説明

中間電気コネクタ

【課題】端子配列板に端子が取り付けられて成る中間部材が簡単な方法で得られる該中間部材を有する中間電気コネクタを提供することを課題とする。
【解決手段】端子配列板22は端子の長手方向での複数位置で端子を保持する保持溝28,29,30を有し、該保持溝は、上記端子が端子配列板の面に沿って上記一方の縁部の側から他方の縁部の側へ向け端子の前部から順次挿入されて他方の縁部の側で端子の前部側の被保持部を保持する前方保持溝28から上記一方の縁部の側で端子の後部側の被保持部を保持する後方保持溝30まで、それぞれ形状と大きさの少なくとも一方が異なる複数種の保持溝として形成され、各保持溝は端子挿入完了時に対応して位置する端子の被保持部41,42,43のみが圧入され、かつ、端子挿入途中では、端子挿入完了時に各保持溝に対応する被保持部よりも前方の被保持部の通過を許容している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つのコネクタの間に介在して両コネクタを接続するための中間電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
中間電気コネクタは中間部材を有し、該中間部材に二つの相手コネクタが嵌着されて該中間部材を介して互いに電気的に接続される。中間部材は絶縁材から作られた配列板の面に端子を保持して形成されており、端子は該配列板の互いに反対側に位置する二つの縁部の間で延びていて、この縁部で上記二つの相手コネクタが嵌着される。配列板での端子の保持の方法として、両者を一体モールド形成することがあるが、この方法は一般的にコスト高である。
【0003】
一体モールド形成に代えて、特許文献1のように、配列板が機械的に端子を保持する構造とすることが可能である。特許文献1では、配列板の面に端子を収める溝状の凹部が形成され、帯状の端子が配列板の面に直角な方向から上記凹部へ圧入されることにより保持され、しかる後に凹部の開口縁部を圧潰して上記端子の保持をさらに確実なものとしている。
【特許文献1】特開2004−111140
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の方法によると、配列板への端子の取付け方に関する機械的な点、取り付けられた端子と配列板に関する電気的な点において、改善が求められる。
【0005】
先ず、機械的な点としては、端子は帯状に長く形成されており、その全長にわたりしかも均一に配列板の溝状の凹部へ圧入しなければならないことに加え、保持を確実なものとするために、さらに凹部の開口縁部を圧潰せねばならないので、その取付工程が複雑となる。また圧潰力が適切でなく強すぎると、端子や配列板を傷めたり、その損傷により保持力を確保できないという事態にもなりかねない。また、圧潰力が小さすぎても保持力を十分に確保できない。
【0006】
次に、電気的な点としては、端子の凹部への圧入力の程度によっては、端子が配列板の面と密着せずに微小な隙間を形成することがある。又、端子と配列板の少なくとも一方に、歪んでいて完全な平坦面でない部分があると、他部で密着していても、この平坦でない部分で隙間が生じてしまうことがある。端子はその幅そして厚みに比しその長さはきわめて大きいので、全長にわたり均一に密着することは難しい。このような隙間が生ずると、この隙間における空気層の存在により、高速伝送時の伝送特性の低下をもたらす。
【0007】
本発明は、このような事態に鑑み、端子の長さに係らず、簡単な方法で端子を配列板に取り付けることができ、又、全長にわたり、配列に対しての密着を可能として伝送特性が保証される中間部材を有する中間電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る中間電気コネクタは、電気絶縁材で作られた端子配列板の面で、該端子配列板の一方の縁部から他方の縁部へ直状に延びる端子が複数設けられることにより形成される中間部材が電気絶縁材のハウジングにより保持され、上記一方及び他方の縁部へ、対応せる相手コネクタが接続可能となっている。
