説明

中間の気液分離を伴わずに再生可能な源からの仕込原料を良好な品質のディーゼル燃料ベースにゼオライト触媒を用いて転化する方法

【課題】中間の気液分離を伴わずに再生可能な源からの仕込原料を処理して、優れた品質のディーゼル燃料ベースを製造する方法を提供する。
【解決手段】用いられる仕込原料は、未加工植物油または予備精製段階に事前に付された油、動物脂肪、またはこのような仕込原料の混合物であり、a)水素化処理する段階、b)炭化水素含有ベースを分離する段階、c)窒素化合物を除去する段階、d)水素化異性化する段階、e)ディーゼル燃料ベースを分離する段階から構成される、高いディーゼル燃料ベースの収率がこのような仕込原料から得られることを可能にする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
欧州共同体における燃料のニーズ、特に、ディーゼル燃料ベースのニーズの急速な成長によって特徴付けられる国際的な状況において、従来の精製および燃料産生計画において統合され得る新しい再生可能なエネルギー源についての研究が主要な挑戦になった。
【0002】
精製法における、リグノセルロースバイオマスの転化または植物油の製造に由来する植物起源または動物脂肪の新生成物の統合は、したがって、化石材料のコストの増加のために、最近数年内において新たな興味を知った。同様に、従来のバイオ燃料(主として、エタノールまたは植物油のメチルエステル)は、ガソリンプールにおける石油タイプの燃料に対する補足物としての実際の地位を獲得した。加えて、植物油または動物脂肪を用いる今日知られる方法は、CO放出の原因であり、これは、環境上へのそれらの否定的な効果について知られている。これらのバイオ供給源のより良好な使用、例えば、ガソリンプールにおけるそれらの統合は、したがって、疑問の余地のない利点であるだろう。
【0003】
環境についての高い関心と結び付けられる、ディーゼル燃料に対する高い需要は、再生可能な源から来る仕込原料を使用することの興味を強める。このような仕込原料の例は、植物油、動物脂肪(未加工または予備処理に付されたもの)、並びに、このような仕込原料の混合物である。これらの仕込原料は、トリグリセリドまたはエステルまたは脂肪酸型の化学構造を含有し、このものの炭化水素鎖の構造および長さは、ディーゼル燃料中に存在する炭化水素に匹敵する。
【0004】
可能なアプローチは、エステル転移反応により植物油タイプの仕込原料を転化することに存する。このような仕込原料を本質的に構成するトリグリセリドは、その時、アルコールおよび触媒の存在下に、対応するエステルに転化される。このアプローチの以下の欠点が挙げられ得る:a)エステル中の酸素の存在に起因するNOx排出の増加;b)360℃程度というかなり高い沸点、これは、終点規制に合致するという問題を引き起こし得る。
【背景技術】
【0005】
特許文献1には、中間留出液を製造するための脱炭酸による再生可能な源からの仕込原料の転化が記載されている。この選択肢の利点は、必要な水素消費を制限することに存する。この方法は、場合による予備処理段階と、次のSAPO−11、SAPO−41、ZSM−22、フェリエライトまたはZSM−23の中から選択されるモレキュラーシーブと、パラジウム、白金およびニッケルの中から選択される第VIII族金属とを含有する触媒を用いる異性化段階とを含み、この方法は、200〜500℃の範囲にわたる温度、2〜15MPaの範囲にわたる圧力で操作し、用いられる触媒は金属性の触媒である。しかしながら、この方法により得られるディーゼル燃料ベースの収率は最大化されていない。
【0006】
特許文献2には、植物油(セイヨウアブラナ、パーム、ダイズ、ヒマワリ)またはリグノセルロースバイオマスを、これらの化合物の水素化処理または水素化精製の後に、コバルトおよびモリブデンをベースとする触媒の存在下に、350〜450℃の範囲にわたる温度および約4.8〜15.2MPaの範囲にわたる圧力で飽和炭化水素に直接転化することから製造されるディーゼル燃料プールベースを製造する方法が記載されている。これらの条件は、高いセタン価を有する生成物を得ることを可能にする。こうして得られたプロ−セタン添加物は、5〜30容積%の範囲にわたる比率でディーゼル燃料と混合される。しかしながら、この方法は、メタン化または水性ガスシフト反応(water-gas shift reaction)に起因して大きい水素消費量を伴うという大きな欠点を有する。加えて、トリグリセリド中に含まれる酸素は、一般的には、酸素中においてコストがかかる水素化処理触媒存在下の水素化脱酸素によって分解される。
【0007】
特許文献3には、得られた線状(linear)パラフィンの低温時特性を向上させるために、水素化処理段階と、次の、水素化異性化段階とを含み、中間のストリッピング段階が好ましくは行われる方法が記載されている。水素化異性化段階において用いられた触媒は、SAPO−11、SAPO−41、ZSM−22、フェリエライトまたはZSM−23の中から選択されるモレキュラーシーブタイプの酸性担体上に分散されたパラジウム、白金およびニッケルの中から選択された第VIII族金属を含む金属性活性相からなる二機能性触媒であり、前記方法は、200〜500℃の範囲にわたる温度および2〜15MPaの範囲にわたる圧力で操作する。しかしながら、このタイプの固体を用いると、ディーゼル燃料製造のための中間留出液の収率の損失につながる。
【0008】
本発明の一つの利点は、再生可能な源から来る仕込原料から、高いディーゼル燃料ベースの収率を得ることを可能にしつつ、低減させられた水素消費を可能にする方法を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1681337号明細書
【特許文献2】米国特許第4992605号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1741768号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、再生可能な源から来る仕込原料をディーゼル燃料ベースに転化する連続的な方法に関する。
