説明

中間転写記録媒体

【課題】 耐引っ掻き性を代表とする耐久性に優れた印画物を容易に得ることができ、さらに熱転写画像形成の際の転写感度が高く、濃淡のある鮮明な画像を有する印字物を形成できる中間転写記録媒体を提供することを目的とする。
【解決手段】 少なくとも基材2と、該基材2の一方の面に剥離可能に設けられた転写部8とからなり、該転写部8は基材2側から、少なくとも剥離層3、多孔質層4、受容層5の順に積層され、該受容層5は転写画像が形成され、該画像が形成された後の前記転写部8を被転写体に転写するために用いられる中間転写記録媒体1において、前記多孔質層4が中空粒子を含み、前記中空粒子は平均粒子径が0.1〜5μmであるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間転写記録媒体に関し、更に詳しくは、少なくとも基材と、該基材の一方の面に剥離可能に設けられた転写部とからなり、該転写部は基材側から、少なくとも剥離層、多孔質層、受容層の順に積層され、該受容層は転写画像が形成され、該画像が形成された後の前記転写部を被転写体に転写するために用いられる中間転写記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の熱転写記録方法が知られているが、それらの中でも、昇華転写用染料を記録材とし、これをポリエステルフィルム等の基材上に適当なバインダで担持させた染料層を有する熱転写シートから、昇華染料で染着可能な被転写材、例えば、紙やプラスチックフィルム等に染料受容層を形成した熱転写受像シート上に昇華染料を熱転写し、各種のフルカラー画像を形成する方法が提案されている。この場合には、加熱手段として、プリンターのサーマルヘッドによる加熱によって、3色または4色の多数の加熱量が調整された色ドットを熱転写受像シートの受容層に転移させ、該多色の色ドットにより原稿のフルカラーを再現するものである。このように形成された画像は、使用する色材が染料であることから、非常に鮮明で、かつ透明性に優れているため、得られる画像は中間色の再現性や階調性に優れ、従来のオフセット印刷やグラビア印刷による画像と同様であり、かつフルカラー写真画像に匹敵する高品質画像の形成が可能である。
【0003】
また、マルチメディアに関連した様々なハードおよびソフトの発達により、上記の熱転写方法は、コンピューターグラフィックス、衛星通信による静止画像そしてCD−ROMその他に代表されるデジタル画像及びビデオ等のアナログ画像のフルカラーハードコピーシステムとして、その市場を拡大している。
【0004】
この熱転写方法による熱転写受像シートの具体的な用途は、多岐にわたっている。例えば、印刷の校正刷り、画像の出力、CAD/CAMなどの設計およびデザインなどの出力、CTスキャンや内視鏡カメラなどの各種医療用分析機器、測定機器の出力用途そしてインスタント写真の代替として、また身分証明書やIDカード、クレジットカード、その他カード類への顔写真などの出力、さらに遊園地、ゲームセンター、博物館、水族館などのアミューズメント施設における合成写真、記念写真としての用途など多岐になってきている。
【0005】
上記のような用途の多様化に伴い、任意の対象物に熱転写画像を形成する要求が高まり、その対応の一つとして、受容層が基材上に剥離可能に設けられた中間転写記録媒体で、その受容層に染料層を有する熱転写シートを用いて、染料を転写して画像を形成し、その後に中間転写記録媒体を加熱して、受容層を被転写体上に転写する方法が、例えば特許文献1等に提案されている。
【0006】
しかしながら、上記の中間転写記録媒体を用いて形成された印画物の熱転写画像は、最表面に画像が形成された受容層が位置することから耐候性、耐摩擦性、耐薬品性等の耐久性に欠ける問題がある。そこで、近年、特許文献2に示されるように、基材上に、剥離層、保護層、受容層兼接着層が設けられた中間転写記録媒体が提案されている。この中間転写記録媒体によれば、熱転写画像の表面に保護層が形成されることから、熱転写画像に耐久性を付与することができる。
【0007】
しかし、上記のような保護層、受容層を積層させた中間転写記録媒体で、身分証明書やIDカードなどを作製する際、耐久性をより高めるために、例えば、特に保護層の耐引っ掻き性を高めるために、保護層を構成する樹脂の選定で、Tgの高い樹脂を主体とすることになり、中間転写記録媒体の受容層に熱転写画像を形成する際、その熱転写画像の濃度を高めることが難しい、すなわち熱転写の感度が十分ではない問題が生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−238791号公報