【0009】
中間電気コネクタにおいて、本発明では、端子配列板は端子の長手方向での複数位置で該端子を保持する保持溝を有し、該保持溝は、上記端子が端子配列板の面に沿って上記一方の縁部の側から他方の縁部の側へ向け端子の前部から順次挿入されて他方の縁部の側で端子の前部側の被保持部を保持する前方保持溝から上記一方の縁部の側で端子の後部側の被保持部を保持する後方保持溝まで、それぞれ形状と大きさの少なくとも一方が異なる複数種の保持溝として形成され、各保持溝は端子挿入完了時に対応して位置する端子の被保持部のみが圧入され、かつ、端子挿入途中では、端子挿入完了時に各保持溝に対応する被保持部よりも前方の被保持部の通過を許容していることを特徴としている。
【0010】
このような構成の本発明にあっては、端子を配列板の保持溝へ挿入するだけで中間部材を得られる。端子はその前部から、端子配列板に対して、一方の縁部側に位置する後方保持溝を通過して前進し、前方保持溝へと挿入される。端子が所定の前進位置まで到達すると、端子の前部に形成された被保持部は前方保持溝へ、端子の後部に形成された被保持部は後方保持溝へ、そして中間部に形成された各被保持部は対応する各保持溝へ、それぞれ圧入されて端子の全長にわたり配列面に接面した状態で保持される。複数の端子は、その後端側でキャリアにより連結されている場合、キャリアをもつことにより、一括して保持溝へ挿入されることができる。端子が配列板により保持された後に、キャリアは端子の後端から切り離される。上記保持溝は端子の挿入方向に貫通する孔として形成することも、又、一部が上方(配列面から離れる方向)にも開放されていることとしてもよい。
【0011】
本発明において、前方保持溝から後方保持溝までの複数種の保持溝のうち少なくとも一つの保持溝は、対応せる端子の被保持部の圧入時に、該被保持部を配列板の面に対して押圧する形状となっていることが好ましい。端子は複数の被保持部が対応する保持溝へ圧入されることによって、該端子の全長にわたり配列面に対して概ね接面しているが、保持溝と被保持部の断面形状を圧入時に上方側で干渉するように形成することにより、被保持部は下方へ、すなわち配列面に押圧され、端子は配列面との密着度をさらに高めた状態で保持されることとなる。
【0012】
本発明において、前方保持溝から後方保持溝までの各保持溝は、対応せる各被保持部が同時に圧入されるような被保持部との位置関係を有していることとが好ましい。各被保持部によって圧入時がずれて、圧入が不揃いになるということがない。
【0013】
本発明において、端子配列板は、端子の挿入時の案内をする案内溝が配列面に形成され、該案内溝は前方保持溝から後方保持溝までのすべての保持溝に連通していることが好ましい。端子挿入時に、端子はこの案内溝により幅方向の位置が定められつつ案内されて、一つの保持溝から次の保持溝へ円滑に誘導される。
【0014】
本発明において、保持溝は、前後方向ですべての端子の同じ位置の被保持部に対応する保持溝を通るように配列面に設けられた凸条部に形成されているようにすることができる。
【0015】
本発明において、端子配列板は、前方保持溝よりも前方位置に、端子の前端に当接して端子の挿入完了位置を規定する規定部が設けられていることが好ましい。この規定部が設けられることにより、端子の挿入を自動化して行なうことができ、挿入工程が簡単化されると共に、挿入位置そして圧入による保持が、複数の中間部材の間でバラツキを生ずることがなくなる。
【0016】
本発明において、保持溝が上記凸条部に設けられているとき、該保持溝は、該保持溝の位置にて端子配列板の端子配列面から反対側の面へ貫通する窓部と連通していることが好ましい。こうすることにより、端子の全長にわたり配列板の厚み方向寸法がほぼ一様化し、保持溝における伝送特性の局部的な悪化が防止される。
【0017】
本発明において、端子の被保持部は、端子の長手方向に対して直角な断面にて、高さそして幅の少なくとも一方が、被保持部同士を連結している他部よりも大きいようにすることが好ましい。こうすれば、端子の被保持部同士間の長い部位が保持溝との間に比較的大きな隙間を形成するので、この部位の保持溝での通過が楽に行なえる。
