のそれより低かった。
【0042】
(実施例3)
湿疹の減少を研究するためのヒト若年者へのMCT油中のL.ロイテリの投与
この試験は、L.ロイテリ及びMCT油による単純な食事補給が現在標準的な治療のもとにある幼児のアトピー性湿疹に影響を及ぼすことができるか否かを決定するために行った。ルンド(Lund)の小児科病院でのケーススタディは、標準的治療に応答しなかったしつこい湿疹をもつ少なくとも1人の小児を30日間のL.ロイテリ及びMCT油の食事補給の投与によって解決することができることを示した。本研究は、標準的治療のL.ロイテリによる補足が、管理された研究条件下でこのような効果を示すことを確認できることを示す。
【0043】
この試験の主要エンドポイントは、12カ月の治療期間の間のL.ロイテリ及びMCT油の投与による認証されている採点システム(SCORAD)に準ずる湿疹の程度及び重症度の低下である。治療開始時のスコアを規準化する。治療3、6、9及び/又は12カ月時点のプラセボ群におけるものより著しく大きいL.ロイテリ−MCT群におけるスコアの低下が主要エンドポイントと考える。これは、現行の一貫した無作為二重盲検試験である。中程度のアトピー性皮膚炎の診断がなされた後及び親によるインフォームドコンセントの後の年齢が3カ月と3歳の間(最高4回目の誕生日前まで)の患者が含まれる。その診断は新たなものである必要はなく、即ち既に標準的な治療下にある子供を含めてもよい。
【0044】
患者は、アレルギー医師に診てもらっている患者集団から募集する。試験担当者は、可能性のある参加者の親にその研究についての情報を提供し、包含基準及び除外基準が満たされ、書面による同意が得られた場合にその患者は含まれる。患者は、それぞれ20人の被検者を含む2つのコホートに無作為に分けられる。1つのグループは、MCT油中にL.ロイテリの補充を受け、他方はMCT油のみを含有するブラインドしたプラセボ製剤を受ける。その研究用の製品は、12カ月間投与される。
【0045】
試験担当者は、湿疹スコアの用紙に患者の検査に基づいて記入し、その湿疹を写真に撮る。家庭環境における危険因子を見つけ出すために質問表に従って家族の状況も記録する。研究用製品を親に与え、連日投与が始まる。
【0046】
両方のグループ共、それらの処方された湿疹の規則的な薬品治療を続ける。ステロイドの使用を測定するため、患者の親は、すべてのそれら処方されたステロイドを病院に持参することが求められ、その包みは、重さが量られて記録される。
【0047】
患者の親は、研究用製品を受け取った1カ月後に進捗を監視するための電話による連絡を受け、患者は3、6、9及び12カ月後に全体的検査、湿疹の写真による証拠書類作成及び新たな湿疹スコア用紙の完成のためにクリニックに戻る。12カ月で治療は完了する。
【0048】
研究の始めに患者の全IgEのレベル及びgmアロタイプを測定するため血液の試料を採取し、研究の完了時点で再び全IgEレベルを測定するために採取する。卵、ミルク、魚、ネコ及びピーナッツに対する皮膚プリックテストを両方の時点で行う。
【0049】
研究用製品の容器は、順守を確保するため、戻されて計量され、記録される。
【0050】
投与量
MCT油中のL.ロイテリは、研究の間中、L.ロイテリ−MCT油の10滴に相当する1×108CFU/日の用量で与える。プラセボ群においては、まったく同じMCT油の同量を与える。
【0051】
薬物療法/治療介入/食事
すべての形のステロイド及び必要に応じて特別に修正された食事は許容される。患者は、研究中にラクトバチルス及びプロバイオティックスを添加したすべての他の種類の食品からは完全に遮断しなければならない。
【0052】
定義
湿疹の重症度及び程度は、SCORADインデックス(The SCORD Index)によって定義される(Kunz B、Oranje AP、Labreze L、Stalder JF、Ring J、Taieb A.、Dermatology.1997;195(1):10−9、「SCORADインデックスについての臨床評価及び指針:アトピー性皮膚炎に対するヨーロッパ特別作業班の全会一致の報告書(Clinical validation and guidelines for the SCORAD index:consensus report of the European Task Force on Atopic Dermatitis)」)。
【0053】
各訪問時の手順
本研究は、参加者とその親による全部で5回のクリニックへの訪問及び1回の親との電話インタビューを必要とする。
【0054】
最初の訪問(0日)
書面による同意が得られた後、患者は研究の中に含まれる。患者の家族の状況を、家庭環境におけるアレルギー危険因子を見つけ出すために質問表に従って記録する。試験担当者は、患者の試験に基づいて湿疹スコア用紙に記入し、湿疹を写真に撮る。全IgE並びにgmアロタイプ(アレルギーに対する遺伝的決定基)の分析のため血液試料を採取する。卵、ミルク、魚、ピーナッツ及びネコに対するアレルギー反応を測定するため皮膚プリックテストを行う。
【0055】
各患者は、ランダム化番号を受け取り、対応する研究用製品(2瓶)が親に与えられ、連日投与が始まる。すべての患者が、湿疹のその処方された規則的な薬品治療を続ける。
【0056】
ステロイドの使用を測定するため、患者の親は、すべてのそれら処方されたステロイドを病院に持参することが求められ、その包みは、重さが量られて記録される。
【0057】
電話インタビュー(1カ月)
最初の訪問後1カ月目に患者の親に電話で連絡し、進捗を監視し、研究用製品が投与されていることを確実にし、親/患者が研究の手順に従う中で有するかもしれない問題を確認する。
【0058】
2回目の訪問(3カ月)
患者は、全体的検査、湿疹の写真による証拠書類作成及び新たな湿疹スコア用紙の完成のためにクリニックに戻る。患者の親は、すべてのそれら処方されたステロイドを病院に持参することが求められ、その包みは、重さが量られて記録される。最初の2個の研究用製品の瓶を計量し記録する。1個の瓶は今や空であるはずであり、これは試験担当者によって保管される。もう1つは部分的に空のはずであり、これは研究で引き続き使用するために保持される。この訪問でさらなる2個の研究用製品の瓶が親に供給される。
【0059】
3回目の訪問(6カ月)
患者は、全体的検査、湿疹の写真による証拠書類作成及び新たな湿疹スコア用紙の完成のためにクリニックに戻る。患者の親は、すべてのそれら処方されたステロイドを病院に持参することが求められ、その包みは、重さが量られて記録される。研究用製品の瓶を計量し記録する。2個の瓶は今や空であるはずであり、これらは試験担当者によって保管される。3個目の瓶はほとんどいっぱいのはずであり、これは研究で引き続き使用するために保持される。この訪問でさらなる2個の研究用製品の瓶が親に供給される。
【0060】
4回目の訪問(9カ月)
患者は、全体的検査、湿疹の写真による証拠書類作成及び新たな湿疹スコア用紙の完成のためにクリニックに戻る。患者の親は、すべてのそれら処方されたステロイドを病院に持参することが求められ、その包みは、重さが量られて記録される。研究用製品の瓶を計量し記録する。1個の瓶は今や空であるはずであり、これは試験担当者によって保管される。2個目の瓶は半分空のはずであり、3個目の瓶はいっぱいのはずである。これらの2個の瓶は研究で引き続き使用するために保持されなければならない。
【0061】
5回目で最後の訪問(12カ月)
患者は、最後の全体的検査、湿疹の写真による証拠書類作成及び新たな湿疹スコア用紙の完成のためにクリニックに戻る。血液試料を全IgEの分析のために採取する。卵、ミルク、魚、ピーナッツ及びネコに対するアレルギー反応を測定するために皮膚プリックテストを行う。
【0062】
親は、すべての処方されたステロイドを病院に持参しなければならず、その包みは、計量され使用が記録される。研究用製品の瓶が計量され、記録される。残っている2つの瓶は今や空のはずであり、これらは試験担当者によって保管される。
