説明

中間転写体および組成物

【課題】製造中の環境への排出物、複雑な製造プロセスに起因する高コスト、さらに、染み、摩耗、耐溶媒性に関する中間転写体の性能を向上させる。また、優れた靱性および高い光沢を有する中間転写体を提供する。
【解決手段】ポリフェニルスルホンとポリシロキサンとを含み、この中にカーボンブラック粒子が分散した、つなぎ目のない層を含む中間転写体。つなぎ目のない中間転写体を製造するために用いられる組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、デジタル式、多重現像式などを含む電子写真式の画像形成装置に有用な新規の層に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真印刷では、中間転写体に用いられる材料は、典型的には、ポリイミド樹脂に分散した導電性粉末で構成される。中間転写体は、典型的には、ベルトであり、このベルトは、つなぎ目があってもよく、つなぎ目がなくてもよい。ポリイミド樹脂は、熱可塑性ポリイミド樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、例えば、ポリイミド、ポリイミドの前駆体、ポリアミドイミドを含む。導電性粉末は、カーボンブラック、アセチレンブラック、酸化スズ、酸化インジウム、チタン酸カリウム、使用可能なその他の種類の導電性粉末および半導電性粉末を含む。
【0003】
しかし、中間転写体にポリイミドを用いる場合、特定の課題が生じる。これらの課題としては、製造中の環境への排出物、複雑な製造プロセスに起因する高コストが挙げられる。さらに、染み、摩耗、耐溶媒性に関する中間転写体の性能を向上させる必要がある。優れた靱性および高い光沢といった特性も、中間転写体に必要である。上述の要求事項を満たす材料が望ましいだろう。
【0004】
押出コーティングプロセスは、典型的には、熱可塑性中間転写ベルトを製造するために使用される。入手可能なダイの大きさによって、押出プロセスから作られる中間転写ベルトの大きさは制限される。
【0005】
中間転写ベルトを製造するために、押出プロセス以外のプロセスを使用することが望ましいだろう。中間転写ベルトの特性を向上させつつ、中間転写ベルトの製造費を安くすることも望ましいだろう。
【発明の概要】
【0006】
一実施形態によれば、ポリフェニルスルホンとポリシロキサンとを含み、この中にカーボンブラック粒子が分散した、つなぎ目のない層を含む中間転写体が記載される。
【0007】
一実施形態によれば、カーボンブラック粒子と、以下の式によってあらわされるポリフェニルスルホン
【化1】

〔式中、nは、約30〜約5000である〕
と、ポリシロキサンとを、カーボンブラック粒子/ポリフェニルスルホン/ポリシロキサンの重量比が、約5/94.99/0.01〜約20/78/2であるように含む、つなぎ目のない中間転写体が提供される。
【0008】
別の実施形態によれば、ポリフェニルスルホンと、ポリシロキサンと、カーボンブラック粒子と、N−メチルピロリドン、N,N’−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、N,N’−ジメチルアセトアミドからなる群から選択される溶媒とを含むコーティング組成物が記載される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、画像装置の概略図である。
【図2】図2は、本明細書に開示した実施形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1を参照すると、画像形成装置は、以下に詳細に記載するような中間転写体を備えている。この画像形成装置は、一次転写によって、像保持体で作成されたトナー画像を中間転写体に転写するための第1転写ユニットと、二次転写によって、中間転写体に転写されたトナー画像を転写材料に転写するための第2転写ユニットとを備える、中間転写式の画像形成装置である。また、この画像形成装置において、中間転写体は、トナー画像を転写材料に転写するための転写領域内に転写材料を運ぶための転写搬送体として与えられてもよい。高品質の画像を転写し、長期間にわたって安定なままである中間転写体を有することが必要である。
【0011】
本明細書に記載する画像形成装置は、中間転写方式の画像形成装置であれば、特に制限されず、例としては、現像デバイスに単色のみが格納されている通常の単色画像形成装置、像保持体上に保持されているトナー画像を、順次中間転写体に繰り返し一次転写するためのカラー画像形成装置、中間転写体に連続して配置されるそれぞれの色の現像ユニットとともに、複数の像保持体を備えているタンデム型カラー画像形成装置が挙げられる。さらに特定的には、画像形成装置は、適宜、像保持体と、像保持体表面を均一に帯電させる帯電ユニットと、中間転写体表面を露光し、静電潜像を作成する露光ユニットと、現像溶液を用いて、像保持体表面に生成した潜像を現像し、トナー画像を作成する現像ユニットと、トナーユニットを転写材料に定着させる定着ユニットと、像保持体に付着したトナーおよび異物を除去するクリーニングユニットと、像保持体表面に残った静電潜像を除去する静電除去ユニットと、必要な場合には、既知の方法とを備えていてもよい。
