説明

乗客コンベアの欄干装置

【課題】乗客の靴等が挟まれることの防止と、モールが剥がされることの防止と、乗客の衣服等の損傷の防止を少ない部品数で実現させることができるとともに、比較的短時間のうちに設置することができるようにした。
【解決手段】本発明は、エスカレータの長手方向の全長にわたって延設され、内側デッキ2のステップ1方向への突出部2aの下部側に配置され、内部に内側デッキ2の下辺部近傍に設けられる締結部に螺合するねじ12b,11の頭部を保持し、これらの頭部に連設された軸部の挿通を許容させる溝3dを有するモール3と、このモール3に保持され、ステップ1に向かって下向き傾斜状に配置されるドレスガード6とを備え、モール3の溝部3dに前記頭部が保持されたねじ12b,11を介して、モール3、内側デッキ2、及びスカートガード4をデッキベース7に固定した構成にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステップ方向に突出するモール、及びステップ方向に突出するドレスガードを有するエスカレータや動く歩道等の乗客コンベアの欄干装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗客コンベア例えばエスカレータは、建屋にトラスが据え付けられ、このトラスに乗客を搬送する複数のステップが無端状に走行可能に組み込まれ、これらのステップの側方に欄干装置が設けられている。この種の従来の乗客コンベアの欄干装置として特許文献1に示されるものがある。この従来技術は、ステップの側方に隙間をあけて立設され、トラスに取り付けられたデッキベースに皿ねじで固定されたスカートガードと、このスカートガードを挟んでステップの反対側の位置に立設された欄干パネルと、この欄干パネルとスカートガードとの間に設けられ、スカートガード側の端部がデッキベースに皿ねじで固定された内側デッキとを備えている。また、この従来技術は、スカートガードとデッキベースとを固定する皿ねじ、及びこの皿ねじを覆いながらステップ側に突出するモールを備えている。このモールは、当該モールの内部に収容される隠しボルトによりデッキベースに固定されている。
【0003】
このように構成された特許文献1に示される従来技術は、モールをステップ側に突出するように設けたことから、ステップの乗客の靴等がスカートガードとステップとの間に形成される隙間に挟まれることを防ぐことができる。また、モールの内部に収容される隠しボルトによってモールをデッキベースに固定するようにしてあることから、隠しボルトの頭部が外部に露呈せず、これによりモールが悪戯などによって剥がされることを防ぐことができる、という利点を有している。
【0004】
一方、特許文献2には、ステップの両側部に配置されるスカートガードの表面側の、ステップの踏み面より上方に離れた位置で、スカートガードのほぼ全長にわたりドレスガードを設置する構成が示されている。この従来技術は、スカートガードのそれぞれに一定の間隔で形成した特殊形状の穴内に嵌め込まれるブラシホルダと、このブラシホルダに保持され、柔軟材で構成されるブラシとこのブラシを支持するブラシ支持体を含むブラシ本体とから成っており、ブラシ本体のブラシの先端部をステップ側に突き出す配置形態にしてある。
【0005】
このように構成された特許文献2に示される従来技術によれば、ステップ側に突き出されたドレスガードのブラシ本体のブラシにより、乗客コンベアの欄干を構成する金属体の継目の段差部や、金属体を固定するねじに対する接触による、ステップの乗客の衣服等の損傷を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−227352号公報
【特許文献2】特開2010−159100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の特許文献1に示される従来技術は、ステップ側に突出するモールを設けるとともに、モールの内部に配置され、モールをデッキベースに固定する隠しボルトを備えた構成にしてあることから、ステップの乗客の靴等がスカートガードとステップとの間に形成される隙間に挟まれることを防ぐことができ、また、悪戯などによりモールが剥がされることを防ぐことができる。また、特許文献2に示される従来技術は、ステップ両側部に配置したスカートガードのほぼ全長に設置したドレスガードによりステップの乗客の衣服等の損傷を防止することができる。しかし、ステップの乗客の安全性の向上を考慮して前述した全ての効果を同時に得ようとする場合には、特許文献1に示されるモールを設けることに加えて、特許文献2に示されるブラシホルダを設け、このブラシホルダにブラシとブラシ支持体を含むブラシ本体とから成るドレスガードを設けることが必要になる。このために全体の部品数が多くなり製作コストが高くなるとともに、設置作業が煩雑になりこの設置作業の能率の向上を見込めなくなる虞がある。