【0011】
最初の仕込原料は、再生可能な源、例えば、植物または動物起源の油および脂肪、またはこのような仕込原料の混合物に由来し、トリグリセリドおよび/または脂肪酸および/またはエステルを含有を含有している。未加工または精製済みであり得る、可能性のある植物油は、全体的にまたは部分的に、以下の植物:セイヨウアブラナ、ヒマワリ、ダイズ、パーム、パームナッツ、オリーブ、ココナッツ、ジャトロファに由来し得るが、このリストは制限的ではない。藻類油または魚油も適切である。可能性のある脂肪の例は、全ての動物脂肪、例えば、ラード等、または食品産業または仕出し産業からの残渣からなる脂肪である。
【0012】
このように規定される仕込原料は、トリグリセリドおよび/または脂肪酸構造を含有し、その脂肪鎖は、8〜25個の範囲にわたる多数の炭素原子を含有する。
【0013】
本発明による最初の仕込原料の転化の際に製造された炭化水素は、
a)機構がカルボニル基のアルキル基への水素化の機構である場合には、最初の脂肪酸鎖の炭素原子数に等しい多数の炭素原子、
b)含まれる機構が脱炭酸/脱カルボニル化である場合には、最初の脂肪酸鎖よりも1つ少ない炭素原子を含む炭化水素鎖、
c)ディーゼル燃料についての現行の標準に匹敵する低温時強度特性およびセタン価を得るための調節された炭化水素分枝度
によって特徴付けられる。
【0014】
転化の選択肢a)およびb)は、一般的に共存することは技術の状況から周知である。本発明において記載された方法は、結果として、ディーゼル燃料の収率を最大にすることおよびa)において記載された水素化機構を促進することを目的とする。触媒および操作条件の選択は、それ故に、水素化を優先する選択性の方に向ける傾向があるが、その一方で、水素消費、特に、不要な反応出現をもたらす水素消費を最低限必要な程度に制限しようとする。加えて、本発明において記載された方法はまた、ディーゼル燃料留分のパラフィンを大幅に異性化し、その一方で、不要なより軽質のフラクション、例えばナフサ留分への分解を制限することを目的とする。
【0015】
製造されたディーゼル燃料ベースは、優れた品質のものである:
それらは、
・低い硫黄、窒素および芳香族化合物の含有量、
・形成された炭化水素の実質的なパラフィン性の構造に起因して優れたセタン価、
・留分のパラフィンの異性化度に起因して良好な低温時強度特性、
・低い密度(一般的には800kg/m未満);これは、最大845kg/mであるディーゼル燃料プールについての規格がより容易に得られる限りにおいて有利である;
を有する。
【0016】
本発明の一つの目的は、再生可能な源からの仕込原料を処理する方法であって、水素化処理段階と、次の、水分離段階と、得られた炭化水素ベースから窒素化合物を除去してから前記炭化水素ベースの水素化異性化する段階、すなわち、中間の気液分離段階を伴わない水素化処理/水素化異性化の配列とを包含する方法を提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、水素化処理および水素化異性化段階の間に、中間の気液分離段階を伴わずに、連続的に、水除去段階および窒素化合物除去段階を行うことによって、HS等の硫黄含有汚染物質が除かれていない水素化処理された流出物の処理を可能にすることである。
【0018】
本発明のさらなる目的は、水素化処理段階の後に除去されていない硫黄化合物の存在下に、特定の硫黄抵抗性触媒の存在中で水素化異性化段階を行うことである。
【0019】
それ故に、本発明の一つの利点は、低減した水素消費量を可能にする正確な操作条件下に操作する水素化処理段階a)と特定の水素化異性化触媒を用いる水素化異性化段階との組合せを用いて、中間の気液分離を伴わないで、硫黄含有汚染物質を含む水素化処理された流出物を処理することと高いディーゼル燃料ベースの収率、並びに低減したH消費量を得ることとの両方を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、再生可能な源からの仕込原料を処理する方法であって、
a)水添脱水素化(hydro-dehydrogen)機能を有しかつ無定形担体を含む固定床触媒の存在下、200〜450℃の範囲にわたる温度、1〜10MPaの範囲にわたる圧力、0.1〜10h−1の範囲にわたる毎時空間速度、水素/仕込原料比が150〜750Nm(水素)/m(仕込原料)であるような仕込原料と混合された水素全量の存在中での水素化処理段階、
b)段階a)からの流出物から、水の少なくとも一部および少なくとも1種の炭化水素含有ベースを分離する段階、
c)段階b)からの前記炭化水素含有ベースから窒素化合物を除去する段階、
d)固定床水素化異性化選択触媒であって、少なくとも1種の第VIII族金属および/または少なくとも1種の第VIB族金属と、少なくとも1種の一次元10MRゼオライトモレキュラーシーブとを含む触媒の存在下に、段階c)からの前記炭化水素含有ベースの少なくとも一部を水素化異性化する段階であって、150〜500℃の範囲にわたる温度、1〜10MPaの範囲にわたる圧力、0.1〜10h−1の範囲にわたる毎時空間速度で、水素/仕込原料比が70〜1000Nm/m(仕込原料)の範囲にわたるように仕込原料と混合された水素の全量の存在中で行われる、段階、
e)段階d)からの流出物から、水素、ガスおよび少なくとも1種のディーゼル燃料ベースを分離する段階
を包含する、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の実施を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、特に、再生可能な源から来る仕込原料から新しい環境基準に対応するディーゼル燃料ベースを調製することに捧げられる。
【0023】
これらの仕込原料は、植物油および動物脂肪であって、トリグリセリドおよび脂肪酸またはエステルを本質的に含有し、炭化水素脂肪鎖が6〜25個の多数の炭素原子を有するものの全てからなる。これらの油は、パーム、パームナッツ、コプラ、ヒマシおよび綿油、ピーナッツ、亜麻仁、ハマナおよびジャトロファ油、例えば、遺伝子改変またはハイブリダイゼーションを経たヒマワリまたはセイヨウアブラナ種に由来する全ての油、並びに、藻類油であり得る。廃棄台所油、種々の動物油、例えば、魚油、獣油、ラードも用いられ得る。
