説明

中間転写記録媒体、及び偽造防止媒体

【課題】
インクジェット方式で画像を印画でき、かつ、被転写体(媒体)へ受容層が強固に接着され、転写された画像は耐擦傷性、耐溶剤性、洗濯堅牢度などの耐久性により優れる中間転写記録媒体、及び偽造防止媒体を提供する。
【解決手段】
基材11、離型層13、保護層15、第1受容層21及び第2受容層23を有し、第1受容層21はカチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、フィラー及び分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体とを含み、第2受容層23カチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、フィラーとを含むことを特徴とし、また、第1受容層21のカチオン性ウレタン系樹脂:分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体=100:1〜15であり、さらに、第1受容層21の厚さ:第2受容層23の厚さ=100:1〜20であることも特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間転写記録媒体に関し、さらに詳しくは、個人情報などの痕跡が残るインクリボンを使用しないインクジェット方式で画像を印画でき、画像を印画する際には画像が滲まず、乾燥が早く、かつ、転写後の印画された画像は耐擦傷性、耐溶剤性、洗濯堅牢度などの耐久性に優れ、セキュリティ性の高い中間転写記録媒体、及び偽造防止媒体に関するものである。
【0002】
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断わらない限り質量基準であり、「/」印は一体的に積層されていることを示す。また、「PET」は「ポリエチレンテレフタレート」、「UV」は「紫外線」、「電離放射線硬化(性)樹脂」は「未硬化の電離放射線硬化性樹脂と、硬化した電離放射線硬化樹脂の総称」、「印字」は「印画」の略語、機能的表現、通称、又は業界用語である。
【背景技術】
【0003】
(主なる用途)本発明の中間転写記録媒体を用いて被転写体(媒体)へ保護層、及び画像が転写された被転写体(偽造防止媒体)の主なる用途としては、例えば、紙幣、株券、証券、証書、商品券、小切手、手形、入場券、通帳類、ギフト券、乗車券、車馬券、印紙、切手、鑑賞券、入場証、通行証、チケット等の金券類、キャッシュカード、クレジットカード、IDカード、プリペイドカード、メンバーズカード、ICカード、光カードなどのカード類、グリーティングカード、ハガキ、名刺、運転免許証、パスポート等の各種証明書やその証明写真類、カートン、ケース、軟包装材などの包装材類、バッグ類、化粧品、腕時計、ライター等のブランド装身具、封筒、タグ、しおり、カレンダー、ポスター、パンフレット、ネームプレート、レポート用紙など文具類、建材、パネル、エンブレム、キー、布、衣類、履物、ラジオ、テレビ、電卓、OA機器等の装置類などがある。しかしながら、個人情報などの痕跡が残るインクリボンを使用しないインクジェット方式で画像を印画でき、かつ、媒体へ転写された画像は耐擦傷性、耐溶剤性、洗濯堅牢度などの耐久性が要求される用途であれば、特に限定されるものではない。
【0004】
(背景技術)従来、金券類、カード類、及び各種証明書類などの偽造防止媒体は、資格証明や一定の経済的価値や効果を持つため、所有者の個人情報が表示されるが、該個人情報の漏洩を防止し、かつ、使用時における外力に対する耐久性が必要である。個人情報の表示方法として、熱転写法による印画(表示)が広く使用される様になっている。これらの熱転写方法では、各種の画像が簡便に形成されるので、印刷枚数が比較的少なくてもよい印刷物、例えば、身分証明書等のIDカードの作成等に利用される様になっている。又、顔写真等の如くカラー画像が好ましい場合には、連続した基材フイルム上に、例えば、イエロー、マゼンダ及びシアン(更に必要に応じてブラック)の着色熱転写層を面順次に繰返し多数設けた長尺熱転写フイルムを用いる熱転写方法が行なわれている。この様な熱転写フイルムは溶融転写タイプと、昇華タイプの熱転写フイルムとがあるが、いずれも、専用のインクリボンを用いて印画するので、印画されて抜けた部分があるインクリボンが排出され、該排出インクリボンの抜け部分は秘密にしたい個人情報などであり、該個人情報などが廃棄されるインクリボンから容易に知られてしまうという危険性があった。また、上記の熱転写フイルムで、身分証明書等のIDカードを作成する場合、溶融転写タイプの熱転写フイルムの場合は、文字や数字等の如き画像の形成は容易であるが、これらの画像は耐久性、特に耐摩擦性が劣るという欠点がある。一方、昇華転写型の熱転写フイルムの場合には、顔写真等の階調性画像を形成することが出来るが、形成された画像は通常の印刷インキとは異なり、ビヒクルが無い為、耐光性、耐候性、耐摩擦性等の耐久性に劣るという問題がある。上記問題を解決する方法として、画像を形成した後に、該画像の表面に、さらに、透明樹脂層や硬化樹脂層などの保護層(ハードコート層や本発明の保護層に相当する)を重ねて転写する方法がある。しかしながら、画像転写と保護層転写の2回の転写操作を行うために、煩雑で効率が悪い。そこで、インクリボンを使用せず、インクジェット方式で画像を形成する中間転写記録媒体もあるが、インクジェット方式による画像では乾燥が遅いため画像形成速度が遅くなったり、また印画が滲んだり、さらに画像形成後の乾燥も遅いので、直ちに被転写体へ転写できないし、転写ができても、被転写体(媒体)への接着性が低く、転写された画像は耐擦傷性、耐溶剤性、洗濯堅牢度などの耐久性に欠けるという問題点もあった。さらにまた、カード類、及び各種証明書類などは、資格証明や一定の経済的価値や効果を持つため、所有者を容易に特定できずなりすましや、偽造変造によって所有者以外が使用できてしまうという欠点もあった。
従って、中間転写記録媒体は、個人情報などの痕跡が残るインクリボンを使用せず、中間転写記録媒体へ画像を印画する際には画像が滲まず、乾燥が早く、該中間転写記録媒体の受容層が被転写体(媒体)へ強固に接着され、転写された画像は耐擦傷性、耐溶剤性、洗濯堅牢度などの耐久性が求められ、さらに、偽造変造なりすましを防止するセキュリティ性も求められている。
【0005】