【0018】
本発明において、中間部材は、端子配列板の一方の面に保持溝が形成されて該保持溝で端子が保持され、他方の面にシールド板が取り付けられているようにすることもできる。シールド特性が向上される。
【0019】
端子配列板にシールド板を取り付ける場合、端子配列板は、他方の面に突起が設けられ、シールド板には該突起が貫通する係止孔が形成されていて、上記突起の側面には、シールド板の上記他方の面に沿ったスライド移動により、係止孔の内縁が圧入される圧入溝が形成されているようにすることができる。シールド板は単にスライド移動するだけで端子配列板により保持される。
【0020】
上記圧入溝は、シールド板のスライド移動方向に狭くなっていて、シールド板はそのスライド移動によって端子配列板の他方の面に圧せられるようになっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、以上説明したように、端子配列板に設けられた複数の保持溝に対し、該配列板の面沿って順次挿入することにより、所定位置まで端子挿入完了時に、端子がすべての保持溝に圧入されて保持されることとしたので、端子は保持溝への挿入という工程だけで簡単かつ確実に保持される。また、圧入時に、端子は保持溝で配列板の面へ押圧されるようにすることもできるので、端子は全長にわたり配列板の面に密着するようになり、伝送特性が改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施の形態について説明する。
【0023】
図1は、本実施形態の中間電気コネクタM(以下、「中間コネクタM」という)とこれに接続される基板用電気コネクタN(以下、「基板用コネクタN」という)とを嵌合前の状態で示す斜視図である。図1の形態では、中間コネクタMの上方そして下方に同一構成の基板用コネクタNが上下対称な位置関係で配置されている。上方の基板用コネクタNの上面そして下方の基板用コネクタNの下面には、端子の接続部に半田ボールN−1が設けられており、この半田ボールN−1によって図示せぬ回路基板と接続されるようになっている。この基板用コネクタNは半田ボールN−1が設けられている側とは反対側に、後述の中間コネクタMの板状の中間部材20が挿入される受入溝N−2(下方の基板用コネクタを参照)が複数形成されている。
【0024】
本実施形態の中間コネクタMは、略直方形の外形を有し、図1における中間部材20の板面に平行な面での断面である図2に見られるごとく、上記中間部材20を収容するために、上下方向に貫通するスリット状の収容溝12が形成されたハウジング11と、該収容溝12に収容され保持されている中間部材20とを有している。該中間部材20は、後述するような、絶縁材料で作られた端子配列板の一方の面に帯状の端子が複数平行に取り付けられ、他方の面にシールド板が取り付けられており、全体として板状をなしている(図2では、シールド板の面があらわれている)。図2において、この中間部材20は紙面に平行な面を板面となすようにして、紙面に直角方向に定間隔で、複数枚設けられている。各中間部材20は、ハウジング11に形成された上下に貫通する上記収容溝12に収められている。
【0025】
ハウジング11は、上下位置で、上部材11Aと下部材11Bとに分割されていて、両者は図示しない係止部で互いに合体されている。上部材11Aと下部材11Bは、その接合部の内壁面に切欠きを有し、両者が合体したときに両者の切欠きにより保持溝13を形成する。この保持溝13は、中間部材20の突起21を上下から挟持し、該中間部材20の上下方向での抜けを防止している。中間部材20はその上下両端縁がハウジング11の収容溝12の上下開口部にそれぞれ位置していて、図示せぬ二つの相手コネクタが上下から矢印A,Bのごとくそれぞれ嵌着される。
【0026】
