中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウムチャネルを介して細胞間融合を調節するための組成物および方法
中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(SK4)チャネルの発現、活性または機能を調節する剤の使用により、細胞間融合を調節するための組成物および方法を提供する。いくつかの態様では、本発明の組成物および方法は、多核化された破骨細胞形成および細胞間融合、特にマクロファージに関連する細胞融合の阻害を提供する。このような態様では、前記組成物は、SK4チャネルの阻害性核酸、モノクローナル抗体または低分子インヒビターを含み、そして骨喪失、自己免疫および炎症性の疾患または障害、移植物および移植片拒絶反応、ならびに癌転移を含む各種疾患または障害の予防および/または治療において使用することができる。他の態様では、本発明の組成物および方法は、細胞間融合の活性化を提供する。また、細胞間融合、特にマクロファージ細胞融合を調節するSK4チャネルモデュレーター(インヒビターまたはアクチベーター)をスクリーニングする方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、細胞間融合(セロサイトーシス(cellocytosis)とも呼ばれる)を調節するための組成物および方法、より具体的には、マクロファージの同型および異型細胞間融合を調節するための組成物および方法に関する。したがって、本発明は、各種疾患または障害に関連する細胞融合、ならびに破骨細胞の分化および機能を調節するための組成物および方法を提供する。
【0002】
背景技術
細胞融合は、様々な発生およびホメオスタシスプロセスにとって不可欠である基本的な生物学的事象である。オルガネラ輸送中の細胞内の膜融合についてはよく理解されているが、精子−卵母細胞間融合、筋芽細胞−筋芽細胞間融合およびマクロファージ−マクロファージ間融合を媒介する細胞間融合についてはあまり知られていない。Vignery (2000) Int. J. Exp. Pathol. 81:291-304を参照されたい。
【0003】
マクロファージに関しては、これらの細胞は、組織内で自身と融合して(即ち、同型融合)巨細胞を形成することができ、これは慢性炎症性疾患に関与している。MacLauchlan et al.(2009) J. Leukoc. Biol. 85:617-626;および前記Vignery (2000)を参照されたい。さらに、マクロファージは、骨内で自身と融合して破骨細胞を形成することができ、これは骨吸収を媒介する。より最近では、マクロファージは、体細胞または癌細胞と融合することができる(即ち、異型融合)と考えられている。Vignery (2005) Trends Cell Biol. 15:188-193を参照されたい。
【0004】
残念なことに、マクロファージが自身および他の細胞と融合する機序の大部分は未だ特徴づけられていない。前記MacLauchlan et al.(2009);および前記Vignery (2005)を参照されたい。このプロセスを理解することは、マクロファージ機能を調節し、そしてまた、これらの細胞が不適当であるかまたは制御されていない様式で融合するときに、炎症性および感染性疾患で引き起こされる損傷を限定的にするのに役立つ可能性がある。前述の理由のために、マクロファージ融合を阻害するための組成物および方法が必要とされている。
【0005】
破骨細胞は、単球−マクロファージ細胞株の細胞融合により形成される。破骨細胞は、多核、そして高濃度の小胞および液胞を特徴とする大型細胞である。破骨細胞は、骨質マトリックスの除去を促進する骨吸収が活発に行われている部位で特殊な細胞膜を形成する。このような機序により、骨粗鬆症または骨減少症(正常よりも低いが、骨粗鬆症として分類されるほどは低くない骨塩密度を有する)が生じる。関節リウマチは、多くの場合破骨細胞による骨吸収の増加に起因して全身化した骨減少症によって悪化する。したがって、破骨細胞の分化および機能を調節するための、特に阻害するための組成物および方法も必要とされている。
【0006】
概要
本発明は、広くは、中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウムチャネル(SK4チャネル、またはIKチャネル、またはKCNN4チャネル、またはKCa3.1チャネル、またはIKCa1チャネル)の発現、活性、または機能を調節する剤を使用することにより、細胞間融合を調節するための組成物および方法に関する。本発明の組成物は、有効量のSK4チャネル調節剤(インヒビターまたはアクチベーター)を単独で、または他の治療剤と組み合わせて含む。1つの態様では、本発明の方法は、細胞を融合させる能力を有する細胞、または活発に融合している細胞に有効量のSK4チャネルインヒビターを提供することを含む。場合により、前記方法は、SK4チャネルインヒビターと共に治療剤を同時提供することを含む。また、細胞間融合を阻害することができるSK4チャネルインヒビターを同定する方法も含む。
【0007】
別の態様では、本発明には、細胞間融合の活性化について記載される。このように、前記方法は、細胞を融合させる能力を有する細胞、または活発に融合している細胞に、有効量のSK4チャネルアクチベーターを提供することを含む。また、細胞間融合を促進することができるSK4チャネルアクチベーターを同定する方法も含む。
【0008】
いくつかの態様では、本発明の組成物および方法は、マクロファージの細胞融合の調節を提供する。他の態様では、前記組成物および方法は、破骨細胞の阻害を含む、破骨細胞の分化および機能の調節を提供する。
【0009】
本発明の組成物および方法は、破骨細胞、巨細胞または転移癌細胞に関連する疾患を含む、マクロファージに由来する多核細胞により媒介される疾患または障害の予防または治療における用途が見出される。
【0010】
本発明は以下の態様を包含する。
1.中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(SK4)チャネルを発現する細胞の細胞融合を調節するための方法であって、前記細胞と、有効量のSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターとを接触させる工程を含み、細胞融合が調節される方法。
2.細胞融合が阻害される、態様1記載の方法。
3.細胞が血球系細胞である、態様1記載の方法。
4.細胞が、マクロファージ、樹状細胞およびB細胞からなる群より選択される、態様1記載の方法。
5.細胞がマクロファージである、態様1記載の方法。
6.細胞融合が同型または異型融合である、態様1記載の方法。
7.SK4チャネルインヒビターが、阻害性核酸、モノクローナル抗体および低分子インヒビターからなる群より選択される、態様1記載の方法。
8.阻害性核酸が、配列番号2記載の配列を含むSK4チャネルの発現を標的にする、態様7の方法。
9.モノクローナル抗体が、SK4チャネルの孔(ポア)領域または低分子結合ドメインを認識する、態様7記載の方法。
10.低分子インヒビターが、1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾール;2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミド;1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1Hピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(4−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;および1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−テトラゾールからなる群より選択される、態様7記載の方法。
11.低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾールである、態様7記載の方法。
12.低分子インヒビターが2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミドである、態様7記載の方法。
13.低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1Hピラゾールである、態様7記載の方法。
14.細胞内におけるSK4チャネルの発現または活性をアッセイする工程をさらに含む、態様7記載の方法。
15.方法がインビボにおける方法であり、そしてSK4チャネルインヒビターの有効量が、異常な細胞融合が生じているか、または異常な細胞融合が生じていると思われる被験体に提供される治療上有効な量である、態様1記載の方法。
16.治療上有効な量の抗炎症剤、抗骨喪失剤、免疫抑制剤または化学療法剤を被験体に同時提供する工程をさらに含む、態様15記載の方法。
17.破骨細胞の分化および機能を調節するための方法であって、破骨細胞または破骨細胞前駆体と、有効量の中間コンダクタンスカリウム活性化カリウム(SK4)チャネルインヒビターまたはアクチベーターとを接触させる工程を含む方法。
18.破骨細胞形成が阻害される、態様17記載の方法。
19.SK4チャネルインヒビターが、阻害性核酸、モノクローナル抗体および低分子インヒビターからなる群より選択される、態様17記載の方法。
20.モノクローナル抗体が、SK4チャネルの孔領域または低分子結合ドメインを認識する、態様19記載の方法。
21.低分子インヒビターが、1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾール;2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミド;1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(4−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;および1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1Hテトラゾールからなる群より選択される、態様19記載の方法。
22.低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾールである、態様19記載の方法。
23.低分子インヒビターが2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミドである、態様19記載の方法。
24.低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1Hピラゾールである、態様19記載の方法。
25.方法がインビボにおける方法であり、有効量のSK4チャネルインヒビターが、異常な破骨細胞の分化または機能が生じているか、または異常な破骨細胞の分化または機能が生じていると思われる被験体に提供される治療上有効な量である、態様17記載の方法。
26.治療上有効な量の抗炎症剤、抗骨喪失剤、免疫抑制剤または化学療法剤を被験体に同時投与することをさらに含む、態様25記載の方法。
27.骨喪失が生じやすいか、または骨喪失が生じている被験体の骨喪失を予防または治療するための方法であって、治療上有効な量の中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(SK4)チャネルインヒビターを前記被験体に投与して、破骨細胞の形成を阻害する工程を含み、被験体の骨喪失が予防または治療される方法。
28.SK4チャネルインヒビターが、阻害性核酸、モノクローナル抗体および低分子インヒビターからなる群より選択される、態様27記載の方法。
29.モノクローナル抗体が、SK4チャネルの孔領域または低分子結合ドメインを認識する、態様28記載の方法。
30.低分子インヒビターが、1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾール;2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミド;1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(4−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;および1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1Hテトラゾールからなる群より選択される、態様28記載の方法。
31.低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾールである、態様28記載の方法。
32.低分子インヒビターが2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミドである、態様28記載の方法。
33.低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1Hピラゾールである、態様28記載の方法。
34.治療上有効な量の抗炎症剤、抗骨喪失剤、免疫抑制剤または化学療法剤を被験体に同時投与する工程をさらに含む、態様27記載の方法。
35.炎症性または自己免疫疾患に罹患しやすいか、または炎症性または自己免疫疾患に罹患している被験体の、巨細胞形成を特徴とする炎症性または自己免疫疾患を予防または治療するための方法であって、治療上有効な量の中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(SK4)チャネルインヒビターを前記被験体に投与して、巨細胞の形成を阻害する工程を含み、前記被験体の炎症性または自己免疫疾患が予防または治療される方法。
36.SK4チャネルインヒビターが、阻害性核酸、モノクローナル抗体および低分子インヒビターからなる群より選択される、態様35記載の方法。
37.モノクローナル抗体が、SK4チャネルの孔領域または低分子結合ドメインを認識する、態様36記載の方法。
38.低分子インヒビターが、1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾール;2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミド;1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(4−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;および1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1Hテトラゾールからなる群より選択される、態様36記載の方法。
39.低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾールである、態様36記載の方法。
40.低分子インヒビターが2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミドである、態様36記載の方法。
41.低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1Hピラゾールである、態様36記載の方法。
42.治療上有効な量の抗炎症剤、抗骨喪失剤、免疫抑制剤または化学療法剤を前記被験体に同時投与する工程をさらに含む、態様35記載の方法。
43.被験体内に位置する部位に移植物または移植片を有する被験体の移植物または移植片拒絶反応を予防するための方法であって、治療上有効な量の中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(K)チャネルインヒビターを前記被験体に投与して、前記部位または前記部位近傍における巨細胞の形成を阻害する工程を含み、前記被験体の移植物または移植片拒絶反応が予防される方法。
44.SK4チャネルインヒビターが、阻害性核酸、モノクローナル抗体および低分子インヒビターからなる群より選択される、態様43記載の方法。
45.モノクローナル抗体が、SK4チャネルの孔領域または低分子結合ドメインを認識する、態様44記載の方法。
46.低分子インヒビターが、1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾール;2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミド;1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(4−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;および1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−テトラゾールからなる群より選択される、態様44記載の方法。
47.低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾールである、態様44記載の方法。
48.低分子インヒビターが2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミドである、態様44記載の方法。
49.低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1Hピラゾールである、態様44記載の方法。
50.治療上有効な量の抗炎症剤、または免疫抑制剤を前記被験体に同時投与する工程をさらに含む、態様43記載の方法。
51.移植片が細胞、器官または組織の移植片である、態様43記載の方法。
52.癌に罹患している被験体の癌転移を予防する方法であって、治療上有効な量の中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(SK4)チャネルインヒビターを前記被験体に投与して、転移癌細胞の形成を阻害する工程を含み、被験体の癌転移が予防される方法。
53.SK4チャネルインヒビターが、阻害性核酸、モノクローナル抗体および低分子インヒビターからなる群より選択される、態様52記載の方法。
54.モノクローナル抗体が、SK4チャネルの孔領域または低分子結合ドメインを認識する、態様53記載の方法。
55.低分子インヒビターが、1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾール;2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミド;1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(4−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;および1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−テトラゾールからなる群より選択される、態様53記載の方法。
56.低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾールである、態様53記載の方法。
57.低分子インヒビターが2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミドである、態様53記載の方法。
58.低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾールである、態様53記載の方法。
59.治療上有効な量の抗炎症剤、抗骨喪失剤、免疫抑制剤または化学療法剤を被験体に同時投与することをさらに含む、態様52記載の方法。
60.細胞間融合を阻害する中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(SK4)チャネルインヒビターを同定する方法であって:
細胞集団とSK4チャネルインヒビターの候補とを接触させる工程;および
前記候補剤が細胞集団内の細胞間融合を阻害するかどうかを判定する工程;
を含む方法。
61.細胞集団がマクロファージを含み、SK4チャネルインヒビターがマクロファージの細胞間融合を阻害する、態様60記載の方法。
62.細胞集団が少なくとも2種類の細胞型を含み、そのうちの1種がマクロファージである、態様60記載の方法。
63.有効量の中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(SK4)チャネルインヒビター;および
抗炎症剤、抗骨喪失剤、免疫抑制剤および化学療法剤からなる群より選択される治療剤
を含む組成物。
64.SK4チャネルインヒビターが、阻害性核酸、モノクローナル抗体および低分子インヒビターからなる群より選択される、態様63記載の組成物。
65.モノクローナル抗体が、SK4チャネルの孔領域または低分子結合ドメインを認識する、態様64記載の組成物。
66.低分子インヒビターが、1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾール;2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミド;1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(4−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;および1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−テトラゾールからなる群より選択される、態様64記載の組成物。
67.低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾールである、態様64記載の組成物。
68.低分子インヒビターが2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミドである、態様64記載の組成物。
69.低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾールである、態様64記載の組成物。
70.薬学的に許容しうる担体をさらに含む、態様63の組成物。
71.細胞間融合を活性化する中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(SK4)チャネルアクチベーターを同定する方法であって:
細胞集団とSK4チャネルアクチベーターの候補とを接触させる工程;および
前記候補剤が細胞集団内の細胞間融合を活性化するかどうかを判定する工程;
を含む方法。
72.細胞集団がマクロファージを含み、SK4チャネルアクチベーターがマクロファージの細胞間融合を活性化する、態様71記載の方法。
73.細胞集団が少なくとも2種類の細胞型を含み、そのうちの1種がマクロファージである、態様71記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0011】
以下の詳細な記載を考慮すれば、本発明がより一層理解され、そして上記以外の特徴、局面および利点が明らかになるであろう。このような詳細な記載は、以下の図面を参照する。
【図1A】図1Aは、新たにプレーティングしたラットの肺胞マクロファージの写真を示し;図1Bは、融合条件下で5日間培養した後に、融合したラットの肺胞マクロファージから形成された多核細胞の写真を示す。
【図1B】図1Aは、新たにプレーティングしたラットの肺胞マクロファージの写真を示し;図1Bは、融合条件下で5日間培養した後に、融合したラットの肺胞マクロファージから形成された多核細胞の写真を示す。
【図2】図2は、融性条件下のラットの肺胞マクロファージにおける24時間までのSK4チャネルmRNA発現のアップレギュレーションを示し、これは、5日目まで持続した(x軸は、0時間目、1時間目、24時間目または120時間目における複製肺胞マクロファージサンプルを表す)。データは、3つの個体サンプルの平均シグナル(+標準偏差)として示され、Affymetrix(登録商標)Genechip(登録商標)RAT230 Plus Array experiments (Probe ID 1368930_at)によって得られた。
【図3A】図3Aは、M−CSFおよびRANKL刺激下における、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)の破骨細胞への分化中のSK4チャネル発現のアップレギュレーションを示す(x軸は、0時間目、3日目、7日目、14日目または21日目における複製ヒトPBMCサンプルを表す)。データは、4つの個体サンプルの平均シグナル(+標準偏差)として表され、Affymetrix(登録商標)Genechip(登録商標)U133 Plus 2 Array chipsによって得られた。
【図3B】図3Bは、Genechip(登録商標)のデータが、TaqMan(登録商標)リアルタイムRT−PCRによりさらに確認されたことを示す(x軸は、0時間目、3日目、7日目、14日目または21日目における複製ヒトPBMCサンプルを表す)。
【図3C】図3Cは、他の細胞と比較したとき、ヒトB細胞、樹状細胞およびマクロファージにおけるSK4/IKのmRNAが高発現していることを示す。図3Cのデータは、Affymetrix(登録商標)Genechip(登録商標)RAT230 Plus Array chipsから得たものであり、細胞サンプルの平均シグナルとして示される。反復数と共に、サンプリングされた細胞を図3Cに示す。
【図4A】図4Aは、ヘテロ接合体(sk4+/−)およびホモ接合体ノックアウト(sk4−/−)マウスの脾細胞から作成された破骨細胞様細胞(すなわちTRAP+)の、7日間M−CSFおよびRANKL下で培養されたSK4チャネルが、ホモ接合体野生型(WT;sk4+/+)マウスと比較して少ないことを示す。図4Bは、WTマウスと比較したとき、これらの細胞の表面積が少ないことを示す。
【図4B】図4Aは、ヘテロ接合体(sk4+/−)およびホモ接合体ノックアウト(sk4−/−)マウスの脾細胞から作成された破骨細胞様細胞(すなわちTRAP+)の、7日間M−CSFおよびRANKL下で培養されたSK4チャネルが、ホモ接合体野生型(WT;sk4+/+)マウスと比較して少ないことを示す。図4Bは、WTマウスと比較したとき、これらの細胞の表面積が少ないことを示す。
【図5】図5は、SK4チャネルの欠損が、WT(sk4+/+)マウス(上方パネル)と比較して、ホモ接合体ノックアウト(sk4−/−)マウス(下方パネル)由来のマクロファージの相対的比率に有意な影響を与えないことを示す。FACSグラフは、左から右に、異なる組み合わせ(すべての細胞、CD11b/F480、CD11C/F480、CD11C/CD11b)として提示する。
【図6A】図6Aは、7日間融合条件(M−CSF+RANKL)下で培養されたホモ接合体ノックアウト(sk4−/−)マウスの骨髄に由来するマクロファージから作成された破骨細胞様細胞(すなわちTRAP+)が、WT(sk4+/+)マウスと比較して少ないことを示す。図6Bは、WTマウスと比較したとき、これらの細胞の全表面積が少ないことを示す。
【図6B】図6Aは、7日間融合条件(M−CSF+RANKL)下で培養されたホモ接合体ノックアウト(sk4−/−)マウスの骨髄に由来するマクロファージから作成された破骨細胞様細胞(すなわちTRAP+)が、WT(sk4+/+)マウスと比較して少ないことを示す。図6Bは、WTマウスと比較したとき、これらの細胞の全表面積が少ないことを示す。
【図7】図7A〜Bは、WTマウスの骨髄に由来するマクロファージにおいて、用量依存的に2つの異なるSK4チャネルインヒビター(ICA−17043、図7A;およびTRAM−34、図7B)が破骨細胞の形成を妨げることを示す。TRAP+破骨細胞様細胞の表面積を評価した(POCは、化合物不含対照に対する百分率である)。データは5つの複製物から得たものであり、そしてエラーバーは標準偏差を表す。図7Cは、ICA−17043処理されたサンプルのTRAPで染色された画像を示す。
【図8A】図8A〜8Bは、抗コラーゲン抗体誘導性関節炎モデルにおいて、ホモ接合体ノックアウト(sk4−/−)マウス(雄(M)および雌(F))の関節炎スコアが、WTマウス(MおよびF)と比較して、有意に減じられることを示す。2つの独立した実験のデータを示す。各試験群の動物数を図8A〜Bに示し、エラーバーは平均の標準誤差を表す。
【図8B】図8A〜8Bは、抗コラーゲン抗体誘導性関節炎モデルにおいて、ホモ接合体ノックアウト(sk4−/−)マウス(雄(M)および雌(F))の関節炎スコアが、WTマウス(MおよびF)と比較して、有意に減じられることを示す。2つの独立した実験のデータを示す。各試験群の動物数を図8A〜Bに示し、エラーバーは平均の標準誤差を表す。
【図9A】図9Aは、抗コラーゲン抗体誘導性関節炎モデル(図8の実験2)において、ホモ接合体ノックアウト(sk4−/−)マウス(雌(F))の足関節の硬骨損傷、軟骨損傷、パンヌスおよび炎症の組織学スコアが、WTマウスと比較して有意に低下することを示す。図9Bは、抗コラーゲン抗体誘導性関節炎モデルにおいて、ホモ接合体ノックアウト(sk4−/−)マウス(雄(M))の硬骨損傷が、WTマウスと比較して有意に減少することを示す。
【図9B】図9Aは、抗コラーゲン抗体誘導性関節炎モデル(図8の実験2)において、ホモ接合体ノックアウト(sk4−/−)マウス(雌(F))の足関節の硬骨損傷、軟骨損傷、パンヌスおよび炎症の組織学スコアが、WTマウスと比較して有意に低下することを示す。図9Bは、抗コラーゲン抗体誘導性関節炎モデルにおいて、ホモ接合体ノックアウト(sk4−/−)マウス(雄(M))の硬骨損傷が、WTマウスと比較して有意に減少することを示す。
【図10A】図10A〜Bは、M−CSF+RANKL刺激下で、ヒトPBMCにおいて、用量依存的に2つの異なるSK4チャネルインヒビター(それぞれ、ICA−17043およびTRAM−34、図10Aおよび10B)が破骨細胞の形成を妨げることを示す。TRAP+破骨細胞様細胞の表面積を評価した(POCは、化合物不含対照に対する百分率である)。データは4つの複製物から得た、そしてエラーバーは標準偏差を表す。
【図10B】図10A〜Bは、M−CSF+RANKL刺激下で、ヒトPBMCにおいて、用量依存的に2つの異なるSK4チャネルインヒビター(それぞれ、ICA−17043およびTRAM−34、図10Aおよび10B)が破骨細胞の形成を妨げることを示す。TRAP+破骨細胞様細胞の表面積を評価した(POCは、化合物不含対照に対する百分率である)。データは4つの複製物から得た、そしてエラーバーは標準偏差を表す。
【図11A】図11Aは、SK4欠損破骨細胞による骨塩の再吸収が不完全であることを示す。sk4+/+およびsk4−/−マウス由来の骨髄に由来するマクロファージを、カルシウム−リン酸塩結晶で作製された人工骨でコーティングしたBioCoat(商標)Osteologic(商標)スライド上において20日間M−CSF(20ng/ml)およびRANKL(100ng/ml)の存在下で培養した。1ウェル当りの溶解したカルシウム−リン酸塩表面積を記録することにより、破骨細胞の活性を評価した。結果は、3つの独立した実験(n=3;SD)を代表するものである。sk4+/+およびsk4−/−マウスの再吸収窩の代表的な画像を図11Bに示す。
【図11B】図11Aは、SK4欠損破骨細胞による骨塩の再吸収が不完全であることを示す。sk4+/+およびsk4−/−マウス由来の骨髄に由来するマクロファージを、カルシウム−リン酸塩結晶で作製された人工骨でコーティングしたBioCoat(商標)Osteologic(商標)スライド上において20日間M−CSF(20ng/ml)およびRANKL(100ng/ml)の存在下で培養した。1ウェル当りの溶解したカルシウム−リン酸塩表面積を記録することにより、破骨細胞の活性を評価した。結果は、3つの独立した実験(n=3;SD)を代表するものである。sk4+/+およびsk4−/−マウスの再吸収窩の代表的な画像を図11Bに示す。
【図12】図12は、SK4欠損マウスの骨梁骨密度が増加していたことを示す。雄および雌のsk4−/−マウスの大腿遠位は、sk4+/+マウスよりも高い骨梁密度を有する。8週齢の雄および雌のsk4−/−およびsk+/+マウス由来の大腿遠位を、pQCT(n=8;SD)を使用してスキャニングした。
【図13】図13は、マウス頭部の側背の解剖を示す。矢印は、インビボにおける破骨細胞形成アッセイにおいて、頭蓋冠上にリポ多糖(LPS)を局所皮下注射した部位を示す。このLPSの注射は、硬骨を再吸収する破骨細胞の形成を導く炎症反応を、局所的、迅速、そして効率的に誘導する。
【図14】図14は、SK4が存在しないことにより、頭蓋冠上へのLPSの局所皮下注射に応答して、劇的に骨の再吸収が妨げられることを示す。8週齢のsk4+/+およびsk4−/−の雄および雌マウスの、右頭蓋冠の骨膜中に(図13を参照されたい)、2μlの体積のLPS25μgを注射した。頭部をマイクロCTによりスキャニングした。SK4欠損マウスがLPSに対して応答しないことに留意されたい。(n=5)。
【図15A】図15A〜Cは、頭蓋冠上へのLPSの局所皮下注射に応答する、sk4+/+対SK4欠損(sk4−/−)の頭蓋冠の3Dパラメータのインビボ応答を示す。頭蓋冠骨表面密度(骨体積に対する骨表面積、図15A);骨厚さ(図15B);および骨密度(図15C)。SK4欠損マウスは、LPS注射の5日後、より厚い頭蓋冠の骨厚さおよびより高い骨密度を維持し、そしてより少ない再吸収された骨表面を維持する。
【図15B】図15A〜Cは、頭蓋冠上へのLPSの局所皮下注射に応答する、sk4+/+対SK4欠損(sk4−/−)の頭蓋冠の3Dパラメータのインビボ応答を示す。頭蓋冠骨表面密度(骨体積に対する骨表面積、図15A);骨厚さ(図15B);および骨密度(図15C)。SK4欠損マウスは、LPS注射の5日後、厚い頭蓋冠の骨厚さおよび高い骨密度を維持し、そして少ない再吸収された骨表面を維持する。
【図15C】図15A〜Cは、頭蓋冠上へのLPSの局所皮下注射に応答する、sk4+/+対SK4欠損(sk4−/−)の頭蓋冠の3Dパラメータのインビボ応答を示す。頭蓋冠骨表面密度(骨体積に対する骨表面積、図15A);骨厚さ(図15B);および骨密度(図15C)。SK4欠損マウスは、LPS注射の5日後、厚い頭蓋冠の骨厚さおよび高い骨密度を維持し、そして少ない再吸収された骨表面を維持する。
【0012】
詳細な説明
本発明は、細胞間融合中、特にマクロファージが関与する同型および異型融合中の中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(SK4またはKCNN4またはIK)チャネル発現の増加の確認に関する。本発明は、細胞間融合を調節するためのSK4インヒビターまたはアクチベーターの使用を含む。すなわち、SK4チャネルの発現、活性または機能の調節を介して細胞間融合を調節するための組成物および方法を提供する。このように、それぞれ細胞間融合を減少させる(すなわち、阻害する)か、または増加させるために、SK4チャネルの発現、活性または機能を、低下させる(すなわち、阻害する)か、または上昇させることができる。マクロファージが関与する細胞間融合の調節が特に対象となる。
【0013】
例えば、マクロファージなどの細胞の融合は、骨の発生、再形成および修復に関与する多核破骨細胞の形成を導くことができる。破骨細胞活性の機能不全は、骨粗鬆症および関節リウマチなどの骨疾患の原因になりえる。同様に、マクロファージの融合は、病原体または移植物などの異物に応答して形成される多核巨細胞の形成を導く場合がある。したがって、本発明は、マクロファージ融合におけるSK4チャネルの役割に注目する。
【0014】
いくつかの態様では、本発明は、細胞間融合、特にマクロファージが関与する細胞間融合を阻害するための方法を提供する。このような態様では、SK4チャネルの発現、活性、または機能、ひいては細胞間融合は、例えば、対象細胞と有効量のSK4チャネルインヒビターとを接触させることにより減少させる(すなわち、阻害する)ことが可能である。適切な対照と比較したとき、SK4チャネルの発現、活性または機能は、対象細胞中において、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%を含むが、これらに限定されない統計的に有意な量減少させうる。
【0015】
他の態様では、細胞間融合を増加させる、例えば、マクロファージ細胞融合を増加させることが所望である場合もある。したがって、例えば、マクロファージ細胞融合の増加および多核破骨細胞の形成は、異常に増加した骨密度に対抗するか、または慢性感染症もしくは大理石骨病を治療するために所望である場合もある。このような態様では、マクロファージ細胞のSK4チャネルの発現、活性または機能は、例えば、マクロファージ細胞と、有効量のSK4チャネル発現、活性または機能のアクチベーターとを接触させることにより増加させることができる。細胞間融合の増加が所望の結果である場合、適切な対照と比較したとき、SK4チャネルの発現、活性または機能は、対象細胞中において、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、またはそれ以上を含むが、これらに限定されない統計的に有意な量増加させうる。
【0016】
本発明の組成物および方法は、破骨細胞および/または破骨細胞前駆体のSKチャネルの発現、活性または機能の調節を介して、破骨細胞分化および機能を調節することに用途が見出される。破骨細胞は、その石灰化されたマトリックスの除去により骨組織を可溶化する、同型の、特殊化、多核化されたマクロファージに由来する細胞である。マクロファージ細胞などの破骨細胞前駆体からの破骨細胞形成を調節することによって、破骨細胞形成、ひいては破骨細胞数および/または破骨細胞表面積を変化させて、破骨細胞機能全体を変化させることが可能である。破骨細胞の機能を調節して、例えば、これらの細胞の骨塩再吸収活性を変化させることが可能である。したがって、いくつかの態様では、本発明は、破骨細胞および/または破骨細胞前駆体と、有効量のSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターとを接触させることを含む、破骨細胞の分化および機能を調節するための方法を提供する。
【0017】
いくつかの態様では、破骨細胞の分化および/または機能は、SKチャネルインヒビターを使用して阻害される。したがって、所望の結果が破骨細胞分化および/または機能の低下である場合、マクロファージなどの破骨細胞前駆体のSK4チャネル発現、活性または機能を阻害して、マクロファージ細胞融合を減少させ、それによって、破骨細胞形成を減少させることができ(破骨細胞数および/または破骨細胞表面積の減少を含む)、これは破骨細胞の機能を全体的に低下させる。破骨細胞のSK4チャネル発現、活性または機能を阻害して、それによって、例えば、破骨細胞骨塩再吸収活性の低下を含む破骨細胞の機能を低下させることができる。適切な対照と比較したとき、SK4チャネルの発現、活性または機能は、破骨細胞および/または破骨細胞前駆体において、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%を含むが、これらに限定されない統計的に有意な量低下させうる。
【0018】
本発明の他の態様では、SKチャネルアクチベーターを使用して、破骨細胞分化および/または機能を向上させるための方法を提供する。したがって、例えば、破骨細胞分化および/または機能の向上は、異常に増加した骨密度に対抗するか、または慢性感染症もしくは大理石骨病を治療するために所望である場合もある。したがって、所望の結果が破骨細胞分化および/または機能の向上である場合、マクロファージなどの破骨細胞前駆体のSK4チャネル発現、活性または機能を向上させて、マクロファージ細胞融合を増加させ、それによって、破骨細胞形成を増加させることができ(破骨細胞数および/または破骨細胞表面積の増加を含む)、これは、例えば、破骨細胞骨塩再吸収活性の向上を含む、破骨細胞の機能を全体的に向上させる。破骨細胞のSK4チャネル発現、活性または機能を向上させて、それによって、例えば、破骨細胞骨塩再吸収活性の向上など、破骨細胞の機能を向上させることができる。適切な対照と比較したとき、SK4チャネルの発現、活性または機能は、破骨細胞および/または破骨細胞前駆体において、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、またはそれ以上を含むが、これらに限定されない統計的に有意な量増加する場合がある。
【0019】
細胞間融合の阻害
任意の特定の理論に縛られることを意図するものではないが、SK4チャネルインヒビターは、破骨細胞、巨細胞または転移癌細胞などの、活発に融合している細胞および/または新たに融合した多核細胞のSK4チャネル発現、SK4チャネル活性、あるいは、上流または下流のSK4チャネルエフェクターを調節する。そのため、SK4チャネルインヒビターを用いて細胞間融合を阻害するのための、より詳しくは、破骨細胞、巨細胞および転移癌細胞の形成につながる同型および異型融合を含むマクロファージ細胞融合を阻害するための組成物と方法について記載する。
【0020】
したがって、SK4チャネルインヒビターは、細胞間融合を阻害するためにインビボまたはインビトロで提供されうる。インビトロで提供した場合、SK4チャネルインヒビターを使用して、細胞間融合を阻害したり、または細胞間融合を調節する剤をスクリーニングしたりすることができる。インビボで提供した場合、SK4チャネルインヒビターを使用して、マクロファージに由来する多核細胞、特に破骨細胞、巨細胞または転移癌細胞が関係する様々な疾患または障害を予防および/または治療することができる。詳しくは、SK4チャネルインヒビターを使用して、骨再吸収/骨喪失を予防または低減したり、自己免疫または炎症性の疾患または障害を予防または治療したり、移植物または移植片拒絶反応を予防したり、あるいは癌転移を予防したりすることができる。
【0021】
本明細書で使用するとき、「中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウムチャネル(単数または複数)」または「SK4チャネル(単数または複数)」は、100pS未満、または約12pS〜約50pS(例えば、それぞれ、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれるChristopherson (1991) J. Membr. Biol. 119:75-83;およびTharp & Bowles (2009) Cardiovasc. Hematological Agents Med. Chem. 7:1-11を参照されたい)であるが、典型的には約30pS〜約40pSのコンダクタンスを有する、電圧非依存性で、内向き整流性のカリウムチャネルを意味する。SK4チャネルは、マイクロモル濃度以下の細胞内カルシウム濃度(約100nmol/L〜約300nmol/L)により活性化され、クロトリマゾール、TRAM−34およびICA−15451などのカリブドトキシンおよびトリアリールメタンによりブロックされるが、イベリオトキシン、アパミンまたはケトコナゾールによってはブロックされない。SK4チャネルは、中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウムチャネルタンパク質4、ガルド、fIK、hIK、mIK、IK、IK1、IKCa1、IKCA1、ImK、KCa4、KCA4、KCa3.1、KCNN4またはSK4チャネルのように当技術分野において様々に公知である。例えば、Cho et al. (2008) Expert Rev. Mol. Diagn. 8:179-187;およびReich et al. (2005) Eur. J. Immunol. 35:1027-1036を参照されたい;これらはそれぞれ、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。したがって、本発明の目的のために、用語「SK4チャネル」は、KCNN4およびSK4チャネルを含む、これらのチャネルが知られている様々な名称を包含することを意図する。
【0022】
マウス、ラットおよびヒトなど多くの種でSK4チャネルモノマーの核酸およびアミノ酸配列が公知である。例えば、Joiner et al. (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:11013-11018; Logsdon et al. (1997) J. Biol. Chem. 272:32723-32726; Neylon et al. (1999) Circ. Res. 85:E33-E43; Vandorpe et al. (1998) J. Biol. Chem. 273:21542-21553; Warth et al. (1999) Pflugers Arch. 438:437-444;ならびに米国特許第6,692,937号および同第6,894,147号を参照されたい;これらはそれぞれ、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる;また、配列番号1〜6も参照されたい。SK4チャネルモノマーは、6つの膜貫通領域(S1〜S6)、およびカリウム選択性アミノ酸配列GYGを含むS5とS6との間の1つの孔モチーフを有する。また、SK4チャネルモノマーは、孔モチーフ近傍にN結合型糖鎖付加部位を有する。
【0023】
SK4チャネルのN末端は小胞体保留シグナル(前記Tharp & Bowles (2009))を含み、C末端は、細胞内のカルシウムを感知するカルモデュリン結合ドメインを含む(Fanger et al. (1999) J. Biol. Chem. 274:5746-5754;およびJoiner et al. (2001) J. Biol. Chem. 276:37980-37985;これらはそれぞれ、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる)。また、C末端は、プロテインキナーゼA(PKA)、プロテインキナーゼC(PKC)およびプロテインキナーゼG(PKG)によるリン酸化のための多数のコンセンサス配列(Joiner et al.(1997),前記)に加えて、チロシンリン酸化のコンセンサス配列(RLLQEAWMY;配列番号7;Tharp & Bowles (2009)、前記)を含む。SK4チャネルモノマーは、ホモテトラマーを形成して、カリウムイオンの流出をレギュレーションする。
【0024】
SK4チャネルは、T細胞、B細胞、マクロファージ、小グリア細胞、赤血球、平滑筋細胞、内皮細胞および上皮細胞を含む多くの細胞型において発現するが、チャネルの発現のタイミングおよび役割はこれらの細胞において異なる場合がある。しかし、融合している細胞、または最近融合した細胞におけるSK4チャネルの発現および役割は、これまで報告されていない。
【0025】
本明細書で使用するとき、「マクロファージ(単数または複数)」は、先天性および後天性免疫に加えて組織ホメオスタシスにおいても機能するCD68+(ヒト)またはF4/80+(マウス)単核白血球を意味する。また、マクロファージはCD11b+である場合もある。形態学的には、マクロファージは、円形の核を有する大型細胞(約25μm〜50μm)のように見え、1〜2つの核小体、集合クロマチン、液胞を備えた豊富な細胞質、および多数のアズール顆粒を含む。マクロファージは、身体組織全体にわたって存在し、循環血液中の単球に由来する(すなわち、血液由来の単核白血球)。マクロファージには、食作用および抗原提示という2つの主な役割がある。
【0026】
食細胞として、マクロファージは、細胞残屑および病原体(例えば細菌、真菌、原生動物、ウイルスおよび酵母)を貪食し、次いで、消化し、そして、リンパ球および他の免疫細胞を刺激してこれらの病原体に応答する。抗原提示細胞として、マクロファージは、食菌した病原体の抗原を処理し、リンパ球および他の免疫細胞の表面上に提示する。また、マクロファージは、酵素、補体タンパク質、およびインターロイキン1および腫瘍壊死因子−αなどの制御因子を含む一連のモノカインを分泌する。さらに、マクロファージは、リンホカイン用レセプターを有し、前記レセプターは、病原体攻撃性および腫瘍破壊細胞へマクロファージを活性化させる。
【0027】
いくつかのマクロファージは、特定の器官または組織、特に病原体侵入または塵埃の蓄積が生じる可能性が高い領域に局在する(すなわち、定着する)。定着性マクロファージの機能は不均一であり、サイトカインおよび病原性産物などの微環境刺激に左右されると考えられる。定着性マクロファージの例を表1に列挙する。
【表1】
【0028】
マクロファージ(およびその単球前駆体)の同定、単離および培養に必須の方法および材料は、当技術分野において公知である。例えば、Alabraba et al. (2007) J. Immunol. Methods 326:139-144; Borgmann et al., "Isolation and HIV-1 infection of primary human microglia from fetal and adult tissue," 49-70 In: Methods in Molecular Biology (Zhu ed., Humana Press Inc. 2005); Buckley et al. (1985) J. Immunol. 134:2310-2315; Buckley et al., "Human osteoclast culture from peripheral blood monocytes," 55-68 In: Methods in Molecular Medicine (Picot ed., Humana Press Inc. 2nd ed. 2005); Cline (1994) Blood 84:2840-2853; Davies & Gordon, "Isolation and culture of human macrophages," 105-116 In: Basic Cell Culture Protocols (Helgason & Miller eds., Humana Press Inc. 3rd ed. 2005); Davies & Gordon, "Isolation and culture of murine macrophages," 91-103 In: Basic Cell Culture Protocols (Helgason & Miller eds., Humana Press Inc. 3rd ed. 2005); Fels & Cohn (1986) J. Applied Physiology 60:353-369; Gordon & Taylor (2005) Nat. Rev. Immunol. 5:953-964; Havenith et al. (1998) Glia 22:348-359; Rogler et al. (1998) Clin. Exp. Immunol. 112:205-215; Schuenke & Gelman (2003) J. Neurovirol. 9:346-357; St-Laurent et al. (2009) J. Asthma 46:1-8; Taylor et al. (2005) Ann. Rev. Immunol. 23:901-944;およびWilson & Stewart, "Glomerular epithelial and mesangial cell culture and characterization," 269-282 In: Methods in Molecular Medicine (Picot ed., Humana Press Inc. 2nd ed. 2005)を参照されたい。これらはそれぞれ、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0029】
