説明

乗客コンベアの手摺駆動用伝達条体の変調検出装置

【課題】本発明は、保守作業員による手摺駆動用伝達条体のテンションの確認作業を不要とすることができ、乗客コンベアの保守点検の作業効率を向上させることができる乗客コンベアの手摺駆動用伝達条体の変調検出装置を得ることを目的とするものである。
【解決手段】テンション監視ユニット16は、トラス1に固定された取付板17、第1摺動板18、第2摺動板19、第1歯車20、第2歯車21、一対の引張ばね22、カム23、及び第1スイッチ24を有している。引張ばね22は、第1摺動板18と第2摺動板19とを互いに接近する方向へ引っ張る。第1スイッチ24の開閉接点の開閉状況は、制御盤によって監視されている。第1スイッチ24の開閉接点が開放又は短絡すると、制御盤によって、第1手摺駆動チェーン12が不良テンション状態になったことが検出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モータからの駆動力を手摺駆動機構に伝える無端状の手摺駆動用伝達条体の弛み量が、予め設定された弛み許容量を超えたことを検出する乗客コンベアの手摺駆動用伝達条体の変調検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の乗客コンベアの安全装置では、モータからの駆動力を手摺駆動機構に伝える手摺駆動チェーン(手摺駆動用伝達条体)の一側と他側とにそれぞれ接するように一対のアイドラが変位可能に設けられ、各アイドラが変位したことに応じて、移動手摺に加わる過負荷が検出される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−290520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、一般的な乗客コンベアでは、保守点検の際に、保守作業員によって手摺駆動用伝達条体(手摺駆動チェーン又は手摺駆動ベルト)のテンションが確認される。しかしながら、通常、手摺駆動機構(手摺駆動装置)が機械室から離れた位置に配置されているため、手摺駆動用伝達条体のテンションを確認する際には、ステップ及びスカートガード等を取り外す必要があり、機械室内に収容されたモータ等の点検と別行程の作業(例えば、2人掛かりで30分の作業)を要しており、乗客コンベアの保守点検の作業効率が低下していた。
【0005】
また、乗客コンベアの設置環境によっては、保守点検のための乗客コンベアの運休時間が制約されていることもあり、手摺駆動用伝達条体のテンションの確認作業に十分な時間を割り当てることが困難で、その確認作業自体が省略されてしまう場合もあった。そして、このような場合、設置当初の適正テンション状態から手摺駆動用伝達条体が大きく弛んで、手摺駆動用伝達条体が不良テンション状態となってしまうと、手摺駆動機構等の駆動系統から異音が生じたり、適正テンション状態よりも駆動系統の各部品が劣化しやすくなったりしてしまっていた。これに対して、上記のような従来の乗客コンベアの安全装置では、移動手摺に加わる過負荷を検出可能であるが、手摺駆動用伝達条体の不良テンション状態を検出することはできなかった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、保守作業員による手摺駆動用伝達条体のテンションの確認作業を不要とすることができ、乗客コンベアの保守点検の作業効率を向上させることができる乗客コンベアの手摺駆動用伝達条体の変調検出装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る乗客コンベアの手摺駆動用伝達条体の変調検出装置は、移動手摺を駆動させるための手摺駆動機構にモータからの駆動力を伝える無端状の手摺駆動用伝達条体が、手摺駆動用伝達条体の弛み量が予め設定された弛み許容量を超えた不良テンション状態になったことを検出するものであって、手摺駆動用伝達条体の一側に接するように設けられ、手摺駆動用伝達条体の循環経路に交差する方向へ変位可能な第1接触体、手摺駆動用伝達条体の他側に接するように設けられ、かつ第1接触体から間隔をおいて