上記中間部材20は、既述のごとく、ハウジング11によって、複数枚が平行に保持されている(図3参照、ただし、図ではハウジング11は省略)。この中間部材20は、図3にあらわれている、電気絶縁材で作られた端子配列板22の一方の面に端子40を保持し、他方の面には、図2で示された薄い金属板で作られたシールド板50を保持している。図3においては、端子配列板22の一方の面に平行に形成された複数の案内溝23の一つに端子40が配されている様子が示されており、他の案内溝23での端子は図示が省略されている。該案内溝23は端子配列板22の後部(左部)から前部に向け延びており、上記端子40はその前部(図3では右部)が上記案内溝23の後部から前部へ向うように案内される。又、端子配列板22は、上記案内溝23に平行な両方の側縁24に、既述の突起21が設けられている。
【0027】
上記端子配列板22は、案内溝23が延びる方向で、三つの位置のそれぞれに、両側縁24同士を結ぶ三つの凸条部25,26,27が設けられており、上記各案内溝23がこれらの凸条部25,26,27を貫通し、そこには、端子40を保持する保持溝28,29,30が形成されている。又、上記端子配列板22の前端には、上記凸条部25,26,27に平行な段状の規定部31が設けられている。上記保持溝28,29,30、規定部31について、図3におけるIV−IV断面図である図4にもとづいて、上記保持溝28,29,30により保持される端子40と共に、以下に説明する。
【0028】
図3におけるIV−IV断面図である図4に見られるように、上記端子配列板22の後部から前部に向けて延びる案内溝23とこれに直交する方向に延びる凸条部25,26,27とが交差する部分では、上記案内溝23が前後に上記凸条部25,26,27を貫通し、各部にて保持溝28,29,30が形成されている。前部に位置する保持溝を前方保持溝28、後部に位置する保持溝を後方保持溝30、そして中間に位置する保持溝を中間保持溝29と称することとする。案内溝23が延びる前後方向から見たとき、前方保持溝28は横長な長方形の孔を形成し、中間保持溝29は横長な長方形で上壁の中央部が下方に突出した形状の孔を形成し、後方保持溝30は上壁が中央部で没しその両側に斜部を有する形状の孔を形成している。一方、端子40は断面が横長な長方形をした略帯状をなし、各保持部28,29,30に対応する部分が幅そして高さの少なくとも一方が大きくなっており、上記保持部28,29,30へそれぞれ圧入されて保持される被保持部41,42,43を形成している。前部における前方被保持部41は長方形の上部両側を斜面とした形状をなし、中間被保持部42は前方被保持部41に比し上部中央部が高くなっている形状をなし、後方被保持部43は横長な長方形をなしている。これらの被保持部41,42,43と上記保持溝28,29,30との形状そして寸法の関係は、再度後述する。
【0029】
上記端子40は、その前端が上面にテーパ部40Aを有しており、複数の端子40は端子配列板22へ取り付けられる前に、互いにキャリアCにより連結されており、取付後に後端をなす位置Aにて該キャリアCから切り離される。このような端子40に対し、案内溝23への導入を容易とするように、上記案内溝23の後端にはテーパ部23Aが形成されており、前端には規定部31が位置している。この規定部31の高さは、端子40が取り付けられたとき、端子の前端を受け入れ可能な凹部を有するか、もしくは該端子40の前部と同じかあるいは若干低くなるように設定されている。
【0030】
次に、図5にもとづき、端子の被保持部41,42,43と端子配列板22の保持溝28,29,30との関係を説明する。図5は、端子40の前方被保持部41が後方保持溝30を通過する時点である挿入始時I、前方被保持部41が中間保持溝29をそして中間被保持部42が後方保持溝30を通過する時点である挿入途中時II、前方被保持部41が前方保持溝28へ、中間被保持部42が中間保持溝29へ、そして後方被保持部43が後方保持溝30へそれぞれ圧入される挿入完了時IIIでの関係を示している。図5において、実線は保持溝、一点鎖線は被保持部の輪郭を示している。
【0031】
