説明

主鎖中にフラン環を有するポリエステル化合物を多価マレイミドで架橋した高分子化合物

【課題】主鎖中にフラン環を有するポリエステル化合物を多価マレイミド化合物で架橋した高分子化合物を提供する。
【解決手段】2,5−ビスヒドロキシメチルフランとジカルボン酸をエステル化反応させてポリエステル化合物を生成すること、
該ポリエステル化合物中のフラン環と多価マレイミド化合物中のマレイミド基とを架橋させること
を含む、高分子化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主鎖中にフラン環を有するポリエステル化合物を多価マレイミドで架橋した高分子化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の汎用プラスチックの多くは石油資源を原料として作られている。しかし、天然資源には限りがあり、特に石油資源はその枯渇が危惧されている。そのため、石油資源に頼らないプラスチックの開発が求められている。
【0003】
現在、植物系バイオマスからのプラスチックとしては、ポリ乳酸を用いたものが開発され、既に実用化されている。一方、木材系のバイオマスは、未利用または焼却処分されるものがかなりの割合で存在するので、これを原料として利用する余地がある。
【0004】
木材系バイオマスからのプラスチックとしては、本発明者が木材系バイオマスを熱分解、精製することによって得られるヒドロキシメチルフルフラール(HMF)を原料としたポリエステル化合物の合成を報告している(非特許文献1)。
【0005】
非特許文献1では、HMFは水素化ナトリウムにより2,5−ビスーヒドロキシフラン(BHF)に還元され、このBHFをジオール成分として、ジカルボン酸であるコハク酸、フマル酸またはマレイン酸と重縮合することにより主鎖にフラン環を有するポリエステル化合物を合成している。
【0006】
本発明は、さらにこのフラン環を有するポリエステル化合物をビスマレイミド化合物で架橋させることにより高分子化合物を作製することに成功した。そして、この高分子化合物を加熱することにより架橋を解離させて、元のポリエステル化合物とビスマレイミド化合物分解することに成功した。
【非特許文献1】高分子論文集、Vol.62, No.7, pp.316-320 (Jul., 2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、木材系バイオマスを原料に用い、リサイクル可能なプラスチック材料を提供することを目的とする。
本発明は、主鎖中にフラン環を有するポリエステル化合物を多価マレイミドで架橋した高分子化合物を提供することを目的とする。
本発明は、主鎖中にフラン環を有するポリエステル化合物を多価マレイミドで架橋した高分子化合物を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、
2,5−ビスヒドロキシメチルフランとジカルボン酸をエステル化反応させてポリエステル化合物を生成すること、
該ポリエステル化合物中のフラン環と多価マレイミド化合物中のマレイミド基とを架橋させること
を含む、高分子化合物の製造方法に関する。
【0009】
(2)本発明は、
ジカルボン酸が、式(I):
【0010】
【化7】

【0011】
[式中、Rは、2重結合を含んでも含まなくてもよい炭素数が1〜18の2価で直鎖の炭化水素基、基−(CH=CH)n1−、またはフェニレンであり、ここでn1は1〜6の整数である]
で示される化合物であり、そして、ポリエステル化合物が、式(II):
【0012】
【化8】

【0013】
[式中、mは1〜1000の整数であり、Rは、先に記載したとおりである]
で示される化合物である、上記(1)に記載の高分子化合物の製造方法に関する。
【0014】
(3)本発明は、
多価マレイミド化合物が、式(III):
【0015】
【化9】


[式中、Rは、非置換またはC〜Cアルキルで置換された基−(CHn2−、非置換またはC〜Cアルキルで置換されたフェニレン、または基−X−Y−X−であり、
ここで、
n2は1〜10の整数であり、
Xは、非置換またはC〜Cアルキルで置換されたフェニレン、または
【0016】
【化10】

【0017】
であり、
Yは、非置換またはC〜Cアルキルで置換された基−(CHn3−、−O−、−SO−、または基
【0018】
【化11】

【0019】
であり、
n3は1〜6の整数である]
で示されるビスマレイミド化合物、または式(IV):
【0020】
【化12】

【0021】
[式中、n4は0〜3の整数である]
で示されるポリフェニルメタンマレイミド化合物である、上記(1)または(2)に記載の高分子化合物の製造方法に関する。
【0022】
(4)本発明は、
上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の製造方法で得られる、高分子化合物に関する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の化合物の原料は、木材系バイオマスに由来するので、廃棄処分される木材系バイオマスを有効利用することが出来る。また、本発明の高分子化合物は、熱により架橋を解離して元の材料に戻すことができるので、利用後に分解してリサイクルすることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明で用いる、2,5−ビスヒドロキシメチルフラン(BHF)とは、次の化学式:
【0025】
【化13】

【0026】
の化合物を意味し、2,5−ビスヒドロキシメチルフラン(BHF)を得る方法は、市場から入手しても自分で調製してもよい。自分で調製して2,5−ビスヒドロキシメチルフラン(BHF)を得る方法には、スキーム1に示すように5−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)を還元して得る方法があるが、2,5−ビスヒドロキシメチルフラン(BHF)を得る方法であれば限定されない。
【0027】
【化14】

