説明

乗客コンベアの制御装置及び制御方法

【課題】安全スイッチが動作することによって乗客コンベアが非常停止した場合に、安全を確認した上で、早期に通常運転に復旧させることができるようにする。
【解決手段】乗客コンベアを監視する監視カメラ13を備え、一部の動作原因を監視カメラ13の撮影映像から特定することができる安全スイッチのうちの少なくとも一部を復旧対象として設定した乗客コンベアにおいて、安全スイッチが動作して乗客コンベアが停止した場合に、動作した安全スイッチが復旧対象として設定されており、且つ安全スイッチの動作時間が所定値以内であることを条件として、復旧運転を開始させるための復旧運転許可通報を外部の監視センター14に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エスカレータや動く歩道といった乗客コンベアの制御装置及び制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エスカレータ等の乗客コンベアには、乗客の安全を確保するため、インレットガードスイッチ、スカートガード安全スイッチ、ステップ異常走行検出スイッチといった種々の安全スイッチ(安全装置)が備えられている。そして、上記記載のものを含む各種安全スイッチによって何らかの異常が検出されると、被害が拡大することを防止するため、エスカレータ(乗客コンベア)は緊急停止される。
【0003】
また、エスカレータに設置された安全スイッチに関する従来技術として、各種安全スイッチによって何らかの異常が検出されて、エスカレータが緊急停止された場合に、その後の復旧作業を短時間で行うことができるように、その異常を記憶させて、本体表示装置にその内容を表示させるようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2006−176284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載のものを含め、従来のエスカレータでは、安全スイッチによって何らかの異常が検出されると、エスカレータの保守員が現場に出向き、異常がないことを確認しなければ通常運転に復帰させることができなかった。このため、安全スイッチの動作後、しばらくの間はエスカレータによるサービスを提供することができず、利用者に不便を強いることとなっていた。特に、駅の構内等に設置されたエスカレータ等は、スーツケース等の大きな荷物を抱えた利用者や、車椅子利用者等によって頻繁に利用されるため、早期の復旧が望まれていた。
【0006】
また、エスカレータでは、利用者の荷物やカート類(例えば、ショッピングカートやベビーカー等)がスカートガード等にぶつかってしまった場合に、その衝撃によって安全スイッチが誤動作してしまうことがある。また、些細な悪戯等によって瞬間的に安全スイッチが動作し、エスカレータが非常停止してしまうこともある。このような場合、その多くは、エスカレータに異物が挟まったり引き込まれたりするような事故が発生している訳ではなく、そのまま復帰させても特に問題になることはない。しかし、実際の現場では、エスカレータが一旦非常停止されると、保守員の到着を待って安全を確認してから通常運転に復旧させる必要があり、その間は、エスカレータを利用することができなくなっていた。
【0007】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、安全スイッチが動作することによって乗客コンベアが非常停止した場合に、安全を確認した上で、早期に通常運転に復旧させることができる乗客コンベアの制御装置及び制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る乗客コンベアの制御装置は、乗客コンベアを監視する監視カメラと、所定の異常状態を検出して乗客コンベアを停止させる機能を有するとともに、一部の動作原因を監視カメラの撮影映像から特定することができるもののうち、少なくともその一部が復旧対象として設定された複数の安全スイッチと、安全スイッチが動作して乗客コンベアが停止した場合に、動作した安全スイッチが復旧対象として設定されており、且つ安全スイッチの動作時間が所定値以内であることを条件として、復旧運転を開始させるための復旧運転許可通報を外部の監視センターに出力する運転制御装置と、を備えたものである。
【0009】