先ず、図5にて、挿入完了時III(図5の下段)に示されるように、端子40の各被保持部41,42,43がこれらに対応して位置する保持溝28,29,30にそれぞれ圧入されるときの互いの形状の寸法について説明する。
【0032】
挿入完了時IIIにおいて、前方被保持部41は上下方向では前方保持溝28とほぼ同じ寸法であるが、幅方向(横方向)で前方保持溝28よりも大きく、幅方向両側で干渉幅δを有している。この干渉幅δが圧入量となる。又、中間被保持部42は中間保持溝29の上壁中央部での突部29Aと高さ方向で干渉高さδを有し、この干渉高さδが圧入量となり、圧入時にここで下方への押圧力を受ける。さらに、後方被保持部43はその上方隅部が後方保持溝30の上方側部に形成された斜部30Aと斜め方向で干渉量δを有し、この干渉量δが圧入量となり、圧入時には中央に向け斜め下方に押圧力を受ける。このように、端子40は、挿入完了時には、被保持部41,42,43が対応保持溝28,29,30に圧入されて保持されると共に、それらの干渉量δ,δ,δにより幅方向中央に向け、そして下方に向け(すなわち端子配列板22の面に向け)押圧力を受け該端子配列板22の面との密着性を高める。
【0033】
端子40の挿入開始時Iにおいては、端子40の前方被保持部41は、その時点で対応して位置している後方保持溝30との間で干渉しておらず、隙間を形成していて、ここでの通過が許容されて、前方への移動を可能とされている。
【0034】
次に、端子40の挿入途中時IIにおいては、上記前方被保持部41は中間保持溝29の位置まで進んでおり、そのとき、中間被保持部42が後方保持溝30に進入している。上記前方被保持部41そして中間被保持部42は、中間保持溝29そして後方保持溝30に対して、それぞれ干渉しておらず、隙間を形成している。したがって、端子はここでの通過が許容されて、さらに前方への移動が可能であり、上記挿入完了時IIIの位置へ至る。
【0035】
本実施形態において、端子40は被保持部41,42,43が、挿入完了時に対応して位置する保持溝28,29,30に対して干渉量を有し、挿入開始時そして挿入途中時ではそのときに対応して位置する保持溝との間で干渉がなく隙間を形成しているので、挿入完了時までは楽に挿入でき、その挿入完了時に三つの被保持部41,42,43がほぼ同時に、対応保持溝28,29,30へそれぞれ圧入され保持される。しかも、その圧入時には、端子は下方への押圧力を受けて端子配列面との密着度を高める。
【0036】
本実施形態の中間部材20は、一方の面に端子が配列された既述の端子配列板22の他方の面に、シールド板50が取り付けられている。図6(A) は、シールド板50取付前の端子配列板22の他方の面を示し、図6(B)は、シールド板50を示している。
【0037】
図6(A)において、端子配列板22の他方の面は、ほぼ平坦面をなしていると共に、複数位置に突起36が設けられている。この突起36は、図7に見られるように、前方(図では右方)半分が半円筒形で後方半分が略直方体形をなし幅pを有しており、基部側面には前後に延びる圧入溝36Aが形成されている。該圧入溝36Aは、図7において、前方に向け上方に傾いた斜面を有し、端子配列板22の上記他方の面に対して直角な方向での溝幅が前方に向け狭くなっている。後方における溝幅Sは、、上記シールド板50の板厚よりも若干大きく、前方における溝幅Sは上記板厚よりも小さい。
【0038】
シールド板50は、上記端子配列板22の他方の面をほぼ全面的に覆う大きさに作られていて、上記複数の突起36に対応する位置に、板厚方向に貫通する係止孔52が形成されている。図7では、この係止孔52は上記突起36に対して係合する前の状態で示されている。該係止孔52は、前部53が半円形部分とこれに接続される幅qの平行縁部とを有し、後部54が上記前部53の平行部分よりも狭い幅qの平行縁部となっている。前部53の平行縁部での幅qは上記突起36の幅pより大きく、又、後部54の平行縁部での幅qは上記突起36の幅pより小さくかつ突起36の圧入溝36Aの溝底同士の距離rよりも大きい。
