説明

中間転写ベルトの製造方法、該製造方法により得られた中間転写ベルト、及びそれを用いた画像形成装置

【課題】 塗膜の欠陥、外観不良を無くし均一な表面性を確保することが可能な中間転写ベルトの製造方法である。
【解決手段】 像担持体上に形成された潜像をトナーにより現像して得られたトナー像が転写される中間転写ベルトの製造方法であって、含水率が1〜10wt%のカーボンブラック、樹脂もしくは樹脂前駆体及び溶媒を含む分散液を作製する工程と、前記分散液中のカーボンブラック含有量を調節して塗工液を作製する工程と、前記塗工液を金型の外面に塗布し、乾燥又は硬化させることにより製膜化する工程と、前記膜を脱型する工程とを有する中間転写ベルトの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コピー・プリンター等の画像形成装置に装備される中間転写ベルトの製造方法、該製造方法により得られた中間転写ベルト、及びそれを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子写真装置等の画像形成装置においては様々な用途で中間転写ベルトが部材として用いられている。特に近年のフルカラー電子写真装置においては、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色の現像画像を、一旦、シームレスの中間転写媒ベルト上に色重ねし、その後一括して紙などの転写媒体に転写する中間転写ベルト方式が用いられている。
【0003】
このような中間転写ベルト方式は、1つの感光体に対して4色の現像器を用いるシステムで用いられていたが、プリント速度が遅いという欠点があった。高速プリントとしては、感光体を4色分並べ、各色を連続して紙に転写する4連タンデム方式が用いられている。しかし、この方式では紙の環境による変動などもあり、各色画像を重ねる位置精度を合わせることが非常に困難であり、色ずれ画像を引き起こしていた。そこで近年では、4連タンデム方式に中間転写方式を採用することが主流になってきている。
【0004】
このため、中間転写ベルトとしても従来よりも高速、位置精度などの要求に対応する特性を満足することが必要となってきている。特に、位置精度に対しては、連続使用によるベルト自体の伸び等の変形による変動を抑えることが求められる。また、中間転写ベルトは装置の広い領域に渡ってレイアウトされ、転写のための高電圧を印加されるため、電気的特性だけでは無く均一性の高い表面性、さらに、難燃性も求められている。そこで中間転写ベルトを構成する樹脂としては、主に、高弾性率で高耐熱樹脂であるポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などが用いられている。
【0005】
また、中間転写方式においては、帯電したトナーによる画像を電界の作用によって転写させるため、中間転写ベルトの抵抗値を均一に調整する必要がある。抵抗値としては、一般的に表面抵抗値として、1×10〜1×1013Ω/□、体積抵抗値として、1×10〜1×1012Ωcm程度に調整される。このような抵抗値は、有機または無機の導電性微粒子、導電性高分子やイオン導電剤などの材料を樹脂中に含有させることによって調整されるが、中間転写ベルトの樹脂としてポリイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂を用いる場合には、特にカーボンブラックが好ましく用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、中間転写ベルトを製造する方法としては、一般的に、上記したポリイミド樹脂等のベルト構成樹脂やカーボンブラック等の抵抗調整剤等を溶剤に分散ないし溶解させて樹脂塗工液とし、これを金型に塗布し、その後、これを乾燥、硬化して製膜した後、当該膜(ベルト)を脱型して製造される(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のようにベルトを製造する場合の技術的な課題として、塗膜の外観不良(欠陥)が起こりやすいと言う問題があった。特に、金型の外面に塗布された塗工液を乾燥すると表面(空気面)が先に硬化しやすくなってしまうため、内部の溶媒が蒸発しきれずに塗膜と金型の間に残りやすくなり、そのまま残った溶媒はさらに加熱されて気化することにより体積が膨張し、結果としてその部分がふくれて塗膜欠陥となってしまうという問題があった。また、金型の外面に塗布した場合は、乾燥中の塗膜の熱収縮により金型への抱きつきが発生して脱型がしづらくなるが、塗膜に欠陥があるとそこが脱型時に破損しやすいと言う問題もあった。
【0008】
上記を鑑みて、本発明は、金型の外面に塗工液を塗布し、これを乾燥、硬化することにより製膜した後、該膜を金型から脱型することにより製造しても、ベルト脱型性が良好で、得られる塗膜の欠陥、外観不良が無く、得られる塗膜の欠陥、外観不良が無く、近年の高画質化、高速化等の要求特性を満足させうる均一な表面性を確保することが可能な中間転写ベルトの製造方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、金型に塗布するカーボンブラック含有樹脂塗工液として、所定範囲の含水率を有するカーボンブラックを微分散状態で含有するもの用いることで、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を為すに到った。すなわち、本発明は、以下に記載の特徴を有するものである。
【0010】
<1>
像担持体上に形成された潜像をトナーにより現像して得られたトナー像が転写される中間転写ベルトの製造方法であって、含水率が1〜10wt%のカーボンブラック、樹脂もしくは樹脂前駆体及び溶媒を含む分散液を作製する工程と、
前記分散液中のカーボンブラック含有量を調節して塗工液を作製する工程と、前記塗工液を金型の外面に塗布し、乾燥又は硬化させることにより製膜化する工程と、前記膜を脱型する工程と、を有する中間転写ベルトの製造方法である。
<2>
前記樹脂がポリイミド、またはポリアミドイミド含むことを特徴とする<1>に記載の中間転写ベルトの製造方法である。
<3>
前記分散液のカーボンブラックの含有量が5wt%以上25wt%以下であることを特徴とする<1>または<2>に記載の中間転写ベルトの製造方法である。
<4>
前記分散液を作製する工程をパス方式により行うことを特徴とする、<1>から<3>のいずれかに記載の中間転写ベルトの製造方法である。
<5>
<1>から<4>のいずれかに記載の製造方法により製造された中間転写ベルトであって、シームレスベルトであることを特徴とする中間転写ベルトである。
<6>
<5>に記載の中間転写ベルトを備える画像形成装置である。
<7>
前記画像形成装置がフルカラー画像形成装置であって、各色の現像手段を有する複数の潜像担持体を直列に配置してなる<6>に記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ベルト脱型性が良好で、得られる塗膜の欠陥、外観不良が無く、均一な表面性を確保することが可能な中間転写ベルトの製造方法、当該製法により得られる中間転写ベルト、および当該ベルトを備える画像形成装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る画像形成装置のベルト部材に用いられるシームレスベルトと、それを用いた画像形成装置を説明するための要部模式図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置のベルト部材として配備される1つの中間転写ベルトに沿って複数の感光体ドラムが並設されている画像形成装置の一構成例を示す要部模式図である。
【図3】カーボンブラックの分散液を製造するパス方式の分散装置の模式図を示す。