【0012】
像保持体として、既知のものを使用してもよい。像保持体の感光層として、有機系のアモルファスシリコン、または他の既知の材料を使用してもよい。円筒形の像保持体の場合、像保持体は、アルミニウムまたはアルミニウムアロイを押出成形し、表面処理を行う既知の方法によって得られる。ベルト形態の像保持体を使用してもよい。
【0013】
帯電ユニットは、特に制限されず、既知の充電器を用いてもよく、例えば、導電性ローラーまたは半導体ローラー、ブラシ、フィルム、ゴム製ブレード、コロナ放電を利用するスコロトロン充電器またはコロトロン充電器などを用いた接触型充電器を用いてもよい。中でも、接触型帯電ユニットは、優れた電荷補償能を有する。帯電ユニットは、通常は、直流を電子写真用感光材料に印加するが、交流をさらに重ね合わせてもよい。
【0014】
露光ユニットは、特に制限されず、例えば、半導体レーザービーム、LEDビーム、液晶シャッタービームなどの光源を用いることによって、または、このような光源から多面鏡を通すことによって、電子写真用感光材料の表面に所望の画像を露光する光学系デバイスを用いてもよい。
【0015】
現像ユニットは、目的に応じて適切に選択されてもよく、例えば、一液型現像溶液または二液型現像溶液を用いることによって現像するための既知の現像ユニットを、ブラシおよびローラーを用いて、接触させるか、または接触させずに使用してもよい。
【0016】
第1転写ユニットは、既知の転写充電器、例えば、部材、ローラー、フィルム、ゴム製ブレード、コロナ放電を利用するスコロトロン転写充電器またはコロトロン転写充電器を用いる接触型転写充電器を備えている。中でも、接触型転写充電器は、優れた転写電荷補償能を与える。転写充電器以外に、剥離型の充電器を一緒に使用してもよい。
【0017】
第2転写ユニットは、第1転写ユニットと同じであってもよく、例えば、転写ローラーなど、スコロトロン転写充電器およびコロトロン転写充電器を用いた接触型転写充電器であってもよい。接触型転写充電器の転写ローラーによって強く押すことによって、画像転写段階を維持することができる。さらに、転写ローラーまたは接触型転写充電器を、中間転写体を導くような位置にローラーを押すことによって、トナー画像を中間転写体から転写材料へと移動させる操作を行ってもよい。
【0018】
光静電除去ユニットとして、例えば、タングステンランプまたはLEDを用いてもよく、光静電除去プロセスで使用する光質としては、タングステンランプの白色光、LEDの赤色光を挙げることができる。光静電除去プロセスで、照射光の強度として、通常は、出力を、光質の約数倍〜約30倍が、電子写真用感光材料の露光感度の半分を示すように設定する。
【0019】
定着ユニットは、特に制限されず、任意の既知の定着ユニットを使用してもよく、例えば、熱ローラー定着ユニットおよびオーブン定着ユニットを用いてもよい。
【0020】
クリーニングユニットは、特に制限されず、任意の既知のクリーニングデバイスを用いてもよい。
【0021】
一次転写を繰り返すためのカラー画像形成装置を、図1に模式的に示している。図1に示す画像形成装置は、像保持体として感光ドラム1と、転写ベルトのような中間転写体として転写体2と、転写電極としてバイアスローラー3と、転写材料として紙を供給するためのトレー4と、BK(ブラック)トナーによる現像デバイス5と、Y(イエロー)トナーによる現像デバイス6と、M(マゼンタ)トナーによる現像デバイス7と、C(シアン)トナーによる現像デバイス8と、部材クリーナー9と、剥離爪13と、ローラー21、23および24と、バックアップローラー22と、導電性ローラー25と、電極ローラー26と、クリーニングブレード31と、紙の束41と、ピックアップローラー42と、フィードローラー43とを備えている。
【0022】
図1に示す画像形成装置において、感光ドラム1は、矢印Aの方向に回転し、帯電デバイス(示していない)の表面を均一に帯電させる。帯電した感光ドラム1に、画像書き込みデバイス(例えば、レーザー書き込みデバイス)によって、第1色(例えば、BK)の静電潜像が作成される。この静電潜像は、現像デバイス5によって、トナーによって現像され、目に見えるトナー画像Tが作成される。トナー画像Tは、感光ドラム1が回転することによって、導電性ローラー25を備える一次転写ユニットに移動し、導電性ローラー25から、トナー画像Tに逆極性の電場がかけられる。トナー画像Tは、転写体2に静電的に吸着し、矢印Bの方向に転写体2が回転することによって、一次転写が行われる。
【0023】
