説明

乗客コンベアの照明装置

【課題】照明間の継ぎ目の無灯部分をなくし、さらに階高調整分の構成を最小限の用品で構成可能とした照明装置を提供する。
【解決手段】エスカレータ本体1のスカートガードパネル内に前記踏段側を照明するように配置された照明装置8であって、前記照明装置8は、スカートパネルに沿って直列に配列されたほぼ同一長の複数個の主棒状光源9と、これらの棒状光源9配列の継ぎ目に形成された前記主棒状光源9よりも短い長さの無灯部分Aの前方または背後に、前記主光源を構成する主棒状光源9に一部が重複するように配置された前記主棒状光源9とほぼ同一長の棒状光源からなる副棒状光源13と、を備え、前記主棒状光源9および副棒状光源13は、直線状に配列された複数個のLED発光素子により構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベアに使用する照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エスカレーターの欄干照明やスカートガード照明などの連続した照明装置には、光源として一般的に蛍光灯が使用される。蛍光灯を使用する場合、固定及び電力供給のためのソケットを蛍光灯端部に取り付ける必要があることから、隣接して連続的に配置した場合でもソケット部分が暗部となるため、全体として連続した照明にはならなかった。この問題に関しては、例えば特開昭62-198004(特許文献1)のように口金を蛍光灯の長手方向に対して直角方向に向けて配置した蛍光灯を使用する方法が提案されている。
【0003】
また、エスカレーターは据付先の建築物の階高に合わせて製造されるため、任意の高さに全長を調整する必要がある。調整はエスカレーターの中間傾斜部の長さを変更することで実施する。その際、中間傾斜部における照明の全長も任意の長さに調整できる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62-198004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示される方法は専用の特殊蛍光灯を開発しなければならない。また、エスカレー ター全長に無灯部分がなく照明装置を配置するためには、一般的な蛍光灯の規格長では対応できな いため、多くの種類の特殊な長さの蛍光灯を生産・管理する手間が発生する。
【0006】
本発明は上記のような問題点を解決することを課題としたもので、照明間の継ぎ目の無灯部分をなくし、さらに階高調整分の構成を最小限の用品で構成可能とした照明装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の照明装置は、無端状に連結された複数の踏段と、前記踏段とともに同方向に走行する手摺ベルトと、前記手摺ベルトを支える欄干と、前記踏段の両側において前記手摺ベルトに添って配置されたスカートガードパネルと、前記スカートパネルに沿って前記踏段側を照明するように配置された照明装置とを備え、前記照明装置は、さらに、前記スカートパネルに沿って直列に配列されたほぼ同一長の複数個の主棒状光源と、これらの主棒状光源配列内の前記棒状光源の継ぎ目に形成された前記棒状光源よりも短い長さの無灯部分の前方または背後に、前記主棒状光源に一部が重複するように配置された前記棒状光源とほぼ同一長の副棒状光源と、を備え、前記主棒状光源および副棒状光源は、直線状に配列された複数個のLED発光素子により構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の照明装置を用いることで、エスカレー ターの全長に亘って無灯部分がなく連続的に見える照明が得られる。また、階高調整部の照明を最小の用品で構成することで、部品管理点数の大幅な削減が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明が適用されるエスカレーター本体の一部の構成を示す概略側面図である。
【図2】本発明の実施形態に用いられる主棒状光源9の構造を示す概略斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に用いられるLED光源ユニット22の構成を示す概略斜視図である。
【図4】本発明の実施形態である照明装置の要部を示す概略構成図で、同図(A)は側面図、(B)は正面図、(C)は図(B)のx−x´断面図である。
【図5】同じく、本発明の実施形態である照明装置の要部を示す概略構成図で、同図(A)は側面図、(B)は正面図、(C)は図(B)のx−x´断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態である照明装置の要部を示す概略斜視図である。
【図7】本発明のさらに他の実施形態である照明装置の要部を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第1の実施形態を、図面を用いて詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明による照明装置が適用されるエスカレーターの一部を示す側面図である。図示のように、エスカレーター本体1は通常、大きく分けて上階部2および下階部(図示せず)と、これらを連結する中間傾斜部3とから構成されている。エスカレーター1は無端状に連結された複数の踏段(図示せず)と、これらの踏段とともに同方向に走行する手摺ベルト4と、この手摺ベルト4を支える欄干5を備えている。エスカレーター1は、さらに、前記踏段の両側において前記欄干5、手摺ベルト4に添って配置された内側板6と、この内側板6下部に前記手摺ベルト4に添って配置されたスカートガードパネル7と、このスカートガードパネル7に沿って前記踏段側を照明するように配置された照明装置8とを備えている。