【0028】
なお、5−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF):
【0029】
【化15】

【0030】
は、市場より入手しても自分で調製してもよい。
【0031】
限定されない例として、5−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)は、セルロースの超臨界水による高圧熱分解により得てもよい(K. Ehara and S. Saka, Cellulose, 2002, 9, 301)。また、もみ殻を、回分式反応器を用いて260℃で処理して得てもよい(K. Mochizuki, A Sakoda, and M. Suzuki, Adv. Environmental Res., 2003, 7, 421)。
【0032】
また、セルロースは、市場より入手しても自分で調製してもよい。限定されない例として、セルロースは、木材を水蒸気爆砕(steam explosion)やマイクロウエーブにより、そのリグニンのネットを破壊することで得てもよい(木谷収著,バイオマス−生物資源と環境−,コロナ社,2004)。
【0033】
本発明で用いる、ジカルボン酸とは、2つのカルボキシル基を有する化合物であれば限定されないが、好ましくは、式(I):
【0034】
【化16】

【0035】
[式中、Rは、2重結合を含んでも含まなくてもよい非置換の2価で直鎖の炭化水素基、非置換の基−(CH=CH)n1−、または非置換のフェニレン、好ましくは2重結合を含んでも含まなくてもよい非置換の2価で直鎖の直鎖の炭化水素基または非置換の基−(CH=CH)n1−であり、ここで、2重結合を含んでも含まなくてもよい非置換の2価で直鎖の炭化水素基の炭素数は1〜18、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜6の整数であり、2重結合の数は、1〜16、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6の整数であり、n1は、1〜6、好ましくは1〜3の整数である]
で示される化合物である。
【0036】
本発明で用いる、2重結合を含まない非置換の2価で直鎖の炭化水素基を有するジカルボン酸の例は、マロン酸(Malonic Acid)、コハク酸(succinic acid)、グルタル酸(Glutaric Acid)、アジピン酸(Adipic Acid)、セバシン酸(Sebacic Acid)、ピメリン酸(Pimelic Acid)、スベリン酸(Suberic Acid)、アゼライン酸(Azelaic Acid)、1,9−ノナンジカルボン酸(1,9-Nonanedicarboxylic Acid)、ドデカン二酸(Dodecanedioic Acid)、トリデカン2酸(Tridecanedioic Acid)、テトラデカン二酸(Tetradecanedioic Acid)、ペンタデカン二酸(Pentadecanedioic Acid)、ヘキサデカン二酸(Hexadecanedioic Acid)、ヘプタデカン二酸(Heptadecanedioic Acid)、オクタデカン二酸(Octadecanedioic Acid)、ノナデカン二酸(Nonadecanedioic Acid)、エイコサン二酸(Eicosanedioic Acid)などである。2重結合を含む非置換の2価で直鎖の炭化水素基を有するジカルボン酸の例は、トラウマチン酸(traumatic acid)などである。非置換の基−(CH=CH)n1−を有するジカルボン酸の例は、マレイン酸(maleic acid)、フマル酸(fumaric acid)などである。非置換のフェニレンを有するジカルボン酸の例は、テレフタル酸(terephthalic acid)などである。より好ましいジカルボン酸の例は、マロン酸(Malonic Acid)、コハク酸(succinic acid)、グルタル酸(Glutaric Acid)、アジピン酸(Adipic Acid)、セバシン酸(Sebacic Acid)、ピメリン酸(Pimelic Acid)、スベリン酸(Suberic Acid)、トラウマチン酸(traumatic acid)、マレイン酸(maleic acid)、フマル酸(fumaric acid)、テレフタル酸(terephthalic acid)などである。特に好ましいジカルボン酸の例は、マロン酸(Malonic Acid)、コハク酸(succinic acid)、グルタル酸(Glutaric Acid)、アジピン酸(Adipic Acid)、セバシン酸(Sebacic Acid)、ピメリン酸(Pimelic Acid)、スベリン酸(Suberic Acid)などである。これらのジカルボン酸は市場より入手できる。
【0037】
本発明で用いられる、エステル化反応とは、2,5−ビスヒドロキシメチルフラン(BHF)中のヒドロキシル基と、ジカルボン酸中のカルボキシル基との間でエステル結合が生じる反応を意味する。
【0038】
ジカルボン酸が式(I)の化合物で示される場合、2,5−ビスヒドロキシメチルフラン(BHF)とジカルボン酸のエステル化反応は、スキーム2のように示される。
【0039】
【化17】

【0040】
そして、本発明で用いられる、ポリエステル化合物とは、2,5−ビスヒドロキシメチルフラン(BHF)中のヒドロキシル基とジカルボン酸のカルボキシル基がエステル結合により重合した化合物を意味する。
【0041】
ジカルボン酸が、式(I)の化合物で示される場合、ポリエステル化合物は、式(II):
【0042】
【化18】