【0063】
統計的手法及びサンプルサイズの決定
患者を無作為に選んで、それぞれ25人の被検者を含む2つのコホートにする。これまでの結果に基づいて、50%の治療効果(これまでの研究におけるように)及び80%の検出力と仮定すれば、一般に各研究に対して効果を示すには1グループ当り20人の評価が可能な子供で十分のはずである。1グループ当り5人の余分の子供は、落伍者をカバーするために含める。
【0064】
結果と考察のまとめ
【0065】
【表5】
【0066】
【表6】
【0067】
良好な3HPAの産生株であるL.ロイテリ菌株ATCC55230のMCT油との組合せは、湿疹を顕著に改善する。
【0068】
(実施例4)
選択された菌株を含有する製品の製造
この実施例においては3−HPAを産生するラクトバチルス及びMCTを含有する製品が製造される。この製品は、好ましくは良好な安定性と保存寿命を満たすL.ロイテリSD2112を含有する油性製剤である。
【0069】
製造プロセスの説明
好ましい製造プロセスのフローチャートを図5に示す。本明細書の発明で使用することができる1つの上記の可能なプロセスの詳細は以下の通りである。
【0070】
成分の混合
1.中鎖トリグリセリド、例えばAkomed R(Karlshamns AB、Karshamn、スウェーデン)を二酸化ケイ素Cab−o−sil M5P(M5P、Cabot)と、Bolz機械混合槽(メーカーAlfred BOLZ Apparatebau GmbH、Wangen im Allgau、ドイツ)中で混合する。
2.均一化。Sineのポンプ及びディスパー(dispax)(Sine Pump、米国コロラド州アルバダ)をBolzミキサーに接続し、混合物を均一にする。
3.真空乾燥。製品の保存寿命を延長するために、混合物をBolz槽中10ミリバールの減圧下で12時間乾燥して油中の水を除去する。
4.ラクトバチルスロイテリの添加。約20kgの乾燥した油混合物を50リットルのステンレス容器に移す。求められる量によって変動する量のL.ロイテリ粉末、例えば凍結乾燥した細胞を油中に懸濁させる。例えば、1g当り1011個のCFUの活性を有する0.2kgの培養物を加える。それを均一になるまでゆっくりとかき混ぜる。
5.混合。L.ロイテリとのプレミックスをBolzミキサーに戻す。
6.取り出し。その懸濁液を200リットルのガラス容器に取り出し、窒素で覆う。その懸濁液は、製品の瓶に充填するまでその容器中に保持する。
【0071】
本明細書におけるように処方された製品は、経口投与用として使用することができる。別法では、それは、技術的に知られている経腸栄養製品中に加えられる経管栄養法用として、又はそれを局所使用に適するようにする技術的に知られている標準的な成分を用いる皮膚への局所適用のために処方することができる。
【0072】
いくつかの代表的な実施形態を本明細書で示したが、当業者であれば、本発明の精神又は範囲を逸脱することなく修正を加えられることは容易に理解するであろう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物が改善された免疫効果を得るための製品にMCT(中鎖トリアシルグリセリド)油とある種のラクトバチルス菌株との組合せを使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
栄養上、通常脂肪又は油と呼ばれる物質は、化学者及び栄養学者が脂質として分類しているいくつかの物質の1つである。脂肪は特徴として水に不溶性であり、アルコール等の一定の溶媒にのみ溶解する。脂肪はそれらの組成が炭水化物に似ているが、1グラム当たりより高いエネルギー生成を提供する。それらは炭水化物よりおよそ2倍から2.5倍の間の高いエネルギーを含有する。残念ながら、脂肪は新陳代謝のためにそれらが使用する酸素に無駄が多く、その結果燃焼が困難である。体は様々なプロセスに対して脂肪を必要とし、例えばそれらは細胞壁の構成に使用され、それらは脂肪溶解性ビタミン類(ビタミンA、D、E及びK)のための輸送機構を提供する。
【0003】
脂肪の種類には3種類−トリグリセリド、コレステロール及びリン脂質がある。食品中に見出される脂肪及び油は主としてトリグリセリドである傾向がある。トリグリセリドはアルコールであるグリセロールと3個の脂肪酸鎖から構成されている。トリグリセリドは我々が摂取し、我々の体内に貯蔵する脂肪の大部分を成している。それらは3つのはっきりと区別できる群、飽和、一不飽和及びポリ不飽和に分類される。その脂肪の分類は、それらの化学組成と関係している。飽和脂肪酸は、閉鎖された化学構造を有しており、それらの炭素原子は水素で「飽和」されており、他の化合物がそれと結合することを不可能にしている。一不飽和脂肪酸は、1個の二重結合及び2個の遊離炭素を有しており、そこに水素の他の化学結合が起こり得る。最後に、ポリ不飽和脂肪酸は、2個以上の二重結合を有しており、結合させることができる多数の遊離炭素を有する。これらの二重結合は、不飽和脂肪を、ほとんど不活性な飽和脂肪より生物学的に活性にする。
【0004】
トリグリセリドの成分である脂肪酸は、炭素原子、酸素原子、及び水素原子の様々な長さの鎖からなっている。炭素鎖の長さがこれらの鎖が、短鎖、中鎖及び長鎖トリグリセリドとして分類される原因となっている。中鎖トリグリセリド(MCT)は、脂肪のその他の形態よりそれらを生物学的により入手しやすくする特異的性質を有する(Osborn H.T.ら、Comprehensive Reviews in Food Science and Food Safety、第1巻、93〜103頁、2002年)。MCT類は、体がエネルギーを利用できるようにするために使用する脂肪によってとられる通常の経路を回避する。体がそれを使用する前に貯蔵する必要のある他の脂肪とは異なり、MCT類が必要とするプロセシングはわずかであり、その結果、体のエネルギーシステムにおける使用に素早く利用することができる。中鎖トリグリセリドのもう1つの重要な特徴は、いかに多く摂取されても体がそれを体脂肪として貯蔵できないことである。
【0005】
MCT油は天然に存在し、最も豊富な供給源はココナッツ油である。ほとんどのMCT油は、ココナッツ油から精製される。MCT油は、無味で低粘度の透明淡色の液体である。MCT油は、それが体内で代謝されるとき脂肪よりむしろ炭水化物のように挙動するために興味深い。体のために好ましい燃料は、炭水化物であり、体は炭水化物のその蓄積を他の燃料を使う前に使い尽くす。炭水化物は素早く作用し−運動選手はエネルギーを供給するためにグルコースの錠剤を取り込み、我々がアルコールを飲むと体は急に熱くなる−一般的に炭水化物は食べて数時間の内に消費され、我々が頻繁に食べるのはそのためである。一方、脂肪の主な役割は、エネルギーを貯蔵することである−動物は冬の厳しさに備えるために太る。長鎖脂肪(即ち通常種)は、消化器系によってカイロミクロンと呼ばれる化学物質に転化され、これらは次に循環系に入る前にリンパ系によって体の周辺に運ばれる。これは比較的進行がゆっくりであり、そのため脂肪は炭水化物よりゆっくり代謝する。他の脂肪とは異なり、MCT油は、リンパ系には進入せず、代わりにそれはそれが代謝される肝臓に直接運ばれ、そのため炭水化物と同様にエネルギーを素早く放出し、その過程で多くのケトン類を生ずる。MCTは、医療用栄養素、例えば経静脈栄養又は経腸栄養を含む様々な栄養製品に通常使用される。
【0006】