【0008】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、乗客の靴等がスカートガードとステップとの間に形成される隙間に挟まれることの防止と、悪戯などによりモールが剥がされることの防止と、乗客の衣服等の損傷の防止を少ない部品数で実現させることができるとともに、比較的短時間のうちに設置することができる乗客コンベアの欄干装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明に係る乗客コンベアの欄干装置は、無端状に設けられて走行する複数のステップの側方に隙間をあけて立設され、デッキベースに固定されるスカートガードと、このスカートガードを挟んで前記ステップ方向に突出し、前記デッキベースに固定される内側デッキと、前記スカートガードを挟んで前記ステップの反対側に立設される欄干パネルとを備えた乗客コンベアの欄干装置において、当該乗客コンベアの長手方向の全長にわたって延設され、前記内側デッキの前記ステップ方向への突出部の下部側に配置され、内部に前記内側デッキの下辺部近傍に設けられる締結部に螺合するねじの頭部を保持し、前記頭部に連設された軸部の挿通を許容させる溝を有するモールと、前記モールに保持され、前記ステップに向かって下向き傾斜状に配置されるドレスガードとを備え、前記モールの前記溝に前記頭部が保持された前記ねじを含む複数のねじを介して、前記モール、前記内側デッキ、及び前記スカートガードを前記デッキベースに固定したことを特徴としている。
【0010】
このように構成した本発明は、ステップ方向に突出するモールを備えたことから、乗客の靴等がスカートガードとステップとの間に形成される隙間に挟まれることを防ぐことができる。また本発明は、モールの内部に、内側デッキの下辺部近傍に設けられる締結部に螺合するねじの頭部が保持される溝を設けたことから、当該ねじの頭部が外部に露呈せず、悪戯などによりモールが剥がされることを防ぐことができる。また本発明は、ステップ方向に向かって下向き傾斜状に配置されるドレスガードを備えたことから、このドレスガードによって乗客のステップ側方の方向への動きを規制でき、これにより乗客の衣服等が金属体を構成する欄干部分の継目の段差部等に接触することによる衣服等の損傷を防ぐことができる。また本発明は、モールをドレスガードの保持部材に兼用させたことから、全体の部品数を少なく抑えることができ、これに伴って設置作業が簡単になる。
【0011】
また本発明は、前記発明において、前記ドレスガードは、基部と、この基部から前記ステップ方向に延設される複数の突起部とを含み、前記モールの下方部分の前記スカートガードと対向する部分に凹部を形成するとともに、前記モールの前記ステップ側に位置する表面部と前記凹部とを連通させる穴を、前記長手方向に沿って間隔をあけて複数形成し、前記ドレスガードの前記基部を前記モールの前記凹部に係合させ、前記ドレスガードのそれぞれの前記突起部を前記穴の該当するものに挿入させるようにして前記スカートガードを前記モールに装着させたことを特徴としている。
【0012】
このように構成した本発明は、モールに形成した凹部にドレスガードの基部を係合させ、モールに形成した複数の穴のそれぞれにドレスガードの該当する突起部を挿入させるようにしてドレスガードをモールに装着させるようにしたことから、ドレスガードをモールに安定して保持させることができる。
【0013】
また本発明は、前記発明において、前記内側デッキの端部に配置され、前記内側デッキに当接する第1平板部とこの第1平板部と段違いに、かつ平行に配置され前記モールに当接する第2平板部とを有する特殊材を備え、この特殊材の前記第1平板部に前記特殊材を前記内側デッキ、前記スカートガードを介して前記デッキベースに固定するねじが挿入される丸穴を形成し、前記特殊材の前記第2平板部に前記特殊材を前記モールに固定するねじが螺合するタップ穴を形成したことを特徴としている。
【0014】