この発明に係る乗客コンベアの制御方法は、乗客コンベアを監視する監視カメラと、所定の異常状態を検出して乗客コンベアを停止させる機能を有するとともに、一部の動作原因を監視カメラの撮影映像から特定することができるもののうち、少なくともその一部が復旧対象として設定された複数の安全スイッチと、を備えた乗客コンベアの制御方法であって、安全スイッチが動作して乗客コンベアが停止した場合に、動作した安全スイッチが復旧対象として設定されているか否かを判定するステップと、動作した安全スイッチの動作時間が所定値以内であるか否かを判定するステップと、動作した安全スイッチが復旧対象として設定されており、且つ安全スイッチの動作時間が所定値以内である場合に、復旧運転を開始させるための復旧運転許可指令を外部の監視センターに出力するステップと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、安全スイッチが動作することによって乗客コンベアが非常停止した場合に、安全を確認した上で、早期に通常運転に復旧させることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明をより詳細に説明するため、添付の図面に従ってこれを説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0012】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1における乗客コンベアを示す側面図、図2はこの発明の実施の形態1における乗客コンベアの制御装置を示す構成図である。なお、以下においては、乗客コンベアの一例として、上下階床間の移動に利用される中間傾斜形のエスカレータについて説明し、動く歩道等の他の例についてはその説明を省略する。
【0013】
図1及び図2において、1は上下階床間に架け渡されて、エスカレータの自重及び積載荷重を支持する主枠、2は上部出入口、3は下部出入口、4は上下部出入口2及び3間を循環移動する移動手摺、5は利用者が上下部出入口2及び3間を移動する際に乗るステップである。6は移動手摺4及びステップ5等の駆動装置(図示せず)を含め、エスカレータ全体の運転制御を司る運転制御装置である。なお、運転制御装置6の詳細については後述する。
【0014】
7乃至9はエスカレータに設けられた各種安全スイッチ(安全装置)のうちの一部を示している。具体的に、7はインレットガードスイッチであり、移動手摺4の入り込み口に異物が引き込まれたことを検出して、エスカレータを非常停止させる。また、8はスカートガード安全スイッチであり、スカートガードとステップ5との間に異物が挟まれたことを検出して、エスカレータを非常停止させる。9はステップ異常走行検出スイッチであり、前後のステップ5間に異物が挟まってステップ5が浮き上がったり、ステップ5の走行に異常が発生したことを検出して、エスカレータを非常停止させる。
【0015】
10はファイヤーシャッタースイッチである。このファイヤーシャッタースイッチ10は、火災時に使用されるファイヤーシャッター11の開閉状態、即ちファイヤーシャッター11が閉まっていることを検出する。なお、エスカレータには、上記7乃至10に示す安全スイッチの他にも、主枠1内等に、所定の異常状態を検出するための各種安全スイッチが備えられている。そして、検出装置12は、上記7乃至10を含む各種安全スイッチの動作状態(オン/オフ信号)に基づいて、異常発生の有無と異常が発生した場合の異常個所とを判定し、その判定結果を運転制御装置6に対して出力する。
【0016】
13は上部出入口2の上方に設置され、エスカレータ全体を監視する監視カメラである。この監視カメラ13は、エスカレータの監視専用に設けられたものであり、その映像から、移動手摺4の入り込み口付近の状態、ステップ5の走行及び配置の状態、ステップ5とスカートガードとの隙間に入った異物の有無、ファイヤーシャッター11の開閉状態を確認することができるように撮影方向、解像度等が設定されている。
【0017】
14はエスカレータを遠隔監視する外部の監視センターである。この監視センター14は、遠隔監視盤15によって運転制御装置6を、遠隔映像監視装置16によって監視カメラ13をそれぞれ遠隔制御及び遠隔監視する。上記監視センター14には、例えば、エスカレータの運転状態を監視する状態監視部17、エスカレータを遠隔制御する遠隔制御部18、監視カメラ13の映像を確認する映像確認部19等によって構成される。なお、20は監視センター14及びエスカレータ間の通信制御を行う通信制御装置である。
【0018】
また、上下部乗降口2及び3には、エスカレータの利用者(の有無)を検出する乗客検出装置21(例えば、光電ポスト)が設けられている。この乗客検出装置21は、エスカレータの省エネ等の観点から設置されたものであり、例えば、運転制御装置6は、乗客検出装置21によって利用者が検出されるとエスカレータを起動し、所定時間利用者の検出が途絶えると低速走行或いは停止させるように、インバータ制御盤22に対して動作指令を出力する。