【図4】カーボンブラックの分散液を製造する循環方式の分散装置の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、像担持体上に形成された潜像をトナーにより現像して得られたトナー像が転写される中間転写ベルトの製造方法であって、含水率が1〜10wt%のカーボンブラック、樹脂もしくは樹脂前駆体及び溶媒を含む分散液を作製する工程と、前記分散液中のカーボンブラック含有量を調節して塗工液を作製する工程と、前記塗工液を金型の外面に塗布し、乾燥又は硬化させることにより製膜化する工程と、前記膜を脱型する工程とを有することを特徴とするものである。
以下、各工程について詳細に説明する。
【0014】
<分散液作製工程>
分散液を作製する工程では、溶媒に少なくとも樹脂、電気抵抗調整剤としての所定含水率のカーボンブラックを混合した溶液を、ビーズミル、ボールミル、ナノマイザー、ペイントシェーカー、ジェットミルなどの分散器を用いてカーボンブラックを分散することにより分散液を作製する。このとき、必要に応じて各種分散剤などの添加剤を含有しても良い。また、分散にあたっては、プレ混合工程や異なる分散機による多段階分散などの工程をとることもできる。
【0015】
本発明においては、この分散液におけるカーボンの分散状態が重要である。カーボンブラックの分散状態を表す指標としては、一般的には粒径がある。粒径を測定する方法としては、遠心分離法、レーザー回折法、動的光散乱法などによる計測器にて計測される。例えば、動的光散乱法の計測器にて測定される粒径としては、体積平均粒径として、150〜300nm程度に分散された状態が好ましい。
【0016】
一例として、ビーズミルによる分散について説明する。
図3には、パス方式によるビーズミル分散装置を示した。タンクA301には、分散液が投入されており、送液ポンプ303にて液が分散機302に送られる。分散機302内にはある大きさのビーズが充填されており、これが内部で高速回転する機構になっており、この回転よるビーズによる摺擦力によりカーボンブラックが分散・微細化される。微粒化された液は、タンクB304に回収され、1パスが終了する。
このときの分散力は、ビーズの種類、径により決まり、これらを適当な条件を設定する。タンクB304に回収された液の分散状態が不十分な場合は、タンクA301へ再度投入し、再度分散を実施する。パス方式では、十分な分散状態の分散液が得られるまで、これを繰り返す。
【0017】
図4には、循環方式によるビーズミル装置を示した。
図3と異なり、分散機にて分散された液は、タンクA401に戻る。分散前の液と分散後の液が十分に攪拌されながら分散が進行する。この方式では、分散は、分散機から戻る液の状態を評価する。一般的には、分散に要する時間にて管理を行う。
【0018】
本発明においては、カーボンブラック分散液に使用するカーボンブラック含水率を1〜10wt%となるように調整したものを使用する。含水率が10%より大きなカーボンブラックを使用した場合は、金型と塗膜の間に溶媒が残りやすくなり、塗膜がふくれやすくなり外観不良品が多くなるため好ましくない。逆に含水率を1%未満とした場合は、金型と塗膜の間の接着性が強くなりすぎて、脱型が困難になるため好ましくない。
上記カーボンブラックの含水率の測定は、たとえばケツト科学研究所社製の赤外線水分計FD−800を用いて計測することができる。
【0019】
カーボンブラック含水率の調整には、まず吸水させる場合は調湿された、たとえば50〜80wt%程度に調整された恒温槽やデシケータ内に保管して行う。逆にカーボンブラック含水率を減らす場合は、たとえば100℃付近に加熱された乾燥機内に入れることにより調整することができる。所要時間はどちらも5分〜5時間程度で完了する。
【0020】
カーボンブラックとしては、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ガスブラック等が挙げられる。これらの中から、用いる溶媒や樹脂に相性の良いものを選択して用いる。また、これらのカーボンブラックを適宜表面処理したものも用いることができる。抵抗調整剤としては、カーボンブラックを用いるが、その他、有機又は無機の導電性微粒子やイオン導電剤、導電性高分子等の抵抗調整剤を併用しても良い。
【0021】
また、樹脂としては、特に限定されないが、高弾性率、高耐熱樹脂、難燃性等の観点からPVDF、ETFEなどのフッ素系樹脂、ポリイミドまたはポリアミドイミド等のイミド系樹脂が好ましいが、機械的強度の面や抵抗制御充填剤の分散性の面で、ポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂が好ましい。ポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂を用いることで、耐熱性、耐薬品性、耐放射線性に優れた中間転写ベルトが得られる。
【0022】
<ポリイミド>
本発明に用いられるポリイミドは、一般的に知られている芳香族多価カルボン酸無水物またはその誘導体と芳香族ジアミンとの反応によって、ポリアミック酸(ポリイミド前駆体)を経由して得られる。すなわち、ポリイミドは、その剛直な主鎖構造により溶媒等に対して不溶であり、また不融の性質を持つため、芳香族多価カルボン酸無水物と芳香族ジアミンから、まず有機溶媒に可溶なポリイミド前駆体(ポリアミック酸、またはポリアミド酸)を合成し、この段階で様々な方法で成形加工が行われ、その後ポリアミック酸を加熱もしくは化学的な方法で脱水反応させて環化(イミド化)しポリイミドとする。反応の概略を下記式(1)に示す。
【0023】
【化1】

【0024】
(式中、Ar1は少なくとも1つの炭素6員環を含む4価の芳香族残基を示し、Ar2は少なくとも1つの炭素6員環を含む2価の芳香族残基を示す。)
【0025】
上記芳香族多価カルボン酸無水物の具体例としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシルフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらは単独または2種以上混合して用いられる。
【0026】
次に、芳香族多価カルボン酸無水物と反応させる芳香族ジアミンの具体例としては、例えば、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、1,1−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、1,1−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−エタン、1,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、1,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ブタン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、4,4’−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ジフェニルエーテル、4,4’−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ジフェニルエーテル、4,4’−ビス〔4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ〕ベンゾフェノン、4,4’−ビス〔4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ〕ジフェニルスルホン、ビス〔4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル〕スルホン、1,4−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン等が挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して使用される。本発明の物性を効果的に発現するために、特に、少なくとも成分の1つとして、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを用いることが好ましい。