このように構成した本発明は、内側デッキに当接する特殊材の第1平板部及び第2平板部と、第1平板部に形成した丸穴に挿入させるねじ及び第2平板部に形成したタップ穴に螺合するねじを介して、モールを内側デッキ及びスカートガードを介してデッキベースに確実に固定できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、当該乗客コンベアの長手方向の全長にわたって延設され、内側デッキのステップ方向への突出部の下部側に配置され、内部に内側デッキの下辺部近傍に設けられる締結部に螺合するねじの頭部を保持する溝を有するモールと、モールに保持され、ステップに向かって下向き傾斜状に配置されるドレスガードとを備え、モールの溝に保持されたねじを含む複数のねじを介して、モール、内側デッキ、及びスカートガードをデッキベースに固定した構成にしてある。この構成に伴って本発明は、乗客の靴等がスカートガードとステップとの間に形成される隙間に挟まれることの防止と、悪戯などによりモールが剥がされることの防止と、乗客の衣服等の損傷の防止を少ない部品数で実現させることができるとともに、比較的短時間のうちに設置することができる。すなわち本発明は、モールをドレスガードの保持部材に兼用させたことから、全体の部品数を少なく抑えることができ、これに伴って設置作業が簡単になる。これにより本発明は、従来技術から考えられるものに比べて製作コストを安く抑えることができるとともに、設置作業の能率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る乗客コンベアの欄干装置の一実施形態を示す側面図である。
【図2】図1のI−I線部の断面図である。
【図3】図1のJ−J線部の断面図である。
【図4】図2,3のK−K線部に相応する断面図である。
【図5】本実施形態に備えられるモールの正面図である。
【図6】図5のL−L線部の断面図である。
【図7】本実施形態に備えられるドレスガードの正面図である。
【図8】図7のM−M線部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る乗客コンベアの欄干装置の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0018】
図1−3に示すように、本実施形態に係る欄干装置は、例えばエスカレータに備えられるものであり、無端状に設けられて走行する複数のステップ1の側方に隙間をあけて立設され、図示しない建屋のトラスに取り付けられたデッキベース7に固定されるスカートガード4と、このスカートガード4を挟んでステップ1方向に突出し、デッキベース7に固定される内側デッキ2と、スカートガード4を挟んでステップ1の反対側に立設される欄干パネル5とを備えている。内側デッキ2は、当該エスカレータの延設方向に沿って接続箇所2Jを介して複数連設されている。
【0019】
また本実施形態は、当該エスカレータの長手方向の全長にわたって延設され、図2,3に示すように、内側デッキ2のステップ1方向への突出部2aの下部側に配置され、内部に内側デッキ2の下辺部近傍に設けられる締結部に螺合する後述のねじ11,12a,12bの頭部を保持し、これらの頭部に連設される軸部のそれぞれの挿通を許容させる溝3dを有するモール3を備えている。このモール3も内側デッキ2と同様に当該エスカレータの長手方向に沿って接続箇所3Jを介して複数連設されている。
【0020】
図5,6に示すように、モール3の溝3dの下方のスカートガード4と対向する部分に凹部3cを形成するとともに、モール3のステップ1側の表面部3fと凹部3cとを連通させる穴3eを、当該エスカレータの長手方向に沿って、例えば所定の間隔で複数形成してある。
【0021】
図2,3に示すように、内側デッキ2の突出部2aの下面部2bは、傾斜形状に形成してあり、この内側デッキ2の下面部2bに対向するモール3の部分は、下面部2bの傾斜形状に応じた傾斜面部3aに形成してある。
【0022】
また本実施形態は、モール3に保持され、ステップ1に向かって下向き傾斜状に配置され、柔軟材から成るドレスガード6を備えている。図7,8に示すように、ドレスガード6は、基部6aと、この基部6aからステップ1方向に延設される複数の突起部6bとを含んでいる。
【0023】
このドレスガード6の基部6aは、頭部6a1と、この頭部6a1に連設される太径部6a2とから成っている。太径部6a2の下端に突起部6bが設けられている。図2,3に示すように頭部6a1の上面はステップ1側に位置する内側デッキ2の部分の下端に当接可能に設けられ、頭部6a1のスカートガード4側に位置する側面は、スカートガード4のステップ1側に位置する表面部4aに当接可能な平坦面に形成してある。
【0024】