【0043】
[式中、mは1〜1000、好ましくは2〜1000、より好ましくは10〜1000の整数であり、Rは、先に記載したとおりである]
で示される。
【0044】
本発明で用いられる、ポリエステル化合物の生成に参加する2,5−ビスヒドロキシメチルフラン(BHF)およびジカルボン酸の数は、2,5−ビスヒドロキシメチルフラン(BHF)が1以上であり、ジカルボン酸が1以上であれば、限定されない。よって、本発明のポリエステル化合物とは、1以上の2,5−ビスヒドロキシメチルフラン(BHF)と1以上のジカルボン酸がエステル結合して生成された化合物を意味する。
【0045】
本発明のポリエステル化合物の分子量は、1以上の2,5−ビスヒドロキシメチルフラン(BHF)と1以上のジカルボン酸がエステル結合して生成されたポリエステル化合物の分子量であれば限定されないが、好ましくは1×10〜1×10であり、より好ましくは3×10〜1×10であり、特に好ましくは3×10〜1×10である。
【0046】
2,5−ビスヒドロキシメチルフラン(BHF)とジカルボン酸を重合させてポリエステル化合物を合成する方法は、2,5−ビスヒドロキシメチルフラン(BHF)とジカルボン酸からなるポリエステル化合物を生じるエステル化反応であれば限定されない。反応に用いる、溶媒、触媒、縮合剤、反応温度、反応時間等の条件も、2,5−ビスヒドロキシメチルフラン(BHF)とジカルボン酸からなるポリエステル化合物を生じる条件であれば限定されない。
【0047】
本発明に用いる、多価マレイミド化合物とは、2つ以上のマレイミド基を有する化合物であれば限定されない。
【0048】
本発明に用いる、好ましい多価マレイミド化合物は、式(III):
【0049】
【化19】

【0050】
[式中、Rは、非置換またはC〜Cアルキルで置換された基−(CHn2−、非置換またはC〜Cアルキルで置換されたフェニレン、または基−X−Y−X−であり、好ましくは非置換またはC〜Cアルキルで置換された基−(CHn2−、または基−X−Y−X−であり、
ここで、
n2は1〜10の整数であり、
Xは、非置換またはC〜Cアルキルで置換されたフェニレン、または非置換の基
【0051】
【化20】

【0052】
であり、好ましくは非置換またはC〜Cアルキルで置換されたフェニレンであり、
Yは、非置換またはC〜Cアルキルで置換された基−(CHn3−、−O−、−SO−、または非置換の基
【0053】
【化21】

【0054】
であり、好ましくは、非置換またはC〜Cアルキルで置換された基−(CHn3−、−O−、または−SO−であり、より好ましくは非置換またはC〜Cアルキルで置換された基−(CHn3−であり、
n3は1〜6の整数、好ましく1〜3の整数である]
で示されるビスマレイミド化合物、または
式(IV):
【0055】
【化22】

【0056】
[式中、n4は0〜3の整数である]
で示されるポリフェニルメタンマレイミド化合物である。
【0057】
本発明に用いる、非置換またはC〜Cアルキルで置換された基−(CHn2−を有するビスマレイミド化合物の例は1,6−ビスマレイミドヘキサン、1,6’−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサンなどである。非置換またはC〜Cアルキルで置換されたフェニレンを有するビスマレイミド化合物の例はm−フェニレンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミドなどである。基−X−Y−X−を有するビスマレイミド化合物の例は4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、ビスフェノール A ジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、4,4’−ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4’−ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ベンゼンなどである。式(IV)を有するポリフェニルメタンマレイミドは、n4=0〜3の混合体であってもよい。混合体である場合の好ましいn4の平均は1.2程度である。より好ましい多価マレイミド化合物の例は、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、1,6−ビスマレイミドヘキサン、1,6’−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン、ポリフェニルメタンマレイミドである。これらの多価マレイミド化合物は、市場より入手できる。
【0058】
本発明で用いる、ポリエステル化合物中のフラン環と多価マレイミド化合物中のマレイミド基とを架橋させるとは、Diels-Alder反応により架橋させることを意味する。
【0059】
Diels-Alder反応とは、ジエンとジエノフィル(親ジエン)の[4+2]環付加反応であり、3つのπ結合を2つのσ結合と1つの新しいπ結合へ変換する付加環化反応である(Kloetzel, M. C. Org. React. 1948, 4, 1.;Holms, H. L. Org. React. 1948, 4, 60.;Martin, J. G. Chem. Rev. 1961, 61, 537.;Sustman, R. et al. Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1980, 19, 779.)。熱のみで反応が進行し、触媒がなくても反応が進行する。触媒としてルイス酸を添加する場合もある。
【0060】
また、このDiels-Alder反応では、endo体とexo体の二種類の立体異性体が生成する可能性があるが、本発明においては両方とも含まれる。
【0061】
ポリエステル化合物中のフラン環と多価マレイミド化合物中のマレイミド基との架橋反応は、Diels-Alder反応であれば、Diels-Alder反応の条件、例えば溶媒、反応温度、反応圧力、反応時間などは限定されない。
【0062】
本発明に用いる、ポリエステル化合物中のフラン環と多価マレイミド化合物中のマレイミド基との架橋は、フラン環とマレイミド基のすべてが架橋に参加していても、一部のみが架橋に参加していてもよい。
【0063】
よって、ポリエステル化合物中のフラン環と多価マレイミド化合物中のマレイミド基を架橋させるDiels-Alder反応に用いることのできるマレイミド基とフラン環との比率は、架橋ができればよいのでその比率は限定されないが、好ましくはマレイミド基:フラン環=0.01〜10:1、より好ましくは0.1〜5:1、特に好ましくは0.4〜2:1である。
【0064】
ポリエステル化合物中のすべてのフラン環とビスマレイミド化合物中のすべてのマレイミド基とが架橋に参加している場合、本発明の高分子化合物は、式(V):
【0065】
【化23】