【0024】
これらの油の15℃での密度は、850〜970kg/mの範囲にわたり、40℃でのそれらの運動学的速度は、20〜400mm/s、より一般的には30〜50mm/sの範囲にわたる。
【0025】
これらの仕込原料は、硫黄、窒素および芳香族化合物を含まないか、またはその含有量は低い:硫黄および窒素の含有量は、典型的には、500重量ppm以下であり、芳香族化合物含有量は5重量%以下である。
【0026】
有利には、仕込原料は、本発明による方法の段階a)の前に、適切な処理によって、金属、例えばイオン交換樹脂上のアルカリ化合物、アルカル土類金属およびリン等の汚染物質を除去するために予備処理または予備精製の段階に付され得る。適切な処理は、例えば、当業者に知られる熱処理および/または化学処理であり得る。
【0027】
場合による予備処理は、好ましくは、二重結合の二次的反応を避けるための前記仕込原料の温和な予備水素化に存する。温和な予備水素化は、有利には、50〜400℃の範囲にわたる温度、0.1〜10MPaの範囲にわたる水素圧力、好ましくは150〜200℃の範囲にわたる温度で操作される。予備水素化触媒は、有利には、第VIII族および/または第VIB族金属を含み、好ましくは、予備水素化触媒は、パラジウム、白金、ニッケルおよびニッケルおよびモリブデンをベースとする触媒またはコバルトおよびモリブデンをベースとする触媒であり、これらは、アルミナおよび/またはシリカ担体によって担持される。
【0028】
本発明による方法の場合による予備処理において用いられる触媒の金属は、硫黄含有金属または金属相であり、好ましくは金属相である。
【0029】
(段階a):再生可能な源からの仕込原料の水素化処理)
本発明による方法の段階a)において、仕込原料(場合によっては、予備処理されたもの)は、200〜450℃、好ましくは220〜350℃、より好ましくは220〜320℃、最も好ましくは220〜310℃の範囲にわたる温度において不均一系触媒と接触させられる。圧力は、1〜10MPa、好ましくは1〜6MPa、より好ましくは1〜4MPaの範囲にわたる。毎時空間速度は、0.1〜10h−1の範囲にわたる。仕込原料は、水素の存在下に触媒と接触させられる。仕込原料と混合される水素の全量は、水素/仕込原料の比が、150〜750Nm(水素)/m(仕込原料)、好ましくは150〜700Nm(水素)/m(仕込原料)、より好ましくは150〜650Nm(水素)/m(仕込原料)、最も好ましくは150〜600Nm(水素)/m(仕込原料)の範囲にわたるようにされ、これは、それ故に、存在する仕込原料に添加された水素の量が、仕込原料に関して少なくとも一般的に水素0.5重量%であることに対応する。
【0030】
実際に用いられる水素の量は、仕込原料のパラフィンへの完全な水素化に必要とされる化学量論量に少なくとも対応する。したがって、それは、仕込原料の性質に依存する。
【0031】
本発明による方法の段階a)において、少なくとも1つの固定された水素化処理触媒床であって、水添脱水素化機能を有し担体を含むものが用いられる。担体が例えばアルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、マグネシア、粘土およびこれら鉱物の少なくとも2種の混合物から構成された群から選択される触媒が好ましくは用いられる。この担体はまた、他の化合物と、例えば、酸化ホウ素、ジルコニア、酸化チタン、無水リン酸から構成された群から選択される酸化物とを含有し得る。好ましくはアルミナからなる担体、より好ましくは、η、δまたはγアルミナからなる担体が用いられる。
【0032】
本発明による方法の段階a)において用いられる触媒の前記水素化機能は、有利には、少なくとも1種の第VIII族および/または第VIB族金属によって提供される。
【0033】
前記触媒は、有利には、第VIII族金属、例えば、ニッケルおよび/またはコバルトを含む触媒であり得、ほとんどの場合、少なくとも1種の第VIB族金属、例えば、モリブデンおよび/またはタングステンと関連する。例えば、0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%の酸化ニッケル(NiO)および1〜30重量%、好ましくは5〜25重量%の酸化モリブデン(MoO)、を無定形鉱物担体上に含む触媒を用いることが可能であり、百分率は、触媒の全質量に関する重量%で表される。
【0034】
段階a)において用いられる触媒中の第VIB族および第VIII族金属の酸化物の全比率は、触媒の全質量に関して有利には5〜40重量%、好ましくは6〜30重量%の範囲にわたる。
【0035】
第VIB族金属(単数種または複数種)と第VIII族金属(単数種または複数種)との間の金属酸化物において表される重量比は、有利には20〜1、好ましくは10〜2の範囲にわたる。
【0036】
本発明による方法の段階a)において用いられる前記触媒は、ディーゼル燃料の蒸留範囲に入る炭化水素の収率を最大にするために、脂肪鎖の炭素原子の数を維持する水素化への反応選択性の方に出来るだけ向くように高い水素化力によって有利に特徴付けられなければならない。これは、相対的に低い温度が好適に用いられる理由である。水素化機能を最大にすることはまた、触媒性能の安定性を悪化させるであろうコークスの形成につながる重合および/または縮合反応を制限することを可能にする。NiまたはNiMoタイプの触媒が好適に用いられる。
【0037】
本発明による方法の水素化処理段階a)において用いられる前記触媒はまた、有利には、リンおよび/またはホウ素等の元素を含有し得る。この元素は、マトリクスに導入され得るか、または好ましくは、担体上に担持され得る。ケイ素を、単独でまたはリンおよび/またはホウ素および/またはフッ素と共に担体上に担持させることも可能である。
【0038】