【特許文献2】特開2004−351656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、上記の問題を解決する為に、本発明は、耐引っ掻き性を代表とする耐久性に優れた印画物を容易に得ることができ、さらに熱転写画像形成の際の転写感度が高く、濃淡のある鮮明な画像を有する印字物を形成できる中間転写記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明は、請求項1として、少なくとも基材と、該基材の一方の面に剥離可能に設けられた転写部とからなり、該転写部は基材側から、少なくとも剥離層、多孔質層、受容層の順に積層され、該受容層は転写画像が形成され、該画像が形成された後の前記転写部を被転写体に転写するために用いられる中間転写記録媒体において、前記多孔質層が中空粒子を含み、前記中空粒子は平均粒子径が0.1〜5μmであることを特徴とする。この中間転写記録媒体によれば、耐引っ掻き性を代表とする耐久性に優れた印画物を容易に得ることができ、さらに熱転写画像形成の際の転写感度が高く、印画濃度の高い部分と低い部分を有した濃淡のある鮮明な画像を有する印字物を形成できる。また、この中間転写記録媒体を用いて、被転写体に転写部を転写形成した印画物は、耐引っ掻き性を代表とする耐久性に優れたものである。
【0011】
また請求項2として、請求項1に記載する中空粒子は、中空率が30%以上であることを特徴とする中間転写記録媒体である。これによれば、多孔質層に適度なクッション性と断熱性を付与させることができ、中間転写記録媒体の受容層に熱転写画像を形成する際、転写感度が高く、高濃度から低濃度までの印画部分を形成でき、より鮮明な画像を形成することができる。
【0012】
請求項3として、請求項1または2に記載する多孔質層と受容層との間に、バリア層が設けられたことを特徴とする中間転写記録媒体である。これによれば、この中間転写記録媒体により得られる印画物は、バリア層を有するので、耐久性により優れたものとなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐引っ掻き性を代表とする耐久性に優れた印画物を容易に得ることができ、さらに熱転写画像形成の際の転写感度が高く、濃淡のある鮮明な画像を有する印字物を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の中間転写記録媒体である一つの実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の中間転写記録媒体である他の実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明の中間転写記録媒体により得られる印画物の一つの実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、発明の実施の形態について、詳述する。
図1に本発明の中間転写記録媒体である一つの実施形態を示す。図示した中間転写記録媒体1は、基材2の一方の面に耐熱滑性層7を有し、基材2の他方の面に、剥離層3、多孔質層4、受容層5の順に積層した転写部8を有する構成であり、該転写部8は熱転写手段により、基材2から剥離して、被転写体へ転写できるものである。
【0016】
図2に、本発明の中間転写記録媒体である他の実施形態を示す。図示した中間転写記録媒体1は、基材2の一方の面に耐熱滑性層7を有し、基材2の他方の面に、剥離層3、多孔質層4、バリア層6、受容層5の順に積層した転写部8を有する構成であり、該転写部8は熱転写手段により、基材2から剥離して、被転写体へ転写できるものである。
【0017】
また、図3は、図2に示したような中間転写記録媒体の転写部を被転写体へ転写して得られる印画物の一つの実施形態を示す断面図である。但し、中間転写記録媒体の受容層には、サーマルヘッド加熱などによる熱転写手段により、基材上に昇華染料を含有する染料層を設けた熱転写シートにより、熱転写画像を形成済の状態で、被転写体へ転写部を転写したものである。図示した印画物10は、被転写体9の一方の面に、受容層5、バリア層6、多孔質層4、剥離層3を順に積層した構成である。また、受容層5には熱転写画像11が形成され、その熱転写画像11を覆うように、バリア層6、多孔質層4、剥離層3が積層されている。