配置され、循環経路に交差する方向へ変位可能な第2接触体、第1接触体及び第2接触体が互いに接近する方向及び開離する方向のうち、手摺駆動用伝達条体を緊張させる方向へ第1接触体及び第2接触体を付勢する付勢手段、第1接触体と第2接触体との間の間隔が、弛み許容量に対応する所定距離に達したことを検出する不良テンション検出手段、及び不良テンション検出手段の検出状況に応じて、手摺駆動用伝達条体が不良テンション状態になったことを保守作業員に知らせるための不良テンション発生告知部を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明の乗客コンベアの手摺駆動用伝達条体の変調検出装置は、手摺駆動用伝達条体の一側に接するように設けられた第1接触体と、手摺駆動用伝達条体の他側に接するように設けられた第2接触体とが、付勢手段によって手摺駆動用伝達条体が緊張する方向へ付勢され、第1接触体と第2接触体との間の距離が所定距離に達すると、不良テンション発生告知部によって保守作業員に手摺駆動用伝達条体が不良テンション状態になったことを告知可能となるので、保守作業員による手摺駆動用伝達条体のテンションの確認作業を不要とすることができ、乗客コンベアの保守点検の作業効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるエスカレータを示す側面図である。
図において、建物の上階床と下階床との間には、トラス1が掛け渡されている。トラス1は、上階側水平部1a、下階側水平部1b及び傾斜部1cを有している。上階側水平部1a及び下階側水平部1bには、それぞれ機械室が設けられている。
【0010】
また、トラス1には、一対の欄干2がトラス1の長手方向に沿って立設されている。さらに、トラス1には、複数のステップ(踏段)3が上階側水平部1aと下階側水平部1bとの間を循環移動可能に設けられている。各欄干2には、手摺レール(図示せず)が設けられている。手摺レールには、移動手摺4が走行可能に設けられている。移動手摺4の走行は、手摺レールによって案内される。
【0011】
上階側水平部1aの機械室には、駆動力発生源であるモータ5、駆動スプロケット6、上部スプロケット7、手摺駆動用スプロケット8、及び制御盤9が設けられている。下階側水平部1bの機械室には、下部スプロケット(図示せず)が設けられている。モータ5は、回転軸を有しており、その回転軸には、出力用スプロケットが取り付けられている。モータ5の駆動は、制御盤9によって制御される。
【0012】
出力用スプロケットと駆動スプロケット6とには、無端状の主駆動チェーン10が巻き掛けられている。駆動スプロケット6、上部スプロケット7、手摺駆動用スプロケット8は、同一の回転軸上に配置されており、いずれも同期して回転される。上部スプロケット7と下部スプロケットとには、互いに隣り合うステップ3同士を連結する無端状のステップチェーン11が巻き掛けられている。
【0013】
手摺駆動用スプロケット8は、無端状の手摺駆動用伝達条体としての第1手摺駆動チェーン12を介して、移動手摺4を駆動する第1手摺駆動機構(手摺駆動装置)13に接続されている。また、手摺駆動用スプロケット8は、第1手摺駆動チェーン12及び第2手摺駆動チェーン14を介して、第2手摺駆動機構15に接続されている。第1手摺駆動機構13と手摺駆動用スプロケット8との間には、テンション監視ユニット16が設けられている。第1手摺駆動機構13及び第2手摺駆動機構15は、モータ5の駆動力を受けて、移動手摺4を走行させる。つまり、モータ5からの駆動力によって、ステップ3及び移動手摺4が互いに同期して走行される。
【0014】
図2は、図1のテンション監視ユニット16を拡大して示す正面図である。図3は、図2のIII−III線に沿う断面図である。テンション監視ユニット16は、トラス1に固定された取付板17、第1摺動板18、第2摺動板19、第1接触体としての第1歯車(上歯車)20、第2接触体としての第2歯車(下歯車)21、付勢手段としての一対の引張ばね22、カム23、及び不良テンション検出手段としての第1スイッチ24を有している。
【0015】