【0019】
なお、図2における23はエスカレータに関する各種情報を利用者に対して音声案内するオートアナウンス装置、24は各種情報を表示案内する表示装置である。このオートアナウンス装置23及び表示装置24は、上記機能を有していれば、その構成は如何なるものであっても構わない。
【0020】
次に、上記運転制御装置6の具体的構成について説明する。
図3はこの発明の実施の形態1における乗客コンベアの運転制御装置を示す構成図である。運転制御装置6は、エスカレータの通常運転制御を司る他、所定の安全スイッチが動作した際に、安全を確認した上で早期に通常運転に復旧させるための一部機能を有している。この運転制御装置6には、例えば、停電検出部25、情報入出力部26、安全スイッチ判定部27、記憶部28、復旧運転制御部29、診断部30、走行距離演算部31、目的位置設定部32、人物有無判定部33が備えられている。
【0021】
停電検出部25は、商用電源(図示せず)からの電力供給状態に基づいて、停電の発生の有無を検出する。そして、停電検出部25は、停電の発生を検出すると、情報入出力部26から監視センター14に対して停電発生の旨の情報を出力する。安全スイッチ判定部27は、何れかの安全スイッチが動作した場合に、通常運転への早期の復旧が可能であるかを、例えば、所定の条件との比較によって判定し、その判定結果を情報入出力部26を介して監視センター14に対して出力する。
【0022】
具体的に、安全スイッチ判定部27は、安全スイッチが動作してエスカレータが緊急停止した場合に、動作した安全スイッチが所定の復旧対象として設定されているか否か、安全スイッチの動作時間が規定値以内であるかを検出する。そして、所定の復旧対象である安全スイッチの動作によってエスカレータが停止し、その動作時間が規定値以内である場合に、早期復旧が可能であると判定し、監視センター14に復旧運転を開始させるための復旧運転許可通報を出力する。
【0023】
上記復旧対象となる安全スイッチとは、動作した場合であっても、所定の条件下、早期復旧が可能なものとして予め設定されたものをいい、例えば、安全スイッチの一部の動作原因を監視カメラ13の撮影映像から特定することができるものをいう。なお、かかる場合には、監視カメラ13の撮影映像から動作原因が特定できる安全スイッチの全てを復旧対象に設定しても良いし、その一部を復旧対象に設定しても良い。即ち、図1及び図2に示すエスカレータでは、インレットガードスイッチ7、スカートガード安全スイッチ8、ステップ異常走行検出スイッチ9、ファイヤーシャッタースイッチ10が、復旧対象の安全スイッチに設定され得る。
【0024】
復旧対象に設定された安全スイッチの情報や、安全スイッチの動作時間を判定するための上記規定値等の各種情報は、記憶部28に記憶されている。
【0025】
復旧運転制御部29は、安全スイッチ判定部27によって早期復旧が可能であると判定され、その後に、監視センター14から情報入出力部26を介して復旧運転指令が入力された場合に、エスカレータを復旧させるために必要な復旧運転を制御する。この復旧運転では、上記安全スイッチによる異常検出位置を通過するようにエスカレータが走行され、復旧運転時における動作状態(異常の有無)が、診断部30によって診断される。そして、この診断部30によって何ら異常が検出されない場合に、エスカレータが通常運転に自動復帰される。
【0026】
なお、走行距離演算部31、目的位置設定部32は復旧運転を実際に動作させるために必要な手段であるが、その具体的動作については後述する。また、人物有無判定部33は、乗客検出装置21の検出結果に基づいて、エスカレータの利用者の有無を判定する。人物有無判定部33の判定結果は、通常運転時の他、上記復旧運転時にも利用される。その具体的動作については後述する。
【0027】
次に、上記構成を有するエスカレータの制御装置の動作について具体的に説明する。図4及び図5はこの発明の実施の形態1における乗客コンベアの制御装置の動作を示すフローチャート、図6及び図7はこの発明の実施の形態1における乗客コンベアの制御装置の機能を説明するための図である。
【0028】
通常運転時に何らかの原因によって安全スイッチが動作し、エスカレータが緊急停止されると(S101)、先ず、停電検出部25によって停電の発生の有無が検出される(S102)。ここで、停電の発生が検出されると、エスカレータの停止は停電が原因であると判断し、運転制御装置6は、監視センター14に対して復旧許可通報を出力する(S103)。かかる場合には、復旧運転等を実施することなく、復電を待ってエスカレータを復旧させる。
