説明

主として瓦礫を用いたふとん篭

【課題】 耐候性がよく、摩擦による強度低下の少ない瓦礫を用いたふとん篭を提供する。
【解決手段】 このふとん篭は、方形の枠線内に網が張設されてなる。網は合撚糸を経糸1及び緯糸2として編織されてなる。合撚糸は複数本のポリエステルマルチフィラメント糸よりなる。また、ポリエステルマルチフィラメント糸は複数本のポリエステル長繊維よりなる。ポリエステル長繊維は、芯成分が高融点ポリエステルで鞘成分が低融点ポリエステルよりなる芯鞘型複合長繊維である。高融点ポリエステル中にはカーボンブラックが含有されている。経糸及び緯糸を構成する合撚糸は低融点ポリエステルの溶融固化によって全体が一体化されている。さらに、合撚糸の交点、すなわち経糸と緯糸の交点も低融点ポリエステルの溶融固化によって接着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として瓦礫を用いたふとん篭に関し、特に瓦礫を仮置きしておくためのふとん篭であって、仮置き後は、従来のふとん篭と同様に、海洋構造物の根固め工や河川又は海岸の護岸工等に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
東日本大震災の津波の被害により大量の瓦礫が生じ、現在、この瓦礫の撤去作業が行われている。しかしながら、瓦礫が大量であるため、道路脇に山積みとなったままのところも多く、撤去作業が順調に進んでいない。
【0003】
瓦礫は最終的に、焼却可能なものは焼却処分されるのであるが、焼却不能なものは埋立処理等が考えられている。このようなことから、本発明者等は、瓦礫をふとん篭に用いる栗石等の石材の代わりに用いることを考えた。
【0004】
しかしながら、瓦礫が大量であるため、大量のふとん篭が得られる。ふとん篭は根固め工や護岸工等の工事毎に一定量用いられるから、大量のふとん篭が一挙に消費されてしまうことはない。したがって、瓦礫を使用したふとん篭は、クレーン車等を使って吊り上げ及び移動させ、適当な場所に仮置きしておくことになる。そして、工事に消費されるときに、再びクレーン車等を使って吊り上げ及び移動させることになる。
【0005】
したがって、瓦礫を用いたふとん篭には、以下の如き特性が要求されると考えられる。
(1)仮置きしておく期間は数年に亙ると考えられるので、ふとん篭の網に耐候性が要求される。
(2)クレーン車による吊り上げは数度に亙り、しかも、瓦礫は雑多な形状のものの集合体であるから、ふとん篭の網に対して摩擦が繰り返される。したがって、ふとん篭の網は摩耗強度に優れたものが要求される。
(3)工事現場のクレーン車だけではなく、種々のクレーン車による吊り上げが数度に亙るため、一般のクレーン車でも吊り下げられるように、ふとん篭の網は重量の軽いものが要求される。
【0006】
従来のふとん篭は、方形の枠線に金網又はメッシュ状編織物よりなる網を張設したものが用いられていた(特許文献1)。しかしながら、ふとん篭の網が金網であるとその重量が重く、瓦礫を用いたふとん篭として適当ではない。メッシュ状編織物よりなる網は、ポリエステルマルチフィラメント糸やポリアミドマルチフィラメント糸を用いて編織されたものであるため、その重量は軽い。しかし、耐候性が不十分で、数年後にはその強度が低下するという欠点があった。その上に、瓦礫は雑多な形状をしているので、尖った形状の瓦礫の摩擦によって、網が切断してしまうということもあった。
【0007】
【特許文献1】特許第3394398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明はポリエステルマルチフィラメント糸を用いながら、耐候性がよく、しかも瓦礫の摩擦によって切断しにくい網を使用したふとん篭を提供しようというものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、方形の枠線内に網が張設されてなるふとん篭において、該網は合撚糸を経糸及び/又は緯糸として編織されてなり、該合撚糸は複数本のポリエステルマルチフィラメント糸よりなり、該ポリエステルマルチフィラメント糸は複数本のポリエステル長繊維よりなり、該ポリエステル長繊維は、芯成分が高融点ポリエステルで鞘成分が低融点ポリエステルよりなる芯鞘型複合長繊維であって、該高融点ポリエステル中にはカーボンブラックが含有されており、前記合撚糸は該低融点ポリエステルの溶融固化によって全体が一体化されていると共に前記経糸及び緯糸の交点も該低融点ポリエステルの溶融固化によって接着されていることを特徴とする主として瓦礫を用いたふとん篭に関するものである。
【0010】