取付板17には、図の上下方向に沿う複数の摺動溝17aが設けられている。第1摺動板18は、一対の挿入部18aを有している。これらの挿入部18aは、それぞれ摺動溝17aに挿入されている。つまり、第1摺動板18は、摺動溝17aに沿って摺動可能となっている。第2摺動板19は、第1摺動板18と同様に、摺動溝17aに挿入された一対の挿入部19aを有しており、摺動溝17aに沿って摺動可能となっている。なお、各挿入部18a,19aの先端箇所には、抜け止め加工が施されている。
【0016】
第1歯車20は、第1摺動板18の取付板17の反対側の側面に回転自在に取り付けられている。また、第1歯車20は、第1手摺駆動チェーン12の一側(循環経路の往路)に接するように設けられている。第2歯車21は、第2摺動板19の取付板17の反対側の側面に回転自在に取り付けられている。また、第2歯車21は、第1手摺駆動チェーン12の他側(循環経路の復路)に接するように設けられている。第1歯車20及び第2歯車21は、第1手摺駆動チェーン12の循環移動に伴って回転する。また、第1歯車20及び第2歯車21は、それぞれ第1手摺駆動チェーン12の循環経路に交差する方向へ変位可能となっている。
【0017】
引張ばね22は、第1摺動板18と第2摺動板19との間に取り付けられている。また、引張ばね22は、第1摺動板18と第2摺動板19とを互いに接近する方向へ引っ張る。カム23は、第1摺動板18に取り付けられている。第1スイッチ24は、第2摺動板19に取り付けられている。第1スイッチ24は、プッシュスイッチであり、第1スイッチ24の開閉接点は、図中の上方からカム23によって押圧されることにより開放(常閉式スイッチの場合)又は短絡(常開式スイッチの場合)される。また、第1スイッチ24の開閉接点の開閉状況は、制御盤9によって監視されている。
【0018】
ここで、適正テンション状態のときの第1手摺駆動チェーン12の上下振れ幅を30mmとした場合、弛み許容量が+10mmとなる。なお、適正テンション状態とは、エスカレータの設置当初における第1手摺駆動チェーン12の緊張状態のことである。そして、その弛み許容量を超えて第1手摺駆動チェーン12が弛むと、第1手摺駆動チェーン12が不良テンション状態となる。この第1手摺駆動チェーン12の不良テンション状態を検出するため、第1摺動板18及び第2摺動板19は、互いに接する方向に引張ばね22のばね力によって引き寄せられて、適正テンション状態の第1手摺駆動チェーン12の一側と他側との間の間隔(図中上下方向の間隔)が30mm縮められる。
【0019】
つまり、第1摺動板18及び第2摺動板19は、互いに接近する方向及び開離する方向のうち、第1手摺駆動チェーン12を緊張させる方向へ引張ばね22によって付勢される。この状態において、第1摺動板18と第2摺動板19との間の間隔が10mm縮まったことに応じて第1スイッチ24の開閉接点が開放又は短絡されるように、第1手摺駆動チェーン12が適正テンション状態のときの第1スイッチ24とカム23との間の距離が決定される。そして、第1スイッチ24の開閉接点が開放又は短絡すると、制御盤9が第1手摺駆動チェーン12の不良テンション状態の発生を検出する。
【0020】
制御盤9が第1手摺駆動チェーン12の不良テンション状態の発生を検出すると、制御盤9に組み込まれた不良テンション発生記憶手段(図示せず)が不良テンション検出履歴を記憶する。なお、第1手摺駆動チェーン12におけるチェーンの一時的な暴れによる誤検出を回避するため、第1スイッチ24の連続検出時間(開閉接点の連続開放時間又は連続短絡時間)が所定時間(例えば5秒)を超過した場合に、不良テンション発生記憶手段が不良テンション検出履歴を記憶する。即ち、制御盤9が所定時間以内の第1スイッチ24を介した検出内容をマスクする。また、制御盤9には、表示部(モニタ、ディスプレイ等;図示せず)が設けられており、不良テンション発生記憶手段の記憶内容が表示手段に表示される。これらの不良テンション発生記憶手段及び表示手段は、保守作業員に第1手摺駆動チェーン12が不良テンション状態になったことを知らせるための不良テンション発生告知部を構成している。
