説明

中高層ビルにおける垂直幹線の延線工法及びこれに使用する装置

【課題】中高層ビルにおいて一度で高層階から地上階乃至は地下まで、垂直幹線ケーブルを延線でき、また、大がかりな機械や動力を必要とせず、延線できる。
【解決手段】中高層ビルの垂直幹線の延線工法において、高層階に幹線ケーブル4を搬入し、当該個所から下方の階を貫いて設けられた配線シャフト2に前記幹線ケーブル4を、速度制御装置付きの繰り出しドラム装置5を用いて速度を制御しながら繰り出し、落下させ、当該配線シャフト2内に当該配線シャフト2に沿って間隔をあけて複数設けたケーブル速度制御装置7に幹線ケーブル4を通して当該幹線ケーブル4の自重による負荷を各ケーブル速度制御装置7で分担しながら前記配線シャフト2の上から下方の各階に延線する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、中高層ビル等の建物に設置される、各フロアへ電気を供給する垂直幹線の延線工法及びこれに使用する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高層ビル現場や中層ビル現場においてはテナント用受電室(電気室)を上層階に設けることが多い。この様な時、図15で示すように、従来の幹線ケーブルの延線工事では、高層ビル(イ)の最上部構造が構築された後、最上階等に設置したウインチ(ロ)で垂直幹線(ハ)の上端を吊り上げていき、垂直幹線(ハ)の上端を最上階の天井スラブに吊り下げる、幹線の下からの引き上げ工事方法しかなかった。この様な高層ビルでの下から上への垂直幹線の延線工法は特許文献1にも記載されている。
【0003】
この方法だと、垂直幹線(ハ)を下から上に引き上げるのに多大な動力を必要とする。また、各階で垂直幹線(ハ)を巻き付けたドラム(ニ)を設置する等、他のテナントエリアを使用することが多い。そこで、ドラム(ニ)の設置、機材の搬入ルートの確保、作業時間の調整等各テナントとの調整をしなければならず、これらに時間や手間がかかった。また、中高層ビルでは高層階の方が仕上げが早く、低層階の建築仕上げ工事が遅れることが多い。従って、当該垂直幹線の敷設工期が遅れてしまうことが多い。また、下から幹線ケーブルを引き上げる場合、各階に作業員をおいて、引き上げ用のロープを下方に引くための誘導や監視作業と、引き上げられる幹線ケーブルが他物に引っ掛からないよう誘導や監視する作業の2つの作業工程をしなければならない。従って、前記電気工事の下からの幹線引き上げ工事は、電力等の動力を大きく消費するとともに、多数の作業員を必要とし、大変な手間がかかるものであった。
【0004】
この様な問題を解決するため、特許文献2で示すように、垂直幹線を3フロア程度分づつの分割幹線ケーブルに分割し、上下の分割幹線ケーブルの端部同士を接続コネクタで結合する工法が提案されている。ここでは、全体の分割幹線ケーブルが連結された後は、特許文献1の場合と同様に、結合後の幹線ケーブルの上端に装着したネット状のケーブルグリップを最上階のスラブに埋め込んだ係止金具に係止する。それぞれの接続コネクタは、その接続コネクタより下方の幹線ケーブル全体の重量を支持する構造を備えている。また、この工法では、建築物の3フロア分を建てていくごとに、3フロア分の分割幹線ケーブルを上のフロアから吊り下ろすことができる。これにより、最上階が形成される前に上層階を除く各フロアの幹線ケーブルを設置することができる。また、ウインチも不要である。そして接続コネクタで幹線ケーブル自体の重量を支持するので、連結後の幹線ケーブルはまっすぐに上下方向に延びている。
【0005】
この特許文献2のものにおいても、分割岐幹線ケーブルの接続点となる3フロアごとに作業員を配置する必要があり、特に数十階の超高層ビルでは、多数の作業員が依然として必要である。また、接続コネクタはそのコネクタより下側の垂直幹線の重量を支持する必要があるので、高い強度が必要であり、その分重量が大きくなり、電動ウインチを使用したり、接続コネクタの接続作業に手間がかかる。
【0006】
そこで、特許文献3の工法が開発された。これは、垂直幹線ケーブルを数階分乃至十数階分ごとのユニットに分割し、最上階のユニットの上端を最上階の天井スラブに吊り持ち支持させ、他のユニットの上端からいくらか下方の部位を対応する階の天井スラブに吊り持ち支持させる。そして上側のユニットの下端を、下側のユニットの上端とジョイントによってモールド接続する。この工法では高層ビルが数階分乃至十数階分づつ建て上がっていくごとに対応するユニットを設置することができる。また、各ユニットの重量は、そのユニットの上端近辺が対応する天井構造物に支持されるので、シャフト内に吊り込むとき、ユニット1個分の重量を吊るだけで足りる。そのため、小型のウインチでも巻上げあるいは巻き降ろしが可能であり、吊り込みや接続作業もそれほど過酷ではない。さらに、各ユニットの接続部には下部ユニットの重さが加わらないため、接続部の機械的強度を向上させるための強固なコネクタを用いる必要がなく、水平に配線される電線に用いるものと同様なモールド接合でよい。
【0007】
【特許文献1】特開2006−87176号公報
【特許文献2】特開2005−39981号公報
【特許文献3】特開2009−50108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献2及び3の工法では、分割幹線ケーブル或いはユニットを用いるため、多数の接続作業を余儀なくされ、また、一度に最上階から地上階まで延線できず、分割幹線ケーブルごと、或いはユニットごとに延線しなければならず、それだけ時間や手間のかかる工事となる。
【0009】
また、このような高層ビル内に垂直幹線を敷設する場合、上から下まで一気に幹線を自重により下ろして延線すれば、延線の動力は少なくて済み、手間もかからず、省力化できる。しかしながら、高層ビルの高層階から幹線ケーブルを落とす場合、落下速度の制御が重要となる。この幹線ケーブルの落下速度の制御が難しいため、現在ではこの工法が使用されていないのが現状である。