【0012】
照明装置8は、スカートガードパネル7の内側に前記手摺ベルト4に添って配置された複数個の主棒状光源9により構成されている。スカートガードパネル7にはこれらの複数個の主棒状光源9配列に沿って乳白色のアクリル板からなる透光性窓10が設けられている。照明装置8はこの透光性窓10を介してエスカレーター本体1の踏段(図示せず)を照明する。
【0013】
図2は、上記主棒状光源9の構造を示す概略斜視図である。長さ約1mのL字型の保持具21に、複数個例えば、6個のLED光源ユニット22が長手方向に直線状に配列支持されている。
【0014】
図3はLED光源ユニット22の構成を示す概略斜視図である。LED光源ユニット22は、長さ約15cmの長方形の絶縁基板23上に、複数個、例えば8個のLED発光素子24が長手方向に直線状に配列設置されている。これらのLED発光素子24は、透明樹脂25により気密に封止されている。透明樹脂25はその横断面が凸状の棒状に形成され、LED発光素子24配列から発生した光を絶縁基板23に対して垂直方向に平行光線として射出する、いわゆる、かまぼこレンズを形成している。絶縁基板23の長手方向両端には、一対のソケット付給電線26,26が設けられている。一対のソケット付給電線26間には複数個のLED発光素子24が接続され発光電源が供給される。また、図2に示すように隣接するLED光源ユニット22はソケット付給電線26のソケットにより相互に接続される。ここで、図2に示す複数個のLED発光素子24の配置間隔(継ぎ目)は、隣接するLED光源ユニット22間の間隙が、無灯部を形成しないような間隙に設定されている。この間隙は、図3に示すLED発光素子24の配置により調整可能である。すなわち、絶縁基板23上に複数個のLED発光素子24を設置するに際して、LED発光素子24相互の間隔及び絶縁基板23の長手方向端部からの設置位置を調整することにより可能である。
【0015】
このように構成された複数個の主棒状光源9は、図1に示すように、エスカレーター本体1の上階部2および下階部の端部から中間傾斜部3側に向かって相互に接触するようにあるいは隣接する主棒状光源9間に無灯部分が生じないような間隙を持って順次配置される。この場合、エスカレーター1の上階部2の端部および下階部の端部間の距離が、主棒状光源9の長さのほぼ整数倍である場合には図1に示す間隙Aは図4に示すように実質的にゼロとなる。すなわち、エスカレーター本体1の上階部2および下階部からそれぞれ中間傾斜部3側に向かって配列された主棒状光源配列11、12のうちの先端部における一対の主棒状光源9、9は、その先端部が互いに接触するように配置される。なおこの場合、一対の主棒状光源9、9の発光部端部間の間隙Bは、無灯部を形成しない間隙である。なお、この間隙Bは主光源配列11、12内のいずれかの隣接する主棒状光源9、9間においても同様に、照明装置全体による照明光が連続して見える範囲であれば必ずしも一定の値である必要はなく変動しても良い。
【0016】
このように、同一長の複数個の主棒状光源9をエスカレーター本体1の上階部2の端部および下階部の端部間に配列する場合、一般的にエスカレーター本体1の上階部2の端部および下階部の端部間の距離が、主棒状光源9の長さのほぼ整数倍である場合は少ない。従って、エスカレーター本体1の上階部2および下階部の端部からそれぞれ中間傾斜部3側に向かう主棒状光源9配列の先端部間には、1本の主棒状光源9の長さ未満の間隙ではあるが無灯部分を生ずるような間隙Aが生ずる。換言すれば、照明装置8の長さ調整は基本的に棒状光源3の長さ単位での増減しかできないため、棒状光源9の配置で埋めきれない隙間が発生し、そこに無灯部分Aが発生することになる。
【0017】
この場合には、図5に示すように、主棒状光源配列の先端部における一対の主棒状光源9、9が形成する間隙Aを跨いで副棒状光源12が配置される。この副棒状光源12は主棒状光源9と同じ寸法でかつ同じ構成のLED光源であり、間隙Aの両側の一対の主棒状光源9、9に両端部が重なり合うように配置される。また、この副棒状光源12は、エスカレーターの踏段(図示せず。)を主光源配列11、12の背後から照明するように配置される。
【0018】
このように配置された副棒状光源12から発せられた光のうち、無灯部分A側から見て主棒状光源9と重複しない分については無灯部分Aを照らす照明となる。主光源配列11、12に用いる主棒状光源9の数と、主棒状光源9および副棒状光源13との重複距離を変更することでどのような必要照明長さにも対応することが可能となる。かかる副棒状光源13の配置によって、照明装置8全体としてみた場合、連続的な明るさを得ることができる。
【0019】
図6は無灯部分Aに配置された副棒状光源13の構造を示す概略斜視図である。
【0020】
上記のように、主光源配列11、12の先端部に配置される一対の主棒状光源9、9に対して、それらの背後に副棒状光源13を配置し、光の進行方向に対して前後2列の光源を用いることで、照明対象の踏段(図示せず。)から各光源9、13までの距離は異なるものになる。そのため、前後の光源の明るさに差が発生し、照度むらによる違和感の原因となることが考えられる。この問題に対しては、後列の副棒状光源12から発せられ、拡散する光を、前列の主棒状光源9、9まで誘導するカバー31を設ける。このカバー31は断面がコ字型のステンレスなどの金属素材を用い、その内面を光反射率の高い鏡面仕上げするか、または内面に光反射率の高くなる塗装を施すことが望ましい。このような断面がコ字型のカバー31の長手方向の両端において、一対の主棒状光源9、9のL字型の保持具21の端部をネジ止めなどにより固定する。