【0021】
次に、動作について説明する。管理者によって起動スイッチ(図示せず)が操作されると、制御盤9からモータ5に駆動指令が伝わり、モータ5が駆動される。このモータ5の駆動力が主駆動チェーン10を介して、駆動スプロケット6、上部スプロケット7及び手摺駆動用スプロケット8に伝わり、これらのスプロケット6〜8が回転される。そして、上部スプロケット7が回転することによって、ステップチェーン11が循環移動されて、ステップ3が走行される。これとともに、手摺駆動用スプロケット8が回転することによって、第1手摺駆動チェーン12を介して第1手摺駆動機構13にモータ5からの駆動力が伝わりつつ、第1手摺駆動チェーン12及び第2手摺駆動チェーン14を介して第2手摺駆動機構15にモータ5からの駆動力が伝わる。そして、第1手摺駆動機構13及び第2手摺駆動機構15によって移動手摺4が走行される。
【0022】
ここで、ステップ3の走行中に、第1スイッチ24の開閉接点が開放又は短絡すると、制御盤9は、その第1スイッチ24の連続検出時間を測定し、その連続検出時間が所定時間以内であれば、第1手摺駆動チェーン12の一時的な暴れであると判断して、不良テンション検出履歴を残さない。一方、第1スイッチ24の連続検出時間が所定時間を超過した場合、制御盤9は、第1手摺駆動チェーン12が不良テンション状態になったと判断し、不良テンション発生記憶手段に不良テンション検出履歴を記憶する。不良テンション発生記憶手段に記憶された不良テンション検出履歴は、表示手段に表示され、保守作業員によって視認可能となっている。
【0023】
上記のようなエスカレータの手摺駆動チェーンの変調検出装置では、第1手摺駆動チェーン12の一側に接するように設けられた第1歯車20と、第1手摺駆動チェーン12の他側に接するように設けられた第2歯車21とが、引張ばね22によって第1手摺駆動チェーン12が緊張する方向へ付勢され、第1歯車20と第2歯車21との間の距離が所定距離に達すると、制御盤9における不良テンション発生記憶手段及び表示手段によって保守作業員に第1手摺駆動チェーン12が不良テンション状態になったことを告知可能となるので、保守作業員による第1手摺駆動チェーン12のテンションの確認作業を不要とすることができ、乗客コンベアの保守点検の作業効率を向上させることができる。
【0024】
また、第1スイッチ24の連続検出時間が所定時間を超過した場合に、不良テンション発生記憶手段が不良テンション検出履歴を記憶するので、第1手摺駆動チェーン12の一時的な暴れを不良テンション検出履歴に残さないことにより、第1手摺駆動チェーン12の不良テンション状態の検出精度を向上させることができる。
【0025】
さらに、第1歯車20と第2歯車21との間の距離が所定距離に達したことにより、第1手摺駆動チェーン12が不良テンション検出履歴になったことを検出するので、エスカレータのUP運転及びDOWN運転の両方の運転に同一のテンション監視ユニット16の構成で対応することができる。
【0026】
ここで、第1手摺駆動チェーン12が不良テンション状態のままでエスカレータの運転を継続させた場合、各スプロケットの磨耗速度が適正テンション状態のときよりも速くなったり、アイドラや駆動軸等の軸受に過負荷が掛かったりして、手摺駆動系統の各部品の劣化が適正テンション状態のときよりも進んでしまい、エスカレータの耐用年数未満での早期不具合を誘発してしまうことがあり、その結果、エスカレータの復旧作業に多大な時間と労力とを費やすこととなってしまう。これに対して、上記のようなエスカレータの手摺駆動チェーンの変調検出装置では、第1手摺駆動チェーン12の不良テンション状態を早期に発見することが可能となり、保守作業によって第1手摺駆動チェーン12を適正テンション状態に維持することにより、エスカレータの耐用年数未満での早期不具合の発生を抑制することができる。