【0010】
そこで、この発明はこれらの従来技術に鑑み、中高層ビルにおいて一度で高層階から地上階乃至は地下まで、垂直幹線ケーブルを自重を利用して延線でき、また、大がかりな機械や動力を必要とせず延線できる、垂直幹線の延線工法及びこれに使用する装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、中高層ビルの垂直幹線の延線工法において、高層階に幹線ケーブルを搬入し、当該個所から下方の階を貫いて設けられた配線シャフトに前記幹線ケーブルを、速度制御装置付きの繰り出しドラム装置を用いて速度を制御しながら繰り出し、落下させ、当該配線シャフト内に当該配線シャフトに沿って間隔をあけて複数設けたケーブル速度御装置に幹線ケーブルを通して当該ケーブル速度制御装置で当該幹線ケーブルの落下速度を制御し、これにより当該幹線ケーブルの自重による負荷を各ケーブル速度制御装置で分散して受けながら前記配線シャフトの上から下方の各階に延線する、垂直幹線の延線工法とした。
【0012】
また、請求項2の発明は、前記繰り出された幹線ケーブルの張力値を測定、監視しながら、一定範囲の張力値となるように前記各ケーブル速度制御装置の速度制御を行う、請求項1に記載の垂直幹線の延線工法とした。
【0013】
また、請求項3の発明は、前記速度制御装置付きの繰り出しドラム装置は、幹線ケーブルを巻き付けたケーブル用ドラムとワイヤーを巻きつけるワイヤー用ドラムとを、各ドラムに設けた歯車で相互に噛み合って回転する構成とし、前記ワイヤー用ドラムにワイヤーをウインチで巻きつけることにより、当該ウインチで幹線ケーブルの繰り出し速度を制御しながら、前記ケーブル用ドラムから幹線ケーブルが繰り出す、請求項1又は2に記載の垂直幹線の延線工法とした。
【0014】
また、請求項4の発明は、前記ケーブル速度制御装置は、複数のローラの外周に巻き付けた無端ベルトから成るキャタピラを二つ相対向して設け、各キャタピラの各ローラの支持軸の両端を夫々連結したフレームの相応するフレーム間を複数のリンク片で回転自在に接続して二つのキャタピラが密着、離反自在とし、一方のキャタピラを前記配線シャフトに支持し、かつ、前記キャタピラの少なくとも一つのローラに速度制御ブレーキを設け、前記幹線ケーブルを二つのキャタピラの間に挟んで前記無端ベルトを回転させながら落下させ、当該無端ベルトの回転速度を前記速度制御ブレーキにより制御して前記幹線ケーブルの落下速度を制御することにより幹線ケーブルの自重による負荷を当該ケーブル速度制御装置で受けながら幹線ケーブルを落下させる、前記請求項1、2又は3のいずれかに記載の垂直幹線の延線工法とした。
【0015】
また、請求項5の発明は、前記ケーブル速度制御装置のキャタピラのフレームのうち、前記配線シャフトに支持されていない方のフレームの下部に、荷重体を取り付けた、請求項1ないし4のいずれかに記載の垂直幹線の延線工法とした。
【0016】
また、請求項6の発明は、前記荷重体は、中高層ビルの下層階の配線シャフトに支持されるケーブル速度制御装置のキャタピラのフレームに取り付ける荷重体ほど重くした、請求項5に記載の垂直幹線の延線工法とした。
【0017】
また、請求項7の発明は、前記配線シャフトに支持されるケーブル速度制御装置が2台連結して設けられ、上方のケーブル速度制御装置の、支持側のキャタピラのフレームの下端と下方のケーブル速度制御装置の相応するキャタピラのフレームの上端とを相互に回転自在に接続した、請求項1ないし6のいずれかに記載の垂直幹線の延線工法とした。
【0018】
また、請求項8の発明は、幹線ケーブルを巻き付けたケーブル用ドラムとワイヤーを巻きつけるワイヤー用ドラムとを、各ドラムに設けた歯車で相互に噛み合って連動回転する構成とし、前記ワイヤー用ドラムにワイヤーをウインチで巻きつけることにより、当該ウインチで幹線ケーブルの繰り出し速度を制御しながら、前記ケーブル用ドラムから幹線ケーブルを繰り出し、また、前記ワイヤー用ドラムからワイヤーを前記ウインチで繰り出すことにより前記ケーブル用ドラムに幹線ケーブルを巻きつけることができる、垂直幹線の延線工法に使用する速度制御装置付きの繰り出しドラム装置とした。
【0019】
また、請求項9の発明は、複数のローラの外周に巻き付けた無端ベルトから成るキャタピラを二つ相対向して設け、各キャタピラの各ローラの支軸の両端を夫々連結したフレームの相応するフレーム間を複数のリンク片で回転自在に接続して二つのキャタピラが密着、離反自在とし、一方のキャタピラを構造物に支持し、かつ、前記キャタピラの少なくとも一つのローラに速度制御ブレーキを設け、前記幹線ケーブルを二つのキャタピラの間に挟んで前記無端ベルトを回転させながら落下させ、当該無端ベルトの回転速度を前記速度制御ブレーキにより制御する構成である、垂直幹線の延線工法に使用するケーブル速度制御装置とした。
【0020】
また、請求項10の発明は、前記二つのキャタピラにより幹線ケーブルを挟持し、当該挟持状態をロックするブレーキ兼ロック装置を設けた、請求項9に記載の垂直幹線の延線工法に使用するケーブル速度制御装置とした。
【0021】