【0039】
上記幅qの後部54における平行縁部では、係止孔52の内方に向けその板厚が小さくなるテーパ部を形成している。
【0040】
このような突起36を有する端子配列板22は、この突起36がシールド板50の係止孔52の前部53へ挿入され、該突起36が係止孔52を貫通してシールド板50が上記端子配列板22の他方の面に接面した状態で、端子配列板22を後方にスライド移動する。換言すれば、相対的にはシールド板50が端子配列板に対して前方へ移動する。この相対動により、シールド板50は、係止孔52の後部54における平行縁部が突起36の圧入溝36Aへ進入し、次第に溝幅が狭くなるこの圧入溝36Aの斜面により端子配列板22の他方の面に向け圧せられた密着状態で保持される。
【0041】
かくして、端子配列板22の一方の面には、端子40が該一方の面に密着して保持され、他方の面にはシールド板50が該他方の面に密着して保持されて、一つの中間部材20を得る。このような中間部材20を、図3のように複数枚用意し、これを図2のようにハウジング11で保持することにより中間コネクタMを得る。該中間コネクタMには、図2のごとく、方向A,Bからコネクタを接続し、両コネクタはこの中間コネクタMにより接続される。
【0042】
本発明は、図1ないし図7に示した例に限定されず、種々変更が可能である。例えば、図8のごとく、端子配列板22の各保持溝28,29,30が端子配列板22の板厚方向に貫通して形成された窓部33,34,35とそれぞれ連通しているようにすることができる。したがって、保持溝28,29,30の範囲では、端子配列板22は、端子40の下側では該端子配列板22の部分が不存在で、端子40の上側でのみ凸条部25,26,27の上壁部が存在するようになる。これにより、端子40の被保持部41,42,43は、他の部分と比し幅広になっているが、この部分でのシールド板50との間の誘電率の調整ができ、したがって、端子40の存在範囲で、端子40の全長にわたり、インピーダンス整合ができ、端子の高速伝送特性が向上する。
【0043】
さらには、端子の各被保持部とこれに対応する各保持溝の形状そして大きさの関係は、図1ないし図7で示した例以外にも、種々変形が可能である。例えば、図9のごとく、被保持部41,42,43そして保持溝28,29,30をいずれも、すべて同じ幅の矩形断面形状とし、その高さ方向のみを変えることにより、端子の挿入開始時、挿入途中時に被保持部が保持溝を通過し、挿入完了時にすべての被保持部41,42,43が対応保持溝28,29,30に圧入されて保持されるようにできる関係にある。この関係は、以下の他の変形例でも同様である。図9では、挿入完了時における被保持部41,42,43と対応保持溝28,29,30とをそれぞれ横方向に対応させて並べて示している。前方被保持部41の高さ方向寸法h41が前方保持溝28の同方向寸法g28よりも大きく、中間保持溝29そして後方保持溝30の同方向寸法g29,g30よりも小さい。又、中間被保持部42の高さ方向寸法h42は中間保持溝29の同方向寸法g29より大きく、後方保持溝30の同方向寸法g30よりも小さい。さらには、後方被保持部43の高さ方向寸法h43は後方保持溝30の同方向寸法g30よりも大きい。これらの高さ寸法をまとめると、g28<h41<g29<h42<g30<h43となる。
【0044】
したがって、図9の例では、端子の挿入完了時に、各被保持部41,42,43は対応保持溝28,29,30により被保持部の上面側で下方への押圧力を受けた状態で保持される。
【0045】
次に、図9の場合と同様に端子の各被保持部の上面側で対応保持溝から下方へ押圧力を受けるようにする形態であっても、図10のように、端子の各被保持部41,42,43の上部両隅部に斜面を形成してもよい。この図10の場合も、各被保持部41,42,43と対応する各保持溝28,29,30との高さ方向寸法の関係は図9の場合と同様でg28<h41<g29<h42<g30<h43となっている。図10の場合では、各被保持部41,42,43は上記上部両隅部に斜面を有しているので、保持溝と干渉する水平上面部の幅は比較的小さいので、干渉量を十分に確保するには高さ方向での干渉寸法を大きくする。又、図10の例では、前方保持溝28は矩形であるが、中間保持溝29、後方保持溝30は上部斜面を有していて、それぞれ、前方被保持部41の通過、該前方被保持部41と中間被保持部42の通過を許容している。
