説明

乗り物用シートの加熱、冷却および換気システム

本発明は、シート部品、背もたれ部品などの換気される部品を持つ、乗物用座席に関し、それらの部品の少なくとも一つはシートクッションおよびトリム表面を有する。本発明はさらに吸収冷凍システムを備え、当該システムは、乗物の熱源と熱的に接触したボイラーと、復水器と、乗物用シートに熱的に接触して配置される蒸発器とを有する。吸収冷凍システムは、ボイラー、復水器、蒸発器を相互に流体で連結する導管(コンジット)をさらに有する。導管内に配置された冷媒が部品間を循環して、乗物用シートの温度調整を促進する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年9月21日に出願された米国仮特許出願60/611,893の利益を主張し、該出願は本明細書中に参照のために組み込まれている。
【0002】
一般的に、本発明は、乗り物用座席の暖房、冷房、および換気システムに関し、より詳細には、廃エネルギーあるいは環境エネルギーを使用した座席の暖房、冷房、および/あるいは換気システムに関する。
【背景技術】
【0003】
市場の動向により、輸送用車両、および特には乗物の客席を暖め、冷やし、あるいは換気する費用対効果が高く、エネルギー効率に優れたシステムが求められるようになってきた。
周知のシステムは、コンパートメント全体システム(compartment wide system)に加えてコンパートメント局所システムを含み、このようなシステムでは、乗物の運転者と乗客に対して直接的に温度調節を行う、あるいは換気を行う。
例示的な局所システムは、乗物の座席部分を暖め、冷やし、あるいは換気するコンフォートシステム(comfort system)を含む。
座席のコンフォートシステムは、乗物のHVAC(Heating,Ventilating,and Air Conditioning)システムに結合されていてもよいし、あるいはHVACシステムには接続されていないコンポーネントによって暖房、冷房、あるいは換気を行う内蔵タイプであってもよく、主に座席あるいは座席の近くに設けられる。
しかし、周知のシステムは費用対効果が高い一方で、乗物に対するエネルギー需要を増加させる。
このようなエネルギー需要は、部品の効率を高めることによって減らすことができるが、さらにエネルギー需要を減らすことが望ましい。
【0004】
本発明は、1つ以上のこれらの課題を克服するものである。
【発明の開示】
【0005】
本発明は、座席部品あるいは背もたれ部品などの換気部品を備えた乗物座席に関するものであり、そのような部品の少なくとも1つは、シートクッションと、トリム表面(trim surface)とを含む。本発明はまた、吸収冷凍システムを含み、該システムは、乗物の熱源に熱的に接触したボイラー、コンデンサ(復水器)、および、乗物の座席に熱的に接触して配置された蒸発器を有する。
吸収冷凍システムはさらに、ボイラー、コンデンサ、蒸発器のそれぞれを互いに流体で接続している導管を含む。導管内には冷媒が設けられ、この冷媒は、乗物座席の温度調節を促進するように部品間を循環する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、乗物の熱源を使用して、運搬用の乗物座席の暖房、冷房、あるいは換気を行う技術に関連する。
【0007】
輸送用の乗物座席は、座席部品、背もたれ部品、枕、肘掛け、ヘッドレストあるいはその他同種のもののような少なくとも1つの換気部品を含む。各換気部品は、着席者に暖房、冷房、換気あるいはその組合せを供給することができ、また、このような部品は、シートをカバーするシートクッションとトリム表面とを含む。
【0008】
この熱源は受動型(パッシブ)であって、好ましくは、乗物によって生成された廃エネルギーである。例えば、エンジンブロック、触媒コンバータあるいは他のエンジン部品からのエンジン熱を熱源として利用してもよい。他の形態では、排気マニホルドあるいは排気管などの排気システムからの熱を利用してもよい。他の実施形態では、環境エネルギーを熱源とすることもできる。例えば、日光あるいは他の環境熱によって生産された熱を使用してもよい。
【0009】
上述した受動型の熱源に加えて、熱源は、電源(例えば、オルタネータ、バッテリ、燃料電池、熱電素子、太陽電池あるいはその他同種のもの)によって電力が供給される発熱体を備えた、能動型の熱源であってもよい。そのような電力が利用される場合、そのような電源は、好ましくは、廃エネルギーあるいは環境に配慮したエネルギーを電気に変換することで電力を生成する。例えば、熱を電気に変換する熱電素子、あるいは光を電気に変換する太陽電池が挙げられる。
