説明

乗員保護装置

【課題】 乗員がドアトリムに肘を掛けている場合に、エアバックが膨張しても肘や肩に衝撃を与えることがない乗員保護装置を提供する。
【解決手段】第1エアバック装置20と、衝撃検知センサ15と、着座検知センサ22,23とを備えた置において、座席11の側部に設けられ着座する乗員の脇下位置から前方に向かって膨張する第2エアバック30Aを備えた第2エアバック装置30と、ドアトリム13に肘を掛けているかを検知する肘掛検知センサ16と、衝撃検知センサ15が衝撃を検知した際に、着座検知センサ22,23が着座を検知し且つ肘掛検知センサ16が肘掛けを検知しているとき第2エアバック装置30を作動させ、着座検知センサ22,23が着座を検知し肘掛検知センサ16が肘掛を検知していないとき第1エアバック装置20を作動させるコントロールユニット40とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、側面衝突の際に、乗員の側面でエアバックを膨張させて乗員を保護する乗員保護装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、図7に示すように、エアバック装置1,2と、側面衝突を検知してエアバック装置1,2にトリガ信号を供給する衝撃センサ3とをドア4に設け、且つ座席5に荷重センサ6,7を設けて、衝撃センサ3が衝撃を検知した際に、荷重センサ6,7のいずれか一方が所定以上の荷重を検知しているとき、エアバック装置1,2を作動させてエアバック1A,2Aを乗員の側面で急激に膨張させ、この膨張したエアバック1A,2Aにより乗員を側面衝突から保護する乗員保護装置が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような乗員保護装置にあっては、乗員がドアトリム8に肘を掛けていたり、また手を載せていたりしている場合に、側面衝突が発生し、エアバック1A,2Aが膨張すると、上方に位置する方のエアバック1Aの急激な膨張により腕を上方に急激にはね上げてしまい、肘から肩にかけて強い衝撃を与えてしまうという問題がある。
【0004】この発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、乗員がドアトリムに肘を掛けていたり、また手を載せていたりする場合に、エアバックが膨張しても肘や肩に衝撃を与えることのない乗員保護装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記目的を達成するため、ドアに取り付けられた第1エアバック装置と、前記ドア側の車体側部に加えられる衝撃を検知する衝撃検知手段と、前記ドア側の座席に乗員が着座しているかを検知する着座検知手段とを備え、前記衝撃検知手段が衝撃を検知した際に、着座検知手段が着座を検知しているとき第1エアバック装置を作動させて第1エアバックを乗員の側面側に膨張させる乗員保護装置において、前記座席の背もたれ部の前記ドア側に設けられ着座する乗員の脇下位置から前方に向かって膨張する第2エアバックを備えた第2エアバック装置と、前記ドアのドアトリムに乗員が肘を掛けているか否かを検知する肘掛検知手段と、前記衝撃検知手段が衝撃を検知した際に、前記着座検知手段が着座を検知し且つ肘掛検知手段が肘掛けを検知しているとき第2エアバック装置を作動させ、着座検知手段が着座を検知し肘掛け検知手段が肘掛けを検知していないとき第1エアバック装置を作動させる制御手段とを設けたことを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、この発明に係わる乗員保護装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0007】図1および図2において、10は運転座席11側のドアであり、このドア10のアームレスト12とドアトリム13との間のインナーパネル10aの内側に第1エアバック装置20が設けられている。また、アームレスト12の下方のインナーパネル10aの内側に第3エアバック装置21が設けられている。
【0008】各エアバック装置20,21は、鎖線で示すように膨張するエアバック20A,21Aを収納している他に、雷管20B,21B(図5参照)やこの雷管20B,21Bによって点火してエアバック20A,21Aを膨張させるためのガスを発生するガス発生剤(図示せず)等を備えている。
【0009】ドア10のアウターパネル10bとインナーパネル10aとの間には、側面からの衝撃を検知する衝撃検知センサ15が設けられており、ドアトリム13には肘掛け等(腕の一部がドアトリム13に掛けられていること等)を検知する肘掛検知センサ16が設けられている。肘掛検知センサ16は、例えば、タッチセンサからなるものである。
【0010】運転座席11のシート部11Aには、乗員の着座を検知する圧電フィルムセンサからなる着座検知センサ22,23が設けれており、背もたれ部11Bの側部に第2エアバック装置30が設けられている。第2エアバック装置30は、図3および図4の鎖線で示すように、座席11に着座する乗員Mの脇下から前方に向かって、換言するとドア10のインナーパネル10aに沿って膨張するエアバック30Aを収納する他に、雷管30B(図5参照)やこの雷管30Bによって点火してエアバック30Aを膨張させるためのガスを発生するガス発生剤(図示せず)等を備えている。
【0011】図5は、各エアバック装置20,21,30を作動させるコントロールユニット(制御手段)40の構成を示したものであり、このコントロールユニット40は運転席11と助手席Sとの間に設けられている(図2R>2参照)。
【0012】図5において、41はバッテリ、42はイグニッションスイッチ、43はDC/DCコンバータ等の電源回路、44は電源回路43からの電流を雷管20Bへ流すためのスイッチング回路からなる第1上流駆動回路、45は電源回路43からの電流を雷管21Bへ流すためのスイッチング回路からなる第2上流駆動回路、46は電源回路43からの電流を雷管30Bへ流すためのスイッチング回路からなる第3上流駆動回路、47は各雷管20B,21B,30Bに電源43からの電流が流れるようにする共通の下流駆動回路、48はオア回路である。50は各センサ15,16,22,23の検知状態に基づいて各駆動回路44〜47を作動させる判断回路でCPU等から構成されている。