また、請求項11の発明は、前記ケーブル速度制御装置の二つのキャタピラをつなぐ複数のリンク片が、一方のキャタピラのフレームに着脱自在に係止されている、請求項9又は10に記載の垂直幹線の延線工法に使用するケーブル速度制御装置とした。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明では、中高層ビルの垂直幹線の延線に当たって、幹線ケーブルを高層階から下層階へ落下させて延線するため、幹線ケーブルの自重を主な動力として使用するため、電気等のエネルギーの省力化となる。また、上から落下する幹線ケーブルは、速度制御装置付きの繰り出しドラム装置を用いて速度を制御しながら繰り出されるので、落下速度を制御されるため安全であり、しかも、配線シャフト内に上下方向に間隔をあけて設けた複数のケーブル速度制御装置で当該幹線ケーブルの自重による負荷を各ケーブル速度制御装置で分散しながら上から下方の各階に延線するので、幹線ケーブルの繰り出し側等で多大な荷重がかからず安全に延線できる。また、各ケーブル速度制御装置は、幹線ケーブルの予期せぬ落下の防止を担う。また、落下する幹線ケーブルは必要階で横引きすればよく、その階に作業員がいて手作業又はウインチで横引きすることが出来、他の階には作業員は不要となり、従来の下から上への幹線ケーブルの延線工法より作業員を少なくすることが出来る。また、前記従来の延線工法では、下の階層から順に幹線ケーブルを延線していかなければならないが、この工法では、延線する階層の順番を任意にすることが出来る。従って、従来のような工期の遅れが生じにくい。
【0023】
また、請求項2の発明によれば、落下する幹線ケーブルの張力を測定、監視し、常にその張力が一定範囲内になるように、各ケーブル速度制御装置の無端ベルトの回転速度を制御し、幹線ケーブルの落下速度を制御して幹線ケーブルの自重を受ける。従って、張力が一定範囲より高ければ、幹線ケーブルの繰り出し端は引っ張られて落下する恐れがあるが、一定範囲内であれば幹線ケーブルの荷重に耐えられ、そのような恐れがない。また、反対に張力が一定範囲以下となれば、幹線ケーブルが途中でケーブル速度制御装置等に引っ掛かかったり、つっかえたりしている状態であることが分かる。従って、張力が一定の範囲に成るように各ケーブル速度制御装置で幹線ケーブルの落下速度を制御すれば、幹線ケーブルはスムーズに落下し、安全、確実に延線することができる。
【0024】
また、請求項3及び8の発明によれば、ケーブル用ドラムとワイヤー用ドラムの回転は、それぞれに設けた歯車を噛み合わせているため、双方が連動して回転する構成となっており、さらに、ワイヤー用ドラムにワイヤーを巻きつけたり繰り出したりするのをウインチで行っているため、ウインチの回転制動を掛けることにより、ケーブル用ドラムから幹線ケーブルを、制動をかけながら繰り出すことができる。従って、高層階から幹線ケーブルを落下させる際、当該繰り出しドラム装置を用いれば、安全に幹線ケーブルを繰り出し、定速度で落下させることができる。
【0025】
請求項4及び9の各発明によれば、各ケーブル速度制御装置は二つのキャタピラの一方が、他方に吊り下げられているため、一方のキャラピラの自重で他方のキャタピラに密着する。従って、これらの二つのキャタピラの間に挿通される幹線ケーブルは、これらのキャタピラに挟持され、各キャタピラの無端ベルトを回転させながら落下するため、各無端ベルトの回転速度を制御すれば、幹線ケーブルの落下速度が制御されると同時に、幹線ケーブルの荷重を当該ケーブル速度制御装置で負担することができる。それ故、幹線ケーブルの落下距離に従って、ケーブル速度制御装置での幹線ケーブルの落下速度の制御が増し、幹線ケーブルの荷重をこれらの各ケーブル速度制御装置で分散して負担することとなり、幹線ケーブルの繰り出し端側での幹線ケーブルの荷重負担が軽減される。
【0026】
また、これらのケーブル速度制御装置によれば、幹線ケーブルは二つのキャタピラの各無端ベルトに挟持されて、無端ベルトの回転速度に従って落下するため、無端ベルトと幹線ケーブルとは面接触で接触し、かつ落下速度が無端ベルトの回転と同期するため、幹線ケーブルが摩擦せず、外周を痛めない。しかも、幹線ケーブルは三相の撚り線であることが多く、この三相の撚り線では断面形状が一定ではないので、前記無端ベルトでの面接触での挟持は三相の撚り線の場合、確実に挟持され、最適である。
【0027】
また、請求項5の発明によれば、幹線ケーブルに対してケーブル速度制御装置の二つのキャタピラの無端ベルトの密着力が弱いと、ケーブル速度制御装置の制御がきかないが、この様に荷重体を一方のキャタピラのフレームに取り付けるだけで、二つのキャタピラの無端ベルトの密着力が増し、当該ケーブル速度制御装置により確実に幹線ケーブルの落下速度を制御し、幹線ケーブルの自重負荷を当該ケーブル速度制御装置が確実に受けることができる。
【0028】
また、請求項6の発明によれば、中高層ビルの下層階に行くほど前記請求項5の荷重体を重くしているので、上からの幹線ケーブルの落下長の長さによって自重で幹線ケーブルの繰り出し側での張力が増していくが、前記ケーブル速度制御装置において、二つのキャタピタの無端ベルトの密着力が増し、幹線ケーブルを確実に把持して落下速度の制御及び幹線ケーブルの自重負荷を上から下までの全てのケーブル速度制御装置がより確実に受け、当該荷重を分散させることができる。
【0029】
また、請求項7の発明によれば、幹線ケーブルの外周が一定でなく、大径部を有するものであっても、この様に配線シャフト内に一定間隔ごとに設置するケーブル速度制御装置を夫々二台の連結式にしているため、幹線ケーブルの自重による負荷を確実に受け、各ケーブル速度制御装置で前記負荷を分散させながら幹線ケーブルを延線することができる。
【0030】
また、特に請求項10のケーブル速度制御装置にはブレーキ兼ロック装置を有するため、前記二つのキャタピラの幹線ケーブルに対する把持力を任意に制御し、かつ当該把持力を保持し、ロックすることができる。従って、幹線ケーブルの下端が、目的の階層にきた場合、当該階に幹線ケーブルを引き込むが、その場合に、上方のケーブル速度制御装置の二つのキャタピラを密着させてこの状態をブレーキ兼ロック装置によりロックしておけば、当該幹線ケーブルはそれ以上落下せず、幹線ケーブルの当該階への横引き作業が極めて容易となる。
【0031】