【0027】
上記芳香族多価カルボン酸無水物成分とジアミン成分とを略等モル用いて有機極性溶媒中で重合反応させることにより、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)を得ることができる。下記にポリアミック酸の製造方法について具体的に説明する。
【0028】
なお、ポリアミック酸の重合反応に使用される有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系またはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独または混合溶媒として用いるのが望ましい。溶媒は、ポリアミック酸を溶解するものであれば特に限定されないが、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンが特に好ましい。
【0029】
ポリイミド前駆体を製造する場合の例として、まず、アルゴン、窒素などの不活性ガス雰囲気下において、1種または複数種のジアミンを上記の有機溶媒に溶解するか、またはスラリー状に分散させる。この溶液に前記した少なくとも1種の芳香族多価カルボン酸無水物、またはその誘導体を添加(固体状態のままでも、有機溶媒に溶解した溶液状態でも、スラリー状態でもよい)すると、発熱を伴って開環重付加反応が起こり、急速に溶液の粘度増大が見られ、高分子量のポリアミック酸溶液が得られる。この際の反応温度は、通常−20℃〜100℃、望ましくは60℃以下に制御することが好ましい。反応時間は、30分〜12時間程度である。
【0030】
上記は一例であり、反応における上記添加手順とは逆に、まず芳香族多価カルボン酸無水物またはその誘導体を有機溶媒に溶解または拡散させておき、この溶液中に前記ジアミンを添加させてもよい。ジアミンの添加は、固体状態のままでも、有機溶媒に溶解した溶液状態でも、スラリー状態でもよい。すなわち、酸二無水物成分と、ジアミン成分との混合順序は限定されない。さらには、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを同時に有機極性溶媒中に添加して反応させてもよい。
【0031】
上記のようにして、芳香族多価カルボン酸無水物またはその誘導体と、芳香族ジアミン成分とをおよそ等モル、有機極性溶媒中で重合反応することにより、ポリアミック酸が有機極性溶媒中に均一に溶解した状態でポリイミド前駆体溶液が得られる。
【0032】
本発明におけるポリイミド前駆体溶液(ポリアミック酸溶液)は、上記のようにして合成したものを使用することが可能であるが、簡便には有機溶媒にポリアミック酸組成物が溶解された状態の、いわゆるポリイミドワニスとして上市されているものを入手して使用することもできる。このような例としては、トレニース(東レ社製)、U−ワニス(宇部興産社製)、リカコート(新日本理化社製)、オプトマー(JSR社製)、SE812(日産化学社製)、CRC8000(住友ベークライト社製)等が代表的なものとして挙げられる。
【0033】
合成または入手したポリアミック酸溶液に、必要に応じて充填剤を混合・分散して塗工液が調製される。塗工液を後述のように支持体(成形用の型)に塗布した後、加熱等の処理することにより、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸からポリイミドへの転化(イミド化)が行われる。
【0034】
ポリアミック酸は、加熱する方法(1)、または化学的方法(2)によってイミド化することができる。加熱する方法(1)は、ポリアミック酸を例えば200〜350℃に加熱処理することによってポリイミドに転化する方法であり、ポリイミド(ポリイミド樹脂)を得る簡便かつ実用的な方法である。一方、化学的方法(2)は、ポリアミック酸を脱水環化試薬(カルボン酸無水物と第3アミンの混合物など)により反応した後、加熱処理して完全にイミド化する方法であり、(1)の加熱する方法に比べると煩雑でコストのかかる方法であるため、通常(1)の方法が多く用いられている。なお、ポリイミドの本来的な性能を発揮させるためには、相当するポリイミドのガラス転移温度以上に加熱して、イミド化を完結させることが好ましい。
【0035】
イミド化の進行状況(イミド化の程度)は、通常行われているイミド化率の測定手法により評価することができる。このようなイミド化率の測定方法としては、例えば、9〜11ppm付近のアミド基に帰属される1Hと6〜9ppm付近の芳香環に帰属される1Hとの積分比から算出する核磁気共鳴分光法(NMR法)、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR法)、イミド閉環に伴う水分を定量する方法、カルボン酸中和滴定法など種々の方法が用いられているが、中でもフーリエ変換赤外分光法(FT-IR法)は最も一般的な方法である。
【0036】
フーリエ変換赤外分光法(FT-IR法)では、イミド化率を、例えば、下記式(a)のように定義する。すなわち、焼成段階(イミド化処理段階)でのイミド基のモル数を(A)とし、100%イミド化された場合(理論的)のイミド基のモル数を(B)とすると、次により表される。
イミド化率(%)=[(A)/(B)]×100 ・・・ (a)
【0037】
この定義におけるイミド基のモル数は、FT-IR法により測定されるイミド基の特性吸収の吸光度比から求めることができる。例えば、代表的な特性吸収として、以下の吸光度比を用いてイミド化率を評価することができる。
【0038】
(1)イミドの特性吸収の1つである725cm−1(イミド環C=O基の変角振動帯)と、ベンゼン環の特性吸収1,015cm−1との吸光度比
(2)イミドの特性吸収の1つである1,380cm−1(イミド環C−N基の変角振動帯)と、ベンゼン環の特性吸収1,500cm−1との吸光度比
(3)イミドの特性吸収の1つである1,720cm−1(イミド環C=O基の変角振動帯)と、ベンゼン環の特性吸収1,500cm−1との吸光度比
(4)イミドの特性吸収の1つである1,720cm−1とアミド基の特性吸収1,670cm−1(アミド基N−H変角振動とC−N伸縮振動の間の相互作用)との吸光度比
また、3000〜3300cm−1にかけてのアミド基由来の多重吸収帯が消失していることを確認すればさらにイミド化完結の信頼性は高まる。
【0039】
次に、ポリアミドイミドについて説明する。
<ポリアミドイミド>
ポリアミドイミドは、分子骨格中に剛直なイミド基と柔軟性を付与するアミド基を有する樹脂であり、本発明に用いられるポリアミドイミドとしては一般的に知られている構造のものを使用することができる。一般的にポリアミドイミド樹脂を合成する方法としては、酸クロライド法(a):酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体ハライド、最も代表的には当該誘導体のクロライド化合物とジアミンとを溶媒中で反応させて製造する公知の方法(例えば、特公昭42−15637号公報参照。)が知られている。または別な方法として、イソシアネート法(b):酸無水物基とカルボン酸を含む3価の誘導体と芳香族イソシアネートとを溶媒中で反応させて製造する公知の方法(例えば、特公昭44−19274号公報)等が知られており、いずれも使用することができる。各製造方法について以下に説明する。
【0040】
(a)酸クロライド法
酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体ハライド化合物としては、例えば、下記式(2)および式(3)に示す化合物を使用することができる。
【0041】
【化2】

【0042】
(式中、Xはハロゲン元素を示す。)
【0043】
【化3】

【0044】
(式中、Xはハロゲン元素を示し、Yは−CH2−、−CO−、−SO2−または−O−を示す)
【0045】