【0018】
上記の図では示さなかったが、中間転写記録媒体の転写部を被転写体へ転写する際に、その転写性を低下させない条件で、バリア層と受容層との間に絵柄層として、地紋などを印刷して形成しておくことができる。
【0019】
以下、本発明の中間転写記録媒体を構成する各層について、詳細に説明する。
(基材)
本発明の中間転写記録媒体の基材2は、従来の中間転写記録媒体に使用されているものと同じ基材をそのまま用いることができ、特に限定するものではない。好ましい基材の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトンもしくはポリエーテルサルホン等の耐熱性の高いポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリエチレン誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリメチルペンテンまたはアイオノマー等のプラスチックの延伸または未延伸フィルムが挙げられる。また、これらの材料を2種以上積層した複合フィルムも使用することができる。基材の厚さは、その強度および耐熱性等が適切になるように材料に応じて適宜選択することができるが、通常は1〜100μm程度のものが好ましく用いられる。
【0020】
(耐熱滑性層)
耐熱滑性層7は、サーマルヘッド等の加熱デバイスと基材2との熱融着を防止し、走行を滑らかに行う目的で設けられる。この耐熱滑性層に用いる樹脂としては、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酢酪酸セルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリルアミド、アクリロニトリルースチレン共重合体等のアクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルトルエン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン変性又はフッ素変性ウレタン等の天然又は合成樹脂の単体又は混合物が用いられる。耐熱滑性層の耐熱性をより高めるために上記の樹脂のうち、水酸基系の反応性基を有している樹脂を使用し、架橋剤としてポリイソシアネート等を併用して、架橋樹脂層とすることが好ましい。
【0021】
さらに、サーマルヘッドとの摺動性を付与するために、耐熱滑性層に固形あるいは液状の離型剤又は滑剤を加えて耐熱滑性をもたせてもよい。離型剤又は滑剤としては、例えば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等の各種ワックス類、高級脂肪族アルコール、オルガノポリシロキサン、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、有機カルボン酸およびその誘導体、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、タルク、シリカ等の無機化合物の微粒子等を用いることができる。耐熱滑性層に含有される離型剤や滑剤の量は5〜50質量%、好ましくは10〜30質量%程度である。このような耐熱滑性層の厚みは、従来公知の手段で、塗工、乾燥させて、乾燥時で0.1〜10g/m2程度、好ましくは0.5〜5g/m2程度とすることができる。
【0022】
(剥離層)
本発明の中間転写記録媒体の基材上に設ける剥離層3は、中間転写記録媒体の受容層等を被転写体へ転写する時に、基材から受容層等の転写部を剥離しやすくし、さらに被転写体に転写された転写部の最表面層として保護層の機能をもつものである。剥離層は一般的には、エチルセルロース、ニトロセルロース、酢酸セルロースなどのセルロース誘導体、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラールなどのビニル重合体の熱可塑性樹脂や、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、アミノアルキッド樹脂などの熱硬化型の樹脂を用いて形成することができる。
【0023】