前記元素中の酸化物の重量割合は、通常、有利には20%未満、好ましくは10%未満であり、通常、有利には少なくとも0.001%である。
【0039】
本発明による方法の水素化処理段階a)において用いられる触媒の金属は、硫黄含有金属または金属相である。
【0040】
本発明による方法の水素化処理段階a)において用いられる好ましい金属性触媒は、20〜80重量%、好ましくは55〜65重量%の範囲にわたるニッケル含有量を含む。前記触媒の担体は、有利には、アルミナ、酸化マグネシウムおよびシリカから構成される群から選択され、担体は、好ましくは、アルミナからなる。
【0041】
単一の触媒または複数の異なる触媒が、同時にまたは連続的に、本発明による方法の段階a)において、本発明の範囲を逸脱することなく用いられ得る。この段階は、1以上の触媒床を有する1以上の反応器において、好ましくは下降液体流で工業的に行われ得る。
【0042】
水素化処理の間の反応の発熱は、当業者に知られているあらゆる方法によって制限される:液体生成物の再循環、再循環水素による急冷等。
【0043】
(段階b):段階a)からの水素化処理された流出物からの少なくとも一部の水の分離)
本発明による方法の段階b)において、水素化処理された流出物は、少なくとも1種の炭化水素含有ベースの少なくとも一部、好ましくは全部の水の分離に付され、水は、水素化処理段階a)の間に生じさせられる。
【0044】
この段階の目的は、炭化水素含有流出物から水を分離することである。水除去と称されるものは、水素化脱酸素(hydrodeoxygenation:HDO)反応によって生じた水の除去である。大体完全な水の除去は、有利には、本発明による方法の段階c)において用いられる水素化異性化触媒の水の許容値に依存する。水の除去は、当業者に知られるあらゆる手段および技術、例えば、乾燥、乾燥剤通過、フラッシュ(flash)、デカンテーション等によって達成され得る。
【0045】
(段階c):段階b)からの流出物の精製)
本発明による方法の段階c)によると、段階b)からの前記炭化水素含有ベースは、含有する窒素化合物の除去の段階を経る。
【0046】
段階b)からの炭化水素含有ベースは、一般的に、本発明による方法の水素化処理段階a)の間に除去されなかった残留有機窒素化合物を含有する。前記残留有機窒素化合物は、水素化異性化触媒の阻害物質であることが観察され、それらは、したがって、本発明による方法の水素化異性化段階d)の前に前記炭化水素含有ベースから除去されなければならない。残留有機窒素化合物の除去は、当業者に知られているあらゆる技術、例えば、捕捉塊(capture mass)の使用によって達成され得る。捕捉塊と称されるものは、アルミナ(活性化されたまたはされない)、シリカ−アルミナ、ゼオライト、活性炭およびイオン交換樹脂である。本発明による方法の段階c)は、好ましくは、イオン交換樹脂上で行われる。
【0047】
段階c)からの流出物は、窒素不含有であり、それらは、HS等の硫黄化合物を含有する。硫黄は、段階a)において用いられた再生可能な源からの仕込原料の一部に由来し得るが、それはまた、触媒を硫化された状態に維持するために方法の段階a)において意図的に加えられた硫黄化合物に由来し得る。
【0048】
それ故に、本方法の一つの利点は、低減させられた水素消費量を可能にする正確な操作条件下に操作する水素化処理段階a)、および、中間の気液分離なしで、硫黄化合物を含有する水素化処理された流出物を処理することおよび高いディーゼル燃料ベースの収率並びに低減させられたH消費量を得ることの両方を可能にする、特定の水素化異性化触媒を用いる水素化異性化段階の組合せを用いることにある。硫黄化合物の存在は、硫黄抵抗性の水素化異性化触媒、すなわち、生じた燃料の収率、特にディーゼル燃料ベースの収率およびこのベースの品質を低下させることなく硫黄化合物の存在に耐えるものを用いることを必要とする。
【0049】
(段階d):段階c)からの水素化処理された流出物の水素化異性化)
段階c)の終了時に得られた液体炭化水素含有ベースの少なくとも一部が、選択的水素化異性化触媒の存在下に水素化異性化される。本発明による方法の段階d)において用いられる水素化異性化触媒は、有利には、二機能性タイプのものである。すなわち、それらは、水添/脱水素化(hydro/dehydrogenizing)機能および水素化異性化機能を有する。
【0050】
本発明による方法の段階d)によると、水素化異性化触媒は、少なくとも1種の第VIII族金属および/または少なくとも1種の第VIB族金属を水添脱水素化機能として、および、少なくとも1種のモレキュラーシーブを水素化異性化機能として含む。
【0051】
本発明によると、水素化異性化触媒は、還元型において活性である、少なくとも1種の第VIII族貴金属(好ましくは、白金またはパラジウムの中から選択される)、または、少なくとも1種の第VIB族金属(好ましくは、モリブデンまたはタングステンの中から選択される)のいずれかを、少なくとも1種の第VIII族非貴金属(好ましくは、ニッケルおよびコバルトの中から選択され、好ましくは、硫黄含有型において用いられる)と組み合わせて含む。
【0052】
水素化異性化触媒が少なくとも1種の第VIII族貴金属を含む場合、本発明による方法の段階d)において用いられる水素化異性化触媒の全貴金属含有量は、最終触媒に関して有利には0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜4重量%、より好ましくは0.2〜2重量%の範囲にわたる。
【0053】
水素化異性化触媒は、好ましくは、2種の第VIII族貴金属を含み、それは、より好ましくは、白金およびパラジウムを含む。
【0054】
水素化異性化触媒が少なくとも1種の第VIB族金属を、少なくとも1種の第VIII族非貴金属と組み合わせて含む場合、本発明による方法の段階d)において用いられる水素化異性化触媒の第VIB族金属含有量は、酸化物当量において、最終触媒に関して有利には5〜40重量%、好ましくは10〜35重量%、より好ましくは15〜30重量%の範囲にわたり、前記触媒の第VIII族金属含有量は、酸化物当量で、最終触媒に関して有利には0.5〜10重量%、好ましくは1〜8重量%、より好ましくは1.5〜6重量%の範囲にわたる。