【0029】
一方、S102によって停電が検出されない場合には、安全スイッチ判定部27によって安全スイッチの動作の有無を判定する(S104)。ここで、S104において安全スイッチの動作が検出されない場合は、エスカレータに何らかの異常が発生したと判断し、監視センター14に対して異常通報を出力して(S105)、動作を終了する。
【0030】
S104によって安全装置の動作が検出された場合、安全スイッチ判定部27は、次に、動作した安全スイッチを特定し、その安全スイッチが所定の復旧対象として設定されているか否かを判定する(S106)。ここで、動作した安全スイッチが復旧対象ではないと判定された場合は、保守員の派遣等を要請するため、監視センター14に対して異常通報を出力する(S105)。
【0031】
S105において、動作した安全スイッチが復旧対象であると判定された場合、安全スイッチ判定部27は、次に、動作した安全スイッチの動作時間を検出し、その動作時間が所定の規定値以内であるかを判定する(S107)。ここで、安全スイッチの動作時間が上記規定値を超える場合は、監視センター14に対して異常通報を出力する(S105)。また、安全スイッチの動作時間が上記規定値以内である場合は、エスカレータの安全を確認した上で通常運転に復旧させるため、監視センター14に対して復旧運転許可通報を出力する(S108)。
【0032】
なお、S107における判定は、利用者の荷物等の衝突(接触)や些細な悪戯によって安全スイッチが動作した場合、その動作時間が比較的短い時間(通常、100ms程度)になるという事実に基づくものである。そして、このように安全スイッチの動作時間が短い場合には、一般に、異物が挟まったり引き込まれたりするような事故は発生していない。一方、実際にエスカレータに異物が挟まったり引き込まれたりすることによって動作した安全スイッチの動作時間は、1s程度或いは1sを超えることが多い。したがって、上記規定値を、1s、或いは1s以下の任意の値(例えば、500ms程度)に設定しておけば、安全スイッチの動作原因が事故に繋がらないものであることを高精度で判定することができるようになる。
【0033】
監視センター14では、S108で復旧運転許可通報を受けると、先ず、監視カメラ13による撮影映像を確認し、安全スイッチの動作原因を特定する。ここで、監視センター14で異物の挟まれ等が確認できた場合には、復旧運転は実施せず、保守員を派遣してエスカレータを復旧させる。一方、安全スイッチの動作原因が特定できず、何ら問題が生じていないと判断された場合には、遠隔復旧運転指令を出力して(S109)、復旧運転を開始させる。
【0034】
運転制御装置6は、遠隔復旧運転指令が入力されることにより、復旧運転を開始する。この復旧運転では、エスカレータを低速走行させながら、駆動装置(インバータ制御盤22)の電流検出を行い、診断部30によって電流異常の有無を診断する。
【0035】
復旧運転において、運転制御装置6は、先ず、人物有無判定部33によって、乗客検出装置21が利用者を検出したか否かを判定する(S110)。これは、利用者がステップ5上に乗った状態では、正確な診断ができなくなるためである。なお、復旧運転を実施する場合には、オートアナウンス装置23や表示装置24によって、エスカレータが利用できない旨を利用者に対して報知するようにしても良い。
【0036】
人物有無判定部33によって利用者がいないことが確認されると、運転制御装置6は、実際にエスカレータを微速走行させて異常の有無を診断する。ここで、運転制御装置6(復旧運転制御部29)は、先ず、安全スイッチが異常を検出した時の走行方向とは逆方向にエスカレータを所定距離走行させ、この反転走行によって安全スイッチによる異常検出位置を通過させる。具体的に、運転制御装置6は、先ず、上記反転走行で停止させる目的位置を設定し(S111)、図7(a)に示すように、上記目的位置までエスカレータを微速運転させる(S112)。そして、上記反転走行時の電流値を診断部30によって診断し(S113)、異常が検出された場合には、復旧運転を中止させた後、監視センター14に対して異常通報を行う(S114、S115)。
【0037】