剥離層に紫外線吸収剤を含有させることによって、被転写体に転写された後に保護層により覆われる被転写体の画像等の耐光性、耐候性を向上させることができる。使用する紫外線吸収剤としては、従来公知の有機系紫外線吸収剤であるサリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、ニッケルキレート系、ヒンダートアミン系等を挙げることができる。また、これらの紫外線吸収剤に、例えば、ビニル基やアクリロイル基、メタクリロイル基等の付加重合性二重結合、あるいはアルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基等を導入した紫外線吸収性樹脂の形態で含有させてもよい。剥離層の形成はグラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート等の公知の手段により行うことができ、剥離層の塗工量は乾燥状態で0.5〜5.0g/m2程度が好ましい。
【0024】
(多孔質層)
本発明で適用する多孔質層4は、少なくとも中空粒子とバインダを含有した構成であり、クッション性と断熱性を有する層構造をもつものである。上記の中空粒子は、熱可塑性樹脂等からなる外殻の内部に中空部を形成してなる中空な粒子である。中空粒子は、多孔質層が乾燥状態である場合には、中空部に、空気その他の気体を含有する。
【0025】
中空粒子を構成する材料は、有機系樹脂材料であってもよいし、また無機材料でもよい。但し、バインダとの親和性の点からは、中空粒子は、有機系樹脂材料であることが好ましい。有機系樹脂材料としては、架橋スチレン−アクリル樹脂等のスチレン系樹脂、アクリロニトリル−アクリル樹脂等の(メタ)アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂等を挙げることができる。また中空粒子は、発泡粒子、非発泡粒子のいずれでもよく、例えば、架橋スチレン−アクリル樹脂等の発泡体でなる有機系発泡粒子、無機中空ガラス体等が中空粒子として使用できる。中空粒子成分として発泡粒子が使用される場合には、発泡状態が独立発泡又は連続発泡のいずれの状態にあるものでもよい。
【0026】
中空粒子の大きさは、平均粒径が、通常0.1〜10μm、好ましくは0.1〜5μmである。0.1μm未満であると、多孔質層のクッション性及び断熱性の機能が十分に発揮できなくなる。また一方で、その粒子の粒径が10μmを越えると、受容層の熱転写画像に、粒子由来のヌケが生じる場合がある。上記「平均粒径」は次のように求められる。中空粒子成分を水中に分散させてなる水分散体を調整し、この中空粒子の水分散体のものを乾燥させて乾燥体となし、その後に透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製)にて乾燥体における中空粒子(100個)を観察して、個々の粒子についてその外面側の直径(外径)を計測し、それらの値を平均して平均粒径とした。
【0027】
また、上記の中空粒子の中空度合いとして、平均中空率が30%から80%の範囲であることが好ましく、より好ましくは、50%から80%である。平均中空率が低すぎると、多孔質層における空隙が十分に確保できす、十分な断熱性およびクッション性が得られない虞があり、平均中空率が高すぎると、外殻の厚みが薄くなり、塗工時もしくは印画時につぶれてしまう虞がある。上記「平均中空率」は次のように求められる。中空粒子成分を水中に分散させてなる水分散体を調整し、この中空粒子の水分散体のものを乾燥させて乾燥体となし、その後に透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製)にて乾燥体中における中空粒子成分をなす粒子(100個)を観察して、個々の粒子についてその内面側の直径(内径)を計測し、それらの値を平均して平均粒子内径とした。そして、平均粒子内径から中空部の体積を定めるとともに、その値を上記平均粒径(粒子外径)から粒子の見掛けの体積で除して100を乗じることで平均中空率を算出した。
【0028】