前記各式において、ハロゲン元素はクロライドが好ましく、誘導体の具体例を挙げると、テレフタル酸、イソフタル酸、4、4’ビフェニルジカルボン酸、4、4’ビフェニルエーテルジカルボン酸、4、4’ビフェニルスルホンジカルボン酸、4、4’ベンゾフェノンジカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、3、3’、4、4’ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3、3、’、4、4’ビフェニルスルホンテトラカルボン酸、3、3’、4、4’ビフェニルテトラカルボン酸、アジピン酸、セバチン酸、マレイン酸、フマール酸、ダイマー酸、スチルベンジカルボン酸、1、4シクロヘキサンジカルボン酸、1、2シクロヘキサンジカルボン酸等の多価カルボン酸の酸クロライドが挙げられる。
【0046】
一方、ジアミンとしては特に限定されないが、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、および脂環族ジアミンのいずれも用いられるが、芳香族ジアミンが好ましく用いられる。芳香族ジアミンとしては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、オキシジアニリン、メチレンジアミン、ヘキサフルオロイソプロピリデンジアミン、ジアミノ−m−キシリレン、ジアミノ−p−キシリレン、1,4−ナフタレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、2,7−ナフタレンジアミン、2,2’−ビス−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス−(4−アミノフェニル)へキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4−ジアミノジフェニルエーテル、イソプロピリデンジアニリン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、o−トリジン、2,4−トリレンジアミン、1,3−ビス−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス−[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’−ビス−(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2’−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]へキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィドなどが挙げられる。
【0047】
また、ジアミンとして両末端にアミノ基を有するシロキサン系化合物、例えば1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノフェノキシメチル)ポリジメチルシロキサン、1,3,−ビス(2−(3−アミノフェノキシ)エチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(2−(3−アミノフェノキシ)エチル)ポリジメチルシロキサン、1,3−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)プロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)プロピル)ポリジメチルシロキサン等を用いればシリコーン変性ポリアミドイミドを得ることができる。
【0048】
酸クロライド法により本発明におけるポリアミドイミド(ポリアミドイミド樹脂)を得るためには、ポリイミド樹脂の製造の場合と同様に、上記した酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体ハライドとジアミンとを有機極性溶媒に溶解した後、低温(0〜30℃)で反応させ、ポリアミドイミド前駆体(ポリアミド−アミック酸)とする。
【0049】
使用することのできる有機極性溶媒としては前記ポリイミドと同様であり、ホルムアミド系溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド等)、アセトアミド系溶媒(例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等)、ピロリドン系溶媒(例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン等)、フェノール系溶媒(例えば、フェノール、o−、m−、またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコール等)、エーテル系溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等)、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール、ブタノール等)、セロソルブ系溶媒(例えば、ブチルセロソルブ等)、またはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。これらを単独または混合溶媒として用いるのが望ましく、ポリアミック酸を溶解するものであれば特に限定されない。特に好ましく用いられる溶媒は、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンである。
【0050】
上記により得たポリアミド・ポリアミック酸溶液を支持体(成形用の型)に塗布された後、加熱等の処理することにより、ポリアミック酸からポリイミドへの転化(イミド化)が行われる。イミド化の方法としては、加熱処理により脱水閉環させる方法、および脱水閉環触媒を用いて化学的に閉環させる方法が挙げられる。加熱処理により脱水閉環させる場合、例えば、反応温度は150〜400℃、好ましくは180〜350℃であり、加熱処理時間は30秒間〜10時間、好ましくは5分間〜5時間である。また、脱水閉環触媒を用いる場合、反応温度は0〜180℃、好ましくは10〜80℃であり、反応時間は数十分間〜数日間、好ましくは2時間〜12時間である。脱水閉環触媒の例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸等の酸無水物等が挙げられる。
【0051】
(b)イソシアネート法
イソシアネート法の場合に用いる酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体としては、例えば、式(4)または式(5)で示す化合物を使用することができる。
【0052】
【化4】

【0053】
(式中、Rは水素、炭素数1〜10のアルキル基またはフェニル基を示す。)
【0054】
【化5】

【0055】
(式中、Rは水素、炭素数1〜10のアルキル基またはフェニル基を示し、Yは−CH2−、−CO−、−SO2−または−O−を示す。)
【0056】
上記一般式で表される誘導体は何れも使用することができるが、最も代表的には無水トリメリット酸が挙げられる。また、これらの酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体は、目的に応じて単独または混合して用いることができる。
【0057】