上述のように、マクロファージは自身(すなわち同型融合)または他の細胞(すなわち異型融合)と融合することにより多核細胞を形成することができる。前記Vignery (2005)を参照されたい。マクロファージが融合する機序は完全には理解されていないが、SK4チャネルのアップレギュレーションおよび活性が関与しており、そしてこのようなアップレギュレーションまたは活性をブロックすると細胞間融合が阻害されることを以下に示す。本明細書において特に対象となるマクロファージに由来する多核細胞は、破骨細胞、巨細胞および転移癌細胞である。
【0030】
本明細書で使用するとき、「同型融合」は、マクロファージなどの同種の少なくとも2個の細胞間の細胞間融合を意味する。マクロファージの同型融合の例は、巨細胞、筋芽細胞、破骨細胞および合胞体栄養細胞を含むが、これらに限定されない。対照的に、「異型融合」は、少なくとも1つの細胞がマクロファージである異なる系統の少なくとも2個の細胞間の細胞間融合を意味する。マクロファージとの異型融合の例は、転移癌細胞を含むが、これらに限定されない。同上を参照されたい。
【0031】
本明細書で使用するとき、「破骨細胞(単数または複数)」は、その石灰化されたマトリックスの除去により骨組織を可溶化する、同型の、特殊化、多核化されたマクロファージに由来する細胞を意味する。このような細胞はCD200、CTレセプターまたはDC−STAMPを発現することができる。形態学的には、破骨細胞は、ほぼ同じ大きさである多数の別々の核(約2〜約50個)を含む、大きく、不規則に形作られた細胞である。また、破骨細胞は、ビトロネクチンおよびカルシトニン受容体の発現に加えて、酒石酸塩耐性の酸性ホスファターゼ(TRAP)およびカテプシンKの高発現を特徴とする。破骨細胞は、典型的に骨組織に存在し、少なくともNFκβアクチベーター(RANK)リガンド(RANKL)およびマクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)によって刺激されたとき、マクロファージから形成される。
【0032】
本明細書で使用するとき、「巨細胞(単数または複数)」は、組織ホメオスタシスにおいて機能する同型の、特殊化、多核化されたマクロファージに由来する細胞を意味する。このような細胞はCD200、またはDC−STAMPを発現することができる。形態学的に、巨細胞は、多数の別々の核を有する、大きく、不規則に形作られた細胞であるという点で破骨細胞に非常に類似している。巨細胞は、マクロファージの防御能力を増強し、大きな異物、特に医療用移植物および、病原体への慢性炎症に加えて、肉芽腫性疾患に応答してマクロファージから形成される。インターロイキン−4またはインターロイキン−13は、巨細胞形成に必要であると考えられる。
【0033】
本明細書で使用するとき、「転移癌細胞(単数または複数)」は、異型の、多核化されたマクロファージおよび癌に由来する細胞を意味する。典型的に、前記細胞は、マクロファージの運動能力および癌細胞の分裂能力を有するハイブリッドである。そのため、転移癌細胞は、腫瘍形成の原発部位から離れて遊走し、身体の他の領域に定着することができる。
【0034】
本明細書で使用するとき、「マクロファージに由来する多核細胞(単数または複数)」は、マクロファージの同型または異型融合に起因する少なくとも2つ以上の核を有する細胞を意味する。マクロファージに由来する多核細胞の例は、乳癌細胞、多発性骨髄腫細胞、破骨細胞、巨細胞、および特定の転移癌細胞を含むが、これらに限定されない。
【0035】
本明細書に記載された組成物および方法は、マクロファージに由来する多核細胞、特に破骨細胞、巨細胞および転移癌細胞が関与する様々な疾患または障害の治療および/または予防に用途が見出される。具体的には、SK4チャネルインヒビターを使用して、骨再吸収/骨喪失を予防または低減したり、自己免疫または炎症性の疾患または障害を予防または治療したり、移植物または移植片拒絶反応を予防したり、あるいは癌転移を予防したりすることができる。
【0036】
したがって、本発明のいくつかの態様では、前記組成物および方法は、骨喪失および骨喪失に関連する疾患の治療または予防において使用するための組成物および方法である。骨喪失疾患に関して、異常な破骨細胞形成が生じる場合があり、それによって過度に硬骨が再吸収され、骨ミネラル密度(BMD)が低下する。本発明の組成物および方法を用いて予防または治療することができる骨喪失疾患の例は、骨粗鬆症、骨軟化、パジェット病、歯槽膿漏症、他の病理学的条件(すなわちアルコール中毒、セリアック病、慢性腎臓病、慢性肝炎、癲癇、胃腸疾患、上皮小体機能亢進症、甲状腺機能亢進症、性腺機能低下症、白血病、リンパ腫、関節リウマチ、壊血病、ビタミンD欠乏)に付随して起こる骨喪失などを含むが、これらに限定されない。
【0037】
本発明の他の態様では、前記組成物および方法は、特に巨細胞形成が関与している自己免疫疾患の治療または予防において使用するための組成物および方法である。自己免疫疾患に関して、巨細胞形成は、免疫系が自身の構成要素を自己と認識しないことに応答して生じる場合があり、それにより細胞および組織の破壊が生じる。異常な免疫反応は、特定の器官に限定される(すなわち、局在する;例えば甲状腺炎において)場合もあり、異なる場所の特定の組織(例えば、肺および腎臓の両方の基底膜を冒す場合があるグッドパスチャー病)に関与する場合もあり、全身性である場合もある。したがって、自己免疫疾患における巨細胞形成を予防するか、調節するか、または阻害する(すなわち低減)ことにより、細胞および組織損傷を寛解させることができる。
【0038】
本発明の組成物および方法を用いて予防または治療することができる自己免疫疾患の例は、急性散在性脳脊髄膜炎(ADEM)、アジソン病、脱毛、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性内耳疾患、自己免疫溶血性貧血、自己免疫性肝炎、シャガス病、慢性閉塞性肺疾患、セリアック病、クローン病、皮膚筋炎、1型糖尿病、子宮内膜症、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン−バレー症候群(GBS)、橋本病、川崎病、特発性血小板減少性紫斑病、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症(MS)、重症筋無力症、乾癬、原発性胆汁性肝硬変、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、側頭動脈炎(「巨細胞性動脈炎」としても知られている)、潰瘍性大腸炎、脈管炎などを含むが、これらに限定されない。
【0039】
本発明のさらに他の態様では、前記組成物および方法は、特に巨細胞形成が関与している炎症性疾患の治療または予防において使用するための組成物および方法である。炎症性疾患に関して、身体の免疫系が病原体、損傷細胞または刺激原などの刺激に対して過剰反応したとき、巨細胞形成が生じる場合がある。過剰反応性免疫反応は、炎症を引き起こし、健常細胞および組織を破壊する、多核巨細胞を含む炎症細胞の残存により特徴付けることができる。したがって、炎症性疾患における巨細胞形成を阻止または阻害することにより、炎症、ならびに細胞破壊および組織損傷を寛解させることができる。
【0040】
本明細書に記載される組成物および方法を用いて予防または治療することができる炎症性疾患の例は、ざ瘡、喘息、関節硬化症、クロム酸閉塞性肺疾患、大腸炎、皮膚炎、糸球体腎炎、炎症性腸感染、湿疹、ケロイド、狼瘡、腎炎、変形性関節症、骨盤炎症性疾患、乾癬、関節リウマチ、腱炎などを含むが、これらに限定されない。明瞭にするために述べると、上記のいくつかの自己免疫疾患は、自己免疫および炎症性疾患の両方として分類しうる。
【0041】
本発明の他の態様では、前記組成物および方法は移植物および移植片拒絶反応の予防において使用するための組成物および方法である。巨細胞形成は、移植物または移植細胞、器官または組織に応答して生じる場合がある。レシピエントの免疫系は、移植物(すなわち、ペースメーカーなどの医療機器)または移植細胞、器官もしくは組織を異物として認識し、拒絶する場合があり、前記拒絶は、細菌およびウイルスなどの起炎菌を破壊するかのように、移植物を攻撃して移植物の分解または機能不全を引き起すか、または移植細胞/器官/組織を攻撃する、巨細胞を含む炎症細胞の残存を特徴とする。したがって、移植物または移植片の部位における巨細胞形成を予防することにより、拒絶反応を予防または寛解させることができる。
【0042】
本明細書で使用するとき、「移植物拒絶反応」とは、埋め込まれた医療機器が移植レシピエントの身体に受け入れられない免疫状態を意味する。対象移植物は、蝸牛装置、人工膝関節、人工股関節、ボーンセメント、乳房移植物、心臓移植物(例えば人工弁、細動除去器、左室補助装置、ペースメーカー)、皮膚移植物、胃バンドまたはバルーン、留置カテーテル、インシュリンポンプ、子宮内器具、神経刺激物、眼の移植物、整形外科的移植物、陰茎勃起性人工器官、ステント、尿道スリング、音声人工器官などを含むが、これらに限定されない。前述のものを考慮して、本明細書に記載された組成物で移植可能な装置をコーティングするか、または前記組成物に含浸して、拒絶反応の可能性を阻止または減少させうることも考えられる。
【0043】
本明細書で使用するとき、「移植片拒絶反応」は、移植された細胞、組織または器官が移植レシピエントの身体によって受け入れられない免疫状態を意味する。移植片拒絶反応においては、レシピエントの免疫系は、移植された器官/組織を破壊しようとしてそれを異物として攻撃する。
【0044】
移植片拒絶反応の例は、硬骨および骨髄移植片、角膜移植片、心臓および心臓弁移植片、腸移植片、腎臓移植片、肢移植片、肝臓移植片、肺移植片、膵臓移植片、血小板輸血、赤血球輸血、皮膚移植片、幹細胞移植片、移植腱、血管移植片、白血球輸血などを含むが、これらに限定されない。
【0045】
本発明の他の態様では、前記組成物および方法は、転移細胞形成および癌転移の予防において使用するための組成物および方法である。転移に関して、転移細胞は、マクロファージと癌細胞との融合から形成され、次に、身体における原巣(すなわち一次腫瘍)から身体の他の部分へ広がり得る。事実上、すべての癌で転移が発生する可能性があり、転移は、3つの方法で広がる場合がある:(1)腫瘍から周囲の組織への局所伸展を通して、(2)血流を通じて遠位部位へ、または(3)リンパ系を通じて近傍または遠位リンパ節に。したがって、転移癌細胞の形成を妨げることにより、有益に癌転移を予防することができる。
【0046】
本発明の組成物および方法を用いて転移を予防することができる癌の例は、骨癌、脳癌、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、腸癌、肝臓癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、胃癌、喉頭癌、子宮癌などを含むが、これらに限定されない。
【0047】
本発明は、マクロファージに由来する多核細胞によって媒介される疾患または障害を治療するための、有効量のSK4チャネルインヒビターおよび場合により治療剤を有する組成物を含む。1つの態様では、有効量のSK4チャネルインヒビターおよび治療剤を含む組成物が提供される。他の態様では、治療的に有効な量のSK4インヒビターおよび治療剤に加えて薬学的に許容しうる担体を含む薬学的組成物が提供される。
【0048】
本明細書で使用するとき、「SK4チャネルインヒビター」または「SK4チャネル阻害剤」は、SK4チャネル発現(すなわち、翻訳または転写)、SK4チャネル活性(すなわち、コンダクタンス)、または上流および下流のSK4チャネルエフェクター(すなわち、プロモーターアクチベーター、インデューサー、サプレッサー、リプレッサー、キナーゼなど)に影響を与える剤を意味する。いくつかの態様では、SK4チャネルインヒビターは、阻害性核酸配列、抗SK4チャネル抗体、またはSK4チャネルに結合して、それらの機能(すなわち脱分極化または再分極させる能力)を調節するよう設計された他のタンパク質でありうる。あるいは、SK4チャネルインヒビターは、SK4チャネルに特異的に結合して、それらの活性または機能をブロックする低分子でありうる。
【0049】
SK4チャネルインヒビターの厳密な性質を問わず、SK4チャネルインヒビターは、SK4チャネルの発現、活性または機能のうちの一つ以上を減少させる。発現、活性または機能は、適切な対照と比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%。96%、97%、98%、99%または100%を含むが、これらに限定されない統計的に有意な量低下する。好ましくは、SK4チャネルの発現、活性または機能は、少なくとも約10%以上低下する。逆に、SK4チャネルインヒビターは、SK4チャネル発現、活性または機能を統計的に増加させないはずである。
【0050】
SK4チャネルの発現に影響を与える剤は、SK4チャネルモノマーの発現を阻害する阻害性核酸分子を含みうる。阻害性核酸分子は、SK4チャネルモノマーをコードするメッセンジャーRNAの翻訳を妨げる(例えば、センスサプレッション/コサプレッション;アンチセンスサプレッション;低分子干渉RNA、マイクロRNA、又は低分子ヘアピン型RNAを介した二本鎖RNA(dsRNA)干渉;アンプリコン介在性干渉;およびリボザイム)ことにより、直接モノマーの発現を阻害することも、またはSK4チャネルモノマーをコードする遺伝子または核酸配列の転写または翻訳を阻害するポリペプチドをコードすることにより、間接的にモノマーの発現を阻害することもできる。哺乳動物細胞における遺伝子産物の発現を阻害したり、または発現しないようにする方法は、当技術分野において周知であり、本発明において任意のこのような方法を使用して、SK4チャネルモノマーの発現を阻害することができる。
【0051】
センスサプレッション/コサプレッションでは、発現カセットは、「センス」配位でSK4チャネルモノマーをコードするネイティブな遺伝子または核酸(例えば、配列番号1、3、もしくは5を含む遺伝子もしくは核酸配列、または配列番号1、3、もしくは5と実質的に同一の配列)に対応するコサプレッション核酸分子を発現するよう設計してもよい。コサプレッション核酸分子は、SK4チャネルモノマーをコードする遺伝子または核酸のすべてまたは一部、SK4チャネルモノマーをコードする遺伝子または核酸の5’および/または3’非翻訳領域のすべてまたは部分、あるいはSK4チャネルモノマーをコードする遺伝子または核酸のコード配列および非翻訳領域のすべてまたは一部に相当し得る。一般的に、コサプレッション核酸分子は、少なくとも約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、550、600、650、700、750、800、850、900、850、または1000個のヌクレオチドを含むことができるか、あるいはSK4チャネルモノマーの完全長核酸配列以下の任意の大きさでありえる。コサプレッション核酸分子がSK4チャネルモノマーのコード領域のすべてまたは一部を含む場合、機能性SK4チャネルモノマーがコサプレッション核酸分子から転写されないように、開始コドンを有しないよう発現カセットを設計してもよい。コサプレッション核酸分子の過剰発現は、SK4チャネルモノマーをコードする遺伝子または核酸の発現を低下させることができる。哺乳類のイオンチャネルを阻害するためにコサプレッションを使用する方法は、当技術分野において周知である。例えば、Bingham (1997) Cell 90:385-387;および国際公開公報第1999/063081号を参照されたい;これらはそれぞれ、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0052】
アンチセンスサプレッションでは、発現カセットは、SK4チャネルモノマーをコードするネイティブな遺伝子または核酸のすべてまたは一部に相補的なアンチセンス核酸分子を発現するよう設計してもよい。アンチセンス核酸分子は、SK4チャネルモノマーをコードする遺伝子または核酸の相補体のすべてまたは一部、SK4チャネルモノマーをコードする遺伝子または核酸の5’および/または3’非翻訳領域の相補体のすべてまたは一部、あるいはSK4チャネルモノマーをコードする遺伝子または核酸配列のコード配列および非翻訳領域の両方の相補体のすべてまたは一部に相当し得る。また、アンチセンス核酸分子は、SK4チャネルモノマーをコードする遺伝子または核酸に対して完全に相補的であってよく(すなわち、ターゲット核酸配列の相補体と100%同一)、または部分的に相補的であってもよい(すなわち、ターゲット核酸配列の相補体と100%未満同一)。アンチセンス核酸分子の発現は、SK4チャネルモノマーをコードする遺伝子または核酸の発現を低下させることができる。
【0053】
用いられるアンチセンス核酸分子の種類にかかわらず、少なくとも25個のヌクレオチド、50、100、200、300、400、450、500、550個、またはそれ以上のヌクレオチドの配列を使用することができる。アンチセンス核酸分子を使用して、哺乳類のイオンチャネルの発現を阻害するための方法は、当技術分野において周知である。例えば、Eigel & Hadley (2001) Am. J. Physiol. Heart Circ. Physiol. 281:H2184-H2190; Meiri et al.(1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:4430-4434; Sasamura et al. (2002) Jpn. J. Pharmacol. 90:164-172; Si et al. (2006) Brit. J. Pharmacol. 148:909-917; Tao et al. (2008) Am. J. Physiol. Cell Physiol. 295:C1409-C1416; Tharp et al. (2006) Am. J. Physiol. Heart Circ. Physiol. 291:H2493-H2503; Wang et al. (2007) Oncogene 26:5107-5114;およびWaterhouse & Helliwell (2003) Nat. Rev. Genet. 4:29-38を参照されたい;これらはそれぞれ、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0054】
アンチセンス配列の3’およびポリアデニル化シグナルの5’の位置における発現カセットにポリ−dT領域を含めることにより、アンチセンスサプレッション効率を高めることができる。米国特許出願公開第2002/0048814号を参照されたい;これは、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0055】
dsRNA干渉では、コサプレッションについて上に記載されたようなセンス核酸分子、および前記センス核酸配列に対して完全にまたは部分的に相補的なアンチセンス核酸分子は、同じ細胞中で発現して、SK4チャネルモノマーをコードするネイティブな遺伝子または核酸の発現を阻害する。SK4チャネルモノマーをコードする核酸のセンスおよびアンチセンス配列の両方を含むように発現カセットを設計することにより、センスおよびアンチセンス核酸の分子を発現させることができる。あるいは、センスおよびアンチセンスの核酸分子に対して別々の発現カセットを使用してもよい。
【0056】
dsRNA干渉に用いられる核酸分子の種類にかかわらず、少なくとも25個のヌクレオチド、50、100、200、300、400、450、500、550個、またはそれ以上のヌクレオチドの配列を使用することができる。dsRNA干渉を使用して、哺乳類のイオンチャネルの発現を阻害するための方法は、当技術分野において周知である。例えば、Cotella et al.(2005) Biochem. Biophys. Res. Commun. 330:555-560;およびPalmer et al. (2006) Cell Biochem. Biophys. 46:175-191を参照されたい;これらはそれぞれ、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0057】
アンプリコン介在性干渉では、SK4チャネルモノマーをコードするネイティブな遺伝子または核酸のすべてまたは一部を含むウイルスに由来する配列を含む核酸配列を有するアンプリコン発現コンストラクトを設計してもよい。アンプリコン発現カセットの転写産物中に存在するウイルス配列は、転写産物がそれ自身の複製を導くことを可能にする。アンプリコンによって生成された転写物は、SK4チャネルをコードする遺伝子または核酸配列に対してセンスであってもアンチセンスであってもよい。
【0058】
用いられる核酸分子の種類にかかわらず、少なくとも25個のヌクレオチド、50、100、200、300、400、450、500、550個、またはそれ以上のヌクレオチドの配列を使用することができる。アンプリコンを使用して、哺乳類のイオンチャネルの発現を阻害または減弱する方法は、当技術分野において周知である。例えば、White et al. (2002) J. Neurophysiol. 87:2149-2157を参照されたい;これは、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0059】
リボザイムでは、発現コンストラクトは、SK4チャネルをコードするネイティブな遺伝子または核酸配列によって発現されたmRNAに対する触媒活性を有する核酸分子を発現するよう設計してもよい。触媒性核酸分子は、SK4チャネルをコードするmRNAまたは核酸の分解を引き起こして、SK4チャネルの発現を減少させる。
【0060】
用いられる触媒性核酸分子の種類にかかわらず、少なくとも25個のヌクレオチド、50、100、200、300、400、450、500、550個、またはそれ以上のヌクレオチドの配列を使用することができる。リボザイムを使用して、哺乳類のイオンチャネルの発現を阻害または減弱する方法は、当技術分野において周知である。例えば、Liu et al. (2000) J. Biol. Chem. 275:8711-8718;および米国特許第4,987,071号を参照されたい;これらはそれぞれ、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0061】
マイクロRNA(miRNA)干渉では、miRNAは、転写されるが、SK4チャネルモノマーに翻訳されないように(すなわち、非コードRNA)、SK4チャネルモノマーをコードするネイティブな遺伝子または核酸配列に相補的な核酸分子を発現するように発現コンストラクトを設計してもよい。一次転写産物(pri−miRNA)はそれぞれ、プレmiRNAと呼ばれる短いステムループ構造に、そして最終的に機能的なmiRNAにプロセシングされる。miRNAは、約22〜約23個のリボヌクレオチドからなる。成熟miRNAは、SK4チャネルモノマーをコードする遺伝子または核酸分子の発現の阻害において非常に効率的である。成熟miRNA分子は、SK4チャネルモノマーをコードする一つ以上の核酸分子に対して部分的に相補的であるので、SK4チャネルモノマーをコードする核酸分子の翻訳を阻害するか、または時に前記核酸分子の切断を促進することにより、遺伝子発現をダウンレギュレーションする。miRNA分子を使用して、哺乳類のイオンチャネルの発現を阻害する方法は、当技術分野において周知である。例えば、Lee et al. (1993) Cell 75:843-854;およびXiao et al. (2007) J. Biol. Chem. 282:12363-12367を参照されたい;これらはそれぞれ、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0062】
低分子ヘアピン型RNA(shRNA)干渉では、RNA干渉を介して遺伝子発現をサイレンシングするために使用することができる、密着したヘアピンカーブを作製する、SK4チャネルモノマーをコードするネイティブな遺伝子または核酸に相補的な核酸分子を発現するように発現カセットを設計してもよい。shRNA干渉は、また、発現カセットが、ヘアピン構造を有するイントロンがスプライシングされたRNAをコードする核酸を発現するように設計されてもよい、イントロン含有ヘアピンRNA(ihpRNA)干渉であってもよい。
【0063】
用いられるshRNA分子の種類にかかわらず、少なくとも25個のヌクレオチド、50、100、200、300、400、450、500、550個、またはそれ以上のヌクレオチドの配列を使用することができる。shRNA分子を使用して、哺乳類のイオンチャネルをコードする遺伝子の発現を阻害する方法は、当技術分野において周知である。例えば、Weaver et al. (2006) Glia 54:223-233を参照されたい;これは、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0064】
また、センス配列およびアンチセンス配列がSK4チャネルをコードする核酸配列に相当しないように、shRNA干渉用の発現カセットを設計してもよい。代わりに、センスおよびアンチセンス配列は、SK4チャネルモノマーをコードする核酸配列のすべてまたは一部に相当するヌクレオチド配列を含むループ配列に隣接する。したがって、ループ領域は、RNA干渉の特異性を決定する。例えば、国際公開公報第02/00904号を参照されたい;これは、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0065】
さらに、ヘアピンの逆方向反復配列が、サイレンシングされるSK4チャネルモノマーをコードする遺伝子または核酸のプロモーター領域と配列同一性を共有している場合、shRNA分子の使用を通じて、転写レベルでの遺伝子サイレンシング(TGS)を行うことができる。同種のプロモーター領域と相互作用することができる短いRNAへのshRNAのプロセシングは、分解またはメチル化をトリガーして、サイレンシングを生じさせる(Aufsatz et al. (2002) Proc. Natl. Acad. Sci. 99:16499-16506;およびMette et al. (2000) EMBO J. 19:5194-5201;を参照されたい;これらは、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0066】
SK4チャネルの活性または機能に影響を与える更なる剤は、SK4チャネルの活性または機能を調節するペプチド、タンパク質または低分子を含んでよい。前記ペプチド、タンパク質または低分子は、SK4チャネルのコンダクタンス、または、例えば、SK4チャネルをレギュレーションするカルモジュリン(Fanger et al. (1999) J. Biol. Chem. 274:5746-575を参照されたい;これは、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる)またはキナーゼ(Gerlach et al. (2000) J. Biol. Chem. 275:585-598を参照されたい;これは、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる)の活性を阻害することができる。あるいは、前記ペプチド、タンパク質または低分子は、SK4チャネルの活性化によってそれ自体がレギュレーションされるアクセサリ分子の活性または機能を調節することができる。
【0067】
阻害性ペプチドまたはタンパク質では、SK4チャネルモノマーまたはSK4チャネルホモテトラマーに結合する抗体であってもよい。本明細書で使用するとき、「抗体(単数または複数)」は、特定の抗原または前記抗原のエピトープと免疫学的に反応性である免疫グロブリン分子を意味する。また、前記用語は、キメラ抗体(例えばヒト化マウス抗体)およびヘテロコンジュゲート抗体(例えば二重特異性抗体)などの遺伝子的に改変された形態を含む。前記用語は、さらに、二価または二重特異性分子、ダイアボディ、トリアボディおよびテトラボディを含む。二価および二重特異性分子は、例えばKostelny et al. (1992) J. Immunol. 148:1547-1553; Pack & Pluckthun (1992) Biochemistry 31:1579-1584; Zhu et al. (1997) Protein Sci. 6:781-788; Hu et al. (1996) Cancer Res. 56:3055-3061; Adams et al. (1993) Cancer Res. 53:4026-4034;およびMcCartney et al. (1995)Protein Eng. 8:301-314に記載されており;これらはそれぞれ、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0068】
抗体は、また、抗原結合能を備えたフラグメント(例えば、Fab’、F(ab’)2、Fab、FvおよびrIgG)を含む抗体の抗原結合形態を含む。パパインおよびペプシンなどのタンパク質分解酵素により抗体を処理して、これらの抗体のフラグメント、特に抗SK4チャネル抗体のフラグメントを作成する。抗体は、また組換え単鎖Fvフラグメント(scFv)を指す。好ましくは、本明細書に記載される方法を実施するために使用される抗体は、107M−1以上の親和性(会合定数)でそのターゲットタンパク質に結合する。
【0069】
抗体は、モノクローナルまたはポリクローナル抗体であってよく、任意の抗体クラス(すなわちIgG、IgM、IgAなど)に属していてよい。モノクローナル抗体(mAb)を作製する方法は、当技術分野において周知である。例えば、当業者は、リンパ球を単離し、骨髄細胞と融合させて、ハイブリドーマを生成することにより、モノクローナル抗体を作製することができる。例えば、Milstein, In: Handbook of Experimental Immunology (Blackwell Scientific Publishing 1986);およびGoding, In: Monoclonal Antibodies: Principles and Practice (Academic Press 1983)を参照されたい;これらはそれぞれ、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。次いで、クローニングされたハイブリドーマを、例えば、抗SK4チャネルモノマー、またはホモテトラマー抗体(すなわちSK4チャネルモノマー、ホモテトラマー、またはそれらのフラグメントに優先的に結合する抗体)の産生についてスクリーニングする。したがって、このような産生がインサイチュで行われようと行われまいと、モノクローナル抗体は、抗体が生成される方法によって限定されない。
【0070】
あるいは、抗体は、細菌、酵母、植物、昆虫細胞株または哺乳動物細胞株における発現を含むが、これらに限定されない組換えDNA技術によって産生することができる。例えば、当業者は、(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)従来の手順を使用して、モノクローナル抗体をコードする核酸配列を容易に単離および配列決定することができる。ハイブリドーマ細胞は、核酸配列用のDNAの好適な供給源として機能し得る。一旦単離したら、核酸配列を発現ベクターに入れ、次に、前記発現ベクターを、トランスフェクションされなければ抗体を産生しない大腸菌(E.coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ミエローマ細胞または植物細胞などのホスト細胞へトランスフェクションして、組換えホスト細胞中でモノクローナル抗体を合成させることができる。抗体をコードするDNAの細菌における組み換え発現についての総論は、以下を含む:Skerra (1993) Curr. Opin. Immunol. 5:256-262;およびPhickthun (1992) Immunol. Rev. 130:151-188;これらはそれぞれ、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0071】
あるいは、抗体は、CHO細胞株などの細胞株中で産生することができる。例えば、米国特許第5,545,403号;同第5,545,405号、および同第5,998,144号を参照されたい;これらはそれぞれ、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。簡潔に述べると、当業者は、それぞれ軽鎖および重鎖を発現することができるベクターで細胞株をトランスフェクションすることができる。別々のベクター上の2つのタンパク鎖をトランスフェクションすることによって、キメラ抗体を産生することができる。CHO細胞を使用する別の利点は、抗体が正確にグリコシル化されることである。
【0072】
同様に、ポリクローナル抗体を作製する方法は、当技術分野において周知である。例えば、当業者は、例えば、ウサギなどの適切なホスト動物を免疫原(例えばSK4チャネルモノマー、SK4チャネルホモテトラマーまたはそれらのフラグメント)で免疫し、適切に希釈された血清を用いるか、または血清から免疫グロブリンを単離することにより、ポリクローナル抗体を作製することができる。したがって、前記動物に免疫原を接種し、続いて前記動物から血液を除去し、IgGフラクションを精製することができる。他の適切なホスト動物は、ニワトリ、ヤギ、ヒツジ、モルモット、ラットまたはマウスを含む。所望であれば、免疫原は、例えばそのアミノ酸残基のうちの1つの側鎖を介して、免疫原が適切な担体にカップリングしているコンジュゲートとして投与してもよい。担体分子は、典型的に生理学的に許容しうる担体である。得られた抗体は、最高約70%、80%、90%、95%、99%または100%の純度に精製することができる。
【0073】
抗SK4チャネルモノマーまたはホモテトラマー抗体を作製する方法は、当技術分野において公知である。例えば、Boettger et al. (2002) Brain 125:252-263; Furness et al. (2004) Autonom. Neurosci. 112:93-97; Ghanshani et al. (2000) J. Biol. Chem. 275:37137-37149;およびHoffman et al. (2003) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:7366-7371を参照されたい;これらはそれぞれ、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。同様に、市販されている抗SK4チャネル抗体は、本明細書における使用に適切であり、例えば、それぞれAlomone Labs (Jerusalem, Israel);Millipore (Billerica, MA)、Sigma Aldrich (St. Louis, MO)、およびSanta Cruz Biotechnology (Santa Cruz, CA)から入手することができる。また、Sandow et al. (2006) J. Anat. 209:689-698;およびWulff et al. (2001) J. Biol. Chem. 276:32040-32045を参照されたい。
【0074】
あるいは、SK4チャネルインヒビターは、SK4チャネルモノマーまたはホモテトラマーと結合するように設計されたタンパク質であってもよい。本明細書で使用するとき、「SK4チャネルモノマーまたはホモテトラマーと結合するように設計されたタンパク質」は、上述のように、SK4チャネルモノマーまたはホモテトラマーと結合するように設計されたタンパク質であって、この結合によりSK4チャネルの発現、活性または機能が阻害される(すなわち、低下する)タンパク質を意味する。阻害性ペプチドは、当技術分野において周知である。例えば、Wulff et al. (2007) Curr. Med. Chem. 14:1437-1457を参照されたい;これは、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0075】
あるいは、SK4チャネルインヒビターは、SK4チャネルモノマーと結合して、前記モノマーがホモテトラマーの一部を形成するのを妨げるか、またはホモテトラマーと結合して、その活性または機能を妨げる低分子であってもよい。本明細書で使用するとき、「SK4チャネルモノマーと結合する低分子」、または「SK4ホモテトラマーと結合する低分子」は、SK4チャネルモノマーまたはホモテトラマーの発現、活性または機能を阻害する医薬品において一般的に用いられる分子に匹敵する大きさの分子を意味する。好ましい低分子は、約5000Da以下、好ましくは約2000Da以下、最も好ましくは約1000Da以下の大きさで変動してもよい。
【0076】
本明細書において使用するための低分子の非限定的な例は、化学物質(化合物)、無機分子、有機分子、無機成分を含有する有機分子、放射性原子を含む分子、合成分子、およびペプチド模倣物(例えば、α−ヘリックスまたはβ−シートなどの、最も一般的なペプチドモチーフを模倣する短いペプチドフラグメント)を含む。SK4チャネルインヒビターとして、低分子は、巨大分子よりも細胞に対する浸透性が高く、分解されにくく、不所望の免疫反応を誘発しにくい場合もある。
【0077】
低分子については、SK4チャネルモノマーまたはホモテトラマーに結合することができる化合物であってもよい。本明細書において有用な低分子の1つのクラスは、トリアリールメタンである。トリアリールメタンは、以下:
【化1】
[式中、X、Y、およびZは、同じであっても異なってもよく、CH2、O、S、NR1、N=CH、CH=N、およびR2−C=C−R3から、独立に選択してよく;
Rは、H、ハロゲン、トリハロアルキル、ヒドロキシ、アシルオキシ、アルコキシ、アルケニルオキシ、チオ、アルキルチオ、ニトロ、シアノ、ウレイド、アシル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、N−(R4)(R5)、ならびに炭素数1〜20の飽和または不飽和、キラルまたはアキラル、環式または非環式、直鎖または分岐鎖のヒドロカルビル基であってよく、場合によりヒドロキシ、ハロゲン、トリハロアルキル、アルキルチオ、アルコキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、オキソアルキル、シアノおよびN(R4)(R5)基で置換されており;
R1は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アシルおよびアロイルであってよく、場合によりヒドロキシ、アミノ、置換アミノ、シアノ、アルコキシ、ハロゲン、トリハロアルキル、ニトロ、チオ、アルキルチオ、カルボキシおよびアルコキシカルボニル基で置換されており;
R2およびR3は、Hであってよく、または結合して飽和もしくは不飽和の炭素環もしくは複素環を形成してよく、場合により一つ以上のR基で置換されており;
R4およびR5は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルおよびアシルであってよく、あるいは、R4およびR5は、結合して環を形成してよく、ここで炭素は場合によりO、SまたはN−R6−から選択されるヘテロ原子により置換されてもよく;
R6は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシアルキルまたはカルボキシアルキルであってよく;nは1〜5であってよく;mは、1または2であってもよいが、但しmが1でありうる場合、QはOH、CN、カルボキシアルキル,N−(R7)(R8)(式中、R7およびR8は、H、低級アルキル(1−4C)、シクロアルキル、アリール、アシル、アミドであってもよいか、またはR7およびR8が結合して飽和もしくは不飽和の複素環を形成してよく、そして場合によりN、OおよびSなどの3個以下の追加のヘテロ原子で置換されている);あるいは−NH−複素環であってよく、ここで複素環は、チアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピリミジンおよびプリンであってよく;mが2でありうる場合、Qは、フェニルなどの直鎖もしくは分岐鎖、キラルもしくはアキラル、環式もしくは非環式、飽和もしくは不飽和炭化水素基として2〜10個の炭素のスペーサーになりえる]の構造式を有してもよい。
【0078】
本明細書において有用なトリアリールメタンの例は、1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾール(クロトリマゾール;Ishii et al. (1997), 前記; Joiner et al. (1997), 前記;およびLogsdon et al. (1997),前記);2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミド (ICA-17043; Stocker et al. (2003) Blood 101:2412-2418 );1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール (TRAM-34; Wulff et al. (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:8151-8156;これは、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる);1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(4−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;および1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−テトラゾールを含むが、これらに限定されない。さらなる低分子が、当技術分野において公知である。McNaughton-Smith et al. (2008) J. Med. Chem. 51:976-982; Wulff (2007), 前記;および国際公開公報第2007/033307号を参照されたい。これらはそれぞれ、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0079】
対象化合物は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開公報第03/059873(米国特許第7,208,527B2号が付与されている)および同第09/027292号に記載されている、2,2−ビス−(4−フルオロフェニル)−3−メチル−ブチルアミド(以下):
【化2】
を含んでよい。
【0080】
本発明のKATPチャネルブロッカーは、以下の式で表される化合物:
【化3】
[式中、R1、R2、R3およびR4は、独立して以下から選択してもよい:アダマンチル、水素、炭素数1〜8(1と8を含める)のアルキル、炭素数5〜8(5と8を含める)のシクロアルキル、フェニル、アルキルが炭素数1〜3(1と3を含める)であってよいフェナルキル、およびモノ−またはジ−置換フェニルまたはフェナルキルのフェニル部分、ここで前記置換基は、同じであっても異なってもよく、そして、炭素数1〜3(1と3を含める)のアルキル、ハロゲン、トリフルオロメチル、および炭素数1〜3(1と3を含める)のアルコキシ、ハロ、およびトリフルオロメチル;水素および炭素数1〜8(1と8を含める)のアルキル、炭素数5〜8(5と8を含める)のシクロアルキルからなる群より選択してもよく、それらが結合している窒素原子と一緒にメチレン、あるいは水素と結合している窒素、または炭素数1〜3(1と3を含める)のアルキル、酸素;または硫黄を含む飽和複素環を形成してもよい。複素環がメチレンを含むとき、複素環は4〜6つの炭素原子を有することができる。複素環が酸素または硫黄を含むとき、複素環は、ピペラジノ、N−アルキルピペラジノ、モルホリノ、または、チオモルホリノ、およびそれらの薬学的に許容しうる酸付加塩であってもよい]を含んでよい。
【0081】
これらのKATPチャネルブロッカーは、以下から選択されるものを含んでよい:2,3−ブタンジオンモノオキシム;4−アミノピリジン(4−AP);5−ヒドロキシデカノアート;7ニトロインダゾール;8−オキソ−ベルベリン;A−184209;アセカイニド;アデノシン(ATP);アフラトレム;アガトキシンω型(ω−アガトキシン);アジトキシン−1;アジトキシン−2;アジトキシン−3;AL 275;アリニジンST567;アルモカラントH 234/09;α−デンドロトキシン;AM92016;アンバシリド;アンバシリドLU47110;AN132;酸化防止剤;アパミン;ARH 050642;ATI 2042;ATP;AWD 12−260;AWD 160275;AWD 23−111;AZD 7009;AZDF 265;アジミリド;塩化バリウム;Bay K8644(R)(+)−型;BDS−I;BDS−II;ベプリジル;ベルランビン;ベルトサミル;ベータブンガロトキシン(ベータ−BuTX);ベータ−デンドロトキシン;BHA 0388;BMS 208782;BMS 208783;BRBI 28;ブレチリウム;BRL 32872;ブロミドデンドロトキシン;BTS 67582;ブピバカイン;カルサトリンスクシナートRWJ 24517;カリアキン;CGX 1007;カングロリンピロゾリン;カリブドトキシン;カリルオトキシン(Charylotoxin);グリベンクラミドのCHF 1522シクロデキストリン錯体;クロルプロパミド;クロマノール293異性体;クロマノール293B;シベンゾリン;シクラジンドール;クラミカラントHMR1098;クラミカラントHMR1883;クラウセンアミド(−型);クラウセンアミド(ラセミ体);クロフィリウムLY150378;クロフィリウムトシラート;クロトリマソール;クロトリマゾール;CNS 1237;CP 308408;CP 339818;CP 366660;CP 92713;CPU 86017;シアノグアニジン;デンドロトキシン(DTX);デンドロトキシンI(DTX−I);デンドロトキシンK(DTX−K);塩化デクアンリニウム;デキスソタロルBMY;057631D d−ソタロール;ジセントリン;ジメチルスルホキシド;DKAH 269;DMP 543;ドフェチリド;DPC 543;DPI 201106;ドロネダロンSR 33589;DTX,α型(α−DTX);DTX,β型(β−DTX);DTX,γ型(γ−DTX);DTX,σ型(σ−DTX);E−4031;エファロキサン;EGIS 7229;エングリタゾン;エルセンチリド(+/−型);エルセンチリド(S型);エタノール;エボジアミン(S);ファンプリジン4−アミノピリジンEL 970;ホシノプリラト;ガンマ−デンドロトキシン;GEA 857;グレマンセリンMDL 11939;GLG V 13;グリベンクラミド;グリメピリド;グリピジド(GLP);グリピジドK 4024;グリピジドTK 1320;グルカゴンアンタゴニスト;グリベンクラミド;グリブリド;グアネチジン;グアニジン部分;GYKI 16638;HA 7;HMR 1372;HMR 1402;HMR 1556;HMR 1883;ヒドロキシ;イベリオトキシン;イブチリド;イブチリドU 70226;ICA 17043;ICI 181037;SK4チャネルブロッカー;IMID−1M;IMID−26F;IMID−4F;IMID−4F塩酸塩;イミダゾリン部分;ルパジリド(lpazilide) WIN 54177;イピダクリンNIK 247;イバブラジン;JKL 1073A オキシ−ベルベリン;JTV 519;カリオトキシン;KCB 328;KMC IV 84;KW 3407;L 691121;L 702958;L 706000;L 735821;L 742084;L 768673;L755860および関連化合物;レボセモチアジルSA 3212;レボセモチアジルSD 3212;リンバトキシン(Limbatoxin);リンバツストキシン(Limbatustoxin);リリオデニン;Lq2;LQE 908ピノカラント;LY190147;LY97241;マルガトキシン;ミチグリニドKAD 1229 S−21403;MK 499;N 3601;N−ally)セコボルジン;ナテグリニド;ナテグリニドAY 4166;神経ペプチドY;ニベンタン;ニフェカラントMS 551;ニグルジピン塩酸塩S(+)−型;NIP 142;NOSインヒビター;ノキシウストキシン;NS 004;NS 1546;OPC 88117;ORG 20781;パンジノトキシン−Kα(Pandinotoxin-Kα);パスパリトレム;パキシリン;PD 157667;ペニトレムA;PGE 844384;フェンシクリジン;フェントラミン;フェントラミン;ピルメノールCl845;ピロシキサン(Pirocixan);PNU 18177A;PNU 37883A;PNU 89692;PNU 94126;PNU 94158;PNU 94563;PNU 94750;PNU 96179;PNU 96293;PNU 97025E;PNU 99963;ピリドトリアゾール;キニジン;キニーネ;キニーネヘミ硫酸塩;レパグリニドAGEE 623;レパグリニドNN 623;レパグリニド;リモナバンSR 141716;リソチリド;Ro034563;ロピバカインAL 281;ロピバカインLEA 103;RP 58866;RP 66784 RSD 1000;RSD 1019;ルテカルピン;RWJ 28810;RX 871024;S 16260;S 9947;サリチルアルドオキシム;サキシトキシン;SB 237376;シラトキシン;SDZ DNJ 608;セマチリド;セマチリドCK 1752;セマチリドZK 110516;シノメニン;ナトリウム5−ヒドロキシデカノアート;ソタロール;SPM 928;スプリアドイルン(Spriadoilne);SSR 149744B;ハタゴイソギンチャク毒素(Stichodactyla toxin);スルホニル尿素;TEA(テトラエチルアンモニウム);テジサミル;テジサミルKC 8857;テリカラントRP 62719;テルチアピン;テルチアピン−Q;塩化テトラエチルアンモニウム;テトラエチルアンモニウムイオン;テトロドトキシン;TH 9121;TH 9122;チチウストキシンK;チチウストキシンKα;TMB−8;TN 871;トラザミド;トルブタミド;毒素ベースの治療薬BRI 6906;TRAM 30;トログリタゾン;U 37883A;U 50488H;U−37883A;U−45194A;UCL 1439;UCL 1530;UCL 1559;UCL1608;UCL 1684;UK 66914;UK 78282;WAY 123223;WAY 123398;WIN 17317−3;WIN 61773;XE 991;Y 39677;YM 026;YM 19348ラセミ体;YM 193489−R;YM 193489−S;YT 1;ザテブラジン;ZM 181037;ZM 181037;ZM 244085。参照により本明細書に組み込まれる国際公開公報第2007/009462号を参照されたい。