多孔質層4の多数の中空粒子を分散させ、保持するためのバインダとしては、通常、水系樹脂が用いられる。具体的に、この水系樹脂としては、例えば、アクリル系ウレタン樹脂等のポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオイキサイド、ポリビニルピロリドン、プルラン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、ポリアクリル酸及びその塩、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、カゼイン、キサンテンガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、アラビアゴム、特開平7−195826号公報及び同7−9757号公報に記載のポリアルキレノキサイド系共重合ポリマー、水溶性ポリビニルブチラール、あるいは、特開昭62−245260号公報に記載のカルボキシル基やスルホン酸基を有するビニルモノマーの単独重合体や共重合体等の樹脂を挙げることができる。また、ここに挙げたような樹脂の2種類以上が組み合わされてバインダとして用いられても良い。そして、このような樹脂から、剥離層、受容層など隣接した層に対して接着性を有する樹脂が適宜選択され、バインダとして用いられることが好ましい。
【0029】
多孔質層4においては、バインダと中空粒子の配合比率は、断熱性およびクッション性を有する層構造を得ることができるような比率であれば特に限定されるものではないが、多孔質層4には、バインダと中空粒子の合計を100質量部とする場合に、バインダの配合量:中空粒子の配合量=70〜10重量部:30〜90重量部の配合比率にて、バインダと中空粒子が含まれることが好ましく、バインダの配合量:中空粒子の配合量=40〜10重量部:60〜90重量部の範囲内であることがより好ましい。多孔質層4において、バインダの含有量に対する中空粒子の含有量が少なくなりすぎると、多孔質層4における空隙が少なくなり、多孔質層4に断熱性およびクッション性の機能を充分に発揮させることができない場合があり、またバインダの含有量に対する中空粒子の含有量が多くなりすぎると、多孔質層4における中空粒子の接着性が低下し、多孔質層の凝集破壊が過剰に生じやすい。
【0030】
多孔質層は、上記の中空粒子とバインダと、必要に応じて断熱性、クッション性等の特性を損なわない範囲で、公知の安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、加工助剤、可塑剤等の添加剤を適宜配合し、溶媒と混合した塗工液を調整し、例えばグラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の形成手段により塗布及び乾燥して、形成することができる。多孔質層4の厚みは、断熱性とクッション性を確保するなどの点から、10μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、10μm〜50μmの範囲内であることがより好ましい。
【0031】
(受容層)
本発明における中間転写記録媒体の受容層5は、熱転写シートから移行してくる昇華染料を受容し、形成された画像を維持する為のものである。受容層を形成する為の樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスルフォン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0032】
また、熱転写シートとの離型性を向上させるために、受容層中に離型剤を含有することができる。離型剤としてはポリエチレンワックス、アミドワックス、テフロン(登録商標)パウダー等の固形ワックス類、フッ素系またはリン酸エステル系界面活性剤、シリコーンオイル、反応性シリコーンオイル、硬化型シリコーンオイル等の各種変性シリコーンオイル、各種シリコーン樹脂などが挙げられるが、シリコーンオイルが好ましい。上記シリコーンオイルとしては油状のものも用いることができるが、硬化型のものを用いても良い。硬化型シリコーンオイルとしては反応硬化型、光硬化型、触媒硬化型等が挙げられるが、反応硬化型、触媒硬化型のシリコーンオイルが特に好ましい。
【0033】
これらシリコーンオイルの添加量は受容層を構成する樹脂の0.5〜30質量%が好ましい。また、受容層の表面の一部に上記離型剤を適当な溶媒に溶解あるいは分散させて塗布した後、乾燥させることにより離型剤層を設けることもできる。離型剤層の厚さは、0.01〜5.0μm、特に0.05〜2.0μmが好ましい。なお、受容層を形成する際にシリコーンオイルを添加して形成すると、塗布後に表面にシリコーンオイルがブリードアウトするが、これを硬化させても離型剤層を形成することができる。なお、上記受容層の形成に際しては、受容層の白色度を向上させて転写画像の鮮明度を更に高める目的で、酸化チタン、酸化亜鉛、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、微粉末シリカ等の顔料や充填剤を添加することができる。また、フタル酸エステル化合物、セバシン酸エステル化合物、リン酸エステル化合物等の可塑剤を添加してもよい。