【0013】次に、上記実施の形態の動作を図6のフロー図に基づいて説明する。
【0014】イグニッションスイッチ42がオンされると(ステップ1)、ステップ2では衝撃検知センサ15が衝撃を検知しているか否かが判断され、ノーであればステップ2へ戻り、イエスになるまでステップ2の動作が繰り返され、イエスになればステップ3へ進む。ステップ3では、オア回路48から着座検知信号が出力されているか否かが判断される。すなわち、運転座席11に乗員Mが着座しているか否かが判断され、ノーであればステップ2へ戻り、イエスであればステップ4へ進む。
【0015】ステップ4では、肘掛検知センサ16が肘掛けを検知しているか否かが判断され、ノーであればステップ5へ進む。ステップ5では第1,第3エアバック装置20,21を作動させる。すなわち、判断回路50は、衝撃検知センサ15が衝撃を検知した際にオア回路48から着座検知信号が出力されているとき上流駆動回路44,45と下流駆動回路47を動作させて電源回路43の電流を雷管20B,21Bに流す。これにより第1,第3エアバック装置20,21が作動してエアバック20A,21Aを膨張させる。
【0016】つまり、乗員がドア10のトリム13に肘を掛けていない場合には、第1,第3エアバック装置20,21を作動させて乗員の保護を図るものである。
【0017】ステップ4でイエスと判断された場合、すなわち、肘掛検知センサ16が肘掛けを検知しているときステップ6へ進む。ステップ6では、第2,第3エアバック装置30,21を作動させる。
【0018】すなわち、判断回路50は、衝撃検知センサ15が衝撃を検知した際にオア回路48から着座検知信号が出力され且つ肘掛検知センサ16が肘掛けを検知しているとき上流駆動回路45,46と下流駆動回路47を動作させて電源回路43の電流を雷管21B,30Bに流す。これにより第2,第3エアバック装置30,21が作動してエアバック30A,21Aを膨張させる。
【0019】つまり、乗員が肘を掛けている場合には、コントロールユニット40は第2,第3エアバック装置30,21を作動させエアバック30A,21Aを膨張させるものである。そして、エアバック30Aは、乗員の脇下から前方に向かって膨張するので、このエアバック30Aの膨張により乗員の肘から肩にかけて強い衝撃を与えてしまうことがなく運転操作上好ましいものとなる。
【0020】上記実施の形態は、運転座席に第2エアバック装置を設けた場合について説明したが、助手席に設けてもよいことは勿論である。
【0021】
【発明の効果】この発明によれば、座席の背もたれ部の側部に設けられ着座する乗員の脇下位置から前方に向けて膨張する第2エアバックを備えた第2エアバック装置と、前記ドアのドアトリムに乗員が肘を掛けているかを検知する肘掛検知手段と、衝撃検知手段が衝撃を検知した際に、着座検知手段が着座を検知し且つ肘掛検知手段が肘掛けを検知しているとき第2エアバック装置を作動させ、着座検知手段が着座を検知し肘掛け検知手段が肘掛を検知していないとき第1エアバック装置を作動させる制御手段とを設けたものであるから、乗員がドアトリムに肘を掛けている場合に、第2エアバック装置が作動して第2エアバックが乗員の脇下から前方に向かって膨張する。このため、第2エアバックの膨張により乗員の肘から肩にかけて強い衝撃を与えてしまうことがなく運転操作上好ましいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係わる乗員保護装置を搭載した車室内を示した斜視図である。
【図2】エアバック装置の配置関係を示した車室内の正面図である。
【図3】乗員と膨張した第1,第2エアバックとの位置関係を示した平面図である。
【図4】第2エアバックが膨張した際の側面図である。
【図5】乗員保護装置の制御系の構成を示したブロック図である。
【図6】乗員保護装置の動作を示したフロー図である。
【図7】従来の乗員保護装置を示した説明図である。
【符号の説明】
10 ドア
11 座席
15 衝撃検知センサ(衝撃検知手段)
20 第1エアバック装置
20A 第1エアバック
22 着座検知センサ(着座検知手段)
23 着座検知センサ(着座検知手段)
30 第2エアバック装置
30A 第2エアバック
40 コントロールユニット(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】ドアに取り付けられた第1エアバック装置と、前記ドア側の車体側部に加えられる衝撃を検知する衝撃検知手段と、前記ドア側の座席に乗員が着座しているかを検知する着座検知手段とを備え、前記衝撃検知手段が衝撃を検知した際に、着座検知手段が着座を検知しているとき第1エアバック装置を作動させて第1エアバックを乗員の側面側に膨張させる乗員保護装置において、前記座席の背もたれ部の前記ドア側に設けられ着座する乗員の脇下位置から前方に向かって膨張する第2エアバックを備えた第2エアバック装置と、前記ドアのドアトリムに乗員が肘を掛けているか否かを検知する肘掛検知手段と、前記衝撃検知手段が衝撃を検知した際に、前記着座検知手段が着座を検知し且つ肘掛検知手段が肘掛けを検知しているとき第2エアバック装置を作動させ、着座検知手段が着座を検知し肘掛け検知手段が肘掛けを検知していないとき第1エアバック装置を作動させる制御手段とを設けたことを特徴とする乗員保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開平9−104319
【公開日】平成9年(1997)4月22日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−264050
【出願日】平成7年(1995)10月12日
【出願人】(000001476)株式会社カンセイ (9)