【0082】
また、対象化合物は、以下の式:
【化4】
[式中、m、nおよびpは、独立して、0および1から選択することができ、そして、m、nおよびpの少なくとも1つは1であってよい]を有するものを含むことができる。
【0083】
例示的な態様では、m、nおよびpがすべて1である場合、環1、および環2におけるフルオロ置換基は、独立して、アセトアミド置換基に対してオルト、アセトアミド置換基に対してメタ、およびアセトアミド置換基に対してパラから選択される位に位置し、そして環3における置換基は、アセトアミド置換基に対してオルト、およびアセトアミド置換基に対してパラから選択される位に存在する。別の例示的な態様では、pが0であり、mが1であり、そしてnが1である場合、環1におけるフルオロ置換基は、アセトアミド置換基に対してパラであり、環2における置換基は、アセトアミド置換基に対してオルト、およびアセトアミド置換基に対してパラから選択される位に位置する。参照により本明細書に組み込まれる国際公開公報第2007/075849号を参照されたい。
【0084】
また、対象化合物は、式:
【化5】
[式中、環系Zは、置換または非置換のアリール基、および置換または非置換の5員複素環であってもよい。記号Aは、−NHS(0)2−、−S(0)2NH−、−C(R3R4)S(0)n−、または−S(0)nC(R3R4)−を表し、ここでR3およびR4は、独立して、水素、置換または非置換の低級アルキル、OR5および−CF3から選択される。記号R5は、水素、置換または非置換の低級アルキルまたはCF3を表わす。整数nは、0〜2から選択される。記号R1は、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアリール基、置換または非置換の(C5−C7)炭素環、あるいは置換または非置換の(C5−C7)複素環を表す];
【0085】
【化6】
[式中、環系Zは置換または非置換のアリール基、ならびに置換および非置換5員複素環から選択できる。記号R1は、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロアリール基、置換または非置換の(C5−C7)炭素環、あるいは置換または非置換の(C5−C7)複素環を表す。記号R2は、COOR6、置換または非置換の2−フラン、置換または非置換の2−チアゾール、あるいは
【化7】
を表す。
記号R6は、置換または非置換のC1−C4アルキル基、例えばメチル、エチル、およびCF3を表す。Xは−N=N−、−N=C(R7)−、−C(R7R8)−C(R7R8)−または−C(R7)=C(R8)−を表し、ここでR7およびR8は、独立して、水素、置換および非置換の低級アルキル、または−CF3を表す。記号Yは、0、NR9またはSを表し、ここでR9は、H、低級アルキル、またはCF3である];
【0086】
【化8】
【0087】
【化9】
[式中、m、nおよびpは、独立して、0および1から選択してよく、そして、m、nおよびpの少なくとも1つは1であり;m、nおよびpがすべて1である場合、環1および環2におけるフルオロ置換基は、独立して、アセトアミド置換基に対してオルト、アセトアミド置換基に対してメタ、およびアセトアミド置換基に対してパラから選択される位に位置し、そして環3における置換基は、アセトアミド置換基に対してオルト、およびアセトアミド置換基に対してパラから選択される位に存在してよく、pが0であり、mが1であり、そしてnが1である場合、環1におけるフルオロ置換基は、アセトアミド置換基に対してパラであり、環2における置換基は、アセトアミド置換基に対してオルト、およびアセトアミド置換基に対してパラから選択される位に位置する];
【0088】
【化10】
[式中、m、nおよびpは、独立して、0および1から選択してよく、そして、m、nおよびpの少なくとも1つは1である];
【0089】
【化11】
[式中、mは0または1のいずれかである];
【0090】
【化12】
を有するものを含んでよい。
【0091】
また、対象化合物は、以下の式:
【化13】
[式中、環系Zは、置換または非置換のアリール、5〜7員の非置換炭素環、4〜8員の置換または非置換の炭素環、4〜8員の置換または非置換の複素環、4〜8員の置換または非置換のヘテロアリールから選択してよく;Xは、−NHS(0)2−、−S(0)2NR3−、およびNHC=NR3の群より選択される要素であってよく(式中、R3は、H、及び置換または非置換の(C1−C4)アルキルから選択してもよい);
【0092】
R1は、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアリール、置換または非置換の(C5−C7)炭素環、および置換または非置換の(C5−C7)複素環から選択してよく;R2は、−Cl、−CF3、−CO2R4、置換または非置換のアリール、5〜6員の置換または非置換の複素環、および5〜6員の置換または非置換のヘテロアリールから選択される要素であってよく(式中、R4は置換または非置換の(C1−C4)アルキル基であってよく、これは、場合により環系Zに結合して5〜7員を有するラクトンを形成してもよい);そして、*の印のついた2つの炭素間の二重結合は、環系Zの環内であってもよい]を有するものを含んでよい。参照により本明細書に組み込まれる国際公開公報第03/074038号を参照されたい。
【0093】
本発明で使用されるカルボニルアミノ誘導体は、式:
【化14】
、任意のその鏡像体、任意の鏡像異性体混合物、またはその薬学的に許容しうる付加塩[式中、Aは、CHまたはNであってよく;Rは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシまたはCF3であってよく;Yは水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキルまたは以下の式:
【化15】
(式中、R1、R2およびR3は、互いに独立して、水素、ハロゲン、CN、NO2またはCF3であってよく;Iは、0、1、2、3、4または6であってよく;そして、m、nおよびoは、互いに独立して、0、1または2であってよい。)で表される基を表す]を含む。
【0094】
あるいは、m、nおよびo、互いに独立して、0または1であってもよい。
【0095】
【化16】
[式中、I、m、n、Y、R、RlおよびR2は、上に定義されたとおりである]
【0096】
あるいは、本発明のカルボニルアミノ誘導体は式IIの化合物[式中、Yは、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキル−アルキルまたはアルケニルであってよく;Iは0であってよく;mおよびnは、互いに独立して、0または1であってよく;そして、Rは水素を表す]であってよい。
【0097】
あるいは、式IIのカルボニルアミノ誘導体は、N−ペンチル−2,2−ジフェニル−アセトアミド;N−ヘキシル−2,2−ジフェニル−アセトアミド;N−シクロプロピルメチル−2,2−ジフェニル−アセトアミド;または、N−ヘキサ−2−エニル−2,2−ジフェニル−アセトアミド;またはそれらの薬学的に許容しうる付加塩であってよい。
【0098】
【化17】
[式中、R1、R2およびR3は上に定義されたとおりである]
【0099】
あるいは、本発明のカルボニルアミノ誘導体は、式IIIのトリアリールメタン[式中、R1、R2およびR3は、互いに独立して、水素またはフルオロであってよい]であってよい。
【0100】
あるいは、トリアリールメタン誘導体は、2,2,2−トリフェニル−アセトアミド;2−(2−フルオロ−フェニル)−2,2−ジフェニル−アセトアミド;2−(2−フルオロ−フェニル)−2,2−ジフェニル−アセトアミド;2−(4−フルオロ−フェニル)−2,2−ジフェニル−アセトアミド;2,2−ビス−(2−フルオロ−フェニル)−2−フェニル−アセトアミド;2−フェニル−2−(2−フルオロ−フェニル)−2−(4−フルオロ−フェニル)−アセトアミド;2,2−ビス−(2−フルオロ−フェニル)−2−フェニル−アセトアミド;2,2−ビス−(4−フルオロ−フェニル)−2−フェニル−アセトアミド;またはそれらの薬学的に許容しうる付加塩から選択してもよい。
【0101】
【化18】
[式中、R1、R2およびR3は上に定義されるとおりである]
【0102】
あるいは、本発明のトリアリールメタンは、式IV[式中R1、R2およびR3は、互いに、水素またはフルオロを表す]であってよい。
【0103】
あるいは、本発明のトリアリールメタン誘導体は、2,2,2−トリ−(2−フルオロ−フェニル)−アセトアミド;2,2−ビス−(2−フルオロ−フェニル)−2−(4−フルオロ−フェニル)−アセトアミド;2,2−ビス−(4−フルオロ−フェニル)−2−(2−フルオロ−フェニル)−アセトアミド;2,2,2−トリ−(4−フルオロ−フェニル)−アセトアミド;または、その薬学的に許容しうる付加塩から選択してもよい。
【0104】
【化19】
[式中、I、m、n、Y、R、R1およびR2は、上に定義されたとおりである]
【0105】
あるいは、本発明のカルボニルアミノ誘導体は、式V[式中、Yは、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキル−アルキルまたはアルケニルを表し;Iは0であってよく;mおよびnは、互いに独立して、0または1であってよく;Rは水素であってよく;そして、R1およびR2は、互いに独立して、水素またはフルオロであってよい]であってよい。
【0106】
したがって、カルボニルアミノ誘導体は、(RS)−N−シクロプロピルメチル−2−フェニル−2−ピリジン−2−イル−アセトアミド;(RS)−2−(3,4−ジフルオロ−フェニル)−N−ヘキシル−2−ピリジン−2−イル−アセトアミド;または(RS)−N−ヘキシル−2−(4−ニトロフェニル)−2−ピリジン−3−イル−アセトアミド;または、それらの薬学的に許容しうる付加塩から選択してもよい。参照により本明細書に組み込まれる国際公開公報第03/004101号を参照されたい。
【0107】
また、対象化合物は、以下の式:
【化20】
[式中、m、nおよびpは、独立して、0および1から選択してよく、そして、m、nおよびpの少なくとも1つは1であり;m、nおよびpがすべて1である場合、環1および環2におけるフルオロ置換基は、独立して、アセトアミド置換基に対してオルト、アセトアミド置換基に対してメタ、およびアセトアミド置換基に対してパラから選択される位に位置してよく、そして環3における置換基は、アセトアミド置換基に対してオルトおよびアセトアミド置換基に対してパラから選択される位に存在してよく、pが0であり、mが1であり、そしてnが1である場合、環1におけるフルオロ置換基は、アセトアミド置換基に対してパラであってよく、環2における置換基は、アセトアミド置換基に対してオルト、およびアセトアミド置換基に対してパラから選択される位に位置してもよい]、
【0108】
【化21】
[式中、m、nおよびpは、独立して、0および1から選択してよく、そして、m、nおよびpの少なくとも1つは1である]、
【0109】
【化22】
[式中、mは、0または1のいずれかであってよい]を有するものを含んでよい。参照により本明細書に組み込まれる国際公開公報第00/50026号を参照されたい。
【0110】
本発明で有用な他の低分子は次のものを含んでよい:マウロトキシン(Castle et al. (2003) Mol. Pharmacol. 63:409-418)。本明細書において有用なさらに他の低分子は、国際公開公報第97/034589号、国際公開公報第99/026628号、国際公開公報第99/026929号、国際公開公報第2000/050026号、国際公開公報第2000/069439号、国際公開公報第2000/069794号、国際公開公報第2000/069823号、国際公開公報第2001/049663号、国際公開公報第2004/016221号、国際公開公報第2005/003094号、国際公開公報第2005/003143号、国際公開公報第2006/084031号および国際公開公報第2009/027292号に開示されているものを含んでもよく;これらはそれぞれ、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0111】
本明細書で使用するとき、「有効量」または「治療上有効な量」(すなわち投薬量)は、それぞれインビトロ又はインビボで提供される、SK4チャネルをコードする核酸と接触して機能的に複合体化するか、SK4チャネルサブユニットポリペプチドまたはホモテトラマーと接触して機能的に複合体化するか(共有結合または非共有結合のいずれかで)、またはSK4チャネルの上流(例えば、エンハンサー、プロモーターなど)もしくは下流(例えばキナーゼ(MEK/ERK)、ホスファターゼまたはホスホリラーゼ)のエフェクタと接触して機能的に複合体化するのに十分なSK4チャネルインヒビターの量を意味する。さらに、有効量または治療上有効な量のSK4チャネルインヒビターは、SK4チャネルのmRNA減少、SK4チャネルの活性低下、またはSK4チャネルの下流のエレメントの機能低下などの所望の効果を得るのに十分な量である。例えば、これは、関節炎、アレルギーまたは喘息などの様々な免疫不全を予防するかまたは克服するのに有用なSK4チャネルインヒビターの量でありえる。治療上有効な量のSK4チャネルインヒビターは、治療されている被験体、障害または疾患の重症度および投与の方法に依存する。あるいは、この量は、インビトロで所望の効果をもたらす濃度と同程度のターゲット組織濃度を達成する量でありえる。
【0112】
治療上有効な量のSK4チャネルインヒビターに関しては、インビトロまたはインビボにおける動物実験によって決定することができる。治療上有効な量(すなわち投薬量)を被験体に投与して、動物アッセイにおいて有効であることが示されている濃度と同程度のターゲット組織濃度を提供することができる。遺伝的に改変されている動物が、SK4チャネルの発現、活性および機能を強めるのに有用でありうることが考えられる。使用することができる遺伝的に改変されている動物の例は、SK4−/−動物などを含むが、これらに限定されない。例えば、Begenisich et al. (2004) J. Biol. Chem. 279:47681-47687を参照されたい;これは、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0113】
有効量および治療上有効な量のSK4チャネルインヒビターは、提供される剤の種類に依存して、変化する可能性があり、変化するであろう。例えば、治療上有効な量の抗SK4チャネル抗体または低分子インヒビターは、免疫系障害の治療において1日当たり、約0.0001mg/kg(体重)〜約200mg/kg(体重)、または1被験体当たり1日約0.1mg〜約20gであってよい。例えば、骨粗鬆症は、1日当たり、体重1kg当たり約0.001mg〜約100mg、または1被験体当たり1日約0.5mg〜約10gのトリアリールメタンなどの低分子を投与することにより有効に処置することができる。
【0114】
上述のように、組成物は、また、治療剤またはその組み合わせを含んでよい。治療剤の例は、抗骨喪失剤、抗炎症剤、免疫抑制剤および化学療法剤を含むが、これらに限定されない。
【0115】
抗骨喪失剤の例は、カルシウムおよびビタミンD;ビスホスホナート(例えばナトリウムアレンドロナート(Fosamax(登録商標); Merck & Co., Inc.; Whitehouse Station, NJ)、リセドロナート(Actonel(登録商標); Procter & Gamble Pharmaceuticals; Cincinnati, OH)およびイバンドロナート(Boniva(登録商標); Hoffman-La Roche Inc.; Nutley, NJ));エストロゲン代償療法;副甲状腺ホルモンおよびテリパラチド(Forteo(登録商標); Eli Lilly & Co.; Indianapolis, IN);ラネリック酸ストロンチウム(Protelos(登録商標)またはProtos(登録商標); Servier Laboratories; Neuilly, France);ラロキシフェン(Evista(登録商標); Eli Lilly & Co.)などの選択的エストロゲンレセプターモジュレータなどを含むが、これらに限定されない。
【0116】
抗炎症剤の例は、グルココルチコイド(例えば、コルチゾール、プレドニゾン、プレドニゾロンおよびヒドロコルチゾン)などのステロイド;アセトアミノフェン、アスピリン、イブプロフェン、インドメタシン、ジクロフェナク、ジフェンピラミド、フェンブフェン、フルフェナム酸、ケトプロフェン、メクロフェナム酸ナトリウム、メフェナム酸、ナブメトン、ナプロキセン、ピロキシカム、スプロフェンおよびチアプロフェン酸などの非ステロイド性抗炎症剤;ヒソップ、ショウガ、ウコン、アルニカ・モンタナ(ヘレナリン、セスキテルペンラクトンを含有する)、ヤナギ樹皮(サリチル酸を含有する)などの抗炎症品質を有する薬草などを含むが、これらに限定されない。
【0117】
免疫抑制剤の例は、シクロスポリンおよびタクロリムスなどのカルシニューリンインヒビター;カルシトニン遺伝子関連ペプチド(両方とも参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,635,478号および同第5,858,978号を参照されたい);シロリムスおよびエベロリムスなどのmTORインヒビター;アザチオプリンおよびミコフェノール酸などの抗増殖剤;プレドニゾロンおよびヒドロコルチゾンなどのコルチコステロイド;モノクローナル抗−IL−2Rαレセプター抗体(例えばBasiliximab(Simulect(登録商標); Novartis Pharmaceutical Corp.; East Hanover, NJ)、およびダクリズマブ(Zenapax(登録商標); Hoffman-La Roche Inc.)などの抗体;ポリクローナル抗T細胞抗体;抗胸腺細胞グロブリン(ATG);抗リンパ球グロブリン(ALG)などを含むが、これらに限定されない。
【0118】
化学療法剤の例は、シスプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、クロラムブチル、メクロレタミンおよびオキサリプラチンなどのアルキル化剤;腫瘍抗原に対する抗体;アザチオプリンおよびメルカプトプリンなどの代謝拮抗物質;ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシンおよびバルルビシンなどのアントラサイクリン;ポドフィロトキシン、タキサン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビンおよびビンデシンなどの植物アルカロイド;I型トポイソメラーゼインヒビター(例えばカンプトテシン(camptothecin)、イリノテカンおよびトポテカン)およびII型トポイソメラーゼインヒビター(例えばアムサクリン、エトポシド、エトポシドリン酸塩およびテニポシド)などのトポイソメラーゼインヒビター;ダクチノマイシン、ブレオマイシンおよび他のものなどの他の抗腫物剤などを含むが、これらに限定されない。
【0119】
細胞間融合の活性化
いくつかの例では、特に、融合した細胞(破骨細胞)を増加させることが有用であり得る状況においては、SK4チャネル活性または機能がSK4チャネルアクチベーターにより刺激されて、細胞融合を促進する場合がある。そのような状況は、骨密度の異常に増加している患者、慢性感染症の患者、または大理石骨病の患者を含む。骨化石症およびアルバース−シェンバーグ病とも知られる大理石骨病は、骨が硬化し、そして密度が高くなるまれな遺伝病である。大理石骨病の患者の骨は、正常よりも脆い傾向がある。
SK4チャネル活性または機能のアクチベーターの例は、1−エチル−2−ベンズイミダゾリノンを含むが、これらに限定されない。
【0120】
本発明は、マクロファージに由来する多核細胞によって媒介される疾患または障害を処置するための、有効量のSK4チャネルアクチベーターおよび場合により治療剤を有する組成物を含む。1つの態様では、有効量のSK4チャネルアクチベーターおよび治療剤を含む組成物が提供される。他の態様では、治療上有効な量のSK4アクチベーターおよび治療剤に加えて薬学的に許容しうる担体を含む薬学的組成物が提供される。
【0121】
本明細書で使用するとき、「SK4チャネルアクチベーター」または「SK4チャネル活性化剤」は、SK4チャネル発現(すなわち翻訳または転写)、SK4チャネル活性(すなわちコンダクタンス)、または上流および下流のSK4チャネルエフェクター(すなわちプロモーター、アクチベーター、インデューサー、サプレッサー、リプレッサー、キナーゼなど)に影響を与えてSK4チャネル活性を促進する剤を意味する。いくつかの態様では、SK4チャネルアクチベーターは、SK4チャネルに結合し、その機能(すなわち脱分極化するか、または再分極する能力)を調節するように設計されたタンパク質であってよい。あるいは、SK4チャネルアクチベーターは、SK4チャネルに特異的に結合して、それらの活性または機能を促進する低分子であってよい。
【0122】
SK4チャネルアクチベーターの厳密な性質を問わず、それは、SK4チャネルの発現、活性または機能のうちの一つ以上を向上させる。前記発現、活性または機能は、適切な対照と比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、110%、120%、130%、140%、150%を含むが、これらに限定されない統計的に有意な量向上する。好ましくは、SK4チャネルの発現、活性または機能は、少なくとも約10%以上向上する。逆に、SK4チャネルアクチベーターは、SK4チャネルの発現、活性または機能を統計的に低下させないはずである。
【0123】
インヒビターまたはアクチベーターを含む薬学的組成物
組成物が薬学的組成物であるとき、前記組成物は、また、薬学的に許容しうる担体を含んでよい。本明細書で使用するとき、「薬学的に許容しうる担体」は、生物学的に、生理学的に、または他の点で不所望ではない物質を意味する、すなわち、前記物質は、任意の不所望の生物学的または生理的作用を引き起こさず、またはそれが含有されている組成物の如何なる成分とも有害な方法で相互作用することなく、調合物または組成物で被験体に投与することができる。
【0124】
使用される薬学的に許容しうる担体は、固体、液体または気体であってよい。固体担体の例は、ラクトース、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸を含むが、これらに限定されない。液体担体の例は、糖シロップ、落花生油、オリーブオイル、水および生理食塩水を含むが、これらに限定されない。気体担体の例は、二酸化炭素および窒素を含むが、これらに限定されない。
【0125】
薬学的に許容しうる担体に加えて、薬学的組成物は、必要に応じて、希釈剤、バッファ、香料、結合剤、界面活性剤、増粘剤、滑沢剤、保存剤(酸化防止剤を含む)などの一つ以上のさらなる添加剤を含んでよい。さらに、静脈内投与では調合物を被験体の血液と等張にするために他の佐剤を含んでよい。
【0126】
望ましい添加剤は、アルギニン、水酸化ナトリウム、グリシン、塩酸、クエン酸などのpH調整剤を含むが、これらに限定されない。さらに、局所麻酔薬(例えばベンジルアルコール)、等張化剤(例えば塩化ナトリウム、マンニトールまたはソルビトール)、吸着防止剤(例えばTween(登録商標)80)、溶解促進剤(例えばシクロデキストリンおよびその誘導体)、安定剤(例えば血清アルブミン)、還元剤(例えばグルタチオン)および保存剤(例えば抗菌剤および酸化防止剤)を含んでよい。
【0127】
経口投薬用の薬学的組成物は、当技術分野において公知である任意の形態で調製することができる。例えば、水、グリコール、油、アルコール、香料、保存剤、着色料などを用いて、懸濁剤、エリキシル剤および液剤などの経口液状製剤を形成することができ、一方、デンプン、砂糖、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などの担体を用いて、散剤、カプセル剤および錠剤などの経口固形製剤を形成することができる。
【0128】
錠剤では、SK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターは、場合により一つ以上の副成分または佐剤と共に、圧縮または成形することによって調製することができる。圧縮錠剤は、適切な機械中で、散剤または顆粒剤などの易流動性形態のSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターを圧縮することにより調製することができ、場合により結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、界面活性剤もしくは分散剤、または他のそのような賦形剤と混合される。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;造粒剤および崩壊剤(例えばトウモロコシデンプン、またはアルギン酸);結合剤(例えばデンプン、ゼラチン、アラビアゴム);ならびに滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルク)であってよい。錠剤は、コーティングされていなくてもよく、または胃腸管における崩壊および吸収を遅らせるために公知技術によってコーティングされることにより、特に炎症性腸感染(IBD)または過敏性大腸症候群(IBS)などの免疫系障害の治療のために、より長時間にわたって持続する作用を提供することもできる。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延物質を使用してもよい。
【0129】
硬ゼラチンカプセルでは、SK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターは、不活性の固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリンと混合されてもよい。逆に、軟ゼラチンカプセル剤では、SK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターは、水または油媒体、例えば落花生油、流動パラフィン、またはオリーブオイルと混合されてもよい。湿製錠剤は、適切な機械中にて、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末状のSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターの混合物を成型することにより作製することができる。
【0130】
ほんの一例として、ヒト被験体への経口投与を意図した薬学的組成物は、全組成物の約5%〜約95%で変化しうる適切かつ好都合な量の薬学的に許容しうる担体とともに調合された、約0.5mg〜約5gのSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターを含有することができる。単位剤形は、一般に、約1mg〜約2gのSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーター、典型的に、約25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mgまたは1000mgのSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターを含有する。
【0131】
非経口投与用薬学的組成物は、SK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターの水溶液または水懸濁液として調製することができる。例えばヒドロキシプロピルセルロースなどの適切な界面活性剤を含んでよい。薬学的組成物は、また、油中のグリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびその混合物で調製することができる。あるいは、薬学的組成物はリポソームの中で調製してもよい。例えば、Langer (1990) Science 249:1527-1533;およびTreat et al., 353-365 In: Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer (Lopez-Berestein & Fidler eds., Liss, N.Y. 1989)を参照されたい。さらに、微生物の有害な増殖を防ぐために保存剤を含んでよい。
【0132】
同様に、注射用薬学的組成物は、無菌水溶液または分散液として調製することができる。または、組成物は、無菌注射剤溶液または分散液のための無菌粉末の形態であってよい。完成注射剤形態は無菌でなければならず、そして容易に投与するために有効に流動性でなければならない。薬学的組成物は、製造および保存条件下で安定でなければならないため、好ましくは、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されるべきである。そのため、薬学的に許容しうる担体は、例えば、水、エタノール、多価アルコール(例えばグリセリン、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール)、植物油、およびその適切な混合物を含有している溶媒または分散媒であってよい。
【0133】
ほんの一例として、ヒト被験体への非経口投与または注射を意図した薬学的組成物は、全組成物の約5%〜約95%で変化しうる適切で便利な量の薬学的に許容しうる担体とともに調合された、約0.5mg〜約5gのSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターを含有することができる。単位剤形は、一般に、約1mg〜約2gのSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーター、典型的に、約25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mgまたは1000mgのSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターを含有する。
【0134】
局所投与用薬学的組成物は、例えば、エアロゾル、クリーム、軟膏剤、ローション剤、散粉剤などとして調製することができる。あるいは、薬学的組成物は、経皮的手段で使用するのに適している形態であってよい。これらの薬学的組成物は、当技術分野において周知の方法によって調製することができる。例えば、クリームまたは軟膏剤は、約5wt%〜約10wt%の結合剤と共に水を混合して、望ましい粘稠度を有する乳剤または軟膏剤を生成することにより調製することができる。
【0135】
ほんの一例として、ヒト被験体への局所投与を意図した薬学的組成物は、全組成物の約5%〜約95%で変化しうる適切で便利な量の薬学的に許容しうる担体とともに調合された、約0.5mg〜約5gのSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターを含有することができる。単位剤形は、一般に、約1mg〜約2gのSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーター、典型的に、約25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mgまたは1000mgのSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターを含有する。
【0136】
直腸投与用薬学的組成物は、固体の薬学的に許容しうる担体を用いて調製することができる。好ましくは、その混合物は単位用量坐剤を形成する。適切な薬学的に許容しうる担体は、当技術分野において一般に用いられているカカオ脂、および他の増粘剤を含む。坐剤は、まず、組成物と軟化または融解した薬学的に許容しうる担体とを混合し、次いで型の中で冷却および成形することにより、好都合に形成することができる。
【0137】
ほんの一例として、ヒト被験体への直腸投与を意図した薬学的組成物は、全組成物の約5%〜約95%で変化しうる適切で好都合な量の薬学的に許容しうる担体とともに調合された、約0.5mg〜約5gのSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターを含有することができる。単位剤形は、一般に、約1mg〜約2gのSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーター、典型的に、約25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mgまたは1000mgのSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターを含有する。
【0138】
吸入投与用薬学的組成物は、当技術分野において公知の形態で、当技術分野において公知の担体を利用して調製することができる。例えば、Zeng et al., In: Particulate Interactions in Dry Powder Formulations for Inhalation (Informa HealthCare 1st ed. 2000)を参照されたい。
【0139】
ほんの一例として、ヒト被験体への吸入投与を意図した薬学的組成物は、全組成物の約5%〜約95%で変化しうる適切で好都合な量の薬学的に許容しうる担体とともに調合された、約0.5mg〜約5gのSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターを含有することができる。単位剤形は、一般に、約1mg〜約2gのSK4チャネル阻害結合剤、典型的に、約25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mgまたは1000mgのSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターを含有する。
【0140】
以下でより詳細に論じられるように、組成物および薬学的組成物は、SK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターに加えて、基礎疾患または障害を処置するために一つ以上の他の治療剤を含んでよい。本明細書において使用するための他の治療剤の例は、抗炎症剤(すなわち、ステロイドおよび非ステロイド性の抗炎症剤)、抗骨喪失剤および化学療法(すなわちアルキル化剤、代謝拮抗物質、植物アルカロイド、ならびにテルペノイドおよびトポイソメラーゼインヒビター)を含むが、これらに限定されない。
【0141】
組成物および薬学的組成物は、SK4チャネル遺伝子に突然変異を有する、突然変異マクロファージを含んでもよく、ここで前記突然変異は、SK4チャネルモノマーの発現を低下もしくはなくすか、またはコードされたSK4チャネルモノマーの活性を阻害する。
【0142】
本発明の組成物の前述の議論に関して、用語「約」は、規定の濃度範囲、投薬量または組成物中の成分の量などの値の統計的に意味のある範囲内を意味する。このような範囲は、所与の値または範囲の桁内、典型的に20%以内、より典型的に10%以内、さらにより典型的に5%以内でありうる。用語「約」に包含される許容偏差は、前記用語が用いられる特定の状況に依存し、当業者に容易に理解される。
【0143】
細胞間融合を調節する方法、ならびにその治療及びスクリーニング用途
いくつかの態様では、本発明の方法は、マクロファージ細胞と、有効量のSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターとを接触させ、それにより、それぞれマクロファージ細胞融合を減少または増加させることを含む。上述のように、SK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターは、SK4チャネルの発現、活性または機能を有効に低下させるか、または向上させる限りにおいて、SK4チャネル発現(すなわち翻訳または転写)、SK4チャネル活性(すなわちコンダクタンス)、あるいは上流または下流のSK4チャネルエフェクター(すなわちプロモーター、アクチベーター、インデューサー、サプレッサー、リプレッサー、キナーゼなど)に影響を与えるものであってよい。
【0144】
SK4活性の阻害において、如何なる理論または作用機序にも縛られるものではないが、融合する能力を有するか、または融合が進行中であるマクロファージ細胞内のSK4チャネルの発現、活性または機能に対するSK4チャネルインヒビターの阻害作用により、マクロファージ細胞融合が減少する。「融合する能力」とは、マクロファージ細胞が、マクロファージ細胞融合の助けになる環境設定内に存在することを意図する。例えば、スクリーニング法(例えば、本明細書において下記に記載されるスクリーニング法)で使用される条件などの、インビトロ条件下において、融合する能力を有するマクロファージ細胞は、これまで融合は進行していなかったが、現在融合条件(すなわち、本明細書において以下に記載されるように、マクロファージ細胞の融合を促進または助長する条件)に曝露されているマクロファージ細胞の集団を含む。インビボ条件下では、融合する能力を有するマクロファージ細胞は、マクロファージ細胞の融合を促進または助長するインビボ環境に曝露されるようになる、それまで融合していないマクロファージ細胞の任意の集団を含む。したがって、融合する能力を有するマクロファージ細胞は、前記インビボ環境内に位置する静止(すなわち、定着)マクロファージ細胞であってよく、または前記インビボ環境へ遊走しているマクロファージであってよい。同様に、環境がマクロファージ細胞の融合を促進または助長するインビボ条件下では、融合が進行中であるマクロファージ細胞は、前記インビボ環境内に存在する静止マクロファージ、および/または前記インビボ環境へ移動しているマクロファージを含みうる。
【0145】
本明細書において記載される任意のSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターは、インビトロまたはインビボ設定のいずれかにおいて、マクロファージ細胞の融合を減少(すなわち、阻害)させるか、または増加させるために、本発明の方法で有利に使用することができる。マクロファージ細胞の融合をインビボ設定において阻害する場合、細胞間融合の減少の標的となるマクロファージ細胞を、治療上有効な量のSK4チャネルインヒビターと接触させるが、この場合、治療上有効な量は、望ましい結果(例えばマクロファージに由来する多核細胞によって媒介される疾患または障害の処置)により決定する。同様に、マクロファージ細胞の融合をインビボ設定において増加または活性化させる場合、細胞間融合の増加の標的となるマクロファージ細胞を、治療上有効な量のSK4チャネルアクチベーターと接触させるが、この場合、治療上有効な量は、所望の結果により決定する。
【0146】
したがって、本発明のいくつかの態様では、マクロファージ細胞の融合を阻害するための方法は、融合する能力を有するマクロファージ細胞に、有効量のSK4チャネルインヒビターを提供し、それにより、これらの細胞の融合を阻止または低減することを含む。他の態様では、マクロファージ細胞の融合を阻害するための方法は、融合が進行中であるマクロファージ細胞に、有効量のSK4チャネルインヒビターを提供し、それにより、これらの細胞のさらなる融合を阻止または低減することを含む。マクロファージ細胞の融合を阻害するための方法は、静止(すなわち、定着)マクロファージおよび/または特定のインビボ環境へ遊走しているマクロファージを対象とすることもでき、マクロファージの同型または異型融合を対象とすることもできる。したがって、これらの方法は、破骨細胞(骨中の)および巨細胞(多数の種類の他の組織中の)の形成において生じるような、マクロファージ−マクロファージ細胞融合をターゲッティングしてよく、または転移癌細胞を形成する、マクロファージ細胞と癌細胞との融合などのマクロファージと他の細胞型との融合をターゲティングしてもよい。
【0147】
いくつかの態様では、適切な対照試料が、SK4チャネルインヒビターが存在しない同一の環境条件下において同等のマクロファージ細胞を含む場合、有効量のSK4チャネルインヒビターは、適切な対照試料と比較したとき、マクロファージ細胞融合を少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%または55%減少させる。他の態様では、有効量のSK4チャネルインヒビターは、適切な対照試料と比較したとき、マクロファージ細胞融合を少なくとも約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%減少させる(すなわち、マクロファージ細胞融合を妨げる)。マクロファージ細胞融合のアッセイ方法は、当技術分野において周知である。例えば、前記Vignery (2000); MacLauchlan et al. (2009) J. Leukoc. Biol. 85:617-626;および以下の本明細書の実験の章に記載されるアッセイを参照されたい。
【0148】
本明細書において上述したように、不適当または調節されていない(すなわち、異常な)マクロファージ細胞融合は、炎症性および感染性疾患における細胞および組織の損傷に関連している場合がある。本明細書において記載されたマクロファージ細胞の融合を阻害するための方法は、異常な破骨細胞形成(例えば骨粗鬆症)、巨細胞形成(例えば慢性炎症性疾患)および癌転移をトリガーする恐れのある転移癌細胞の形成と関係する疾患を含む、マクロファージに由来する多核細胞によって媒介される疾患の予防または治療を目的とする治療方法に使用できる。
【0149】
本明細書で使用するとき、「予防する」または「予防」などは、被験体が疾患または病状に対する素因を有し、前記被験体が疾患や病状を発症するのを防ぐことを目的とする場合、SK4チャネルインヒビターの前記被験体への適用または投与、あるいはSK4チャネルインヒビターを含む薬学的組成物の前記被験体への適用または投与を意味する。例えば、移植物または移植片手術の拒絶反応を防ぐ目的で、移植物または移植片手術を受けている、将来受ける被験体にSK4チャネルインヒビター、またはSK4チャネルインヒビターを含む薬学的組成物を投与してもよい。別の例として、過度の骨喪失および骨粗鬆症の発生を防ぐ目的で、骨粗鬆症に罹患しやすい被験体にSK4チャネルインヒビターを投与することもできる。
【0150】
SK4チャネルを活性化するための態様では、前記方法は、マクロファージ細胞に有効量のSK4チャネルアクチベーターを提供して、細胞の融合を増加させることを含む。マクロファージ細胞の融合を活性化するための方法は、静止マクロファージおよび/または特定のインビボ環境へ遊走しているマクロファージを対象とするができ、マクロファージの同型または異型融合を対象としてすることもできる。有効量のSK4チャネルアクチベーターは、適切な対照と比較したとき、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、110%、120%、130%、140%または150%、マクロファージ細胞の融合を増加させる。マクロファージ細胞融合のアッセイ方法は、上に開示したように当技術分野において周知である。
【0151】
本明細書で使用するとき、「治療する」または「治療」は、被験体が疾患または疾患の症状を有し、疾患または疾患の症状を直す、緩和する、取り除く、変化させる、処置する、寛解させる、改善する、または影響を与えることを目的とする場合、SK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターの個体への適用または投与、あるいはSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターを含む薬学的組成物の前記被験体への適用または投与を意味する。
【0152】
本発明のいくつかの態様では、マクロファージ細胞の融合を阻害するための方法は、インビボにおける破骨細胞の形成阻害に関するものであり、治療目的は、骨喪失の予防または治療である。本明細書において上述したように、破骨細胞形成の阻害によって、破骨細胞数および/または破骨細胞表面積は減少して、破骨細胞機能が全体的に低下する。更に、破骨細胞のSK4発現、活性または機能の阻害によって、破骨細胞の機能を変化させる(例えば破骨細胞の骨塩再吸収活性を低下させる)ことができる。破骨細胞の形成および機能を低下させることによって、骨密度および/または骨厚さを有利に増加させることができる。このように、本発明は、骨喪失に罹患しやすいか、または骨喪失に罹患している被験体の骨喪失を予防または治療する方法であって、被験体に治療上有効な量のSK4チャネルインヒビターを投与して、破骨細胞形成を阻害し、それによって被験体の骨喪失を予防または低減することを含む方法を提供する。この治療方法は、骨密度が低下しやすいか、または骨密度が低下している被験体において骨密度を維持することに使用できる。関連する態様では、骨喪失を予防または治療する方法は、少なくとも1つの抗骨喪失剤との併用療法を含んでもよい。SK4チャネルインヒビターおよび抗骨喪失剤(単数または複数)の投与経路は、骨喪失の素因または実際の骨喪失の根本原因により影響を受けるが、経口、静脈内、さらには骨への直接送達でありうる。
【0153】
本発明の方法を用いて被験体の骨喪失を予防または治療することができる例示的な状態は、骨粗鬆症、骨軟化、パジェット病、歯槽膿漏症、および他の病理学的条件(すなわちアルコール中毒、セリアック病、慢性腎臓病、慢性肝炎、癲癇、胃腸疾患、甲状腺機能亢進症、性腺機能低下症、白血病、リンパ腫、関節リウマチ、壊血病、およびビタミンD欠乏)に付随して起こる骨喪失などを含むが、これらに限定されない。
【0154】
本発明の他の態様では、マクロファージ細胞の融合を阻害するための方法は、インビボにおける巨細胞形成の阻害に関するものであり、治療目的は、被験体の自己免疫または炎症性疾患または障害の予防または治療である。このように、本発明は、自己免疫または炎症性疾患に罹患しやすいか、または前記疾患に罹患している被験体の自己免疫または炎症性疾患または障害を予防または治療する方法であって、被験体に、治療上有効な量のSK4チャネルインヒビターを投与して、巨細胞の形成を阻害し、それによって、被験体の自己免疫または炎症性疾患または障害を予防または治療することを含む方法を提供する。関連する態様では、自己免疫または炎症性疾患または障害を予防または治療する方法は、少なくとも1つの抗炎症剤との併用療法を含んでよい。SK4チャネルインヒビターおよび抗炎症剤の投与経路は、例えば、自己免疫または炎症性疾患または障害に関する素因あるいは実際の自己免疫または炎症性疾患または障害の根本原因により影響を受けるが、経口、静脈内、局所、さらには例えば、炎症部位への直接注射でありうる。
【0155】
本発明の方法を用いて自己免疫疾患または障害を予防または治療することができる例示的な状態は、急性散在性脳脊髄膜炎(ADEM)、アジソン病、脱毛、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫内耳疾患、自己免疫溶血性貧血、自己免疫性肝炎、シャガス病、慢性閉塞性肺疾患、セリアック病、クローン病、皮膚筋炎、1型糖尿病、子宮内膜症、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン−バレー症候群(GBS)、橋本病、川崎病、特発性血小板減少性紫斑病、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症(MS)、重症筋無力症、乾癬、原発性胆汁性肝硬変、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、側頭動脈炎(「巨細胞性動脈炎」としても知られている)、潰瘍性大腸炎、脈管炎などを含むが、これらに限定されない。本発明の方法を用いて炎症性疾患または障害を予防または治療することができる例示的な状態は、ざ瘡、喘息、関節硬化症、クロム酸閉塞性肺疾患、大腸炎、皮膚炎、糸球体腎炎、炎症性腸感染、ケロイド、腎炎、変形性関節症、骨盤炎症性疾患、乾癬、関節リウマチ、腱炎などを含むが、これらに限定されない。
【0156】