次に、本発明のポリアミドイミドの合成に用いられる一方の芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4′−〔2,2−ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン〕ジイソシアネート、ビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、ビフェニル−3,3′−ジイソシアネート、ビフェニル−3,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジエチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジエチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジメトキシビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、ナフタレン−2,6−ジイソシアネート等が挙げられる。これらの芳香族ポリイソシアネートは単独で使用することもできるし、組み合わせて使用することもできる。必要に応じてこの一部としてヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、水添m−キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族、脂環式イソシアネートおよび3官能以上のポリイソシアネートを使用することもできる。
【0058】
上記各酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体と、芳香族ポリイソシアネートとを有機極性溶媒に溶解調整して得られるポリアミドイミド前駆体を含む溶液を支持体に塗布した後、加熱処理することにより、ポリアミドイミド前駆体からポリアミドイミドへの転化が行われる。この方法によるポリアミドイミドへの転化の際、概略ポリアミック酸を経由することなく(炭酸ガスを発生して)ポリアミドイミドを生成する。下記式(6)に無水トリメリット酸と芳香族イソシアネートとを用いた場合のポリアミドイミド化の例を示す。
【0059】
【化6】

【0060】
(式中、Arは芳香族基を示す。)
【0061】
上記に示した、ポリイミド及びポリアミドイミドは通常単独で使用するが、相溶性を考慮して選択されたものを併用することも可能である。
また、ポリイミド繰返単位とポリアミドイミド繰返単位を有する共重合体であっても良い。
【0062】
分散液のカーボンブラックの含有量は5〜25wt%が好ましく、より好ましくは10〜15wt%である。カーボンブラックの含有量は少ない方が分散させやすいが、生産を考えると無駄が多くコスト高となるため5%以上とする。一方、25%超になると粘度が大幅に上昇することにより分散効率が低下するため、好ましくない。
【0063】
また、樹脂又は樹脂前駆体の固形分は、カーボンブラック100部に対して4〜40wt%が好ましく、より好ましくは10〜30wt%である。
樹脂又は樹脂前駆体は含有しなくてもカーボンブラックは分散可能であるが、これを含有させないで作製した場合、次工程のカーボンブラック含有量を調整する工程において、本分散液と樹脂又は樹脂前駆体溶液を混合する際に、カーボンブラックがショック凝集を起こし好ましくない。
そこで、樹脂又は樹脂前駆体固形分をカーボンブラックに対して4wt%以上含有させることが好ましい。一方、40wt%超になると、溶液の粘度が高くなりすぎて分散効率が低下するので好ましくない。
【0064】
<塗工液の作製工程>
上記で作製されたカーボンブラック分散液は、次に、樹脂溶液もしくは樹脂前駆体溶液を混合・希釈することにより、所定のカーボンブラック濃度となるように調整する。中間転写方式においては、帯電したトナーによる画像を電界の作用によって転写を行うため、中間転写ベルトを所定の抵抗値に調整する必要がある。その抵抗値としては、一般的に表面抵抗値として、1×10〜1×1013Ω/□、体積抵抗値として、1×10〜1×1012Ωcm程度であり、この範囲になる様にカーボンブラック量を調整することが望ましいが、機械強度の面から、膜が脆く割れやすくならない程度の添加量で達成できるものを適宜選択すればよい。好ましくは、全固形分の5〜25wt%であり、より好ましくは15〜20wt%が良い。これよりも少ないと抵抗値の均一性が得られにくくなり、任意の電位に対する抵抗値の変動が大きくなり好ましくない。また、25wt%超になると、ベルトの機械強度が低下し、耐久性に劣るので好ましくない。
【0065】
カーボンブラック濃度調整に用いる樹脂としては、特に限定されないが、カーボンブラック分散液で使用したものと同じ樹脂を用いることが好ましい。
【0066】
分散液に樹脂前駆体溶液を混合する方法は、一般的な攪拌装置を用いることにより攪拌・混合する。樹脂として、ポリイミド又はポリアミドイミドの前駆体溶液を用いる場合、これら溶液は粘度が高いため、これに対応できる機械を選定する。
また、攪拌後は、液中に泡が多く発生しているため、真空脱泡などの方法により十分に泡を取り除くことが好ましい。
さらに、この工程において、必要に応じて、溶媒やレベリング剤などの添加剤を含有させてもよい。
【0067】
<塗工液の塗布工程と脱型工程>
次に、上記のようにして得た塗工液を金型の外面に塗布し、乾燥・硬化させることにより製膜した後、これを金型から脱型する。
以下、製膜・脱型する方法の一つである遠心成形について説明するが、以下の説明は、一例であり条件などこれに限定されるものではない。
【0068】
遠心成形は円筒状の回転体から構成されるものであり、この円筒状の回転体をゆっくりと回転させながら塗工液を円筒の外面全体に均一になるように塗布・流延(塗膜を形成)する。その後、回転速度を所定速度まで上げ、所定速度に達したら一定速度に維持し、所望の時間回転を継続する。そして、回転させつつ徐々に昇温させながら、約80〜150℃の温度で塗膜中の溶媒を蒸発させていく。この過程では、雰囲気の蒸気(揮発した溶媒等)を効率よく循環して取り除くことが好ましい。自己支持性のある膜が得られたところで常温に戻し、高温処理の可能な加熱炉(焼成炉)に移し、段階的に昇温し、最終的に250℃〜450℃程度の高温で加熱処理(焼成)する。ポリイミド前駆体またはポリアミドイミド前駆体を用いている場合にはこの高温処理によりそのイミド化またはポリアミドイミド化を十分に行う。その後、徐冷して薄膜を型から剥離する。このようにして中間転写ベルトが形成される。なお、型には、剥離しやすいように予め、離型剤または離型層を形成しておくことが好ましい。
【0069】
<中間転写ベルト>
上述のような中間転写ベルトの製造方法で、中間転写ベルトを製造することにより、表面にふくれなどの塗膜欠陥を有さない中間転写ベルトを得ることができる。
【0070】
ベルト部材である中間転写ベルトは、通常、半導体、または絶縁体で、単層または多層構造となっているが、本発明における中間転写ベルトは、耐久性・優れた画像形成の観点からシームレスベルトが好ましく用いられる。
【0071】
本発明で形成する中間転写ベルトの膜厚としては、50〜100μmが好ましく、より好ましくは60〜80μmである。 膜厚が薄すぎると強度が不足し耐久性に劣り、逆に厚すぎると剛性が大きすぎて曲率の小さい駆動ローラにて安定して駆動させるのが困難になる。
【0072】
中間転写ベルトに要求される電気特性を満たすため、中間転写ベルトを所定の抵抗値に調整する必要がある。その抵抗値としては、一般的に表面抵抗値として、1×10〜1×1013Ω/□、体積抵抗値として、1×10〜1×1012Ωcm程度であり、この範囲になる様にカーボンブラック量を調整することが望ましい。
【0073】
<画像形成装置>
次に、本発明における画像形成装置に装備されるベルト構成部に用いられる中間転写ベルトについて、要部模式図を参照しながら以下に詳しく説明する。なお、模式図は一例であってこれに限定されるものではない。
図1の模式図に、ベルト部材等を装備した画像形成装置の要部概略構成を示す。
図1に示すベルト部材を含む中間転写ユニット500は、複数のローラに張架された中間転写ベルトである中間転写ベルト501などにより構成されている。この中間転写ベルト501の周りには、2次転写ユニット600の2次転写電荷付与手段である2次転写バイアスローラ605、中間転写ベルトクリーニング手段であるベルトクリーニングブレード504、潤滑剤塗布手段の潤滑剤塗布部材である潤滑剤塗布ブラシ505などが対向するように配設されている。