【0055】
金属性の水添/脱水素化機能は、前記触媒上に、当業者に知られるあらゆる方法、例えば、共混練(comixing)、乾式含浸、交換含浸(exchange impregnation)によって有利に導入され得る。
【0056】
本発明による方法の水素化異性化段階d)によると、水素化異性化触媒は、少なくとも1種のモレキュラーシーブ、好ましくは少なくとも1種のゼオライトモレキュラーシーブ、より好ましくは、少なくとも1種の一次元10MRゼオライトモレキュラーシーブを水素化異性化機能として含む。
【0057】
ゼオライトモレキュラーシーブは、「Atlas of Zeolite Structure Types」classification, W.M.Meier, D.H.Olson and Ch.Baerlocher,5th revised edition, 2001, Elsevierにおいて規定され、本出願もこれを援用する。ゼオライトは、それらの細孔またはチャネルの開口サイズに従って分類される。
【0058】
一次元10MRゼオライトモレキュラーシーブは、開口部が10個の酸素原子を有する環(10MR開口)によって規定される細孔またはチャネルを有する。10MR開口を有するゼオライトモレキュラーシーブのチャネルは、有利には、相互接続されない一次元チャネルであり、そのチャネルは、前記ゼオライトの外側上に直接的に開口する。前記水素化異性化触媒中に存在する一次元10MRゼオライトモレキュラーシーブは、有利には、ケイ素と、アルミニウム、鉄、ガリウム、リンおよびホウ素から構成される群から選択される少なくとも1種の元素T、好ましくはアルミニウムとを含む。上記に記載されたゼオライトのSi/Al比は、有利には、合成の際にまたは合成後の当業者に知られる脱アルミニウム処理、例えば(ただし、この列挙は網羅的ではない)、酸攻撃に続けられるまたは続けられない水熱処理、または鉱酸または有機酸の溶液による直接的な酸攻撃の後に得られたものである。それらは、好ましくは、実際に全体的に酸型であり、すなわち、固体の結晶格子中に挿入された元素Tに対する一価の補償(compensation)カチオン(例えばナトリウム)の原子比は、有利には、0.1以下、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.01以下である。それ故に、前記選択的水素化異性化触媒に加入するゼオライトは、有利には、焼成され、少なくとも1種のアンモニウム塩の溶液による少なくとも1回の処理によって交換されて、アンモニウム型のゼオライトが得られ、これは、一旦焼成された後に、酸型のゼオライトに導かれる。
【0059】
前記水素化異性化触媒の前記一次元10MRゼオライトモレキュラーシーブは、有利には、単独でまたは混合物として利用される、NU−10等のTON構造型、EU−1およびZSM−50の中から選択されるEUOのゼオライトモレキュラーシーブの中から選択され、または、単独または混合物のゼオライトモレキュラーシーブZSM−48、ZBM−30、IZM−1、COK−7、EU−2およびEU−11である。前記一次元10MRゼオライトモレキュラーシーブは、好ましくは、単独または混合物の、ゼオライトモレキュラーシーブZSM−48およびZBM−30、IZM−1およびCOK−7の中から選択される。より好ましくは、前記一次元10MRゼオライトモレキュラーシーブは、単独または混合物の、ゼオライトモレキュラーシーブZSM−48およびZBM−30の中から選択される。
【0060】
最も好ましくは、前記一次元10MRゼオライトモレキュラーシーブは、ZBM−30であり、一層より好ましくは、前記一次元10MRゼオライトモレキュラーシーブは、トリエチレンテトラミン有機構造化剤を用いて合成されたZBM−30である。
【0061】
ゼオライトZBM−30は、特許EP-A-46,504において記載されており、ゼオライトCOK−7は、特許出願EP-1,702,888 A1またはFR-2,882,744 A1において記載されている。
【0062】
ゼオライトIZM−1は、特許出願FR-A-2,911,866において記載されている。
【0063】
TON構造型ゼオライトは、著書「Atlas of Zeolite Structure Types」, W.M.Meier, D.H.Olson and Ch.Baerlocher,5th revised edition, 2001, Elsevierにおいて記載されている。
【0064】
TON構造型ゼオライトは、前述の本「Atlas of Zeolite Structure Types」において記載されており、NU−10ゼオライトは、特許EP-65,400およびEP-77,624において記載されている。
【0065】
一次元10MRゼオライトモレキュラーシーブの比率は、最終触媒に関して有利には5〜95重量%、好ましくは10〜90重量%、より好ましくは15〜85重量%、最も好ましくは20〜80重量%の範囲にわたる。
【0066】
前記水素化異性化触媒は、好ましくは、多孔質鉱物マトリクスからなるバインダも含む。前記バインダは、有利には、前記水素化異性化触媒を成形する段階の間に用いられ得る。
【0067】
成形は、好ましくは、当業者に知られているあらゆる形態にあるアルミナを含有するマトリクスからなるバインダにより、より好ましくはガンマアルミナを含有するマトリクスにより行われる。
【0068】
得られた水素化異性化触媒は、種々の形状および寸法の粒子として成形される。それらは、一般的には、円筒形状または多葉状、二葉状、三葉状押出物の形態であって、直線状のまたは捻れた形状の形態で用いられるが、それらは、場合によっては、粉砕粉体状、棒状、環状、ボール状、車輪状の形態で製造され、かつ、用いられ得る。押出以外の他の技術、例えば、ペレット化、粒成形(drageification)が、有利に用いられ得る。
【0069】