また、請求項11の発明によれば、幹線ケーブルの下端が目的の階層にきた場合、当該階に幹線ケーブルを引き込むが、その場合に、上方の各ケーブル速度制御装置の二つのキャタピラの間から幹線ケーブルを取り出さなければならないが、各リンク片の一端を一方のフレームに着脱自在に取り付けているため各リンク片を当該フレームから外し、容易に当該幹線ケーブルを取り出すことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
この発明は、中高層ビルの垂直幹線の延線工法において、高層階に幹線ケーブルを搬入し、当該個所から下方の階を貫いて設けられた配線シャフトに、前記幹線ケーブルを、速度制御装置付きの繰り出しドラム装置を用いて速度を制御しながら繰り出し、落下させ、当該配線シャフト内に当該配線シャフトに沿って間隔をあけて複数設けたケーブル速度制御装置に幹線ケーブルを通して当該幹線ケーブルの自重による負荷を各ケーブル速度制御装置で分散しながら前記配線シャフトの上から下方の各階に延線する。
【0033】
そして、前記ケーブル速度制御装置は、複数のローラの外周に巻き付けた無端ベルトから成るキャタピラを二つ相対向して設け、各キャタピラの各ローラの支持軸の両端を夫々連結したフレームの相応するフレーム間を複数のリンク片で回転自在に接続して二つのキャタピラが密着、離反自在とし、一方のキャタピラを前記配線シャフトに支持し、前記幹線ケーブルを二つのキャタピラの間に挟んで前記無端ベルトを回転させながら落下させ、当該二つのキャタピラによる幹線ケーブルの挟持力を制御しながら幹線ケーブルを落下させるものである。
【実施例1】
【0034】
以下、この発明の実施例1を図に基づいて説明する。図1はこの発明の工法の概略構成図、図2はこの発明に使用する、前記速度制御装置付きの繰り出しドラム装置5の概略側面図である。
【0035】
高層ビル1には、各階を貫いて電線、通信等のケーブルを収納する配線シャフト2が設けられている。また、この高層ビルの最上階には電気室3が設けられている。そして、延線しようとする幹線ケーブル4を巻き付けた速度制御装置付きの繰り出しドラム装置5を、当該高層ビル1の外からクレーン等により吊り上げ、最上階の電気室3に設置する。また、この電気室3の天井には、前記速度制御装置付きの繰り出しドラム装置5から繰り出された幹線ケーブル4を吊り下げる金車6を、張力計9を介して取り付け、また、前記配線シャフト2に沿って、当該配線シャフト2内に約20mおきに、ケーブル速度制御装置7を設置する。具体的には、前記配線シャフト2に設けられたケーブルラック8(図4参照)に吊り下げる。
【0036】
そして前記幹線ケーブル4の先端にパイロットケーブル(図示省略)の一端を接続し、このパイロットケーブルの他端を前記金車6に一旦掛けて前記配線シャフト2に入れ、前記各ケーブル速度制御装置7に通し、目的の階で前記パイロットケーブルの端を係止しておく。そして、前記速度制御装置付きの繰り出しドラム装置5を作動させて幹線ケーブル4を定速度で繰り出し、配線シャフト2内に落下させる。当該幹線ケーブル4は前記パイロットケーブルにガイドされて各ケーブル速度制御装置7を通り落下していき、幹線ケーブル4の自重が増すにつれて前記金車6に係る荷重が増していくが、この荷重を各ケーブル速度制御装置7で分担して受け、一定以上の張力が前記金車6にかからず落下していく。
【0037】
これには、前記金車6の吊り下げに箇所に張力計9を設け、常にこの張力計9の張力値を測定、監視し、一定の範囲の張力となるように各ケーブル速度制御装置7による幹線ケーブル4の落下速度を制御し、これにより幹線ケーブル4の自重による負荷を各当該ケーブル速度制御装置7で分担して受ける。そして当該幹線ケーブル4を引き込む目的の階に幹線ケーブル4の下端が達すると、前記速度制御装置付きの繰り出しドラム装置5の幹線ケーブル4の繰り出しを一旦止める。そして目的の階で作業員が前記パイロットケーブルを配線シャフト2から引っ張り、又はローラを介してウインチで引っ張り、再び前記最上階の速度制御装置付きの繰り出しドラム装置5を作動させて幹線ケーブル4を繰り出し、当該階に幹線ケーブル4を横引きし、当該階の分電盤10に接続する。その後、各ケーブル速度制御装置7から幹線ケーブル4を取り出し、当該幹線ケーブル4をケーブルラック8に固定する。
【0038】
このようにして、前記繰り出しドラム装置5から新たな幹線ケーブル4を取り出して延線作業を繰り返すことにより、複数の幹線ケーブル4を最上階から地上階又は地下階の各階に延線する。その際、延線し終わった幹線ケーブル4は配線シャフト2のケーブルラック8(図4参照)に結束するため、次の幹線ケーブル4の延線には邪魔にならない。また、各階には5〜6本の幹線ケーブルを引き込むため、これらを最上階から一括で延線、引き込んでもよく、1本ごとでもよい。
【0039】
前記速度制御装置付きの繰り出しドラム装置5は、図2に示すように、幹線ケーブル4を巻きつけるケーブル用ドラム11とワイヤー用ドラム12とが、各ドラムの鍔11a及び鍔12aの外周に設けられた歯車によって噛み合い、これらのケーブル用ドラム11とワイヤー用ドラム12とは反対方向に連動して回転する構成となっている。また、前記ワイヤー用ドラム12の側方には、油圧ウインチ13及びワイヤー14を巻き付けるリールワインダー15を設ける。そして、当該リールワインダー15に巻き付けたワイヤー14を油圧ウインチ13により繰り出して、当該ワイヤー14を前記ワイヤー用ドラム12に巻きつけることにより、ケーブル用ドラム11から幹線ケーブル4を繰り出すもので、前記油圧ウインチ13の回転制御により、幹線ケーブル4を定速度で繰り出すことができる。
【0040】
反対に、ワイヤー用ドラム12に巻き付けたワイヤー14を油圧ウインチ13で引き出せば、ケーブル用ドラム11に幹線ケーブル4を巻きつけることができる。このケーブル用ドラム11への幹線ケーブル4の巻き付けは、地上で予め行ってもよく、また、電気室3で行う等、適宜の方法で巻き付けることができる。なお、図2では油圧ウインチ13の油圧ユニットを省略している。
