説明

乗客コンベアのトラス構造

本発明は、少なくとも1つの自立式エレメント(4,16)を有する乗客コンベアのトラス構造(2)に関する。自立式エレメント(4,16)は、ローラ成形されたエレメント(4,16)であり、乗客コンベアの移動方向に延びており、ステップチェーンローラ(7a)及びステップローラ(7b)の少なくとも一方を案内する少なくとも1つのレール部(6,8)を備えて形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベアのトラス構造に関する。
【背景技術】
【0002】
乗客コンベアとしては、例えば、エスカレータや動く歩道がある。エスカレータは、例えば、異なるビル階の乗場間に亘って乗客を運ぶ乗客コンベアである。動く歩道は、水平方向に延びるフロア又は僅かに傾斜したフロアに沿って乗客を運ぶために利用される。
【0003】
エスカレータや動く歩道は、通常、トラス構造、移動手すりを有する欄干、踏板、駆動システム、及び係合する踏板を移動させるステップチェーンを含む。エスカレータにおいては、踏板はステップ(階段)状をなしており、動く歩道においては、踏板はパレット状をなしている。ステップチェーンは上方及び下方の乗場間にそれぞれ位置する方向転換セクションの間を無限ループ状に移動する。トラス構造は、床下部分(ベース部)に位置し、コンベアの他の構成要素を支持する。トラス構造は、踏板の側方におけるトラスセクションを含み、移動方向に延びている。各トラスセクションは、乗場を画定する長手方向側にそれぞれ位置する2つの端部セクションを有する。同一の側に位置するエンドセクションは、傾斜した中間セクション又は水平方向に延びる中間セクション(動く歩道の場合)によって接続される。一方の乗場(例えば、エスカレータの場合、通常、上方の乗場)は、駆動システム、つまりトラス間に位置する乗客コンベアのマシンを格納する。
【0004】
エスカレータや動く歩道の駆動システムは、通常、ステップチェーン、ステップチェーン駆動シーブ(例えば、スプロケットや歯車)、軸及び駆動モータを備える。ステップチェーンは、一方の乗場と他方の乗場間を閉ループをなして連続的に移動する。踏板は、ステップチェーン軸を介してステップチェーンに取り付けられる。また、ステップチェーン軸は、トラス構造に固定されたレールにより案内されるステップチェーンローラを支持し、ステップチェーン及び踏板の移動経路を画定する。駆動モータは、直接的に又はトランスミッションを介して、ステップチェーンと係合する駆動シーブを駆動する。
【0005】
共通の乗客コンベアにおいて、乗客コンベアのトラス構造は、ステップチェーンローラ及びステップローラを支持、案内するように配される複数のレールを支持する骨組みを含む。該ローラは、乗客コンベアの踏板及び/又はステップチェーンのリンクに取付けられる。
【0006】
図1は、上記のような従来のトラス構造1の一部を図示するものである。従来のトラス構造1は、2対の長手方向のビーム21,22を含む。ビームは、コンベアの各側において、コンベアの移動方向へと長手方向に延びる。各対のビームは、下方長手方向ビーム21と、該ビーム21と平行をなして上方に位置する上方長手方向ビーム22とからなる。下方長手方向ビーム21及び上方長手方向ビーム22は、複数の垂直ビーム14及び斜めビーム24によって固定され、これにより、コンベアの側方における強固な骨組みを形成し、トラス構造に十分な強度及び剛性を付与する。
【0007】
少なくともいくつかの垂直ビーム14にはクロスプレート20が取付けられる。クロスプレート20にはクロスバー23が取り付けられ2つの骨組みが互いに接続される。
【0008】
ステップチェーンローラ及び/又は踏板ローラを支持する複数のレール18が、クロスプレート20に取り付けられ、該プレートによって支持される。ガイドレール18は、ローラの走行性能を満足させるように、高張力綱(例えば、焼きなまし綱やばね綱)から精密に機械加工される。
【0009】
図1は、長手方向ビーム21,22、レール18及び斜めビーム24の一部を図示するに過ぎず、長手方向ビーム21,22、レール18及び斜めビーム24が切断されているように図示されている。しかし、これは、トラス構造1の全体でなく、一部を図示することを目的とするためである。
【0010】
各ビーム14,21,22,24、クロスプレート20及びレール18は、綱から形成され、複数の溶接されてトラスが形成される。クロスプレート20及びレール18は、調節可能なホルダ及び固定部材によってトラスに固定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来のトラス構造1は、多数の異なる構成要素を含み、該構成要素を別々に形成して個々に取り付けなければならないため、トラス構造1のアッセンブリ化及びメンテナンスは、複雑であり、高価なものとなる。トラスに許容される通常の公差は数ミリ程度であり、ガイドレールに許容される通常の公差は1/10ミリ程度であるため、工場でなされる溶接には、ガイドレールの取付時に要求される正確性を実現するための知識及び経験が必要であり、そのための複雑な装置が含まれる。