水素化異性化触媒が少なくとも1種の貴金属を含有する場合、前記水素化異性化触媒中に含まれる貴金属は、有利には、還元される必要がある。金属還元を行う一つの好ましい方法は、水素下、150〜650℃の範囲にわたる温度および1〜250バールの範囲にわたる全圧で処理することである。例えば、還元は、150℃での2時間の工程、次いで、1℃/分の速さでの450℃までの昇温、次いで、再度、450℃での2時間の工程に存し、この還元期間の全体にわたって、水素流量は1000標準m(水素)/m(触媒)であり、全圧は、1バールに一定維持される。あらゆる現場外(ex-situ)還元法が、有利に考えられ得る。
【0070】
本発明による方法の段階d)によると、水素化異性化帯域において、仕込原料は、水素の存在下に、前記水素化異性化触媒と、仕込原料の非転化の水素化異性化を有利に可能にする操作温度および圧力において接触させられる。これは、水素化異性化が行われる際に伴う150℃+フラクションの150℃−フラクションへの転化が20重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下であること意味する。
【0071】
それ故に、本発明による方法の水素化異性化段階d)は、150〜500℃、好ましくは150〜450℃、より好ましくは200〜450℃の範囲にわたる温度、1〜10MPa、好ましくは2〜10MPa、より好ましくは1〜9MPaの範囲にわたる圧力、有利には0.1〜10h−1、好ましくは0.2〜7h−1、より好ましくは0.5〜5h−1の範囲にわたる毎時空間速度、水素/炭化水素の容積比が、有利には70〜1000Nm(水素)/m(仕込原料)、好ましくは100〜1000Nm(水素)/m(仕込原料)、より好ましくは150〜1000Nm(水素)/m(仕込原料)の範囲にわたるような水素流量で操作する。
【0072】
場合によっては水素化異性化段階は、好ましくは、並流で操作される。
【0073】
(段階e):段階d)からの流出物からの水素、ガスおよび少なくとも1種のディーゼル燃料ベースの分離)
本発明による方法によると、本発明による方法の段階e)において、水素化異性化された流出物は、少なくとも部分的に、好ましくは全体的に、1回以上の分離に付される。この段階の目的は、液体からガスを分離すること、特に、軽質分、例えばC−C留分をも含み得る水素リッチなガスおよび少なくとも1種のディーゼル燃料留分およびナフサ留分を回収することである。ナフサ留分の品質を向上させることは、本発明の目的ではないが、この留分は、有利には、水蒸気分解または接触改質プラントに送られ得る。
【0074】
(ガス処理および再循環)
段階e)において分離された水素を含有するガスは、必要であれば、少なくとも部分的に、その軽質分(C−C)の比率を低減させるように処理される。
【0075】
段階e)の再循環ガスに、熱分解を通じて硫化水素HSを生じさせる硫黄化合物(例えば、DMDS(dimethyl disulfide))を所定量加えることが可能である。この装置は、必要でれば、水素化処理触媒および/または水素化異性化触媒を硫化された状態に維持することを可能にする。有利には、導入される硫黄化合物の量は、再循環ガスのHS含有量が、少なくとも15容積ppm、好ましくは少なくとも0.1容積%、さらには少なくとも0.2容積%であるようにされる。
【0076】
再循環水素は、有利には、流入仕込原料とともに、段階a)および/または段階d)に、かつ/または、急冷水素の形態で水素化処理および/または水素化異性化触媒床の間に導入され得る。
【0077】
(得られる生成物)
この方法によって提供される生成物は、優れた特徴を呈し、したがって、それは、優れた品質のディーゼル燃料ベースである:
・その硫黄含有量は、10重量ppm未満である。
【0078】
・その総芳香族化合物含有量は5重量%未満であり、その多芳香族化合物含有量は2重量%未満である。
【0079】
・セタン価は優れており、55超である。
【0080】
・密度は、840kg/m未満であり、大抵の場合、820kg/m未満である。
【0081】
・40℃での動粘性率は、2〜8mm/sの範囲にわたる。
【0082】
・その低温時強度特性は、現行の基準に匹敵しており、低温時フィルタ閉塞点(cold filter-plugging point)は−15℃未満であり、曇り点(cloud point)は−5℃未満である。
【0083】
本発明はまた、本発明による方法を実施するために用いられ得るプラントに関する。
【0084】
図1に示されるように、再生可能な源からの仕込原料は、ライン(1)を通じて、水素化処理帯域(3)に供給され、この水素化処理帯域(3)は、水素の存在下に操作し、その水素は、パイプ(2)を通じて運ばれる。水素化処理帯域(3)において、仕込原料は、上記の水素化処理触媒と接触させられる。水素化処理された流出物は、次いで、分離帯域(4)に供給されて、炭化水素含有化合物から水が分離される。炭化水素フラクションは、回収され、有機窒素化合物を除去することを可能にする精製段階(5)に送られる。こうして精製された流出物は、ゼオライトタイプの選択的水素化異性化触媒を用いる水素化精製段階(7)にライン(5)を通じて送られる。図1によると、液体のディーゼル燃料ベースフラクションは、水素流と共に、ライン(6)を通じて、上記の選択的水素化異性化触媒を含む水素化異性化帯域(7)に供給される。こうして水素化異性化された流出物は、次いで、パイプ(8)を介して分離帯域(9)に送られて、ガスと、少なくとも1種のディーゼル燃料留分とが分離され、少なくとも1種のディーゼル燃料留分は、ライン(10)を通じて回収され、これは、ディーゼル燃料プールにおいて品質向上させられ得る。
【0085】
(実施例1)
段階a)水素化処理
反応器中に、170g/hの予備精製された密度920kg/mのセイヨウアブラナ油が導入された。反応器は、等温操作を提供するために温度が制御されるものであり、ニッケルおよびモリブデンをベースとし、3重量%に等しい酸化ニッケル含有量、16重量%に等しい酸化モリブデン含有量および6%に等しいP含有量を有する水素化処理触媒190mLを充填した固定床を備え、該触媒は、事前に硫化されたものである。セイヨウアブラナ油は、10重量ppm未満の硫黄含有量を有し、セタン価が35であり、その組成が以降に与えられているものである。