【0027】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2について説明する。図4は、実施の形態2によるエスカレータの手摺駆動チェーンの変調検出装置を示す正面図である。実施の形態2では、回転レバー式の第2スイッチ25及び第3スイッチ26が上下方向に間隔をおいて設けられている。各スイッチ25,26のレバーは、棒状のカム23によって操作される。第2スイッチ25は、不良テンション検出手段を構成しており、第1摺動板18と第2摺動板19との間の間隔が所定距離分縮まったことを検出するためのものである。一方、第3スイッチ26は、運転障害検出手段を構成しており、第1歯車20と第2歯車21との間の感覚が第2スイッチ25における所定距離よりも長い距離(例えば適正テンション状態のときの+20mm)である走行障害距離分縮まったことを検出するためのものである。
【0028】
ここで、第3スイッチ26の開閉接点が開放又は短絡した場合、制御盤9は、第1手摺駆動チェーン12の弛み量が、不良テンション状態のときの弛み量からさらに増大したことにより移動手摺4の走行に支障が生じると判断し、モータ5の駆動を停止させて、ステップ3及び移動手摺4の走行を停止させる。つまり、第3スイッチ26の開閉接点は、開放又は閉鎖されると、ステップ3の走行を停止するための信号を制御盤9に送る。他の構成及び動作は、実施の形態1と同様である。
【0029】
上記のようなエスカレータの手摺駆動チェーンの変調検出装置では、制御盤9が、第3スイッチ26を介して、第2スイッチ25が検出するための第1手摺駆動チェーン12の弛み量よりも大きな弛み量を検出し、ステップ3の走行を停止するので、第1手摺駆動チェーン12の弛み量が不良テンション状態からさらに増大した場合に、手摺駆動系統の各機器の異常損耗や破損を抑制することができる。
【0030】
なお、実施の形態1,2では、エスカレータの手摺駆動チェーンの変調検出装置について説明したが、この発明は、動く歩道の手摺駆動チェーンの変調検出装置にも適用できる。
【0031】
また、実施の形態1,2では、手摺駆動用伝達条体として第1手摺駆動チェーン12及び第2手摺駆動チェーン14を用いたが、チェーンに限るものではなく、Vベルト又は平ベルトを手摺駆動用伝達条体として用いてもよい。この場合、第1歯車20及び第2歯車21に換えて、ローラを接触体として用いればよい。
【0032】
さらに、実施の形態1,2では、第1手摺駆動チェーン12のテンションを監視していたが、テンション監視ユニット16を第2手摺駆動チェーン14の循環経路の近傍箇所に設けて、第2手摺駆動チェーン14のテンションも監視してもよい。
【0033】
さらにまた、実施の形態1,2では、不良テンション発生記憶手段及び表示手段を不良テンション発生告知部として用いたが、発光ダイオードや電球等の発光手段を不良テンション発生告知部として用いてもよい。この場合、発光手段をスイッチに電気的に接続して、スイッチの開閉接点が開放又は閉鎖したことに応じて、発光手段を発光させればよい。これによって、安価な構成で、手摺駆動用伝達手段が不良テンション状態になったことを保守作業員に告知可能とすることができる。これに加えて、その発光手段を例えば欄干(スカートガード等)に設けてもよく、保守作業員が機械室を開放することなく手摺駆動用伝達条体が不良テンション状態になったことを確認することができる。また、不良テンション発生記憶手段の記憶内容に応じて発光手段を発光させてもよい。
【0034】
さらに、実施の形態1,2では、不良テンション検出手段として第1スイッチ24及び第2スイッチ25を用いて、運転障害検出手段として第3スイッチ26を用いたが、不良テンション検出手段及び運転障害検出手段は、これらの例に限るものではなく、スライドボリューム(可変抵抗)や光電式リニアセンサ等を用いて、第1接触子と第2接触子との間の距離を測定し、その距離に応じて、手摺駆動用伝達手段が不良テンション状態になったことを検出してもよい。
【0035】
さらにまた、実施の形態1,2では、第1手摺駆動チェーン12の循環経路の外側から挟み込むように、第1手摺駆動チェーン12の一側に第1歯車20を設けて、第1手摺駆動チェーン12の他側に第2歯車21を設けたが、この例に限る物ではなく、第1接触子及び第2接触子を手摺駆動用伝達手段の循環経路の内側に設けてもよい。この場合、第1接触子及び第2接触子を互いに開離するように付勢して、第1接触子及び第2接触子が開離した距離に応じて、手摺駆動用伝達手段が不良テンション状態になったことを検出してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の実施の形態1によるエスカレータを示す側面図である。