本発明の他の態様では、マクロファージ細胞の融合を阻害するための方法は、インビボにおける巨細胞形成の阻害に関するものであり、治療目的は、被験体の移植物または移植片拒絶反応の予防である。このように、本発明は、移植物または移植片手術を受けているか、または受けるであろう被験体の移植物または移植片拒絶反応を予防するための方法であって、被験体に治療上有効な量のSK4チャネルインヒビターを投与して巨細胞の形成を阻害し、それによって、移植物または移植片拒絶反応を予防することを含む方法を提供する。関連する態様では、この治療方法は、少なくとも1つの免疫抑制剤との併用療法を含んでよい。適用可能な場合には、これらの方法のいずれかは、例えば、移植物が硬骨関連の疾患または障害の治療を目的とする場合、少なくとも1つの抗骨喪失剤との併用療法を含むことができる。SK4チャネルインヒビターならびに免疫抑制剤(単数または複数)および/または抗骨喪失剤(単数または複数)の投与経路は、移植物または器官/組織移植片の種類によって影響を受けるが、経口、静脈内、局所、直接送達によって、または移植物のコーティングもしくは含浸でありうる。。
【0157】
本発明の方法を用いて拒絶反応を予防することができる例示的な移植物は、蝸牛装置、人工膝関節、人工股関節、ボーンセメント、乳房移植物、心臓移植物(例えば人工弁、細動除去器、左室補助装置、およびペースメーカー)、皮膚移植物、胃バンドまたはバルーン、留置カテーテル、インシュリンポンプ、子宮内器具、神経刺激物、眼の移植物、整形外科的移植物、陰茎勃起性人工器官、ステント、尿道スリング、音声人工器官などを含むが、これらに限定されない。本発明の方法を用いて拒絶反応を予防することができる例示的な移植片は、硬骨および骨髄移植片、角膜移植片、心臓および心臓弁移植片、腸移植片、腎臓移植片、肢移植片、肝臓移植片、肺移植片、膵臓移植片、血小板輸血、赤血球輸血、皮膚移植片、幹細胞移植片、移植腱、血管移植片、白血球輸血などを含むが、これらに限定されない。
【0158】
本発明の他の態様では、マクロファージ細胞の融合を阻害するための方法は、インビボにおける転移細胞形成の阻害に関するものであり、治療目的は被験体の癌転移の予防である。このように、本発明は、転移癌に罹患しやすい被験体の癌転移を予防するための方法であって、被験体に治療上有効な量のSK4チャネルインヒビターを投与して転移癌細胞の形成を阻害し、それによって、癌転移を予防することを含む方法を提供する。関連する態様では、この治療方法は、抗癌療法、例えば、手術または外科的処置、あるいは別の抗癌治療剤の投与、例えば化学療法剤、抗癌抗体、低分子ベースの癌治療、ワクチン/免疫療法に基づいた癌治療のうち少なくとも1つの他の形態との併用療法を含むことができる。SK4チャネルインヒビター、および投与される場合、他の抗癌治療剤(単数または複数)の投与経路は、一次腫瘍および転移の潜在的な部位の種類および位置によって影響を受けるが、経口、静脈内、局所または一次腫瘍への直接送達であってよい。
【0159】
本発明の方法を用いて転移を予防することができる代表的な癌は、骨癌、脳癌、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、腸癌、肝臓癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、胃癌、喉頭癌、子宮癌などを含むが、これらに限定されない。
【0160】
治療を受ける疾患または障害によって、単独でまたは別の治療剤またはレジメンと組み合わせられた、SK4チャネルインヒビターまたはSK4チャネルアクチベーターに対する臨床反応は、磁気共鳴画像(MRI)スキャニング、x−放射線画像診断、マイクロCT、コンピュータ断層撮影(CT)スキャニング、生物発光画像診断、例えば、ルシフェラーゼ画像診断、骨スキャン画像診断、骨髄吸引(BMA)を含む腫瘍生検標本サンプリング、フローサイトメトリーまたは蛍光活性化細胞選別装置(FACS)分析、組織診断、肉眼所見、およびELISA、RIA、クロマトグラフィーなどによって検出可能な変化を含むが、これらに限定されない、血液化学などのスクリーニング手法を含むが、これらに限定されない当技術分野において公知の任意の許容しうる方法を用いて評価することができる。
【0161】
上記任意の治療方法では、治療上有効な量のSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターは、拡大投与量または負荷投与量レジメン(例えば、負荷投与量が維持投与量よりも多い)において、治療期間を通じておよそ同じ治療上有効な量(すなわち投与量)を投与することができる。あるいは、治療上有効な量のSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターは、治療される被験体の状態、治療に対する明らかな応答および/または当業者に判断されるような他の要因に基づいて治療過程中に変更してもよい。治療上有効な量のSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターを用いた長期治療も考えられる。
【0162】
更に、本発明の方法が併用療法レジメンを含む場合、これらの治療は同時に行うことができる、すなわち、SK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターは、他の治療レジメンと同時に、または他の治療レジメン同じ時間枠内に投与される(すなわち、治療は同時に行われるが、SK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターは別の治療と正確に同時に投与される訳ではない)。あるいは、SK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターは、他の治療の前または後に投与されてもよい。併用療法がSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターと、少なくとも1つの他の治療剤との同時投与を含む場合、SK4チャネルインヒビターまたはアクチベーター、および他の治療剤(単数または複数)は、別々の薬学的組成物として投与されるか、または一緒に調剤されて単一の薬学的組成物として投与されてもよい。
【0163】
さらに、被験体が、疾患または障害に罹患していると診断されるか、または疑われるとき、SK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターの投与を開始することができる。許容しうる治療上有効な量のSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターについては、上で論じられたとおりであり、被験体の年齢および体重、治療されている具体的な疾患または障害、治療されている疾患または障害の重症度、および投与経路に依存して変化する。本発明の治療方法は、治療上有効な量のSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターの単回投与、または治療上有効な量のSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターの複数回投与を含んでよい。
【0164】
明瞭にするために述べると、本発明の方法に従って治療される被験体は、喘息または鎌型赤血球症に罹患している被験体であることを意図しない。
【0165】
本発明は、また、中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウムチャネル(SK4チャネル)の発現、活性または機能の阻害を介して細胞間融合を阻害する剤を同定するための方法、または細胞間融合を活性化する剤を同定するための方法を提供する。前記方法は、細胞集団をSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーター候補と接触させることと、前記候補剤が細胞集団内の細胞間融合を阻害または活性化するかどうかを判定することを含む。マクロファージ細胞融合を阻害し、それにより破骨細胞、巨細胞および転移癌細胞を含むが、これらに限定されない、マクロファージに由来する多核細胞の形成を阻害するSK4チャネルインヒビターの同定が特に対象となる。したがって、いくつかの態様では、細胞の集団はマクロファージ細胞を含む;他の態様では、細胞の集団は、少なくとも2つの細胞型を含み、そのうちの1つはマクロファージである。いくつかの態様では、細胞の集団はマクロファージを含み、また、集団内に存在する第2の細胞型は体細胞または癌細胞である。 Vignery, "Methods to fuse macrophages in vitro," 383-395 In: Methods in Molecular Biology, Cell Fusion (Chen ed., Humana Press 2008)を参照されたい;これは、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0166】
好ましくは、このスクリーニング法は融合条件下で実行される。本明細書で使用するとき、「融合条件」は、細胞、特にマクロファージの同型または異型融合を助長する条件を意味する。融合条件は、M−CSF、RANKL、および/またはIL−4の存在下で細胞を培養することを含みうる。
【0167】
本発明は、以下の非限定的実施例を考慮してより完全に理解される。
【0168】
実施例
ゲノムワイドなcDNAマイクロアレイを用いて、融合機構に属する遺伝子を同定し、破骨細胞および巨細胞中で、マクロファージの融合開始時にのみであったが、KCNN4/SK4が高発現していることを同定した。
【0169】
材料および方法
動物および細胞。既に記載されているように、交配した129J/C57BL6を遺伝的背景に持つsk4−/−マウスを作成し、飼育し、遺伝子型を同定した (Begenisich et al. (2004) J. Biol. Chem. 279(46):47681-47687)。この動物を、12時間の光サイクルの標準的なケージに収容し、げっ歯類用の餌(Harlan Teklad #2018)および水に自由にアクセスさせた。マウスは、8週齢で安楽死させた。動的組織形態計測分析のために、屠殺の8日前及び1日前に、マウスにカルセイン(5mg/kg/日)を2回i.p注射した。
【0170】
試薬。MSC−FおよびRANKLは、PreproTech (Rocky Hill, NJ)から購入した。Phalloidin-Alexa fluor 568は、Invitrogen (Carlsbad, CA)から、骨組織スライドは、BD (Franklin Lakes, NJ)から購入した。組織培養のためのすべての供給品および試薬は、内毒素を含んでいなかった。特に明記しない限り、すべての化学製品はSigma Chemical Co. (St Louis, MO)製であった。
【0171】
慢性炎症性関節炎(CIA)。0日目にArthrogen CIAモノクローナル抗体(ArthoMAB)ブレンド(Millipore; Billerica, MA)7mg(700μl)を腹腔内注射することにより、2月齢のマウスでCIAを誘導した。このモノクローナル抗体のカクテルは、II型コラーゲンの領域CB11の中で認識されるエピトープに対するものである。3日目に、リポ多糖類(LPS)50μg(体積<100μl)を腹腔内に投与した。4日目から始めて、CIAの発症および発病について動物を毎日モニタし、各動物の注射部位を、熱、発赤、及び/又は滲出などの感染の徴候について評価した。LPSに応答して悪液質を経験している可能性が高い、「寒さ」を感じたマウスに、温リンゲル液500μlをs.c.(皮下)投与した。視覚的採点法を使用して、関節炎の重症度を毎日モニタした。採点法は、以下のとおりである:0=正常;1=1〜2本の指における紅斑および浮腫;2=>2本の指における紅斑および浮腫、または通常足根関節における軽度の紅斑および浮腫;3=足根関節を包囲する中程度の紅斑および浮腫;4=足根関節および中足骨関節を包囲する重篤な紅斑および浮腫。
【0172】
CIAの組織病理学評価。ホルマリン固定した関節(右および左の前足および後足、両方の足首および両方の膝)を2〜3日間5%のギ酸中で脱石灰化し;組織を整え、パラフィン包埋のために処理し、8μmの切片にし、トルイジンブルーで染色した。両方の後足、両方の前足、および両方の膝を包埋し、前額面で切片化し、一方、足首は、矢状面で切片化したが、前額面で後足を切片化してもよい。治療群についての情報を知らずに、すべての切片を採点した。その後以下のように群を同定した。関節炎の病変を有するマウスの足または足首を採点するとき、冒されている個々の関節の数に加えて変化の重症度も考慮しなければならない。可能性のある多数の中手骨/中足骨/指または足根骨/脛骨−足根骨関節うちの足または足首の1〜3個の関節のみが冒されているとき、変化の重症度に依存して、下記のパラメータに対し、最大で1、2または3の最高点を任意に割り当てた。3つを超える関節を含んでいた場合、下記の基準を最も重篤に冒されている関節/関節の大部分に適用した。炎症:0=正常;1=患部関節の関節滑膜および関節周囲組織における炎症細胞の最小限の浸潤;2=炎症細胞の軽度浸潤。足に言及する場合、一般的に患部関節(1〜3個の患部)に限定される;3=中程度の浮腫を伴う中程度の浸潤。足に言及する場合、患部関節、一般的に3〜4個の関節+手首または足首に限定される;4=顕著な浮腫を伴う大部分の領域を冒している顕著な浸潤、1つまたは2つの罹患していない関節が存在する場合もある;5=関節および関節周囲組織をすべて冒している重篤な浮腫を伴う重篤なびまん性浸潤。パンヌス:0=正常;1=軟骨および軟骨下骨、辺縁帯中のパンヌスの最小限の浸潤;2=患部関節における硬組織の辺縁帯破壊を伴う軽度の浸潤;3=患部関節における中程度の硬組織破壊を伴う中程度の浸潤;4=大部分の関節を冒している、関節構造の顕著な破壊を伴う顕著な浸潤;5=すべての関節を冒す、関節構造全体またはほぼ全体の破壊を伴う重篤な浸潤。軟骨損傷:0=正常;1=患部関節における明らかな軟骨細胞喪失またはコラーゲン崩壊を伴わないトルイジンブルー染色の最小限〜概ね最小限〜軽度の喪失;2=軽度=いくつかの患部関節における病巣領域の軟骨細胞喪失および/またはコラーゲン崩壊を伴うトルイジンブルー染色のv軽度の喪失;3=中程度=患部関節における多病巣性の軟骨細胞喪失および/またはコラーゲン崩壊を伴うトルイジンブルー染色の概ね中程度の喪失、いくつかのマトリックスは、重篤なマトリックス喪失領域を有する任意の患部表面に留まる;4=顕著=膝の1つの表面で軟骨の全てまたはほぼ全てが喪失している場合、大部分の関節における多病巣性の顕著な(深層の深さまで)軟骨細胞喪失および/またはコラーゲン崩壊を伴うトルイジンブルーの顕著な喪失;5=重篤=膝の2つ以上の表面で軟骨の全てまたはほぼ全てが喪失している場合、すべての関節における多病巣性の重篤な(タイドマーク(tide mark)の深さまで)軟骨細胞喪失および/またはコラーゲン崩壊を伴うトルイジンブルーの重篤なびまん性喪失;骨再吸収:0=正常;1=最小限=小さな領域の再吸収、低倍率では容易に明らかではない、患部関節において破骨細胞は稀、辺縁帯に限定;2=軽度=より多数の領域の再吸収、低倍率では容易に明らかではない、患部関節におけるより多数の破骨細胞、辺縁帯に限定;3=中程度=皮質全層の欠損を伴わない、髄骨梁および皮質骨の明らかな再吸収、いくつかの髄骨梁の喪失、低倍率で明らかな病変、患部関節におけるより多数の破骨細胞;4=顕著=皮質骨全層の欠損、多くの場合皮質表面に留まるプロファイルの変形を伴う、髄骨の顕著な喪失、多数の破骨細胞、大部分の関節が罹患;5=重篤=皮質骨全層の欠損、およびすべての関節の関節構造の破壊。各動物について、炎症、パンヌス、軟骨損傷および硬骨損傷スコアを、試験した8つの関節各々について判定した。合計(8つの関節すべて)動物スコアおよび8つの関節の平均動物スコアに加えて、個々のパラメータの各々について合計及び平均を決定した。次に、p≦0.05が有意であると設定したスチューデントt検定または他の適切な分析法を使用して、様々な群のパラメータを群A(ビヒクル)と比較した。
【0173】
頭蓋冠のLPS/インビボ骨再吸収アッセイ。インビボにおける破骨細胞形成および活性を評価するために、リポ多糖類(2μl中25μg;Sigma)を単回局所皮下頭蓋冠注射により投与した(図13を参照されたい)。5日後にマウスを屠殺し、頭蓋冠をマイクロCT、次いで、組織形態計測分析に供して、頭蓋冠/マウス当たりの侵食された骨質面積の百分率、頭蓋冠の密度および厚さを記録した。該当する場合、週末および休日を含む実験中5日間の継続期間、動物を毎日チェックした。疼痛(例えば、もしあれば、熱および体重減少を誘導する恐れがあるLPSの投与に伴って予期される副作用の結果としての食欲不振、傾眠、ケージ仲間からの孤立)の徴候を示した動物に、獣医との相談に基づいて鎮痛剤を投与した。
【0174】
硬骨X線撮影。切除した大腿骨を、3秒間30kVでMX-20(Faxitron X-ray Corporation, Wheeling, IL)を用いてX線に供した。Epson Perfection 4870を使用して、X線をスキャニングした。
【0175】
骨密度および微小構造。成長板の0.25mm近位の大腿遠位の仮想の1mmの断面の末梢骨定量的コンピュータ断層撮影(pQCT; XCT Research M; Norland Medical Systems, Fort Atkinson, WI)によって、既に記載されているように(Ballica et al. (1999) J. Bone Mineral Res. 14:1067-1074)骨密度を決定した。さらに、2,048×2,048のマトリックス、およびボクセルサイズ12μmの9m3の等方性分解能を備えたマイクロCTスキャナ(MicroCT 40; Scanco, Bassersdorf, Switzerland)で大腿遠位をスキャニングした。既に記載されているように(Li et al. (2005) J. Exp. Med. 201:1169-1177)、二次海綿質中の三次元骨梁測定を直接行った。
【0176】
DNAマイクロアレイ。RNeasy(登録商標)キット(Qiagen;Hilden, Germany)を使用して細胞サンプルから全RNAを単離し、Affymetrix (Santa Clara, CA)製のジーンチップを使用して、マイクロアレイハイブリダイゼーションに使用した。Affymetrixの発現プロトコールを使用して、全RNAからcRNAを合成した。10μgの標識及び断片化されたcRNAを、製造業者の指示に従ってHG-U133Plus2.0 ArrayまたはRAT230 Plus Arrayにハイブリダイゼーションさせ、シグナルを検出した。
【0177】
組織形態計測。発明者らが既に記載しているように((Baron et al. (1982) in Bone Histomorphometry: Techniques and Interpretation, ed. Recker et al. (CRC Press, Inc., Boca Raton, FL), pp. 13-35)、sk4+/+およびsk4−/−マウスの大腿骨および脛骨を漸増(graded)エタノール系で脱水し、メタクリル酸メチル中で脱石灰することなしに包埋した。成長板に0.25mm近位の4μmの厚さの大腿遠位の横断切片を、組織形態分析のためにVillanueva Mineralized Bone Stainで染色したが、8μmの厚さの切片は動的パラメータの分析のために染色しなかった。Osteomeasureソフトウェア(Osteometrics, Atlanta, GA)を使用して、組織形態計測を行なった。以下のパラメータを測定した:骨の占める相対的組織表面(B.Ar/T.Ar;%);1mm当たりの骨梁数(Tb.N/mm);骨梁によって占められた骨の相対的な表面(Tb.Ar;%);骨梁間の距離/間隔(μm);総骨表面当たりの破骨細胞の数(Oc/T.Ar);総硬骨周囲長当たりの破骨細胞の周囲長(Oc.Pm/B.Pm);総硬骨周囲長当たりの骨芽細胞の周囲長(Ob.Pm/B.Pm)、石灰化表面(MS/BS)、無機質付着速度(MAR)、および骨形成速度(BFR/BV)。
【0178】
骨髄および脾臓に由来するマウス破骨細胞。既に記載されているように、4〜12週齢のsk4+/+およびsk4−/−マウスからこれらの細胞を作成した(Cui et al. (2007) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 104:14436-14441; Epub 2007 August 28)。骨髄および脾臓細胞を単離し、機械的に解離させ、10%の加熱不活性化ウシ胎児血清(HyClone, Logan, UT)、100単位/mlのペニシリン−ストレプトマイシン(Gibco Invitrogen, Carlsbad, CA)、1%のMEMビタミン、1%のグルタミンおよび30ng/mlのM−CSF(PeproTech, Inc. Rocky Hill, NJ)を含有しているMEM中にて1cm2当たり1.33×106細胞の密度で培養した。40ng/mlの濃度のRANKL(PeproTech, Inc.)を添加した。3日ごとに培地を交換した。破骨細胞活性の目印であるアクチン環の形成を評価するために、8日間、スライドガラス上にて、M−CSF(20ng/ml)およびRANKL(40ng/ml)の存在下で細胞を培養し、固定し、phalloidin-Alexa 568およびTopro-3と反応させた。さらに再吸収活性を評価するために、リン酸カルシウム結晶で作製された人工骨でコーティングした骨組織スライド上で細胞を培養した。8日後、供給業者の指示に従って細胞を溶解させ、硝酸銀で基質を染色した。組織形態計測により、スライド上の再吸収された面積を記録した。
【0179】
ヒト破骨細胞。正常末梢血血液(Allcells, Emeryville, CA)を使用して、これらの細胞を作成した。Ficoll-Paqueを使用して末梢血単球を単離し、10%のFCS、組換え型ヒトM−CSF(25ng/ml)および組換え型ヒトRANKL(40ng/ml)を添加したMEME中で3×106細胞/mlの濃度で培養した。週に一度培地を交換した。
【0180】
ウエスタンブロット解析。7日間培養した後、破骨細胞を2時間血清飢餓状態にし、指示した試薬で刺激した。次に、プロテアーゼインヒビター(Complete Tablets; Roche Molecular Biochemicals)、フッ化ナトリウムおよびホスファターゼインヒビターカクテルIIを添加したLaemmliサンプルバッファの中で細胞を溶解させた。溶解産物を超音波処理し、SDS−PAGEにより分離し、Immobilon-Pメンブレンに転写し、増強化学発光(Amersham Pharmacia Biotechnology; Sunnyvale, CA)を使用して、免疫ブロッティングに供した。
【0181】
フローサイトメトリー。一次抗体で細胞を染色し、氷上で30分間培養し、洗浄バッファ(5%のFCS/PBS)で2度洗浄した。二次抗体を加えて、氷上で30分間細胞をインキュベーションした。インキュベーション後、洗浄バッファで2度細胞を洗浄し、FACS分析用洗浄バッファに懸濁させ、FACS Calibur(BD Bioscience; Franklin Lakes, NJ)を使用してFACS分析を実施した。
【0182】
リアルタイム逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(リアルタイムPCR)。製造業者の指示に従って、全RNAをTrizol(Invitrogen; Carlsbad, CA)に抽出した。1μgの全RNAおよびモロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素を使用して、第1の鎖のcDNAを合成した。PCR反応用プライマー対を表2に提供する。
【表2】
【0183】
統計分析。データは平均±1標準偏差(SD)を表す。分散分析を使用して、処理群を比較した。チューキー多重比較手順を使用して、処理群の間の対比較p値を調整した。両側p値が<0.05である場合、統計的に有意であるとした。SPSSを使用して、全ての計算を行なった。
【0184】
結果
インビトロマクロファージ融合アッセイ。
新たに単離されたラット肺胞マクロファージは、複数の別個の細胞のように見えた(図1A)。融合条件下(すなわち、M−CSFおよびRANKLの存在下)で3日間培養した後、マクロファージは多核細胞へ融合した(図1B)。有利なことに、このアッセイではほとんどドナーに差異が生じず、RANKL刺激の効果が全く示されなかった。
【0185】
中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウムチャネルの発現は、ラットの破骨細胞形成中にアップレギュレーションされる。
ラットの肺胞マクロファージの融合におけるSK4チャネルメッセージは、0時間処理マクロファージと比較した場合、1時間後には変化がなかったが、24時間後には著しく増加し(図2)、最高5日間増加した状態が保たれた。
【0186】
中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウムチャネルの発現は、ヒトの破骨細胞形成中にアップレギュレーションされる。
これらの結果は、上記マクロファージ融合アッセイにおいてヒトマクロファージ/PBMCを使用することができ、融合しているマクロファージ/PBMCにおいてSK4チャネルの発現がアップレギュレーションされたことを示す。
【0187】
新たに単離されたヒトマクロファージ/PBMCは、複数の別個の細胞のように見え、破骨細胞へ融合した。Affymetrix(登録商標)U133 Plus 2.0 GeneChip(登録商標)(図3A)およびTaqMan(登録商標)Gene Expression System(図3B)により測定したとき、SK4(SK4)チャネルの発現は融合条件下で7日間培養した後に増加し、21日目まで増加した状態が保たれた。他の血球および血液関連細胞におけるSK4チャネル発現の評価は、B細胞および樹状細胞における有意な発現増加を示した(図3C)。したがって、ヒト細胞は、ラット細胞と同様に、融合条件下でSK4チャネル発現の増加を示す。
【0188】
マウスの破骨細胞形成および破骨細胞における中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウムチャネルの役割。
結果は、SK4−/−ノックアウトマウスおよび薬理学的阻害を用いることにより、破骨細胞形成中のSK4チャネル(SK4)の役割を実証する。
【0189】
SK4−/−マウスの脾細胞は、これらの細胞がSK4+/−またはWTマウス由来の破骨細胞の細胞と同じ数または大きさを形成しなかったので、破骨細胞形成の欠陥を示した(図4A〜B)。しかし、SK4チャネルのみの欠損は、SK4−/−マウスにおいてB細胞(B220)、T細胞(CD4およびCD8)、マクロファージ/顆粒球(GR1、CD11b)、マクロファージ(F480、CD11b、CD11c)または樹状細胞(MHCII、CD8、CD11c)の相対的比率に影響を与えなかった(図5)
【0190】
同様にSK4−/−マウスの骨髄に由来するマクロファージは、脾細胞に由来する細胞で観察されたものと同様に破骨細胞形成の欠陥を示した(図6A〜B)。SK4−/−マウスのマクロファージにおけるSK4チャネルの不足は、不完全なSK4チャネル活性を示したパッチクランプ試験によって確認された(データは示さない)。
【0191】
興味深いことに、SK4−/−ノックアウトマウスは骨梁骨密度の増加を示した(データは示さない)。雄および雌のSK4−/−ノックアウトマウスは両方とも、ホモ接合体の野性型マウスと比較したとき、骨浸食を87%保護した。さらに、SK4−/−ノックアウトマウス由来の破骨細胞は、WTマウス由来の破骨細胞と比較して、リン酸カルシウム基質を効率的に再吸収しなかった(データは示さない)。
【0192】
2つのSK4チャネルインヒビター、ICA−17043およびTRAM−34を用いて、破骨細胞形成におけるSK4チャネルの役割を確認した。これらのインヒビターは、WTマウス(すなわちSK4+/+)の骨髄に由来するマクロファージにおいて用量依存的に破骨細胞形成を減じた(図7A〜B)。図7Cは、ICA−17043処理サンプルのTRAPで染色した画像を示し、ここでは、0.36μMで細胞融合が有意に阻害された。
【0193】
関節リウマチのマウスモデルにおける中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウムチャネルの役割。
これらの結果は、マウスにおけるSK4チャネルの欠損または薬理学的阻害が、関節リウマチにおける骨の再吸収を妨げたことを示す。
【0194】
反復研究では、WTマウスと比較したとき、SK4欠損マウスは関節炎スコアが著しく低下し(図8A〜B)、骨浸食に対する実質的な保護を示した。さらに、SK4欠損マウスは、足の硬骨損傷が有意に少なかった(図9A〜B)。一方、雌のSK4欠損マウスは、炎症、パンヌスおよび軟骨損傷も有意に少なかった(図9A)。
【0195】
更なる研究は、SK4欠損マウスの破骨細胞の骨塩の再吸収が不完全であったことを示した(図11A)が、これは恐らくSK4−/−細胞が、十分な数の破骨細胞を形成しなかったためである(図11B)。したがって、SK4欠損マウス中の破骨細胞の減少は、骨梁密度の増加を表す。雄および雌のSK4−/−マウスの大腿遠位は、SK4+/+マウスよりも骨梁密度が高かった(図12)。
【0196】
ヒト末梢血単核細胞において中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウムチャネルインヒビターは融合を減じる。
この実施例は、実施例4においてマウス細胞について示したものに類似の方法で、SK4チャネルインヒビターがヒト細胞の融合を妨げることを実証する。
【0197】
ICA−17043およびTRAM−34は、用量依存的にインビトロにおいてヒトの破骨細胞形成を阻害した(図10A〜B)。ICA−17043は0.3μMのIC50で細胞融合を阻害した;一方、TRAM−34は0.8μMのIC50で細胞融合を阻害した;同様に、ICA−17043およびTRAM−34は、用量依存的な方法で破骨細胞数だけでなく破骨細胞の表面積も減少させた。
【0198】
頭蓋冠のLPS/インビボ骨吸収アッセイ。
これらの結果は、SK4欠損(SK4−/−)マウスが局所LPS頭蓋冠注射に応答して、インビボにおいて破骨細胞形成を減少させることを実証する。
【0199】
関節リウマチを引き起こす炎症におけるSK4の役割を明らかにするために、頭蓋冠上にリポ多糖類(LPS)を局所的に皮下注射して、骨を再吸収する破骨細胞の形成を導く炎症反応を局所、迅速、そして効率的に誘導した。解剖学的に、表在する血管および神経が存在せず、配置が容易である頭蓋冠を、縫合糸によって分離する(図14を参照されたい)。図14および15A〜Cに結果を示す。
【0200】
SK4、ひいてはSK4チャネルが存在しないと、LPSの局注に応答して骨吸収が劇的に妨げられた(図14)。SK4+/+マウスの頭蓋冠硬骨中の破骨細胞により穴が作製されるが、SK4欠損マウスの頭蓋冠硬骨中では作製されない場合、骨表面が増大することに留意されたい。SK4欠損マウスは、LPS注射の5日後に、厚い頭蓋冠骨厚さおよび高い骨密度を維持する(図15A〜Cを参照されたい)。
【0201】
特に明記されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が関係する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書において記載されるものに類似しているか、または等価である任意の方法および材料を、本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料が本明細書に記載されている。
【0202】
前述の記載および関連する図面において示された教示の利点を有する本明細書に記載される発明の、多くの変更および他の態様を当業者は思い浮かべるであろう。したがって、本発明は、開示された特定の態様に限定されるものではなく、また、変更および他の態様が、添付の特許請求の範囲および本明細書に開示される態様の一覧の範囲内に含まれることを意図することが理解されるべきである。特定の用語が本明細書において使用されるが、それらは、限定する目的ではなく包括的および記述的な意味のみで使用される。
【0203】
明細書の中で言及された刊行物および特許出願はすべて、本発明が属する分野の当業者のレベルを示す。個々の刊行物または特許出願が、具体的かつ個別に参照により組み込まれることが指示されたかのように、同程度にすべての刊行物および特許出願が参照により組み込まれる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、細胞間融合(セロサイトーシス(cellocytosis)とも呼ばれる)を調節するための組成物および方法、より具体的には、マクロファージの同型および異型細胞間融合を調節するための組成物および方法に関する。したがって、本発明は、各種疾患または障害に関連する細胞融合、ならびに破骨細胞の分化および機能を調節するための組成物および方法を提供する。
【0002】
背景技術
細胞融合は、様々な発生およびホメオスタシスプロセスにとって不可欠である基本的な生物学的事象である。オルガネラ輸送中の細胞内の膜融合についてはよく理解されているが、精子−卵母細胞間融合、筋芽細胞−筋芽細胞間融合およびマクロファージ−マクロファージ間融合を媒介する細胞間融合についてはあまり知られていない。Vignery (2000) Int. J. Exp. Pathol. 81:291-304を参照されたい。
【0003】
マクロファージに関しては、これらの細胞は、組織内で自身と融合して(即ち、同型融合)巨細胞を形成することができ、これは慢性炎症性疾患に関与している。MacLauchlan et al.(2009) J. Leukoc. Biol. 85:617-626;および前記Vignery (2000)を参照されたい。さらに、マクロファージは、骨内で自身と融合して破骨細胞を形成することができ、これは骨吸収を媒介する。より最近では、マクロファージは、体細胞または癌細胞と融合することができる(即ち、異型融合)と考えられている。Vignery (2005) Trends Cell Biol. 15:188-193を参照されたい。
【0004】
残念なことに、マクロファージが自身および他の細胞と融合する機序の大部分は未だ特徴づけられていない。前記MacLauchlan et al.(2009);および前記Vignery (2005)を参照されたい。このプロセスを理解することは、マクロファージ機能を調節し、そしてまた、これらの細胞が不適当であるかまたは制御されていない様式で融合するときに、炎症性および感染性疾患で引き起こされる損傷を限定的にするのに役立つ可能性がある。前述の理由のために、マクロファージ融合を阻害するための組成物および方法が必要とされている。
【0005】
破骨細胞は、単球−マクロファージ細胞株の細胞融合により形成される。破骨細胞は、多核、そして高濃度の小胞および液胞を特徴とする大型細胞である。破骨細胞は、骨質マトリックスの除去を促進する骨吸収が活発に行われている部位で特殊な細胞膜を形成する。このような機序により、骨粗鬆症または骨減少症(正常よりも低いが、骨粗鬆症として分類されるほどは低くない骨塩密度を有する)が生じる。関節リウマチは、多くの場合破骨細胞による骨吸収の増加に起因して全身化した骨減少症によって悪化する。したがって、破骨細胞の分化および機能を調節するための、特に阻害するための組成物および方法も必要とされている。
【0006】
概要
本発明は、広くは、中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウムチャネル(SK4チャネル、またはIKチャネル、またはKCNN4チャネル、またはKCa3.1チャネル、またはIKCa1チャネル)の発現、活性、または機能を調節する剤を使用することにより、細胞間融合を調節するための組成物および方法に関する。本発明の組成物は、有効量のSK4チャネル調節剤(インヒビターまたはアクチベーター)を単独で、または他の治療剤と組み合わせて含む。1つの態様では、本発明の方法は、細胞を融合させる能力を有する細胞、または活発に融合している細胞に有効量のSK4チャネルインヒビターを提供することを含む。場合により、前記方法は、SK4チャネルインヒビターと共に治療剤を同時提供することを含む。また、細胞間融合を阻害することができるSK4チャネルインヒビターを同定する方法も含む。
【0007】
別の態様では、本発明には、細胞間融合の活性化について記載される。このように、前記方法は、細胞を融合させる能力を有する細胞、または活発に融合している細胞に、有効量のSK4チャネルアクチベーターを提供することを含む。また、細胞間融合を促進することができるSK4チャネルアクチベーターを同定する方法も含む。
【0008】
いくつかの態様では、本発明の組成物および方法は、マクロファージの細胞融合の調節を提供する。他の態様では、前記組成物および方法は、破骨細胞の阻害を含む、破骨細胞の分化および機能の調節を提供する。
【0009】
本発明の組成物および方法は、破骨細胞、巨細胞または転移癌細胞に関連する疾患を含む、マクロファージに由来する多核細胞により媒介される疾患または障害の予防または治療における用途が見出される。
【0010】
本発明は以下の態様を包含する。
1.中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(SK4)チャネルを発現する細胞の細胞融合を調節するための方法であって、前記細胞と、有効量のSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターとを接触させる工程を含み、細胞融合が調節される方法。
2.細胞融合が阻害される、態様1記載の方法。
3.細胞が血球系細胞である、態様1記載の方法。
4.細胞が、マクロファージ、樹状細胞およびB細胞からなる群より選択される、態様1記載の方法。
5.細胞がマクロファージである、態様1記載の方法。
6.細胞融合が同型または異型融合である、態様1記載の方法。
7.SK4チャネルインヒビターが、阻害性核酸、モノクローナル抗体および低分子インヒビターからなる群より選択される、態様1記載の方法。
8.阻害性核酸が、配列番号2記載の配列を含むSK4チャネルの発現を標的にする、態様7の方法。
9.モノクローナル抗体が、SK4チャネルの孔(ポア)領域または低分子結合ドメインを認識する、態様7記載の方法。
10.低分子インヒビターが、1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾール;2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミド;1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1Hピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(4−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;および1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−テトラゾールからなる群より選択される、態様7記載の方法。
11.低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾールである、態様7記載の方法。
12.低分子インヒビターが2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミドである、態様7記載の方法。
13.低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1Hピラゾールである、態様7記載の方法。
14.細胞内におけるSK4チャネルの発現または活性をアッセイする工程をさらに含む、態様7記載の方法。
15.方法がインビボにおける方法であり、そしてSK4チャネルインヒビターの有効量が、異常な細胞融合が生じているか、または異常な細胞融合が生じていると思われる被験体に提供される治療上有効な量である、態様1記載の方法。
16.治療上有効な量の抗炎症剤、抗骨喪失剤、免疫抑制剤または化学療法剤を被験体に同時提供する工程をさらに含む、態様15記載の方法。
17.破骨細胞の分化および機能を調節するための方法であって、破骨細胞または破骨細胞前駆体と、有効量の中間コンダクタンスカリウム活性化カリウム(SK4)チャネルインヒビターまたはアクチベーターとを接触させる工程を含む方法。
18.破骨細胞形成が阻害される、態様17記載の方法。
19.SK4チャネルインヒビターが、阻害性核酸、モノクローナル抗体および低分子インヒビターからなる群より選択される、態様17記載の方法。
20.モノクローナル抗体が、SK4チャネルの孔領域または低分子結合ドメインを認識する、態様19記載の方法。
21.低分子インヒビターが、1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾール;2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミド;1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(4−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;および1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1Hテトラゾールからなる群より選択される、態様19記載の方法。
22.低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾールである、態様19記載の方法。
23.低分子インヒビターが2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミドである、態様19記載の方法。
24.低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1Hピラゾールである、態様19記載の方法。
25.方法がインビボにおける方法であり、有効量のSK4チャネルインヒビターが、異常な破骨細胞の分化または機能が生じているか、または異常な破骨細胞の分化または機能が生じていると思われる被験体に提供される治療上有効な量である、態様17記載の方法。
26.治療上有効な量の抗炎症剤、抗骨喪失剤、免疫抑制剤または化学療法剤を被験体に同時投与することをさらに含む、態様25記載の方法。
27.骨喪失が生じやすいか、または骨喪失が生じている被験体の骨喪失を予防または治療するための方法であって、治療上有効な量の中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(SK4)チャネルインヒビターを前記被験体に投与して、破骨細胞の形成を阻害する工程を含み、被験体の骨喪失が予防または治療される方法。
28.SK4チャネルインヒビターが、阻害性核酸、モノクローナル抗体および低分子インヒビターからなる群より選択される、態様27記載の方法。
29.モノクローナル抗体が、SK4チャネルの孔領域または低分子結合ドメインを認識する、態様28記載の方法。
30.低分子インヒビターが、1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾール;2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミド;1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(4−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;および1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1Hテトラゾールからなる群より選択される、態様28記載の方法。
31.低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾールである、態様28記載の方法。
32.低分子インヒビターが2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミドである、態様28記載の方法。
33.低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1Hピラゾールである、態様28記載の方法。
34.治療上有効な量の抗炎症剤、抗骨喪失剤、免疫抑制剤または化学療法剤を被験体に同時投与する工程をさらに含む、態様27記載の方法。
35.炎症性または自己免疫疾患に罹患しやすいか、または炎症性または自己免疫疾患に罹患している被験体の、巨細胞形成を特徴とする炎症性または自己免疫疾患を予防または治療するための方法であって、治療上有効な量の中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(SK4)チャネルインヒビターを前記被験体に投与して、巨細胞の形成を阻害する工程を含み、前記被験体の炎症性または自己免疫疾患が予防または治療される方法。
36.SK4チャネルインヒビターが、阻害性核酸、モノクローナル抗体および低分子インヒビターからなる群より選択される、態様35記載の方法。
37.モノクローナル抗体が、SK4チャネルの孔領域または低分子結合ドメインを認識する、態様36記載の方法。
38.低分子インヒビターが、1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾール;2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミド;1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(4−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;および1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1Hテトラゾールからなる群より選択される、態様36記載の方法。
39.低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾールである、態様36記載の方法。
40.低分子インヒビターが2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミドである、態様36記載の方法。
41.低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1Hピラゾールである、態様36記載の方法。
42.治療上有効な量の抗炎症剤、抗骨喪失剤、免疫抑制剤または化学療法剤を前記被験体に同時投与する工程をさらに含む、態様35記載の方法。
43.被験体内に位置する部位に移植物または移植片を有する被験体の移植物または移植片拒絶反応を予防するための方法であって、治療上有効な量の中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(K)チャネルインヒビターを前記被験体に投与して、前記部位または前記部位近傍における巨細胞の形成を阻害する工程を含み、前記被験体の移植物または移植片拒絶反応が予防される方法。
44.SK4チャネルインヒビターが、阻害性核酸、モノクローナル抗体および低分子インヒビターからなる群より選択される、態様43記載の方法。
45.モノクローナル抗体が、SK4チャネルの孔領域または低分子結合ドメインを認識する、態様44記載の方法。
46.低分子インヒビターが、1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾール;2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミド;1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(4−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;および1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−テトラゾールからなる群より選択される、態様44記載の方法。
47.低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾールである、態様44記載の方法。
48.低分子インヒビターが2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミドである、態様44記載の方法。
49.低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1Hピラゾールである、態様44記載の方法。
50.治療上有効な量の抗炎症剤、または免疫抑制剤を前記被験体に同時投与する工程をさらに含む、態様43記載の方法。
51.移植片が細胞、器官または組織の移植片である、態様43記載の方法。
52.癌に罹患している被験体の癌転移を予防する方法であって、治療上有効な量の中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(SK4)チャネルインヒビターを前記被験体に投与して、転移癌細胞の形成を阻害する工程を含み、被験体の癌転移が予防される方法。
53.SK4チャネルインヒビターが、阻害性核酸、モノクローナル抗体および低分子インヒビターからなる群より選択される、態様52記載の方法。
54.モノクローナル抗体が、SK4チャネルの孔領域または低分子結合ドメインを認識する、態様53記載の方法。
55.低分子インヒビターが、1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾール;2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミド;1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(4−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;および1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−テトラゾールからなる群より選択される、態様53記載の方法。
56.低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾールである、態様53記載の方法。
57.低分子インヒビターが2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミドである、態様53記載の方法。