同様に、第2色のトナー画像、第3色のトナー画像、第4色のトナー画像が、次々と作成され、転写体2に重ねて配置され、多層トナー画像が作成される。
【0024】
転写体2が回転することによって、転写体2に転写された多層トナー画像が、バイアスローラー3を備える二次転写ユニットに移動する。二次転写ユニットは、転写体2のトナー画像を保持している表面側に配置されているバイアスローラー3と、転写体2の裏側からバイアスローラー3と向かい合うように配置されているバックアップローラー22と、バックアップローラー22と密に接して回転する電極ローラー26とを備えている。
【0025】
紙41は、ピックアップローラー42によって、紙トレー4に入っている紙束から1枚ずつ取り出され、特定のタイミングで、フィードローラー43によって、二次転写ユニットの転写体2とバイアスローラー3との間の空間に供給される。供給された紙41は、バイアスローラー3とバックアップローラー22とに押されながら搬送され、転写体2の上に保持されているトナー画像が、転写体2が回転することによって紙41に転写される。
【0026】
トナー画像が転写された紙41は、最後のトナー画像の一次転写が終わるまで、剥離爪13を後退した位置に操作することによって転写体2から剥離され、定着デバイス(示されていない)に搬送される。トナー画像は、圧力や熱を加えることによって定着し、永久的な画像が作成される。多層トナー画像を紙41に転写した後、転写体2を、二次転写ユニットの下流に配置されているクリーナー9でクリーニングして残留トナーを除去し、次の転写に備える。バイアスローラー3は、ポリウレタンなどでできているクリーニングブレード31などが常に接触していてもよく、転写によって付着したトナー粒子、紙粉、他の異物が除去されるように提供されていてもよい。
【0027】
単色画像を転写する場合、一次転写の後、トナー画像Tは、すぐに二次転写プロセスに送られ、定着デバイスに運ばれるが、複数の色を組み合わせて多色画像を転写する場合には、転写体2と感光ドラム1との回転が、一次転写ユニットで複数色のトナー画像の位置が正確に合い、複数色のトナー画像がずれないように同期化される。二次転写ユニットでは、トナーの極性と同じ極性の電力(転写電力)を、バイアスローラー3および転写体2とは反対側に配置されているバックアップローラー22と密に接触している電極ローラー26に加えることによって、静電反発力によって、トナー画像が紙41に転写される。これにより、画像が作成される。
【0028】
中間転写体2は、任意の適切な形状であってもよい。適切な形状の例としては、シート、フィルム、ウェブ、箔、片、コイル、円筒形、ドラム、終端のないメビウスの輪、円板、終端のないベルトを含むベルト、終端がなく、つなぎ目のある可とう性ベルト、終端がなく、つなぎ目のない可とう性ベルト、パズルカットのつなぎ目がある、終端のないベルトなどが挙げられる。図1では、転写体2はベルトとして示されている。
【0029】
画像転写の場合の画像では、カラートナー画像は、まず、光受容体に蓄積し、次いで、すべてのカラートナー画像が、同時に中間転写体に転写される。タンデム型転写では、トナー画像は、所定の時間に、1つの色が、光受容体から中間転写体の同じ領域に転写される。両実施形態が、本明細書に含まれる。
【0030】
現像した画像を光導電性部材から中間転写体に転写し、この画像を中間転写体から基板に転写することは、電子写真で従来から使用されている任意の適切な技術(例えば、コロナ転写、圧力転写、バイアス転写、およびこれらの転写手段の組み合わせなど)によって行うことができる。
【0031】
中間転写体は、任意の適切な形状であってもよい。適切な形状の例としては、シート、フィルム、ウェブ、箔、片、コイル、円筒形、ドラム、終端のない片、円板、ドレルト(ドラムとベルトの中間)、終端のないベルトを含むベルト、終端がなく、つなぎ目のある可とう性ベルト、終端がなく、つなぎ目のある可とう性作像ベルトが挙げられる。
【0032】
本明細書には、ポリフェニルスルホン(PPSU)のつなぎ目のない中間転写ベルト(ITB)およびITBを製造するのに有用な(PPSU)組成物が開示されている。得られるつなぎ目のないITBは、コーティングの品質および性能が優れている。
【0033】
図2に示す実施形態では、中間転写体54は、単層構造の膜の形態である。中間転写体54は、ポリフェニルスルホンの第1のポリマーと、ポリシロキサンの第2のポリマーとを含む単一の層52を備えている。それに加え、適切な導電性を与えるためのカーボンブラック51が、PPSUおよびポリシロキサンの層52に分散している。カーボンブラック51は、中間転写体の約1重量%〜約30重量%、または約2重量%〜約25重量%、または約3重量%〜約20重量%の量で存在する。ポリフェニルスルホンは、中間転写体の約70重量%〜約97重量%、または約75重量%〜約90重量%、または約80重量%〜約87重量%の量で存在する。ポリシロキサンは、中間転写体の約0.01重量%〜約2重量%、または約0.03重量%〜約1重量%、または約0.05重量%〜約0.2重量%の量で存在し、合計は約100%である。カーボンブラック/ポリフェニルスルホン/ポリシロキサンの重量比は、約1/97/2〜約30/70/0.01の範囲である。