【0066】
[式中、R、R、mは、先に記載したとおりである]
で示される化合物である。
【0067】
本発明の高分子化合物の形成に参加するポリエステル化合物および多価マレイミド化合物の数は、ポリエステル化合物が2以上であり、多価マレイミド化合物が1以上であれば、限定されない。したがって、本発明の高分子化合物とは、2以上のポリエステル化合物と1以上の多価マレイミド化合物が架橋して生成された化合物を意味する。
【0068】
また、本発明の高分子化合物の分子量は、2以上のポリエステル化合物と1以上の多価マレイミド化合物が架橋して生成された高分子化合物の分子量であれば限定されない。
【0069】
また、本発明の高分子化合物は、50℃〜300℃、好ましくは100℃〜200℃、より好ましくは120℃〜180℃において、高分子化合物中のフラン環とマレイミド基との架橋が解離して、元のポリエステル化合物と多価マレイド化合物に戻ることができる化合物である。この架橋の解離は、一部の解離であってもよい。
【0070】
高分子化合物の製造方法には、ポリエステル化合物中のフラン環と多価マレイド化合物中のマレイミド基とを架橋させる反応に加えて、生成した高分子化合物の精製の工程が含まれてもよい。
【0071】
以下に、実施例でさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されない。
【実施例】
【0072】
試薬
・4,4’-Bismaleimidodiphenylmethane(和名:4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン)
東京化成工業(B1109)
・1,6-BIsmaleimidohexane(和名:1,6−ビスマレイミドヘキサン)
東京化成工業(B1787)
【0073】
NMR測定は600MHzの日本電子(株)製JNM−ECP600スペクトロメータを用いた。また、別途記載がない場合を除いて、測定は室温(24℃)で行った。
【0074】
熱的特性を調べるために、示差走査熱量測定装置(DSC)による測定を行った。DSCはPerkin Elmer Co.製Pyris 1 DSC装置により測定を行った。
【0075】
分子量は島津製作所製LC10AD高速液体クロマトグラフ装置(カラム:東ソー製TSKgel Multipore HXL-M x 3)を用い、クロロホルムを溶媒としてポリスチレン換算で計算した。
【0076】
1.2,5−ビスヒドロキシメチルフラン(BHF)の合成
5−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)(ALDRICH社、製品番号H40807−5G)を還元し、2,5−ビスヒドロキシメチルフラン(BHF)を得た。
【0077】
具体的には、氷浴中、窒素気流下で、脱水メタノール(70ml)と1N水酸化ナトリウム水溶液(0.2ml)の混合物に、水素化ホウ素ナトリウム(6.1g,160mmol)を数回に分けて加え、しばらく攪拌し、溶液の温度を−10℃程度に保った。そこにHMF(10.3g,82mmol)を溶解した脱水メタノール(20ml)溶液をゆっくり滴下し、滴下ロートを5mlの脱水メタノールで洗浄し、反応溶液に加えた。TLCにより、原料のスポットが完全に消失したことを確認後、エバポレーターにより溶媒を除去した。酢酸エチルで抽出後、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後エバポレーターにより酢酸エチルを除去した。残渣をクロロホルムに溶解させ、数回再結晶を行い、BHFを白色結晶として得た。収量は、9.4g(89.4%)であった。重メタノールに溶かしてNMR測定をした結果を以下の図1と図2に示した。
【0078】
3.ポリエステル化合物の合成
3−1.BHFとコハク酸、フマル酸(FA)またはマレイン酸(MA)との重合によるポリエステル化合物の合成
上記2で合成したBHFとジカルボン酸との重合を行った。ジカルボン酸として、コハク酸(SA)、フマル酸(FA)、マレイン酸(MA)を選び、縮合剤としてジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、触媒としてジメチルアミノピリジン(DMAP)、溶媒として1,2−ジクロロエタン(DCE)を脱水した溶媒を使用した。
【0079】
始めにモノマーであるカルボン酸とBHF、DCC、DMAPを反応容器(丸底フラスコ)にいれ、アルミホイルで反応容器を遮光した。その後、脱気とアルゴン置換を十分に行い、アルゴン置換をした。溶媒をシリンジで加え、一日反応を行った。反応後、溶液を大量のメタノールに加え、激しく攪拌し、沈殿物を得た。遠心分離して得られた沈殿物をクロロホルムに溶かし、溶けないものがある場合には桐山ロートを用いてろ過を行い、得られたクロロホルムのろ液を、再び大量のメタノールで再沈殿を行った。計3回以上再沈殿の操作を繰り返し、得られた沈殿(ポリエステル化合物)をクロロホルムに溶かし、クロロホルム系GPCによって、分子量の測定を行った。数平均分子量MとそのMから計算される重合度DPを表1に示した。
【0080】
【表1】