上記のようなMCT類は、また、より直接的な健康効果を有することが報告されている。例えば、Tufano M.A.らは、「異なる全静脈栄養療法で処置したマウスにおけるリポ多糖類に対する生存、サイトカイン放出及び食細胞機能(Survival to lipopolysaccharide,cytokine release and phagocyte functions in mice treated with different total parenteral nutrition regimens)(Immunopharmacol Inumunotoxicol.1995年8月;17(3):493〜509)の中で、長鎖トリグリセリド(LCT)及び中鎖トリグリセリド(MCT)による完全静脈栄養(TPN)の宿主防御に対する効果について報告した。リポ多糖類(LPS)抗原投与後の生存、大腸菌の血中クリアランス、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)及びインターロイキン−6(IL−6)のインビボ及びインビトロにおける産生を試験した。BALB/cマウスにおいて、LCT類は、対照と比較して死亡率を25%減少させた。LCTプラスMCTの混合物で行ったTPNは、死亡率を50%減少させた。
【0007】
注射されるトリグリセリド、特にMCTの濃度の臨床的な微調整は、有力な抗腫瘍効果及び正常な免疫系の維持を提供することを期待することができる(Kimoto Y.ら、「中鎖トリグリセリドの抗腫瘍効果及び体の自己防衛システムに対するその影響(Antitumor effect of medium−chain triglyceride and its influence on the self−defense system of the body)」;Cancer Detect Prev.1998;22(3):219〜24)。上記のようなMCT油は、また、例えば欧州特許第0756827号及び米国特許第6589576号に栄養剤の一部として述べられているが、ラクトバチルスとの組合せではない。さらに、欧州特許出願第1344458A1号は、ラクトバチルス等のプロバイオティック有機体を、好ましくは最小容量0.02cm3でその上MCT油を含む様々なバリアで場合により被覆したペレットを作製して保護する概念を開示している。この研究は、本発明の核心、即ち、改善された免疫効果のために、液体生成物中で選択された3−HPA(β−ヒドロキシ−プロピオンアルデヒド)を産生するラクトバチルスの菌株をMCT油と組み合わせるものに接近するものではない。
【0008】
一般に受け入れられている定義によるプロバイオティックは、宿主動物にその腸の微生物バランスを改善することによって有利に影響を与える生きた微生物の食品サプリメントである。最初は家畜用の動物飼料の補足を指していたがその定義はヒトの状況にも容易に適用される。ヒトによるプロバイオティック類の主な消費は、腸に寄生する種類のラクトバチルス及びビフィズス菌を含有する酪農系食品の形をしたものである。プロバイオティックの消費が腸管微生物叢の組成に影響することはその定義の中に内在する。腸の生態系に対するプロバイオティックのこの効果は、消費者に対して何か有益な仕方で影響を与えることが画策される。プロバイオティック類の作用を介する腸環境に対する変化に由来する多数の潜在的利点が立証されており、特に腸の感染症に対する抵抗力の増大、下痢の持続時間の減少、血圧の低下、血中コレステロール濃度の低減、アレルギーの減少、末梢血白血球による食作用の刺激、サイトカイン遺伝子発現の調節、アジュバント効果、腫瘍の後退、発癌物質又は発癌補助物質産生の減少等が挙げられる。
【0009】
L.ロイテリ(L.reuteri)を含む多岐にわたるラクトバチルス種の菌株が、プロバイオティック製剤に使用されてきた。ラクトバチルスロイテリは、天然に存在する動物の消化管の生息動物の1つであり、ヒトを含めた健康な動物の腸内にごく普通に見出される。それは抗菌作用を有することが知られている。例えば、米国特許第5439678号、同第5458875号、同第5534253号、同第5837238号、及び同第5849289号を参照されたい。L.ロイテリ細胞が、グリセロールが存在する嫌気条件下で成長する場合、それらはβ−ヒドロキシ−プロピオンアルデヒド(3−HPA)として知られる抗菌物質を産生する。
【0010】
3−HPAは、わずかなラクトバチルスによって細胞から分泌される代謝中間体である。3−HPAを搬出することが知られているそのような細菌種としては、L.ロイテリ、L.コリンホルミス(L.coryneformis)、L.コリノイデス(L.collinoides)、L.ヒルガルディ(L.hilgardii)等が挙げられる(Claisse Oら、J Food Prot.2001年1月;64(6):833〜7)(Sauvageot Nら、Int J Food Microbiol.2000年4月、10;55(1〜3):167〜70)。3−HPAは、病原菌を殺す菌株を産生する能力をある程度説明する抗微生物特性を有することが長いこと知られている。L.ロイテリ及びL.コリンホルミスを含む乳酸菌もまたそれらの宿主生物の免疫系に対して影響を有することが示されている。例えば、Wagner RDらによる「免疫不全マウスにおけるカンジダ症に対するプロバイオティック細菌の生物学的効果(Biotherapeutic effects of probiotic bacteria on candidiasis in immunodeficient mice)」(Infect Immune 1997年10月、65:4165〜72)を参照されたい。しかしながら、菌株の間で効果の差異が存在し、効果を高める方法、例えば、国際公開第2004/034808号において提供されているCD4+細胞を補充し、毒素を束縛する菌株を選択する方法が必要である。宿主免疫細胞の活性のラクトバチルスによる刺激又は修正の正確なメカニズムは依然としてほとんど明らかになっていない。多くの研究は、成長培地に放出される選択された乳酸菌から生じる特定の物質は宿主細胞の免疫反応の調節に関与していることを示している。これらの物質は、タンパク質、ペプチド及び核酸であると一般に考えられる。例えば、PenaらのCell Microbiol.2003年4月;5(4):277〜85を参照されたい。
【0011】
本明細書の発明は、ヒトを含めたいくつかの動物における一定のラクトバチルスの免疫調節効果を向上させるための方法、即ち、3−HPA産生性の選択されたラクトバチルスをMCT油と組み合わせることによる新規な方法を提供する。この組合せの効果は、これまでに知られている免疫調節に加えてのそれらのラクトバチルスによる抗菌効果である。それはその3−HPAの産生及びこの物質によるリンパ球の増殖に対する直接効果によって引き起こされる。3−HPA又はその前駆物質のグリセロール、又はその代謝産物の1,3−プロパンジオール及び3−OH−プロピオン酸は、哺乳動物における免疫系の有力な修飾因子としてはこれまで記載されていない。
【0012】
いくつかのラクトバチルスによる有効な抗菌作用の可能性が知られており、一定の免疫調節効果も知られていたが、免疫調節効果の実質的な改善が3−HPA産生性菌株においてそれらをMCT油と組み合わせることによって可能であることはこれまで知られていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、適当な条件下で3−HPAを産生することが知られているラクトバチルス菌株を用意し、免疫調節を向上させるためにそれらをMTC油と組み合わせることである。本発明のさらなる目的は、ヒトを含む動物に投与するための前記菌株とMCT油とを含有する製品を提供することである。