【0074】
また、位置検知用マークが中間転写ベルト501の外周面または内周面に図示しない位置検知用マークが設けられる。ただし、中間転写ベルト501の外周面側については位置検知用マークがベルトクリーニングブレード504の通過域を避けて設ける工夫が必要であり、配置上の困難さを伴うことがあるので、その場合には位置検知用マークを中間転写ベルト501の内周面側に設けてもよい。マーク検知用センサとしての光学センサ514は、中間転写ベルト501が架け渡されている1次転写バイアスローラ507とベルト駆動ローラ508との間の位置に設けられる。
【0075】
この中間転写ベルト501は、1次転写電荷付与手段である1次転写バイアスローラ507、ベルト駆動ローラ508、ベルトテンションローラ509、2次転写対向ローラ510、クリーニング対向ローラ511、及びフィードバック電流検知ローラ512に張架されている。各ローラは導電性材料で形成され、1次転写バイアスローラ507以外の各ローラは接地されている。1次転写バイアスローラ507には、定電流または定電圧制御された1次転写電源801により、トナー像の重ね合わせ数に応じて所定の大きさの電流または電圧に制御された転写バイアスが印加されている。
【0076】
中間転写ベルト501は、図示しない駆動モータによって矢印方向に回転駆動されるベルト駆動ローラ508により、矢印方向に駆動される。
このベルト部材である中間転写ベルト501は、通常、半導体、または絶縁体で、単層または多層構造となっているが、本発明においてはシームレスベルトが好ましく用いられ、これによって耐久性が向上すると共に、優れた画像形成が実現できる。また、中間転写ベルトは、感光体ドラム200上に形成されたトナー像を重ね合わせるために、通紙可能最大サイズより大きく設定されている。
【0077】
2次転写手段である2次転写バイアスローラ605は、2次転写対向ローラ510に張架された部分の中間転写ベルト501のベルト外周面に対して、後述する接離手段としての接離機構によって、接離可能に構成されている。2次転写バイアスローラ605は、2次転写対向ローラ510に張架された部分の中間転写ベルト501との間に被記録媒体である転写紙Pを挟持するように配設されており、定電流制御される2次転写電源802によって所定電流の転写バイアスが印加されている。
【0078】
レジストローラ610は、2次転写バイアスローラ605と2次転写対向ローラ510に張架された中間転写ベルト501との間に、所定のタイミングで転写材である転写紙Pを送り込む。また、2次転写バイアスローラ605には、クリーニング手段であるクリーニングブレード608が当接している。該クリーニングブレード608は、2次転写バイアスローラ605の表面に付着した付着物を除去してクリーニングするものである。
【0079】
このような構成のカラー複写機において、画像形成サイクルが開始されると、感光体ドラム200は、図示しない駆動モータによって矢印で示す半時計方向に回転され、該感光体ドラム200上に、Bk(ブラック)トナー像形成、C(シアン)トナー像形成、M(マゼンタ)トナー像形成、Y(イエロー)トナー像形成が行われる。中間転写ベルト501はベルト駆動ローラ508によって矢印で示す時計回りに回転される。この中間転写ベルト501の回転に伴って、1次転写バイアスローラ507に印加される電圧による転写バイアスにより、Bkトナー像、Cトナー像、Mトナー像、Yトナー像の1次転写が行われ、最終的にBk、C、M、Yの順に中間転写ベルト501上に各トナー像が重ね合わせて形成される。
【0080】
例えば、上記Bkトナー像形成は次のように行われる。
図1において、帯電チャージャ203は、コロナ放電によって感光体ドラム200の表面を負電荷で所定電位に一様に帯電する。上記ベルトマーク検知信号に基づき、タイミングを定め、図示しない書き込み光学ユニットにより、Bkカラー画像信号に基づいてレーザ光によるラスタ露光を行う。このラスタ像が露光されたとき、当初一様帯電された感光体ドラム200の表面の露光された部分は、露光光量に比例する電荷が消失し、Bk静電潜像が形成される。このBk静電潜像に、Bk現像器231Kの現像ローラ上の負帯電されたBkトナーが接触することにより、感光体ドラム200の電荷が残っている部分にはトナーが付着せず、電荷の無い部分つまり露光された部分にはトナーが吸着し、静電潜像と相似なBkトナー像が形成される。
【0081】
このようにして感光体ドラム200上に形成されたBkトナー像は、感光体ドラム200と接触状態で等速駆動回転している中間転写ベルト501のベルト外周面に1次転写される。この1次転写後の感光体ドラム200の表面に残留している若干の未転写の残留トナーは、感光体ドラム200の再使用に備えて、感光体クリーニング装置201で清掃される。この感光体ドラム200側では、Bk画像形成工程の次にC画像形成工程に進み、所定のタイミングでカラースキャナによるC画像データの読み取りが始まり、そのC画像データによるレーザ光書き込みによって、感光体ドラム200の表面にC静電潜像を形成する。
【0082】
そして、先のBk静電潜像の後端部が通過した後で、且つC静電潜像の先端部が到達する前にリボルバ現像ユニット230の回転動作が行われ、C現像機231Cが現像位置にセットされ、C静電潜像がCトナーで現像される。以後、C静電潜像領域の現像を続けるが、C静電潜像の後端部が通過した時点で、先のBk現像機231Kの場合と同様にリボルバ現像ユニットの回転動作を行い、次のM現像機231Mを現像位置に移動させる。これもやはり次のY静電潜像の先端部が現像位置に到達する前に完了させる。なお、M及びYの画像形成工程については、それぞれのカラー画像データ読み取り、静電潜像形成、現像の動作が上述のBk、Cの工程と同様であるので説明は省略する。
【0083】
このようにして感光体ドラム200上に順次形成されたBk、C、M、Yのトナー像は、中間転写ベルト501上の同一面に順次位置合わせされて1次転写される。これにより、中間転写ベルト501上に最大で4色が重ね合わされたトナー像が形成される。一方、上記画像形成動作が開始される時期に、転写紙Pが転写紙カセット又は手差しトレイなどの給紙部から給送され、レジストローラ610のニップで待機している。
そして、2次転写対向ローラ510に張架された中間転写ベルト501と2次転写バイアスローラ605によりニップが形成された2次転写部に、上記中間転写ベルト501上のトナー像の先端がさしかかるときに、転写紙Pの先端がこのトナー像の先端に一致するように、レジストローラ610が駆動されて、転写紙ガイド板601に沿って転写紙Pが搬送され、転写紙Pとトナー像とのレジスト合わせが行われる。
【0084】
このようにして、転写紙Pが2次転写部を通過すると、2次転写電源802によって2次転写バイアスローラ605に印加された電圧による転写バイアスにより、中間転写ベルト501上の4色重ねトナー像が転写紙P上に一括転写(2次転写)される。この転写紙Pは、転写紙ガイド板601に沿って搬送されて、2次転写部の下流側に配置した除電針からなる転写紙除電チャージャ606との対向部を通過することにより除電された後、ベルト構成部であるベルト搬送装置210により定着装置270に向けて送られる(図1参照)。そして、この転写紙Pは、定着装置270の定着ローラ271、272のニップ部でトナー像が溶融定着された後、図示しない排出ローラで装置本体外に送り出され、図示しないコピートレイに表向きにスタックされる。なお、定着装置270は必要によりベルト構成部を備えた構成とすることもできる。
【0085】
一方、上記ベルト転写後の感光体ドラム200の表面は、感光体クリーニング装置201でクリーニングされ、上記除電ランプ202で均一に除電される。また、転写紙Pにトナー像を2次転写した後の中間転写ベルト501のベルト外周面に残留した残留トナーは、ベルトクリーニングブレード504によってクリーニングされる。該ベルトクリーニングブレード504は、図示しないクリーニング部材離接機構によって、該中間転写ベルト501のベルト外周面に対して所定のタイミングで接離されるように構成されている。