(先行技術)従来、受像層に昇華性熱転写、溶融性熱転写、インクジェット、または電子写真により画像形成し、基材上に熱転写により転写されたカードが知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、インクジェットによる画像は文字などの画像であり、特段のセキュリティ性は有していないという問題点がある。
また、本出願人は、熱転写シート基材、離型層、耐水性樹脂層、水性インキ受容層、インクジェット印刷層が順に形成された熱転写シート(本発明の中間転写記録媒体に相当する)と、該熱転写シートをカード素材へ熱転写するカードの製造方法を開示している(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、所有する個人の顔写真や自分の好みの図案や絵柄からなる任意の鮮明なオリジナル画像を形成できるが、該水性インキ受容層では被転写体への接着性が低く、転写された画像は耐擦傷性、耐溶剤性、洗濯堅牢度などの耐久性が低いという欠点がある。
【0006】
【特許文献1】特開平10−244788号公報
【特許文献2】特開2006−205489号公報
【0007】
また、本出願人は特願2008−126642号で、受容層がカチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、フィラー及び分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体とを含み、かつ前記受容層がインクジェット方式で印画することができる、基材/離型層/保護層/受容層が積層されてなる中間転写記録媒体を出願している。しかしながら、被転写体へ熱接着性を有するものの、用途によってはさらに受容層を被転写体へ強固に接着させる必要性があるが、被転写体との接着性については記載も示唆もされていない。そこで、本発明は上記のような問題点を解消するために、本発明者らは鋭意研究を進め、本発明の完成に至ったものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明はこのような問題点を解消するためになされたものである。その目的は、個人情報などの痕跡が残るインクリボンを使用しないインクジェット方式で画像を印画でき、中間転写記録媒体の受容層へ画像を印画する際には画像が滲まず、乾燥が早く、かつ、被転写体(媒体)へ受容層が強固に接着され、転写された画像は耐擦傷性、耐溶剤性、洗濯堅牢度などの耐久性により優れ、セキュリティ性の高い中間転写記録媒体、及び偽造防止媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明に係わる中間転写記録媒体は、基材と、該基材の一方の面に少なくとも離型層、保護層及び受容層が積層されてなる中間転写記録媒体であって、前記受容層が第1受容層及び第2受容層が順に積層されてなり、前記第1受容層がカチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、フィラー及び分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体とを含み、第2受容層がカチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、フィラー及とを含み、かつ前記受容層がインクジェット方式で印画することができるように、したものである。
請求項2の発明に係わる中間転写記録媒体は、上記第1受容層のカチオン性ウレタン系樹脂に対する分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体の配合割合が質量基準で、カチオン性ウレタン系樹脂:分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体=100:1〜15であるように、したものである。
請求項3の発明に係わる中間転写記録媒体は、上記第2受容層の厚さが0.1〜2μmであり、かつ、上記第1受容層と上記第2受容層の厚さの比が、第1受容層:第2受容層=100:1〜20であるように、したものである。
請求項4の発明に係わる偽造防止媒体は、請求項1〜3のいずれかに記載の中間転写記録媒体を用い、該中間転写記録媒体の上記第1受容層及び第2受容層へインクジェット方式で画像を印画した後に、被転写体の表面へ保護層、及び画像が形成された前記第1受容層及び第2受容層が転写されてなるように、したものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の本発明によれば、個人情報などの痕跡が残るインクリボンを使用しないインクジェット方式で画像を印画でき、中間転写記録媒体の受容層へ画像を印画する際には画像が滲まず、乾燥が早く、かつ、被転写体(媒体)へ受容層が強固に接着され、転写された画像は耐擦傷性、耐溶剤性、洗濯堅牢度などの耐久性に優れ、セキュリティ性の高い中間転写記録媒体が提供される。
請求項2〜3の本発明によれば、請求項1の効果に加えて、被転写体(媒体)へ受容層が強固に接着されるので、転写された画像は耐擦傷性、耐溶剤性、洗濯堅牢度などの耐久性により優れ、セキュリティ性の高い中間転写記録媒体が提供される。
請求項4の本発明によれば、個人情報などの痕跡が残るインクリボンを使用しないインクジェット方式で印画された画像を有する受容層が被転写体へ強固に接着され、転写された画像は耐擦傷性、耐溶剤性、洗濯堅牢度などの耐久性に優れ、セキュリティ性の高い偽造防止媒体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、本発明の1実施例を示す中間転写記録媒体の断面図である。
図2は、本発明の中間転写記録媒体への画像形成方法を説明する説明図である。
図3は、本発明の1実施例を示す偽造防止媒体の断面図である。
【0012】