【0086】
【表1A】

【0087】
700Nm(水素)/m(仕込原料)が、300℃の温度および5MPaの圧力に維持された反応器に供給される。
【0088】
(段階b):段階a)からの水の分離)
段階a)からの水素化処理された流出物の全てが、デカンテーション段階に付され、水素化処理の段階の間に生じた水が除去される。
【0089】
(段階c):捕捉塊による段階b)からの流出物の精製)
段階b)からの水素化処理されかつデカントされた流出物の全てが、以下の操作条件下にAmberlyst社によって製造されたAmberlyst (登録商標)35Dry イオン交換樹脂を含有する固定床反応器に送られる:
− 仕込原料の流量:150g/h
− Amberlyst (登録商標)35Dryの質量:100g
− 操作圧力:50バール
− 温度:100℃
(段階d):段階c)からの水素化処理された流出物の本発明による触媒による水素化異性化)
1)水素化異性化触媒C1の調製
水素化異性化触媒は、貴金属およびZBM−30一次元10MRゼオライトを含有する触媒である。この触媒は、以降に記載される操作方法に従って得られる。ZBM−30ゼオライトは、トリエチレンテトラミン有機構造化剤を用いるBASF特許EP-A-46,504に従って合成される。粗合成ZBM−30ゼオライトは、乾燥空気流中12時間にわたって550℃での焼成に付される。こうして得られたH−ZBM−30ゼオライト(酸型)のSi/Al比は45である。ゼオライトは、Condea-Sasol社によって提供されたSB3タイプのアルミナゲルと混合される。混合されたペースト状物は、次いで、1.4mm径のダイを通じて押し出される。こうして得られた押出物は、500℃で2時間にわたって空気流中で焼成される。H−ZBM−30の重量比率は20重量%である。担体押出物は、その後、白金塩Pt(NHClおよびPd(NHClの水溶液による乾式含浸の段階に付され、24時間にわたって周囲温度で水熟成装置中に熟成のため放置され、次いで、乾燥空気下2時間にわたって通過床(traversed bed)において500℃で焼成される(昇温工程5℃/分)。焼成後の最終触媒における白金およびパラジウムの重量比率は、それぞれ、0.80%および0.29%である。
【0090】
2)段階c)からの水素化処理された流出物の水素化異性化
流出物は、水素化異性化反応器において以下の操作条件下に、廃棄水素流中触媒C1により水素化異性化される:
・毎時空間速度(仕込原料の容積/触媒の容積/時間)=1.5h−1
・全操作圧力:50バール
・水素/仕込原料の比:1000標準リットル/リットル
温度は、水素化異性化の際の150℃+フラクションの150℃−フラクションへの転化が10重量%未満であるように調節される。試験前に、触媒は、以下の操作条件下に還元段階を経る:
・水素流量:毎時および触媒の容積(L)当たり1600標準リットル
・周囲温度上昇120℃:10℃/分
・120℃での1時間の工程
・5℃/分での120℃から450℃への昇温
・450℃での2時間の工程
・圧力:1バール。
【0091】
水素化異性化された流出物は、次いで、特徴付けられる。収率および燃料の特性は、下記表1に与えられる。
【0092】
【表1B】

【0093】
本発明による方法は、それ故に、良好な収率で、現行の規格に対応する優れた品質のディーゼル燃料ベースを得ることを可能にする。
【0094】
(比較例)
実施例1の仕込原料と同じ仕込原料が、実施例1と同一の操作条件下に操作し同一の触媒を用いる水素化処理段階a)を含む方法において用いられる。実施例1におけるのと同一の水分離b)および窒素化合物除去c)の段階が同一の条件下に行われ、液体の炭化水素含有ベースが回収され、これは、続いて、実施例1の段階c)と同一の操作条件下に操作するが、異なる水素化異性化触媒を用いる水素化異性化段階d)に付される。
【0095】
水素化異性化触媒は、貴金属およびZSM−22一次元10MRゼオライトを含有する触媒である。この触媒は、以降に記載される操作方法に従って得られる。ZSM−22ゼオライトは、Ernstらによって記載された方法(Applied Catalysis,1989,48,137)に従って合成される:72gのシリカゾル(Ludox(登録商標)AS40,DuPont)が、水124mL中に希釈される;3.54gのAl(SO・18HO、7.75gのKOHおよび16.7gのジアミノヘキサンを含有する別の水溶液177mLが、最初の溶液に加えられ、攪拌される。得られたゲルは、次いで、ステンレス製オートクレーブ中に50℃で置かれる。2日の合成後、オートクレーブは開かれ、合成されたゼオライトは、水により洗浄され、ろ過される。結晶構造のSi/Al原子比は30である。固体は、その後、窒素流(10mLのN/分/g(固体))中で5時間にわたって400℃で、次いで、16時間にわたって550℃で酸素流(10mLのO/分/g(固体))中において熱処理される。アルカリカチオンをアンモニウムイオンと交換するために、固体は、次いで、4時間にわたって塩化アンモニウムの水溶液(100mL溶液/g(固体);塩化アンモニウム濃度0.5M)中で還流状態に至らされる。サンプルは、最終的に、蒸留水により洗浄されて、塩化アルカリが除去され(硝酸銀試験陰性)、次いで、それは、1夜にわたり乾燥機中60℃で乾燥させられる。ゼオライトは、その後、Condea-Sasol社によって提供されたSB3タイプのアルミナゲルと混合される。混合ペースト状物は、続いて、1.4mm径のダイを通じて押し出される。こうして得られた押出物は、500℃で2時間にわたって空気流中で焼成される。H−ZSM−22の重量比率は14重量%である。担体押出物は、その後、白金塩Pt(NHClおよびPd(NHClの水溶液による乾式含浸の段階に付され、水熟成装置(water maturator)中に24時間にわたって周囲温度で熟成のため放置され、次いで、乾燥空気流中2時間にわたって、通過床において500℃で焼成される(昇温工程5℃/分)。焼成後の最終触媒中の白金およびパラジウムの重量比率は、それぞれ、0.58%および0.21%である。