【0081】
この結果、コハク酸を少量のジクロロエタンで反応した場合が数平均分子量M6300、重合度DP30と最も高分子量なものを得ることができた。
【0082】
また、No.2と3を比べると加熱せずに室温で行った方が高分子量のものを得ることができた。
【0083】
収率もNo.2の方が高収率であったので、加熱せず、少量の溶媒で反応を行うのが最も高分子量のものを効率よく得ることができたと言える。
【0084】
表1のNo.1で得られたポリエステル化合物を標準物質TMS(テトラメチルシラン、MERCK)入りの重クロロホルムに溶かして、H NMRと13C NMRを測定した結果を図3、図4に示した。
【0085】
以上のように、バイオマスから合成できるジオール体のBHFとジカルボン酸のコハク酸、フマル酸(FA)またはマレイン酸(MA)によりポリエステル化合物を固体として得ることができた。
【0086】
3−2.異なる縮合剤を用いたポリエステル化合物の合成
また、種々縮合剤による重合を行った。ペプチド合成の縮合剤として用いられる水溶性のカルボジイミドである1−エチル−3−(3−ジメチルアミドプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC))による重合を行った。EDCは副生成物であるウレアが水溶性であることから、生成物の精製が容易であるといわれている。BHF(514mg,4.0mmol)とコハク酸(465mg,4.0mmol)にEDC(1.54g,8.1mmol)とDMAP(23mg,0.2mmol)を加え、溶媒としてジクロロエタン(DCE)2mlを用い、室温で24時間反応させた。白色沈殿が生じていた。反応後の溶液にクロロホルムを約5ml加え、沈殿物を溶かした後、0.5M塩酸水溶液、飽和食塩水、炭酸水素ナトリウム水溶液、最後に再び飽和食塩水で洗浄し、有機層に硫酸ナトリウムを加えて一晩乾燥させた。ろ過により硫酸ナトリウムを除き、エバポレーターで溶媒を除去した。再びクロロホルムにとかし、GPC測定を行った。数平均分子量Mは約2400で、重合度DPは12と計算できた。同様に、DMAPの量を増やして行った結実験果も表2に示したが、分子量に大きな変化はなかった。
【0087】
【表2】

【0088】
3−3.ポリエステル化合物の重合化
上記3−1、3−2ではモノマー同士による重合を試みたが、分子量は6000程度まで伸びた。しかし、より高分子量のものを合成するために、モノマー同士の重合だけではなく、一度重合したポリマー(ポリエステル化合物)を用いてさらに重合することを試みた。まず、次のように、ポリエステル化合物にBHFを加えるもの、コハク酸を加えるもの、モノマーは何も加えないものの三種類を試した。
【0089】
3−3−1.ポリエステル化合物とBHFとの重合
まずは、溶媒としてジクロロエタン(DCE)を用いた。しかし、ポリエステル化合物のDCEに対する溶解性は低い。このことは、通常通りのモノマー同士のBHFとジカルボン酸の重合でも、反応後に固体が見られることからもわかる。
【0090】
実験条件は下の表3にまとめた。
【0091】
No.1は、上記3−1のNo.1において得られた数平均分子量M約3800のポリエステル化合物(0.11g)にBHF(0.26g,2.0mmol)を加え、DCC(0.43g,2.1mmol)、DMAP(0.01g,0.1mmol)、DCE(2ml)を加え、24時間室温で反応を行った。モノマーからのポリマー合成と同様にクロロホルムに生成物を溶かし、メタノールによる再沈殿をおこない、乾燥させたあとに、GPCによる測定を行った。ここで数平均分子量Mは約5200であった。
【0092】
一方、No.2は、前の実験と同様に、上記3−1のNo.2において得られた分子量約6300と先ほどのものよりも高分子量のものを用いて、また反応温度を40℃にして、BHFを加えて重合を行ったところ、GPCによる数平均分子量Mは約7500であった。
【0093】
DCEを溶媒とした2つの実験ともに分子量の伸びは約1000にとどまっている。
【0094】
一方、溶媒として、ジクロロメタン(DCM)を用いた実験も行った。溶媒をDCMにした理由は、DCEよりもDCMにポリエステル化合物が溶けやすいために、反応がより進みやすいのではないかと考えた。そこで、No.3では、DCEのNo.2と同じ数平均分子量Mn6300のポリエステル化合物(0.12g)を用いて重合をおこなったところ、数平均分子量Mは12000程度と始めに用いたポリエステル化合物の倍程度にまで伸びた。
【0095】
ここでNo.1,2と3を比べると、溶解性の問題で伸びやすさに差がでたと考えられる。No.3で溶媒をDCMに変えた場合には、ちょうど分子量が倍になっていることから、ポリエステル化合物同士が重合しているということで、平均6300程度のポリエステル化合物が2つ重合したと考えて、12000の分子量になったということが考えられる。
【0096】
【表3】