58.低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾールである、態様53記載の方法。
59.治療上有効な量の抗炎症剤、抗骨喪失剤、免疫抑制剤または化学療法剤を被験体に同時投与することをさらに含む、態様52記載の方法。
60.細胞間融合を阻害する中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(SK4)チャネルインヒビターを同定する方法であって:
細胞集団とSK4チャネルインヒビターの候補とを接触させる工程;および
前記候補剤が細胞集団内の細胞間融合を阻害するかどうかを判定する工程;
を含む方法。
61.細胞集団がマクロファージを含み、SK4チャネルインヒビターがマクロファージの細胞間融合を阻害する、態様60記載の方法。
62.細胞集団が少なくとも2種類の細胞型を含み、そのうちの1種がマクロファージである、態様60記載の方法。
63.有効量の中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(SK4)チャネルインヒビター;および
抗炎症剤、抗骨喪失剤、免疫抑制剤および化学療法剤からなる群より選択される治療剤
を含む組成物。
64.SK4チャネルインヒビターが、阻害性核酸、モノクローナル抗体および低分子インヒビターからなる群より選択される、態様63記載の組成物。
65.モノクローナル抗体が、SK4チャネルの孔領域または低分子結合ドメインを認識する、態様64記載の組成物。
66.低分子インヒビターが、1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾール;2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミド;1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(4−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;および1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−テトラゾールからなる群より選択される、態様64記載の組成物。
67.低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾールである、態様64記載の組成物。
68.低分子インヒビターが2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミドである、態様64記載の組成物。
69.低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾールである、態様64記載の組成物。
70.薬学的に許容しうる担体をさらに含む、態様63の組成物。
71.細胞間融合を活性化する中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(SK4)チャネルアクチベーターを同定する方法であって:
細胞集団とSK4チャネルアクチベーターの候補とを接触させる工程;および
前記候補剤が細胞集団内の細胞間融合を活性化するかどうかを判定する工程;
を含む方法。
72.細胞集団がマクロファージを含み、SK4チャネルアクチベーターがマクロファージの細胞間融合を活性化する、態様71記載の方法。
73.細胞集団が少なくとも2種類の細胞型を含み、そのうちの1種がマクロファージである、態様71記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0011】
以下の詳細な記載を考慮すれば、本発明がより一層理解され、そして上記以外の特徴、局面および利点が明らかになるであろう。このような詳細な記載は、以下の図面を参照する。
【図1A】図1Aは、新たにプレーティングしたラットの肺胞マクロファージの写真を示し;図1Bは、融合条件下で5日間培養した後に、融合したラットの肺胞マクロファージから形成された多核細胞の写真を示す。
【図1B】図1Aは、新たにプレーティングしたラットの肺胞マクロファージの写真を示し;図1Bは、融合条件下で5日間培養した後に、融合したラットの肺胞マクロファージから形成された多核細胞の写真を示す。
【図2】図2は、融性条件下のラットの肺胞マクロファージにおける24時間までのSK4チャネルmRNA発現のアップレギュレーションを示し、これは、5日目まで持続した(x軸は、0時間目、1時間目、24時間目または120時間目における複製肺胞マクロファージサンプルを表す)。データは、3つの個体サンプルの平均シグナル(+標準偏差)として示され、Affymetrix(登録商標)Genechip(登録商標)RAT230 Plus Array experiments (Probe ID 1368930_at)によって得られた。
【図3A】図3Aは、M−CSFおよびRANKL刺激下における、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)の破骨細胞への分化中のSK4チャネル発現のアップレギュレーションを示す(x軸は、0時間目、3日目、7日目、14日目または21日目における複製ヒトPBMCサンプルを表す)。データは、4つの個体サンプルの平均シグナル(+標準偏差)として表され、Affymetrix(登録商標)Genechip(登録商標)U133 Plus 2 Array chipsによって得られた。
【図3B】図3Bは、Genechip(登録商標)のデータが、TaqMan(登録商標)リアルタイムRT−PCRによりさらに確認されたことを示す(x軸は、0時間目、3日目、7日目、14日目または21日目における複製ヒトPBMCサンプルを表す)。
【図3C】図3Cは、他の細胞と比較したとき、ヒトB細胞、樹状細胞およびマクロファージにおけるSK4/IKのmRNAが高発現していることを示す。図3Cのデータは、Affymetrix(登録商標)Genechip(登録商標)RAT230 Plus Array chipsから得たものであり、細胞サンプルの平均シグナルとして示される。反復数と共に、サンプリングされた細胞を図3Cに示す。
【図4A】図4Aは、ヘテロ接合体(sk4+/−)およびホモ接合体ノックアウト(sk4−/−)マウスの脾細胞から作成された破骨細胞様細胞(すなわちTRAP+)の、7日間M−CSFおよびRANKL下で培養されたSK4チャネルが、ホモ接合体野生型(WT;sk4+/+)マウスと比較して少ないことを示す。図4Bは、WTマウスと比較したとき、これらの細胞の表面積が少ないことを示す。
【図4B】図4Aは、ヘテロ接合体(sk4+/−)およびホモ接合体ノックアウト(sk4−/−)マウスの脾細胞から作成された破骨細胞様細胞(すなわちTRAP+)の、7日間M−CSFおよびRANKL下で培養されたSK4チャネルが、ホモ接合体野生型(WT;sk4+/+)マウスと比較して少ないことを示す。図4Bは、WTマウスと比較したとき、これらの細胞の表面積が少ないことを示す。
【図5】図5は、SK4チャネルの欠損が、WT(sk4+/+)マウス(上方パネル)と比較して、ホモ接合体ノックアウト(sk4−/−)マウス(下方パネル)由来のマクロファージの相対的比率に有意な影響を与えないことを示す。FACSグラフは、左から右に、異なる組み合わせ(すべての細胞、CD11b/F480、CD11C/F480、CD11C/CD11b)として提示する。
【図6A】図6Aは、7日間融合条件(M−CSF+RANKL)下で培養されたホモ接合体ノックアウト(sk4−/−)マウスの骨髄に由来するマクロファージから作成された破骨細胞様細胞(すなわちTRAP+)が、WT(sk4+/+)マウスと比較して少ないことを示す。図6Bは、WTマウスと比較したとき、これらの細胞の全表面積が少ないことを示す。
【図6B】図6Aは、7日間融合条件(M−CSF+RANKL)下で培養されたホモ接合体ノックアウト(sk4−/−)マウスの骨髄に由来するマクロファージから作成された破骨細胞様細胞(すなわちTRAP+)が、WT(sk4+/+)マウスと比較して少ないことを示す。図6Bは、WTマウスと比較したとき、これらの細胞の全表面積が少ないことを示す。
【図7】図7A〜Bは、WTマウスの骨髄に由来するマクロファージにおいて、用量依存的に2つの異なるSK4チャネルインヒビター(ICA−17043、図7A;およびTRAM−34、図7B)が破骨細胞の形成を妨げることを示す。TRAP+破骨細胞様細胞の表面積を評価した(POCは、化合物不含対照に対する百分率である)。データは5つの複製物から得たものであり、そしてエラーバーは標準偏差を表す。図7Cは、ICA−17043処理されたサンプルのTRAPで染色された画像を示す。
【図8A】図8A〜8Bは、抗コラーゲン抗体誘導性関節炎モデルにおいて、ホモ接合体ノックアウト(sk4−/−)マウス(雄(M)および雌(F))の関節炎スコアが、WTマウス(MおよびF)と比較して、有意に減じられることを示す。2つの独立した実験のデータを示す。各試験群の動物数を図8A〜Bに示し、エラーバーは平均の標準誤差を表す。
【図8B】図8A〜8Bは、抗コラーゲン抗体誘導性関節炎モデルにおいて、ホモ接合体ノックアウト(sk4−/−)マウス(雄(M)および雌(F))の関節炎スコアが、WTマウス(MおよびF)と比較して、有意に減じられることを示す。2つの独立した実験のデータを示す。各試験群の動物数を図8A〜Bに示し、エラーバーは平均の標準誤差を表す。
【図9A】図9Aは、抗コラーゲン抗体誘導性関節炎モデル(図8の実験2)において、ホモ接合体ノックアウト(sk4−/−)マウス(雌(F))の足関節の硬骨損傷、軟骨損傷、パンヌスおよび炎症の組織学スコアが、WTマウスと比較して有意に低下することを示す。図9Bは、抗コラーゲン抗体誘導性関節炎モデルにおいて、ホモ接合体ノックアウト(sk4−/−)マウス(雄(M))の硬骨損傷が、WTマウスと比較して有意に減少することを示す。
【図9B】図9Aは、抗コラーゲン抗体誘導性関節炎モデル(図8の実験2)において、ホモ接合体ノックアウト(sk4−/−)マウス(雌(F))の足関節の硬骨損傷、軟骨損傷、パンヌスおよび炎症の組織学スコアが、WTマウスと比較して有意に低下することを示す。図9Bは、抗コラーゲン抗体誘導性関節炎モデルにおいて、ホモ接合体ノックアウト(sk4−/−)マウス(雄(M))の硬骨損傷が、WTマウスと比較して有意に減少することを示す。
【図10A】図10A〜Bは、M−CSF+RANKL刺激下で、ヒトPBMCにおいて、用量依存的に2つの異なるSK4チャネルインヒビター(それぞれ、ICA−17043およびTRAM−34、図10Aおよび10B)が破骨細胞の形成を妨げることを示す。TRAP+破骨細胞様細胞の表面積を評価した(POCは、化合物不含対照に対する百分率である)。データは4つの複製物から得た、そしてエラーバーは標準偏差を表す。
【図10B】図10A〜Bは、M−CSF+RANKL刺激下で、ヒトPBMCにおいて、用量依存的に2つの異なるSK4チャネルインヒビター(それぞれ、ICA−17043およびTRAM−34、図10Aおよび10B)が破骨細胞の形成を妨げることを示す。TRAP+破骨細胞様細胞の表面積を評価した(POCは、化合物不含対照に対する百分率である)。データは4つの複製物から得た、そしてエラーバーは標準偏差を表す。
【図11A】図11Aは、SK4欠損破骨細胞による骨塩の再吸収が不完全であることを示す。sk4+/+およびsk4−/−マウス由来の骨髄に由来するマクロファージを、カルシウム−リン酸塩結晶で作製された人工骨でコーティングしたBioCoat(商標)Osteologic(商標)スライド上において20日間M−CSF(20ng/ml)およびRANKL(100ng/ml)の存在下で培養した。1ウェル当りの溶解したカルシウム−リン酸塩表面積を記録することにより、破骨細胞の活性を評価した。結果は、3つの独立した実験(n=3;SD)を代表するものである。sk4+/+およびsk4−/−マウスの再吸収窩の代表的な画像を図11Bに示す。
【図11B】図11Aは、SK4欠損破骨細胞による骨塩の再吸収が不完全であることを示す。sk4+/+およびsk4−/−マウス由来の骨髄に由来するマクロファージを、カルシウム−リン酸塩結晶で作製された人工骨でコーティングしたBioCoat(商標)Osteologic(商標)スライド上において20日間M−CSF(20ng/ml)およびRANKL(100ng/ml)の存在下で培養した。1ウェル当りの溶解したカルシウム−リン酸塩表面積を記録することにより、破骨細胞の活性を評価した。結果は、3つの独立した実験(n=3;SD)を代表するものである。sk4+/+およびsk4−/−マウスの再吸収窩の代表的な画像を図11Bに示す。
【図12】図12は、SK4欠損マウスの骨梁骨密度が増加していたことを示す。雄および雌のsk4−/−マウスの大腿遠位は、sk4+/+マウスよりも高い骨梁密度を有する。8週齢の雄および雌のsk4−/−およびsk+/+マウス由来の大腿遠位を、pQCT(n=8;SD)を使用してスキャニングした。
【図13】図13は、マウス頭部の側背の解剖を示す。矢印は、インビボにおける破骨細胞形成アッセイにおいて、頭蓋冠上にリポ多糖(LPS)を局所皮下注射した部位を示す。このLPSの注射は、硬骨を再吸収する破骨細胞の形成を導く炎症反応を、局所的、迅速、そして効率的に誘導する。
【図14】図14は、SK4が存在しないことにより、頭蓋冠上へのLPSの局所皮下注射に応答して、劇的に骨の再吸収が妨げられることを示す。8週齢のsk4+/+およびsk4−/−の雄および雌マウスの、右頭蓋冠の骨膜中に(図13を参照されたい)、2μlの体積のLPS25μgを注射した。頭部をマイクロCTによりスキャニングした。SK4欠損マウスがLPSに対して応答しないことに留意されたい。(n=5)。
【図15A】図15A〜Cは、頭蓋冠上へのLPSの局所皮下注射に応答する、sk4+/+対SK4欠損(sk4−/−)の頭蓋冠の3Dパラメータのインビボ応答を示す。頭蓋冠骨表面密度(骨体積に対する骨表面積、図15A);骨厚さ(図15B);および骨密度(図15C)。SK4欠損マウスは、LPS注射の5日後、より厚い頭蓋冠の骨厚さおよびより高い骨密度を維持し、そしてより少ない再吸収された骨表面を維持する。
【図15B】図15A〜Cは、頭蓋冠上へのLPSの局所皮下注射に応答する、sk4+/+対SK4欠損(sk4−/−)の頭蓋冠の3Dパラメータのインビボ応答を示す。頭蓋冠骨表面密度(骨体積に対する骨表面積、図15A);骨厚さ(図15B);および骨密度(図15C)。SK4欠損マウスは、LPS注射の5日後、厚い頭蓋冠の骨厚さおよび高い骨密度を維持し、そして少ない再吸収された骨表面を維持する。
【図15C】図15A〜Cは、頭蓋冠上へのLPSの局所皮下注射に応答する、sk4+/+対SK4欠損(sk4−/−)の頭蓋冠の3Dパラメータのインビボ応答を示す。頭蓋冠骨表面密度(骨体積に対する骨表面積、図15A);骨厚さ(図15B);および骨密度(図15C)。SK4欠損マウスは、LPS注射の5日後、厚い頭蓋冠の骨厚さおよび高い骨密度を維持し、そして少ない再吸収された骨表面を維持する。
【0012】
詳細な説明
本発明は、細胞間融合中、特にマクロファージが関与する同型および異型融合中の中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(SK4またはKCNN4またはIK)チャネル発現の増加の確認に関する。本発明は、細胞間融合を調節するためのSK4インヒビターまたはアクチベーターの使用を含む。すなわち、SK4チャネルの発現、活性または機能の調節を介して細胞間融合を調節するための組成物および方法を提供する。このように、それぞれ細胞間融合を減少させる(すなわち、阻害する)か、または増加させるために、SK4チャネルの発現、活性または機能を、低下させる(すなわち、阻害する)か、または上昇させることができる。マクロファージが関与する細胞間融合の調節が特に対象となる。
【0013】
例えば、マクロファージなどの細胞の融合は、骨の発生、再形成および修復に関与する多核破骨細胞の形成を導くことができる。破骨細胞活性の機能不全は、骨粗鬆症および関節リウマチなどの骨疾患の原因になりえる。同様に、マクロファージの融合は、病原体または移植物などの異物に応答して形成される多核巨細胞の形成を導く場合がある。したがって、本発明は、マクロファージ融合におけるSK4チャネルの役割に注目する。
【0014】
いくつかの態様では、本発明は、細胞間融合、特にマクロファージが関与する細胞間融合を阻害するための方法を提供する。このような態様では、SK4チャネルの発現、活性、または機能、ひいては細胞間融合は、例えば、対象細胞と有効量のSK4チャネルインヒビターとを接触させることにより減少させる(すなわち、阻害する)ことが可能である。適切な対照と比較したとき、SK4チャネルの発現、活性または機能は、対象細胞中において、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%を含むが、これらに限定されない統計的に有意な量減少させうる。
【0015】
他の態様では、細胞間融合を増加させる、例えば、マクロファージ細胞融合を増加させることが所望である場合もある。したがって、例えば、マクロファージ細胞融合の増加および多核破骨細胞の形成は、異常に増加した骨密度に対抗するか、または慢性感染症もしくは大理石骨病を治療するために所望である場合もある。このような態様では、マクロファージ細胞のSK4チャネルの発現、活性または機能は、例えば、マクロファージ細胞と、有効量のSK4チャネル発現、活性または機能のアクチベーターとを接触させることにより増加させることができる。細胞間融合の増加が所望の結果である場合、適切な対照と比較したとき、SK4チャネルの発現、活性または機能は、対象細胞中において、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、またはそれ以上を含むが、これらに限定されない統計的に有意な量増加させうる。
【0016】
本発明の組成物および方法は、破骨細胞および/または破骨細胞前駆体のSKチャネルの発現、活性または機能の調節を介して、破骨細胞分化および機能を調節することに用途が見出される。破骨細胞は、その石灰化されたマトリックスの除去により骨組織を可溶化する、同型の、特殊化、多核化されたマクロファージに由来する細胞である。マクロファージ細胞などの破骨細胞前駆体からの破骨細胞形成を調節することによって、破骨細胞形成、ひいては破骨細胞数および/または破骨細胞表面積を変化させて、破骨細胞機能全体を変化させることが可能である。破骨細胞の機能を調節して、例えば、これらの細胞の骨塩再吸収活性を変化させることが可能である。したがって、いくつかの態様では、本発明は、破骨細胞および/または破骨細胞前駆体と、有効量のSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターとを接触させることを含む、破骨細胞の分化および機能を調節するための方法を提供する。
【0017】
いくつかの態様では、破骨細胞の分化および/または機能は、SKチャネルインヒビターを使用して阻害される。したがって、所望の結果が破骨細胞分化および/または機能の低下である場合、マクロファージなどの破骨細胞前駆体のSK4チャネル発現、活性または機能を阻害して、マクロファージ細胞融合を減少させ、それによって、破骨細胞形成を減少させることができ(破骨細胞数および/または破骨細胞表面積の減少を含む)、これは破骨細胞の機能を全体的に低下させる。破骨細胞のSK4チャネル発現、活性または機能を阻害して、それによって、例えば、破骨細胞骨塩再吸収活性の低下を含む破骨細胞の機能を低下させることができる。適切な対照と比較したとき、SK4チャネルの発現、活性または機能は、破骨細胞および/または破骨細胞前駆体において、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%を含むが、これらに限定されない統計的に有意な量低下させうる。
【0018】
本発明の他の態様では、SKチャネルアクチベーターを使用して、破骨細胞分化および/または機能を向上させるための方法を提供する。したがって、例えば、破骨細胞分化および/または機能の向上は、異常に増加した骨密度に対抗するか、または慢性感染症もしくは大理石骨病を治療するために所望である場合もある。したがって、所望の結果が破骨細胞分化および/または機能の向上である場合、マクロファージなどの破骨細胞前駆体のSK4チャネル発現、活性または機能を向上させて、マクロファージ細胞融合を増加させ、それによって、破骨細胞形成を増加させることができ(破骨細胞数および/または破骨細胞表面積の増加を含む)、これは、例えば、破骨細胞骨塩再吸収活性の向上を含む、破骨細胞の機能を全体的に向上させる。破骨細胞のSK4チャネル発現、活性または機能を向上させて、それによって、例えば、破骨細胞骨塩再吸収活性の向上など、破骨細胞の機能を向上させることができる。適切な対照と比較したとき、SK4チャネルの発現、活性または機能は、破骨細胞および/または破骨細胞前駆体において、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、またはそれ以上を含むが、これらに限定されない統計的に有意な量増加する場合がある。
【0019】
細胞間融合の阻害
任意の特定の理論に縛られることを意図するものではないが、SK4チャネルインヒビターは、破骨細胞、巨細胞または転移癌細胞などの、活発に融合している細胞および/または新たに融合した多核細胞のSK4チャネル発現、SK4チャネル活性、あるいは、上流または下流のSK4チャネルエフェクターを調節する。そのため、SK4チャネルインヒビターを用いて細胞間融合を阻害するのための、より詳しくは、破骨細胞、巨細胞および転移癌細胞の形成につながる同型および異型融合を含むマクロファージ細胞融合を阻害するための組成物と方法について記載する。
【0020】
したがって、SK4チャネルインヒビターは、細胞間融合を阻害するためにインビボまたはインビトロで提供されうる。インビトロで提供した場合、SK4チャネルインヒビターを使用して、細胞間融合を阻害したり、または細胞間融合を調節する剤をスクリーニングしたりすることができる。インビボで提供した場合、SK4チャネルインヒビターを使用して、マクロファージに由来する多核細胞、特に破骨細胞、巨細胞または転移癌細胞が関係する様々な疾患または障害を予防および/または治療することができる。詳しくは、SK4チャネルインヒビターを使用して、骨再吸収/骨喪失を予防または低減したり、自己免疫または炎症性の疾患または障害を予防または治療したり、移植物または移植片拒絶反応を予防したり、あるいは癌転移を予防したりすることができる。
【0021】
本明細書で使用するとき、「中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウムチャネル(単数または複数)」または「SK4チャネル(単数または複数)」は、100pS未満、または約12pS〜約50pS(例えば、それぞれ、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれるChristopherson (1991) J. Membr. Biol. 119:75-83;およびTharp & Bowles (2009) Cardiovasc. Hematological Agents Med. Chem. 7:1-11を参照されたい)であるが、典型的には約30pS〜約40pSのコンダクタンスを有する、電圧非依存性で、内向き整流性のカリウムチャネルを意味する。SK4チャネルは、マイクロモル濃度以下の細胞内カルシウム濃度(約100nmol/L〜約300nmol/L)により活性化され、クロトリマゾール、TRAM−34およびICA−15451などのカリブドトキシンおよびトリアリールメタンによりブロックされるが、イベリオトキシン、アパミンまたはケトコナゾールによってはブロックされない。SK4チャネルは、中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウムチャネルタンパク質4、ガルド、fIK、hIK、mIK、IK、IK1、IKCa1、IKCA1、ImK、KCa4、KCA4、KCa3.1、KCNN4またはSK4チャネルのように当技術分野において様々に公知である。例えば、Cho et al. (2008) Expert Rev. Mol. Diagn. 8:179-187;およびReich et al. (2005) Eur. J. Immunol. 35:1027-1036を参照されたい;これらはそれぞれ、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。したがって、本発明の目的のために、用語「SK4チャネル」は、KCNN4およびSK4チャネルを含む、これらのチャネルが知られている様々な名称を包含することを意図する。
【0022】
マウス、ラットおよびヒトなど多くの種でSK4チャネルモノマーの核酸およびアミノ酸配列が公知である。例えば、Joiner et al. (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:11013-11018; Logsdon et al. (1997) J. Biol. Chem. 272:32723-32726; Neylon et al. (1999) Circ. Res. 85:E33-E43; Vandorpe et al. (1998) J. Biol. Chem. 273:21542-21553; Warth et al. (1999) Pflugers Arch. 438:437-444;ならびに米国特許第6,692,937号および同第6,894,147号を参照されたい;これらはそれぞれ、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる;また、配列番号1〜6も参照されたい。SK4チャネルモノマーは、6つの膜貫通領域(S1〜S6)、およびカリウム選択性アミノ酸配列GYGを含むS5とS6との間の1つの孔モチーフを有する。また、SK4チャネルモノマーは、孔モチーフ近傍にN結合型糖鎖付加部位を有する。
【0023】
SK4チャネルのN末端は小胞体保留シグナル(前記Tharp & Bowles (2009))を含み、C末端は、細胞内のカルシウムを感知するカルモデュリン結合ドメインを含む(Fanger et al. (1999) J. Biol. Chem. 274:5746-5754;およびJoiner et al. (2001) J. Biol. Chem. 276:37980-37985;これらはそれぞれ、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる)。また、C末端は、プロテインキナーゼA(PKA)、プロテインキナーゼC(PKC)およびプロテインキナーゼG(PKG)によるリン酸化のための多数のコンセンサス配列(Joiner et al.(1997),前記)に加えて、チロシンリン酸化のコンセンサス配列(RLLQEAWMY;配列番号7;Tharp & Bowles (2009)、前記)を含む。SK4チャネルモノマーは、ホモテトラマーを形成して、カリウムイオンの流出をレギュレーションする。
【0024】
SK4チャネルは、T細胞、B細胞、マクロファージ、小グリア細胞、赤血球、平滑筋細胞、内皮細胞および上皮細胞を含む多くの細胞型において発現するが、チャネルの発現のタイミングおよび役割はこれらの細胞において異なる場合がある。しかし、融合している細胞、または最近融合した細胞におけるSK4チャネルの発現および役割は、これまで報告されていない。
【0025】
本明細書で使用するとき、「マクロファージ(単数または複数)」は、先天性および後天性免疫に加えて組織ホメオスタシスにおいても機能するCD68+(ヒト)またはF4/80+(マウス)単核白血球を意味する。また、マクロファージはCD11b+である場合もある。形態学的には、マクロファージは、円形の核を有する大型細胞(約25μm〜50μm)のように見え、1〜2つの核小体、集合クロマチン、液胞を備えた豊富な細胞質、および多数のアズール顆粒を含む。マクロファージは、身体組織全体にわたって存在し、循環血液中の単球に由来する(すなわち、血液由来の単核白血球)。マクロファージには、食作用および抗原提示という2つの主な役割がある。
【0026】
食細胞として、マクロファージは、細胞残屑および病原体(例えば細菌、真菌、原生動物、ウイルスおよび酵母)を貪食し、次いで、消化し、そして、リンパ球および他の免疫細胞を刺激してこれらの病原体に応答する。抗原提示細胞として、マクロファージは、食菌した病原体の抗原を処理し、リンパ球および他の免疫細胞の表面上に提示する。また、マクロファージは、酵素、補体タンパク質、およびインターロイキン1および腫瘍壊死因子−αなどの制御因子を含む一連のモノカインを分泌する。さらに、マクロファージは、リンホカイン用レセプターを有し、前記レセプターは、病原体攻撃性および腫瘍破壊細胞へマクロファージを活性化させる。
【0027】
いくつかのマクロファージは、特定の器官または組織、特に病原体侵入または塵埃の蓄積が生じる可能性が高い領域に局在する(すなわち、定着する)。定着性マクロファージの機能は不均一であり、サイトカインおよび病原性産物などの微環境刺激に左右されると考えられる。定着性マクロファージの例を表1に列挙する。
【表1】
【0028】
マクロファージ(およびその単球前駆体)の同定、単離および培養に必須の方法および材料は、当技術分野において公知である。例えば、Alabraba et al. (2007) J. Immunol. Methods 326:139-144; Borgmann et al., "Isolation and HIV-1 infection of primary human microglia from fetal and adult tissue," 49-70 In: Methods in Molecular Biology (Zhu ed., Humana Press Inc. 2005); Buckley et al. (1985) J. Immunol. 134:2310-2315; Buckley et al., "Human osteoclast culture from peripheral blood monocytes," 55-68 In: Methods in Molecular Medicine (Picot ed., Humana Press Inc. 2nd ed. 2005); Cline (1994) Blood 84:2840-2853; Davies & Gordon, "Isolation and culture of human macrophages," 105-116 In: Basic Cell Culture Protocols (Helgason & Miller eds., Humana Press Inc. 3rd ed. 2005); Davies & Gordon, "Isolation and culture of murine macrophages," 91-103 In: Basic Cell Culture Protocols (Helgason & Miller eds., Humana Press Inc. 3rd ed. 2005); Fels & Cohn (1986) J. Applied Physiology 60:353-369; Gordon & Taylor (2005) Nat. Rev. Immunol. 5:953-964; Havenith et al. (1998) Glia 22:348-359; Rogler et al. (1998) Clin. Exp. Immunol. 112:205-215; Schuenke & Gelman (2003) J. Neurovirol. 9:346-357; St-Laurent et al. (2009) J. Asthma 46:1-8; Taylor et al. (2005) Ann. Rev. Immunol. 23:901-944;およびWilson & Stewart, "Glomerular epithelial and mesangial cell culture and characterization," 269-282 In: Methods in Molecular Medicine (Picot ed., Humana Press Inc. 2nd ed. 2005)を参照されたい。これらはそれぞれ、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0029】
上述のように、マクロファージは自身(すなわち同型融合)または他の細胞(すなわち異型融合)と融合することにより多核細胞を形成することができる。前記Vignery (2005)を参照されたい。マクロファージが融合する機序は完全には理解されていないが、SK4チャネルのアップレギュレーションおよび活性が関与しており、そしてこのようなアップレギュレーションまたは活性をブロックすると細胞間融合が阻害されることを以下に示す。本明細書において特に対象となるマクロファージに由来する多核細胞は、破骨細胞、巨細胞および転移癌細胞である。
【0030】
本明細書で使用するとき、「同型融合」は、マクロファージなどの同種の少なくとも2個の細胞間の細胞間融合を意味する。マクロファージの同型融合の例は、巨細胞、筋芽細胞、破骨細胞および合胞体栄養細胞を含むが、これらに限定されない。対照的に、「異型融合」は、少なくとも1つの細胞がマクロファージである異なる系統の少なくとも2個の細胞間の細胞間融合を意味する。マクロファージとの異型融合の例は、転移癌細胞を含むが、これらに限定されない。同上を参照されたい。
【0031】
本明細書で使用するとき、「破骨細胞(単数または複数)」は、その石灰化されたマトリックスの除去により骨組織を可溶化する、同型の、特殊化、多核化されたマクロファージに由来する細胞を意味する。このような細胞はCD200、CTレセプターまたはDC−STAMPを発現することができる。形態学的には、破骨細胞は、ほぼ同じ大きさである多数の別々の核(約2〜約50個)を含む、大きく、不規則に形作られた細胞である。また、破骨細胞は、ビトロネクチンおよびカルシトニン受容体の発現に加えて、酒石酸塩耐性の酸性ホスファターゼ(TRAP)およびカテプシンKの高発現を特徴とする。破骨細胞は、典型的に骨組織に存在し、少なくともNFκβアクチベーター(RANK)リガンド(RANKL)およびマクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)によって刺激されたとき、マクロファージから形成される。
【0032】
本明細書で使用するとき、「巨細胞(単数または複数)」は、組織ホメオスタシスにおいて機能する同型の、特殊化、多核化されたマクロファージに由来する細胞を意味する。このような細胞はCD200、またはDC−STAMPを発現することができる。形態学的に、巨細胞は、多数の別々の核を有する、大きく、不規則に形作られた細胞であるという点で破骨細胞に非常に類似している。巨細胞は、マクロファージの防御能力を増強し、大きな異物、特に医療用移植物および、病原体への慢性炎症に加えて、肉芽腫性疾患に応答してマクロファージから形成される。インターロイキン−4またはインターロイキン−13は、巨細胞形成に必要であると考えられる。
【0033】
本明細書で使用するとき、「転移癌細胞(単数または複数)」は、異型の、多核化されたマクロファージおよび癌に由来する細胞を意味する。典型的に、前記細胞は、マクロファージの運動能力および癌細胞の分裂能力を有するハイブリッドである。そのため、転移癌細胞は、腫瘍形成の原発部位から離れて遊走し、身体の他の領域に定着することができる。
【0034】
本明細書で使用するとき、「マクロファージに由来する多核細胞(単数または複数)」は、マクロファージの同型または異型融合に起因する少なくとも2つ以上の核を有する細胞を意味する。マクロファージに由来する多核細胞の例は、乳癌細胞、多発性骨髄腫細胞、破骨細胞、巨細胞、および特定の転移癌細胞を含むが、これらに限定されない。
【0035】
本明細書に記載された組成物および方法は、マクロファージに由来する多核細胞、特に破骨細胞、巨細胞および転移癌細胞が関与する様々な疾患または障害の治療および/または予防に用途が見出される。具体的には、SK4チャネルインヒビターを使用して、骨再吸収/骨喪失を予防または低減したり、自己免疫または炎症性の疾患または障害を予防または治療したり、移植物または移植片拒絶反応を予防したり、あるいは癌転移を予防したりすることができる。
【0036】
したがって、本発明のいくつかの態様では、前記組成物および方法は、骨喪失および骨喪失に関連する疾患の治療または予防において使用するための組成物および方法である。骨喪失疾患に関して、異常な破骨細胞形成が生じる場合があり、それによって過度に硬骨が再吸収され、骨ミネラル密度(BMD)が低下する。本発明の組成物および方法を用いて予防または治療することができる骨喪失疾患の例は、骨粗鬆症、骨軟化、パジェット病、歯槽膿漏症、他の病理学的条件(すなわちアルコール中毒、セリアック病、慢性腎臓病、慢性肝炎、癲癇、胃腸疾患、上皮小体機能亢進症、甲状腺機能亢進症、性腺機能低下症、白血病、リンパ腫、関節リウマチ、壊血病、ビタミンD欠乏)に付随して起こる骨喪失などを含むが、これらに限定されない。
【0037】
本発明の他の態様では、前記組成物および方法は、特に巨細胞形成が関与している自己免疫疾患の治療または予防において使用するための組成物および方法である。自己免疫疾患に関して、巨細胞形成は、免疫系が自身の構成要素を自己と認識しないことに応答して生じる場合があり、それにより細胞および組織の破壊が生じる。異常な免疫反応は、特定の器官に限定される(すなわち、局在する;例えば甲状腺炎において)場合もあり、異なる場所の特定の組織(例えば、肺および腎臓の両方の基底膜を冒す場合があるグッドパスチャー病)に関与する場合もあり、全身性である場合もある。したがって、自己免疫疾患における巨細胞形成を予防するか、調節するか、または阻害する(すなわち低減)ことにより、細胞および組織損傷を寛解させることができる。
【0038】
本発明の組成物および方法を用いて予防または治療することができる自己免疫疾患の例は、急性散在性脳脊髄膜炎(ADEM)、アジソン病、脱毛、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性内耳疾患、自己免疫溶血性貧血、自己免疫性肝炎、シャガス病、慢性閉塞性肺疾患、セリアック病、クローン病、皮膚筋炎、1型糖尿病、子宮内膜症、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン−バレー症候群(GBS)、橋本病、川崎病、特発性血小板減少性紫斑病、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症(MS)、重症筋無力症、乾癬、原発性胆汁性肝硬変、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、側頭動脈炎(「巨細胞性動脈炎」としても知られている)、潰瘍性大腸炎、脈管炎などを含むが、これらに限定されない。
【0039】
本発明のさらに他の態様では、前記組成物および方法は、特に巨細胞形成が関与している炎症性疾患の治療または予防において使用するための組成物および方法である。炎症性疾患に関して、身体の免疫系が病原体、損傷細胞または刺激原などの刺激に対して過剰反応したとき、巨細胞形成が生じる場合がある。過剰反応性免疫反応は、炎症を引き起こし、健常細胞および組織を破壊する、多核巨細胞を含む炎症細胞の残存により特徴付けることができる。したがって、炎症性疾患における巨細胞形成を阻止または阻害することにより、炎症、ならびに細胞破壊および組織損傷を寛解させることができる。
【0040】
本明細書に記載される組成物および方法を用いて予防または治療することができる炎症性疾患の例は、ざ瘡、喘息、関節硬化症、クロム酸閉塞性肺疾患、大腸炎、皮膚炎、糸球体腎炎、炎症性腸感染、湿疹、ケロイド、狼瘡、腎炎、変形性関節症、骨盤炎症性疾患、乾癬、関節リウマチ、腱炎などを含むが、これらに限定されない。明瞭にするために述べると、上記のいくつかの自己免疫疾患は、自己免疫および炎症性疾患の両方として分類しうる。
【0041】
本発明の他の態様では、前記組成物および方法は移植物および移植片拒絶反応の予防において使用するための組成物および方法である。巨細胞形成は、移植物または移植細胞、器官または組織に応答して生じる場合がある。レシピエントの免疫系は、移植物(すなわち、ペースメーカーなどの医療機器)または移植細胞、器官もしくは組織を異物として認識し、拒絶する場合があり、前記拒絶は、細菌およびウイルスなどの起炎菌を破壊するかのように、移植物を攻撃して移植物の分解または機能不全を引き起すか、または移植細胞/器官/組織を攻撃する、巨細胞を含む炎症細胞の残存を特徴とする。したがって、移植物または移植片の部位における巨細胞形成を予防することにより、拒絶反応を予防または寛解させることができる。
【0042】
本明細書で使用するとき、「移植物拒絶反応」とは、埋め込まれた医療機器が移植レシピエントの身体に受け入れられない免疫状態を意味する。対象移植物は、蝸牛装置、人工膝関節、人工股関節、ボーンセメント、乳房移植物、心臓移植物(例えば人工弁、細動除去器、左室補助装置、ペースメーカー)、皮膚移植物、胃バンドまたはバルーン、留置カテーテル、インシュリンポンプ、子宮内器具、神経刺激物、眼の移植物、整形外科的移植物、陰茎勃起性人工器官、ステント、尿道スリング、音声人工器官などを含むが、これらに限定されない。前述のものを考慮して、本明細書に記載された組成物で移植可能な装置をコーティングするか、または前記組成物に含浸して、拒絶反応の可能性を阻止または減少させうることも考えられる。
【0043】
本明細書で使用するとき、「移植片拒絶反応」は、移植された細胞、組織または器官が移植レシピエントの身体によって受け入れられない免疫状態を意味する。移植片拒絶反応においては、レシピエントの免疫系は、移植された器官/組織を破壊しようとしてそれを異物として攻撃する。
【0044】
移植片拒絶反応の例は、硬骨および骨髄移植片、角膜移植片、心臓および心臓弁移植片、腸移植片、腎臓移植片、肢移植片、肝臓移植片、肺移植片、膵臓移植片、血小板輸血、赤血球輸血、皮膚移植片、幹細胞移植片、移植腱、血管移植片、白血球輸血などを含むが、これらに限定されない。
【0045】
本発明の他の態様では、前記組成物および方法は、転移細胞形成および癌転移の予防において使用するための組成物および方法である。転移に関して、転移細胞は、マクロファージと癌細胞との融合から形成され、次に、身体における原巣(すなわち一次腫瘍)から身体の他の部分へ広がり得る。事実上、すべての癌で転移が発生する可能性があり、転移は、3つの方法で広がる場合がある:(1)腫瘍から周囲の組織への局所伸展を通して、(2)血流を通じて遠位部位へ、または(3)リンパ系を通じて近傍または遠位リンパ節に。したがって、転移癌細胞の形成を妨げることにより、有益に癌転移を予防することができる。
【0046】
本発明の組成物および方法を用いて転移を予防することができる癌の例は、骨癌、脳癌、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、腸癌、肝臓癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、胃癌、喉頭癌、子宮癌などを含むが、これらに限定されない。
【0047】
本発明は、マクロファージに由来する多核細胞によって媒介される疾患または障害を治療するための、有効量のSK4チャネルインヒビターおよび場合により治療剤を有する組成物を含む。1つの態様では、有効量のSK4チャネルインヒビターおよび治療剤を含む組成物が提供される。他の態様では、治療的に有効な量のSK4インヒビターおよび治療剤に加えて薬学的に許容しうる担体を含む薬学的組成物が提供される。
【0048】
本明細書で使用するとき、「SK4チャネルインヒビター」または「SK4チャネル阻害剤」は、SK4チャネル発現(すなわち、翻訳または転写)、SK4チャネル活性(すなわち、コンダクタンス)、または上流および下流のSK4チャネルエフェクター(すなわち、プロモーターアクチベーター、インデューサー、サプレッサー、リプレッサー、キナーゼなど)に影響を与える剤を意味する。いくつかの態様では、SK4チャネルインヒビターは、阻害性核酸配列、抗SK4チャネル抗体、またはSK4チャネルに結合して、それらの機能(すなわち脱分極化または再分極させる能力)を調節するよう設計された他のタンパク質でありうる。あるいは、SK4チャネルインヒビターは、SK4チャネルに特異的に結合して、それらの活性または機能をブロックする低分子でありうる。
【0049】
SK4チャネルインヒビターの厳密な性質を問わず、SK4チャネルインヒビターは、SK4チャネルの発現、活性または機能のうちの一つ以上を減少させる。発現、活性または機能は、適切な対照と比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%。96%、97%、98%、99%または100%を含むが、これらに限定されない統計的に有意な量低下する。好ましくは、SK4チャネルの発現、活性または機能は、少なくとも約10%以上低下する。逆に、SK4チャネルインヒビターは、SK4チャネル発現、活性または機能を統計的に増加させないはずである。
【0050】
SK4チャネルの発現に影響を与える剤は、SK4チャネルモノマーの発現を阻害する阻害性核酸分子を含みうる。阻害性核酸分子は、SK4チャネルモノマーをコードするメッセンジャーRNAの翻訳を妨げる(例えば、センスサプレッション/コサプレッション;アンチセンスサプレッション;低分子干渉RNA、マイクロRNA、又は低分子ヘアピン型RNAを介した二本鎖RNA(dsRNA)干渉;アンプリコン介在性干渉;およびリボザイム)ことにより、直接モノマーの発現を阻害することも、またはSK4チャネルモノマーをコードする遺伝子または核酸配列の転写または翻訳を阻害するポリペプチドをコードすることにより、間接的にモノマーの発現を阻害することもできる。哺乳動物細胞における遺伝子産物の発現を阻害したり、または発現しないようにする方法は、当技術分野において周知であり、本発明において任意のこのような方法を使用して、SK4チャネルモノマーの発現を阻害することができる。
【0051】
センスサプレッション/コサプレッションでは、発現カセットは、「センス」配位でSK4チャネルモノマーをコードするネイティブな遺伝子または核酸(例えば、配列番号1、3、もしくは5を含む遺伝子もしくは核酸配列、または配列番号1、3、もしくは5と実質的に同一の配列)に対応するコサプレッション核酸分子を発現するよう設計してもよい。コサプレッション核酸分子は、SK4チャネルモノマーをコードする遺伝子または核酸のすべてまたは一部、SK4チャネルモノマーをコードする遺伝子または核酸の5’および/または3’非翻訳領域のすべてまたは部分、あるいはSK4チャネルモノマーをコードする遺伝子または核酸のコード配列および非翻訳領域のすべてまたは一部に相当し得る。一般的に、コサプレッション核酸分子は、少なくとも約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、550、600、650、700、750、800、850、900、850、または1000個のヌクレオチドを含むことができるか、あるいはSK4チャネルモノマーの完全長核酸配列以下の任意の大きさでありえる。コサプレッション核酸分子がSK4チャネルモノマーのコード領域のすべてまたは一部を含む場合、機能性SK4チャネルモノマーがコサプレッション核酸分子から転写されないように、開始コドンを有しないよう発現カセットを設計してもよい。コサプレッション核酸分子の過剰発現は、SK4チャネルモノマーをコードする遺伝子または核酸の発現を低下させることができる。哺乳類のイオンチャネルを阻害するためにコサプレッションを使用する方法は、当技術分野において周知である。例えば、Bingham (1997) Cell 90:385-387;および国際公開公報第1999/063081号を参照されたい;これらはそれぞれ、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0052】
アンチセンスサプレッションでは、発現カセットは、SK4チャネルモノマーをコードするネイティブな遺伝子または核酸のすべてまたは一部に相補的なアンチセンス核酸分子を発現するよう設計してもよい。アンチセンス核酸分子は、SK4チャネルモノマーをコードする遺伝子または核酸の相補体のすべてまたは一部、SK4チャネルモノマーをコードする遺伝子または核酸の5’および/または3’非翻訳領域の相補体のすべてまたは一部、あるいはSK4チャネルモノマーをコードする遺伝子または核酸配列のコード配列および非翻訳領域の両方の相補体のすべてまたは一部に相当し得る。また、アンチセンス核酸分子は、SK4チャネルモノマーをコードする遺伝子または核酸に対して完全に相補的であってよく(すなわち、ターゲット核酸配列の相補体と100%同一)、または部分的に相補的であってもよい(すなわち、ターゲット核酸配列の相補体と100%未満同一)。アンチセンス核酸分子の発現は、SK4チャネルモノマーをコードする遺伝子または核酸の発現を低下させることができる。
【0053】
用いられるアンチセンス核酸分子の種類にかかわらず、少なくとも25個のヌクレオチド、50、100、200、300、400、450、500、550個、またはそれ以上のヌクレオチドの配列を使用することができる。アンチセンス核酸分子を使用して、哺乳類のイオンチャネルの発現を阻害するための方法は、当技術分野において周知である。例えば、Eigel & Hadley (2001) Am. J. Physiol. Heart Circ. Physiol. 281:H2184-H2190; Meiri et al.(1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:4430-4434; Sasamura et al. (2002) Jpn. J. Pharmacol. 90:164-172; Si et al. (2006) Brit. J. Pharmacol. 148:909-917; Tao et al. (2008) Am. J. Physiol. Cell Physiol. 295:C1409-C1416; Tharp et al. (2006) Am. J. Physiol. Heart Circ. Physiol. 291:H2493-H2503; Wang et al. (2007) Oncogene 26:5107-5114;およびWaterhouse & Helliwell (2003) Nat. Rev. Genet. 4:29-38を参照されたい;これらはそれぞれ、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0054】