【0046】
図9、そして図10の例では、被保持部41,42,43はそれらの水平上面部が対応する保持溝28,29,30のそれぞれに対し高さ寸法が大きくすることによりこれらの保持溝と干渉していたが、図11では、被保持部41,42,43の幅は対応する保持溝28,29,30とほぼ同じ幅を有している。上記被保持部41,42,43が矩形をなしているのに対し、保持溝28,29,30は上部隅部に斜面を有し、この斜面が被保持部41,42,43の上部の両側における直角隅部と干渉して保持すると共に斜め下方への押圧力を端子に与える。被保持部41,42,43の高さ寸法と保持溝28,29,30における下面から斜面の下端までの高さの関係は、g28<h41<g29<h42<g30<h43となる。すなわち、高さ方向にて、被保持部41,42,43の上面は、それぞれ対応する保持溝28,29,30の斜面の範囲に位置する。
【0047】
図10,図11の例ではすべての被保持部そして保持溝における斜面の角度は同じに形成されていたが、この斜面の角度を変えることも可能である。図12において、前方被保持部41は角度θ41の斜面を有しているが、前方保持溝28よりも頂部が高くなっていて、この高さの差によって圧入される。中間保持溝29が上記前方被保持部41よりも若干高さ寸法が大きく斜面の角度θ29=θ41となっていて、前方被保持部41の通過を許容する。又、この中間保持溝29は、高さが該中間保持溝29と同じではあるが斜面の角度θ42が上記角度θ29より大きく(θ42>θ29)設定されている中間被保持部42と斜面同士で干渉し、斜め下方への押圧力を端子にもたらしている。又、後方保持溝30は上記中間保持部42よりも若干高さ寸法が大きく斜面の角度θ30=θ42となっていて、中間被保持部42の通過を許容する。又、この後方保持溝30は、高さが該後方保持溝30と同じではあるが斜面の角度θ43が上記角度θ30よりも大きく(θ43>θ30)設定されている後方被保持部43と斜面同士で干渉し、斜め下方への押圧力を端子にもたらしている。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態としての中間コネクタとこれに接続する基板用コネクタとを示す斜視図である。
【図2】図1の中間コネクタの断面図である。
【図3】図2の中間コネクタに用いられる中間部材のみを示した斜視図である。
【図4】図3の中間部材の端子配列板の一部について断面し、端子と共に示す斜視図である。
【図5】端子の各挿入過程で、端子の被保持部と端子配列板の保持溝との関係を示す図である。
【図6】図3の中間部材の端子配列板とこれに取り付けられるシールド板とを示し、(A)は端子配列板の他の面から見た斜視図、(B)はシールド板の斜視図である。
【図7】図6における端子配列板に設けられた突起とシールド板の係止孔との関係を示す拡大斜視図である。
【図8】図4の端子配列板の変形例を示す斜視図である。
【図9】端子の被保持部と端子配列板の保持溝のさらなる変形例を示す図である。
【図10】端子の被保持部と端子配列板の保持溝のさらなる変形例を示す図である。
【図11】端子の被保持部と端子配列板の保持溝のさらなる変形例を示す図である。
【図12】端子の被保持部と端子配列板の保持溝のさらなる変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
11 ハウジング 33,34,35 窓部
20 中間部材 36 突起
22 端子配列板 36A 圧入溝
23 案内溝 41 (前方)被保持部
25,26,27 凸条部 42 (中間)被保持部
28 (前方)保持溝 43 (後方)被保持部