【0097】
3−3−2.ポリエステル化合物とジカルボン酸との重合
3−3−1とは逆に次のようにコハク酸を加えた。
【0098】
表4のNo.4−6に示したが、すべて上記3−1のNo.2において得られた分子量約6300のものを用いて行った。No.4と5で反応温度を変えた場合には、室温の方が収量は少なかったが、分子量の伸長は見られた。一方、さきほどのBHFを加える実験では分子量が倍程度に伸長したのと同じ、反応条件が室温、溶媒をDCMの条件で反応を行ったNo.6の場合には、約2000程度の伸びになった。
【0099】
【表4】

【0100】
3−3−3.ポリエステル化合物同士の重合
二種類のポリエステル化合物を用いて、DCCとDMAPを加えて実験を行った。
【0101】
【表5】

【0102】
ポリエステル化合物同士の縮合反応によっても若干の分子量増加が観察された。
【0103】
以上の3種類の実験が、一度重合して得られたポリエステル化合物をさらに重合した場合であるが、さらに、3−3−1、3−3−2で得られたポリエステル化合物は、後から1種類のモノマーを過剰に加えているので、末端がそれぞれヒドロキシル基、カルボキシル基に揃っている可能性が高いと考えられる。よって、次のように3−3−1で得られたポリエステル化合物と3−3−2で得られたポリエステル化合物を重合することで、より長い分子量の高分子が得られるのではないかと考えた。
【0104】
3−3−4.3−3−1で得られたポリエステル化合物と3−3−2で得られたポリエステル化合物との重合
実験条件と結果を下の表6に示した。ここで、3−3−1のNo.2(数平均分子量Mn7,500)と3−3−2のNo.5(数平均分子量Mn7,200)のポリエステル化合物同士を用いて実験を行ったところ、数平均分子量Mn約14,000のポリエステル化合物を得ることができた。
【0105】
【表6】

【0106】
以上のように、バイオマスから合成できるジオール体のBHFとジカルボン酸によりポリエステル化合物を合成することができた。また、ポリエステル化合物をさらに重合することで、分子量が10000を超えるポリエステル化合物を合成することができた。
【0107】
4.ポリエステル化合物とビスマレイミド化合物の反応による高分子化合物の合成
上記3で合成したポリエステル化合物は、その主鎖にジオール体BHFに由来するフラン環を持っている。そのフラン環を利用したDiels-Alder反応について検討した。
【0108】
マレイミド基を2つもつビスマレイミド化合物を用い、その両側のマレイミド基でDiels-Alder反応が起これば、ポリエステル化合物同士がつながる、つまり架橋された高分子化合物を得られる。
【0109】
まず始めに、上記3で重合したBHFとコハク酸のポリエステル化合物とマレイミド基を2つ持つ4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン(東京化成:製品番号B1109)を、一度クロロホルムに溶かし、80℃で24時間加熱した。
【0110】
具体的には、サンプル管中に、数平均分子量Mn約3500(表2のNo.5)のポリエステル化合物(0.0142g)と、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン(0.005g,0.013mmol)をいれ、さらにクロロホルム(2ml)を加え、固体であるポリエステル化合物とマレイミドを溶かした。その後、攪拌子などをいれずに、80℃に過熱したオイルバスにつけ、24時間後に取り出した。
【0111】
その後、クロロホルム、メタノール、水などで生成物を溶かそうとしたが、溶けないものがあった。超音波洗浄器(東京硝子器械株式会社Fu−9H)にて、しばらく超音波を照射することで、サンプル管の底にあったフィルム状の本発明の高分子化合物を得ることができた。
【0112】
この実験について、条件を変えていくつかの反応を行った。その実験条件を表7に示した。
【0113】
【表7】