【0086】
このベルトクリーニングブレード504の上記中間転写ベルト501の移動方向上流側には、該中間転写ベルト501のベルト外周面に対して接離するトナーシール部材502が設けられている。このトナーシール部材502は、上記残留トナーのクリーニング時に上記ベルトクリーニングブレード504から落下した落下トナーを受け止めて、該落下トナーが上記転写紙Pの搬送経路上に飛散するのを防止している。このトナーシール部材502は、上記クリーニング部材離接機構によって、上記ベルトクリーニングブレード504とともに、該中間転写ベルト501のベルト外周面に対して接離される。
【0087】
このようにして残留トナーが除去された中間転写ベルト501のベルト外周面には、上記潤滑剤塗布ブラシ505により削り取られた潤滑剤506が塗布される。該潤滑剤506は、例えば、ステアリン酸亜鉛などの固形体からなり、該潤滑剤塗布ブラシ505に接触するように配設されている。また、この中間転写ベルト501のベルト外周面に残留した残留電荷は、該中間転写ベルト501のベルト外周面に接触した図示しないベルト除電ブラシにより印加される除電バイアスによって除去される。ここで、上記潤滑剤塗布ブラシ505及び上記ベルト除電ブラシは、それぞれの図示しない接離機構により、所定のタイミングで、上記中間転写ベルト501のベルト外周面に対して接離されるようになっている。
【0088】
ここで、リピートコピーの時は、カラースキャナの動作及び感光体ドラム200への画像形成は、1枚目の4色目(Y)の画像形成工程に引き続き、所定のタイミングで2枚目の1色目(Bk)の画像形成工程に進む。また、中間転写ベルト501は、1枚目の4色重ねトナー像の転写紙への一括転写工程に引き続き、ベルト外周面の上記ベルトクリーニングブレード504でクリーニングされた領域に、2枚目のBkトナー像が1次転写されるようにする。その後は、1枚目と同様動作になる。以上は、4色フルカラーコピーを得るコピーモードであったが、3色コピーモード、2色コピーモードの場合は、指定された色と回数の分について、上記同様の動作を行うことになる。また、単色コピーモードの場合は、所定枚数が終了するまでの間、リボルバ現像ユニット230の所定色の現像機のみを現像動作状態にし、ベルトクリーニングブレード504を中間転写ベルト501に接触させたままの状態にしてコピー動作を行う。
【0089】
上記実施形態では、感光体ドラム1を一つだけ備えた複写機について説明したが、本発明は、例えば、図2に示すような複数の感光体ドラムを一つの中間転写ベルトに沿って並設した画像形成装置にも適用できる。
図2は、4つの異なる色(ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン)のトナー像を形成するための4つの感光体ドラム21BK、21Y、21M、21Cを備えた4ドラム型のデジタルカラープリンタの一構成例を示す。
【0090】
図2において、プリンタ本体10は電子写真方式によるカラー画像形成を行うための、画像書込部12、画像形成部13、給紙部14、から構成されている。画像信号を元に画像処理部で画像処理して画像形成用の黒(BK)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)の各色信号に変換し、画像書込部12に送信する。画像書込部12は、例えば、レーザ光源と、回転多面鏡等の偏向器と、走査結像光学系、及びミラー群、からなるレーザ走査光学系であり、上記の各色信号に対応した4つの書込光路を有し、画像形成部13の各色毎に設けられた像坦持体(感光体)21BK、21M、21Y、21Cに各色信号に応じた画像書込を行う。
【0091】
画像形成部13は黒(BK)用、マゼンタ(M)用、イエロー(Y)用、シアン(C)用の各像坦持体である感光体21BK、21M、21Y、21Cを備えている。この各色用の各感光体としては、通常OPC感光体が用いられる。各感光体21BK、21M、21Y、21Cの周囲には、帯電装置、上記書込部12からのレーザ光の露光部、黒、マゼンタ、イエロー、シアンの各色用の現像装置20BK、20M、20Y、20C、1次転写手段としての1次転写バイアスローラ23BK、23M、23Y、23C、クリーニング装置(表示略)、及び図示しない感光体除電装置等が配設されている。なお、上記現像装置20BK、20M、20Y、20Cには、2成分磁気ブラシ現像方式を用いている。ベルト構成部である中間転写ベルト22は、各感光体21BK、21M、21Y、21Cと、各1次転写バイアスローラ23BK、23M、23Y、23Cとの間に介在し、各感光体上に形成された各色のトナー像が順次重ね合わせて転写される。
【0092】
一方、転写紙Pは、給紙部14から給紙された後、レジストローラ16を介して、ベルト構成部である転写搬送ベルト50に担持される。そして、中間転写ベルト22と転写搬送ベルト50とが接触するところで、上記中間転写ベルト22上に転写されたトナー像が、2次転写手段としての2次転写バイアスローラ60により2次転写(一括転写)される。これにより、転写紙P上にカラー画像が形成される。このカラー画像が形成された転写紙Pは、転写搬送ベルト50により定着装置15に搬送され、この定着装置15により転写された画像が定着された後、プリンタ本体外に排出される。
【0093】
なお、上記2次転写時に転写されずに上記中間転写ベルト22上に残った残留トナーは、ベルトクリーニング部材25によって中間転写ベルト22から除去される。このベルトクリーニング部材25の下流側には、潤滑剤塗布装置27が配設されている。この潤滑剤塗布装置27は、固形潤滑剤と、中間転写ベルト22に摺擦して固形潤滑剤を塗布する導電性ブラシとで構成されている。該導電性ブラシは、中間転写ベルト22に常時接触して、中間転写ベルト22に固形潤滑剤を塗布している。固形潤滑剤は、中間転写ベルト22のクリーニング性を高め、フィルミィングの発生を防止し耐久性を向上させる作用がある。
【実施例】
【0094】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りこれらの実施例を適宜改変したものも本件の発明の範囲内である。
<実施例1>
(カーボンブラック分散液の作製)
まず、ケツト科学研究所社製の赤外線水分計FD−800を用いてカーボンブラックの含水率を測定し、含水率1.3wt%に調整したカーボンブラックを使って以下の条件で分散を行った。
・カーボンブラック(SpecialBlack4;エボニックデグサ社) 12wt%
・ポリイミドワニス(U−ワニスS(固形分18%);宇部興産社) 13.3wt%
・溶媒(N―メチル―2―ピロリドン;三菱化学社) 74.7wt%
上記混合物をよく混合させた溶液を、ビーズミル(アペックスミル;寿工業社製)を用いて分散した。ビーズは、φ0.3mmのジルコニアビーズを用いて4時間分散を行い、カーボンブラック分散液Aを作製した。
【0095】
(ベルト用塗工液Aの作成)
次に、上記分散液Aを用いて、下記塗工液を作製した。
・上記分散液 X wt%
・ポリイミド溶液(U−ワニスS(固形分18%);宇部興産) Y wt%
・レベリング剤(FZ2105;東レダウコーニング) 0.02wt%
・溶媒(N―メチル―2―ピロリドン;三菱化学社) Z wt%
上記配合におけるカーボンブラック分散液とポリイミド溶液と溶媒との比率(X、Y及びZ)は、各分散液を用いたときに得られる表面抵抗値がおよそ1×1011Ω/□となるように配合量を調整した(表1に記載)。
【0096】
(シームレスベルトAの作製)
次に、外径100mm、長さ300mmの外面をブラスト処理にて粗面化した金属製円筒を型として用い、この円筒型を50rpm(回/分)で回転させながら、上記塗工液を円筒外面に均一に流延するようにディスペンサーにて塗布した。所定の全量を流し終えて塗膜がまんべんなく広がった時点で、回転数を100rpmに上げ、熱風循環乾燥機に投入して、110℃まで徐々に昇温して60分加熱した。さらに昇温して200℃で20分加熱し、回転を停止、徐冷して取り出し、高温処理の可能な加熱炉(焼成炉)に投入し、段階的に360℃まで昇温して60分加熱処理(焼成)した。加熱を停止し、常温まで徐冷した後、膜厚60μmのシームレスベルトAを得た。