本発明に係るふとん篭の形状は略直方体である。そして、略直方体の各面はいずれも方形の枠線内に網が張設されてなる。各面が接する各辺では、二つの枠線がコイルに挿入され結合されている。また、各面には補強のために、適宜補強線が挿入されている。以上のようにして、略直方体のふとん篭本体が形成されている。
【0011】
本発明では、網として、合撚糸を経糸又は緯糸に用いた編織物が用いられる。織物としてはメッシュ状となるような組織であれば、任意の組織が用いられる。一般的には、からみ織組織が用いられる。からみ織組織とは、2本の経糸間に1本以上(複数本を束ねて1本としてもよい。)の緯糸を絡み止めた組織である。からみ織組織を採用すると、緯糸が確実に経糸に絡み止めされているため、経糸と緯糸の交点での目ずれが生じにくく好ましい。また、編物としてもメッシュ状となる組織であれば、任意の組織が用いられる。一般的には、ループを形成しながら編み込んだ経糸に、緯糸を挿入してなるラッセル編組織を用いるのが好ましい。これも、経糸のループ中に緯糸が挿入されているので、経糸と緯糸の交点での目ずれが生じにくく好ましい。
【0012】
合撚糸は、複数本のポリエステルマルチフィラメント糸を撚って得られたものである。一般的に、3〜20本のポリエステルマルチフィラメント糸を撚り数50〜100回/mで撚って得られたものである。
【0013】
ポリエステルマルチフィラメント糸は、複数本のポリエステル長繊維からなる。一般的に、50〜200本のポリエステル長繊維を束ねて適宜の撚り数で撚って、又は撚らずに(無撚)得られたものである。ポリエステルマルチフィラメント糸の繊度は、500〜2000デシテックス程度である。
【0014】
ポリエステル長繊維は、芯成分が高融点ポリエステルで鞘成分が低融点ポリエステルよりなる芯鞘型複合長繊維である。芯成分の融点は200℃以上で鞘成分の融点は200℃未満であり、一般的に50℃以上の融点差があるものが用いられる。芯成分と鞘成分の質量比は任意であるが、芯成分:鞘成分=1〜3:1程度である。
【0015】
ポリエステル長繊維の芯成分にはカーボンブラックが含有されている。カーボンブラックの含有率は、0.1〜10質量%程度である。なお、一般的に、鞘成分にはカーボンブラックは含有されていない。この理由は、鞘成分は溶融固化して接着成分となるためである。すなわち、カーボンブラックが溶融固化による接着性を阻害し、接着力が低下する恐れがあるからである。
【0016】
網を構成している合撚糸は、ポリエステル長繊維の鞘成分によって全体が一体化している。すなわち、ポリエステル長繊維相互間及びポリエステルマルチフィラメント糸相互間は、鞘成分の溶融固化によって接着されているのである。また、網の経糸及び緯糸の交点においても、合撚糸相互間が鞘成分の溶融固化によって接着されている。鞘成分を溶融させるには、鞘成分を構成している低融点ポリエステルの融点以上に加熱すればよい。そして、その後冷却すれば、鞘成分は溶融固化する。
【0017】
本発明に係るふとん篭は、上記した網が枠線内に張設されてなるふとん篭本体内に、瓦礫が収納されてなるものである。もちろん、瓦礫以外にも、従来の栗石等の石材が収納されてふとん篭として用いられてもよい。
【発明の効果】
【0018】
(1)ふとん篭の網を構成している繊維は芯成分にカーボンブラックが含有されている。したがって、屋外にふとん篭を野積みしておいても、紫外線をカーボンブラックが吸収する。よって、合撚糸の内部まで紫外線が到達しにくく、合撚糸は耐候性に優れるという効果を奏する。
(2)ふとん篭の網を構成している合撚糸は、複数のポリエステルマルチフィラメント糸が束ねられたものであり、またポリエステルマルチフィラメントは複数のポリエステル長繊維が束ねられたものであり、かつ、それらが鞘成分の溶融固化によって一体化されたものである。そして、さらに合撚糸間の交点(経糸及び緯糸の交点)も、鞘成分の溶融固化によって接着されてなるものである。したがって、瓦礫が幾度となく擦れて、部分的に損傷したとしても、網の引張強度が低下しにくいという効果を奏する。
(3)ふとん篭の網は、比重が約1.4のポリエステルを主体とするものであり、比重が約7.9のステンレスに比べて、重量が軽いという効果を奏する。
【0019】
したがって、本発明に係るふとん篭は、段落0005に記載した要求特性を満足するものであり、瓦礫を用いたふとん篭として有益なものである。
【実施例】
【0020】
以下実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。本発明は、ふとん篭の網が特定の合撚糸を全体として一体化されたものであるため、瓦礫を用いたふとん篭に要求される性能を満足できたものとして解釈されるべきである。