【0114】
ここで、No.1,2,4の場合にはフィルム状の本発明の高分子化合物を形成したが、No.3については、フィルム状にはならなかったが、超音波を照射すると、黄色の固体が得られた。
【0115】
また、No.1とNo.2を比べると、No.1は、手で折っても割れないフィルムになったが、No.2は手で折ると割れてしまった。
【0116】
この2つのことから、仮にDiels-Alder反応により架橋していることにより、このフィルム状の固体が生成しているとすれば、架橋度の違いにより、生成物の性質が異なっているのではないかと考えることができる。
【0117】
No.1とNo.2を比べると、No.2の方がマレイミド基をフラン環に対して多く加えている。この2:1という比は、ちょうどポリエステル化合物のフラン環すべてが、ビスマレイミド化合物のマレイミド基すべてと反応する量である。よって、マレイミド基を少なく加えたNo.1よりも、反応が起こりやすくなり、架橋度があがったのではないかと考えられる。
【0118】
また、温度を変えて反応を行ったNo.1,No.3,No.4を比べると、70℃では、フィルム状の固体ができなかったことから、No.3ではDiels-Alder反応の反応率が低い、つまり、ポリマー鎖同士があまり架橋されなかったために、多少の架橋があったために、溶けない固体を形成することはできたが、その架橋の度合いが十分でなかったために、フィルム状の固体にはならなかったのではないかと考えられる。
【0119】
5.ポリエステル化合物とビスマレイミド化合物の逆Diels-Alder反応
ポリエステル化合物とビスマレイミド化合物(4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン)との反応で得られた、この不溶な生成物(本発明の高分子化合物)を加熱することで逆Diels-Alder反応がおこり、ポリエステル化合物とビスマレイミド化合物を得ることができると考えられる。
【0120】
表7のNo.1で、マレイミド基:フラン環=0.4:1の割合で合成したフィルムをハサミで切り取り、サンプル管に0.0018gをいれ、クロロホルムを1ml加えた。
【0121】
そのサンプル管を口の広い100mlのナスフラスコ中に入れ、150℃に加熱したオイルバスに20分間浸した。さきほど、逆反応を140℃で行ったが今回は、ナスフラスコの中にサンプル管をいれたので、熱が伝わりにくくなる可能性があるので、オイルバスの温度は若干高い温度に設定した。その後、エタノールにドライアイスをまぜた溶液をいれたデュワー瓶にすぐに入れ、急速に冷却した。クロロホルムにとかし、GPC測定をおこなった(図6)。
【0122】
また、逆Diels-Alder反応ではなく、Retro Diels-Alder反応といわれるものについても検討をおこなった。これは、Gheneimらの報告によると、ビスマレイミド化合物で架橋したポリエステル化合物鎖に、モノマレイミド化合物であるN−フェニルマレイミドを加えることで、ビスマレイミド化合物が反応していた部位に、かわりにモノマレイミド化合物を反応させて解離反応を起すというものである(Jeffrey R. Jones, Charles L. Liotta, David M. Collard, and David A. Schiraldi, Macromolecules, 1999, 32, 5786-5792)。
【0123】
まず、サンプル管に先ほどと同じ表7のNo.1で得られたフィルムを切ったものを0.0018gいれ、モノマレイミド化合物であるN-Phenylmaleimideを0.0072gと過剰量加え、クロロホルム1mlを加えた。さきほどと同様にナスフラスコ中にサンプル管を入れ、150℃に加熱したオイルバスに入れた。その後、クロロホルムにとかし、GPCを測定した(図7)。
【0124】
ポリエステル化合物の場合には、一番初めのピークが、数平均分子量Mn3400のポリエステル化合物のピークを示している(図5)。逆Diels-Alder反応の場合の一番初めのピークは、数平均分子量Mn3300(図6)と測定され、Retro Diels-Alder反応の場合の一番初めのピークは、数平均分子量Mn4200と測定された(図7)。逆Diels-Alder反応で得られた生成物の分子量(数平均分子量Mn3300)は、ポリエステル化合物の分子量(数平均分子量Mn3400)とほぼ同程度と考えられるが、Retro Diels-Alder反応をおこなったもの(数平均分子量Mn4200)には分子量の伸びが見られる。これは、ポリエステル化合物鎖のビスマレイミド化合物が反応していた部位に、ビスマレイミド化合物に代わってモノマレイミド化合物が反応したためと考えられる。また、ピークの様子を見てみると、Retro Diels-Alder反応では、早い時間から、わずかではあるが、ピークがはじまっている。また、逆Diels-Alder反応では、28分付近の最初のピークの高分子側に肩が見られることから、ここにもう1つピークが存在する可能性が考えられる。また、逆Diels-Alder、Retro Diels-Alder反応ともに30.9分付近にピークが見え、これは数平均分子量Mが350程度である。このことから、このピークがビスマレイミド化合物である4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンのピークである可能性が高い、また、Retro Diels-Alder反応で32分以降に見える大きなピークは、過剰に加えたモノマレイミド化合物であるN−フェニルマレイミドであると考えられる。
【0125】
このことから、逆Diels-Alder反応では、本発明の高分子化合物中の架橋が解離してポリエステル化合物とビスマレイミド化合物が生成し、Retro Diels-Alder反応では、本発明の高分子化合物中の架橋が解離して、モノマレイミド化合物と架橋したポリエステル化合物とビスマレイミド化合物が生成したものと考えられる。
【0126】
6.その他のビスマレイミド化合物との反応
これまで、ベンゼン環をもつビスマレイミド化合物との反応を行ったが、ベンゼン環を持たないビスマレイミド化合物(1,6−ビスマレイミドヘキサン、東京化成:製品番号B1787)との反応についても行った。
【0127】
サンプル管に1,6−ビスマレイミドヘキサン(0.008g,0.03mmol)と数平均分子量Mn5200のポリエステル化合物(0.012g)(表4のNo.7)を入れ、クロロホルム(2ml)に溶かし、攪拌せずに80℃のオイルバス中で24時間反応を行った。重クロロホルムを加えたが溶けない固体が存在した。しかしこれは、ベンゼン環をもつビスマレイミド化合物の時のようにフィルム状にはならなかった。重クロロホルムに溶けたもののNMRを測定したが、ポリエステル化合物のピークは観測できなかった。この固体も、Diels-Alder反応によって得られた本発明の高分子化合物であると考えられる。また、この場合にフィルムにならなかったのは、ベンゼン環の有無によるものであると考えられる。ベンゼン環はπ電子をもっているために、重なり易い性質を持っているために、ポリマー鎖自体の架橋に加えて、その影響もあって、フィルム状になることができたと考えられる。
【0128】
7.結論
このように、Diels-Alder反応を用いて、上記2で合成したポリエステル化合物のフラン環とビスマレイミド化合物のマレイミド基を架橋して本発明の高分子化合物を生成することができた。
【0129】
また、さらに熱をかけることで、本発明の高分子化合物中の架橋を解離させて、元のポリエステル化合物とビスマレイミド化合物に分解することができた。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明の高分子化合物は、リサイクル可能なプラスチック材料として用いることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】重メタノール中におけるBHFのH−NMR(24℃、TMS基準)
【図2】重メタノール中におけるBHFの13C−NMR(24℃、TMS基準)
【図3】重クロロホルム中における表1中のNo.1のH NMR(24℃、TMS基準)
【図4】重クロロホルム中における表1中のNo.1の13C NMR(24℃、TMS基準)
【図5】Diels-Alder反応で用いたポリマーのGPC測定結果(基準物質:ポリスチレン)(24℃)カラム:東ソー製TSKgel Multipore HXL-M x 3)、溶媒:クロロホルム、流速:1ml/min、基準物質:ポリスチレン:SHODEX standard polystyrene(昭和電工)
【図6】逆Diels-AlderをおこなったもののGPC測定結果(基準物質:ポリスチレン)(24℃)カラム:東ソー製TSKgel Multipore HXL-M x 3)、溶媒:クロロホルム、流速:1ml/min、基準物質:ポリスチレン:SHODEX standard polystyrene(昭和電工)
【図7】Retro Diels-Alder反応をおこなったもののGPC測定結果(基準物質:ポリスチレン)(24℃)カラム:東ソー製TSKgel Multipore HXL-M x 3)、溶媒:クロロホルム、流速:1ml/min、基準物質:ポリスチレン:SHODEX standard polystyrene(昭和電工)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,5−ビスヒドロキシメチルフランとジカルボン酸をエステル化反応させてポリエステル化合物を生成すること、
該ポリエステル化合物中のフラン環と多価マレイミド化合物中のマレイミド基とを架橋させること
を含む、高分子化合物の製造方法。
【請求項2】
ジカルボン酸が、式(I):
【化1】