その他の目的及び利点は、以下の開示及び添付の特許請求の範囲からより完全に明らかとなろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本明細書の発明は、哺乳動物における免疫機能を選択された3−HPA産生性ラクトバチルスをMCT油と共に使用して向上させる方法である。この組合せの効果はこれまでに知られている免疫調節に加えてのそれらのラクトバチルスによる抗菌効果である。それはそれらの3−HPAの産生及びこの物質によるリンパ球の増殖に対する直接効果によって引き起こされる。その他の本発明の目的及び特徴は、以下の開示及び添付の特許請求の範囲からより完全に明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】食作用アッセイの結果を示す図である:A、細胞対照;B1、L.ロイテリライセート(800μg/ml);B2、L.ロイテリライセート(400μg/ml);B3、L.ロイテリライセート(200μg/ml);B4、L.ロイテリライセート(100μg/ml);B5、L.ロイテリライセート(50μg/ml);C1、L.モノサイトゲネスライセート(800μg/ml);C2、L.モノサイトゲネスライセート(400μg/ml);C3、L.モノサイトゲネスライセート(200μg/ml);C4、L.モノサイトゲネスライセート(100μg/ml);D、L.ロイテリ上澄み液(MRS);E、L.ロイテリ上澄み液(グリセロール溶液);F、L.ロイテリ+L.モノサイトゲネスライセート。
【図2】リンパ球増殖アッセイの結果を示す図である:B、Con A(6.25μg/ml);C、PWM(5μg/ml);D、PHA(6.25μg/ml);E、LPS(2.5μg/ml);F1、L.ロイテリライセート(400μg/ml);F2、L.ロイテリライセート(200μg/ml);F3、L.ロイテリライセート(100μg/ml);F4、L.ロイテリライセート(50μg/ml);G1、L.ロイテリ上澄み液(MRS100μl);G2、L.ロイテリ上澄み液(MRS 50μl);H1、L.ロイテリ上澄み液(グリセロール溶液100μl);H2、L.ロイテリ上澄み液(グリセロール溶液50μl)。
【図3】RL(L.ロイテリ)処理及びPC(陽性対照)処理におけるL.モノサイトゲネス(6日)の投与後3日の細菌数を示す図である。
【図4a】L.モノサイトゲネスの播種後3日(6日)及び2週間(17日)の主な免疫細胞を分析した結果を示す図である。特に、(β)TCR+CD3−T細胞を示す。
【図4b】L.モノサイトゲネスの播種後3日(6日)及び2週間(17日)の主な免疫細胞を分析した結果を示す図である。特に、CD4+CD25+T細胞を示す。
【図4c】L.モノサイトゲネスの播種後3日(6日)及び2週間(17日)の主な免疫細胞を分析した結果を示す図である。特に、CD8+T細胞を示す。
【図4d】L.モノサイトゲネスの播種後3日(6日)及び2週間(17日)の主な免疫細胞を分析した結果を示す図である。特に、CD4/CD8比を示す。
【図4e】L.モノサイトゲネスの播種後3日(6日)及び2週間(17日)の主な免疫細胞を分析した結果を示す図である。特に、(γ,δ)TCR+CD25+T細胞を示す。
【図4f】L.モノサイトゲネスの播種後3日(6日)及び2週間(17日)の主な免疫細胞を分析した結果を示す図である。特に、NK+CD28+細胞を示す。
【図4g】L.モノサイトゲネスの播種後3日(6日)及び2週間(17日)の主な免疫細胞を分析した結果を示す図である。特に、NK+細胞を示す。
【図5】本発明の製品のための製造プロセスの例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
グリセロールでの培養に応じて物質又は代謝産物を産生及び搬出する乳酸菌は、驚いたことに、宿主の免疫系の全体的な向上及び感染症と闘う能力と合致する免疫系の重要な細胞成分を刺激することが見出された。物質(油、脂肪及び脂質等)の供給及び消化管中の代謝を通してグリセロールを発生することが期待できる条件は、グリセロールから3−HPAを産生させる上記の乳酸菌と組み合わせると、宿主の免疫系を刺激する。MCT油は、以下でさらに説明するように、本明細書の発明のかかる添加物として最も適している。かくして、上記乳酸菌を上記製剤中に入れて宿主に供給することは有利である。
【0017】
本発明の好ましい一実施形態は、MCT油及び3−HPA産生性乳酸菌を含有し、発育不全の脂肪代謝の人々、例えばほとんどの普通の乳児及び歩き始めの幼児、それとまた、脂肪代謝障害を有する大人の消化管への経口送達用又は経管栄養法用として処方され、使用される製品である。その理由は、例えば本発明のMCT油の脂肪代謝は、消化管中で普通はグリセロールではなくむしろモノアシルグリセロール(1個の脂肪酸がまだ結合しているグリセロール)を発生するということである。これらのモノアシルグリセロールは、腸壁上で摂取され、肝臓で処理されて新たな脂質となり、循環する。しかしながら、例えば、人乳と共に分泌された胆汁酸塩刺激リパーゼは、位置特異性に欠けることが分かった、即ち、それは乳化したトリアシルグリセロールをグリセロールと脂肪酸に加水分解した。それは、また、ミセル状のsn−2モノアシルグリセロール(「sn」は、アシルグリセロールのグリセロール主鎖上の脂肪酸の位置を表し、例えばsn−2では、脂肪酸は、グリセロール主鎖の中間の位置にある)を加水分解した。これはsn−1及びsn−3エステル結合の加水分解に対して顕著な優先性を有する膵リパーゼと対照を成している。生の人乳を与えられた乳児の腸内のように2つの酵素が共に作用している場合、膵リパーゼによって形成されたsn−2モノアシルグリセロールは、胆汁酸塩刺激リパーゼに対する優れた基質として役立った。(Pediatric Research、Vol 16、882〜885、人乳脂質の消化:胆汁酸塩刺激リパーゼによるsn−2モノアシルグリセロール加水分解の生理学的意義(Digestion of human milk lipids:physiologic significance of sn−2 monoacylglycerol hydrolysis by bile salt−stimulated lipase)、O.Hernell及びL.Blackberg)。従って、トリアシルグリセロール加水分解の最終生成物は、グリセロールと脂肪酸となり、sn−2モノアシルグリセロールと脂肪酸ではない。胆汁酸塩刺激リパーゼは、また、脂肪酸のアシルグリセロールへの取り込みの触媒作用をする程度が膵リパーゼよりはるかに少ない。胆汁酸塩刺激リパーゼのこれら2つの効果は共に腔内脂肪分解の全体的進行に対する促進効果を有する。十二指腸内の胆汁酸塩濃度が低い新生児においては、グリセロールと脂肪酸も、モノアシルグリセロールと脂肪酸よりはより容易に吸収されるはずである。従って、膵リパーゼに対する補完物として役立つことにより、胆汁酸塩刺激リパーゼは、例えば同様に乳児、及び脂肪の消化及び吸収に対する未発達の内在性メカニズムをもつその他のものにおける乳脂質の効率的利用を確保することができる。このため、例えば乳児は、その脂肪代謝が未熟であるのでそれらの母乳(及び特殊調整粉乳)から脂質を摂取する異なるシステムを有しており、従って、乳児を養育するためのサプリメントとして与えられる3−HPA産生性ラクトバチルスは、そのような場合は共に働くグリセロールのまあまあ良好な源を有するであろうが、代謝されて3−HPA産生及び本発明の免疫機能の向上のための基質となることができる脂肪の入手を確保するため、本発明のアイデアは、MCT油等の脂肪源を3−HPA産生性ラクトバチルスと共に送達すべきであるというものである。これが例えば乳児の免疫系の働きを向上させる助けとなる。
【0018】
上記の好ましい実施形態において、本発明の製品はレシピエントの免疫系の全体又は一部の向上のために消化管に送達される。消化管中の3−HPAの産生が免疫系の全体に影響することができる理由は、消化管中の免疫学的機能が豊富なことである。これは、例えば、粘膜及び腸内面で成長しているマクロファージ及びリンパ球等の細胞による。消化管は、人体の最も大きな免疫器官であるものと当分野の多くの専門家によって考えられている(「腸管内菌叢及びプロバイオティックスの概説(Overview of gut flora and probiotics)」、Holzapfel,W.H.ら、International Journal of Food Microbiology、1998年5月)。