【0012】
調節を最小に抑えつつ、十分な正確性をもたらし得る容易に形成及び取付可能な乗客コンベアのトラス構造を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の例示的な実施例は、乗客コンベアのトラス構造を提供し、トラス構造は、乗客コンベアの移動方向に延びる少なくとも1つの自立式エレメントを備え、自立式エレメントがステップチェーンローラ又はステップローラを案内する少なくとも1つのレール部を備えて形成され、自立式エレメントがローラ成形されたエレメントである。
【0014】
本発明は、乗客コンベアを近代化する方法を提供する。乗客コンベアは、踏板のステップローラ及びステップチェーンローラの少なくとも一方を支持する少なくとも1つのレールと、少なくとも1つのレールを支持するトラスと、を備え、該方法は、トラスから少なくとも1つのレールを取り外すステップと、トラスの残存する部材の間にトラス構造を取り付けるステップと、を含む。
【0015】
本発明は、乗客コンベアのトラス構造の自立式エレメントを形成する方法を提供し、該方法は、ローラ成形ステップを含む。
【0016】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の例示的な実施例について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来のトラス構造の一部を示す斜視図。
【図2】本発明によるトラス構造の実施例の一部を示す斜視図。
【図3】図2に示す実施例の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に記載について、コンベアの長手方向とはコンベアの移動方向を意味し、コンベアの側方又は横断方向とは移動方向に対して実質的に直交する方向を意味し、垂直方向とは移動方向及び側方方向によって画定される平面に対して実質的に直交する方向を意味する。
【0019】
トラス構造2は、垂直ビーム14を有する外側フレームを備える。垂直ビーム14はコンベアの長手方向おいて互いに離間して、コンベアの両側に配設される。外側フレームは、コンベアの横断方向に延びる水平方向のクロスバー23を有する。各クロスバー23は、一対の垂直ビーム14を接続し、一対の垂直ビーム14の各々は、コンベアの側方にそれぞれ配される。
【0020】
トラス構造2は、少なくとも一対の自立式のエレメント4,16を有する。一対の自立式エレメントは、上方自立式エレメント4及び下方自立式エレメント16を含む。自立式エレメント4,16は、コンベアの両側で垂直ビーム14にそれぞれ取り付けられる(例えば、溶接による)。
【0021】
特定の据付けにおいては、コンベアの各側には、1つの自立式エレメント4及び1つの自立式エレメント16だけが配される。他の据付けにおいては、コンベアの長手方向において、互いに複数の上方自立式エレメント4及び下方自立式エレメント16が配される。
【0022】
各自立式エレメント4,16は、長手方向かつ垂直方向に延び、ガイドローラ7a,7b用の3つのレール部分6,8,9を有して形成される。ガイドローラ7a,7bは、踏板26,27にそれぞれ取り付けられる。
【0023】
ガイドローラ7aは、ステップチェーン5により係合し、ステップチェーン5は、コンベアの両側において長手方向に延びている。
【0024】
図2に示す4つの自立式エレメント4,16は、ローラ成形された(roller−molded)エレメント、すなわち、適切なシートメタルにローラ成形(ローラモールディング)法を適用することによって形成された自立式エレメント4,16である。
【0025】
図2に図示する実施例において、一対の自立式エレメント4,16は、コンベアの両側に取付けられる。下方自立式エレメント16は、上方自立式エレメント4に対して上下逆で取り付けられる。すなわち、コンベアの各側に位置する2つの自立式エレメント4,16は、上方自立式エレメント4と下方自立式エレメント16との間の中間に位置してコンベアの移動方向に延びる対称面に対して対称的に配される。通常、対称面は、コンベアの上方の負荷セクション(経路)と下方の戻りセクション(経路)とを隔てる分割面である。
【0026】
コンベアの他方の側に配される第2の対の自立式エレメント4,16は、第1の対の自立式エレメント4,16と同一(同様)であり、第2の対の自立式エレメント4,16は、第1および第2の自立式エレメント4,16間の中間に位置してコンベアの移動方向に延びる垂直の対称面に対して対称的に配される。
【0027】
図2に示すように、トラス構造2は、4つの自立式エレメント4,16を有し、該エレメントは、互いに対して向きが異なるように取り付けられている。
【0028】