また、図2に示すように、モール3の凹部3cとスカートガード4とによって形成される空間部Xに、ドレスカード6の基部6aの頭部6a1を配置し、この頭部6a1をモール3の凹部3cに係合させてあり、ドレスガード6の突起部6b及び基部6aの太径部6a2をモール3の穴3eに挿入させてある。なお、ドレスガード6の基部6aの頭部6a1はモール3の穴3eよりも大きく形成してあり、基部6aの太径部6a2はモール3の穴3eと同等の径に、あるいはわずかに小さな径に設定してある。これにより、基部6aの太径部6a2はモール3の穴3eに嵌着された状態で配置される。
【0025】
また本実施形態は、図4に示すように、内側デッキ2のそれぞれの端部に配置される特殊材21を備えている。この特殊材21は、内側デッキ2に当接する第1平板部21aと、この第1平板部21aと段違いに、かつ平行に配置されモール3に当接する第2平板部21bとを有している。第1平板部21aには、特殊材21を内側デッキ2、スカートガード4を介して、デッキベース7に固定するねじ12aが挿入される丸穴21cを形成してあり、第2平板部21bには、特殊材21をモール3に固定するねじ12bが螺合するタップ穴21dを形成してある。
【0026】
なお、同図4に示すように、ねじ12bにはモール3に当接するワッシャ13を装着させてある。ねじ12bの頭部とワッシャ13とがモール3に形成した溝3dに収容されて保持されるようになっている。また、内側デッキ2の中央部分等にはねじ11が配置され、このねじ11に装着したワッシャ13、及びねじ11の頭部も、モール3に形成した溝3dに収容されて保持されるようになっている。
【0027】
また、同図4に示すように、モール3の端部の内部の内側デッキ2に対向する部分には、特殊材21のそれぞれを収容させる空間部3gを形成してある。この空間部3gの長さ寸法Gは、例えば特殊材21の長さ寸法とほぼ同等に設定してある。また、空間部3gの奥行寸法は、特殊材21の第1平板部21aの内側デッキ2に当接する面から、第2平板部21bのモール3に当接する面までの距離に相当する寸法に設定してある。
【0028】
このような構成を有する本実施形態を、例えば既設のエスカレータのリニューアルに適用する場合には、利用者の安全性を高め、かつ、その達成のための作業量を最小限に抑えることができ、これにより当該エスカレータの不稼働時間を極力排除することができる。以下に、本実施形態を既設のエスカレータに適用する場合の手順について説明する。
【0029】
なお、既設のエスカレータは、例えば本実施形態におけるのと同等のデッキベース7に固定される内側デッキ2及びスカートガード4を備えている。また、本実施形態に備えられるモール3とは基本的に断面形状が異なるが、ステップ1方向へ突出するモールを備えている。内側デッキ2及びスカートガード4の対応する位置には、ねじ穴が形成されており、これらのねじ穴に挿入されるねじによって、内側デッキ2及びスカートガード4がデッキベース7に固定されている。また、モールは、ボルトによりデッキベース7に固定されている。例えば、この既設のエスカレータには、本実施形態に備えられるドレスガード6は備えられていない。
【0030】
本実施形態にあっては、既設のエスカレータのリニューアルに先立ち、例えば予めモール3にドレスガード6を装着させたものを用意しておく。
【0031】
リニューアルにおける最初の手順として、既設のエスカレータに備えられているモールを外し、図1に示す内側デッキ2どうしの接続箇所2Jに最も近い両隣に配置され、内側デッキ2をデッキベース7に固定していた既設のねじを取り外す。ここで本実施形態に備えられる特殊材21を、第1平板部21aが内側デッキ2に当接するように、また第1平板部21aの丸穴21cが、ねじが取り外された内側デッキ2の既設のねじ穴に適合するようにして配置する。ここで、ねじ12aを第1平板部21aの丸穴21c、内側デッキ2のねじ穴に挿入して、デッキベース7のねじ穴に螺合させ、ねじ12aを締め付けることによって特殊材21を内側デッキ2、スカートガード4を介してデッキベース7に固定する。また特殊材21の第2平板部21bに形成したタップ穴21dに、ワッシャ13を装着したねじ12bを螺合させる。
【0032】
この場合、その後のモール3の組み込みを考慮して、すなわちモール3の組み込み時にモール3との干渉を生じさせないことを考慮して、ワッシャ13と、特殊材21の第2平板部21bとの間に位置するねじ12bの軸部の部分の長さが、空間部Gの奥行寸法よりもわずかに長くなるように保って、ねじ12bを第2平板部21bのタップ穴21dに螺合させるようにする。
【0033】