(中間転写記録媒体)本発明の中間転写記録媒体10は、図1に示すように、基材11と、該基材11の一方の面へ離型層13、保護層15、受容層20(第1受容層21及び第2受容層23からなる)を有する。第1受容層21と第2受容層23との層間を除いた層間及び/又は層表面へ、必要に応じてプライマ層16、印刷層などの他の層を設けてもよい。第1受容層21と第2受容層23とを合わせて受容層20となる。第1受容層21はカチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、フィラー及び分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体とを含み、第2受容層23カチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、フィラーとを含み、かつ第1受容層21及び第2受容層23へはインクジェット方式で印画することができる。また、好ましくは、第1受容層21へのインクジェット方式のインキ(画像)を良好に定着させるために、第1受容層21のカチオン性ウレタン系樹脂に対する分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体の配合割合が質量基準で、カチオン性ウレタン系樹脂:分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体=100:1〜15とする。さらに、受容層20(第1受容層21及び第2受容層23)へインクジェット方式で画像103を印画した状態を図2に示す。
本発明の中間転写記録媒体10では受容層として、第1受容層21と第2受容層23の2層とすることで、第1受容層21はインクジェット方式で印画された画像103を良好に定着させ、また、第2受容層23は被転写体101の表面へ良好に接着させることができる。この結果、受容層へ画像を印画する際には画像が滲まず、乾燥が早く、良好に定着し、かつ、被転写体(媒体)へ受容層が強固に接着され、転写された画像は耐擦傷性、耐溶剤性、洗濯堅牢度などの耐久性により優れるのである。インクジェット方式のインキ(画像)が第2受容層23へ浸透し易くするために、第2受容層23の厚さを薄く、厚さを0.1〜2μmとし、かつ、浸透したインキが第2受容層23へ定着し易くするために、第2受容層23を厚めにし、第1受容層21と第2受容層23の厚さの比が、第1受容層21:第2受容層23=100:1〜20とすることが好ましい。画像103を印画した本発明の中間転写記録媒体10を被転写体101へ転写することで、図3に示すような偽造防止媒体100となる。
【0013】
(基材)基材11としては、特に限定されるではなく、好ましい基材11の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の耐熱性の高いポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリエチレン誘導体、ポリアミド、ポリメチルペンテン等のプラスチックの延伸または未延伸フィルムが挙げられる。また、これらの材料を2種以上積層した複合フィルムも使用することができる。基材フィルムの厚さは、その強度および耐熱性等が適切になるように材料に応じて適宜選択することができるが、通常は1〜100μm程度のものが好ましく用いられる。
【0014】
(離型層)転写時の剥離性を向上させるために離型層13を設け、必要に応じて、離型層13の代わりに剥離層も設けてもよく、離型層13及び剥離層の両方を設けるとより転写性をより向上できる。
【0015】
(離型層)離型層13としては、通常、離型性樹脂、離型剤を含んだ樹脂、電離放射線で架橋する硬化性樹脂などがあるが、好ましくはメラミン系樹脂を用い、後述するハードコート層14と組合わせることで、離型層13との剥離性が安定し、転写時の転写性を向上させることができる。離型層13の形成は、該樹脂を溶媒へ分散又は溶解して、ロールコート、グラビアコートなどの公知のコーティング方法で、塗布し乾燥して、温度150℃〜200℃程度で焼き付ける。離型層13の厚さとしては、通常は0.01μm〜5.0μm程度、好ましくは0.5μm〜3.0μm程度である。
【0016】
(剥離層)必要に応じて設ける剥離層としては、一般的にはエチルセルロース、ニトロセルロース、酢酸セルロースなどのセルロース誘導体、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラールなどのビニル共重合体の熱可塑性樹脂や、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノアルキッド樹脂などの熱硬化型の樹脂を用いて形成することができる。また、離型層には箔切れ性を向上させるために、マイクロシリカやポリエチレンワックスなどのフィラーを含有させることが好ましい。離型層は、上記の樹脂を溶媒へ分散又は溶解して、ロールコート、グラビアコート、バーコートなどの公知のコーティング方法で、少なくとも1部に塗布し乾燥して塗膜を形成したりすれば良い。離型層の厚さとしては、通常は0.1μm〜5μm程度、好ましくは0.5μm〜2μm程度である。離型層13及び剥離層の両方を設ける場合には、適宜組み合わせて用いればよく、この場合には、剥離層は転写後には被転写体へ転写移行して、保護層としての機能を合わせ持つ。
【0017】
(保護層)保護層15としては、電離放射線硬化性樹脂の硬化物を主成分に、シリコーンオイルや反応性シリコーンなどのシリコーンを含ませたり、マイクロシリカやポリエチレンワックスまどのフィラーも含ませてもよい。
【0018】
(保護層の形成)保護層15は、例えば、エポキシ変性アクリレート樹脂、ウレタン変性アクリレート樹脂、アクリル変性ポリエステル等が適用でき、好ましくはウレタン変性アクリレート樹脂などの電離放射線硬化性樹脂、及び必要に応じて添加剤を、溶媒へ分散又は溶解して、ロールコート、グラビアコート、コンマコートなどの公知のコーティング方法で、少なくとも1部に塗布し乾燥した後に、紫外線や電子線などの電離放射線を照射して硬化(反応)させると電離放射線硬化樹脂(保護層15)となる。保護層15の厚さとしては、通常は1μm〜30μm程度、好ましくは2μm〜20μm程度である。複数回の塗布でもよい。
【0019】
(第1受容層)保護層15面へ、必要に応じてプライマー層16を介して、第1受容層21を設ける。第1受容層21はインクジェット用受容層組成物を塗布したもので、該インクジェット用受容層組成物は、少なくともカチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、フィラー、及び分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体とを含ませる。
【0020】