【0010】
本発明は、乗物座席の乗員に暖かな感覚あるいは冷たい感覚を与える吸収冷凍システムを備えている。一実施形態では、これは、温度調節された流体を本システムから乗物座席に循環させることで実現することができる。別の実施形態では、このことは、乗物座席自体を伝導により冷やしたり暖めたりすることで実現することができる。
【0011】
図1の実施形態で明らかなように、吸収冷凍システム10は、ボイラー12、復水器(コンデンサ)14および蒸発器16を備えた閉鎖システムに封入された冷媒を含む。水−アンモニア冷媒を使用する特定の実施形態では、システムはさらに還流器(refluxer)18と吸収器(absorber)20とを含む。各種導管22は、システムの各部品を接続するために使用される。この吸収冷凍システムには、以下に説明している様々なサイクルを切り替えるために、1以上のバルブ24も含んでもよい。ボイラーは、熱源26(例えば、排気システムの部品など)と熱的に接触して配置される。1以上のヒートシンク28を復水器あるいは蒸発器上で使用してもよい。
【0012】
冷却サイクルでは、廃エネルギーあるいは環境エネルギーは、ボイラー中の冷媒を気化させる。気化された冷媒は復水器に移動し、その後、液状の冷媒を蒸発器に供給する。蒸発器は、減圧して再度冷媒を気化し、蒸発器に接している流体(例えば、空気)からのエネルギーを吸収し、あるいは、蒸発器に接触あるいは隣接しているシート素材(例えば、シートクッション)からのエネルギーを吸収する。その後、冷媒はボイラーに戻る。水−アンモニア冷媒を使用した実施形態では、還流器は、水をアンモニアから分離し、これにより、復水器には乾燥したアンモニア蒸気を、吸収器には水を供給する。水−アンモニア冷媒がボイラーに戻る前に、アンモニアが蒸発器を出た後に、アンモニアと水とを再結合するために吸収器が利用される。図2は、水−アンモニア冷媒を利用したシステムの冷却サイクルを示す。図2において矢印Aは、復水器周辺の空気の流れを示し、矢印Bは、座席に対する温度調節された流体の流れを示す。
【0013】
暖めサイクルでは、冷媒はボイラーから蒸発器に移動する。この場合、冷媒はそのエネルギーを蒸発器に接触している液体(例えば空気)に、あるいは、蒸発器に接触あるいは隣接しているシートマテリアル(例えば、シートクッション)に放出する。図3は、水−アンモニア冷媒を利用したシステムの暖めサイクルを示す。図3において矢印Bは、座席に対する温度調節された流体の流れを示す。
【0014】
冷却および暖めサイクルに加えて、冷却あるいは暖めサイクルのいずれも必要とされないときには、図4で、水−アンモニア冷媒を使用した実施形態が示しているように、アイドリングサイクルを使用してもよい。図4において、矢印Aはコンデンサ周辺の空気の流れを示す。冷却、暖め、およびアイドリングサイクルでは、温度調節済みの周囲の流体をそのまま座席に供給してもよく、あるいは、その流体を温度調節されていない流体(例えば、外気)と組み合わせてもよく、あるいは、他の形態では、温度調節された流体が座席に供給される前、間、または後に、調整(例えば、脱湿)、あるいは(例えば、粒子フィルターを介して)フィルタリングしてもよい。
【0015】
ボイラーは、好ましくは、乗物の熱源に熱的に接触して配置される。例えば、ボイラーは、熱源に接触しているか、単に熱源に隣接した状態であってよい。熱源からボイラーを分離するために、熱良導体(例えば、熱伝導性の接着剤)を使用してもよい。熱源からボイラーを分離するために、好ましくはないが、断熱材を使用することもできる。ボイラー周辺の絶縁材は、熱源からボイラーに送られるエネルギー効率を高めるように使用することができ、あるいは、他の形態では、吸収冷却システムあるいは乗物のその他の部品からボイラーを分離するように使用することもできる。
【0016】
車両の排気システムを熱源として使用する実施形態では、乗物の客室ではなく、排気システムの1つ以上の部品(例えば、排気マニホルドあるいは排気管)に隣接して、好ましくは接触してボイラーが配置され得る。1つの態様では、ボイラーは、排気システムの1つ以上の部品と一体化することができる。このようして、ボイラーをエンジンが排出する高温ガスにさらしてもよく、この結果、排気システムから吸収冷凍システムへのエネルギー移動を潜在的に改善することができる。