各自立式エレメント4,16は、3つのローラレール部6,8,9を有する複数のローラ成形された構造体を含み、該ローラレール部は、長手方向に延びて、踏板26,27のステップチェーンローラ7a及びステップローラ7bを支持し、案内する。特に、ステップチェーン5と係合するステップチェーンローラ7aは、第1のレール部6に案内され、ステップローラ7bは、第2のレール部8に案内される。軸11は、対のステップチェーンローラ7aを接続し、各対の各ステップチェーンローラ7aは、コンベアの各側に配される。
【0029】
図2に2つの例示的な踏板26,27を図示する。上方踏板26(すなわち、コンベアの負荷経路を移動する踏板)のローラ7a,7bは、上方自立式エレメント4のレール部6,8に案内される。上方踏板26は、踏板セクション26a及びライザセクション26bを含み、負荷経路を移動する際に、踏板セクション26aが水平となり、コンベアを利用する乗客が踏板セクション26a上に立つことができるように、踏板26が配設される。
【0030】
下方自立式エレメント16のレール部8,9は、下方踏板27(すなわち、コンベアの戻りセクションを移動する踏板)の戻り経路を形成する。下方踏板27は、上方踏板26に対して回転する。
【0031】
自立式エレメント4,16は、垂直バー10及び斜めバー12の形態をなすバー構造を含み、バー構造は、ローラ成形工程の前又は後に、自立式エレメント4,16の形成に用いられるメタルシート材料の一部を切断することにより形成される。
【0032】
図3は、図2に示したトラス構造2のコンベアの移動方向に対して直交する平面に沿った断面図である。
【0033】
外側フレームは、垂直ビーム14及び2つの垂直ビーム14を接続するクロスバー23により形成される。コンベアの側方において、上方自立式エレメント4は、垂直ビーム14に固定される。上方自立式エレメント4は、クロスバー23の上方の領域において延在する。
【0034】
一対の下方自立式エレメント16は、クロスバー23の下方の領域において垂直ビーム14に取り付けられる。
【0035】
各自立式エレメント4,16は、ビーム状のローラ成形された構造体13を含み、該構造体は、実質的に閉じられた断面(閉断面)を有し、コンベアの移動方向に延びて、自立式エレメント4,16の強度及び剛性を付与する。
【0036】
各自立式エレメント4,16は、コンベアの負荷セクションにおいて、上方踏板26のローラ7a,7bを案内する2つのローラ成形されたレール部6,8を含む。上方踏板26は、上方自立式エレメント4の間でクロスバー23と平行に延びる。
【0037】
上方踏板26において、ステップチェーンローラ7aは、上方自立式エレメント4の第1のレール部6によって案内され、ステップチェーンローラ7bは、上方自立式エレメント4の第2のレール部8によって案内される。踏板26,27の向きは変更することができる。すなわち、踏板26,27は、ステップローラ7bの軸を中心に回転し、これにより、ステップチェーンローラ7aとステップローラ7bとの間の垂直方向の距離が変わる。
【0038】
第1および第2のローラ部6,8に加えて、第3のレール部9が自立式エレメント4,16内に形成される。自立式エレメント4,16がコンベアの負荷セクションをなす上方自立式エレメント4として使用されているとき、第3のレール部9は使用されない。
【0039】
図3に示したローラ成形されたレール部6,8,9は、長方形をなす。しかし、他の実施例では、レール部6,8,9は、ローラ成形により形成することができ、かつローラ7a,7bを案内するのに適している他の形状を有していてもよい。
【0040】
図2に示した実施例においては、下方自立式エレメント16は、上方自立式エレメント4と同一であるが、上下逆に取り付けられている。図示しない他の実施例では、下方自立式エレメント16は、上方自立式エレメント4と異なっていてもよい。
【0041】
第2及び第3のローラ成形されたレール部8,9は、下方踏板27の戻り経路を形成する。図3の上方に図示した負荷経路では、ステップチェーンローラ7aは第1のローラ部6によって案内されるが、戻り経路では、ステップチェーンローラ7aは第1のローラ部6によって案内されずに第3のレール部9によって案内される。戻り経路では、第3のレール部9は、第2のレール部8から垂直方向の距離を大きく隔てて位置している。ステップローラ7bは、戻り経路において第2のローラ部8により案内され続ける。
【0042】
その結果、ステップチェーンローラ7aとステップローラ7bとの垂直方向の距離が増加して、戻り経路に沿って移動する下方踏板27は、負荷経路に沿って移動する踏板26,27に対して整列する。
【0043】
図2,3を参照して説明した例示的な実施例によると、トラス構造が容易に製造可能な僅かな数の異なるエレメントを有することにより、低コストでかつ容易に形成、取付可能な乗客コンベアのトラス構造が提供され得る。ローラ成形された自立式エレメント4,16は、従来のトラス構造のレール、クロスバー、垂直ビーム及び斜めビームの機能性を組み合わせている。レール部とトラスを組み合わせたトラス構造により、トラス構造に要求されるスペースがより小さくなるとともに、要求される材料がより少なくなる。