【0034】
上記の如き熱可塑性樹脂及び他の必要な添加剤、例えば、離型剤、可塑剤、充填剤、架橋剤、硬化剤、触媒、熱離型剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等を加えたものを、適当な有機溶剤に溶解し、あるいは有機溶剤や水に分散した分散体を、例えばグラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の形成手段により塗布及び乾燥して、受容層を形成することができる。このように形成される受容層の塗布量は、通常、乾燥状態で0.5〜50g/m2程度、好ましくは2〜10g/m2である。また、このような染料受容層は連続被覆であることが好ましいが、不連続の被覆として形成してもよい。
【0035】
(バリア層)
本発明の中間転写記録媒体では、基材上に設ける多孔質層と受容層との間にバリア層6を設けることができる。このバリア保護層は、中間転写記録媒体の受容層等の転写部が被転写体へ転写された後に、その転写部の最表面の剥離層だけでは保護層の機能が不十分な場合に設けられる。保護層は少なくともバインダ樹脂から構成され、受容層とともに被転写体に転写された後は受容層の表面保護層として所望の物性をもつ樹脂組成を選定する。
【0036】
一般的には、エチルセルロース、ニトロセルロース、酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール等のビニル重合体の熱可塑性樹脂や、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノアルキッド樹脂等の熱硬化型樹脂を保護層樹脂として用いることができる。受容層が転写された印画物に対して、耐摩擦性、耐薬品性、耐汚染性が特に要求される場合は、保護層樹脂として電離放射線硬化型樹脂を用いることもできる。
【0037】
また、保護層は、水溶性樹脂のポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリルエマルジョン、ウレタンエマルジョン等のエマルジョンを用い、さらに架橋アクリル微粒子、架橋ポリスチレン微粒子、架橋ポリスチレンアクリル微粒子、および、これら微粒子表面への官能基誘導体等の実質的に透明な微粒子を加えて、耐溶剤性や耐可塑剤性を向上させることができる。また、保護層に、耐候性能を向上させる為の紫外線吸収剤、酸化防止剤等を加えることができる。保護層は上記の受容層と同様の方法で形成することができ、塗工量は乾燥状態で0.1〜10g/m2が好ましい。
【0038】
本発明の中間転写記録媒体の受容層に形成した画像を被転写体に転写するには、この分野で公知の転写方法を広く採用することができる。例えば、中間転写記録媒体の受容層上に熱転写画像を形成し、次いで形成された熱転写画像が被転写体に接するように、中間転写記録媒体と被転写体とを圧接して、サーマルヘッド、ホットスタンプ、熱ロール等の加熱手段により、画像を含む転写部を被転写体に転写して、印画物を形成する。
【0039】
次に、被転写体9について説明する。被転写体上には、上述した中間転写記録媒体の転写部8が転写され、その結果、印画物10が得られる。本発明の中間転写記録媒体1が適用される被転写体9は特に限定されず、例えば天燃繊維紙、コート紙、トレーシングペーパー、転写時の熱で変形しないプラスチックフイルム、ガラス、金属、セラミックス、木材、布等いずれのものでもよい。
【0040】
被転写体9の形状・用途についても、株券、証券、証書、通帳類、乗車券、車馬券、印紙、切手、鑑賞券、入場券、チケット等の金券類、キャッシュカード、クレジットカード、プリペイドカード、メンバーズカード、グリーティングカード、ハガキ、名刺、運転免許証、ICカード、光カードなどのカード類、カートン、容器等のケース類、バッグ類、帳票類、封筒、タグ、OHPシート、スライドフィルム、しおり、カレンダー、ポスター、パンフレット、メニュー、パスポート、POP用品、コースター、ディスプレイ、ネームプレート、キーボード、化粧品、腕時計、ライター等の装身具、文房具、レポート用紙など文具類、建材、パネル、エンブレム、キー、布、衣類、履物、ラジオ、テレビ、電卓、OA機器等の装置類、各種見本帳、アルバム、また、コンピュータグラフィックスの出力、医療画像出力等、種類を問うものではない。