【0096】
触媒の還元段階は、水素化異性化触媒C1のために行われた段階並びに水素化異性化試験の操作条件と同一である。温度は、触媒C1により得られたものに匹敵する生成物品質を有するように調節される。
【0097】
水素化異性化された流出物は、続いて特徴付けられる。収率および燃料特性は、表2に与えられる。
【0098】
【表2】

【0099】
水素化異性化触媒C1に関連して、ZSM−22ベースの水素化異性化触媒を使用すれば、匹敵する生成物品質のためにより重大な軽質生成物の喪失につながることが理解され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能な源からの仕込原料を処理する方法であって、
a)水添脱水素化機能を有し、かつ無定形担体を含む固定床触媒の存在下に、200〜450℃の範囲にわたる温度、1〜10MPaの範囲にわたる圧力、0.1〜10h−1の範囲にわたる毎時空間速度で、水素/仕込原料の比が150〜750Nm(水素)/m(仕込原料)の範囲にわたるように仕込原料と混合された水素の総量の存在下に水素化処理する段階、
b)段階a)からの流出物から、水の少なくとも一部および少なくとも1種の炭化水素含有ベースを分離する段階、
c)段階b)からの前記炭化水素含有ベースから窒素化合物を除去する段階、
d)固定床水素化異性化選択的触媒の存在下に、段階c)からの前記炭化水素含有ベースの少なくとも一部を水素化異性化する段階であって、該触媒は、少なくとも1種の第VIII族金属および/または少なくとも1種の第VIB族金属と、少なくとも1種の一次元10MRゼオライトモレキュラーシーブとを含み、該段階は、150〜500℃の範囲にわたる温度、1〜10MPaの範囲にわたる圧力、0.1〜10h−1の範囲にわたる毎時空間速度で、水素/仕込原料の比が70〜1000Nm/m(仕込原料)の範囲にわたるように仕込原料と混合された水素の総量の存在下に行われる、段階、
e)段階d)からの流出物から、水素、ガスおよび少なくとも1種のディーゼル燃料ベースを分離する段階、
を包含する方法。
【請求項2】
段階a)は、水素/仕込原料の比が150〜650Nm(水素)/m(仕込原料)の範囲にわたるように仕込原料と混合された水素の総量の存在下に操作する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
段階a)は、水素/仕込原料の比が150〜600Nm(水素)/m(仕込原料)の範囲にわたるように仕込原料と混合された水素の総量の存在下に操作する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
段階c)は、イオン交換樹脂により行われる、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記水素化異性化触媒の一次元10MRゼオライトモレキュラーシーブは、単独でまたは混合物で利用される、NU−10等のTON構造型、EU−1およびZSM−50の中から選択されるEUOのゼオライトモレキュラーシーブの中から選択され、または、単独でまたは混合物で利用される、ゼオライトモレキュラーシーブZSM−48、ZBM−30、IZM−1、COK−7、EU−2およびEU−11の中から選択される、請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記一次元10MRゼオライトモレキュラーシーブは、単独または混合物の、ゼオライトモレキュラーシーブZSM−48、ZBM−30、IZM−1およびCOK−7の中から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記一次元10MRゼオライトモレキュラーシーブは、単独でまたは混合物の、ゼオライトモレキュラーシーブZSM−48およびZBM−30の中から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記一次元10MRゼオライトモレキュラーシーブは、ZBM−30である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記一次元10MRゼオライトモレキュラーシーブは、トリエチレンテトラミン有機構造化剤を用いて合成されたZBM−30である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記水素化異性化触媒は、少なくとも1種の第VIII族貴金属または少なくとも1種の第VIB族金属のいずれかを、少なくとも1種の第VIII族非貴金属と組み合わせて含む、請求項1〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記水素化異性化触媒は、白金およびパラジウムを含む、請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
仕込原料は、トリグリセリドおよび脂肪酸またはエステルを本質的に含有し、6〜25個の範囲にわたる多数の炭素原子を有する炭化水素脂肪鎖を有する植物油および動物脂肪の全部からなり、前記油は、パーム、パームナッツ、コプラ、ヒマシおよび綿油、ピーナッツ、亜麻仁、ハマナおよびジャトロファの油、遺伝子改変またはハイブリダイゼーションを経たヒマワリまたはセイヨウアブラナに由来する全ての油、並びに、藻類油、廃棄台所油または動物油であり得る、請求項1〜11のいずれか1つに記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−47745(P2010−47745A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−149238(P2009−149238)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(591007826)イエフペ (261)
【Fターム(参考)】