カチオン性ウレタン系樹脂としてはカチオン性基を有するポリカーボネート系ポリウレタン、ポリテトラメチレンエーテルグリコール系ポリウレタン、ポリエステルエーテル系ポリウレタン、ポリブチレンアジペート系ポリウレタン、ポリメチルペンタンアジペート系ポリウレタン、ポリノナンジオールアジペート/ポリオクタンアジペート系ポリウレタン、ポリメチルペンタンアジペート系ポリウレタンなどのウレタン系樹脂で、好ましくは自己乳化性又は水性で、カチオン性親水基を有するポリカーボネート系又はポリエステル系のポリオールと脂肪族イソシアネートの反応物が好ましい。カチオン性基としては1〜3級アミン或いは4級アンモニウム塩基などが例示できる。
【0021】
(カチオン性フィックス剤)カチオン性フィックス剤としては、ポリアミン誘導体や第4級アンモニウム塩などの染料固着剤が例示できる。
【0022】
(フィラー)フィラーとしては、箔切れ性を良くし、透明性を害さない程度に含有させ、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、プラスチックピグメント等の透明性の高い微粒子やワックス等で、ポリエチレンワックスやマイクロシリカが好ましい。
【0023】
(アジリジニン誘導体)アジリジル誘導体としては分子内に2個以上のアジリジニル基を有する化合物を用い、好ましくは、
【化1】

(式中、R1は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、又はR2−OCH2−で、R25は水素原子、塩素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルキルアルコール基、アクリル酸アルキル基、アルキルフェノール基で、同一でも異なってもよい。)
【化2】

(式中、R610は水素原子、塩素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルキルアルコール基、アクリル酸アルキル基、アルキルフェノール基で、同一でも異なってもよい。nは1〜3の整数)
一般式1におけるR35のうち2個以上が一般式2の構造を有する化合物、即ち、分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジル誘導体である。
【0024】
分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体、例えば、トリメチロールプロパン−トリス−(α−メチル−α−アジリジニルアセテート)、トリメチロールプロパン−トリス−(α−エチル−α−アジリジニルアセテート)、トリメチロールメタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールエタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールブタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、モノエトキシトリメチロールメタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールエタン−トリス−(β−(2−メチル-1−アジリジニルプロピオナート))、テトラメチロールメタン−トリス−(α−メチル−α−アジリジニルアセテート)、テトラメチロールエタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、ジトリメチロールプロパン−ヘキサキス−(β−アジリジニルプロピオナート)、ジトリメチロールプロパン−ペンタキス−(β−(2−メチルアジリジニルプロピオナート)等が挙げられる。
【0025】
好ましくは、トリメチロールメタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールエタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールプロパン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールブタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールエタン−トリス−(β−(2−メチル-1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールプロパン−トリス−(β−(2−メチル−1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールプロパン−トリス−(β−(2,2−ジメチル−1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールプロパン−トリス−(α−メチル−β−(1−アジリジニルプロピオナート)、トリメチロールプロパン−トリス−(β−メチル−β−(1−アジリジニルプロピオナート)、テトラメチロールメタン−トリス−(α−メチル−α−アジリジニルアセテート)、テトラメチロールメタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート)、テトラメチロールエタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、テトラメチロールメタン−トリス−(β−(2−プロピル−1−アジリジニルプロピオナート))、テトラメチロールメタン−トリス−(β−(2−メチル−1−アジリジニルプロピオナート))、テトラメチロールメタン−トリス−(β−(2,2−ジメチル−1−アジリジニルプロピオナート)、テトラメチロールメタン−トリス−(β−(2,2−ジエチル−1−アジリジニルプロピオナート)テトラメチロールメタン−テトラキス−β−(1−アジリジニルプロピオナート)、テトラメチロールメタン−テトラキス−β−メチル−β−(1−アジリジニルプロピオナート)、テトラメチロールメタン−テトラキス−β−(2−メチル−1−アジリジニルプロピオナート)、ジトリメチロールプロパン−ヘキサキス−(β−アジリジニルプロピオナート)、ジトリメチロールプロパン−ペンタキス−(β−(2−メチルアジリジニルプロピオナート)が好ましく、トリメチロールプロパン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート)、テトラメチロールメタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート)、テトラメチロールメタン−テトラキス−(β−アジリジニルプロピオナート)である。