【0044】
ローラ成形法を適用することにより、単一の一体的な部材である十分に高い精度を有する自立式エレメントのレール部及び十分な剛性を有するビーム部を形成することが可能となり、これにより、自立式エレメントが使用中にコンベアを支持するために要求される強度及び剛性を有し得る。さらに、提案する構造によると、レール部は、自立式エレメントの強度及び剛性に貢献をもたらす。
【0045】
上記の実施例によるトラス構造の1つの利点は、要求するスペースがより小さく、したがって、現存のエスカレータのトラス内で容易に取付可能となることである。古いトラスを完全に取り外すことなく、古いコンベアを近代化することが可能である。これにより、古い乗客コンベアの近代化が促進され、迅速に行うことができ、必要なコストが著しく減少する。
【0046】
上記の実施例によるトラス構造は、乗客コンベアの移動方向に延びる少なくとも1つの自立式エレメントを有する。自立式エレメントは、踏板及び/又は駆動部材のローラを案内する少なくとも1つのレール部を備えて形成され、例示的な実施例では、自立式エレメントは、ローラ成形されたエレメントである。自立式エレメントは、ローラ成形法に適したシートメタルワークピースから形成され得る。
【0047】
このような自立式エレメントを利用することにより、トラス構造は、容易に形成かつ取り付けでき、要求される材料も少なくなる。ローラ成形により自立式エレメントを形成することにより、高精度を有する自立式エレメントが低コストで形成され得る。
【0048】
複数のローラ成形された構造体を有する1つ及び同じシート状のワークピースを形成することによって、自立式エレメントが形成され、同時に、トラス構造の要求される強度及び剛性並びにレール部の要求される精度がもたらされる。これらの利点は、主にトラス構造の容易な取り付けによってコストが増加することなく達成され得る。
【0049】
一実施例では、自立式エレメントは、乗客コンベアの移動方向に延びる少なくとも1つの成形されたレール部を有する。ローラ成形されたレール部は、容易にかつ低コストで形成され、所望の乗り心地基準を満たすローラのスムーズな回転に要求される高い精度をもたらす。
【0050】
例示的な実施例では、自立式エレメントに切欠きが形成される。特に、シート材料を切断することにより、移動方向に垂直な方向に延びる垂直バー部分及び斜めバー部分が形成される。自立式エレメントから材料を取り除くことにより、重量が減少する。さらに、切断された材料は他の用途に使用し得る。
【0051】
例示的な実施例では、自立式エレメントは、乗客コンベアの移動方向に延びる少なくとも1つのローラ成形されたビーム構造体を有する。このようなローラ成形されたビーム構造体は、自立式エレメントの強度及び剛性を向上させる。
【0052】
例示的な実施例においては、ローラ成形されたビーム構造体は、実質的に閉じられた断面(閉断面)を有する。このようなビームは、ローラ成形により容易にかつ低コストで形成され、要求される強度及び剛性を自立式エレメントにもたらす。
【0053】
さらなる実施例において、トラス構造は、少なくとも1つの自立式エレメントを支持する複数の垂直ビームを有する。自立式エレメントは、支持のため少なくともいくつかの外側のビームに固定される。自立式エレメントを垂直ビームに固定することにより、自立式エレメントは、容易にベース部分(底部)に支持され得る。自立式エレメントをトラス構造に取付けるときには、溶接、ボルト締め、ネジ留めなど非常に限られた数のジョイントがもたらされる。
【0054】
例示的な実施例においては、乗客コンベアは、エスカレータであり、トラス構造は、エスカレータの傾斜した部分を含む。さらなる実施例では、トラス構造は、乗客コンベアの移動領域及び乗場領域の少なくとも一方を含む。トラス構造が傾斜部、移行領域及び/又は乗場領域を含む場合、移行部分、移行領域及び/又は乗場領域は非常に少ない数の異なるエレメントにより一体的に形成されるため、乗客コンベアは、容易に形成されて取り付けられ得る。これにより、コンベアつまりエスカレータを形成及び取り付ける際に要求される時間及びコストが減少する。
【0055】
トラス構造がコンベア全体に適用される場合、費用効率が最大となる。エスカレータの場合、例えば、前述の提案したトラス構造は、乗場領域、少なくとも1つの傾斜領域及び移行領域を含む。
【0056】
さらなる実施例では、トラス構造は、第1の対の同一の自立式エレメントを含む。第1の対の同一の自立式エレメントは、コンベアの負荷経路に配設される。対の同一の自立式エレメントを用いることにより、単一のローラ成形だけで自立式エレメントを形成することができるためコストが減少する。
【0057】