【0041】
特に、高解像度で高品質な画像を要求され、かつ耐引っ掻き性等の耐久性の高いことが要求されるクレジットカード、ICカード等のカード類を、被転写体として使用し、本発明の中間転写記録媒体と組み合わせて、印画物を形成することが好ましい。それは、本発明の中間転写記録媒体の特有な効果である、耐引っ掻き性を代表とする耐久性に優れ、さらに濃淡のある鮮明な画像を形成できるからである。
【実施例】
【0042】
次に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。以下、特に断りのない限り、部又は%は質量基準である。
(実施例1)
基材2として、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、該基材の一方の面に、下記組成の耐熱滑性層形成用塗工液を使用し、グラビアコート法で、乾燥時で1g/m2の塗工量で、耐熱滑性層7を形成した。
(耐熱滑性層形成用塗工液)
・ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業(株)製、エスレックBX−1) 8部
・ポリイソシアネート硬化剤(DIC(株)製、バーノックD750) 18部
・滑剤 5部
【0043】
上記の基材の他方の面に、グラビアコート法で、下記組成の剥離層形成用塗工液を、乾燥後1.0g/m2になるように塗布し、乾燥して剥離層3を形成した。次いで、この剥離層の上に、グラビアコート法で、下記組成の多孔質層形成用塗工液1を、乾燥後30.0g/m2になるように塗布し、乾燥して多孔質層4を形成した。
【0044】
(剥離層形成用塗工液)
・アクリル樹脂 95部
(BR−87、三菱レイヨン(株)製)
・ポリエステル樹脂 5部
(バイロン200、東洋紡績(株)製)
・トルエン 200部
・メチルエチルケトン 200部
【0045】
(多孔質層形成用塗工液1)
・アクリル樹脂系中空粒子(製品名:ローペイクHP−1055、固形分26.50%、中空率55%、中空粒子の平均粒径1.0μm、ロームアンドハース社製) 100部
・水性ポリウレタン樹脂(製品名;ネオステッカー400、固形分37%、日華化学社製) 30部
・水 5部
・イソプロピルアルコール 10部
【0046】
上記の多孔質層の上に、グラビアコート法で、下記組成の受容層形成用塗工液を、乾燥後2.5g/m2になるように塗布し、乾燥して受容層5を形成して、実施例1の中間転写記録媒体を作製した。
(受容層塗工液)
・塩酢ビ系樹脂 100部
(VB603 日信化学工業(株)製)
・ポリエーテル変性シリコーン 10.5部
(KF615A 信越化学工業(株)製)
・エポキシ架橋剤 5部
(KX512 ナガセケムテックス(株)製)
・水 400部
【0047】
(実施例2)
上記の実施例1の中間転写記録媒体の多孔質層と受容層との間に、グラビアコート法で、下記組成のバリア層形成用塗工液を、乾燥後2.0g/m2になるように塗布し、乾燥してバリア層6を形成し、その他は実施例1と同様にして、実施例2の中間転写記録媒体を作製した。
(バリア層形成用塗工液)
・スチレン−アクリル系樹脂(製品名:ミューティクルPP320P、三井化学(株)製) 150部
・ポリビニルアルコール(商品名:C−318、(株)DNPファインケミカル製)
100部
・水/エタノール(質量比1/2) 70部
【0048】
(実施例3)
上記の実施例2の中間転写記録媒体における多孔質層を、下記組成の多孔質層形成用塗工液2を、乾燥後30.0g/m2になるように塗布し、乾燥して多孔質層4を形成した以外は、実施例2と同様にして実施例3の中間転写記録媒体を作製した。
(多孔質層形成用塗工液2)
・高架橋スチレン−アクリル共重合体系中空粒子(製品名:AE−866、高架橋タイプ、固形分20%、中空率30%、中空粒子の平均粒径0.3μm、JSR社製)
100部
・水性ポリウレタン樹脂(製品名;AP−40、固形分20%、DIC社製) 11部
・水 5部
・イソプロピルアルコール 10部
【0049】
(実施例4)
上記の実施例2の中間転写記録媒体における多孔質層を、下記組成の多孔質層形成用塗工液3を、乾燥後30.0g/m2になるように塗布し、乾燥して多孔質層4を形成した以外は、実施例2と同様にして実施例4の中間転写記録媒体を作製した。
(多孔質層形成用塗工液3)
・アクリル樹脂系中空粒子(既発泡粒子、松本油脂(株)製、中空率80%、平均粒径3.2μm)