【0019】
本発明の別の好ましい実施形態においては、例えばMCT油及び3−HPA産生性乳酸菌を含有するが、免疫系を強化するため及び皮膚障害と闘うために局所適用する類似の製品を使用することができる。皮膚上皮を通る拡散及び下の免疫細胞との相互作用は、例えば湿疹、座瘡及び創傷における病原体に対する免疫機能の向上並びに炎症の減少及び治癒が期待される。
【0020】
MCT油は、特異な脂質であり−それらは急速に開裂し、速やかにグリセロールを生じさせることができる−これが改善された免疫効果を与えるために本発明でMCTを使用する理由である。本発明によるプロバイオティック、予防薬及び薬剤製品は、栄養又は製薬用途に受け入れられる添加剤及び賦形剤を含むことができる。中鎖トリグリセリド油は、中鎖トリグリセリド、即ちグリセロールの中鎖脂肪酸エステルを含む油である。中鎖脂肪酸は、当技術分野で一般に知られており、6〜12個の炭素原子、好ましくは8〜10個の炭素原子を含むことができる、例えばカプリル酸及びカプリン酸等である。Karlshamn社によるAkomed Rは、本発明に合致する有用なMCT油の1例である。それは、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドを含む。
【0021】
以下の実施例から分かるように、本発明の製品に使用されるMCT油は、市場で容易に調達される。3−HPA産生性乳酸菌を単離する別の方法、例えばRodrigues E.らにより記載されている方法(Letters in Applied Microbiology 37巻3号259頁〜、2003年9月)を使用することができる。好ましい種の1つはL.ロイテリであり、好ましい菌株の1つはL.ロイテリATCC55730である。
【0022】
本発明の特徴は、本発明を限定するものと解釈すべきではない以下の実施例を参照することによってより明確に理解されよう。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
マクロファージにおける食作用活性の改善
概要
L.ロイテリ上澄み液を、グリセロール(50mM)の存在下及び非存在下で成長しているL.ロイテリATCC55730から得た。これらの上澄み液は、腹腔マクロファージ(SPF BALB/cの6週間のマウスから得た)を一夜の培養で前処理するために使用した。そのマクロファージは、次いでそれらの貪食能を測定するためにリステリアモノサイトゲネスを播種した。2時間の培養後、マクロファージ中の生存L.モノサイトゲネスの量を測定した。
【0024】
L.ロイテリ上澄み液なしの対照培養は、これら条件下におけるマクロファージ中に著しいL.モノサイトゲネスの生き残りを示した。グリセロール不在の中で成長させた細胞からのL.ロイテリ上澄み液によるマクロファージの前処理は、対照培養と比較して食作用のレベルに影響を及ぼさなかった(図1)。しかしながら、驚いたことに、グリセロールの存在下で成長させた細胞からのL.ロイテリ上澄み液によるマクロファージの前処理は、マクロファージ中のすべてのL.モノサイトゲネスの効果的な死滅をもたらした。かくして、グリセロール存在下でのL.ロイテリの成長は、細胞の食作用活性を刺激する原因となった。培地中のグリセロール単独(対照)は、上記効果を有さなかった(対照「H」は他の対照と同じ)。
【0025】
似ているがそれほど顕著ではないマクロファージの食作用活性の刺激を、用量依存的にマクロファージをL.ロイテリ又はL.モノサイトゲネス由来のライセートで前処理することによって誘発することができる。L.ロイテリ中のグリセロール誘発代謝は、抗原暴露によって誘発されるものより効果的な食作用活性の刺激をもたらした。
【0026】
実験の詳細
研究の方法
1.食作用アッセイ及びリンパ球増殖アッセイ。リンパ球及び腹腔マクロファージを特定の無菌のBALB/cマウス(6週間経過のもの)から分離し、宿主における免疫強化効果についてのアッセイを行った。腹腔マクロファージを用いる食作用アッセイ。
− 腹腔マクロファージの分離。BALB/cマウスを頚椎脱臼により犠牲にし、次いで5mlのイスコブ改変ダルベッコー培地(Iscove’s modified Dulbecco’s medium)(IMDM)を注入し、マッサージした。注入したIMDMを回収し、生きている細胞をトリパンブルー排除法により数え、実験では1×106個/mlに調整した最終濃度で使用した。
− 細菌ライセートの調製。ラクトバチルスロイテリSD2112及びリステリアモノサイトゲネスHPB3セロタイプ4bをMRS+0.02Mのグルコース培養液及びトリプシン大豆培養液(TBS)中でそれぞれ24時間培養し、8,000rpmで20分間遠心分離にかけて細胞ペレットを得た。その細胞ペレットを0.9%のNaCl溶液で2回洗浄した。次いでこのペレットを60℃で3時間加熱して不活性化し、タンパク質濃度をビシンコニン酸(BSA)タンパク質アッセイ法により計算し、5mg/mlに調整した。
− L.ロイテリ上澄み液の調製。L.ロイテリをMRS+0.02Mのグルコース培養液中で24時間培養し、遠心分離にかけてMRS培養液上澄み液を得た。その上澄み液を0.05Mのグリセロール溶液中に懸濁させて6時間培養し、次いでグリセロール溶液の上澄み液を回収した。回収された細胞ペレットの量は、最大2g/30ml(湿潤重量)であった。回収した上澄み液はすべてpHを7.3に調整した後使用した。
− 食作用アッセイ。腹腔マクロファージを、IMDM+10%ウマ血清中に1ウェル当り4×105個で懸濁させ、一晩の培養の間、L.ロイテリ、L.モノサイトゲネス細胞ライセート及びL.ロイテリ上澄み液の濃度を変動させて処理した。その濃度と条件は以下の通りである。
【表1】
MRS対照及びグリセロール溶液対照は、L.ロイテリで培養していない培養液のpHを調整して使用した。
【0027】
上記条件で処理した腹腔マクロファージをTBS中で培養し、0.9%NaCl溶液で洗浄した4×104個のL.モノサイトゲネス(HPB3セロタイプ4b、ゲンタマイシン感受性)を播種した。37℃2時間の培養後、そのマクロファージを洗浄し、次いで200μg/mlのゲンタマイシンで処理して細胞外の細菌を死滅させた。細胞を燐酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄し、0.5ml/ウェルのPBS+0.5%トライトンX−100で溶解し、細胞内微生物にさらした。次いで、細菌の数を、連続希釈に続いてPalcam寒天(Oxoid Inc、米国ニューヨーク州オグデンスブルグ)及びトリプシン大豆寒天(Oxoid Inc、米国ニューヨーク州オグデンスブルグ)を用いる薄層法により計算した。
【0028】
(実施例2)
リンパ球増殖の改良
概要
リンパ球は、BALB/cマウスの脾臓及び胸腺から用意し、グリセロール(50mM)が存在する及び存在しない中で成長するL.ロイテリATCC55730から得た上澄み液で培養した。L.ロイテリATCC55730は、3−HPAの周知の良好な産生株であり、本発明の選択基準に従うので選択した。対照の培養は、グリセロール単独、培地単独及び既知のリンパ球増殖刺激物質で実施した。
【0029】
既知の刺激物質(ConA、PWM、PHA及びLPS)は、リンパ球増殖の際立った刺激をもたらした。L.ロイテリ由来のライセートは、リンパ球の増殖の小さな用量依存性の刺激をもたらし、グリセロールなしの中で成長したL.ロイテリ由来の上澄み液による培養は、リンパ球増殖の大幅な上昇はもたらさなかった。驚いたことに、グリセロールが存在する中で成長したL.ロイテリ由来の上澄み液は、既知の刺激物質で見られるより高いレベルまでの顕著なリンパ球の増殖をもたらした(図2参照)。
【0030】
実験の詳細
リンパ球増殖アッセイ