例示的な実施例においては、トラス構造は、第2の対の自立式エレメントを含む。第2の対の自立式エレメントは、第1の対の自立式エレメントの下方に配され、踏板の戻り経路を形成する。第2の対の自立式エレメントを利用することにより、踏板の戻り経路が有利に低コストでセットされ得る。
【0058】
さらなる実施例では、第2の対の自立式エレメントは、乗客コンベアの移動方向に平行で、戻り流路と負荷経路を隔てる平面に対して第1の対の自立式エレメントと対称的に配される。
【0059】
さらなる実施例では、第2の対の自立式エレメントは、第1の対の自立式エレメントと同一である。したがって、負荷経路及び戻り経路に同一の形態の自立式エレメントが使用され得る。これにより、自立式エレメントの製造に単一のローラ成形工程だけが要求されるため、自立式エレメントを製造するためのコストが減少する。
【0060】
本発明は、乗客コンベアは、ローラ成形されたエレメントである少なくとも1つの自立式エレメントを備え、自立式エレメントは、乗客コンベアの移動方向に延び、かつ踏板又はステップチェーンに対応するローラを案内する少なくとも1つのレール部を有する。このような乗客コンベアは、製造して取り付けなければならないエレメントが非常に少ないため、低コストでかつ容易に形成され、迅速に取り付けることができる。
【0061】
本発明は、乗客コンベアを近代化する方法に関し、現存の乗客コンベアは、踏板のステップローラ又はステップチェーンローラを支持する少なくとも1つのレールと、レールを支持するトラスと、を備える。乗客コンベアを近代化する方法は、古いエスカレータのレールを取り外すステップと、トラスの残存する部材の間にトラス構造を取り付けるステップと、を含む。トラス構造は、ローラ成形されたエレメントである自立式エレメントを備え、自立式エレメントは、少なくとも1つのレール部を有して形成され、該レール部は、踏板のステップローラ及びステップチェーンローラの少なくとも一方を案内する。
【0062】
本発明の現存のコンベアを近代化する方法によると、古いトラス構造を完全に取り外す必要がないため、低コストかつ容易に近代化が実現する。古いトラス構造の一部は、新たな部材、特に、新たなトラス構造を支持するように使用される。これにより、古いコンベアを近代化する際の時間が節約できる。
【0063】
コンベアの近代化方法の実施例では、トラスの一部を取り除くステップは、トラスの水平ビーム及び斜めビームを取り除くことを含み、トラスの垂直ビームを取り除くことは含まない。この実施例では、通常、ベース部分(底部)に強固に固定される垂直ビームを取り除く必要がなく、該ビームを新しいトラスを支持するために使用することができるため、乗客コンベアを有利に近代化することができる。
【0064】
本発明は、ローラ成形するステップを含む自立式エレメントを形成する方法に関する。自立式エレメントは、踏板又はステップチェーンのローラを案内する少なくとも1つのレール部を有する。特に、本発明は、単一のローラ成形法により形成される自立式エレメントを形成する方法に関する。ローラ成形法、単一のローラ成形法を用いることにより、高精度を有する自立式エレメントが容易にかつ低コストで形成され得る。
【0065】
例示的な実施例を参照して本発明について説明してきたが、当業者であれば本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更や修正がなされることを理解されるであろう。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく本発明の教示に対して特定の状況や特定の材料等を適用して種々の変更や修正がなされることを理解されたい。したがって、本発明は開示した特定の実施例に限定されず、本発明は、添付の特許請求の範囲内に包含される全ての実施例を含むものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアの移動方向に延びる少なくとも1つの自立式エレメント(4,16)を備え、
自立式エレメント(4,16)がステップチェーンローラ(7a)又はステップローラ(7b)を案内する少なくとも1つのレール部(6,8,9)を備えて形成され、
自立式エレメント(4,16)がローラ成形されたエレメントであることを特徴とする乗客コンベアのトラス構造(2)。
【請求項2】
自立式エレメント(4,16)が複数の成形された構造体(6,8,9,10,12,13)を含むことを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアのトラス構造(2)。
【請求項3】
自立式エレメント(4,16)は、乗客コンベアの移動方向に延びる少なくとも1つの成形されたレール部(6,8,9)を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の乗客コンベアのトラス構造(2)。
【請求項4】
自立式エレメント(4,16)の少なくとも一部が該エレメントに形成された切欠きを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の乗客コンベアのトラス構造(2)。