【0041】
次に、前記ケーブル速度制御装置7の構成を図3〜図11において説明する。図3はケーブル速度制御装置7に幹線ケーブル4を通した斜視図、図4はケーブル速度制御装置7の実際の使用状態を示す側面図(ただし、ブレーキ兼ロック装置を省略している)、図5はケーブル速度制御装置7に幹線ケーブル4を通した側面図(ただし、ブレーキ兼ロック装置を省略している)、図6はケーブル速度制御装置7のキャタピラのローラと無端ベルトの概略構成図、図7はケーブル速度制御装置7のブレーキ装置の構成図、図8はケーブル速度制御装置のキャタピラの無端ベルトの好ましい例を示す説明図であり、(A)図は斜視図、(B)図は二つのキャタピタの無端ベルトで幹線ケーブルを挟持している断面図、図9はケーブル速度制御装置7のキャタピラのフレームとリンク片の係合構成を示す概略構成図、図10はケーブル速度制御装置7のブレーキ兼ロック手段の他の例を示す正面図、図11は図10の他のブレーキ兼ロック装置の概略構成図を示し、(A)図はその側面図、(B)図は要部断面図である。
【0042】
このケーブル速度制御装置7は、二つのキャタピラ7a及び7bからなり、各キャタピラ7a又は7bは、支軸16の外周に回転自在に設けたローラ17を多数並べ、各支軸16の両端をフレーム18で固定し、前記多数のローラ17の外周に無端ベルト19を巻き付けている。そして、二つのキャタピラ7a及び7bの相応するフレーム18の間にリンク片20をわたし、各リンク片20の両端を各フレーム18に回転自在に取り付けている。
【0043】
これらのリンク片20を各フレーム18に対して直角にすると二つのキャタピラ7aと7bの間隔は開き、各リンク片20を各フレーム18に対して斜めにすると前記間隔は狭まり、各キャタピラ7a及び7bの無端ベルト19は相互に接する構成となっている。従って、図4及び図5に示すように、一方のキャタピラ7aをケーブルラック8に吊り下げると、他方のキャタピラ7bはその自重で、これらを連結しているリンク片20を傾かせて下方に落ち、各キャタピラ7a又は7bは接近し、相対向する無端ベルト19は密着する。
【0044】
従って、各ケーブル速度制御装置7の二つのキャタピラ7aと7bとの間を通る幹線ケーブル4は、図5に示すように、一方のキャタピラ7bの自重により、二つのキャタピタ7aと7bとに挟持され、二つの相対向する無端ベルト19に密着してこれらの無端ベルト19を回転させながら落下していく。
【0045】
また、無端ベルト19は、図6に示すように、その内周歯19aが各ローラ17の外周歯17aと噛み合っている。従って、各ローラ11と無端ベルト19は同期して回転する構成となっている。なお、他方のキャタピラ7bの自重が軽くて、幹線ケーブル4が当該キャタピラ7aと7bの間をすべっていく場合は、前記他方のキャタピラ7bに重りを付け、各キャタピラ7a及び7bの各無端ベルト19が密着し、幹線ケーブル4を把持し、幹線ケーブル4の落下に合わせて各無端ベルト19が回転するように調整する。
【0046】
この重りとしては、図4に示す、ケーブルラック8に吊り下げられていない方のキャタピラ7bのフレーム18の下端部に、鉄アレーのような荷重体を取り付けることにより行うことができる。また、幹線ケーブル4の落下長が大きくなるほど、幹線ケーブル4の自重が大きくなって、無端ベルト19を把持することが難しくなるので、建物の下層階におけるケーブル速度制御装置7の前記フレーム18に取り付ける荷重体ほど、重くすることが好ましい。
【0047】
また、前記各キャタピラ7a、7bのローラ17には速度制御ブレーキ装置が設けられている。この速度制御ブレーキ装置は、キャタピラ7a又は7bのローラ17の内の少なくとも一つのローラ17に設けられていれば良く、また、ブレーキの構成は問わない。この速度制御ブレーキ装置により、各ケーブル速度制御装置7で落下する幹線ケーブル4の速度を制御し、その結果、幹線ケーブル4の自重による負荷を当該各ケーブル速度制御装置7で分散して受けることとなる。
【0048】
図7はこのケーブル速度制御装置7の速度制御ブレーキ装置の例を示し、この速度制御ブレーキ装置はディスクブレーキ30で構成されている。このディスクブレーキ30を設けたローラ17及び支軸16は他と異なり、ローラ17と支軸16とは一体に構成され、支軸16がフレーム18に対して回転自在に支持されている。そして、当該支軸16のフレーム18の外側に突出する延長部16aにディスク30aが固定され、このディスク30aの外周縁を挟持自在な、ブレーキパッドを有するブレーキ部材30bが設けられ、当該ブレーキ部材30bの一端を図7の矢印の方向に引っ張ると、ディスク30aをブレーキ部材30bが挟持し、ディスク30bの回転が制御される。このブレーキ部材30bのディスク30aの挟持は、手動でもよく、また、電動でもよい。従って、作業員は、前記張力計9の張力値を見ながら、当該ディスクブレーキ30によるローラ17及び無端ベルト19の回転を制御し、これにより幹線ケーブル4の落下速度を制御する。
【0049】
また、前記無端ベルト19は、図8の(A)図に示すように、ウレタン系材質から成るサイコロ状のこま19bをベルトの外周上に並べ、サイコロ状の各こま19bの外面に、幹線ケーブル4が収まる断面略半円形状の溝19cが掘られているものが好ましい。これにより、同図の(B)に示すように、二つのキャタピラ7a、7bの各無端ベルト19に挟み込んだ幹線ケーブル4に一様にむらなく圧力がかかることになる。
【0050】
前記のように、幹線ケーブル4がこのケーブル速度制御装置7を通過する際、前記金車6の張力計9の張力値を見て、作業員は当該ケーブル度制御装置7のディスクブレーキ30等のブレーキ装置を操作し、前記張力値が上がらないように、当該ケーブル速度制御装置7箇所での幹線ケーブル4の落下速度を調整する。これは、幹線ケーブル4の落下長が大きくなれば、幹線ケーブル4の自重が大きくなり、前記張力値が大きくなるが、各ケーブル速度制御装置7での幹線ケーブル4の落下速度を制御するため、幹線ケーブル4の荷重を各ケーブル速度制御装置7で分散して受けることとなり、前記金車6に幹線ケーブル4の全荷重がかからないようになっている。