なお、上記目的位置は、エスカレータが上記反転走行時に異常検出位置を通過するように設定されるエスカレータの停止位置のことをいい、異常検出位置よりも上流側に設定される。即ち、安全スイッチが異常状態を検出した場合、エスカレータは異常検出後に減速を開始するため、図6に示すように、異常検出位置から距離Lだけ走行した後、完全に停止することになる。そこで、上記目的位置の設定に際しては、先ず、異常検出位置からエスカレータの停止位置までの上記距離Lを、走行距離演算部31により演算する。走行距離演算部31による上記演算は、例えば、駆動装置の出力軸に設けられたロータリーエンコーダからのパルス出力等に基づいて行う。そして、目的位置設定部32は、走行距離演算部31によって演算された距離Lに、更に所定距離αを加算して、上記目的位置を設定する。
【0038】
S113において電流値に異常が無いことが確認されると、運転制御装置6は、次に、走行方向を更に反転させて、異常検出時の走行方向と同じ方向にエスカレータを微速走行させる(S116)。そして、安全スイッチによる異常検出位置を再度通過させた後、異常検出時に停止した停止位置を越えるまで、インバータ制御盤22からの電流値を診断部30によって診断する(S117、S118)。この再反転走行時の診断において異常を検出した場合には、復旧運転を中止させた後、監視センター14に対して異常通報を行う(S114、S115)。
【0039】
また、電流値の異常を検出することなく停止位置を超えた場合には、図7(b)に示すように、通常速度に緩加速して一周以上(一周+所定距離β)の距離を走行させた後、監視センター14に対して復旧通報を行い、エスカレータを遠隔復旧させる(S119乃至S121)。
【0040】
この発明の実施の形態1によれば、単に利用者の荷物がぶつかったり、些細な悪戯によって安全スイッチが動作した場合に、エスカレータの安全を確認した上で、早期に通常運転に復旧させることができ、サービスを大幅に向上させることが可能となる。したがって、保守員の派遣に多大な時間を必要とする無人駅等に設置されたエスカレータに対しては、特に有効な手段となる。
【0041】
また、復旧運転時、エスカレータを反転走行させて異常検出位置を通過させるようにしているため、短時間、及び短い走行距離で異常検出位置の診断を実施することができる。このため、エスカレータの他の部分に余計な損傷を与えることなく、早期の復旧が可能となる。即ち、復旧運転時、反転走行させなくても、異常検出時の走行方向と同じ方向に1周走行させれば、異常検出位置の診断を行うことは可能である。しかし、かかる場合、復旧運転に要する時間が長くなるといった問題や、異常が発生している場合には、その異常個所が1周走行の間に他の機器類に損傷を与えてしまうといった問題があった。
【0042】
また、上記反転走行の後、更に反転走行させて診断することにより、エスカレータを両方向に走行させた場合の診断が可能となる。これにより、短時間で、精度の高い診断を実施することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明の実施の形態1における乗客コンベアを示す側面図である。
【図2】この発明の実施の形態1における乗客コンベアの制御装置を示す構成図である。
【図3】この発明の実施の形態1における乗客コンベアの運転制御装置を示す構成図である。
【図4】この発明の実施の形態1における乗客コンベアの制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態1における乗客コンベアの制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態1における乗客コンベアの制御装置の機能を説明するための図である。
【図7】この発明の実施の形態1における乗客コンベアの制御装置の機能を説明するための図である。
【符号の説明】
【0044】
1 主枠、 2 上部出入口、 3 下部出入口、 4 移動手摺、 5 ステップ、
6 運転制御装置、 7 インレットガードスイッチ、
8 スカートガード安全スイッチ、 9 ステップ異常走行検出スイッチ、
10 ファイヤーシャッタースイッチ、 11 ファイヤーシャッター、
12 検出装置、 13 監視カメラ、 14 監視センター、 15 遠隔監視盤、
16 遠隔映像監視装置、 17 状態監視部、 18 遠隔制御部、
19 映像確認部、 20 通信制御装置、 21 乗客検出装置、
22 インバータ制御盤、 23 オートアナウンス装置、 24 表示装置、
25 停電検出部、 26 情報入出力部、 27 安全スイッチ判定部、
28 記憶部、 29 復旧運転制御部、 30 診断部、 31 走行距離演算部、
32 目的位置設定部、 33 人物有無判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアを監視する監視カメラと、
所定の異常状態を検出して前記乗客コンベアを停止させる機能を有するとともに、一部の動作原因を前記監視カメラの撮影映像から特定することができるもののうち、少なくともその一部が復旧対象として設定された複数の安全スイッチと、