[式中、Rは、2重結合を含んでも含まなくてもよい炭素数が1〜18の2価で直鎖の炭化水素基、基−(CH=CH)n1−、またはフェニレンであり、ここでn1は1〜6の整数である]
で示される化合物であり、そしてポリエステル化合物が、式(II):
【化2】


[式中、mは1〜1000の整数であり、Rは、先に記載したとおりである]
で示される化合物である、請求項1に記載の高分子化合物の製造方法。
【請求項3】
多価マレイミド化合物が、式(III):
【化3】


[式中、Rは、非置換またはC〜Cアルキルで置換された基−(CHn2−、非置換またはC〜Cアルキルで置換されたフェニレン、または基−X−Y−X−であり、
ここで、
n2は1〜10の整数であり、
Xは、非置換またはC〜Cアルキルで置換されたフェニレン、または
【化4】


であり、
Yは、非置換またはC〜Cアルキルで置換された基−(CHn3−、−O−、−SO−、または基
【化5】


であり、
n3は1〜6の整数である]
で示されるビスマレイミド化合物、または式(IV):
【化6】


[式中、n4は0〜3の整数である]
で示されるポリフェニルメタンマレイミド化合物である、請求項1または2に記載の高分子化合物の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法で得られる、高分子化合物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−303237(P2008−303237A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−149170(P2007−149170)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】