【0034】
本明細書には、ITBを製造するためのコーティング組成物が開示される。この組成物は、ポリフェニルスルホン(PPSU)と、ポリシロキサンと、カーボンブラックとを含む。場合により、ITBは、コーティング基板から良好に剥離させるためにリン酸エステルを含む。
【0035】
開示されているポリフェニルスルホン(PPSU、以下に示すような構造)は、SolvayからRADEL(登録商標)R−5000NTとして入手可能であり、
【化2】

式中、nは、約30〜5,000であるか、または約50〜4,000であるか、または、約80〜3,500である。このポリマーは、ガラス転移温度Tが約220℃であり、一般的な有機溶媒に可溶性である。ポリフェニルスルホンは、中間転写体の約70重量%〜約96重量%、または約75重量%〜約90重量%、または約80重量%〜約87重量%の量で存在する。
【0036】
PPSUを溶解するために用いられる一般的な有機溶媒としては、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)、モノクロロベンゼンが挙げられる。
【0037】
他の市販されているポリフェニルスルホンの例としては、RADEL(登録商標)5100NT15、5900NTなどが挙げられ、いずれもSolvayから入手可能である。
【0038】
本明細書で用いるのに適した炭素材料としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、グラフェン、フッ素化カーボンブラックなど、およびこれらの混合物が挙げられる。組成物に適したカーボンブラックには、Evonik−Degussa製のspecial black 4(B.E.T.表面積=180m/g、DBP吸収量=1.8ml/g、一次粒子径=25ナノメートル)がある。他の適切なカーボンブラックの例としては、special black 5(B.E.T.表面積=240m/g、DBP吸収量=1.41ml/g、一次粒子径=20ナノメートル)、color black FW1(B.E.T.表面積=320m/g、DBP吸収量=2.89ml/g、一次粒子径=13ナノメートル)、color black FW2(B.E.T.表面積=460m/g、DBP吸収量=4.82ml/g、一次粒子径=13ナノメートル)、color black FW200(B.E.T.表面積=460m/g、DBP吸収量=4.6ml/g、一次粒子径=13ナノメートル)が挙げられ、いずれもEvonik−Degussaから入手可能である。溶媒を除去した後、カーボンブラックは、約1重量%〜約30重量%、または約2重量%〜約25重量%、または約3重量%〜約20重量%のつなぎ目のない層を含む。
【0039】
中間転写体中に存在するポリシロキサン(表面平滑性のため)としては、ポリエーテルで改質されたポリジメチルシロキサン、BYK Chemicalから商品名BYK(登録商標)333、BYK(登録商標)330(メトキシプロピルアセテート中、約51重量%)および344(キシレン/イソブタノール=80/20中、約52.3重量%)、BYK(登録商標)−SILCLEAN 3710および3720(メトキシプロパノール中、約25重量%)で市販されているもの;ポリエステルで改質されたポリジメチルシロキサン、BYK Chemicalから商品名BYK(登録商標)310(キシレン中、約25重量%)および370(キシレン/アルキルベンゼン/シクロヘキサノン/モノフェニルグリコール=75/11/7/7中、約25重量%)で市販されているもの;ポリアクリレートで改質されたポリジメチルシロキサン、BYK Chemicalから商品名BYK(登録商標)−SILCLEAN 3700(メトキシプロピルアセテート中、約25重量%)で市販されているもの;またはポリエステルポリエーテルで改質されたポリジメチルシロキサン、BYK Chemicalから商品名BYK(登録商標)375(ジ−プロピレングリコールモノメチルエーテル中、約25重量%)で市販されているものが挙げられる。ITBの量は、約0.01重量%〜約2重量%、または約0.03重量%〜約1重量%、または約0.05重量%〜約0.2重量%である。
【0040】