【0021】
副棒状光源13にこのようなカバー31を設けることにより、後列の副棒状光源12から発せられた光を外部に拡散することなく、前方へと誘導することができる。また、このような構成の照明装置においては、一対の主棒状光源9、9のL字型保持具21の副棒状光源13のカバー31へのネジ止めなどによる固定位置を調整することにより、前列の主棒状光源9、9の後列の副棒状光源12に対する距離を調整することにより、光の進行方向に対する光りの強度を調整することもできる。なお、エスカレーター据付時に現地で調整を行いたい場合、後列取り付け用ステーに長穴を設ける等して前列と後列の距離をある程度変動できる構造にしておくことも可能である。
【0022】
また、前後列の照度差解消についての別の方法として、前列に用いる棒状光源と後列に用いる棒状光源の明るさを異なる状態に設定する方法も考えられる。すなわち、図7に示すように後列に配置される方を前列に配置される方より明るく設定しておくことで、距離の差による明るさ損失分を埋めることが可能となる。この明るさの調整も、エスカレーター据付時に現地で調整を行いたい場合、前列または後列の明るさを現地で調整可能な構成にしておく方法も考えられる。
【0023】
上記の実施形態に置いては、エスカレーターの踏段(図示せず。)位置に対して主棒状光源9、9を前列側に、副棒状光源12を後列側に配置した場合について説明したが、主棒状光源9、9と副棒状光源12については、前後を入れ替えて構成してもよい。すなわち、前列に調整用の副棒状光源12を、後列に主棒状光源9、9を配置するような構成も可能である。この場合、重複の前後関係が変わるだけで機能としては同じとなる。
【0024】
また、以上の実施形態においては、1台のエスカレーター内に無灯部分Aが1箇所存在する場合について説明した。しかし、一般に、エスカレーターは建物への搬入の都合から複数の部分に分割されるが、それにより照明装置も分割され、無灯部分Aが1台のエスカレーター内に複数箇所存在することがある。このような場合でも本発明は同様に適用可能である。
【0025】
また、照明装置8は踏段(図示せず。)両側のスカートガードパネル7内に設けたが、いずれか一方のスカートガードパネル7内に設けても良いことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0026】
1 エスカレーター本体
2 上階部照明装置
3 中間傾斜部
4 手摺ベルト
5 欄干
6 内側板
7 スカートガードパネル
8 照明装置
9 主棒状光源
10 透光性窓
11、12 主棒状光源配列
13 副棒状光源
21 L字型の保持具
22 LED光源ユニット
23 絶縁基板
24 LED発光素子
25 透明樹脂
26 ソケット付給電線
A 無灯部分
B 棒状光源配置間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結された複数の踏段と、前記踏段とともに同方向に走行する手摺ベルトと、前記手摺ベルトを支える欄干と、前記踏段の両側において前記手摺ベルトに添って配置されたスカートガードパネルと、前記スカートパネルに沿って前記踏段側を照明するように配置された照明装置とを備え、前記照明装置は、さらに、前記スカートパネルに沿って直列に配列されたほぼ同一長の複数個の主棒状光源と、これらの主棒状光源配列内の前記棒状光源の継ぎ目に形成された前記棒状光源よりも短い長さの無灯部分の前方または背後に、前記主棒状光源に一部が重複するように配置された前記棒状光源とほぼ同一長の副棒状光源と、を備え、前記主棒状光源および副棒状光源は、直線状に配列された複数個のLED発光素子により構成されていることを特徴とする乗客コンベアの照明装置。
【請求項2】
前記副棒状光源は、この副棒状光源から発せられた光の拡散を防ぎ、前記踏段側に向けるためのカバーを備えたことを特徴とする、請求項1に記載の乗客コンベアの照明装置。
【請求項3】
前記副棒状光源は、前記主棒状光源との発光方向における距離を調整可能に設置されていることを特徴とする請求項2に記載の乗客コンベアの照明装置。
【請求項4】
前記副棒状光源は、前記主棒状光源の明るさとは異なる明るさを有することを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアの照明装置。
【請求項5】
前記主棒状光源および前記副棒状光源は、基板上に直線的に配列された複数個のLED素子と、これらのLED素子を覆う断面がほぼ半円形の棒状の透明樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアの照明装置。
【請求項6】
前記主棒状光源および前記副棒状光源は、前記基板上に直線的に配列された複数個のLED素子と、これらのLED素子を覆う断面がほぼ半円形の棒状の透明樹脂からなる要素光源を複数個さらに直線上に配列してなることを特徴とする請求項5に記載の乗客コンベアの照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−218837(P2012−218837A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83802(P2011−83802)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】