29 (中間)保持溝 50 シールド板
30 (後方)保持溝 52 係止孔
31 規定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁材で作られた端子配列板の面で、該端子配列板の一方の縁部から他方の縁部へ直状に延びる端子が複数設けられることにより形成される中間部材が電気絶縁材のハウジングにより保持され、上記一方及び他方の縁部へ、対応せる相手コネクタが接続可能となっている中間電気コネクタにおいて、端子配列板は端子の長手方向での複数位置で該端子を保持する保持溝を有し、該保持溝は、上記端子が端子配列板の面に沿って上記一方の縁部の側から他方の縁部の側へ向け端子の前部から順次挿入されて他方の縁部の側で端子の前部側の被保持部を保持する前方保持溝から上記一方の縁部の側で端子の後部側の被保持部を保持する後方保持溝まで、それぞれ形状と大きさの少なくとも一方が異なる複数種の保持溝として形成され、各保持溝は端子挿入完了時に対応して位置する端子の被保持部のみが圧入され、かつ、端子挿入途中では、端子挿入完了時に各保持溝に対応する被保持部よりも前方の被保持部の通過を許容していることを特徴とする中間電気コネクタ。
【請求項2】
前方保持溝から後方保持溝までの複数種の保持溝のうち少なくとも一つの保持溝は、対応せる端子の被保持部の圧入時に、該被保持部を配列板の面に対して押圧する形状となっていることとする請求項1に記載の中間電気コネクタ。
【請求項3】
前方保持溝から後方保持溝までの各保持溝は、対応せる各被保持部が同時に圧入されるような被保持部との位置関係を有していることとする請求項1又は請求項2に記載の中間電気コネクタ。
【請求項4】
端子配列板は、端子の挿入時の案内をする案内溝が配列面に形成され、該案内溝は前方保持溝から後方保持溝までのすべての保持溝に連通していることとする請求項1に記載の中間電気コネクタ。
【請求項5】
保持溝は、前後方向ですべての端子の同じ位置の被保持部に対応する保持溝を通るように配列面に設けられた凸条部に形成されていることとする請求項1ないし請求項4のうちの一つに記載の中間電気コネクタ。
【請求項6】
端子配列板は、前方保持溝よりも前方位置に、端子の前端に当接して端子の挿入完了位置を規定する規定部が設けられていることとする請求項1ないし請求項5のうちの一つに記載の中間電気コネクタ。
【請求項7】
保持溝は、該保持溝の位置にて端子配列板の端子配列面から反対側の面へ貫通する窓部と連通していることとする請求項5に記載の中間電気コネクタ。
【請求項8】
端子の被保持部は、端子の長手方向に対して直角な断面にて、高さそして幅の少なくとも一方が、被保持部同士を連結している他部よりも大きいこととする請求項1、請求項2、請求項3そして請求項5のうちの一つに記載の中間電気コネクタ。
【請求項9】
中間部材は、端子配列板の一方の面に保持溝が形成されて該保持溝で端子が保持され、他方の面にシールド板が取り付けられていることとする請求項1に記載の中間電気コネクタ。
【請求項10】
端子配列板は、他方の面に突起が設けられ、シールド板には該突起が貫通する係止孔が形成されていて、上記突起の側面には、シールド板の上記他方の面に沿ったスライド移動により、係止孔の内縁が圧入される圧入溝が形成されていることとする請求項9に記載の中間電気コネクタ。
【請求項11】
圧入溝は、シールド板のスライド移動方向に狭くなっていて、シールド板はそのスライド移動によって端子配列板の他方の面に圧せられることとする請求項10に記載の中間電気コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−70587(P2009−70587A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−234810(P2007−234810)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(390005049)ヒロセ電機株式会社 (383)
【Fターム(参考)】