【0026】
分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体について市販されているものとしては、例えば、相互薬工社製のTAZM(トリメチロールプロパン−トリス−(β−アジリジニルプロピオナート)、TAZO(テトラメチロールメタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート)))日本触媒製のケミタイトPZ−33(トリメチロールプロパン−トリス−(β−アジリジニルプロピオナート))等が挙げられる。
3個のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体が、硬化する反応性の速さ、硬化後に網目状となるので耐久性の高さ点で、特に好ましい。
【0027】
カチオン性ウレタン系樹脂とカチオン性フィックス剤とフィラーと分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体との割合が質量基準でカチオン性ウレタン系樹脂:カチオン性フィックス剤:フィラー:分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体=100:5〜20:1〜10:1〜15である。カチオン性フィックス剤の含有割合が上記範囲未満では定着性が悪く、上記範囲を越えると洗濯中に溶出して堅牢性を低下させる。フィラーの含有割合が上記範囲未満ではインキ定着性が悪く、上記範囲を越えると透明性が低下し画像が見えにくくなる。フィラーの含有割合は、第1受容層21では層厚さが厚いので箔切れ性をよくし、透明性を害さない程度に多めに、また、第2受容層23では接着性をよくするための少なめに含有させるのが好ましい。
【0028】
アジリジン誘導体の添加量は、本発明の効果を阻害しない量であれば特に制限されないが、通常カチオン性ウレタン系樹脂に対する分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体の配合割合が質量基準で、カチオン性ウレタン系樹脂:分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体=100:1〜15が好ましく、さらに好ましくは100:3〜10である。アジリジン誘導体は水溶性の硬化剤として機能するので、アジリジン誘導体の含有割合が上記範囲未満では、硬化が不足するために耐水性や耐アルコール性などの耐溶剤性などの耐久性が充分ではなく、上記範囲を越えると透明性が低下し画像が見えにくくなる。
【0029】
インクジェット用の第1受容層21の形成は、上記の材料を溶媒へ分散又は溶解して、必要に応じて添加剤を添加し、媒体101の少なくとも一方の面へ、必要に応じてコロナ処理やプライマ層を設けて、ロールコート、グラビアコート、コンマコート、ダイコートなどの公知のコーティング方法で、塗布し乾燥すればよい。
【0030】
(第2受容層)第1受容層21面へ第2受容層23を設ける。該第2受容層23はカチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、フィラーとを含ませ、第1受容層21の組成物に含まれる分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体を含ませない。この分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体はインクジェット方式のインキ(画像)をよく定着させるが、被転写体への熱接着性を低下させるので、分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体を含ませた第1受容層21でインキの定着性をよくし、含まない第2受容層23で被転写体101との接着性を良好に維持させることができる。
【0031】
第2受容層23に含ませるカチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、フィラーの材料としては第1受容層21と同様なものが適用できる。また、第2受容層23の形成も第1受容層21と同様な方法が適用できる。
【0032】
(第1及び第2受容層)インクジェット方式のインキ(画像)が第2受容層23へ浸透し易くするために、第2受容層23の厚さを薄く、厚さを0.1〜2μmとし、かつ、浸透したインキが第2受容層23へ定着し易くするために、第2受容層23を厚めにし、第1受容層21と第2受容層23の厚さの比が、第1受容層21:第2受容層23=100:1〜20とすることが好ましい。第1受容層21及び第2受容層23が中間転写記録媒体10の最表面となり、第1受容層21及び第2受容層23面に、インクジェット方式によって画像が印画される。
このように、本発明の中間転写記録媒体10では受容層として、第1受容層21と第2受容層23の2層とすることで、第2受容層23を透過して第1受容層21に達したインクジェット方式のインキ(画像103)は分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体を含む組成物に良好に定着し、また、第2受容層23は被転写体への熱接着性を低下させる分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体を含まないので、被転写体101の表面へ良好に接着させることができる。この結果、受容層へ画像を印画する際には画像が滲まず、乾燥が早く、良好に定着し、かつ、被転写体(媒体)へ受容層が強固に接着され、転写された画像は耐擦傷性、耐溶剤性、洗濯堅牢度などの耐久性により優れるのである。
【0033】
インクジェット方式のインキ(画像)が第2受容層23へ浸透し易くするために、第2受容層23の厚さを薄く、厚さを0.1〜2μmとし、かつ、浸透したインキが第2受容層23へ定着し易くするために、第2受容層23を厚めにし、第1受容層21と第2受容層23の厚さの比が、第1受容層21:第2受容層23=100:1〜20とすることが好ましい。但し、第1受容層21と第2受容層23との界面は明確でなく混然一体となっていてもよく、要は少なくとも第2受容層23の1部が露出しているようにすればよい。第2受容層23の厚さがこの範囲未満では被転写体101との接着性が充分でなく、この範囲を超えると、インキが第2受容層23への浸透が不十分となり定着しくくなる。第1受容層21と第2受容層23の厚さの比が、この範囲未満では被転写体101との接着性が充分でなく、この範囲を超えるとインキの定着性が低くなる。