【0051】
このようにして幹線ケーブル4は、配線シャフト2内に間隔をあけて設けた複数のケーブル速度制御装置7により落下速度を制御されながら下方に落下していく。前記作業員によるケーブル速度制御装置7のブレーキ装置による幹線ケーブル4の落下速度の調整は、手動又は電動で調整することもでき、さらには、前記張力計9の張力値を一定範囲内にするよう、各ケーブル速度制御装置7のブレーキ装置の操作を自動的に行うことも出来る。
【0052】
また、前記ケーブル速度制御装置7には、前記二つのキャタピラ7a及び7bの各無端ベルト19の間に幹線ケーブル4を挟持し、当該挟持状態をロックする、ブレーキ兼ロック装置21を設けている。このブレーキ兼装置21は、図3に示すように、各キャタピタ7aと7bの各フレーム18間に設けたもので、ターンバックル構造を有し、工具等で中央部のつまみハンドル21cを回転させるとディファレンシャルギヤを介して両側の短片21a、21bが伸びたり縮んだりするもので、両側の短片21a、21bを縮ませると各キャタピタ7aと7bとが接近し、幹線ケーブル4に対する把持力乃至は圧力が増し、当該箇所で幹線ケーブル4の落下を停止させ、この状態をロックすることができる。
【0053】
また、このブレーキ兼ロック装置21は、二つのキャタピラ7a、7bが、一方のフリーなキャタピラ7bの自重又は重りによっても、相互に密着しない場合、これを作動させて二つのキャタピラ7a、7bを強制的に密着させ、これらの間に挟んだ幹線ケーブル4と各無端ベルト19とを同期させることにも使用できる。
【0054】
そして、幹線ケーブル4の下端が目的の階に到達したとき、前記最上階の速度制御装置付きの繰り出しドラム装置5からの幹線ケーブル4の繰り出しを油圧ウインチ13により止めるが、その際、前記各ケーブル速度制御装置7のブレーキ兼ロック装置21により、二つのキャタピタ7aと7bとをより密着させて幹線ケーブル4の落下を止め、ロックする。
【0055】
また、前記各リンク片20の一端は、前記フレーム18に着脱自在に取り付けられている。これは、前記各リンク片20の一端に設けたピン22を、前記フレーム18の孔に通して、回転自在に取り付けているが、図9に示すように、当該フレーム18の孔23が鉤型をなし、その短辺に大径孔部23aを設け、その大径孔部23aから前記ピン22の頭部が抜ける構成となっている。これにより二つのキャタピラ7の一方の側の各リンク片20の一端を、フレーム18から外すことができ、幹線ケーブル4を二つのキャタピラ7aと7bの横から取り出すことが出来る。なお、図9の(A)図及び(B)図は、フレーム18に設けた鉤型の孔23にリンク片20のピン22が挿通されている状態を示し、(C)図は鉤型の孔23の大径孔部23aの位置にピン22がきている状態を示す。この位置でピン22はその頭部とともに大径孔部23aから抜ける構成となっている。
【0056】
従って、前記幹線ケーブル4を目的の階に引き込んだ際、前記各ケーブル速度制御装置7から幹線ケーブル4を取り出すが、その際、前記各リンク片20の一端を一方のフレーム18から外して容易に幹線ケーブル4をケーブル速度制御装置7から取り出すことが出来る。なお、その際、前記ブレーキ兼ロック装置21も容易に取り外しが出来る構成になっている。
【0057】
幹線ケーブル4の下端を目的の階に引き入れた後、当該幹線ケーブル4を各ケーブル速度制御装置7から外すが、この取り外し作業は各ケーブル速度制御装置7ごとに順に行うため、他のケーブル速度制御装置7のブレーキ兼ロック装置21により、幹線ケーブル4を確実に把持しておくことができ、前記取り外し作業等を安定して行うことができる。
【0058】
図10は前記ケーブル速度制御装置7のブレーキ兼ロック装置の他の例を示す正面図、図11はこの他のブレーキ兼ロック装置の概略構成図を示し、(A)図は側面図、(B)図は要部断面図である。
【0059】
この場合、ブレーキ兼ロック装置24は、一方のキャタピラ7aの両側のフレーム18に、他方のキャタピラ7bを内側に入れて、断面コの字型の外フレーム25の両側脚片25aの先端を固定し、当該外フレーム25の基部25bの中央にネジ孔25cを設け、当該ネジ孔25cに、一端にハンドル26を有するボルト27を螺着して貫通させている。また、この外フレーム25の内側で、前記外フレーム25より小幅で細長い断面コの字型の内フレーム28の両側脚片28aを他方のキャタピラ7bの両側のフレーム18に固定し、この内フレーム28の基部28bに、前記ボルト27の他端に回転自在に設けた当接座29を当接自在となっている。
【0060】
従って、図10に示すように、一方のキャタピタ7aに対して他方のキャタピラ7bが自重により下方にぶら下がっても、内フレーム28は長いため、外フレーム25内のボルト27の当接座29は内フレーム28の基部28bを押圧し、二つのキャタピラ7a、7bの各無端ベルト19を密着度を制御できる。
【0061】
また、前記幹線ケーブル4が分岐ケーブル4´の場合は、図12に示すように、ケーブルの外周に大径の分岐部4´aを有するため、前記ケーブル速度制御装置7を二台夫々連結し、上方のケーブル速度制御装置7のケーブルラック8に吊り下げているキャタピラ7aと、下方のケーブル速度制御装置7のキャタピラ7aのフレーム18相互をピン31等で回転自在に連結する。なお、図12において、分岐ケーブル4´の下端にはケーブルグリップ32を介してパイロットケーブル33が接続されている。
【0062】