・ポリビニルアルコール(製品名:PVA220、クラレ(株)製) 25部
・水 900部
【0050】
(比較例1)
上記の実施例1の中間転写記録媒体における多孔質層を設けない以外は、実施例1と同様にして、比較例1の中間転写記録媒体を作製した。
【0051】
(比較例2)
上記の実施例2の中間転写記録媒体における多孔質層を設けない以外は、実施例2と同様にして、比較例2の中間転写記録媒体を作製した。
【0052】
上記の実施例及び比較例で得られた中間転写記録媒体と、HID製プリンターHDP−5000用熱転写シートを用い、HID製HDP−5000プリンターにより、顔写真を色分解して得たイエロー、マゼンタ及びシアンの各画像情報に従って、イエロー、マゼンタ及びシアンの各染料を中間転写記録媒体の受容層に転写することにより、中間転写記録媒体の受容層にフルカラーの顔写真画像と、さらにイエロー、マゼンタ及びシアンの3色重ねのグレースケールの画像を形成した。
【0053】
次に、下記の条件による白色塩化ビニル樹脂からなるカード基材と、上記の熱転写画像が形成された中間転写記録媒体の受容層が接するように、重ね合わせて、ヒートロール(ロール表面温度155℃)にて、加熱及び加圧し、カード基材上に、熱転写画像が形成された受容層を含む転写部を転写して、印画物を作製した。
(カード基材の材料組成)
・ポリ塩化ビニルコンパウンド(重合度800) 100部
(安定化剤等の添加剤を約10%含有)
・白色顔料(酸化チタン) 10部
・可塑剤(DOP) 0.5部
【0054】
得られた実施例及び比較例からなる印画物で、以下の条件で、印画品質の評価及び耐擦過性の評価を行なった。
(印画品質)
得られた印画物であるカード上の熱転写画像の再現性を目視で調べ、またグレースケールの最高濃度を調べた。なお、その画像の印画濃度は、光学濃度計(グレタグマクベス社製;spectrolino)により、測定した。以下の判断基準で評価した。
○;最高濃度は1.8以上であり、転写感度が高く、さらに熱転写画像の濃淡の再現性を有するものである。
×;最高濃度は1.8未満であり、転写感度が低く、熱転写画像の濃淡の再現性は、劣るものである。
【0055】
(耐擦過性1)
得られた熱転写画像を有するカードの熱転写画像面に、テーバー試験機の磨耗輪CS−10Fを用いて、荷重500gfで250回毎に磨耗輪による研磨して、合計1500回研磨した。研磨後に、カード表面の状態を目視にて観察し、以下の判断基準で評価した。
◎;印画物表面が全く削られていない。
○;印画物表面がほとんど削られていない。
×;印画物表面がかなり削られている。
【0056】
(耐擦過性2;耐引っ掻き性)
熱転写画像を有するカードを可動式ステージに載置し、熱転写画像面に先端径が0.1mmの針を押し付けて引っ掻き試験を行ない、以下の基準で評価した。ステージの可動速度は100mm/分、針への荷重は100gであった。
(評価基準)
○:画像の損傷がほとんど見られない。
×:画像の損傷が見られる。
【0057】
(評価結果)
上記の印画品質及び耐擦過性の評価結果を以下に示す。
【表1】

【符号の説明】
【0058】
1 中間転写記録媒体
2 基材
3 剥離層
4 多孔質層
5 受容層
6 バリア層
7 耐熱滑性層
8 転写部
9 被転写体
10 印画物
11 熱転写画像


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材と、該基材の一方の面に剥離可能に設けられた転写部とからなり、該転写部は基材側から、少なくとも剥離層、多孔質層、受容層の順に積層され、該受容層は転写画像が形成され、該画像が形成された後の前記転写部を被転写体に転写するために用いられる中間転写記録媒体において、前記多孔質層が中空粒子を含み、前記中空粒子は平均粒子径が0.1〜5μmであることを特徴とする中間転写記録媒体。
【請求項2】
前記の中空粒子は、中空率が30%以上であることを特徴とする請求項1に記載する中間転写記録媒体。
【請求項3】
前記の多孔質層と受容層との間に、バリア層が設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載する中間転写記録媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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