【0034】
(他の層)層間及び/又は層表面へ必要に応じて設ける層としては、プライマ層、印刷層、帯電防止層、背面滑性層などがあり、それぞれ公知のものでよい。特に、印刷層としては、着色インキや蛍光インキなどを用いて、公知のスクリーン印刷やグラビア印刷法で印刷すればよい。
【0035】
(プライマ層)必要に応じて、接着力を向上させるために、プライマ層16を設けることが好ましい。該プライマ層16としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、酸変性ポリオレフィン系樹脂、エチレンと酢酸ビニル或いはアクリル酸などとの共重合体、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ゴム系化合物などを使用することができ、好ましくは、酸素若しくは窒素を有するもの、若しくはイソシアネート化合物を反応性のもの、例えばアクリル樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂、アイオノマー樹脂、ゴム系樹脂等の従来の接着剤として既知のものである。該プライマ層は膜厚が薄いので必ずしも含有しなくてもよいが、マイクロシリカやポリエチレンワックスなどのフィラーを含有させることが好ましい。
【0036】
(インクジェット)画像103の形成は、中間転写記録媒体10のインクジェット用の受容層20(第1受容層21及び第2受容層23)へインクジェット方式で印画すればよい。インクジェット方式には熱インパクト法などがあるが特に限定されず、インクジェットインキも水性や油性インキなどがあるが特に限定されない。また、インクジェット方式で形成する画像103も、円形や星形などのスポット状、文字、数字、イラスト、写真などの任意の形状でよく、その色調も単独、複数、フルカラー用など限定されるものではない。好ましくは、オンデマンドで可変情報をインクジェット方式で印画することである。インクジェット方式では、画像103を印画する際に、個人情報などの痕跡が残るインクリボンを使用せず、また、画像103を印画する際にも、画像が滲まず、乾燥が早いので効率よく印画することができる。
【0037】
(定着性)従来のインクジェット方式による画像としては、身分証明書等のIDカードを作成する場合、画像の形成は容易であるが、これらの画像は耐久性、特に耐摩擦性が劣るという欠点がある。従来のインクジェット用受容層はポリビニルアルコールなどの水溶性樹脂を主体とするもので、耐水性は著しく悪く、また、多孔質質のフィラーを用いたり、受容層塗工液の溶媒として良溶媒と貧溶媒を用いて、乾燥中に相分離、ゲル化させて多孔質の網目構造とさせたり、していたが、画像の定着性が充分でなく、洗濯時に画像が淡くなる問題点もあった。
【0038】
これに対して、本発明の中間転写記録媒体の受容層20(第1受容層21及び第2受容層23)に、インクジェット方式によって印画された画像103であれば、高画質で定着性がよく、印画された画像は耐擦傷性、耐水性や耐アルコール性などの耐溶剤性、洗濯堅牢度などの耐久性に優れるようになる。定着性と洗濯堅牢度の両立は定かではないが、厚さの厚い第1受容層21がカチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、フィラー、及び分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体とを含むことで、塗膜の表面が微細な凹凸状となったり、塗膜自身の凝集状態も密ではなくかなり粗状になっていたり、また、分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体が他の成分を反応して、網目状や凝集状態の安定化したりするために、画像成分との密着性が向上し、特に、耐アルコール性が向上させることができる。また、画像を構成する染料などがカチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体と硬化などの反応や相互に作用すると推測される。
【0039】
(画像の耐久性)本発明の中間転写記録媒体のインクジェット用受容層20(第1受容層21及び第2受容層23)を有する塩化ビニル製クレジットカード(インクジェット用画像記録媒体)は、JIS X6301に準拠したカードの耐薬品浸漬性に合格し、詳細は実施例で述べる。また、80℃の雰囲気に240時間の暴露試験でも層間及び/又は被貼着材からの剥離のない耐熱性を有している。40℃の温水に96時間の浸漬試験でも層間及び/又は被貼着材からの剥離のない耐温水性を有している。シートクリナーを用いて20kPaで加圧しながら常温で100回の拭取り試験で著しい傷が付かない耐摩擦性を有している。低温(−40℃)、高温(80℃)及び高湿度(40℃90%RH)の条件を8時間毎に1サイクル(1日)として5サイクル(5日)の冷熱サイクル試験でも著しい変形や剥離のない耐冷熱繰り返し性を有している。
【0040】
(転写)被転写体101への転写工程は図2に示すように、画像103とが形成された中間転写記録媒体10の受容層20(第1受容層21及び第2受容層23)面を被転写体101面へ重ね合わせて加熱し基材及び離型層とを剥離し除去して転写する。画像103とが形成された受容層20(第1受容層21及び第2受容層23)/プライマー層16(必要に応じて)/保護層15とが被転写体101へ転写されて、図3に示すように、偽造防止媒体100となる。該転写方法としては、公知の転写法でよく、例えば、熱刻印によるホットスタンプ(箔押)、熱ロールによる全面又はストライプ転写、サーマルヘッド(感熱印画ヘッド)によるサーマルプリンタ(熱転写プリンタともいう)などの公知の方法が適用できる。円形、矩形、星形などのスポット状や、文字、数字などの任意の形状でよい。
【0041】
(インライン操作)画像の印画と、転写とは、別々のオフライン操作でも、連続して行うインライン操作でもよい。好ましくはインライン操作でも画像103が滲まず、乾燥が早いので、画像103を印画した直後でも転写操作をすることができる。