任意要素のリン酸エステル(コーティング基板から良好に剥離するため)は、POLYSTEP(登録商標)P−34(Stepan Corporation製のアルキルフェノールエトキシレートのリン酸エステル)である。他のリン酸エステルの例としては、トリデシルアルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、アルキルポリエトキシエタノール、アルキルフェノキシポリエトキシエタノールなどのリン酸エステルが挙げられる。商業的な例としては、STEPFAC(登録商標)8180、8181、8182(アルキルポリエトキシエタノールのリン酸エステル)、8170、8171、8172、8173、8175(アルキルフェノキシポリエトキシエタノールのリン酸エステル)、POLYSTEP(登録商標)P−11、P−12、P−13(トリデシルアルコールエトキシレートのリン酸エステル)、P−31、P−32、P−33、P−35(アルキルフェノールエトキシレートのリン酸エステル)が挙げられ、いずれもStepan Corporationから入手可能である。ITB中のリン酸エステルの量は、約 重量%〜約5重量%、または約0.1重量%〜約2重量%、または約0.2重量%〜約1重量%である。
【0041】
生成する中間転写ベルト(ITB)は、表面抵抗率が、約10Ω/sq〜約1013Ω/sq、または約10Ω/sq〜約1012Ω/sq、または約1010Ω/sq〜約1011Ω/sqの範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、生成するITBコーティングは、機械的なヤング弾性率が、約1,500MPa〜約6,000MPa、または約2,500MPa〜約5,000MPa、または約3,000MPa〜約4,000MPaの範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、ITB層は、合計厚みが、約30ミクロン〜約500ミクロン、または約50ミクロン〜約300ミクロン、または約70ミクロン〜約150ミクロンである。カーボンブラック粒子を含むPPSU ITBの熱膨張係数(CTE)は、約50ppm/℃〜約150ppm/℃、または約70ppm/℃〜約120ppm/℃である。
【0042】
カーボンブラック粒子を含むPPSU ITBの吸湿膨張係数(CHE)は、約10ppm/湿度%、または約20ppm/湿度%〜約30ppm/湿度%である。
【0043】
カーボンブラック粒子を含むPPSU ITBの表面粗さは、約0.04ミクロン〜約0.2ミクロンである。
【0044】
コーティング混合物またはコーティング溶液を、任意の適切な既知の様式でコーティングする。このような材料を基板層にコーティングする典型的な技術としては、フローコーティング、液体噴霧コーティング、浸漬コーティング、巻き線によるロッドコーティング、流動床コーティング、粉末コーティング、静電噴霧、音波による噴霧、ブレードコーティングなどが挙げられる。この組成物をコーティングした後、コーティングを約125℃で30分間硬化させ、次いで、約190℃で約40分間硬化させる。
【0045】
NMP中、PPSU(RADEL(登録商標)R−5000NT)、ポリシロキサン(BYK(登録商標)333)、カーボンブラック(special black 4)を重量比84.95/0.05/15で含むコーティング組成物を、ホモジナイザまたはアトライタによって調製した。得られた分散物(約20重量%の固形分、粘度が約1,200cps)をフローコーティングし、次いで、125℃で30分、190℃で40分乾燥させた。優れたコーティング品質を有するつなぎ目のないITBを得た。
【0046】
PPSU、ポリシロキサン、カーボンブラック ITBのいくつかの重要な特徴を測定し、表面抵抗率が1.2×10ohm/sq、ヤング弾性率が3,700MPa、CTEが100ppm/℃、CHEが25.8ppm/湿度%であり、これらはすべて、機能的な中間転写体であることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェニルスルホンとポリシロキサンとを含み、この中にカーボンブラック粒子が分散した、つなぎ目のない層を含む、中間転写体。
【請求項2】
前記ポリフェニルスルホンが、以下の式によってあらわされ
【化1】

式中、nが約30〜約5,000である、請求項1に記載の中間転写体。
【請求項3】
カーボンブラック粒子と、以下の式によってあらわされるポリフェニルスルホン
【化2】

〔式中、nは、約30〜約5000である〕
と、ポリシロキサンとを、カーボンブラック粒子/ポリフェニルスルホン/ポリシロキサンの重量比が、約1/97/2〜約30/70/0.01であるように含む、つなぎ目のない層を含む中間転写体。
【請求項4】
前記つなぎ目のない層が、リン酸エステルをさらに含む、請求項3に記載の中間転写体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−150475(P2012−150475A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−3561(P2012−3561)
【出願日】平成24年1月11日(2012.1.11)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】