前記安全スイッチが動作して前記乗客コンベアが停止した場合に、動作した前記安全スイッチが復旧対象として設定されており、且つ前記安全スイッチの動作時間が所定値以内であることを条件として、復旧運転を開始させるための復旧運転許可通報を外部の監視センターに出力する運転制御装置と、
を備えたことを特徴とする乗客コンベアの制御装置。
【請求項2】
運転制御装置は、
安全スイッチが動作して乗客コンベアが停止した場合に、動作した前記安全スイッチが復旧対象として設定されているか否か、前記安全スイッチの動作時間が所定値以内であるか否かを判定し、条件に該当する場合に復旧運転許可通報を出力する安全スイッチ判定部と、
前記復旧運転許可通報に対する復旧運転指令が外部から入力された場合に、前記安全スイッチによる異常検出位置を通過するように、前記乗客コンベアを走行させる復旧運転制御部と、
前記復旧運転制御部による走行時に、異常の有無を診断する診断部と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアの制御装置。
【請求項3】
復旧運転制御部は、復旧運転指令が外部から入力された場合に、安全スイッチが異常を検出した時の走行方向とは逆方向に乗客コンベアを走行させて、前記安全スイッチによる異常検出位置を通過させることを特徴とする請求項2に記載の乗客コンベアの制御装置。
【請求項4】
運転制御装置は、
安全スイッチが異常を検出した位置から乗客コンベアが停止した位置までの第1距離を演算する走行距離演算部と、
前記走行距離演算部によって演算された第1距離に所定の第2距離を加算して、目的位置を設定する目的位置設定部と、
を備え、
復旧運転制御部は、復旧運転指令が外部から入力された場合に、前記安全スイッチが異常を検出した時の走行方向とは逆方向に前記目的位置まで前記乗客コンベアを走行させて、前記安全スイッチによる異常検出位置を通過させるとともに、前記目的位置で前記乗客コンベアの走行方向を更に反転させて、前記安全スイッチによる異常検出位置を再度通過させることを特徴とする請求項2に記載の乗客コンベアの制御装置。
【請求項5】
乗客コンベアを監視する監視カメラと、
所定の異常状態を検出して前記乗客コンベアを停止させる機能を有するとともに、一部の動作原因を前記監視カメラの撮影映像から特定することができるもののうち、少なくともその一部が復旧対象として設定された複数の安全スイッチと、
を備えた乗客コンベアの制御方法であって、
前記安全スイッチが動作して前記乗客コンベアが停止した場合に、動作した前記安全スイッチが復旧対象として設定されているか否かを判定するステップと、
動作した前記安全スイッチの動作時間が所定値以内であるか否かを判定するステップと、
動作した前記安全スイッチが復旧対象として設定されており、且つ前記安全スイッチの動作時間が所定値以内である場合に、復旧運転を開始させるための復旧運転許可指令を外部の監視センターに出力するステップと、
を備えたことを特徴とする乗客コンベアの制御方法。
【請求項6】
復旧運転許可通報に対する復旧運転指令が外部から入力された場合に、安全スイッチによる異常検出位置を通過するように乗客コンベアを走行させるステップと、
復旧運転指令入力後の前記走行時に、異常の有無を診断するステップと、
を備えたことを特徴とする請求項5に記載の乗客コンベアの制御方法。
【請求項7】
復旧運転許可通報に対する復旧運転指令が外部から入力された場合に、安全スイッチが異常を検出した時の走行方向とは逆方向に乗客コンベアを走行させて、前記安全スイッチによる異常検出位置を通過させるステップと、
復旧運転指令入力後の前記反転走行時に、異常の有無を診断するステップと、
を備えたことを特徴とする請求項5に記載の乗客コンベアの制御方法。
【請求項8】
復旧運転指令入力後の反転走行によって安全スイッチの異常検出位置を通過した後、走行方向を更に反転させて、前記安全スイッチの異常検出位置を再度通過させるステップと、
復旧運転指令入力後の前記再反転走行時に、異常の有無を診断するステップと、
を備えたことを特徴とする請求項7に記載の乗客コンベアの制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−35339(P2009−35339A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198453(P2007−198453)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】