【0021】
実施例1
芯成分としてカーボンブラックが0.6質量%含有されている高融点ポリエステル(融点260℃)、鞘成分として低融点共重合ポリエステル(融点160℃)が、芯成分:鞘成分=3:1の質量比で配されているポリエステル長繊維96本を束ねて、繊度1100デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸を準備した。次に、経糸として以下の(a)、(b)及び(c)を準備した。経糸(a)及び(b)は、1本のポリエステルマルチフィラメント糸である。経糸(c)は、4本のポリエステルマルチフィラメント糸を束ねた無撚糸である。緯糸(挿入糸)として、19本のポリエステルマルチフィラメント糸を束ねて、撚り数40回/mで撚った合撚糸を準備した。そして、8ゲージのラッセル編み機を使用して、経糸(a)、(b)及び(c)を9in27outで図2の組織にて編み込みながら、緯糸を4コース打ち込み後14コース空けるサイクルである18コース1レピートで挿入して、図1に示した形状のラッセル編物を得た。
【0022】
このラッセル編物を180℃で2分間熱処理して網を得た。この網は、経糸、緯糸及び経糸と緯糸の交点が、低融点共重合ポリエステルの溶融固化によって、全体として一体化されてなるものであった。この網は耐候試験の結果、30年経過後においても、経方向の強度保持率は82%であり、緯方向の強度保持率は73%であった。また、この網は摩擦試験の結果、サンドペーパーで1000回摩擦した後であっても、経方向の強度保持率は90%であった。したがって、この網を方形の枠線内に張設してふとん篭を得た場合、耐候性に優れ、強度低下も少ないものであることが分かり、瓦礫を用いたふとん篭として好適である。
【0023】
実施例2
実施例1で用いたポリエステルマルチフィラメント糸を準備した。次に、経糸として、4本のポリエステルマルチフィラメント糸を束ねて、撚り数80回/mで撚った合撚糸を準備した。また、緯糸として、3本のポリエステルマルチフィラメント糸を束ねて、撚り数80回/mで撚った合撚糸を準備した。そして、2本の経糸間に、3本の緯糸を束ねたものを絡み止めたからみ織組織にて、経糸密度6.8本/吋及び緯糸密度9.4本/吋で織成してメッシュ状織物を得た。このメッシュ状織物を実施例1と同一の条件で熱処理して、網を得た。この網の耐候試験及び摩擦試験の結果は、実施例1の場合と同様であった。この網を用いてふとん篭を得た場合、耐候性に優れ、強度低下も少ないものであることが分かり、瓦礫を用いたふとん篭として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1で得られた網の平面図である。
【図2】実施例1に係る網を得る際の、経糸の編組織図である。
【符号の説明】
【0025】
1 経糸
2 緯糸(挿入糸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方形の枠線内に網が張設されてなるふとん篭において、該網は合撚糸を経糸及び/又は緯糸として編織されてなり、該合撚糸は複数本のポリエステルマルチフィラメント糸よりなり、該ポリエステルマルチフィラメント糸は複数本のポリエステル長繊維よりなり、該ポリエステル長繊維は、芯成分が高融点ポリエステルで鞘成分が低融点ポリエステルよりなる芯鞘型複合長繊維であって、該高融点ポリエステル中にはカーボンブラックが含有されており、前記合撚糸は該低融点ポリエステルの溶融固化によって全体が一体化されていると共に前記経糸及び緯糸の交点も該低融点ポリエステルの溶融固化によって接着されていることを特徴とする主として瓦礫を用いたふとん篭。
【請求項2】
網がからみ織組織のメッシュ状織物である請求項1記載の主として瓦礫を用いたふとん篭。
【請求項3】
網がラッセル編組織のメッシュ状編物である請求項1記載の主として瓦礫を用いたふとん篭。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−28967(P2013−28967A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166105(P2011−166105)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(501381697)松井金網工業株式会社 (5)
【出願人】(592197315)ユニチカトレーディング株式会社 (84)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】