【0017】
同様に、乗物のエンジンを熱源として使用する実施形態では、熱を生成するエンジン部品に隣接あるいは接触したエンジンコンパートメントにボイラーを配置してもよい。伝達系統(例えばブレーキ系)の部品などの、他の乗物の部品を熱源として使用することができるように、ボイラーを配置してもよい。
【0018】
環境的な熱源を利用する実施形態の場合、ボイラーを乗物の客室、ボンネット、トランクあるいはフレーム、あるいは、好ましくは車両の屋根部分に配置してもよい。好ましくは、ボイラーは乗物の乗客には見えないもの、あるいは、客室の寸法および形状に悪影響を与えないものである。そのような環境的な熱源は、色を付けることによって高められたエネルギー吸収性を有し得る。例えば、ボイラーが配置される屋根上には暗い塗装を選択的に使用してもよく、屋根の残りの部分には明るい塗装を使用してもよい。当然、車両全体に暗い色の塗装を使用してもよい。
【0019】
能動型の熱源は、自由にボイラーを配置することができる。このためボイラーを都合のよい場所に配置することができるが、通常、ボイラーは、客室の外側に配置される。
【0020】
ボイラーは、乗物におけるパッケージの問題に対応して、あるいは、ボイラーと熱源との間の熱的接触を高めるようにその形状が定められるので、ボイラーの形状および寸法は重要ではない。例えば、ボイラーは排気管の周りに適合するようにチューブ状であってもよく、あるいは、ヘッダーと屋根との間に適合するよう、相対的に平面状であってもよい。ボイラーの材料は重要ではないが、好ましくは、熱源に隣接して熱伝導性である材料を含む。
【0021】
ボイラー周辺の絶縁材を、熱源からボイラーに送られるエネルギー効率を高めるため、あるいは、他の形態では、ボイラーを吸収冷凍システムあるいは乗物のその他のコンポーネントから分離するために使用してもよい。
【0022】
冷媒を液化させるためにヒートロスを促進するよう、復水器が設けられる。復水器は乗物が生成した空気の流れのなかに設けられてもよい。好ましくは、空気の流れは乗物の移動中に生成される。そのため、復水器は、乗物の底面、屋根、ボンネットまたはトランクに、あるいはそれらの近くに、あるいはラジエータに隣接して設けられてもよい。さらに、復水器は、好ましくはヒートシンクに熱的に接触して設けられる。
【0023】
ボイラーと同様に、コンデンサの形状および寸法は決定的ではないが、これらの特徴はパッケージングに関連して選択され得る。復水器の材料は、好ましくは熱伝導性材料である。
【0024】
蒸発器は、乗物の座席に熱的に接触して設けられる。一実施形態では、蒸発器は、温度調節された流体が蒸発器から乗物座席へ移動しやすいように配置される。
好ましくは、蒸発器は、乗物の客室内に配置され、より詳細には座席の下あるいは座席内に配置される。蒸発器を座席内あるいは座席の近くに配置することで、座席を暖めたり冷やしたりするために流体が移動しなければならない距離を縮められる。一実施形態では、温度調節された流体を蒸発器から座席に移動させるために、流体移動装置(例:エアムーバなど)が利用される。別の実施形態では、蒸発器は座席あるいは座席の背もたれ部品(例えば、クッション内に)に配置され、これにより、流体移動装置がなくても、伝導によって座席を冷やしたり暖めたりすることができる。
【0025】
蒸発器は、導管、オリフィス、熱膨張バルブなどの拡張装置を利用して冷媒を蒸発させ、その結果、冷却サイクルの間に周囲からの熱を吸収するようにしてもよい。
【0026】
蒸発器は、熱の吸収あるいは放出を促進する導管を含む。導管は、例えば銅などの熱伝導性材料で作ることができる。更に、温度調節中の流体にさらされる導管の表面積を増やす一方で、蒸発器の全体のパッケージング寸法を制限するように導管を形成し、寸法を定めることができる。図5の破断図に示した一実施形態で明らかなように、温度調節された空気に対して、蒸発器52において折曲状にされた導管50を使用してもよい。空気は入口54を通って、吹き出されるか、引き込まれ、導管をわたって、出口56を通って外に出る。冷媒は、復水器からの入口58からの導管を通り、出口60へ向かうとともに、ボイラーあるいはその他の下流の部品へ向かう。空気の入口と出口および冷媒の入口と出口の配置は特別決定的なことではない。
【0027】