アンチセンス配列の3’およびポリアデニル化シグナルの5’の位置における発現カセットにポリ−dT領域を含めることにより、アンチセンスサプレッション効率を高めることができる。米国特許出願公開第2002/0048814号を参照されたい;これは、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0055】
dsRNA干渉では、コサプレッションについて上に記載されたようなセンス核酸分子、および前記センス核酸配列に対して完全にまたは部分的に相補的なアンチセンス核酸分子は、同じ細胞中で発現して、SK4チャネルモノマーをコードするネイティブな遺伝子または核酸の発現を阻害する。SK4チャネルモノマーをコードする核酸のセンスおよびアンチセンス配列の両方を含むように発現カセットを設計することにより、センスおよびアンチセンス核酸の分子を発現させることができる。あるいは、センスおよびアンチセンスの核酸分子に対して別々の発現カセットを使用してもよい。
【0056】
dsRNA干渉に用いられる核酸分子の種類にかかわらず、少なくとも25個のヌクレオチド、50、100、200、300、400、450、500、550個、またはそれ以上のヌクレオチドの配列を使用することができる。dsRNA干渉を使用して、哺乳類のイオンチャネルの発現を阻害するための方法は、当技術分野において周知である。例えば、Cotella et al.(2005) Biochem. Biophys. Res. Commun. 330:555-560;およびPalmer et al. (2006) Cell Biochem. Biophys. 46:175-191を参照されたい;これらはそれぞれ、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0057】
アンプリコン介在性干渉では、SK4チャネルモノマーをコードするネイティブな遺伝子または核酸のすべてまたは一部を含むウイルスに由来する配列を含む核酸配列を有するアンプリコン発現コンストラクトを設計してもよい。アンプリコン発現カセットの転写産物中に存在するウイルス配列は、転写産物がそれ自身の複製を導くことを可能にする。アンプリコンによって生成された転写物は、SK4チャネルをコードする遺伝子または核酸配列に対してセンスであってもアンチセンスであってもよい。
【0058】
用いられる核酸分子の種類にかかわらず、少なくとも25個のヌクレオチド、50、100、200、300、400、450、500、550個、またはそれ以上のヌクレオチドの配列を使用することができる。アンプリコンを使用して、哺乳類のイオンチャネルの発現を阻害または減弱する方法は、当技術分野において周知である。例えば、White et al. (2002) J. Neurophysiol. 87:2149-2157を参照されたい;これは、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0059】
リボザイムでは、発現コンストラクトは、SK4チャネルをコードするネイティブな遺伝子または核酸配列によって発現されたmRNAに対する触媒活性を有する核酸分子を発現するよう設計してもよい。触媒性核酸分子は、SK4チャネルをコードするmRNAまたは核酸の分解を引き起こして、SK4チャネルの発現を減少させる。
【0060】
用いられる触媒性核酸分子の種類にかかわらず、少なくとも25個のヌクレオチド、50、100、200、300、400、450、500、550個、またはそれ以上のヌクレオチドの配列を使用することができる。リボザイムを使用して、哺乳類のイオンチャネルの発現を阻害または減弱する方法は、当技術分野において周知である。例えば、Liu et al. (2000) J. Biol. Chem. 275:8711-8718;および米国特許第4,987,071号を参照されたい;これらはそれぞれ、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0061】
マイクロRNA(miRNA)干渉では、miRNAは、転写されるが、SK4チャネルモノマーに翻訳されないように(すなわち、非コードRNA)、SK4チャネルモノマーをコードするネイティブな遺伝子または核酸配列に相補的な核酸分子を発現するように発現コンストラクトを設計してもよい。一次転写産物(pri−miRNA)はそれぞれ、プレmiRNAと呼ばれる短いステムループ構造に、そして最終的に機能的なmiRNAにプロセシングされる。miRNAは、約22〜約23個のリボヌクレオチドからなる。成熟miRNAは、SK4チャネルモノマーをコードする遺伝子または核酸分子の発現の阻害において非常に効率的である。成熟miRNA分子は、SK4チャネルモノマーをコードする一つ以上の核酸分子に対して部分的に相補的であるので、SK4チャネルモノマーをコードする核酸分子の翻訳を阻害するか、または時に前記核酸分子の切断を促進することにより、遺伝子発現をダウンレギュレーションする。miRNA分子を使用して、哺乳類のイオンチャネルの発現を阻害する方法は、当技術分野において周知である。例えば、Lee et al. (1993) Cell 75:843-854;およびXiao et al. (2007) J. Biol. Chem. 282:12363-12367を参照されたい;これらはそれぞれ、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0062】
低分子ヘアピン型RNA(shRNA)干渉では、RNA干渉を介して遺伝子発現をサイレンシングするために使用することができる、密着したヘアピンカーブを作製する、SK4チャネルモノマーをコードするネイティブな遺伝子または核酸に相補的な核酸分子を発現するように発現カセットを設計してもよい。shRNA干渉は、また、発現カセットが、ヘアピン構造を有するイントロンがスプライシングされたRNAをコードする核酸を発現するように設計されてもよい、イントロン含有ヘアピンRNA(ihpRNA)干渉であってもよい。
【0063】
用いられるshRNA分子の種類にかかわらず、少なくとも25個のヌクレオチド、50、100、200、300、400、450、500、550個、またはそれ以上のヌクレオチドの配列を使用することができる。shRNA分子を使用して、哺乳類のイオンチャネルをコードする遺伝子の発現を阻害する方法は、当技術分野において周知である。例えば、Weaver et al. (2006) Glia 54:223-233を参照されたい;これは、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0064】
また、センス配列およびアンチセンス配列がSK4チャネルをコードする核酸配列に相当しないように、shRNA干渉用の発現カセットを設計してもよい。代わりに、センスおよびアンチセンス配列は、SK4チャネルモノマーをコードする核酸配列のすべてまたは一部に相当するヌクレオチド配列を含むループ配列に隣接する。したがって、ループ領域は、RNA干渉の特異性を決定する。例えば、国際公開公報第02/00904号を参照されたい;これは、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0065】
さらに、ヘアピンの逆方向反復配列が、サイレンシングされるSK4チャネルモノマーをコードする遺伝子または核酸のプロモーター領域と配列同一性を共有している場合、shRNA分子の使用を通じて、転写レベルでの遺伝子サイレンシング(TGS)を行うことができる。同種のプロモーター領域と相互作用することができる短いRNAへのshRNAのプロセシングは、分解またはメチル化をトリガーして、サイレンシングを生じさせる(Aufsatz et al. (2002) Proc. Natl. Acad. Sci. 99:16499-16506;およびMette et al. (2000) EMBO J. 19:5194-5201;を参照されたい;これらは、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0066】
SK4チャネルの活性または機能に影響を与える更なる剤は、SK4チャネルの活性または機能を調節するペプチド、タンパク質または低分子を含んでよい。前記ペプチド、タンパク質または低分子は、SK4チャネルのコンダクタンス、または、例えば、SK4チャネルをレギュレーションするカルモジュリン(Fanger et al. (1999) J. Biol. Chem. 274:5746-575を参照されたい;これは、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる)またはキナーゼ(Gerlach et al. (2000) J. Biol. Chem. 275:585-598を参照されたい;これは、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる)の活性を阻害することができる。あるいは、前記ペプチド、タンパク質または低分子は、SK4チャネルの活性化によってそれ自体がレギュレーションされるアクセサリ分子の活性または機能を調節することができる。
【0067】
阻害性ペプチドまたはタンパク質では、SK4チャネルモノマーまたはSK4チャネルホモテトラマーに結合する抗体であってもよい。本明細書で使用するとき、「抗体(単数または複数)」は、特定の抗原または前記抗原のエピトープと免疫学的に反応性である免疫グロブリン分子を意味する。また、前記用語は、キメラ抗体(例えばヒト化マウス抗体)およびヘテロコンジュゲート抗体(例えば二重特異性抗体)などの遺伝子的に改変された形態を含む。前記用語は、さらに、二価または二重特異性分子、ダイアボディ、トリアボディおよびテトラボディを含む。二価および二重特異性分子は、例えばKostelny et al. (1992) J. Immunol. 148:1547-1553; Pack & Pluckthun (1992) Biochemistry 31:1579-1584; Zhu et al. (1997) Protein Sci. 6:781-788; Hu et al. (1996) Cancer Res. 56:3055-3061; Adams et al. (1993) Cancer Res. 53:4026-4034;およびMcCartney et al. (1995)Protein Eng. 8:301-314に記載されており;これらはそれぞれ、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0068】
抗体は、また、抗原結合能を備えたフラグメント(例えば、Fab’、F(ab’)2、Fab、FvおよびrIgG)を含む抗体の抗原結合形態を含む。パパインおよびペプシンなどのタンパク質分解酵素により抗体を処理して、これらの抗体のフラグメント、特に抗SK4チャネル抗体のフラグメントを作成する。抗体は、また組換え単鎖Fvフラグメント(scFv)を指す。好ましくは、本明細書に記載される方法を実施するために使用される抗体は、107M−1以上の親和性(会合定数)でそのターゲットタンパク質に結合する。
【0069】
抗体は、モノクローナルまたはポリクローナル抗体であってよく、任意の抗体クラス(すなわちIgG、IgM、IgAなど)に属していてよい。モノクローナル抗体(mAb)を作製する方法は、当技術分野において周知である。例えば、当業者は、リンパ球を単離し、骨髄細胞と融合させて、ハイブリドーマを生成することにより、モノクローナル抗体を作製することができる。例えば、Milstein, In: Handbook of Experimental Immunology (Blackwell Scientific Publishing 1986);およびGoding, In: Monoclonal Antibodies: Principles and Practice (Academic Press 1983)を参照されたい;これらはそれぞれ、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。次いで、クローニングされたハイブリドーマを、例えば、抗SK4チャネルモノマー、またはホモテトラマー抗体(すなわちSK4チャネルモノマー、ホモテトラマー、またはそれらのフラグメントに優先的に結合する抗体)の産生についてスクリーニングする。したがって、このような産生がインサイチュで行われようと行われまいと、モノクローナル抗体は、抗体が生成される方法によって限定されない。
【0070】
あるいは、抗体は、細菌、酵母、植物、昆虫細胞株または哺乳動物細胞株における発現を含むが、これらに限定されない組換えDNA技術によって産生することができる。例えば、当業者は、(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)従来の手順を使用して、モノクローナル抗体をコードする核酸配列を容易に単離および配列決定することができる。ハイブリドーマ細胞は、核酸配列用のDNAの好適な供給源として機能し得る。一旦単離したら、核酸配列を発現ベクターに入れ、次に、前記発現ベクターを、トランスフェクションされなければ抗体を産生しない大腸菌(E.coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ミエローマ細胞または植物細胞などのホスト細胞へトランスフェクションして、組換えホスト細胞中でモノクローナル抗体を合成させることができる。抗体をコードするDNAの細菌における組み換え発現についての総論は、以下を含む:Skerra (1993) Curr. Opin. Immunol. 5:256-262;およびPhickthun (1992) Immunol. Rev. 130:151-188;これらはそれぞれ、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0071】
あるいは、抗体は、CHO細胞株などの細胞株中で産生することができる。例えば、米国特許第5,545,403号;同第5,545,405号、および同第5,998,144号を参照されたい;これらはそれぞれ、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。簡潔に述べると、当業者は、それぞれ軽鎖および重鎖を発現することができるベクターで細胞株をトランスフェクションすることができる。別々のベクター上の2つのタンパク鎖をトランスフェクションすることによって、キメラ抗体を産生することができる。CHO細胞を使用する別の利点は、抗体が正確にグリコシル化されることである。
【0072】
同様に、ポリクローナル抗体を作製する方法は、当技術分野において周知である。例えば、当業者は、例えば、ウサギなどの適切なホスト動物を免疫原(例えばSK4チャネルモノマー、SK4チャネルホモテトラマーまたはそれらのフラグメント)で免疫し、適切に希釈された血清を用いるか、または血清から免疫グロブリンを単離することにより、ポリクローナル抗体を作製することができる。したがって、前記動物に免疫原を接種し、続いて前記動物から血液を除去し、IgGフラクションを精製することができる。他の適切なホスト動物は、ニワトリ、ヤギ、ヒツジ、モルモット、ラットまたはマウスを含む。所望であれば、免疫原は、例えばそのアミノ酸残基のうちの1つの側鎖を介して、免疫原が適切な担体にカップリングしているコンジュゲートとして投与してもよい。担体分子は、典型的に生理学的に許容しうる担体である。得られた抗体は、最高約70%、80%、90%、95%、99%または100%の純度に精製することができる。
【0073】
抗SK4チャネルモノマーまたはホモテトラマー抗体を作製する方法は、当技術分野において公知である。例えば、Boettger et al. (2002) Brain 125:252-263; Furness et al. (2004) Autonom. Neurosci. 112:93-97; Ghanshani et al. (2000) J. Biol. Chem. 275:37137-37149;およびHoffman et al. (2003) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:7366-7371を参照されたい;これらはそれぞれ、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。同様に、市販されている抗SK4チャネル抗体は、本明細書における使用に適切であり、例えば、それぞれAlomone Labs (Jerusalem, Israel);Millipore (Billerica, MA)、Sigma Aldrich (St. Louis, MO)、およびSanta Cruz Biotechnology (Santa Cruz, CA)から入手することができる。また、Sandow et al. (2006) J. Anat. 209:689-698;およびWulff et al. (2001) J. Biol. Chem. 276:32040-32045を参照されたい。
【0074】
あるいは、SK4チャネルインヒビターは、SK4チャネルモノマーまたはホモテトラマーと結合するように設計されたタンパク質であってもよい。本明細書で使用するとき、「SK4チャネルモノマーまたはホモテトラマーと結合するように設計されたタンパク質」は、上述のように、SK4チャネルモノマーまたはホモテトラマーと結合するように設計されたタンパク質であって、この結合によりSK4チャネルの発現、活性または機能が阻害される(すなわち、低下する)タンパク質を意味する。阻害性ペプチドは、当技術分野において周知である。例えば、Wulff et al. (2007) Curr. Med. Chem. 14:1437-1457を参照されたい;これは、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0075】
あるいは、SK4チャネルインヒビターは、SK4チャネルモノマーと結合して、前記モノマーがホモテトラマーの一部を形成するのを妨げるか、またはホモテトラマーと結合して、その活性または機能を妨げる低分子であってもよい。本明細書で使用するとき、「SK4チャネルモノマーと結合する低分子」、または「SK4ホモテトラマーと結合する低分子」は、SK4チャネルモノマーまたはホモテトラマーの発現、活性または機能を阻害する医薬品において一般的に用いられる分子に匹敵する大きさの分子を意味する。好ましい低分子は、約5000Da以下、好ましくは約2000Da以下、最も好ましくは約1000Da以下の大きさで変動してもよい。
【0076】
本明細書において使用するための低分子の非限定的な例は、化学物質(化合物)、無機分子、有機分子、無機成分を含有する有機分子、放射性原子を含む分子、合成分子、およびペプチド模倣物(例えば、α−ヘリックスまたはβ−シートなどの、最も一般的なペプチドモチーフを模倣する短いペプチドフラグメント)を含む。SK4チャネルインヒビターとして、低分子は、巨大分子よりも細胞に対する浸透性が高く、分解されにくく、不所望の免疫反応を誘発しにくい場合もある。
【0077】
低分子については、SK4チャネルモノマーまたはホモテトラマーに結合することができる化合物であってもよい。本明細書において有用な低分子の1つのクラスは、トリアリールメタンである。トリアリールメタンは、以下:
【化1】
[式中、X、Y、およびZは、同じであっても異なってもよく、CH2、O、S、NR1、N=CH、CH=N、およびR2−C=C−R3から、独立に選択してよく;
Rは、H、ハロゲン、トリハロアルキル、ヒドロキシ、アシルオキシ、アルコキシ、アルケニルオキシ、チオ、アルキルチオ、ニトロ、シアノ、ウレイド、アシル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、N−(R4)(R5)、ならびに炭素数1〜20の飽和または不飽和、キラルまたはアキラル、環式または非環式、直鎖または分岐鎖のヒドロカルビル基であってよく、場合によりヒドロキシ、ハロゲン、トリハロアルキル、アルキルチオ、アルコキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、オキソアルキル、シアノおよびN(R4)(R5)基で置換されており;
R1は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アシルおよびアロイルであってよく、場合によりヒドロキシ、アミノ、置換アミノ、シアノ、アルコキシ、ハロゲン、トリハロアルキル、ニトロ、チオ、アルキルチオ、カルボキシおよびアルコキシカルボニル基で置換されており;
R2およびR3は、Hであってよく、または結合して飽和もしくは不飽和の炭素環もしくは複素環を形成してよく、場合により一つ以上のR基で置換されており;
R4およびR5は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルおよびアシルであってよく、あるいは、R4およびR5は、結合して環を形成してよく、ここで炭素は場合によりO、SまたはN−R6−から選択されるヘテロ原子により置換されてもよく;
R6は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシアルキルまたはカルボキシアルキルであってよく;nは1〜5であってよく;mは、1または2であってもよいが、但しmが1でありうる場合、QはOH、CN、カルボキシアルキル,N−(R7)(R8)(式中、R7およびR8は、H、低級アルキル(1−4C)、シクロアルキル、アリール、アシル、アミドであってもよいか、またはR7およびR8が結合して飽和もしくは不飽和の複素環を形成してよく、そして場合によりN、OおよびSなどの3個以下の追加のヘテロ原子で置換されている);あるいは−NH−複素環であってよく、ここで複素環は、チアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピリミジンおよびプリンであってよく;mが2でありうる場合、Qは、フェニルなどの直鎖もしくは分岐鎖、キラルもしくはアキラル、環式もしくは非環式、飽和もしくは不飽和炭化水素基として2〜10個の炭素のスペーサーになりえる]の構造式を有してもよい。
【0078】
本明細書において有用なトリアリールメタンの例は、1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾール(クロトリマゾール;Ishii et al. (1997), 前記; Joiner et al. (1997), 前記;およびLogsdon et al. (1997),前記);2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミド (ICA-17043; Stocker et al. (2003) Blood 101:2412-2418 );1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール (TRAM-34; Wulff et al. (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:8151-8156;これは、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる);1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(4−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;および1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−テトラゾールを含むが、これらに限定されない。さらなる低分子が、当技術分野において公知である。McNaughton-Smith et al. (2008) J. Med. Chem. 51:976-982; Wulff (2007), 前記;および国際公開公報第2007/033307号を参照されたい。これらはそれぞれ、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0079】
対象化合物は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開公報第03/059873(米国特許第7,208,527B2号が付与されている)および同第09/027292号に記載されている、2,2−ビス−(4−フルオロフェニル)−3−メチル−ブチルアミド(以下):
【化2】
を含んでよい。
【0080】
本発明のKATPチャネルブロッカーは、以下の式で表される化合物:
【化3】
[式中、R1、R2、R3およびR4は、独立して以下から選択してもよい:アダマンチル、水素、炭素数1〜8(1と8を含める)のアルキル、炭素数5〜8(5と8を含める)のシクロアルキル、フェニル、アルキルが炭素数1〜3(1と3を含める)であってよいフェナルキル、およびモノ−またはジ−置換フェニルまたはフェナルキルのフェニル部分、ここで前記置換基は、同じであっても異なってもよく、そして、炭素数1〜3(1と3を含める)のアルキル、ハロゲン、トリフルオロメチル、および炭素数1〜3(1と3を含める)のアルコキシ、ハロ、およびトリフルオロメチル;水素および炭素数1〜8(1と8を含める)のアルキル、炭素数5〜8(5と8を含める)のシクロアルキルからなる群より選択してもよく、それらが結合している窒素原子と一緒にメチレン、あるいは水素と結合している窒素、または炭素数1〜3(1と3を含める)のアルキル、酸素;または硫黄を含む飽和複素環を形成してもよい。複素環がメチレンを含むとき、複素環は4〜6つの炭素原子を有することができる。複素環が酸素または硫黄を含むとき、複素環は、ピペラジノ、N−アルキルピペラジノ、モルホリノ、または、チオモルホリノ、およびそれらの薬学的に許容しうる酸付加塩であってもよい]を含んでよい。
【0081】
これらのKATPチャネルブロッカーは、以下から選択されるものを含んでよい:2,3−ブタンジオンモノオキシム;4−アミノピリジン(4−AP);5−ヒドロキシデカノアート;7ニトロインダゾール;8−オキソ−ベルベリン;A−184209;アセカイニド;アデノシン(ATP);アフラトレム;アガトキシンω型(ω−アガトキシン);アジトキシン−1;アジトキシン−2;アジトキシン−3;AL 275;アリニジンST567;アルモカラントH 234/09;α−デンドロトキシン;AM92016;アンバシリド;アンバシリドLU47110;AN132;酸化防止剤;アパミン;ARH 050642;ATI 2042;ATP;AWD 12−260;AWD 160275;AWD 23−111;AZD 7009;AZDF 265;アジミリド;塩化バリウム;Bay K8644(R)(+)−型;BDS−I;BDS−II;ベプリジル;ベルランビン;ベルトサミル;ベータブンガロトキシン(ベータ−BuTX);ベータ−デンドロトキシン;BHA 0388;BMS 208782;BMS 208783;BRBI 28;ブレチリウム;BRL 32872;ブロミドデンドロトキシン;BTS 67582;ブピバカイン;カルサトリンスクシナートRWJ 24517;カリアキン;CGX 1007;カングロリンピロゾリン;カリブドトキシン;カリルオトキシン(Charylotoxin);グリベンクラミドのCHF 1522シクロデキストリン錯体;クロルプロパミド;クロマノール293異性体;クロマノール293B;シベンゾリン;シクラジンドール;クラミカラントHMR1098;クラミカラントHMR1883;クラウセンアミド(−型);クラウセンアミド(ラセミ体);クロフィリウムLY150378;クロフィリウムトシラート;クロトリマソール;クロトリマゾール;CNS 1237;CP 308408;CP 339818;CP 366660;CP 92713;CPU 86017;シアノグアニジン;デンドロトキシン(DTX);デンドロトキシンI(DTX−I);デンドロトキシンK(DTX−K);塩化デクアンリニウム;デキスソタロルBMY;057631D d−ソタロール;ジセントリン;ジメチルスルホキシド;DKAH 269;DMP 543;ドフェチリド;DPC 543;DPI 201106;ドロネダロンSR 33589;DTX,α型(α−DTX);DTX,β型(β−DTX);DTX,γ型(γ−DTX);DTX,σ型(σ−DTX);E−4031;エファロキサン;EGIS 7229;エングリタゾン;エルセンチリド(+/−型);エルセンチリド(S型);エタノール;エボジアミン(S);ファンプリジン4−アミノピリジンEL 970;ホシノプリラト;ガンマ−デンドロトキシン;GEA 857;グレマンセリンMDL 11939;GLG V 13;グリベンクラミド;グリメピリド;グリピジド(GLP);グリピジドK 4024;グリピジドTK 1320;グルカゴンアンタゴニスト;グリベンクラミド;グリブリド;グアネチジン;グアニジン部分;GYKI 16638;HA 7;HMR 1372;HMR 1402;HMR 1556;HMR 1883;ヒドロキシ;イベリオトキシン;イブチリド;イブチリドU 70226;ICA 17043;ICI 181037;SK4チャネルブロッカー;IMID−1M;IMID−26F;IMID−4F;IMID−4F塩酸塩;イミダゾリン部分;ルパジリド(lpazilide) WIN 54177;イピダクリンNIK 247;イバブラジン;JKL 1073A オキシ−ベルベリン;JTV 519;カリオトキシン;KCB 328;KMC IV 84;KW 3407;L 691121;L 702958;L 706000;L 735821;L 742084;L 768673;L755860および関連化合物;レボセモチアジルSA 3212;レボセモチアジルSD 3212;リンバトキシン(Limbatoxin);リンバツストキシン(Limbatustoxin);リリオデニン;Lq2;LQE 908ピノカラント;LY190147;LY97241;マルガトキシン;ミチグリニドKAD 1229 S−21403;MK 499;N 3601;N−ally)セコボルジン;ナテグリニド;ナテグリニドAY 4166;神経ペプチドY;ニベンタン;ニフェカラントMS 551;ニグルジピン塩酸塩S(+)−型;NIP 142;NOSインヒビター;ノキシウストキシン;NS 004;NS 1546;OPC 88117;ORG 20781;パンジノトキシン−Kα(Pandinotoxin-Kα);パスパリトレム;パキシリン;PD 157667;ペニトレムA;PGE 844384;フェンシクリジン;フェントラミン;フェントラミン;ピルメノールCl845;ピロシキサン(Pirocixan);PNU 18177A;PNU 37883A;PNU 89692;PNU 94126;PNU 94158;PNU 94563;PNU 94750;PNU 96179;PNU 96293;PNU 97025E;PNU 99963;ピリドトリアゾール;キニジン;キニーネ;キニーネヘミ硫酸塩;レパグリニドAGEE 623;レパグリニドNN 623;レパグリニド;リモナバンSR 141716;リソチリド;Ro034563;ロピバカインAL 281;ロピバカインLEA 103;RP 58866;RP 66784 RSD 1000;RSD 1019;ルテカルピン;RWJ 28810;RX 871024;S 16260;S 9947;サリチルアルドオキシム;サキシトキシン;SB 237376;シラトキシン;SDZ DNJ 608;セマチリド;セマチリドCK 1752;セマチリドZK 110516;シノメニン;ナトリウム5−ヒドロキシデカノアート;ソタロール;SPM 928;スプリアドイルン(Spriadoilne);SSR 149744B;ハタゴイソギンチャク毒素(Stichodactyla toxin);スルホニル尿素;TEA(テトラエチルアンモニウム);テジサミル;テジサミルKC 8857;テリカラントRP 62719;テルチアピン;テルチアピン−Q;塩化テトラエチルアンモニウム;テトラエチルアンモニウムイオン;テトロドトキシン;TH 9121;TH 9122;チチウストキシンK;チチウストキシンKα;TMB−8;TN 871;トラザミド;トルブタミド;毒素ベースの治療薬BRI 6906;TRAM 30;トログリタゾン;U 37883A;U 50488H;U−37883A;U−45194A;UCL 1439;UCL 1530;UCL 1559;UCL1608;UCL 1684;UK 66914;UK 78282;WAY 123223;WAY 123398;WIN 17317−3;WIN 61773;XE 991;Y 39677;YM 026;YM 19348ラセミ体;YM 193489−R;YM 193489−S;YT 1;ザテブラジン;ZM 181037;ZM 181037;ZM 244085。参照により本明細書に組み込まれる国際公開公報第2007/009462号を参照されたい。
【0082】
また、対象化合物は、以下の式:
【化4】
[式中、m、nおよびpは、独立して、0および1から選択することができ、そして、m、nおよびpの少なくとも1つは1であってよい]を有するものを含むことができる。
【0083】
例示的な態様では、m、nおよびpがすべて1である場合、環1、および環2におけるフルオロ置換基は、独立して、アセトアミド置換基に対してオルト、アセトアミド置換基に対してメタ、およびアセトアミド置換基に対してパラから選択される位に位置し、そして環3における置換基は、アセトアミド置換基に対してオルト、およびアセトアミド置換基に対してパラから選択される位に存在する。別の例示的な態様では、pが0であり、mが1であり、そしてnが1である場合、環1におけるフルオロ置換基は、アセトアミド置換基に対してパラであり、環2における置換基は、アセトアミド置換基に対してオルト、およびアセトアミド置換基に対してパラから選択される位に位置する。参照により本明細書に組み込まれる国際公開公報第2007/075849号を参照されたい。
【0084】
また、対象化合物は、式:
【化5】
[式中、環系Zは、置換または非置換のアリール基、および置換または非置換の5員複素環であってもよい。記号Aは、−NHS(0)2−、−S(0)2NH−、−C(R3R4)S(0)n−、または−S(0)nC(R3R4)−を表し、ここでR3およびR4は、独立して、水素、置換または非置換の低級アルキル、OR5および−CF3から選択される。記号R5は、水素、置換または非置換の低級アルキルまたはCF3を表わす。整数nは、0〜2から選択される。記号R1は、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアリール基、置換または非置換の(C5−C7)炭素環、あるいは置換または非置換の(C5−C7)複素環を表す];
【0085】
【化6】
[式中、環系Zは置換または非置換のアリール基、ならびに置換および非置換5員複素環から選択できる。記号R1は、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロアリール基、置換または非置換の(C5−C7)炭素環、あるいは置換または非置換の(C5−C7)複素環を表す。記号R2は、COOR6、置換または非置換の2−フラン、置換または非置換の2−チアゾール、あるいは
【化7】
を表す。
記号R6は、置換または非置換のC1−C4アルキル基、例えばメチル、エチル、およびCF3を表す。Xは−N=N−、−N=C(R7)−、−C(R7R8)−C(R7R8)−または−C(R7)=C(R8)−を表し、ここでR7およびR8は、独立して、水素、置換および非置換の低級アルキル、または−CF3を表す。記号Yは、0、NR9またはSを表し、ここでR9は、H、低級アルキル、またはCF3である];
【0086】
【化8】
【0087】
【化9】
[式中、m、nおよびpは、独立して、0および1から選択してよく、そして、m、nおよびpの少なくとも1つは1であり;m、nおよびpがすべて1である場合、環1および環2におけるフルオロ置換基は、独立して、アセトアミド置換基に対してオルト、アセトアミド置換基に対してメタ、およびアセトアミド置換基に対してパラから選択される位に位置し、そして環3における置換基は、アセトアミド置換基に対してオルト、およびアセトアミド置換基に対してパラから選択される位に存在してよく、pが0であり、mが1であり、そしてnが1である場合、環1におけるフルオロ置換基は、アセトアミド置換基に対してパラであり、環2における置換基は、アセトアミド置換基に対してオルト、およびアセトアミド置換基に対してパラから選択される位に位置する];
【0088】
【化10】
[式中、m、nおよびpは、独立して、0および1から選択してよく、そして、m、nおよびpの少なくとも1つは1である];
【0089】
【化11】
[式中、mは0または1のいずれかである];
【0090】
【化12】
を有するものを含んでよい。
【0091】
また、対象化合物は、以下の式:
【化13】
[式中、環系Zは、置換または非置換のアリール、5〜7員の非置換炭素環、4〜8員の置換または非置換の炭素環、4〜8員の置換または非置換の複素環、4〜8員の置換または非置換のヘテロアリールから選択してよく;Xは、−NHS(0)2−、−S(0)2NR3−、およびNHC=NR3の群より選択される要素であってよく(式中、R3は、H、及び置換または非置換の(C1−C4)アルキルから選択してもよい);
【0092】
R1は、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアリール、置換または非置換の(C5−C7)炭素環、および置換または非置換の(C5−C7)複素環から選択してよく;R2は、−Cl、−CF3、−CO2R4、置換または非置換のアリール、5〜6員の置換または非置換の複素環、および5〜6員の置換または非置換のヘテロアリールから選択される要素であってよく(式中、R4は置換または非置換の(C1−C4)アルキル基であってよく、これは、場合により環系Zに結合して5〜7員を有するラクトンを形成してもよい);そして、*の印のついた2つの炭素間の二重結合は、環系Zの環内であってもよい]を有するものを含んでよい。参照により本明細書に組み込まれる国際公開公報第03/074038号を参照されたい。
【0093】
本発明で使用されるカルボニルアミノ誘導体は、式:
【化14】
、任意のその鏡像体、任意の鏡像異性体混合物、またはその薬学的に許容しうる付加塩[式中、Aは、CHまたはNであってよく;Rは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシまたはCF3であってよく;Yは水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキルまたは以下の式:
【化15】
(式中、R1、R2およびR3は、互いに独立して、水素、ハロゲン、CN、NO2またはCF3であってよく;Iは、0、1、2、3、4または6であってよく;そして、m、nおよびoは、互いに独立して、0、1または2であってよい。)で表される基を表す]を含む。
【0094】
あるいは、m、nおよびo、互いに独立して、0または1であってもよい。
【0095】
【化16】
[式中、I、m、n、Y、R、RlおよびR2は、上に定義されたとおりである]
【0096】
あるいは、本発明のカルボニルアミノ誘導体は式IIの化合物[式中、Yは、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキル−アルキルまたはアルケニルであってよく;Iは0であってよく;mおよびnは、互いに独立して、0または1であってよく;そして、Rは水素を表す]であってよい。
【0097】
あるいは、式IIのカルボニルアミノ誘導体は、N−ペンチル−2,2−ジフェニル−アセトアミド;N−ヘキシル−2,2−ジフェニル−アセトアミド;N−シクロプロピルメチル−2,2−ジフェニル−アセトアミド;または、N−ヘキサ−2−エニル−2,2−ジフェニル−アセトアミド;またはそれらの薬学的に許容しうる付加塩であってよい。
【0098】
【化17】
[式中、R1、R2およびR3は上に定義されたとおりである]
【0099】
あるいは、本発明のカルボニルアミノ誘導体は、式IIIのトリアリールメタン[式中、R1、R2およびR3は、互いに独立して、水素またはフルオロであってよい]であってよい。
【0100】
あるいは、トリアリールメタン誘導体は、2,2,2−トリフェニル−アセトアミド;2−(2−フルオロ−フェニル)−2,2−ジフェニル−アセトアミド;2−(2−フルオロ−フェニル)−2,2−ジフェニル−アセトアミド;2−(4−フルオロ−フェニル)−2,2−ジフェニル−アセトアミド;2,2−ビス−(2−フルオロ−フェニル)−2−フェニル−アセトアミド;2−フェニル−2−(2−フルオロ−フェニル)−2−(4−フルオロ−フェニル)−アセトアミド;2,2−ビス−(2−フルオロ−フェニル)−2−フェニル−アセトアミド;2,2−ビス−(4−フルオロ−フェニル)−2−フェニル−アセトアミド;またはそれらの薬学的に許容しうる付加塩から選択してもよい。
【0101】
【化18】
[式中、R1、R2およびR3は上に定義されるとおりである]
【0102】
あるいは、本発明のトリアリールメタンは、式IV[式中R1、R2およびR3は、互いに、水素またはフルオロを表す]であってよい。
【0103】
あるいは、本発明のトリアリールメタン誘導体は、2,2,2−トリ−(2−フルオロ−フェニル)−アセトアミド;2,2−ビス−(2−フルオロ−フェニル)−2−(4−フルオロ−フェニル)−アセトアミド;2,2−ビス−(4−フルオロ−フェニル)−2−(2−フルオロ−フェニル)−アセトアミド;2,2,2−トリ−(4−フルオロ−フェニル)−アセトアミド;または、その薬学的に許容しうる付加塩から選択してもよい。
【0104】
【化19】
[式中、I、m、n、Y、R、R1およびR2は、上に定義されたとおりである]
【0105】
あるいは、本発明のカルボニルアミノ誘導体は、式V[式中、Yは、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキル−アルキルまたはアルケニルを表し;Iは0であってよく;mおよびnは、互いに独立して、0または1であってよく;Rは水素であってよく;そして、R1およびR2は、互いに独立して、水素またはフルオロであってよい]であってよい。
【0106】
したがって、カルボニルアミノ誘導体は、(RS)−N−シクロプロピルメチル−2−フェニル−2−ピリジン−2−イル−アセトアミド;(RS)−2−(3,4−ジフルオロ−フェニル)−N−ヘキシル−2−ピリジン−2−イル−アセトアミド;または(RS)−N−ヘキシル−2−(4−ニトロフェニル)−2−ピリジン−3−イル−アセトアミド;または、それらの薬学的に許容しうる付加塩から選択してもよい。参照により本明細書に組み込まれる国際公開公報第03/004101号を参照されたい。
【0107】
また、対象化合物は、以下の式:
【化20】
[式中、m、nおよびpは、独立して、0および1から選択してよく、そして、m、nおよびpの少なくとも1つは1であり;m、nおよびpがすべて1である場合、環1および環2におけるフルオロ置換基は、独立して、アセトアミド置換基に対してオルト、アセトアミド置換基に対してメタ、およびアセトアミド置換基に対してパラから選択される位に位置してよく、そして環3における置換基は、アセトアミド置換基に対してオルトおよびアセトアミド置換基に対してパラから選択される位に存在してよく、pが0であり、mが1であり、そしてnが1である場合、環1におけるフルオロ置換基は、アセトアミド置換基に対してパラであってよく、環2における置換基は、アセトアミド置換基に対してオルト、およびアセトアミド置換基に対してパラから選択される位に位置してもよい]、
【0108】
【化21】
[式中、m、nおよびpは、独立して、0および1から選択してよく、そして、m、nおよびpの少なくとも1つは1である]、
【0109】
【化22】
[式中、mは、0または1のいずれかであってよい]を有するものを含んでよい。参照により本明細書に組み込まれる国際公開公報第00/50026号を参照されたい。
【0110】
本発明で有用な他の低分子は次のものを含んでよい:マウロトキシン(Castle et al. (2003) Mol. Pharmacol. 63:409-418)。本明細書において有用なさらに他の低分子は、国際公開公報第97/034589号、国際公開公報第99/026628号、国際公開公報第99/026929号、国際公開公報第2000/050026号、国際公開公報第2000/069439号、国際公開公報第2000/069794号、国際公開公報第2000/069823号、国際公開公報第2001/049663号、国際公開公報第2004/016221号、国際公開公報第2005/003094号、国際公開公報第2005/003143号、国際公開公報第2006/084031号および国際公開公報第2009/027292号に開示されているものを含んでもよく;これらはそれぞれ、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0111】
本明細書で使用するとき、「有効量」または「治療上有効な量」(すなわち投薬量)は、それぞれインビトロ又はインビボで提供される、SK4チャネルをコードする核酸と接触して機能的に複合体化するか、SK4チャネルサブユニットポリペプチドまたはホモテトラマーと接触して機能的に複合体化するか(共有結合または非共有結合のいずれかで)、またはSK4チャネルの上流(例えば、エンハンサー、プロモーターなど)もしくは下流(例えばキナーゼ(MEK/ERK)、ホスファターゼまたはホスホリラーゼ)のエフェクタと接触して機能的に複合体化するのに十分なSK4チャネルインヒビターの量を意味する。さらに、有効量または治療上有効な量のSK4チャネルインヒビターは、SK4チャネルのmRNA減少、SK4チャネルの活性低下、またはSK4チャネルの下流のエレメントの機能低下などの所望の効果を得るのに十分な量である。例えば、これは、関節炎、アレルギーまたは喘息などの様々な免疫不全を予防するかまたは克服するのに有用なSK4チャネルインヒビターの量でありえる。治療上有効な量のSK4チャネルインヒビターは、治療されている被験体、障害または疾患の重症度および投与の方法に依存する。あるいは、この量は、インビトロで所望の効果をもたらす濃度と同程度のターゲット組織濃度を達成する量でありえる。
【0112】
治療上有効な量のSK4チャネルインヒビターに関しては、インビトロまたはインビボにおける動物実験によって決定することができる。治療上有効な量(すなわち投薬量)を被験体に投与して、動物アッセイにおいて有効であることが示されている濃度と同程度のターゲット組織濃度を提供することができる。遺伝的に改変されている動物が、SK4チャネルの発現、活性および機能を強めるのに有用でありうることが考えられる。使用することができる遺伝的に改変されている動物の例は、SK4−/−動物などを含むが、これらに限定されない。例えば、Begenisich et al. (2004) J. Biol. Chem. 279:47681-47687を参照されたい;これは、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0113】
有効量および治療上有効な量のSK4チャネルインヒビターは、提供される剤の種類に依存して、変化する可能性があり、変化するであろう。例えば、治療上有効な量の抗SK4チャネル抗体または低分子インヒビターは、免疫系障害の治療において1日当たり、約0.0001mg/kg(体重)〜約200mg/kg(体重)、または1被験体当たり1日約0.1mg〜約20gであってよい。例えば、骨粗鬆症は、1日当たり、体重1kg当たり約0.001mg〜約100mg、または1被験体当たり1日約0.5mg〜約10gのトリアリールメタンなどの低分子を投与することにより有効に処置することができる。
【0114】
上述のように、組成物は、また、治療剤またはその組み合わせを含んでよい。治療剤の例は、抗骨喪失剤、抗炎症剤、免疫抑制剤および化学療法剤を含むが、これらに限定されない。
【0115】
抗骨喪失剤の例は、カルシウムおよびビタミンD;ビスホスホナート(例えばナトリウムアレンドロナート(Fosamax(登録商標); Merck & Co., Inc.; Whitehouse Station, NJ)、リセドロナート(Actonel(登録商標); Procter & Gamble Pharmaceuticals; Cincinnati, OH)およびイバンドロナート(Boniva(登録商標); Hoffman-La Roche Inc.; Nutley, NJ));エストロゲン代償療法;副甲状腺ホルモンおよびテリパラチド(Forteo(登録商標); Eli Lilly & Co.; Indianapolis, IN);ラネリック酸ストロンチウム(Protelos(登録商標)またはProtos(登録商標); Servier Laboratories; Neuilly, France);ラロキシフェン(Evista(登録商標); Eli Lilly & Co.)などの選択的エストロゲンレセプターモジュレータなどを含むが、これらに限定されない。
【0116】
抗炎症剤の例は、グルココルチコイド(例えば、コルチゾール、プレドニゾン、プレドニゾロンおよびヒドロコルチゾン)などのステロイド;アセトアミノフェン、アスピリン、イブプロフェン、インドメタシン、ジクロフェナク、ジフェンピラミド、フェンブフェン、フルフェナム酸、ケトプロフェン、メクロフェナム酸ナトリウム、メフェナム酸、ナブメトン、ナプロキセン、ピロキシカム、スプロフェンおよびチアプロフェン酸などの非ステロイド性抗炎症剤;ヒソップ、ショウガ、ウコン、アルニカ・モンタナ(ヘレナリン、セスキテルペンラクトンを含有する)、ヤナギ樹皮(サリチル酸を含有する)などの抗炎症品質を有する薬草などを含むが、これらに限定されない。
【0117】