ここで例えば、内側デッキ2をドレスガード4を介してデッキベース7に固定していた残りの全てのねじを取り外し、ねじが取り外された内側デッキ2等の既設のねじ穴のそれぞれに、軸部の寸法が比較的長いねじ11をワッシャ13が装着された状態で挿入し、デッキベース7に螺合させる。このとき、特殊材21の第2平板部21bに形成したタップ穴21dに螺合させたねじ12bのそれぞれの頭部を結ぶ直線状に、ねじ11の頭部が位置するように、ねじ11を調整する。
【0034】
次の手順として、前述したようにドレスガード6を予め装着させてある本実施形態に係るモール3の溝3d内に、ねじ12bの頭部とねじ12bに装着したワッシャ13、及びねじ11の頭部とねじ11に装着したワッシャ13が収容されるようにして、モール3を当該エスカレータの長手方向に沿って押し込む。モール3の空間部3gが特殊材21に対向する位置に至ったときに、モール3の押し込みを停止させる。なお、このようなモール3の押し込み操作に際して、モール3の傾斜面部3aを内側デッキ2の突出部2aの下面部2bに案内させるようにして、モール3を比較的円滑に押し込むことができる。このようにモール3が配置された状態では、モール3に形成した複数の小穴3bのそれぞれ該当するものが、ねじ12bのそれぞれの頭部、及びねじ11のそれぞれの頭部に対向した状態となる。
【0035】
最後の手順として、モール3の穴3bのそれぞれから、図示しない締結具を挿入して、ねじ12b、ねじ11のそれぞれを締め付ける。ねじ12bの締め付けによって特殊材21の第2平板部21bとモール3とが固定され、また、ねじ11によってもモール3がデッキベース7に固定される。このようにして所望のリニューアルは完了する。
【0036】
前述のようにして既設のエスカレータに対するリニューアルも可能な本実施形態は、ステップ1方向に突出するモール3を備えたことから、乗客の靴等がスカートガード4とステップ1との間に形成される隙間に挟まれることを防ぐことができる。また本実施形態は、モール3の内部に内側デッキ2の下辺部近傍に設けられる締結部に螺合するねじ12b,11のそれぞれの頭部が保持される溝3dを設けたことから、ねじ12b,11に緩みを生じたとしても、これらのねじ12b,11の頭部がモール3の外部に露呈することがなく、したがって、悪戯などによりモール3が剥がされることを防ぐことができる。また本実施形態は、ステップ1方向に向かって下向き傾斜状に配置されるドレスガード6を備えたことから、このドレスガード6によって乗客のステップ1の側方の方向への動きを規制でき、乗客の衣服等が金属体を形成する欄干部分の継目の段差部等に接触することによる衣服等の損傷を防ぐことができる。また、モール3をドレスガード6の保持部材として兼用させたことから、全体の部品数を少なく抑え、製作コストを安く抑えることができるとともに、比較的短時間のうちに設置できて設置作業が簡単になり、この設置作業の能率を向上させることができる。
【0037】
また本実施形態は、乗客からの落下物、例えば乗客が持参していた定期券、搭乗券等の落下物を、ドレスガード6によってステップ1とスカートガード4との隙間に落下させることなく、ステップ1上に落下するように案内することができる。ドレスガード6の上方から落下してくる塵埃や火種等に対しても同様である。
【0038】
また本実施形態は、既設のエスカレータに対するリニューアルに際して、内側デッキ2及びスカートガード4に形成されている既設のねじ穴を活用してモール3を取り付けることができるので、現地における穴あけ加工を要することなく、ドレスガード6を装着させたモール3を取り付けることができる。したがって、リニューアルに際しての設置作業が簡単になる。
【0039】
また本実施形態は、既設のエスカレータに対するリニューアルに際しての取り外し作業は、既設のモールを取り外すことと、内側デッキ2及びスカートガード4をデッキベース7に固定していたねじを取り外す程度であり、これによってもリニューアルに際しての設置作業を簡単に行うことができる。
【0040】
また、本実施形態に係るモール3には、特殊材21を配置させる空間部3gを設けることから、モール3の薄型化を実現できる。これにより、モール3の取り扱いが比較的容易になるとともに、モール3の製作コストを抑えることができる。
【0041】
また本実施形態は、モール3に形成した凹部3cにドレスガード6の基部6aの頭部6a1を係合させ、モール3に形成した複数の穴3eのそれぞれにドレスガード6の該当する突起部6b及び基部6aの太径部6a2を挿入させるようにしてドレスガード6をモール3に装着させることから、ドレスガード6をモール3に安定して保持させることができる。これにより耐久性を向上させることができ、信頼性の高い欄干装置を実現させることができる。