一実施形態では、図6で明らかなように、蒸発器100は、部品中のラジアルファン102などのエアムーバと組み合わされている。導管104はラジアルファンの周りに配置されており、熱エネルギーの吸収と放出とを促進するよう、複数のフィン106などのヒートシンクを備えている。冷媒は復水器から導管を通って吸収器あるいはボイラーに流れ、一方で、空気は入口108を通って引き込まれる。その後、空気は導管とフィンとに向けて吹き出されるか引き込まれ、1つ以上の出口110に向かう。この出口110において、温度調節された空気が乗物座席に送られる。この実施形態では、空気の入口と出口とは相対的であり、蒸発器とファンの組み合わせでは、ファンの方向を逆にすると、空気が流れる方向が逆になる。本実施形態の1つの利点は、蒸発器とファンとが相対的にコンパクトに実装されていることであり、これにより、蒸発器とファンの組合せを、座席あるいは背もたれ部品内(例えば、シートクッション内)などの乗物の座席内に配置することができる。
【0028】
蒸発器は、さらに、保冷のために1つ以上の蓄冷器と、熱の吸収あるいは放出を促進するために1つ以上のヒートシンクを含み得る。好ましくは、蒸発器は、冷媒から周りの流体へのエネルギー伝達の効率を高めるよう、絶縁材を含む。図7の一実施形態で明らかなように、蒸発器150は、ヒートシンク154に隣接して設けられた導管152を含む。このヒートシンクに隣接しているのは蓄冷器158である。空気は、温度調節するために導管、ヒートシンク、および/または蓄冷器に向けて(矢印Cに示すように)吹き出され、あるいは引き込まれて、その後(矢印Dに示すように)座席に送られる。絶縁材160は、蒸発器および他の部品を囲むように使用される。
【0029】
適切な冷媒は、好適には水とアンモニアとの混合物であるが、その他、熱エネルギーの吸収と放出とを促進するために相変化する循環材料を含む。これには、例えば、R-152a、R-125、R-32、R-143a、R-23およびR-134aを含むCH3CHF2、C2HF5、CH2F2、C2H3F3、CHF3およびC2H2F4などの、1つ以上のハイドロフルオロカーボンなどがある。プロパン、ブタン、ペンタンなどの炭化水素を冷媒として使用してもよい。冷媒の組合せを使用してもよく、また、冷媒と潤滑剤との組合せを使用してもよい。当然、選択した冷媒によっては、本文に記載した吸収冷凍システムの部品を必要とするものもあれば、または、除外してもよいものもある。例えば、ハイドロフルオロカーボンと炭化水素の冷媒に対しては、還流器および吸収器は必要ではない。さらに、システムにはコンプレッサを組み込むことができる。
【0030】
導管とバルブの材料は、費用、重量あるいは耐久性の考慮、あるいはそれらを組合せた検討に基づいて、選択された冷媒との互換性に応じて選択され得る。
【0031】
本文において議論されたヒートシンクは、型打ち、押し出し、鋳造、接着/加工されたフィン、波形に折りたたまれたフィンなどの、空冷双方のヒートシンクを含み得、そのようなフィンは、銅、ブロンズ、あるいはアルミニウムなどの適切な金属から作られる。加えて、気相変化を含むヒートシンク(例えば、冷媒あるいはヒートパイプ)を熱電素子と同様に使用してもよい。更に、ヒートシンクは、乗物を運転する間は通常熱くならない乗物の金属コンポーネント、例えば、乗物フレームあるいは変速機の金属コンポーネントを1つ以上含み得る。
【0032】
この吸収冷凍システムは、乗員の座席を経由して乗物の乗員に暖房、冷房、および換気を供給するさらに大きな座席システムに組み込むこともできる。いくつかのそのようなシステムは周知であり、また、本吸収冷凍システムをそのようなシステムの付加的部品として使用してもよく、あるいは、それらのシステムをそのようなシステムの1つ以上の部品の代わりとして使用されてもよい。
【0033】
例えば、本冷凍吸収システムを、米国特許第6,786,541号、第6,629,724号、第6,840,576号、6,869,140号の座席、および、関連の出願および特許、あるいは、米国特許公報第2004‐0189061号の座席に付加することができる。さらに、本冷凍吸収システムは、米国特許第6,893,086号、第6,869,139号、6,857,697号、6,676,207号、6,619,736号、6,604,426号、6,439,658号、6,164,719号、5,921,314号、および、関連の出願および特許、あるいは、米国特許公報第2005‐0173950号、2005‐0161986号、2005‐0140189号、2005‐0127723号、2005‐0093347号、2005‐0085968号、2005‐0067862号、2005‐0067401号、2005‐0066505号、2004−0169028号および関連の出願の座席と組み合わせて使用してもよい。すべての特許および公報は参照のために本文中に組み込まれる。