【図2】図1のチェーンテンション監視機構を拡大して示す正面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】この発明の実施の形態2によるエスカレータの手摺駆動チェーンの変調検出装置を示す正面図である。
【符号の説明】
【0037】
3 ステップ、4 移動手摺、5 モータ、8 手摺駆動用スプロケット、9 制御盤、12 第1手摺駆動チェーン、13 第1手摺駆動機構、20 第1歯車(第1接触体)、21 第2歯車(第2接触体)、22 引張ばね(付勢手段)、24 第1スイッチ(不良テンション検出手段)、25 第2スイッチ(不良テンション検出手段)、26 第3スイッチ(運転障害検出手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動手摺を駆動させるための手摺駆動機構にモータからの駆動力を伝える無端状の手摺駆動用伝達条体が、上記手摺駆動用伝達条体の弛み量が予め設定された弛み許容量を超えた不良テンション状態になったことを検出する乗客コンベアの手摺駆動用伝達条体の変調検出装置であって、
上記手摺駆動用伝達条体の一側に接するように設けられ、上記手摺駆動用伝達条体の循環経路に交差する方向へ変位可能な第1接触体、
上記手摺駆動用伝達条体の他側に接するように設けられ、かつ上記第1接触体から間隔をおいて配置され、上記循環経路に交差する方向へ変位可能な第2接触体、
上記第1接触体及び上記第2接触体が互いに接近する方向及び開離する方向のうち、上記手摺駆動用伝達条体を緊張させる方向へ上記第1接触体及び上記第2接触体を付勢する付勢手段、
上記第1接触体と上記第2接触体との間の間隔が、上記弛み許容量に対応する所定距離に達したことを検出する不良テンション検出手段、及び
上記不良テンション検出手段の検出状況に応じて、上記手摺駆動用伝達条体が不良テンション状態になったことを保守作業員に知らせるための不良テンション発生告知部
を備えていることを特徴とする乗客コンベアの手摺駆動用伝達条体の変調検出装置。
【請求項2】
上記不良テンション発生告知部は、上記不良テンション検出手段の検出内容を不良テンション検出履歴として記憶する不良テンション発生記憶手段と、機械室内に設けられ上記不良テンション発生記憶手段の記憶内容を表示するための表示手段とにより構成されていることを特徴とする請求項1記載の乗客コンベアの手摺駆動用伝達条体の変調検出装置。
【請求項3】
上記不良テンション発生記憶手段は、上記不良テンション検出手段の連続検出時間が所定時間を超えたときに、上記不良テンション検出履歴を記憶することを特徴とする請求項2記載の乗客コンベアの手摺駆動用伝達条体の変調検出装置。
【請求項4】
上記不良テンション発生告知部は、上記不良テンション検出手段に電気的に接続された発光手段により構成されており、
上記発光手段は、上記不良テンション検出手段が所定距離に達したことを検出したことに応じて発光することにより、保守作業員に上記手摺駆動用伝達条体が不良テンション状態になったことを知らせることを特徴とする請求項1記載の乗客コンベアの手摺駆動用伝達条体の変調検出装置。
【請求項5】
上記不良テンション検出手段が検出する上記手摺駆動用伝達条体の弛み量よりも大きな上記手摺駆動用伝達条体の弛み量を検出し、ステップの走行を停止するための信号を上記ステップの走行を制御する走行制御部に送る運転障害検出手段
をさらに備えていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の乗客コンベアの手摺駆動用伝達条体の変調検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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