【0042】
(被転写体)被転写体(媒体)101としては特に限定されず、例えば天燃繊維紙、コート紙、トレーシングペーパー、転写時の熱で変形しないプラスチックフイルム、ガラス、金属、セラミックス、木材、布などのいずれのものでもよく、またそれらの複数層からなっていてもよい。また、被転写体101の媒体はその少なくとも1部が着色、印刷、その他の加飾が施されていてもよい。
【0043】
被転写体101へ転写には、通常接着機能を有する層を介するが、本願発明の中間転写記録媒体10の受容層20が、特に第2受容層23に含まれているバインダが熱接着性を有し、また、接着性を阻害する分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体を含まないので、転写時の熱で密着して一体化するので、強固に接着した転写をすることができる。
【0044】
また、従来、被転写体101への転写には、接着機能をインクジェット方式又は別塗布工程で設けたり、被転写体101の表面へ転写時の加熱加圧によって第1受容層21と軟化及び/又は溶融して密着して一体化する被着層を設ける場合もある。しかしながら、本発明の中間転写記録媒体10の受容層20(第1受容層21及び第2受容層23)であれば、その必要性も低い。
【0045】
(保護層の耐久性)インクジェット方式による画像103としては、身分証明書等のIDカードを作成する場合、画像の形成は容易であるが、これらの画像は耐久性、特に耐摩擦性が劣るという欠点がある。該画像を本発明の中間転写記録媒体10の受容層20(第1受容層21及び第2受容層23)へ印画した後に、被転写体101の表面へ転写することで、保護層15が図3に示すように最表面に位置し、画像を保護し、耐久性を高める。保護層15の鉛筆硬度試験は、JIS−K5400に準拠して測定し、H以上の硬度が好ましい。また、スクラッチ強度は、表面の充分な耐摩擦性の点から、サファイア150g以上、好ましくは200g以上である。なお、スクラッチ強度の測定方法は、23℃、55%RHの条件下で24時間調湿した試料に対して、耐摩耗性試験機(HEIDON−18)を用い、0.8mmφサファイア針を直角にあてがい、サファイア針に掛かる荷重を0gから200gまで徐々に増加させ、60cm/minで試料表面を摺動して移動させながら、表面に傷が付き始める時の荷重の測定を行った。荷重が大きいほど良好であることを表す。
【実施例】
【0046】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。なお、溶媒を除き、各層の各組成物は固形分換算の質量部である。
【0047】
(実施例1)基材11として厚さ25μmのPETフィルムを用い、該基材11の一方の面へ、グラビアコート法で、下記の離型層樹脂組成物(塗工液)を乾燥後2μmになるように塗布し乾燥して、180℃20秒間焼き付けて、離型層13を形成した。
・<離型層の樹脂組成物>
TCM01メジューム(大日本インキ社製、メラミン樹脂商品名) 25部
溶媒(MEK:トルエン=1:1) 75部
該離型層13面へ、下記の電離放射線硬化性樹脂組成物をグラビアリバースコーターで乾燥後の厚さが5μmになるように、塗工し100℃で乾燥させた後に、高圧水銀灯を用いて紫外線を照射して硬化させて、保護層15を形成した。
・<保護層の電離放射線硬化性樹脂組成物>
ユピマーUV−V3031(三菱化学社製、UV硬化性樹脂商品名)100部
ポリエチレンワックス(平均粒径3〜5μm、球状) 2部
光重合開始剤(チバ社製、商品名イルガキュア184) 5部
酢酸エチル 300部
該保護層15面へ、下記のプライマ層組成物をグラビアコーターで乾燥後の塗布量が0.5μmになるように、塗工し100℃で乾燥させて、プライマ層16とした。
・<プライマ層組成物途工液>
ポリエステル樹脂 20部
マイクロシリカ(平均粒子径0.5μ) 1部
溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1)80部
該プライマ層16面へ、下記の第1受容層組成物をグラビアリバースコーターで乾燥後の厚さが10μmになるように塗工し乾燥させて、第1受容層21とした。
・<第1受容層組成物>
第4級アンモニウム塩型ポリカーボネート系ポリウレタン 20部
ダンフィックス505RE(日東紡績社製;ポリカチオン性フィックス剤)2部
マイクロシリカ(平均粒子径0.5μ) 1部
ケミタイトPZ−33(日本触媒製、アジリジン誘導体商品名) 3部
溶媒(水) 80部
該第1受容層21面へ、下記の第2受容層組成物をグラビアリバースコーターで乾燥後の厚さが0.5μmになるように塗工し乾燥させて、第2受容層23とし、画像の形成されていない中間転写媒体10を得た。
・<第2受容層組成物>
第4級アンモニウム塩型ポリカーボネート系ポリウレタン 20部
ダンフィックス505RE(日東紡績社製;ポリカチオン性フィックス剤)2部
マイクロシリカ(平均粒子径0.5μ) 1部
溶媒(水) 80部
【0048】
(実施例2)下記の第1受容層組成物を用い、第2受容層23の厚さを1μmとする以外は、実施例1と同様にして、実施例2の中間転写記録媒体10を得た。
・<第1受容層組成物>
第4級アンモニウム塩型ポリカーボネート系ポリウレタン 100部
ダンフィックス505RE(日東紡績社製;ポリカチオン性フィックス剤)10部
マイクロシリカ(平均粒子径0.5μ) 5部
ケミタイトPZ−33(日本触媒社製、アジリジン誘導体) 5部
溶媒(水) 300部
【0049】
(実施例3)下記の第1受容層組成物を用い、第2受容層23の厚さを1.5μmとする以外は、実施例1と同様にして、実施例3の中間転写記録媒体10を得た。
・<第1受容層組成物>
第4級アンモニウム塩型ポリカーボネート系ポリウレタン 100部
ダンフィックス505RE(日東紡績社製;ポリカチオン性フィックス剤)10部
マイクロシリカ(平均粒子径0.5μ) 5部
ケミタイトPZ−33(日本触媒社製、アジリジン誘導体) 10部
溶媒(水) 300部
【0050】
(比較例1)下記の第2受容層組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして、比較例1の中間転写記録媒体10を得た。
・<第2受容層組成物>
第4級アンモニウム塩型ポリカーボネート系ポリウレタン 20部
ダンフィックス505RE(日東紡績社製;ポリカチオン性フィックス剤)2部