【請求項5】
自立式エレメント(4,16)は、乗客コンベアの移動方向に延びる少なくとも1つのローラ成形されたビーム構造体(13)を有することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の乗客コンベアのトラス構造(2)。
【請求項6】
ローラ成形されたビーム構造体(13)は、実質的に閉じられた断面を有することを特徴とする請求項5に記載の乗客コンベアのトラス構造(2)。
【請求項7】
少なくとも1つの自立式エレメント(4,16)を支持する複数の垂直ビーム(14)をさらに備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の乗客コンベアのトラス構造(2)。
【請求項8】
少なくとも1つの自立式エレメント(4,16)は、少なくともいくつかの垂直ビーム(14)に固定されることを特徴とする請求項7に記載の乗客コンベアのトラス構造(2)。
【請求項9】
乗客コンベアは、傾斜した部分を含み、トラス構造(2)は、乗客コンベアの前記傾斜した部分を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の乗客コンベアのトラス構造(2)。
【請求項10】
乗客コンベアは、移行領域及び乗場領域の少なくとも一方を含み、トラス構造(2)は、乗客コンベアの前記移行領域及び前記乗場領域の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の乗客コンベアのトラス構造(2)。
【請求項11】
乗客コンベアの移動方向に対して平行かつ垂直に延びる第1の平面に対して対称をなして乗客コンベアの側方に配設された第1の対の自立式エレメント(4)を備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の乗客コンベアのトラス構造(2)。
【請求項12】
第2の対の自立式エレメント(16)は、第1の対の自立式エレメント(4)の下方に配設されることを特徴とする請求項11に記載の乗客コンベアのトラス構造(2)。
【請求項13】
第2の対の自立式エレメント(16)は、乗客コンベアの移動方向に平行に延びる第2の平面に対して第1の対の自立式エレメント(4)と対称的に配され、第2の平面は第1の平面に対して直交することを特徴とする請求項12に記載の乗客コンベアのトラス構造(2)。
【請求項14】
第2の対の自立式エレメント(16)は、第1の対の自立式エレメント(4)と同一であることを特徴とする請求項12又は13に記載の乗客コンベアのトラス構造(2)。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載されたトラス構造(2)を有することを特徴とする乗客コンベア。
【請求項16】
踏板のステップローラ及びステップチェーンローラの少なくとも一方を支持する少なくとも1つのレール(18)と、少なくとも1つのレール(18)を支持するトラスと、を備える乗客コンベアを近代化する方法であって、
トラスから少なくとも1つのレール(18)を取り外すステップと、
トラスの残存する部材の間に請求項1〜15のいずれかに記載されたトラス構造(2)を取り付けるステップと、
を含むことを特徴とする乗客コンベアを近代化する方法。
【請求項17】
前記取り外すステップは、水平ビーム及び斜めビーム(22,24)をトラスから取り外すことを含むことを特徴とする請求項16に記載の乗客コンベア近代化方法。
【請求項18】
前記取り外すステップは、垂直ビーム(14)を取り外さないことを特徴とする請求項16又は17に記載の乗客コンベア近代化方法。
【請求項19】
ローラ成形ステップを含むことを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載された乗客コンベアのトラス構造の自立式エレメント(4)を形成する方法。
【請求項20】
自立式エレメント(4)は単一のローラ成形法により形成されることを特徴とする請求項19に記載の自立式エレメント(4)形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−508243(P2013−508243A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534780(P2012−534780)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【国際出願番号】PCT/IB2009/007162
【国際公開番号】WO2011/048437
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(591020353)オーチス エレベータ カンパニー (402)
【氏名又は名称原語表記】OTIS ELEVATOR COMPANY
【Fターム(参考)】