免疫抑制剤の例は、シクロスポリンおよびタクロリムスなどのカルシニューリンインヒビター;カルシトニン遺伝子関連ペプチド(両方とも参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,635,478号および同第5,858,978号を参照されたい);シロリムスおよびエベロリムスなどのmTORインヒビター;アザチオプリンおよびミコフェノール酸などの抗増殖剤;プレドニゾロンおよびヒドロコルチゾンなどのコルチコステロイド;モノクローナル抗−IL−2Rαレセプター抗体(例えばBasiliximab(Simulect(登録商標); Novartis Pharmaceutical Corp.; East Hanover, NJ)、およびダクリズマブ(Zenapax(登録商標); Hoffman-La Roche Inc.)などの抗体;ポリクローナル抗T細胞抗体;抗胸腺細胞グロブリン(ATG);抗リンパ球グロブリン(ALG)などを含むが、これらに限定されない。
【0118】
化学療法剤の例は、シスプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、クロラムブチル、メクロレタミンおよびオキサリプラチンなどのアルキル化剤;腫瘍抗原に対する抗体;アザチオプリンおよびメルカプトプリンなどの代謝拮抗物質;ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシンおよびバルルビシンなどのアントラサイクリン;ポドフィロトキシン、タキサン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビンおよびビンデシンなどの植物アルカロイド;I型トポイソメラーゼインヒビター(例えばカンプトテシン(camptothecin)、イリノテカンおよびトポテカン)およびII型トポイソメラーゼインヒビター(例えばアムサクリン、エトポシド、エトポシドリン酸塩およびテニポシド)などのトポイソメラーゼインヒビター;ダクチノマイシン、ブレオマイシンおよび他のものなどの他の抗腫物剤などを含むが、これらに限定されない。
【0119】
細胞間融合の活性化
いくつかの例では、特に、融合した細胞(破骨細胞)を増加させることが有用であり得る状況においては、SK4チャネル活性または機能がSK4チャネルアクチベーターにより刺激されて、細胞融合を促進する場合がある。そのような状況は、骨密度の異常に増加している患者、慢性感染症の患者、または大理石骨病の患者を含む。骨化石症およびアルバース−シェンバーグ病とも知られる大理石骨病は、骨が硬化し、そして密度が高くなるまれな遺伝病である。大理石骨病の患者の骨は、正常よりも脆い傾向がある。
SK4チャネル活性または機能のアクチベーターの例は、1−エチル−2−ベンズイミダゾリノンを含むが、これらに限定されない。
【0120】
本発明は、マクロファージに由来する多核細胞によって媒介される疾患または障害を処置するための、有効量のSK4チャネルアクチベーターおよび場合により治療剤を有する組成物を含む。1つの態様では、有効量のSK4チャネルアクチベーターおよび治療剤を含む組成物が提供される。他の態様では、治療上有効な量のSK4アクチベーターおよび治療剤に加えて薬学的に許容しうる担体を含む薬学的組成物が提供される。
【0121】
本明細書で使用するとき、「SK4チャネルアクチベーター」または「SK4チャネル活性化剤」は、SK4チャネル発現(すなわち翻訳または転写)、SK4チャネル活性(すなわちコンダクタンス)、または上流および下流のSK4チャネルエフェクター(すなわちプロモーター、アクチベーター、インデューサー、サプレッサー、リプレッサー、キナーゼなど)に影響を与えてSK4チャネル活性を促進する剤を意味する。いくつかの態様では、SK4チャネルアクチベーターは、SK4チャネルに結合し、その機能(すなわち脱分極化するか、または再分極する能力)を調節するように設計されたタンパク質であってよい。あるいは、SK4チャネルアクチベーターは、SK4チャネルに特異的に結合して、それらの活性または機能を促進する低分子であってよい。
【0122】
SK4チャネルアクチベーターの厳密な性質を問わず、それは、SK4チャネルの発現、活性または機能のうちの一つ以上を向上させる。前記発現、活性または機能は、適切な対照と比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、110%、120%、130%、140%、150%を含むが、これらに限定されない統計的に有意な量向上する。好ましくは、SK4チャネルの発現、活性または機能は、少なくとも約10%以上向上する。逆に、SK4チャネルアクチベーターは、SK4チャネルの発現、活性または機能を統計的に低下させないはずである。
【0123】
インヒビターまたはアクチベーターを含む薬学的組成物
組成物が薬学的組成物であるとき、前記組成物は、また、薬学的に許容しうる担体を含んでよい。本明細書で使用するとき、「薬学的に許容しうる担体」は、生物学的に、生理学的に、または他の点で不所望ではない物質を意味する、すなわち、前記物質は、任意の不所望の生物学的または生理的作用を引き起こさず、またはそれが含有されている組成物の如何なる成分とも有害な方法で相互作用することなく、調合物または組成物で被験体に投与することができる。
【0124】
使用される薬学的に許容しうる担体は、固体、液体または気体であってよい。固体担体の例は、ラクトース、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸を含むが、これらに限定されない。液体担体の例は、糖シロップ、落花生油、オリーブオイル、水および生理食塩水を含むが、これらに限定されない。気体担体の例は、二酸化炭素および窒素を含むが、これらに限定されない。
【0125】
薬学的に許容しうる担体に加えて、薬学的組成物は、必要に応じて、希釈剤、バッファ、香料、結合剤、界面活性剤、増粘剤、滑沢剤、保存剤(酸化防止剤を含む)などの一つ以上のさらなる添加剤を含んでよい。さらに、静脈内投与では調合物を被験体の血液と等張にするために他の佐剤を含んでよい。
【0126】
望ましい添加剤は、アルギニン、水酸化ナトリウム、グリシン、塩酸、クエン酸などのpH調整剤を含むが、これらに限定されない。さらに、局所麻酔薬(例えばベンジルアルコール)、等張化剤(例えば塩化ナトリウム、マンニトールまたはソルビトール)、吸着防止剤(例えばTween(登録商標)80)、溶解促進剤(例えばシクロデキストリンおよびその誘導体)、安定剤(例えば血清アルブミン)、還元剤(例えばグルタチオン)および保存剤(例えば抗菌剤および酸化防止剤)を含んでよい。
【0127】
経口投薬用の薬学的組成物は、当技術分野において公知である任意の形態で調製することができる。例えば、水、グリコール、油、アルコール、香料、保存剤、着色料などを用いて、懸濁剤、エリキシル剤および液剤などの経口液状製剤を形成することができ、一方、デンプン、砂糖、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などの担体を用いて、散剤、カプセル剤および錠剤などの経口固形製剤を形成することができる。
【0128】
錠剤では、SK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターは、場合により一つ以上の副成分または佐剤と共に、圧縮または成形することによって調製することができる。圧縮錠剤は、適切な機械中で、散剤または顆粒剤などの易流動性形態のSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターを圧縮することにより調製することができ、場合により結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、界面活性剤もしくは分散剤、または他のそのような賦形剤と混合される。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;造粒剤および崩壊剤(例えばトウモロコシデンプン、またはアルギン酸);結合剤(例えばデンプン、ゼラチン、アラビアゴム);ならびに滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルク)であってよい。錠剤は、コーティングされていなくてもよく、または胃腸管における崩壊および吸収を遅らせるために公知技術によってコーティングされることにより、特に炎症性腸感染(IBD)または過敏性大腸症候群(IBS)などの免疫系障害の治療のために、より長時間にわたって持続する作用を提供することもできる。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延物質を使用してもよい。
【0129】
硬ゼラチンカプセルでは、SK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターは、不活性の固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリンと混合されてもよい。逆に、軟ゼラチンカプセル剤では、SK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターは、水または油媒体、例えば落花生油、流動パラフィン、またはオリーブオイルと混合されてもよい。湿製錠剤は、適切な機械中にて、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末状のSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターの混合物を成型することにより作製することができる。
【0130】
ほんの一例として、ヒト被験体への経口投与を意図した薬学的組成物は、全組成物の約5%〜約95%で変化しうる適切かつ好都合な量の薬学的に許容しうる担体とともに調合された、約0.5mg〜約5gのSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターを含有することができる。単位剤形は、一般に、約1mg〜約2gのSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーター、典型的に、約25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mgまたは1000mgのSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターを含有する。
【0131】
非経口投与用薬学的組成物は、SK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターの水溶液または水懸濁液として調製することができる。例えばヒドロキシプロピルセルロースなどの適切な界面活性剤を含んでよい。薬学的組成物は、また、油中のグリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびその混合物で調製することができる。あるいは、薬学的組成物はリポソームの中で調製してもよい。例えば、Langer (1990) Science 249:1527-1533;およびTreat et al., 353-365 In: Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer (Lopez-Berestein & Fidler eds., Liss, N.Y. 1989)を参照されたい。さらに、微生物の有害な増殖を防ぐために保存剤を含んでよい。
【0132】
同様に、注射用薬学的組成物は、無菌水溶液または分散液として調製することができる。または、組成物は、無菌注射剤溶液または分散液のための無菌粉末の形態であってよい。完成注射剤形態は無菌でなければならず、そして容易に投与するために有効に流動性でなければならない。薬学的組成物は、製造および保存条件下で安定でなければならないため、好ましくは、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されるべきである。そのため、薬学的に許容しうる担体は、例えば、水、エタノール、多価アルコール(例えばグリセリン、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール)、植物油、およびその適切な混合物を含有している溶媒または分散媒であってよい。
【0133】
ほんの一例として、ヒト被験体への非経口投与または注射を意図した薬学的組成物は、全組成物の約5%〜約95%で変化しうる適切で便利な量の薬学的に許容しうる担体とともに調合された、約0.5mg〜約5gのSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターを含有することができる。単位剤形は、一般に、約1mg〜約2gのSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーター、典型的に、約25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mgまたは1000mgのSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターを含有する。
【0134】
局所投与用薬学的組成物は、例えば、エアロゾル、クリーム、軟膏剤、ローション剤、散粉剤などとして調製することができる。あるいは、薬学的組成物は、経皮的手段で使用するのに適している形態であってよい。これらの薬学的組成物は、当技術分野において周知の方法によって調製することができる。例えば、クリームまたは軟膏剤は、約5wt%〜約10wt%の結合剤と共に水を混合して、望ましい粘稠度を有する乳剤または軟膏剤を生成することにより調製することができる。
【0135】
ほんの一例として、ヒト被験体への局所投与を意図した薬学的組成物は、全組成物の約5%〜約95%で変化しうる適切で便利な量の薬学的に許容しうる担体とともに調合された、約0.5mg〜約5gのSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターを含有することができる。単位剤形は、一般に、約1mg〜約2gのSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーター、典型的に、約25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mgまたは1000mgのSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターを含有する。
【0136】
直腸投与用薬学的組成物は、固体の薬学的に許容しうる担体を用いて調製することができる。好ましくは、その混合物は単位用量坐剤を形成する。適切な薬学的に許容しうる担体は、当技術分野において一般に用いられているカカオ脂、および他の増粘剤を含む。坐剤は、まず、組成物と軟化または融解した薬学的に許容しうる担体とを混合し、次いで型の中で冷却および成形することにより、好都合に形成することができる。
【0137】
ほんの一例として、ヒト被験体への直腸投与を意図した薬学的組成物は、全組成物の約5%〜約95%で変化しうる適切で好都合な量の薬学的に許容しうる担体とともに調合された、約0.5mg〜約5gのSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターを含有することができる。単位剤形は、一般に、約1mg〜約2gのSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーター、典型的に、約25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mgまたは1000mgのSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターを含有する。
【0138】
吸入投与用薬学的組成物は、当技術分野において公知の形態で、当技術分野において公知の担体を利用して調製することができる。例えば、Zeng et al., In: Particulate Interactions in Dry Powder Formulations for Inhalation (Informa HealthCare 1st ed. 2000)を参照されたい。
【0139】
ほんの一例として、ヒト被験体への吸入投与を意図した薬学的組成物は、全組成物の約5%〜約95%で変化しうる適切で好都合な量の薬学的に許容しうる担体とともに調合された、約0.5mg〜約5gのSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターを含有することができる。単位剤形は、一般に、約1mg〜約2gのSK4チャネル阻害結合剤、典型的に、約25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mgまたは1000mgのSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターを含有する。
【0140】
以下でより詳細に論じられるように、組成物および薬学的組成物は、SK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターに加えて、基礎疾患または障害を処置するために一つ以上の他の治療剤を含んでよい。本明細書において使用するための他の治療剤の例は、抗炎症剤(すなわち、ステロイドおよび非ステロイド性の抗炎症剤)、抗骨喪失剤および化学療法(すなわちアルキル化剤、代謝拮抗物質、植物アルカロイド、ならびにテルペノイドおよびトポイソメラーゼインヒビター)を含むが、これらに限定されない。
【0141】
組成物および薬学的組成物は、SK4チャネル遺伝子に突然変異を有する、突然変異マクロファージを含んでもよく、ここで前記突然変異は、SK4チャネルモノマーの発現を低下もしくはなくすか、またはコードされたSK4チャネルモノマーの活性を阻害する。
【0142】
本発明の組成物の前述の議論に関して、用語「約」は、規定の濃度範囲、投薬量または組成物中の成分の量などの値の統計的に意味のある範囲内を意味する。このような範囲は、所与の値または範囲の桁内、典型的に20%以内、より典型的に10%以内、さらにより典型的に5%以内でありうる。用語「約」に包含される許容偏差は、前記用語が用いられる特定の状況に依存し、当業者に容易に理解される。
【0143】
細胞間融合を調節する方法、ならびにその治療及びスクリーニング用途
いくつかの態様では、本発明の方法は、マクロファージ細胞と、有効量のSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターとを接触させ、それにより、それぞれマクロファージ細胞融合を減少または増加させることを含む。上述のように、SK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターは、SK4チャネルの発現、活性または機能を有効に低下させるか、または向上させる限りにおいて、SK4チャネル発現(すなわち翻訳または転写)、SK4チャネル活性(すなわちコンダクタンス)、あるいは上流または下流のSK4チャネルエフェクター(すなわちプロモーター、アクチベーター、インデューサー、サプレッサー、リプレッサー、キナーゼなど)に影響を与えるものであってよい。
【0144】
SK4活性の阻害において、如何なる理論または作用機序にも縛られるものではないが、融合する能力を有するか、または融合が進行中であるマクロファージ細胞内のSK4チャネルの発現、活性または機能に対するSK4チャネルインヒビターの阻害作用により、マクロファージ細胞融合が減少する。「融合する能力」とは、マクロファージ細胞が、マクロファージ細胞融合の助けになる環境設定内に存在することを意図する。例えば、スクリーニング法(例えば、本明細書において下記に記載されるスクリーニング法)で使用される条件などの、インビトロ条件下において、融合する能力を有するマクロファージ細胞は、これまで融合は進行していなかったが、現在融合条件(すなわち、本明細書において以下に記載されるように、マクロファージ細胞の融合を促進または助長する条件)に曝露されているマクロファージ細胞の集団を含む。インビボ条件下では、融合する能力を有するマクロファージ細胞は、マクロファージ細胞の融合を促進または助長するインビボ環境に曝露されるようになる、それまで融合していないマクロファージ細胞の任意の集団を含む。したがって、融合する能力を有するマクロファージ細胞は、前記インビボ環境内に位置する静止(すなわち、定着)マクロファージ細胞であってよく、または前記インビボ環境へ遊走しているマクロファージであってよい。同様に、環境がマクロファージ細胞の融合を促進または助長するインビボ条件下では、融合が進行中であるマクロファージ細胞は、前記インビボ環境内に存在する静止マクロファージ、および/または前記インビボ環境へ移動しているマクロファージを含みうる。
【0145】
本明細書において記載される任意のSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターは、インビトロまたはインビボ設定のいずれかにおいて、マクロファージ細胞の融合を減少(すなわち、阻害)させるか、または増加させるために、本発明の方法で有利に使用することができる。マクロファージ細胞の融合をインビボ設定において阻害する場合、細胞間融合の減少の標的となるマクロファージ細胞を、治療上有効な量のSK4チャネルインヒビターと接触させるが、この場合、治療上有効な量は、望ましい結果(例えばマクロファージに由来する多核細胞によって媒介される疾患または障害の処置)により決定する。同様に、マクロファージ細胞の融合をインビボ設定において増加または活性化させる場合、細胞間融合の増加の標的となるマクロファージ細胞を、治療上有効な量のSK4チャネルアクチベーターと接触させるが、この場合、治療上有効な量は、所望の結果により決定する。
【0146】
したがって、本発明のいくつかの態様では、マクロファージ細胞の融合を阻害するための方法は、融合する能力を有するマクロファージ細胞に、有効量のSK4チャネルインヒビターを提供し、それにより、これらの細胞の融合を阻止または低減することを含む。他の態様では、マクロファージ細胞の融合を阻害するための方法は、融合が進行中であるマクロファージ細胞に、有効量のSK4チャネルインヒビターを提供し、それにより、これらの細胞のさらなる融合を阻止または低減することを含む。マクロファージ細胞の融合を阻害するための方法は、静止(すなわち、定着)マクロファージおよび/または特定のインビボ環境へ遊走しているマクロファージを対象とすることもでき、マクロファージの同型または異型融合を対象とすることもできる。したがって、これらの方法は、破骨細胞(骨中の)および巨細胞(多数の種類の他の組織中の)の形成において生じるような、マクロファージ−マクロファージ細胞融合をターゲッティングしてよく、または転移癌細胞を形成する、マクロファージ細胞と癌細胞との融合などのマクロファージと他の細胞型との融合をターゲティングしてもよい。
【0147】
いくつかの態様では、適切な対照試料が、SK4チャネルインヒビターが存在しない同一の環境条件下において同等のマクロファージ細胞を含む場合、有効量のSK4チャネルインヒビターは、適切な対照試料と比較したとき、マクロファージ細胞融合を少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%または55%減少させる。他の態様では、有効量のSK4チャネルインヒビターは、適切な対照試料と比較したとき、マクロファージ細胞融合を少なくとも約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%減少させる(すなわち、マクロファージ細胞融合を妨げる)。マクロファージ細胞融合のアッセイ方法は、当技術分野において周知である。例えば、前記Vignery (2000); MacLauchlan et al. (2009) J. Leukoc. Biol. 85:617-626;および以下の本明細書の実験の章に記載されるアッセイを参照されたい。
【0148】
本明細書において上述したように、不適当または調節されていない(すなわち、異常な)マクロファージ細胞融合は、炎症性および感染性疾患における細胞および組織の損傷に関連している場合がある。本明細書において記載されたマクロファージ細胞の融合を阻害するための方法は、異常な破骨細胞形成(例えば骨粗鬆症)、巨細胞形成(例えば慢性炎症性疾患)および癌転移をトリガーする恐れのある転移癌細胞の形成と関係する疾患を含む、マクロファージに由来する多核細胞によって媒介される疾患の予防または治療を目的とする治療方法に使用できる。
【0149】
本明細書で使用するとき、「予防する」または「予防」などは、被験体が疾患または病状に対する素因を有し、前記被験体が疾患や病状を発症するのを防ぐことを目的とする場合、SK4チャネルインヒビターの前記被験体への適用または投与、あるいはSK4チャネルインヒビターを含む薬学的組成物の前記被験体への適用または投与を意味する。例えば、移植物または移植片手術の拒絶反応を防ぐ目的で、移植物または移植片手術を受けている、将来受ける被験体にSK4チャネルインヒビター、またはSK4チャネルインヒビターを含む薬学的組成物を投与してもよい。別の例として、過度の骨喪失および骨粗鬆症の発生を防ぐ目的で、骨粗鬆症に罹患しやすい被験体にSK4チャネルインヒビターを投与することもできる。
【0150】
SK4チャネルを活性化するための態様では、前記方法は、マクロファージ細胞に有効量のSK4チャネルアクチベーターを提供して、細胞の融合を増加させることを含む。マクロファージ細胞の融合を活性化するための方法は、静止マクロファージおよび/または特定のインビボ環境へ遊走しているマクロファージを対象とするができ、マクロファージの同型または異型融合を対象としてすることもできる。有効量のSK4チャネルアクチベーターは、適切な対照と比較したとき、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、110%、120%、130%、140%または150%、マクロファージ細胞の融合を増加させる。マクロファージ細胞融合のアッセイ方法は、上に開示したように当技術分野において周知である。
【0151】
本明細書で使用するとき、「治療する」または「治療」は、被験体が疾患または疾患の症状を有し、疾患または疾患の症状を直す、緩和する、取り除く、変化させる、処置する、寛解させる、改善する、または影響を与えることを目的とする場合、SK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターの個体への適用または投与、あるいはSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターを含む薬学的組成物の前記被験体への適用または投与を意味する。
【0152】
本発明のいくつかの態様では、マクロファージ細胞の融合を阻害するための方法は、インビボにおける破骨細胞の形成阻害に関するものであり、治療目的は、骨喪失の予防または治療である。本明細書において上述したように、破骨細胞形成の阻害によって、破骨細胞数および/または破骨細胞表面積は減少して、破骨細胞機能が全体的に低下する。更に、破骨細胞のSK4発現、活性または機能の阻害によって、破骨細胞の機能を変化させる(例えば破骨細胞の骨塩再吸収活性を低下させる)ことができる。破骨細胞の形成および機能を低下させることによって、骨密度および/または骨厚さを有利に増加させることができる。このように、本発明は、骨喪失に罹患しやすいか、または骨喪失に罹患している被験体の骨喪失を予防または治療する方法であって、被験体に治療上有効な量のSK4チャネルインヒビターを投与して、破骨細胞形成を阻害し、それによって被験体の骨喪失を予防または低減することを含む方法を提供する。この治療方法は、骨密度が低下しやすいか、または骨密度が低下している被験体において骨密度を維持することに使用できる。関連する態様では、骨喪失を予防または治療する方法は、少なくとも1つの抗骨喪失剤との併用療法を含んでもよい。SK4チャネルインヒビターおよび抗骨喪失剤(単数または複数)の投与経路は、骨喪失の素因または実際の骨喪失の根本原因により影響を受けるが、経口、静脈内、さらには骨への直接送達でありうる。
【0153】
本発明の方法を用いて被験体の骨喪失を予防または治療することができる例示的な状態は、骨粗鬆症、骨軟化、パジェット病、歯槽膿漏症、および他の病理学的条件(すなわちアルコール中毒、セリアック病、慢性腎臓病、慢性肝炎、癲癇、胃腸疾患、甲状腺機能亢進症、性腺機能低下症、白血病、リンパ腫、関節リウマチ、壊血病、およびビタミンD欠乏)に付随して起こる骨喪失などを含むが、これらに限定されない。
【0154】
本発明の他の態様では、マクロファージ細胞の融合を阻害するための方法は、インビボにおける巨細胞形成の阻害に関するものであり、治療目的は、被験体の自己免疫または炎症性疾患または障害の予防または治療である。このように、本発明は、自己免疫または炎症性疾患に罹患しやすいか、または前記疾患に罹患している被験体の自己免疫または炎症性疾患または障害を予防または治療する方法であって、被験体に、治療上有効な量のSK4チャネルインヒビターを投与して、巨細胞の形成を阻害し、それによって、被験体の自己免疫または炎症性疾患または障害を予防または治療することを含む方法を提供する。関連する態様では、自己免疫または炎症性疾患または障害を予防または治療する方法は、少なくとも1つの抗炎症剤との併用療法を含んでよい。SK4チャネルインヒビターおよび抗炎症剤の投与経路は、例えば、自己免疫または炎症性疾患または障害に関する素因あるいは実際の自己免疫または炎症性疾患または障害の根本原因により影響を受けるが、経口、静脈内、局所、さらには例えば、炎症部位への直接注射でありうる。
【0155】
本発明の方法を用いて自己免疫疾患または障害を予防または治療することができる例示的な状態は、急性散在性脳脊髄膜炎(ADEM)、アジソン病、脱毛、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫内耳疾患、自己免疫溶血性貧血、自己免疫性肝炎、シャガス病、慢性閉塞性肺疾患、セリアック病、クローン病、皮膚筋炎、1型糖尿病、子宮内膜症、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン−バレー症候群(GBS)、橋本病、川崎病、特発性血小板減少性紫斑病、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症(MS)、重症筋無力症、乾癬、原発性胆汁性肝硬変、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、側頭動脈炎(「巨細胞性動脈炎」としても知られている)、潰瘍性大腸炎、脈管炎などを含むが、これらに限定されない。本発明の方法を用いて炎症性疾患または障害を予防または治療することができる例示的な状態は、ざ瘡、喘息、関節硬化症、クロム酸閉塞性肺疾患、大腸炎、皮膚炎、糸球体腎炎、炎症性腸感染、ケロイド、腎炎、変形性関節症、骨盤炎症性疾患、乾癬、関節リウマチ、腱炎などを含むが、これらに限定されない。
【0156】
本発明の他の態様では、マクロファージ細胞の融合を阻害するための方法は、インビボにおける巨細胞形成の阻害に関するものであり、治療目的は、被験体の移植物または移植片拒絶反応の予防である。このように、本発明は、移植物または移植片手術を受けているか、または受けるであろう被験体の移植物または移植片拒絶反応を予防するための方法であって、被験体に治療上有効な量のSK4チャネルインヒビターを投与して巨細胞の形成を阻害し、それによって、移植物または移植片拒絶反応を予防することを含む方法を提供する。関連する態様では、この治療方法は、少なくとも1つの免疫抑制剤との併用療法を含んでよい。適用可能な場合には、これらの方法のいずれかは、例えば、移植物が硬骨関連の疾患または障害の治療を目的とする場合、少なくとも1つの抗骨喪失剤との併用療法を含むことができる。SK4チャネルインヒビターならびに免疫抑制剤(単数または複数)および/または抗骨喪失剤(単数または複数)の投与経路は、移植物または器官/組織移植片の種類によって影響を受けるが、経口、静脈内、局所、直接送達によって、または移植物のコーティングもしくは含浸でありうる。。
【0157】
本発明の方法を用いて拒絶反応を予防することができる例示的な移植物は、蝸牛装置、人工膝関節、人工股関節、ボーンセメント、乳房移植物、心臓移植物(例えば人工弁、細動除去器、左室補助装置、およびペースメーカー)、皮膚移植物、胃バンドまたはバルーン、留置カテーテル、インシュリンポンプ、子宮内器具、神経刺激物、眼の移植物、整形外科的移植物、陰茎勃起性人工器官、ステント、尿道スリング、音声人工器官などを含むが、これらに限定されない。本発明の方法を用いて拒絶反応を予防することができる例示的な移植片は、硬骨および骨髄移植片、角膜移植片、心臓および心臓弁移植片、腸移植片、腎臓移植片、肢移植片、肝臓移植片、肺移植片、膵臓移植片、血小板輸血、赤血球輸血、皮膚移植片、幹細胞移植片、移植腱、血管移植片、白血球輸血などを含むが、これらに限定されない。
【0158】
本発明の他の態様では、マクロファージ細胞の融合を阻害するための方法は、インビボにおける転移細胞形成の阻害に関するものであり、治療目的は被験体の癌転移の予防である。このように、本発明は、転移癌に罹患しやすい被験体の癌転移を予防するための方法であって、被験体に治療上有効な量のSK4チャネルインヒビターを投与して転移癌細胞の形成を阻害し、それによって、癌転移を予防することを含む方法を提供する。関連する態様では、この治療方法は、抗癌療法、例えば、手術または外科的処置、あるいは別の抗癌治療剤の投与、例えば化学療法剤、抗癌抗体、低分子ベースの癌治療、ワクチン/免疫療法に基づいた癌治療のうち少なくとも1つの他の形態との併用療法を含むことができる。SK4チャネルインヒビター、および投与される場合、他の抗癌治療剤(単数または複数)の投与経路は、一次腫瘍および転移の潜在的な部位の種類および位置によって影響を受けるが、経口、静脈内、局所または一次腫瘍への直接送達であってよい。
【0159】
本発明の方法を用いて転移を予防することができる代表的な癌は、骨癌、脳癌、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、腸癌、肝臓癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、胃癌、喉頭癌、子宮癌などを含むが、これらに限定されない。
【0160】
治療を受ける疾患または障害によって、単独でまたは別の治療剤またはレジメンと組み合わせられた、SK4チャネルインヒビターまたはSK4チャネルアクチベーターに対する臨床反応は、磁気共鳴画像(MRI)スキャニング、x−放射線画像診断、マイクロCT、コンピュータ断層撮影(CT)スキャニング、生物発光画像診断、例えば、ルシフェラーゼ画像診断、骨スキャン画像診断、骨髄吸引(BMA)を含む腫瘍生検標本サンプリング、フローサイトメトリーまたは蛍光活性化細胞選別装置(FACS)分析、組織診断、肉眼所見、およびELISA、RIA、クロマトグラフィーなどによって検出可能な変化を含むが、これらに限定されない、血液化学などのスクリーニング手法を含むが、これらに限定されない当技術分野において公知の任意の許容しうる方法を用いて評価することができる。
【0161】
上記任意の治療方法では、治療上有効な量のSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターは、拡大投与量または負荷投与量レジメン(例えば、負荷投与量が維持投与量よりも多い)において、治療期間を通じておよそ同じ治療上有効な量(すなわち投与量)を投与することができる。あるいは、治療上有効な量のSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターは、治療される被験体の状態、治療に対する明らかな応答および/または当業者に判断されるような他の要因に基づいて治療過程中に変更してもよい。治療上有効な量のSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターを用いた長期治療も考えられる。
【0162】
更に、本発明の方法が併用療法レジメンを含む場合、これらの治療は同時に行うことができる、すなわち、SK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターは、他の治療レジメンと同時に、または他の治療レジメン同じ時間枠内に投与される(すなわち、治療は同時に行われるが、SK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターは別の治療と正確に同時に投与される訳ではない)。あるいは、SK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターは、他の治療の前または後に投与されてもよい。併用療法がSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターと、少なくとも1つの他の治療剤との同時投与を含む場合、SK4チャネルインヒビターまたはアクチベーター、および他の治療剤(単数または複数)は、別々の薬学的組成物として投与されるか、または一緒に調剤されて単一の薬学的組成物として投与されてもよい。
【0163】
さらに、被験体が、疾患または障害に罹患していると診断されるか、または疑われるとき、SK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターの投与を開始することができる。許容しうる治療上有効な量のSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターについては、上で論じられたとおりであり、被験体の年齢および体重、治療されている具体的な疾患または障害、治療されている疾患または障害の重症度、および投与経路に依存して変化する。本発明の治療方法は、治療上有効な量のSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターの単回投与、または治療上有効な量のSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターの複数回投与を含んでよい。
【0164】
明瞭にするために述べると、本発明の方法に従って治療される被験体は、喘息または鎌型赤血球症に罹患している被験体であることを意図しない。
【0165】
本発明は、また、中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウムチャネル(SK4チャネル)の発現、活性または機能の阻害を介して細胞間融合を阻害する剤を同定するための方法、または細胞間融合を活性化する剤を同定するための方法を提供する。前記方法は、細胞集団をSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーター候補と接触させることと、前記候補剤が細胞集団内の細胞間融合を阻害または活性化するかどうかを判定することを含む。マクロファージ細胞融合を阻害し、それにより破骨細胞、巨細胞および転移癌細胞を含むが、これらに限定されない、マクロファージに由来する多核細胞の形成を阻害するSK4チャネルインヒビターの同定が特に対象となる。したがって、いくつかの態様では、細胞の集団はマクロファージ細胞を含む;他の態様では、細胞の集団は、少なくとも2つの細胞型を含み、そのうちの1つはマクロファージである。いくつかの態様では、細胞の集団はマクロファージを含み、また、集団内に存在する第2の細胞型は体細胞または癌細胞である。 Vignery, "Methods to fuse macrophages in vitro," 383-395 In: Methods in Molecular Biology, Cell Fusion (Chen ed., Humana Press 2008)を参照されたい;これは、全文が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0166】
好ましくは、このスクリーニング法は融合条件下で実行される。本明細書で使用するとき、「融合条件」は、細胞、特にマクロファージの同型または異型融合を助長する条件を意味する。融合条件は、M−CSF、RANKL、および/またはIL−4の存在下で細胞を培養することを含みうる。
【0167】
本発明は、以下の非限定的実施例を考慮してより完全に理解される。
【0168】
実施例
ゲノムワイドなcDNAマイクロアレイを用いて、融合機構に属する遺伝子を同定し、破骨細胞および巨細胞中で、マクロファージの融合開始時にのみであったが、KCNN4/SK4が高発現していることを同定した。
【0169】
材料および方法
動物および細胞。既に記載されているように、交配した129J/C57BL6を遺伝的背景に持つsk4−/−マウスを作成し、飼育し、遺伝子型を同定した (Begenisich et al. (2004) J. Biol. Chem. 279(46):47681-47687)。この動物を、12時間の光サイクルの標準的なケージに収容し、げっ歯類用の餌(Harlan Teklad #2018)および水に自由にアクセスさせた。マウスは、8週齢で安楽死させた。動的組織形態計測分析のために、屠殺の8日前及び1日前に、マウスにカルセイン(5mg/kg/日)を2回i.p注射した。
【0170】
試薬。MSC−FおよびRANKLは、PreproTech (Rocky Hill, NJ)から購入した。Phalloidin-Alexa fluor 568は、Invitrogen (Carlsbad, CA)から、骨組織スライドは、BD (Franklin Lakes, NJ)から購入した。組織培養のためのすべての供給品および試薬は、内毒素を含んでいなかった。特に明記しない限り、すべての化学製品はSigma Chemical Co. (St Louis, MO)製であった。
【0171】
慢性炎症性関節炎(CIA)。0日目にArthrogen CIAモノクローナル抗体(ArthoMAB)ブレンド(Millipore; Billerica, MA)7mg(700μl)を腹腔内注射することにより、2月齢のマウスでCIAを誘導した。このモノクローナル抗体のカクテルは、II型コラーゲンの領域CB11の中で認識されるエピトープに対するものである。3日目に、リポ多糖類(LPS)50μg(体積<100μl)を腹腔内に投与した。4日目から始めて、CIAの発症および発病について動物を毎日モニタし、各動物の注射部位を、熱、発赤、及び/又は滲出などの感染の徴候について評価した。LPSに応答して悪液質を経験している可能性が高い、「寒さ」を感じたマウスに、温リンゲル液500μlをs.c.(皮下)投与した。視覚的採点法を使用して、関節炎の重症度を毎日モニタした。採点法は、以下のとおりである:0=正常;1=1〜2本の指における紅斑および浮腫;2=>2本の指における紅斑および浮腫、または通常足根関節における軽度の紅斑および浮腫;3=足根関節を包囲する中程度の紅斑および浮腫;4=足根関節および中足骨関節を包囲する重篤な紅斑および浮腫。
【0172】
CIAの組織病理学評価。ホルマリン固定した関節(右および左の前足および後足、両方の足首および両方の膝)を2〜3日間5%のギ酸中で脱石灰化し;組織を整え、パラフィン包埋のために処理し、8μmの切片にし、トルイジンブルーで染色した。両方の後足、両方の前足、および両方の膝を包埋し、前額面で切片化し、一方、足首は、矢状面で切片化したが、前額面で後足を切片化してもよい。治療群についての情報を知らずに、すべての切片を採点した。その後以下のように群を同定した。関節炎の病変を有するマウスの足または足首を採点するとき、冒されている個々の関節の数に加えて変化の重症度も考慮しなければならない。可能性のある多数の中手骨/中足骨/指または足根骨/脛骨−足根骨関節うちの足または足首の1〜3個の関節のみが冒されているとき、変化の重症度に依存して、下記のパラメータに対し、最大で1、2または3の最高点を任意に割り当てた。3つを超える関節を含んでいた場合、下記の基準を最も重篤に冒されている関節/関節の大部分に適用した。炎症:0=正常;1=患部関節の関節滑膜および関節周囲組織における炎症細胞の最小限の浸潤;2=炎症細胞の軽度浸潤。足に言及する場合、一般的に患部関節(1〜3個の患部)に限定される;3=中程度の浮腫を伴う中程度の浸潤。足に言及する場合、患部関節、一般的に3〜4個の関節+手首または足首に限定される;4=顕著な浮腫を伴う大部分の領域を冒している顕著な浸潤、1つまたは2つの罹患していない関節が存在する場合もある;5=関節および関節周囲組織をすべて冒している重篤な浮腫を伴う重篤なびまん性浸潤。パンヌス:0=正常;1=軟骨および軟骨下骨、辺縁帯中のパンヌスの最小限の浸潤;2=患部関節における硬組織の辺縁帯破壊を伴う軽度の浸潤;3=患部関節における中程度の硬組織破壊を伴う中程度の浸潤;4=大部分の関節を冒している、関節構造の顕著な破壊を伴う顕著な浸潤;5=すべての関節を冒す、関節構造全体またはほぼ全体の破壊を伴う重篤な浸潤。軟骨損傷:0=正常;1=患部関節における明らかな軟骨細胞喪失またはコラーゲン崩壊を伴わないトルイジンブルー染色の最小限〜概ね最小限〜軽度の喪失;2=軽度=いくつかの患部関節における病巣領域の軟骨細胞喪失および/またはコラーゲン崩壊を伴うトルイジンブルー染色のv軽度の喪失;3=中程度=患部関節における多病巣性の軟骨細胞喪失および/またはコラーゲン崩壊を伴うトルイジンブルー染色の概ね中程度の喪失、いくつかのマトリックスは、重篤なマトリックス喪失領域を有する任意の患部表面に留まる;4=顕著=膝の1つの表面で軟骨の全てまたはほぼ全てが喪失している場合、大部分の関節における多病巣性の顕著な(深層の深さまで)軟骨細胞喪失および/またはコラーゲン崩壊を伴うトルイジンブルーの顕著な喪失;5=重篤=膝の2つ以上の表面で軟骨の全てまたはほぼ全てが喪失している場合、すべての関節における多病巣性の重篤な(タイドマーク(tide mark)の深さまで)軟骨細胞喪失および/またはコラーゲン崩壊を伴うトルイジンブルーの重篤なびまん性喪失;骨再吸収:0=正常;1=最小限=小さな領域の再吸収、低倍率では容易に明らかではない、患部関節において破骨細胞は稀、辺縁帯に限定;2=軽度=より多数の領域の再吸収、低倍率では容易に明らかではない、患部関節におけるより多数の破骨細胞、辺縁帯に限定;3=中程度=皮質全層の欠損を伴わない、髄骨梁および皮質骨の明らかな再吸収、いくつかの髄骨梁の喪失、低倍率で明らかな病変、患部関節におけるより多数の破骨細胞;4=顕著=皮質骨全層の欠損、多くの場合皮質表面に留まるプロファイルの変形を伴う、髄骨の顕著な喪失、多数の破骨細胞、大部分の関節が罹患;5=重篤=皮質骨全層の欠損、およびすべての関節の関節構造の破壊。各動物について、炎症、パンヌス、軟骨損傷および硬骨損傷スコアを、試験した8つの関節各々について判定した。合計(8つの関節すべて)動物スコアおよび8つの関節の平均動物スコアに加えて、個々のパラメータの各々について合計及び平均を決定した。次に、p≦0.05が有意であると設定したスチューデントt検定または他の適切な分析法を使用して、様々な群のパラメータを群A(ビヒクル)と比較した。
【0173】
頭蓋冠のLPS/インビボ骨再吸収アッセイ。インビボにおける破骨細胞形成および活性を評価するために、リポ多糖類(2μl中25μg;Sigma)を単回局所皮下頭蓋冠注射により投与した(図13を参照されたい)。5日後にマウスを屠殺し、頭蓋冠をマイクロCT、次いで、組織形態計測分析に供して、頭蓋冠/マウス当たりの侵食された骨質面積の百分率、頭蓋冠の密度および厚さを記録した。該当する場合、週末および休日を含む実験中5日間の継続期間、動物を毎日チェックした。疼痛(例えば、もしあれば、熱および体重減少を誘導する恐れがあるLPSの投与に伴って予期される副作用の結果としての食欲不振、傾眠、ケージ仲間からの孤立)の徴候を示した動物に、獣医との相談に基づいて鎮痛剤を投与した。
【0174】
硬骨X線撮影。切除した大腿骨を、3秒間30kVでMX-20(Faxitron X-ray Corporation, Wheeling, IL)を用いてX線に供した。Epson Perfection 4870を使用して、X線をスキャニングした。
【0175】
骨密度および微小構造。成長板の0.25mm近位の大腿遠位の仮想の1mmの断面の末梢骨定量的コンピュータ断層撮影(pQCT; XCT Research M; Norland Medical Systems, Fort Atkinson, WI)によって、既に記載されているように(Ballica et al. (1999) J. Bone Mineral Res. 14:1067-1074)骨密度を決定した。さらに、2,048×2,048のマトリックス、およびボクセルサイズ12μmの9m3の等方性分解能を備えたマイクロCTスキャナ(MicroCT 40; Scanco, Bassersdorf, Switzerland)で大腿遠位をスキャニングした。既に記載されているように(Li et al. (2005) J. Exp. Med. 201:1169-1177)、二次海綿質中の三次元骨梁測定を直接行った。
【0176】
DNAマイクロアレイ。RNeasy(登録商標)キット(Qiagen;Hilden, Germany)を使用して細胞サンプルから全RNAを単離し、Affymetrix (Santa Clara, CA)製のジーンチップを使用して、マイクロアレイハイブリダイゼーションに使用した。Affymetrixの発現プロトコールを使用して、全RNAからcRNAを合成した。10μgの標識及び断片化されたcRNAを、製造業者の指示に従ってHG-U133Plus2.0 ArrayまたはRAT230 Plus Arrayにハイブリダイゼーションさせ、シグナルを検出した。
【0177】
組織形態計測。発明者らが既に記載しているように((Baron et al. (1982) in Bone Histomorphometry: Techniques and Interpretation, ed. Recker et al. (CRC Press, Inc., Boca Raton, FL), pp. 13-35)、sk4+/+およびsk4−/−マウスの大腿骨および脛骨を漸増(graded)エタノール系で脱水し、メタクリル酸メチル中で脱石灰することなしに包埋した。成長板に0.25mm近位の4μmの厚さの大腿遠位の横断切片を、組織形態分析のためにVillanueva Mineralized Bone Stainで染色したが、8μmの厚さの切片は動的パラメータの分析のために染色しなかった。Osteomeasureソフトウェア(Osteometrics, Atlanta, GA)を使用して、組織形態計測を行なった。以下のパラメータを測定した:骨の占める相対的組織表面(B.Ar/T.Ar;%);1mm当たりの骨梁数(Tb.N/mm);骨梁によって占められた骨の相対的な表面(Tb.Ar;%);骨梁間の距離/間隔(μm);総骨表面当たりの破骨細胞の数(Oc/T.Ar);総硬骨周囲長当たりの破骨細胞の周囲長(Oc.Pm/B.Pm);総硬骨周囲長当たりの骨芽細胞の周囲長(Ob.Pm/B.Pm)、石灰化表面(MS/BS)、無機質付着速度(MAR)、および骨形成速度(BFR/BV)。