マイクロシリカ(平均粒子径0.5μ) 1部
ケミタイトPZ−33(日本触媒製、アジリジン誘導体商品名) 3部
溶媒(水) 80部
【0051】
(実施例4〜6、比較例2)実施例1〜3及び比較例1の中間転写記録媒体10の受容層20(第1受容層21及び第2受容層23)面へ、600dpiのカラーインクジェットプリンターで、公知の水性インクジェット用インクを用いて、オンデマンド方式で画像103として氏名とカラー顔写真を印画した後に、被転写体101としてクレジットカード用で厚さが0.76mmの4層ポリ塩化ビニル製のシート面へ、加熱ロール方式転写装置で転写し、基材11を離型層13と共に剥離し徐去して、実施例4〜6及び比較例2の偽造防止媒体100を得た。実施例1〜3及び比較例1の中間転写記録媒体10の受容層20へのインクジェット方式での印画はいずれも問題なかった。
【0052】
(評価試験)接着性は、JIS−K5400の8.5.1記載に準拠して行った。具体的には、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて、層を貫通して基材に達する切り傷を縦横につけて、100個のマス目状とし、セロハン粘着テープ(ニチバン社製405番24mm幅)をマス状の切り傷面に張り付け、消しゴムでこすって完全に付着させた後、垂直に引き剥がした。剥離後の面を目視により観察し、100個のマス目における層残留率(マス目の一部分でも剥がれたものも剥がれた個数として扱う)を接着性の尺度とし下記式により求めた。接着性(%)=(1−(剥がれたマス目/100マス))×100
実施例4〜6では100%と良好であった。比較例2では90%であり実用上支障はないと思われるが、用途によっては不十分である。
【0053】
さらに、実施例4〜6及び比較例2の偽造防止媒体100を80℃の雰囲気に240時間の暴露試験でも層間及び/又は被貼着材からの剥離のない耐熱性を有していた。40℃の温水に96時間の浸漬試験でも層間及び/又は被貼着材からの剥離のない耐温水性を有していた。シートクリナーを用いて20kPaで加圧しながら常温で100回の拭取り試験で著しい傷が付かない耐摩擦性を有していた。低温(−40℃)、高温(80℃)及び高湿度(40℃90%RH)の条件を8時間毎に1サイクル(1日)として5サイクル(5日)の冷熱サイクル試験でも著しい変形や剥離のない耐冷熱繰り返し性を有していた。
【0054】
耐薬品性は、実施例4〜6及び比較例2の偽造防止媒体100について、JIS X6301に準拠して、カードの耐薬品浸漬性で評価した。5%食塩水、5%酢酸水、5%炭酸ナトリウム水溶液、10%砂糖水、50%エチレングリコール、60%エタノールの各薬品に、24時間浸漬した後に、画像を目視で観察した。実施例4〜6及び比較例2の偽造防止媒体100の耐薬品浸漬性の結果を表1に示す。「◎印」は画像103にほとんど変化が認められず、「○印」は著しい変化が認められず実用上支障なく合格とし、「×印」は画像103が歪んだり、欠けたり、喪失したりして、不合格とした。
【0055】
【表1】

【0056】
表1に示すように、実施例4及び比較例2では5%酢酸水、10%砂糖水、50%エチレングリコール、60%エタノールで「○」で、他は「◎」であり、実施例5では60%エタノールで「○」で、他は「◎」であり、実施例6では、すべて「◎」であり、クレジットカード規格を満足していた。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の1実施例を示す中間転写記録媒体の断面図である。
【図2】本発明の中間転写記録媒体への画像形成方法を説明する説明図である。
【図3】本発明の1実施例を示す偽造防止媒体の断面図である。
【符号の説明】
【0058】
10:中間転写記録媒体
11:基材
13:離型層
15:保護層
16:プライマ層
20:受容層
21:第1受容層
23:第2受容層
101:被転写体
103:画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の一方の面に少なくとも離型層、保護層及び受容層が積層されてなる中間転写記録媒体であって、前記受容層が第1受容層及び第2受容層が順に積層されてなり、前記第1受容層がカチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、フィラー及び分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体とを含み、第2受容層がカチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、フィラー及とを含み、かつ前記受容層がインクジェット方式で印画することができることを特徴とする中間転写記録媒体。
【請求項2】
上記第1受容層のカチオン性ウレタン系樹脂に対する分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体の配合割合が質量基準で、カチオン性ウレタン系樹脂:分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体=100:1〜15であることを特徴とする請求項1に記載の中間転写記録媒体。
【請求項3】
上記第2受容層の厚さが0.1〜2μmであり、かつ、上記第1受容層と上記第2受容層の厚さの比が、第1受容層:第2受容層=100:1〜20であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の中間転写記録媒体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の中間転写記録媒体を用い、該中間転写記録媒体の上記第1受容層及び第2受容層へインクジェット方式で画像を印画した後に、被転写体の表面へ保護層、及び画像が形成された前記第1受容層及び第2受容層が転写されてなることを特徴とする偽造防止媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−5885(P2010−5885A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167105(P2008−167105)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】