これにより、図12の(A)図に示すように、分岐ケーブル4´の大径の分岐部4´aが上方のケーブル速度制御装置7の二つのキャタピラ7a、7bの間にきて、二つのキャタピラ7a及び7bの間が開いても、下方のケーブル速度制御装置7の二つのキャタピラ7a、7bが分岐ケーブル4を挟持しているため、当該ケーブル速度制御装置7により分岐ケーブル4´の落下速度は制御できる。そして、図12の(B)図に示すように、分岐部4´aが上下のケーブル速度制御装置7の間に来ると、上下の各ケーブル速度制御装置7のキャタピラ7a、7bは分岐ケーブル4´を挟持する。そして、図12の(C)図のように、分岐部4´aが下方のケーブル速度制御装置7に来ると、当該ケーブル速度制御装置7のキャタピラ7a、7bは間をあけているが、上方のケーブル速度制御装置7の二つのキャタピラ7a、7bは分岐ケーブル4´を挟持しているので、上方のケーブル速度制御装置7で分岐ケーブル4´の落下速度は制御できる。
【0063】
これは、分岐ケーブル4´でなくとも、幹線ケーブル4の外周が一定でなく、大径部を有するものであれば、この様に一定間隔ごとに設置するケーブル速度制御装置7を夫々二台の連結式にすれば、幹線ケーブル4の落下速度の制御を確実にできる。
【0064】
また、前記ケーブル速度制御装置7のブレーキ装置は前記ディスクブレーキ30の他に、例えば、特開平8−200408号に示すような遠心ブレーキでもよい。この遠心ブレーキはローラ17の回転が一定速度以上になると、ブレーキシューが遠心力で広がってローラ17の内周に当たり、ローラ17の回転を一定の速度に抑えるものである。
【0065】
また、例えば、図13に示すように、前記ケーブル速度制御装置7の各キャタピラ7a、7bのローラ17と一体に回転する羽根車34を、流体循環路35内に設け、当該流体循環路35に油等の動粘度の高い流体36を充満させ、当該流体36は前記羽根車34の回転により流体循環路35内を流れ、当該流体循環路35に設けたオリフィス37やバルブ(図示省略)等で前記流体36は流量調整され、当該流体36により前記羽根車34及び前記ローラ17の回転が制御されるものでもよい。この場合、作業員は前記張力計9の張力値を見ながら前記オリフィス37の径を調整したり、又はバルブで開度具合を調整することにより、キャタピラ7a又は7bのローラ17の回転速度を調整することができる。
【0066】
また、図14に示すように、前記ケーブル速度制御装置7の各キャタピラ7a、7bのローラ17と一体に回転するモータ38を設け、当該モータ38の出力回路39に可変抵抗器40を設けて前記モータ38を発電機として作動させて出力回路39に回生電流を流し、前記可変抵抗器40により負荷調整して前記モータ38の回転抵抗を制動力としてモータ38及びローラ17の回転を一定の回転速度に制御する、回生ブレーキを利用するものでもよい。この場合、作業員は前記張力計9の張力値を見ながら可変抵抗器40を操作してキャタピラ7a又は7bのローラ17の回転速度を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】この発明の実施例1の工法の概略構成図である。
【図2】この発明の実施例1に使用する速度制御装置付きの繰り出しドラム装置の概略側面図である。
【図3】この発明の実施例1に使用するケーブル速度制御装置に幹線ケーブルを通した斜視図である。
【図4】この発明の実施例1に使用するケーブル速度制御装置に幹線ケーブルを通した実際の使用状態を示す側面図である。
【図5】この発明の実施例1に使用するケーブル把持御装置に幹線ケーブルを通した側面図である。
【図6】この発明の実施例1に使用するケーブル速度制御装置のキャタピラのローラと無端ベルトの噛み合いを示す概略構成図である。
【図7】この発明の実施例1に使用するケーブル速度制御装置のブレーキ装置の構成図である。
【図8】この発明の実施例1に使用するケーブル速度制御装置のキャタピラの無端ベルトの好ましい例を示す説明図であり、(A)図は斜視図、(B)図は二つのキャタピタの無端ベルトで幹線ケーブルを挟持している断面図である。
【図9】この発明の実施例1に使用するケーブル速度制御装置のフレームとリンク片との着脱自在な構成を示す図で、(A)図はフレームの正面図、(B)図はフレームの鉤型の孔にリンク片のピンが挿通された断面図、(C)図はフレームの鉤型の孔の大径孔部にリンク片のピンが位置した状態の断面図である。
【図10】この発明の実施例1に使用するケーブル速度制御装置のブレーキ兼ロック装置の他の例を示す正面図である。
【図11】この発明の実施例1に使用するケーブル速度制御装置の他のブレーキ兼ロック装置の概略構成図であり、(A)図は側面図、(B)図は要部断面図である。
【図12】この発明の実施例1に使用する幹線ケーブルが分岐ケーブルの場合のケーブル速度制御装置を2台連結して使用する例を示す構成図である。
【図13】この発明の実施例1に使用するケーブル速度制御装置のブレーキ装置の他の例を示す概略構成図である。
【図14】この発明の実施例1に使用するケーブル速度制御装置のブレーキ装置のさらに他の例を示す概略構成図である。
【図15】従来の高層ビルにおける垂直幹線の延線工法を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0068】
1 高層ビル 2 配線シャフト
3 電気室 4 幹線ケーブル
5 速度制御装置付きの繰り出しドラム装置
6 金車 7 ケーブル速度制御装置
8 ケーブルラック 9 張力計
10 分電盤 11 ケーブル用ドラム
12 ワイヤー用ドラム 13 油圧ウインチ
14 ワイヤー 15 リールワインダー
16 支軸 17 ローラ
17a 外周歯 18 フレーム
19 無端ベルト 19a 内周歯
19b こま 19c 溝
20 リンク片 21 ブレーキ兼ロック装置
21a 短片 21b 短片
22 ピン 23 鉤型の孔
23a 大径孔部 24 ブレーキ兼ロック装置
25 外フレーム 25a 両側脚片
25b 基板 25c ネジ孔