【0034】
座席システムは、シートクッションおよびトリム表面を備えた、少なくとも1つのシートあるいは背もたれ部品を含み、本座席システムはまた、吸収冷凍システムを含む。一実施形態では、蒸発器は部品内に、または部品に隣接して設けられ、部品(例えば、クッション)、さらには乗員を伝導によって暖めたり、冷やしたりする。そのような実施形態では、座席を所望の温度に調整するために、温度調節された流体を座席に供給するファンを必要としない。吸収冷凍システムの一部として(例えば、復水器において)ファンを使用してもよく、または座席と乗員の間で環境空気を流すためにファンを使用してもよい。
【0035】
他の実施形態は、蒸発器から座席へ温度調節された流体を供給するためにファンを使用する。温度調節された空気を供給するすべての吸収冷凍システムに対しては、温度調節された空気を使用して、座席あるいは乗員を対流あるいは伝導によって暖めるか冷やすことができる。図8に明らかなように、乗物座席200は、座席の下に設けられた蒸発器206に流体で接続された、背もたれ部品202および座席(シート)部品204の双方を含み得る。この実施形態では、空気(矢印E)は、蒸発器の導管208を通じて引き込まれ、ファン210によって座席に吸い込まれる。
【0036】
一実施形態では、温度調節された空気は、シートクッションから通気性のトリム表面を通じて乗員に向けて吹き出され、その結果、座席と乗員とを伝導によって暖める、あるいは冷やす。米国特許第6,869,139号および6,857,697号に示されているように、クッションは、このクッションを通る通路を備えることができ、温度調節された空気を座席表面に循環させる。これらの特許に開示された各種の他の任意の特徴を本発明の座席システムに含むこともできる。そのような特徴としては、例えば、副通路、デフレクタ、空気を通さないライニングあるいはコーティングなどが挙げられる。さらに、副通路上には、乗員に向けて吹き出される風を弱める、あるいは、方向付けるために、スルーホールを備えたフォームインサートを配置してもよい。このシステムを使用することで、ある程度、伝導による冷却も実現することができる。
【0037】
別の実施形態では、空気が乗員に向けて吹き出されないように、温度調節された空気を座席に送ることで、伝導により乗員を暖めたり冷やしたりすることができる。例えば、不通気性のトリム表面上で温度調節された空気を使用する間、温度調節された空気はクッション中の通路あるいはサブ通路を通じて、トリム表面の下を循環する。他の形態では、空間を備えたインサートが不通気性のトリム表面の下に設けられ、このインサートと、よって乗員とを伝導によって暖めたり冷やしたりするために、空気をこのインサートに吹き出す、あるいは、引き込む。適切なインサートとしては、米国特許第6,629,724号、第6,840,576号、6,869,140号、および6,893,086号に示されているインサートが挙げられる。
【0038】
別の実施形態では、伝導および対流によって乗員を暖めたり冷やしたりすることができる。蒸発器からの温度調節された空気は、乗員を介して、座席に吸い込まれた外気と組み合わせられ得る。ここで、外気はトリム表面を通じてこのトリム表面の下の混合領域に送られ、ここで、外気は温度調節された空気と組み合わせられる。次に、この混合された空気は、座席から排出されるか、蒸発器および/あるいは混合領域に戻って再循環する。この外気は、対流により冷やし(あるいは、暖め)、一方で温度調節された空気は伝導により冷やすか暖める。引き込みであろうと、吹き出しであろうと、外気を混合領域に送り込むために、また、温度調節された空気を混合領域に送るために、複数のエアムーバを使用してもよい。
【0039】
一実施形態では、この混合領域はインサートに含まれる空間である。混合領域を含む座席の例としては、米国公報第2005‐0067862号および第2005‐0066505号が挙げられる。
【0040】