− 脾臓及び胸腺リンパ球の分離。BALB/cマウスを頚椎脱臼により犠牲にし、それらの胸腺を分離し、ハンクス平衡塩溶液(HESS)中に浸し、ばらばらに引き裂いて単細胞を得た。その単細胞をHistopaque−1083(Sigma社)の二重層を通す遠心分離にかけてリンパ球を得た。これらの細胞をIMDMで2回洗浄し、生きている細胞をトリパンブルー排除法により数え、実験では1×107個/mlに調整した最終濃度で使用した。
− 細菌ライセートの調製。L.ロイテリ及びリステリアモノサイトゲネスライセートを食作用アッセイで述べたようにして調製した。
− L.ロイテリ上澄み液の調製。L.ロイテリ上澄み液もまた食作用アッセイで述べたようにして調製した。
− リンパ球増殖アッセイ。リンパ球増殖アッセイは、IMDM+10%ウマ血清中にウェル当り4×106個で懸濁させたリンパ球を用いて実施した。リンパ球は、様々な濃度のL.ロイテリ、L.モノサイトゲネス細胞ライセート及びL.ロイテリ上澄み液、並びに参照の刺激物質で処理し、その濃度及び条件は以下の通りである。
【表2】
表2に報告されている結果において、MRS対照及びグリセロール溶液対照は、L.ロイテリで培養していない培養液のpHを調整して使用し、以下の記号を使用した。ConA:コンカナバリンA、PWM:ヤマゴボウマイトジェン、PHA:フィトヘムアグルチニン、LPS:サルモネラエンテリカ(Salmonella enterica serovar Typhimurium)由来のリポポリサッカライド。
【0031】
ConAを含む刺激物質を、各条件と合致するリンパ球を含有するウェル中に加え、3時間後アラマーブルー(alamar blue)を10%の濃度で加えた。各刺激物質の添加後72時間に、リンパ球増殖のレベルは、OD570nm〜OD600nmの値で測定した。
【0032】
リンパ球増殖の結果は、(処理OD−培地対照OD)/細胞対照ODの値である刺激指数(SI)として表した。しかしながら、L.ロイテリ上澄み液処理群の場合は、IMDM+10%ウマ血清ではなく、J及びKの処理群の値を培地対照OD値として使用した。
【0033】
マウスインビボ抗原投与及び免疫細胞中の分配率の変化
特定の無菌のBALB/cマウス(6週間経過のもの)を4つのグループに分けた。L.ロイテリ及びL.モノサイトゲネスを5×108個/マウスに調製し、経口投与させた。L.モノサイトゲネスを投与する時間の30分前に、L.モノサイトゲネスの生存率を高めるために10%重炭酸ナトリウム0.25Mを投与した。
【0034】
【表3】
【0035】
L.ロイテリのL.モノサイトゲネスに対する保護作用を試験するために、すべての群のそれぞれ8匹のマウスを、L.モノサイトゲネスの投与後3日(6日)及び14日(17日)に犠牲にし、そこから血液、肝臓及び脾臓を採取した。加えて、L.ロイテリそれ自身の免疫機構における関与を試験するため、NC群及びR群両方のそれぞれ8匹のマウスを31日目にさらに検査した。
1)肝臓及び脾臓中のL.モノサイトゲネスの計算。各マウス群から採取した肝臓及び脾臓を計量し、10mlのPBS(pH7.0)を含有するワールパック(whirl pack)中で均一にした。連続希釈に続いて生きている細菌をPalcam寒天により数えた。
2)フローサイトメトリーを用いる免疫細胞アッセイ
− 血液からの白血球の分離。血液を2〜3匹の動物から取り出して溜め、1,500rpmで30分間、Histopaque−1083の二重層を通す遠心分離にかけ、その後リンパ球をリンパ球層から集めた。それを燐酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄し、RPMI−1640培地に懸濁させ、次いで生きている細胞をトリパンブルー排除法により数え、実験では1×107個/mlに調整した最終濃度で使用した。
− 白血球表面モノクローナル抗体を用いるフローサイトメトリーアッセイ。分離した白血球を20%のヤギの血清を含有する第1の洗浄用緩衝液(PBS450ml、ACD50ml、20%NaN35ml、γグロブリンなしのウマの血清10ml、250mMのEDTA20ml、0.5%フェノールレッド1ml)中に懸濁させ、4℃で10分間感作させた。遠心分離後、底がV型の96個のウェルのマイクロプレートの各ウェルに、白血球表面抗原に対して特異的な100μlのモノクローナル抗体及び血液から分離した白血球の1×107個/mlの50μlを加え、その後4℃で30分間感作させた。二重の染色を行い、使用した試薬は表4におけるものと同じである。第1の洗浄用緩衝液で3回洗浄した後、残っている白血球を、ウマの血清が除去されている以外は第1の洗浄用緩衝液と同じである4℃の第2の洗浄用緩衝液で3回洗浄し、2%ホルマリン溶液中で固定した。2,000を超える染色細胞をフローサイトメトリーによって検査し、CellQuestプログラム(Becton Dickinson社)を用いてデータ分析を行った。
【0036】
【表4】
【0037】
結果及び考察
1)腹腔マクロファージを用いる食作用アッセイ
腹腔マクロファージを用いる食作用アッセイの結果を図1に示す。図のように腹腔マクロファージの食作用アッセイの結果は、L.ロイテリグリセロール溶液上澄み液及びL.ロイテリ+L.モノサイトゲネスライセートによる処理の場合最も高いことが確認された(p<0.05)。言い換えると、L.ロイテリグリセロール溶液上澄み液は、100μl又は50μlの処理には関わりなく同一の効果を有しており、マクロファージによって貪食されたL.モノサイトゲネスをほとんど完全に死滅させた。L.ロイテリ+L.モノサイトゲネスライセートの各400、200及び100μl/mlの混合処理もまたマクロファージによって貪食されたL.モノサイトゲネスを実質的に死滅させた。L.ロイテリライセート単独で処理した群は、上記の2つの処理群より小さい食作用活性を有しており、L.モノサイトゲネスが食作用後でさえ生きていたが、L.ロイテリライセート処理群(B)の食作用活性は、L.モノサイトゲネスライセート処理群(C)のそれより高いことが分かった(P<0.05)。これらの結果に照らして、L.ロイテリライセートそれ自身及びその代謝産物は、腹腔マクロファージの食作用活性を、特に病原体のライセート、例えばL.モノサイトゲネスの存在下で高めることができることが認められた。MRS培養液の上澄み液で処理した群が腹腔マクロファージの食作用活性を高めることができないことが分かり、一方でグリセロール溶液上澄み液により処理した群が高い食作用活性を示したことを考慮すると、食作用活性を高める物質は、グリセロール代謝産物であると推定され、高い抗菌能力を有するロイテリンである可能性もあるものと推定される。この問題は、後に続く実験によりさらに研究する必要があるものと思われる。
【0038】
L.モノサイトゲネスライセートにより処理した群も、その活性はL.ロイテリライセート処理の群のそれより低いけれども若干高められた食作用活性を有することが見出された。この結果は、生きているL.モノサイトゲネスによる処理によって得られた結果ではないと考えるべきであり、特に注目に値することは食作用活性が高濃度のL.モノサイトゲネスライセートにより処理された群において、むしろ減少することが確認されたことである。これは高濃度のL.モノサイトゲネスライセート中に存在するいくつかの毒性因子によってマクロファージの活力が阻害される結果のようである。
【0039】
2)リンパ球増殖アッセイ
図2に示した結果は、脾臓及び胸腺から分離したリンパ球を用いたリンパ球増殖アッセイにより得た。脾臓及び胸腺から分離したリンパ球の増殖は、L.ロイテリ上澄み液(グリセロール溶液)処理の群において最高であることが確認された(p<0.05)。
【0040】