26 ハンドル 27 ボルト
28 内フレーム 28a 両側脚片
28b 基部 29 当接座
30 ディスクブレーキ 30a ディスク
30b ブレーキ部材 31 ピン
32 ケーブルグリップ 33 パイロットワイヤ
34 羽根車 35 流体循環路
36 流体 37 オリフィス
38 モータ 39 出力回路
40 可変抵抗器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
中高層ビルの垂直幹線の延線工法において、高層階に幹線ケーブルを搬入し、当該個所から下方の階を貫いて設けられた配線シャフトに前記幹線ケーブルを、速度制御装置付きの繰り出しドラム装置を用いて速度を制御しながら繰り出し、落下させ、当該配線シャフト内に当該配線シャフトに沿って間隔をあけて複数設けたケーブル速度御装置に幹線ケーブルを通して当該ケーブル速度制御装置で当該幹線ケーブルの落下速度を制御し、これにより当該幹線ケーブルの自重による負荷を各ケーブル速度制御装置で分散して受けながら前記配線シャフトの上から下方の各階に延線することを特徴とする、垂直幹線の延線工法。
【請求項2】
前記繰り出された幹線ケーブルの張力値を測定、監視しながら、一定範囲の張力値となるように前記各ケーブル速度制御装置の速度制御を行うことを特徴とする、前記請求項1に記載の垂直幹線の延線工法。
【請求項3】
前記速度制御装置付きの繰り出しドラム装置は、幹線ケーブルを巻き付けたケーブル用ドラムとワイヤーを巻きつけるワイヤー用ドラムとを、各ドラムに設けた歯車で相互に噛み合って回転する構成とし、前記ワイヤー用ドラムにワイヤーをウインチで巻きつけることにより、当該ウインチで幹線ケーブルの繰り出し速度を制御しながら、前記ケーブル用ドラムから幹線ケーブルが繰り出すことを特徴とする、請求項1又は2に記載の垂直幹線の延線工法。
【請求項4】
前記ケーブル速度制御装置は、複数のローラの外周に巻き付けた無端ベルトから成るキャタピラを二つ相対向して設け、各キャタピラの各ローラの支持軸の両端を夫々連結したフレームの相応するフレーム間を複数のリンク片で回転自在に接続して二つのキャタピラが密着、離反自在とし、一方のキャタピラを前記配線シャフトに支持し、かつ、前記キャタピラの少なくとも一つのローラに速度制御ブレーキを設け、前記幹線ケーブルを二つのキャタピラの間に挟んで前記無端ベルトを回転させながら落下させ、当該無端ベルトの回転速度を前記速度制御ブレーキにより制御して前記幹線ケーブルの落下速度を制御することにより幹線ケーブルの自重による負荷を当該ケーブル速度制御装置で受けながら幹線ケーブルを落下させることを特徴とする、前記請求項1、2又は3のいずれかに記載の垂直幹線の延線工法。
【請求項5】
前記ケーブル速度制御装置のキャタピラのフレームのうち、前記配線シャフトに支持されていない方のフレームの下部に、荷重体を取り付けたことを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の垂直幹線の延線工法。
【請求項6】
前記荷重体は、中高層ビルの下層階の配線シャフトに支持されるケーブル速度制御装置のキャタピラのフレームに取り付ける荷重体ほど重くしたことを特徴とする、請求項5に記載の垂直幹線の延線工法。
【請求項7】
前記配線シャフトに支持されるケーブル速度制御装置が2台連結して設けられ、上方のケーブル速度制御装置の、支持側のキャタピラのフレームの下端と下方のケーブル速度制御装置の相応するキャタピラのフレームの上端とを相互に回転自在に接続したことを特徴とする、請求項1ないし6のいずれかに記載の垂直幹線の延線工法。
【請求項8】
幹線ケーブルを巻き付けたケーブル用ドラムとワイヤーを巻きつけるワイヤー用ドラムとを、各ドラムに設けた歯車で相互に噛み合って連動回転する構成とし、前記ワイヤー用ドラムにワイヤーをウインチで巻きつけることにより、当該ウインチで幹線ケーブルの繰り出し速度を制御しながら、前記ケーブル用ドラムから幹線ケーブルを繰り出し、また、前記ワイヤー用ドラムからワイヤーを前記ウインチで繰り出すことにより前記ケーブル用ドラムに幹線ケーブルを巻きつけることができることを特徴とする、垂直幹線の延線工法に使用する速度制御装置付きの繰り出しドラム装置。
【請求項9】
複数のローラの外周に巻き付けた無端ベルトから成るキャタピラを二つ相対向して設け、各キャタピラの各ローラの支軸の両端を夫々連結したフレームの相応するフレーム間を複数のリンク片で回転自在に接続して二つのキャタピラが密着、離反自在とし、一方のキャタピラを構造物に支持し、かつ、前記キャタピラの少なくとも一つのローラに速度制御ブレーキを設け、前記幹線ケーブルを二つのキャタピラの間に挟んで前記無端ベルトを回転させながら落下させ、当該無端ベルトの回転速度を前記速度制御ブレーキにより制御する構成であることを特徴とする、垂直幹線の延線工法に使用するケーブル速度制御装置。
【請求項10】
前記二つのキャタピラにより幹線ケーブルを挟持し、当該挟持状態をロックするブレーキ兼ロック装置を設けたことを特徴とする、請求項9に記載の垂直幹線の延線工法に使用するケーブル速度制御装置。
【請求項11】
前記ケーブル速度制御装置の二つのキャタピラをつなぐ複数のリンク片が、一方のキャタピラのフレームに着脱自在に係止されていることを特徴とする、請求項9又は10に記載の垂直幹線の延線工法に使用するケーブル速度制御装。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−188563(P2011−188563A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48448(P2010−48448)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000141060)株式会社関電工 (115)