別の実施形態では、図6に示すように、上述した蒸発器・ファンの組合せを、クッション内に、あるいはクッションに隣接して設けてもよい。そのような蒸発器およびファンの組合せをクッションから離れて設けてもよいが、座席システムの実装寸法を縮小しやすくするために部品内あるいは部品に隣接して設けるのが好ましい。ここで、蒸発器・ファンの組合せによって生成された、温度調節された空気が座席に送られ、そこでその空気は乗員に向けて吹き出され、インサートを介して吹き出されるか引き込まれ、あるいは外気と組み合わせられる。
【0041】
さらに、乗員に対して温度調節を行うために、冷却吸収システムをその他のシステムあるいは装置と組み合わせてもよい。例えば、乗物座席を暖めるために発熱素子を利用してもよく、これにより、吸収冷凍システムは座席を冷やすことだけに専念することができる。そのようにアレンジすることで、吸収冷凍システムの実装寸法を縮小し、消費電力を減らすことができる。一実施形態では、発熱素子は、トリム表面とシートクッションあるいは座席のインサートの間に設けられる。好ましくはないが、熱電素子を使用することも可能である。具体的には、熱電素子が乗物において他の用途に使用され、座席の温度調節のために再利用できるような廃エネルギーを生成するような場合には、乗物座席を暖めたり冷やしたりするために熱電素子を使用してもよい。
【0042】
本発明は、乗物座席を暖め、冷やし、換気する方法にも関連する。本方法は、乗物の熱源によって暖められた冷媒を循環させるステップを含み、冷媒は復水器と蒸発器とを備えた閉鎖(クローズド)システムを介して循環する。本方法はさらに、シート部品あるいは乗物座席に供給される流体などの、蒸発器と熱的に接触している材料の温度調節を行うステップを含む。
【0043】
複数の部品またはステップの機能または構造を単一の部品またはステップにまとめることができ、また単一のステップまたは部品の機能または構造を複数のステップまたは部品にわけることが可能であることを理解してもらいたい。本発明は、そのような組み合わせをすべて予期しているものである。特にことわらないかぎり、本明細書で説明した様々な構造の寸法および形状は、本発明を限定しようとするものではなく、違う寸法および形状も採用可能である。複数の構造的部品またはステップは、単一の統合された構造またはステップで提供可能である。それとは逆に、単一の統合された構造またはステップを分離した複数の部品またはステップにわけることが可能な場合もある。さらに、本発明の特徴をただ一つの実施形態として説明してきたが、そのような特徴は、所与の任意の応用について、その他の実施形態の一以上の別の特徴と組み合わせることも可能である。これまでの説明から、本明細書で説明した独自の構造の製造およびその動作は、本発明による方法をも構成することがわかる。本発明はさらに、本発明の方法の実行からうまれる中間の、そして最終の製品をも包含する。「含む」、「有する」、「持つ」の用語は、引用された特徴をして、「本質的にそれのみからなる」、または「それのみからなる」実施形態を予期したものである。
【0044】
本明細書の説明および図面は、当業者に、本発明、原理、およびその現実的応用を知らしめることを目的としている。当業者であれば、特定の用途の要求に最適に適応するように、本発明を様々な形態に適合させ、応用することが可能である。したがって、これまでに説明した本発明の特定の実施形態は排他的なものでも、本発明を限定しようとするものでもない。したがって、本発明の範囲は、上記の説明を参照して決定されるものではなく、添付の特許請求の範囲を参照して、請求項が与える均等物のすべての範囲に沿って、解釈されるべきである。特許出願および公報を含む、すべての文献および参考資料の開示内容は、あらゆる目的において、本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の吸収冷凍システムの一実施形態の概略図。
【図2】本発明の吸収冷凍システムの一実施形態の冷房サイクルの概略図。
【図3】本発明の吸収冷凍システムの一実施形態の暖房サイクルの概略図。
【図4】本発明の吸収冷凍システムの一実施形態のアイドリングサイクルの概略図。
【図5】蒸発器の内部の説明図。
【図6】エアムーバと組み合わせた蒸発器の説明図。
【図7】ヒートシンク、冷気アキュムレータと組み合わせられ、絶縁材で覆われた蒸発器の破断図。
【図8】蒸発器を備えた座席の説明図(内蔵)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
換気されたシートクッションまたはトリム表面を持つ、乗物用シートと、