実験で使用した増殖を測定する方法はアラマーブルーアッセイである。その原理は、細胞増殖によって試薬が減少する程度にある。その値が、L.ロイテリ上澄み液(グリセロール溶液)がアルデヒドの3HPAを含有するという理由によってアルデヒドの酸化が原因で試薬が還元されたために高く測定されたかもしれないことを排除することはできない。しかしながら、L.ロイテリ上澄み液(グリセロール溶液)処理の群の細胞増殖は、顕微鏡観察のもとでもまた最高であることが確認されたので、L.ロイテリ上澄み液(グリセロール溶液)のリンパ球増殖能力は認めることができたものと判断される。
【0041】
L.ロイテリライセート単独で処理した群も若干のリンパ球増殖活性を有することが確認されたが、この活性は、参照の刺激物質のそれより低かった。
【0042】
(実施例3)
湿疹の減少を研究するためのヒト若年者へのMCT油中のL.ロイテリの投与
この試験は、L.ロイテリ及びMCT油による単純な食事補給が現在標準的な治療のもとにある幼児のアトピー性湿疹に影響を及ぼすことができるか否かを決定するために行った。ルンド(Lund)の小児科病院でのケーススタディは、標準的治療に応答しなかったしつこい湿疹をもつ少なくとも1人の小児を30日間のL.ロイテリ及びMCT油の食事補給の投与によって解決することができることを示した。本研究は、標準的治療のL.ロイテリによる補足が、管理された研究条件下でこのような効果を示すことを確認できることを示す。
【0043】
この試験の主要エンドポイントは、12カ月の治療期間の間のL.ロイテリ及びMCT油の投与による認証されている採点システム(SCORAD)に準ずる湿疹の程度及び重症度の低下である。治療開始時のスコアを規準化する。治療3、6、9及び/又は12カ月時点のプラセボ群におけるものより著しく大きいL.ロイテリ−MCT群におけるスコアの低下が主要エンドポイントと考える。これは、現行の一貫した無作為二重盲検試験である。中程度のアトピー性皮膚炎の診断がなされた後及び親によるインフォームドコンセントの後の年齢が3カ月と3歳の間(最高4回目の誕生日前まで)の患者が含まれる。その診断は新たなものである必要はなく、即ち既に標準的な治療下にある子供を含めてもよい。
【0044】
患者は、アレルギー医師に診てもらっている患者集団から募集する。試験担当者は、可能性のある参加者の親にその研究についての情報を提供し、包含基準及び除外基準が満たされ、書面による同意が得られた場合にその患者は含まれる。患者は、それぞれ20人の被検者を含む2つのコホートに無作為に分けられる。1つのグループは、MCT油中にL.ロイテリの補充を受け、他方はMCT油のみを含有するブラインドしたプラセボ製剤を受ける。その研究用の製品は、12カ月間投与される。
【0045】
試験担当者は、湿疹スコアの用紙に患者の検査に基づいて記入し、その湿疹を写真に撮る。家庭環境における危険因子を見つけ出すために質問表に従って家族の状況も記録する。研究用製品を親に与え、連日投与が始まる。
【0046】
両方のグループ共、それらの処方された湿疹の規則的な薬品治療を続ける。ステロイドの使用を測定するため、患者の親は、すべてのそれら処方されたステロイドを病院に持参することが求められ、その包みは、重さが量られて記録される。
【0047】
患者の親は、研究用製品を受け取った1カ月後に進捗を監視するための電話による連絡を受け、患者は3、6、9及び12カ月後に全体的検査、湿疹の写真による証拠書類作成及び新たな湿疹スコア用紙の完成のためにクリニックに戻る。12カ月で治療は完了する。
【0048】
研究の始めに患者の全IgEのレベル及びgmアロタイプを測定するため血液の試料を採取し、研究の完了時点で再び全IgEレベルを測定するために採取する。卵、ミルク、魚、ネコ及びピーナッツに対する皮膚プリックテストを両方の時点で行う。
【0049】
研究用製品の容器は、順守を確保するため、戻されて計量され、記録される。
【0050】
投与量
MCT油中のL.ロイテリは、研究の間中、L.ロイテリ−MCT油の10滴に相当する1×108CFU/日の用量で与える。プラセボ群においては、まったく同じMCT油の同量を与える。
【0051】
薬物療法/治療介入/食事
すべての形のステロイド及び必要に応じて特別に修正された食事は許容される。患者は、研究中にラクトバチルス及びプロバイオティックスを添加したすべての他の種類の食品からは完全に遮断しなければならない。
【0052】
定義
湿疹の重症度及び程度は、SCORADインデックス(The SCORD Index)によって定義される(Kunz B、Oranje AP、Labreze L、Stalder JF、Ring J、Taieb A.、Dermatology.1997;195(1):10−9、「SCORADインデックスについての臨床評価及び指針:アトピー性皮膚炎に対するヨーロッパ特別作業班の全会一致の報告書(Clinical validation and guidelines for the SCORAD index:consensus report of the European Task Force on Atopic Dermatitis)」)。
【0053】
各訪問時の手順
本研究は、参加者とその親による全部で5回のクリニックへの訪問及び1回の親との電話インタビューを必要とする。
【0054】
最初の訪問(0日)
書面による同意が得られた後、患者は研究の中に含まれる。患者の家族の状況を、家庭環境におけるアレルギー危険因子を見つけ出すために質問表に従って記録する。試験担当者は、患者の試験に基づいて湿疹スコア用紙に記入し、湿疹を写真に撮る。全IgE並びにgmアロタイプ(アレルギーに対する遺伝的決定基)の分析のため血液試料を採取する。卵、ミルク、魚、ピーナッツ及びネコに対するアレルギー反応を測定するため皮膚プリックテストを行う。
【0055】
各患者は、ランダム化番号を受け取り、対応する研究用製品(2瓶)が親に与えられ、連日投与が始まる。すべての患者が、湿疹のその処方された規則的な薬品治療を続ける。
【0056】
ステロイドの使用を測定するため、患者の親は、すべてのそれら処方されたステロイドを病院に持参することが求められ、その包みは、重さが量られて記録される。
【0057】
電話インタビュー(1カ月)
最初の訪問後1カ月目に患者の親に電話で連絡し、進捗を監視し、研究用製品が投与されていることを確実にし、親/患者が研究の手順に従う中で有するかもしれない問題を確認する。
【0058】
2回目の訪問(3カ月)
患者は、全体的検査、湿疹の写真による証拠書類作成及び新たな湿疹スコア用紙の完成のためにクリニックに戻る。患者の親は、すべてのそれら処方されたステロイドを病院に持参することが求められ、その包みは、重さが量られて記録される。最初の2個の研究用製品の瓶を計量し記録する。1個の瓶は今や空であるはずであり、これは試験担当者によって保管される。もう1つは部分的に空のはずであり、これは研究で引き続き使用するために保持される。この訪問でさらなる2個の研究用製品の瓶が親に供給される。
【0059】
3回目の訪問(6カ月)
患者は、全体的検査、湿疹の写真による証拠書類作成及び新たな湿疹スコア用紙の完成のためにクリニックに戻る。患者の親は、すべてのそれら処方されたステロイドを病院に持参することが求められ、その包みは、重さが量られて記録される。研究用製品の瓶を計量し記録する。2個の瓶は今や空であるはずであり、これらは試験担当者によって保管される。3個目の瓶はほとんどいっぱいのはずであり、これは研究で引き続き使用するために保持される。この訪問でさらなる2個の研究用製品の瓶が親に供給される。
【0060】
4回目の訪問(9カ月)
患者は、全体的検査、湿疹の写真による証拠書類作成及び新たな湿疹スコア用紙の完成のためにクリニックに戻る。患者の親は、すべてのそれら処方されたステロイドを病院に持参することが求められ、その包みは、重さが量られて記録される。研究用製品の瓶を計量し記録する。1個の瓶は今や空であるはずであり、これは試験担当者によって保管される。2個目の瓶は半分空のはずであり、3個目の瓶はいっぱいのはずである。これらの2個の瓶は研究で引き続き使用するために保持されなければならない。