【0178】
骨髄および脾臓に由来するマウス破骨細胞。既に記載されているように、4〜12週齢のsk4+/+およびsk4−/−マウスからこれらの細胞を作成した(Cui et al. (2007) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 104:14436-14441; Epub 2007 August 28)。骨髄および脾臓細胞を単離し、機械的に解離させ、10%の加熱不活性化ウシ胎児血清(HyClone, Logan, UT)、100単位/mlのペニシリン−ストレプトマイシン(Gibco Invitrogen, Carlsbad, CA)、1%のMEMビタミン、1%のグルタミンおよび30ng/mlのM−CSF(PeproTech, Inc. Rocky Hill, NJ)を含有しているMEM中にて1cm2当たり1.33×106細胞の密度で培養した。40ng/mlの濃度のRANKL(PeproTech, Inc.)を添加した。3日ごとに培地を交換した。破骨細胞活性の目印であるアクチン環の形成を評価するために、8日間、スライドガラス上にて、M−CSF(20ng/ml)およびRANKL(40ng/ml)の存在下で細胞を培養し、固定し、phalloidin-Alexa 568およびTopro-3と反応させた。さらに再吸収活性を評価するために、リン酸カルシウム結晶で作製された人工骨でコーティングした骨組織スライド上で細胞を培養した。8日後、供給業者の指示に従って細胞を溶解させ、硝酸銀で基質を染色した。組織形態計測により、スライド上の再吸収された面積を記録した。
【0179】
ヒト破骨細胞。正常末梢血血液(Allcells, Emeryville, CA)を使用して、これらの細胞を作成した。Ficoll-Paqueを使用して末梢血単球を単離し、10%のFCS、組換え型ヒトM−CSF(25ng/ml)および組換え型ヒトRANKL(40ng/ml)を添加したMEME中で3×106細胞/mlの濃度で培養した。週に一度培地を交換した。
【0180】
ウエスタンブロット解析。7日間培養した後、破骨細胞を2時間血清飢餓状態にし、指示した試薬で刺激した。次に、プロテアーゼインヒビター(Complete Tablets; Roche Molecular Biochemicals)、フッ化ナトリウムおよびホスファターゼインヒビターカクテルIIを添加したLaemmliサンプルバッファの中で細胞を溶解させた。溶解産物を超音波処理し、SDS−PAGEにより分離し、Immobilon-Pメンブレンに転写し、増強化学発光(Amersham Pharmacia Biotechnology; Sunnyvale, CA)を使用して、免疫ブロッティングに供した。
【0181】
フローサイトメトリー。一次抗体で細胞を染色し、氷上で30分間培養し、洗浄バッファ(5%のFCS/PBS)で2度洗浄した。二次抗体を加えて、氷上で30分間細胞をインキュベーションした。インキュベーション後、洗浄バッファで2度細胞を洗浄し、FACS分析用洗浄バッファに懸濁させ、FACS Calibur(BD Bioscience; Franklin Lakes, NJ)を使用してFACS分析を実施した。
【0182】
リアルタイム逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(リアルタイムPCR)。製造業者の指示に従って、全RNAをTrizol(Invitrogen; Carlsbad, CA)に抽出した。1μgの全RNAおよびモロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素を使用して、第1の鎖のcDNAを合成した。PCR反応用プライマー対を表2に提供する。
【表2】
【0183】
統計分析。データは平均±1標準偏差(SD)を表す。分散分析を使用して、処理群を比較した。チューキー多重比較手順を使用して、処理群の間の対比較p値を調整した。両側p値が<0.05である場合、統計的に有意であるとした。SPSSを使用して、全ての計算を行なった。
【0184】
結果
インビトロマクロファージ融合アッセイ。
新たに単離されたラット肺胞マクロファージは、複数の別個の細胞のように見えた(図1A)。融合条件下(すなわち、M−CSFおよびRANKLの存在下)で3日間培養した後、マクロファージは多核細胞へ融合した(図1B)。有利なことに、このアッセイではほとんどドナーに差異が生じず、RANKL刺激の効果が全く示されなかった。
【0185】
中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウムチャネルの発現は、ラットの破骨細胞形成中にアップレギュレーションされる。
ラットの肺胞マクロファージの融合におけるSK4チャネルメッセージは、0時間処理マクロファージと比較した場合、1時間後には変化がなかったが、24時間後には著しく増加し(図2)、最高5日間増加した状態が保たれた。
【0186】
中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウムチャネルの発現は、ヒトの破骨細胞形成中にアップレギュレーションされる。
これらの結果は、上記マクロファージ融合アッセイにおいてヒトマクロファージ/PBMCを使用することができ、融合しているマクロファージ/PBMCにおいてSK4チャネルの発現がアップレギュレーションされたことを示す。
【0187】
新たに単離されたヒトマクロファージ/PBMCは、複数の別個の細胞のように見え、破骨細胞へ融合した。Affymetrix(登録商標)U133 Plus 2.0 GeneChip(登録商標)(図3A)およびTaqMan(登録商標)Gene Expression System(図3B)により測定したとき、SK4(SK4)チャネルの発現は融合条件下で7日間培養した後に増加し、21日目まで増加した状態が保たれた。他の血球および血液関連細胞におけるSK4チャネル発現の評価は、B細胞および樹状細胞における有意な発現増加を示した(図3C)。したがって、ヒト細胞は、ラット細胞と同様に、融合条件下でSK4チャネル発現の増加を示す。
【0188】
マウスの破骨細胞形成および破骨細胞における中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウムチャネルの役割。
結果は、SK4−/−ノックアウトマウスおよび薬理学的阻害を用いることにより、破骨細胞形成中のSK4チャネル(SK4)の役割を実証する。
【0189】
SK4−/−マウスの脾細胞は、これらの細胞がSK4+/−またはWTマウス由来の破骨細胞の細胞と同じ数または大きさを形成しなかったので、破骨細胞形成の欠陥を示した(図4A〜B)。しかし、SK4チャネルのみの欠損は、SK4−/−マウスにおいてB細胞(B220)、T細胞(CD4およびCD8)、マクロファージ/顆粒球(GR1、CD11b)、マクロファージ(F480、CD11b、CD11c)または樹状細胞(MHCII、CD8、CD11c)の相対的比率に影響を与えなかった(図5)
【0190】
同様にSK4−/−マウスの骨髄に由来するマクロファージは、脾細胞に由来する細胞で観察されたものと同様に破骨細胞形成の欠陥を示した(図6A〜B)。SK4−/−マウスのマクロファージにおけるSK4チャネルの不足は、不完全なSK4チャネル活性を示したパッチクランプ試験によって確認された(データは示さない)。
【0191】
興味深いことに、SK4−/−ノックアウトマウスは骨梁骨密度の増加を示した(データは示さない)。雄および雌のSK4−/−ノックアウトマウスは両方とも、ホモ接合体の野性型マウスと比較したとき、骨浸食を87%保護した。さらに、SK4−/−ノックアウトマウス由来の破骨細胞は、WTマウス由来の破骨細胞と比較して、リン酸カルシウム基質を効率的に再吸収しなかった(データは示さない)。
【0192】
2つのSK4チャネルインヒビター、ICA−17043およびTRAM−34を用いて、破骨細胞形成におけるSK4チャネルの役割を確認した。これらのインヒビターは、WTマウス(すなわちSK4+/+)の骨髄に由来するマクロファージにおいて用量依存的に破骨細胞形成を減じた(図7A〜B)。図7Cは、ICA−17043処理サンプルのTRAPで染色した画像を示し、ここでは、0.36μMで細胞融合が有意に阻害された。
【0193】
関節リウマチのマウスモデルにおける中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウムチャネルの役割。
これらの結果は、マウスにおけるSK4チャネルの欠損または薬理学的阻害が、関節リウマチにおける骨の再吸収を妨げたことを示す。
【0194】
反復研究では、WTマウスと比較したとき、SK4欠損マウスは関節炎スコアが著しく低下し(図8A〜B)、骨浸食に対する実質的な保護を示した。さらに、SK4欠損マウスは、足の硬骨損傷が有意に少なかった(図9A〜B)。一方、雌のSK4欠損マウスは、炎症、パンヌスおよび軟骨損傷も有意に少なかった(図9A)。
【0195】
更なる研究は、SK4欠損マウスの破骨細胞の骨塩の再吸収が不完全であったことを示した(図11A)が、これは恐らくSK4−/−細胞が、十分な数の破骨細胞を形成しなかったためである(図11B)。したがって、SK4欠損マウス中の破骨細胞の減少は、骨梁密度の増加を表す。雄および雌のSK4−/−マウスの大腿遠位は、SK4+/+マウスよりも骨梁密度が高かった(図12)。
【0196】
ヒト末梢血単核細胞において中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウムチャネルインヒビターは融合を減じる。
この実施例は、実施例4においてマウス細胞について示したものに類似の方法で、SK4チャネルインヒビターがヒト細胞の融合を妨げることを実証する。
【0197】
ICA−17043およびTRAM−34は、用量依存的にインビトロにおいてヒトの破骨細胞形成を阻害した(図10A〜B)。ICA−17043は0.3μMのIC50で細胞融合を阻害した;一方、TRAM−34は0.8μMのIC50で細胞融合を阻害した;同様に、ICA−17043およびTRAM−34は、用量依存的な方法で破骨細胞数だけでなく破骨細胞の表面積も減少させた。
【0198】
頭蓋冠のLPS/インビボ骨吸収アッセイ。
これらの結果は、SK4欠損(SK4−/−)マウスが局所LPS頭蓋冠注射に応答して、インビボにおいて破骨細胞形成を減少させることを実証する。
【0199】
関節リウマチを引き起こす炎症におけるSK4の役割を明らかにするために、頭蓋冠上にリポ多糖類(LPS)を局所的に皮下注射して、骨を再吸収する破骨細胞の形成を導く炎症反応を局所、迅速、そして効率的に誘導した。解剖学的に、表在する血管および神経が存在せず、配置が容易である頭蓋冠を、縫合糸によって分離する(図14を参照されたい)。図14および15A〜Cに結果を示す。
【0200】
SK4、ひいてはSK4チャネルが存在しないと、LPSの局注に応答して骨吸収が劇的に妨げられた(図14)。SK4+/+マウスの頭蓋冠硬骨中の破骨細胞により穴が作製されるが、SK4欠損マウスの頭蓋冠硬骨中では作製されない場合、骨表面が増大することに留意されたい。SK4欠損マウスは、LPS注射の5日後に、厚い頭蓋冠骨厚さおよび高い骨密度を維持する(図15A〜Cを参照されたい)。
【0201】
特に明記されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が関係する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書において記載されるものに類似しているか、または等価である任意の方法および材料を、本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料が本明細書に記載されている。
【0202】
前述の記載および関連する図面において示された教示の利点を有する本明細書に記載される発明の、多くの変更および他の態様を当業者は思い浮かべるであろう。したがって、本発明は、開示された特定の態様に限定されるものではなく、また、変更および他の態様が、添付の特許請求の範囲および本明細書に開示される態様の一覧の範囲内に含まれることを意図することが理解されるべきである。特定の用語が本明細書において使用されるが、それらは、限定する目的ではなく包括的および記述的な意味のみで使用される。
【0203】
明細書の中で言及された刊行物および特許出願はすべて、本発明が属する分野の当業者のレベルを示す。個々の刊行物または特許出願が、具体的かつ個別に参照により組み込まれることが指示されたかのように、同程度にすべての刊行物および特許出願が参照により組み込まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(SK4)チャネルを発現する細胞の細胞融合を調節するための方法であって、前記細胞と、有効量のSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターとを接触させる工程を含み、細胞融合が調節される方法。
【請求項2】
細胞融合が阻害される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
細胞が血球系細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
細胞が、マクロファージ、樹状細胞およびB細胞からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
細胞がマクロファージである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
細胞融合が同型または異型融合である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
SK4チャネルインヒビターが、阻害性核酸、モノクローナル抗体および低分子インヒビターからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
阻害性核酸が、配列番号2記載の配列を含むSK4チャネルの発現を標的にする、請求項7の方法。
【請求項9】
モノクローナル抗体が、SK4チャネルの孔領域または低分子結合ドメインを認識する、請求項7記載の方法。
【請求項10】
低分子インヒビターが、1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾール;2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミド;1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(4−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;および1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−テトラゾールからなる群より選択される、請求項7記載の方法。
【請求項11】
低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾールである、請求項7記載の方法。
【請求項12】
低分子インヒビターが2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミドである、請求項7記載の方法。
【請求項13】
低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1Hピラゾールである、請求項7記載の方法。
【請求項14】
細胞内におけるSK4チャネルの発現または活性をアッセイする工程をさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項15】
方法がインビボにおける方法であり、そして有効量のSK4チャネルインヒビターが、異常な細胞融合が生じているか、または異常な細胞融合が生じていると思われる被験体に提供される治療上有効な量である、請求項1記載の方法。
【請求項16】
治療上有効な量の抗炎症剤、抗骨喪失剤、免疫抑制剤または化学療法剤を被験体に同時提供する工程をさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
破骨細胞の分化および機能を調節するための方法であって、破骨細胞または破骨細胞前駆体と、有効量の中間コンダクタンスカリウム活性化カリウム(SK4)チャネルインヒビターまたはアクチベーターとを接触させる工程を含む方法。
【請求項18】
破骨細胞形成が阻害される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
SK4チャネルインヒビターが、阻害性核酸、モノクローナル抗体および低分子インヒビターからなる群より選択される、請求項17記載の方法。
【請求項20】
モノクローナル抗体が、SK4チャネルの孔領域または低分子結合ドメインを認識する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
低分子インヒビターが、1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾール;2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミド;1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(4−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;および1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−テトラゾールからなる群より選択される、請求項19記載の方法。
【請求項22】
低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾールである、請求項19記載の方法。
【請求項23】
低分子インヒビターが2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミドである、請求項19記載の方法。
【請求項24】
低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1Hピラゾールである、請求項19記載の方法。
【請求項25】
方法がインビボにおける方法であり、そして有効量のSK4チャネルインヒビターが、異常な破骨細胞の分化または機能が生じているか、または異常な破骨細胞の分化または機能が生じていると思われる被験体に提供される治療上有効な量である、請求項17記載の方法。
【請求項26】
治療上有効な量の抗炎症剤、抗骨喪失剤、免疫抑制剤または化学療法剤を被験体に同時投与する工程をさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
骨喪失が生じやすいか、または骨喪失が生じている被験体の骨喪失を予防または治療するための方法であって、治療上有効な量の中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(SK4)チャネルインヒビターを前記被験体に投与して、破骨細胞の形成を阻害し、被験体の骨喪失が予防または治療される方法。
【請求項28】
SK4チャネルインヒビターが、阻害性核酸、モノクローナル抗体および低分子インヒビターからなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
モノクローナル抗体が、SK4チャネルの孔領域または低分子結合ドメインを認識する、請求項28記載の方法。
【請求項30】
低分子インヒビターが、1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾール;2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミド;1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(4−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;および1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−テトラゾールからなる群より選択される、請求項28記載の方法。
【請求項31】
低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾールである、請求項28記載の方法。
【請求項32】
低分子インヒビターが2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミドである、請求項28記載の方法。
【請求項33】
低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1Hピラゾールである、請求項28記載の方法。
【請求項34】
治療上有効な量の抗炎症剤、抗骨喪失剤、免疫抑制剤または化学療法剤を被験体に同時投与する工程をさらに含む、請求項27記載の方法。
【請求項35】
炎症性または自己免疫疾患に罹患しやすいか、または炎症性または自己免疫疾患に罹患している被験体の、巨細胞形成を特徴とする炎症性または自己免疫疾患を予防または治療するための方法であって、治療上有効な量の中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(SK4)チャネルインヒビターを前記被験体に投与して、巨細胞の形成を阻害する工程を含み、前記被験体の炎症性または自己免疫疾患が予防または治療される方法。
【請求項36】
SK4チャネルインヒビターが、阻害性核酸、モノクローナル抗体および低分子インヒビターからなる群より選択される、請求項35記載の方法。
【請求項37】
モノクローナル抗体が、SK4チャネルの孔領域または低分子結合ドメインを認識する、請求項36記載の方法。
【請求項38】
低分子インヒビターが、1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾール;2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミド;1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(4−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;および1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−テトラゾールからなる群より選択される、請求項36記載の方法。
【請求項39】
低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾールである、請求項36記載の方法。
【請求項40】
低分子インヒビターが2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミドである、請求項36記載の方法。
【請求項41】
低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1Hピラゾールである、請求項36記載の方法。
【請求項42】
治療上有効な量の抗炎症剤、抗骨喪失剤、免疫抑制剤または化学療法剤を被験体に同時投与する工程をさらに含む、請求項35記載の方法。
【請求項43】
被験体内に位置する部位に移植物または移植片を有する被験体の移植物または移植片拒絶反応を予防するための方法であって、治療上有効な量の中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(K)チャネルインヒビターを前記被験体に投与して、前記部位または前記部位近傍における巨細胞の形成を阻害する工程を含み、前記被験体の移植物または移植片拒絶反応が予防される方法。
【請求項44】
SK4チャネルインヒビターが、阻害性核酸、モノクローナル抗体および低分子インヒビターからなる群より選択される、請求項43記載の方法。
【請求項45】
モノクローナル抗体が、SK4チャネルの孔領域または低分子結合ドメインを認識する、請求項44記載の方法。
【請求項46】
低分子インヒビターが、1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾール;2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミド;1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(4−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;および1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−テトラゾールからなる群より選択される、請求項44記載の方法。
【請求項47】
低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾールである、請求項44記載の方法。
【請求項48】
低分子インヒビターが2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミドである、請求項44記載の方法。
【請求項49】
低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1Hピラゾールである、請求項44記載の方法。
【請求項50】
治療上有効な量の抗炎症剤、または免疫抑制剤を被験体に同時投与することをさらに含む、請求項43記載の方法。
【請求項51】
移植片が細胞、器官または組織移植片である、請求項43記載の方法。
【請求項52】
癌に罹患している被験体の癌転移を予防する方法であって、治療上有効な量の中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(SK4)チャネルインヒビターを前記被験体に投与して、転移癌細胞の形成を阻害する工程を含み、前記被験体の癌転移が予防される方法。
【請求項53】
SK4チャネルインヒビターが、阻害性核酸、モノクローナル抗体および低分子インヒビターからなる群より選択される、請求項52記載の方法。
【請求項54】
モノクローナル抗体が、SK4チャネルの孔領域または低分子結合ドメインを認識する、請求項53記載の方法。
【請求項55】
低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾール;2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミド;1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(4−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)
ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;および1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−テトラゾールからなる群より選択される、請求項53記載の方法。
【請求項56】
低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾールである、請求項53記載の方法。
【請求項57】
低分子インヒビターが2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミドである、請求項53記載の方法。
【請求項58】
低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1Hピラゾールである、請求項53記載の方法。
【請求項59】
治療上有効な量の抗炎症剤、抗骨喪失剤、免疫抑制剤または化学療法剤を被験体に同時投与する工程をさらに含む、請求項52記載の方法。
【請求項60】
細胞間融合を阻害する中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(SK4)チャネルインヒビターを同定する方法であって:
細胞集団とSK4チャネルインヒビターの候補とを接触させる工程;および
前記候補剤が細胞集団内の細胞間融合を阻害するかどうかを判定する工程;
を含む方法。
【請求項61】
細胞集団がマクロファージを含み、SK4チャネルインヒビターがマクロファージの細胞間融合を阻害する、請求項60記載の方法。
【請求項62】
細胞集団が少なくとも2種類の細胞型を含み、そのうちの1種がマクロファージである、請求項60記載の方法。
【請求項63】
有効量の中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(SK4)チャネルインヒビター;および
抗炎症剤、抗骨喪失剤、免疫抑制剤および化学療法剤からなる群より選択される治療剤
を含む組成物。
【請求項64】
SK4チャネルインヒビターが、阻害性核酸、モノクローナル抗体および低分子インヒビターからなる群より選択される、請求項63記載の組成物。
【請求項65】
モノクローナル抗体が、SK4チャネルの孔領域または低分子結合ドメインを認識する、請求項64記載の組成物。
【請求項66】
低分子インヒビターが、1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾール;2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミド;1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(4−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;および1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−テトラゾールからなる群より選択される、請求項64記載の組成物。
【請求項67】
低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾールである、請求項64記載の組成物。
【請求項68】
低分子インヒビターが2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミドである、請求項64記載の組成物。
【請求項69】
低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾールである、請求項64記載の組成物。
【請求項70】
薬学的に許容しうる担体をさらに含む、請求項63の組成物。
【請求項1】
中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(SK4)チャネルを発現する細胞の細胞融合を調節するための方法であって、前記細胞と、有効量のSK4チャネルインヒビターまたはアクチベーターとを接触させる工程を含み、細胞融合が調節される方法。
【請求項2】
細胞融合が阻害される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
細胞が血球系細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
細胞が、マクロファージ、樹状細胞およびB細胞からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
細胞がマクロファージである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
細胞融合が同型または異型融合である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
SK4チャネルインヒビターが、阻害性核酸、モノクローナル抗体および低分子インヒビターからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
阻害性核酸が、配列番号2記載の配列を含むSK4チャネルの発現を標的にする、請求項7の方法。
【請求項9】
モノクローナル抗体が、SK4チャネルの孔領域または低分子結合ドメインを認識する、請求項7記載の方法。
【請求項10】
低分子インヒビターが、1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾール;2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミド;1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(4−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;および1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−テトラゾールからなる群より選択される、請求項7記載の方法。
【請求項11】
低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾールである、請求項7記載の方法。
【請求項12】
低分子インヒビターが2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミドである、請求項7記載の方法。
【請求項13】
低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1Hピラゾールである、請求項7記載の方法。
【請求項14】
細胞内におけるSK4チャネルの発現または活性をアッセイする工程をさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項15】
方法がインビボにおける方法であり、そして有効量のSK4チャネルインヒビターが、異常な細胞融合が生じているか、または異常な細胞融合が生じていると思われる被験体に提供される治療上有効な量である、請求項1記載の方法。
【請求項16】
治療上有効な量の抗炎症剤、抗骨喪失剤、免疫抑制剤または化学療法剤を被験体に同時提供する工程をさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
破骨細胞の分化および機能を調節するための方法であって、破骨細胞または破骨細胞前駆体と、有効量の中間コンダクタンスカリウム活性化カリウム(SK4)チャネルインヒビターまたはアクチベーターとを接触させる工程を含む方法。
【請求項18】
破骨細胞形成が阻害される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
SK4チャネルインヒビターが、阻害性核酸、モノクローナル抗体および低分子インヒビターからなる群より選択される、請求項17記載の方法。
【請求項20】
モノクローナル抗体が、SK4チャネルの孔領域または低分子結合ドメインを認識する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
低分子インヒビターが、1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾール;2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミド;1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(4−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;および1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−テトラゾールからなる群より選択される、請求項19記載の方法。
【請求項22】
低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾールである、請求項19記載の方法。
【請求項23】
低分子インヒビターが2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミドである、請求項19記載の方法。
【請求項24】
低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1Hピラゾールである、請求項19記載の方法。
【請求項25】
方法がインビボにおける方法であり、そして有効量のSK4チャネルインヒビターが、異常な破骨細胞の分化または機能が生じているか、または異常な破骨細胞の分化または機能が生じていると思われる被験体に提供される治療上有効な量である、請求項17記載の方法。
【請求項26】
治療上有効な量の抗炎症剤、抗骨喪失剤、免疫抑制剤または化学療法剤を被験体に同時投与する工程をさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
骨喪失が生じやすいか、または骨喪失が生じている被験体の骨喪失を予防または治療するための方法であって、治療上有効な量の中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(SK4)チャネルインヒビターを前記被験体に投与して、破骨細胞の形成を阻害し、被験体の骨喪失が予防または治療される方法。
【請求項28】
SK4チャネルインヒビターが、阻害性核酸、モノクローナル抗体および低分子インヒビターからなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
モノクローナル抗体が、SK4チャネルの孔領域または低分子結合ドメインを認識する、請求項28記載の方法。
【請求項30】
低分子インヒビターが、1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾール;2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミド;1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(4−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;および1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−テトラゾールからなる群より選択される、請求項28記載の方法。
【請求項31】
低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾールである、請求項28記載の方法。
【請求項32】
低分子インヒビターが2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミドである、請求項28記載の方法。
【請求項33】
低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1Hピラゾールである、請求項28記載の方法。
【請求項34】
治療上有効な量の抗炎症剤、抗骨喪失剤、免疫抑制剤または化学療法剤を被験体に同時投与する工程をさらに含む、請求項27記載の方法。
【請求項35】
炎症性または自己免疫疾患に罹患しやすいか、または炎症性または自己免疫疾患に罹患している被験体の、巨細胞形成を特徴とする炎症性または自己免疫疾患を予防または治療するための方法であって、治療上有効な量の中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(SK4)チャネルインヒビターを前記被験体に投与して、巨細胞の形成を阻害する工程を含み、前記被験体の炎症性または自己免疫疾患が予防または治療される方法。
【請求項36】
SK4チャネルインヒビターが、阻害性核酸、モノクローナル抗体および低分子インヒビターからなる群より選択される、請求項35記載の方法。
【請求項37】
モノクローナル抗体が、SK4チャネルの孔領域または低分子結合ドメインを認識する、請求項36記載の方法。
【請求項38】
低分子インヒビターが、1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾール;2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミド;1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(4−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;および1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−テトラゾールからなる群より選択される、請求項36記載の方法。
【請求項39】
低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾールである、請求項36記載の方法。
【請求項40】
低分子インヒビターが2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミドである、請求項36記載の方法。
【請求項41】
低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1Hピラゾールである、請求項36記載の方法。
【請求項42】
治療上有効な量の抗炎症剤、抗骨喪失剤、免疫抑制剤または化学療法剤を被験体に同時投与する工程をさらに含む、請求項35記載の方法。
【請求項43】
被験体内に位置する部位に移植物または移植片を有する被験体の移植物または移植片拒絶反応を予防するための方法であって、治療上有効な量の中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(K)チャネルインヒビターを前記被験体に投与して、前記部位または前記部位近傍における巨細胞の形成を阻害する工程を含み、前記被験体の移植物または移植片拒絶反応が予防される方法。
【請求項44】
SK4チャネルインヒビターが、阻害性核酸、モノクローナル抗体および低分子インヒビターからなる群より選択される、請求項43記載の方法。
【請求項45】
モノクローナル抗体が、SK4チャネルの孔領域または低分子結合ドメインを認識する、請求項44記載の方法。
【請求項46】
低分子インヒビターが、1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾール;2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミド;1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(4−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;および1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−テトラゾールからなる群より選択される、請求項44記載の方法。
【請求項47】
低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾールである、請求項44記載の方法。
【請求項48】
低分子インヒビターが2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミドである、請求項44記載の方法。
【請求項49】
低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1Hピラゾールである、請求項44記載の方法。
【請求項50】
治療上有効な量の抗炎症剤、または免疫抑制剤を被験体に同時投与することをさらに含む、請求項43記載の方法。
【請求項51】
移植片が細胞、器官または組織移植片である、請求項43記載の方法。
【請求項52】
癌に罹患している被験体の癌転移を予防する方法であって、治療上有効な量の中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(SK4)チャネルインヒビターを前記被験体に投与して、転移癌細胞の形成を阻害する工程を含み、前記被験体の癌転移が予防される方法。
【請求項53】
SK4チャネルインヒビターが、阻害性核酸、モノクローナル抗体および低分子インヒビターからなる群より選択される、請求項52記載の方法。
【請求項54】
モノクローナル抗体が、SK4チャネルの孔領域または低分子結合ドメインを認識する、請求項53記載の方法。
【請求項55】
低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾール;2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミド;1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(4−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)
ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;および1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−テトラゾールからなる群より選択される、請求項53記載の方法。
【請求項56】
低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾールである、請求項53記載の方法。
【請求項57】
低分子インヒビターが2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミドである、請求項53記載の方法。
【請求項58】
低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1Hピラゾールである、請求項53記載の方法。
【請求項59】
治療上有効な量の抗炎症剤、抗骨喪失剤、免疫抑制剤または化学療法剤を被験体に同時投与する工程をさらに含む、請求項52記載の方法。
【請求項60】
細胞間融合を阻害する中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(SK4)チャネルインヒビターを同定する方法であって:
細胞集団とSK4チャネルインヒビターの候補とを接触させる工程;および
前記候補剤が細胞集団内の細胞間融合を阻害するかどうかを判定する工程;
を含む方法。
【請求項61】
細胞集団がマクロファージを含み、SK4チャネルインヒビターがマクロファージの細胞間融合を阻害する、請求項60記載の方法。
【請求項62】
細胞集団が少なくとも2種類の細胞型を含み、そのうちの1種がマクロファージである、請求項60記載の方法。
【請求項63】
有効量の中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(SK4)チャネルインヒビター;および
抗炎症剤、抗骨喪失剤、免疫抑制剤および化学療法剤からなる群より選択される治療剤
を含む組成物。
【請求項64】
SK4チャネルインヒビターが、阻害性核酸、モノクローナル抗体および低分子インヒビターからなる群より選択される、請求項63記載の組成物。
【請求項65】
モノクローナル抗体が、SK4チャネルの孔領域または低分子結合ドメインを認識する、請求項64記載の組成物。
【請求項66】
低分子インヒビターが、1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾール;2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミド;1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(4−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;1−[(2−フルオロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾール;および1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−テトラゾールからなる群より選択される、請求項64記載の組成物。
【請求項67】
低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)−ジフェニルメチル]−1H−イミダゾールである、請求項64記載の組成物。
【請求項68】
低分子インヒビターが2,2−ビス(4−フルオロフェニル)−2−フェニルアセトアミドである、請求項64記載の組成物。
【請求項69】
低分子インヒビターが1−[(2−クロロフェニル)ジフェニルメチル]−1H−ピラゾールである、請求項64記載の組成物。
【請求項70】
薬学的に許容しうる担体をさらに含む、請求項63の組成物。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【公表番号】特表2012−508010(P2012−508010A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535566(P2011−535566)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/006050
【国際公開番号】WO2010/053584
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【出願人】(392019352)イェール ユニバーシティー (38)
【氏名又は名称原語表記】YALE UNIVERSITY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/006050
【国際公開番号】WO2010/053584
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【出願人】(392019352)イェール ユニバーシティー (38)
【氏名又は名称原語表記】YALE UNIVERSITY
【Fターム(参考)】
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