吸収冷凍システムであって、乗物の熱源と熱的に接触して配置されるボイラーと、復水器と、前記乗物用シートと熱的に接触して配置される蒸発器と、前記ボイラー、復水器および蒸発器を相互に流体で接続する導管と、前記導管に配置される冷媒とを有する吸収冷凍システムとを備える、
乗物用換気シート。
【請求項2】
前記蒸発器は、前記換気部品の前記シートクッションと熱的に接触して配置されている、請求項1記載のシート。
【請求項3】
前記トリム表面は非通気性である、請求項2記載のシート。
【請求項4】
前記蒸発器は、前記蒸発器から前記換気部品に運ばれた流体に熱的に接触して配置される、請求項1記載のシート。
【請求項5】
前記流体は空気であり、エアムーバをさらに備える、請求項4記載のシート。
【請求項6】
前記エアムーバはラジアルファンであり、前記蒸発器および前記ラジアルファンは蒸発器・ファン部品として組み合わせられる、請求項5記載のシート。
【請求項7】
前記蒸発器・ファン部品は前記換気部品の前記シートクッション内に配置されている、請求項6記載のシート。
【請求項8】
前記冷媒は、アンモニアと水を含む混合物であり、前記吸収冷凍システムは、前記ボイラーと前記復水器との間に配置される還流器と、前記蒸発器と前記ボイラーとの間に配置される吸収器とをさらに有する、請求項1記載のシート。
【請求項9】
前記蒸発器は蓄冷器をさらに有する、請求項1記載のシート。
【請求項10】
前記熱源は受動的熱源である、請求項1記載のシート。
【請求項11】
前記熱源は廃熱源である、請求項10記載のシート。
【請求項12】
前記廃熱源はエンジンまたは排気システムの部品である、請求項11記載のシート。
【請求項13】
前記熱源は環境熱源である、請求項10記載のシート。
【請求項14】
前記換気部品はシート部品または背もたれ部品である、請求項1記載のシート。
【請求項15】
シート部品および背もたれ部品から選択される換気部品を有し、少なくともそれらのうちの一つはシートクッションと、トリム表面を提供する乗物用シートと、
エアムーバと、
吸収冷凍システムであって、乗物の廃熱源と熱的に接触して配置されるボイラーと、乗物の空気の流れ内に配置される復水器と、空気と接触して温度調整された空気を提供する蒸発器と、前記ボイラー、復水器および蒸発器を互いに流体で接続する導管と、前記導管に配置される冷媒とを有する吸収冷凍システムとを備え、
前記エアムーバは、前記温度調整された空気を前記換気部品に送る、乗物用の換気シート。
【請求項16】
前記トリム表面は非通気性のトリム表面である、請求項15記載のシート。
【請求項17】
前記温度調整された空気はシートの着席者に全体的に吹き付けられる、請求項15記載のシート。
【請求項18】
前記温度調整された空気は前記換気部品の混合領域において環境空気と混ぜ合わされる、請求項15記載の乗り物用シート。
【請求項19】
前記トリム表面の下に配置される加熱素子をさらに備える、請求項18記載のシート。
【請求項20】
シート部品および背もたれ部品から選択される換気部品を有し、少なくともそれらのうちの一つはシートクッション、エアムーバ、インサート、通気性のトリム表面、および前記トリム表面と前記インサートのあいだに配置される加熱素子を提供する乗物用シートと、
吸収冷凍システムであって、乗物の廃熱源と熱的に接触して配置されるボイラーと、乗物の空気の流れ内に配置される復水器と、空気と接触して温度調整された空気を提供する蒸発器と、前記ボイラー、復水器および蒸発器を相互に流体で接続する導管と、前記導管に配置されるアンモニア水冷媒とを有する吸収冷凍システムとを備え、
前記エアムーバは、前記温度調整された空気を前記インサートに送り、環境空気とつながっている、乗物用の換気シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−513291(P2008−513291A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532686(P2007−532686)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/034138
【国際公開番号】WO2006/034447
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(504135893)べー.エー.テー. オートモーティブ システムズ アーゲー (10)
【Fターム(参考)】