【0097】
<実施例2>
実施例1で使用したカーボンブラックの含水率を9.6wt%とした以外は、実施例1と同様の手順と同様にして、シームレスベルトBを得た。
【0098】
<比較例1>
実施例1で使用したカーボンブラックの含水率を0.6wt%とした以外は、実施例1と同様の手順と同様にして、シームレスベルトCを得た。
【0099】
<比較例2>
実施例1で使用したカーボンブラックの含水率を15.4wt%とした以外は、実施例1と同様の手順と同様にして、シームレスベルトDを得た。
【0100】
<実施例3>
実施例1で使用したカーボンブラックをREGAL400R(キャボットスペシャリティーケミカルズインク社製)にし、含水率を5.7wt%に変更した以外は、実施例1と同様にして、シームレスベルトEを得た。
【0101】
<実施例4>
(カーボンブラック分散液Fの作製)
実施例1と同じように、赤外線水分計FD−800を用いてカーボンブラックの含水率を測定し、含水率1.7wt%に調整したカーボンブラックを使って以下の条件で分散を行った。
・カーボンブラック(MA77;三菱化学社) 12wt%
・ポリアミドイミドワニス(バイロマックスHR16NN(固形分15%);東洋紡績社) 16wt%
・溶媒(N―メチル―2―ピロリドン;三菱化学社) 72wt%
上記混合物をよく混合させた溶液を、ビーズミル(アペックスミル;寿工業社製)を用いパス方式にて分散した。ビーズは、φ0.7mmのジルコニアビーズを用いて2時間分散を行い、カーボンブラック分散液Fを作製した。
【0102】
(シームレスベルトFの作製)
次に、外径100mm、長さ300mmの外面をブラスト処理にて粗面化した金属製円筒を型として用い、この円筒型を50rpm(回/分)で回転させながら、上記塗工液を円筒外面に均一に流延するようにディスペンサーにて塗布した。所定の全量を流し終えて塗膜がまんべんなく広がった時点で、回転数を100rpmに上げ、熱風循環乾燥機に投入して、110℃まで徐々に昇温して60分加熱した。さらに昇温して200℃で20分加熱し、回転を停止、徐冷して取り出し、高温処理の可能な加熱炉(焼成炉)に投入し、段階的に250℃まで昇温して60分加熱処理(焼成)した。加熱を停止し、常温まで徐冷した後、厚み80μmのシームレスベルトFを作製した。
【0103】
<実施例5>
実施例1で使用したカーボンブラックの含水率を9.1wt%とした以外は、実施例3の手順と同様にして、シームレスベルトGを得た。
【0104】
<比較例3>
実施例3で使用したカーボンブラックの含水率を0.4wt%とした以外は、実施例3の手順と同様にして、シームレスベルトHを得た。
【0105】
<比較例4>
実施例3で使用したカーボンブラックの含水率を17.7wt%とした以外は、実施例3の手順と同様にして、シームレスベルトIを得た。
【0106】
<実施例6>
実施例1において、カーボンブラック分散液中にポリイミドワニスを入れないで分散させた以外は、実施例1の手順と同様にして、シームレスベルトJを得た。
【0107】
得られた各種ベルトの表面を観察し、外観不良(ふくれ)の数、金型からの脱型性を確認した。また、各実施例、比較例でそれぞれ100本ベルトを作製し、1本あたりのふくれの平均個数、及び良品率を表1に示した。ここで、良品率とはふくれが全くなく、かつ金型からベルトを破損することなく脱型できたものを良品と定義して算出した。
【0108】
【表1】

以上の結果から、本発明におけるカーボンブラックを用いてシームレスベルトを形成し、電子写真装置の中間転写ベルトとして用いた場合に、塗膜欠陥のない表面性に優れたベルトとすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0109】
【特許文献1】特開2001−171013
【特許文献2】特開2007−190887
【符号の説明】
【0110】
P 転写紙
10 プリンタ本体
12 画像書込部
13 画像形成部
14 給紙部
15 定着装置
16 レジストローラ
20BK、20M、20Y、20C 現像装置
21BK、21M、21Y、21C 感光体
22 中間転写ベルト
23BK、23M、23Y、23C 1次転写バイアスローラ
25 ベルトクリーニング部材
26 駆動手段
27 潤滑剤塗布装置
50 転写搬送ベルト
60 2次転写バイアスローラ
70 除電ローラ
80 アースローラ
200 感光体ドラム
201 感光体クリーニング装置
202 除電ランプ
203 帯電チャージャ
210 ベルト搬送装置
230 リボルバ現像ユニット
231Y Y現像機
231K Bk現像機
231C C現像機
231M M現像機
270 定着装置
271、272 定着ローラ
301 分散投入タンクA
302 分散機
303 送液ポンプ
304 分散液排出タンクB
401 分散液タンクA
402 分散機
403 液循環ポンプ
404 攪拌装置
500 中間転写ユニット
501 中間転写ベルト
502 トナーシール部材
503 帯電チャージャ
504 ベルトクリーニングブレード
505 潤滑剤塗布ブラシ
506 潤滑剤
507 1次転写バイアスローラ
508 ベルト駆動ローラ
509 ベルトテンションコントローラ
510 2次転写対向ローラ
511 クリーニング対向ローラ
512 フィードバッグ電流検知ローラ
514 光学センサ
600 2次転写ユニット
601 転写紙ガイド板
605 2次転写バイアスローラ
606 転写紙除電チャージャ
608 クリーニングブレード
610 レジストローラ
801 1次転写電源
802 2次転写電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上に形成された潜像をトナーにより現像して得られたトナー像が転写される中間転写ベルトの製造方法であって、
含水率が1〜10wt%のカーボンブラック、樹脂もしくは樹脂前駆体及び溶媒を含む分散液を作製する工程と、
前記分散液中のカーボンブラック含有量を調節して塗工液を作製する工程と、
前記塗工液を金型の外面に塗布し、乾燥又は硬化させることにより製膜化する工程と、
前記膜を脱型する工程と、
を有する中間転写ベルトの製造方法。
【請求項2】
前記樹脂がポリイミド、またはポリアミドイミド含むことを特徴とする請求項1に記載の中間転写ベルトの製造方法。
【請求項3】
前記分散液のカーボンブラックの含有量が5wt%以上25wt%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の中間転写ベルトの製造方法。
【請求項4】
前記分散液を作製する工程をパス方式により行うことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の中間転写ベルトの製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の製造方法により製造された中間転写ベルトであって、シームレスベルトであることを特徴とする中間転写ベルト。
【請求項6】
請求項4に記載の中間転写ベルトを備える画像形成装置。
【請求項7】
前記画像形成装置がフルカラー画像形成装置であって、各色の現像手段を有する複数の潜像担持体を直列に配置してなる請求項5に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−197404(P2011−197404A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64133(P2010−64133)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】