【0042】
なお、モール3にドレスガード6を装着させる際に、ドレスガード6の基部6aの太径部6a2がモール3の穴3eに嵌着されるので、ステップ1上の乗客の衣服等がドレスガード6の突起部6bに接触しても、ガタや緩みを生じることなくドレスガード6をモール3に保持させることができる。また、ステップ1上の乗客の衣服等の接触によってドレスガード6に、このドレスガード6をモール3方向に押し込む力が与えられたとしても、ドレスガード6の基部6aの頭部6a1の上面がスカートガード4の下端に当接してこのドレスガード6の動きが規制され、また、頭部6a1の側面がスカートガード4に当接してドレスガード6の動きが規制される。したがって、このような場合にもドレスガード6をガタや緩みを生じることなくモール3に保持させることができる。
【0043】
また本実施形態は、内側デッキ2に当接する特殊材21の第1平板部21a及び第2平板部21bと、第1平板部21aに形成した丸穴21cに挿入させるねじ12a、第2平板部21bに形成したタップ穴21dに螺合するねじ12b、及びねじ11とによって、モール3を内側デッキ2及びスカートガード4を介してデッキベース7に確実に固定できる。これにより、モール3を安定して固定することができ、信頼性の高い欄干装置の実現に貢献する。
【符号の説明】
【0044】
1 ステップ
2 内側デッキ
2a 突出部
3 モール
3b 小穴
3c 凹部
3d 溝
3e 穴
3f 表面部
4 スカートガード
5 欄干パネル
6 ドレスガード
6a 基部
6b 突起部
7 デッキベース
11 ねじ
12a ねじ
12b ねじ
21 特殊材
21a 第1平板部
21b 第2平板部
21c 丸穴
21d タップ穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に設けられて走行する複数のステップの側方に隙間をあけて立設され、デッキベースに固定されるスカートガードと、このスカートガードを挟んで前記ステップ方向に突出し、前記デッキベースに固定される内側デッキと、前記スカートガードを挟んで前記ステップの反対側に立設される欄干パネルとを備えた乗客コンベアの欄干装置において、
当該乗客コンベアの長手方向の全長にわたって延設され、前記内側デッキの前記ステップ方向への突出部の下部側に配置され、内部に前記内側デッキの下辺部近傍に設けられる締結部に螺合するねじの頭部を保持し、前記頭部に連設された軸部の挿通を許容させる溝を有するモールと、
前記モールに保持され、前記ステップに向かって下向き傾斜状に配置されるドレスガードとを備え、
前記モールの前記溝に前記頭部が保持された前記ねじを含む複数のねじを介して、前記モール、前記内側デッキ、及び前記スカートガードを前記デッキベースに固定したことを特徴とする乗客コンベアの欄干装置。
【請求項2】
請求項1に記載の乗客コンベアの欄干装置において、
前記ドレスガードは、基部と、この基部から前記ステップ方向に延設される複数の突起部とを含み、
前記モールの下方部分の前記スカートガードと対向する部分に凹部を形成するとともに、前記モールの前記ステップ側に位置する表面部と前記凹部とを連通させる穴を、前記長手方向に沿って間隔をあけて複数形成し、
前記ドレスガードの前記基部を前記モールの前記凹部に係合させ、前記ドレスガードのそれぞれの前記突起部を前記穴の該当するものに挿入させるようにして前記ドレスガードを前記モールに装着させたことを特徴とする乗客コンベアの欄干装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の乗客コンベアの欄干装置において、
前記内側デッキの端部に配置され、前記内側デッキに当接する第1平板部とこの第1平板部と段違いに、かつ平行に配置され前記モールに当接する第2平板部とを有する特殊材を備え、この特殊材の前記第1平板部に前記特殊材を前記内側デッキ、前記スカートガードを介して前記デッキベースに固定するねじが挿入される丸穴を形成し、前記特殊材の前記第2平板部に前記特殊材を前記モールに固定するねじが螺合するタップ穴を形成したことを特徴とする乗客コンベアの欄干装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−86910(P2013−86910A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228022(P2011−228022)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】