【0061】
5回目で最後の訪問(12カ月)
患者は、最後の全体的検査、湿疹の写真による証拠書類作成及び新たな湿疹スコア用紙の完成のためにクリニックに戻る。血液試料を全IgEの分析のために採取する。卵、ミルク、魚、ピーナッツ及びネコに対するアレルギー反応を測定するために皮膚プリックテストを行う。
【0062】
親は、すべての処方されたステロイドを病院に持参しなければならず、その包みは、計量され使用が記録される。研究用製品の瓶が計量され、記録される。残っている2つの瓶は今や空のはずであり、これらは試験担当者によって保管される。
【0063】
統計的手法及びサンプルサイズの決定
患者を無作為に選んで、それぞれ25人の被検者を含む2つのコホートにする。これまでの結果に基づいて、50%の治療効果(これまでの研究におけるように)及び80%の検出力と仮定すれば、一般に各研究に対して効果を示すには1グループ当り20人の評価が可能な子供で十分のはずである。1グループ当り5人の余分の子供は、落伍者をカバーするために含める。
【0064】
結果と考察のまとめ
【0065】
【表5】
【0066】
【表6】
【0067】
良好な3HPAの産生株であるL.ロイテリ菌株ATCC55230のMCT油との組合せは、湿疹を顕著に改善する。
【0068】
(実施例4)
選択された菌株を含有する製品の製造
この実施例においては3−HPAを産生するラクトバチルス及びMCTを含有する製品が製造される。この製品は、好ましくは良好な安定性と保存寿命を満たすL.ロイテリSD2112を含有する油性製剤である。
【0069】
製造プロセスの説明
好ましい製造プロセスのフローチャートを図5に示す。本明細書の発明で使用することができる1つの上記の可能なプロセスの詳細は以下の通りである。
【0070】
成分の混合
1.中鎖トリグリセリド、例えばAkomed R(Karlshamns AB、Karshamn、スウェーデン)を二酸化ケイ素Cab−o−sil M5P(M5P、Cabot)と、Bolz機械混合槽(メーカーAlfred BOLZ Apparatebau GmbH、Wangen im Allgau、ドイツ)中で混合する。
2.均一化。Sineのポンプ及びディスパー(dispax)(Sine Pump、米国コロラド州アルバダ)をBolzミキサーに接続し、混合物を均一にする。
3.真空乾燥。製品の保存寿命を延長するために、混合物をBolz槽中10ミリバールの減圧下で12時間乾燥して油中の水を除去する。
4.ラクトバチルスロイテリの添加。約20kgの乾燥した油混合物を50リットルのステンレス容器に移す。求められる量によって変動する量のL.ロイテリ粉末、例えば凍結乾燥した細胞を油中に懸濁させる。例えば、1g当り1011個のCFUの活性を有する0.2kgの培養物を加える。それを均一になるまでゆっくりとかき混ぜる。
5.混合。L.ロイテリとのプレミックスをBolzミキサーに戻す。
6.取り出し。その懸濁液を200リットルのガラス容器に取り出し、窒素で覆う。その懸濁液は、製品の瓶に充填するまでその容器中に保持する。
【0071】
本明細書におけるように処方された製品は、経口投与用として使用することができる。別法では、それは、技術的に知られている経腸栄養製品中に加えられる経管栄養法用として、又はそれを局所使用に適するようにする技術的に知られている標準的な成分を用いる皮膚への局所適用のために処方することができる。
【0072】
いくつかの代表的な実施形態を本明細書で示したが、当業者であれば、本発明の精神又は範囲を逸脱することなく修正を加えられることは容易に理解するであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトを含めた哺乳動物の免疫機能を向上させるための製品であって、中鎖トリグリセリド油と組み合わせた3−HPA産生性乳酸菌を含む製品。
【請求項2】
乳酸菌が、ラクトバチルスロイテリ(Lactobacillus reuteri)の菌株からなる群から選択される、請求項1に記載の製品。
【請求項3】
ラクトバチルスロイテリ(Lactobacillus reuteri)の菌株が、菌株ATCC55730である、請求項2に記載の製品。
【請求項4】
中鎖トリグリセリド油が、Akomed Rである、請求項1に記載の製品。
【請求項5】
経口投与用に処方されている、請求項1に記載の製品。
【請求項6】
製品が経腸栄養製品に加えるための経管栄養用に処方されている、請求項1に記載の製品。
【請求項7】
皮膚への局所適用用に処方されている、請求項1に記載の製品。
【請求項8】
ヒトを含めた哺乳動物の免疫機能を向上させる方法であって、中鎖トリグリセリド油と組み合わせた3−HPA産生性乳酸菌を哺乳動物に投与することを含む方法。
【請求項9】
製品が経口投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
製品が皮膚に適用される、請求項6に記載の方法。
【請求項1】
ヒトを含めた哺乳動物の免疫機能を向上させるための製品であって、中鎖トリグリセリド油と組み合わせた3−HPA産生性乳酸菌を含む製品。
【請求項2】
乳酸菌が、ラクトバチルスロイテリ(Lactobacillus reuteri)の菌株からなる群から選択される、請求項1に記載の製品。
【請求項3】
ラクトバチルスロイテリ(Lactobacillus reuteri)の菌株が、菌株ATCC55730である、請求項2に記載の製品。
【請求項4】
中鎖トリグリセリド油が、Akomed Rである、請求項1に記載の製品。
【請求項5】
経口投与用に処方されている、請求項1に記載の製品。
【請求項6】
製品が経腸栄養製品に加えるための経管栄養用に処方されている、請求項1に記載の製品。
【請求項7】
皮膚への局所適用用に処方されている、請求項1に記載の製品。
【請求項8】
ヒトを含めた哺乳動物の免疫機能を向上させる方法であって、中鎖トリグリセリド油と組み合わせた3−HPA産生性乳酸菌を哺乳動物に投与することを含む方法。
【請求項9】
製品が経口投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
製品が皮膚に適用される、請求項6に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図4e】
【図4f】
【図4g】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図4e】
【図4f】
【図4g】
【図5】
【公開番号】特開2013−14617(P2013−14617A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−221888(P2012−221888)
【出願日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【分割の表示】特願2008−509976(P2008−509976)の分割
【原出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【出願人】(507340120)バイオガイヤ エービー (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−221888(P2012−221888)
【出願日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【分割の表示】特願2008−509976(P2008−509976)の分割
【原出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【出願人】(507340120)バイオガイヤ エービー (5)
【Fターム(参考)】
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