説明

乗客コンベアの踏段の口金

【課題】ネジを回して締め付けることなく、蓋部を閉じたまま蓋部を固定することができ、踏段軸への踏段の取付作業の効率を向上させることができる乗客コンベアの踏段の口金を得る。
【解決手段】踏段4に設けられ、踏段4の軌道に沿って循環移動する踏段チェーン2に取り付けられた踏段軸3を把持する口金5であって、受部6aとこの受部6aに対して回動可能に設けられ表面に係合部15が形成された蓋部6cとを有し、蓋部6cが閉じたときに受部6aおよび蓋部6cにより踏段軸3を囲う口金本体7と、蓋部6cに接触可能にもうけられ、蓋部6cが閉じたときに係合部15と係合する被係合部16が表面に形成されたブラケット部8とを備え、係合部15および被係合部16は、蓋部6cが開く方向に回動することを規制するラチェット機構を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、踏段に設けられ、踏段の軌道に沿って循環移動する循環移動体に設けられた踏段軸を把持する乗客コンベアの踏段の口金に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、踏段に設けられ、前記踏段の軌道に沿って循環移動する踏段リンクに取り付けられた踏段軸を把持する口金であって、受部とこの受部に対して回動可能に設けられた蓋部とを有し、前記蓋部を閉じたときに前記受部および前記蓋部により前記踏段軸を囲う口金本体と、前記口金本体に設けられ、前記蓋部が閉じたまま前記蓋部を固定するネジとを備えたエスカレータの踏段の口金が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実開昭62−203175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このものの場合、踏段を踏段軸に取り付けるために、口金本体により踏段軸を囲った後、蓋部を固定するためにネジを回して締め付けなければならず、取付作業の効率が悪いという問題点があった。
【0005】
この発明は、上述のような問題点を解決することを課題とするものであって、その目的は、ネジを回して締め付けることなく、蓋部を閉じたまま蓋部を固定することができるので、踏段軸への踏段の取付作業の効率を向上させることができる乗客コンベアの踏段の口金を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る乗客コンベアの踏段の口金は、踏段に設けられ、前記踏段の軌道に沿って循環移動する循環移動体に取り付けられた踏段軸を把持する口金であって、受部とこの受部に対して回動可能に設けられ表面に係合部が形成された蓋部とを有し、前記蓋部が閉じたときに前記受部および前記蓋部により前記踏段軸を囲う口金本体と、前記蓋部に接触可能にもうけられ、前記蓋部が閉じたときに前記係合部と係合する被係合部が表面に形成されたブラケット部とを備え、前記係合部および前記被係合部は、前記蓋部が開く方向に回動することを規制するラチェット機構を構成している。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る乗客コンベアの踏段の口金によれば、ネジを回して締め付けることなく、蓋部を閉じたまま蓋部を固定することができるので、踏段軸への踏段の取付作業の効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の各実施の形態を図に基づいて説明するが、各図において、同一または相当の部材、部位については、同一符号を付して説明する。
実施の形態1.
図1はエスカレータ1を示す斜視図、図2は図1の踏段4および周辺部材を示した斜視図、図3は図2の踏段軸3、口金5および踏段4を示す側面図、図4は図3の口金5の要部拡大図、図5は図4の口金5を示す正面図である。
乗客コンベアであるエスカレータ1は、乗降口間を循環移動する踏段4の軌道に沿って循環移動する一対の循環移動体である踏段チェーン2と、この一対の踏段チェーン2間に渡って取り付けられ踏段チェーン2とともに循環移動する複数の踏段軸3と、それぞれの踏段軸3に口金5を介して取り付けられ踏段チェーン2および踏段軸3とともに循環移動する踏段4とを備えている。
【0009】
実施の形態1に係るエスカレータ1の踏段4の口金5は、踏段4の踏板9の反踏面側に設けられ踏段軸3を把持する口金5であって、受部6aとこの受部6aに対して回動軸6bを中心に回動可能な蓋部6cとを有した口金本体7と、蓋部6cに接触可能に設けられたブラケット部8とを備えている。
【0010】
受部6aは、断面円弧状に形成されており、外周面が踏板9側を向くように配置されている。
蓋部6cは、断面円弧状に形成されており、基端部が回動軸6bに固定され、内周面が踏板側9を向くように配置されている。
これにより、蓋部6cが閉じると、受部6aと蓋部6cとが円筒形状になり、口金本体7が踏段軸3を囲うことができる。
また、蓋部6cには、先端部の外周面に係合部15が形成されている。
回動軸6bには、レバー10が固定されており、このレバー10を回動させることで、蓋部6cが連動して回動する。
【0011】
ブラケット部8は、一端部に平板状に形成され踏板9と対向するようにして配置された平板部8aと、他端部に断面円弧状に形成され蓋部6cの係合部15と接触可能な円弧部8bとを有している。
円弧部8bの内周面には、蓋部6cの係合部15と係合可能な被係合部16が形成されている。
ブラケット部8には、中間部に回動軸8cが設けられており、シーソー回動することができる。
ブラケット部8の平板部8aには、弾性体であるバネ11が取り付けられており、このバネ11により、ブラケット部8は円弧部8bが蓋部6cの先端部に近づく方向に付勢され、ブラケット部8の平板部8aは反バネ11側に設けられたストッパ12に当接している。
【0012】
蓋部6cの係合部15およびブラケット部8の被係合部16は、蓋部6cが開く方向に回動することを規制するラチェット機構を構成している。
【0013】
ブラケット部8の平板部8aと対向した踏板9には、踏板9を貫通した貫通孔9aが形成されている。この貫通孔9aに押棒13を通し、この押棒13の先端部を平板部8aの踏板9側の面に設けられた弾性の樹脂からなる押棒受部14に当接させ、押棒13を押し込むことにより、ブラケット部8がシーソー回動し、ブラケット部8の円弧部8bが蓋部6cの先端部から離間して、係合部15と被係合部16との係合が解除される。
押棒受部14が弾性の樹脂であるので、押棒13が当接したときの異音の発生を抑制し、さらに、押棒13との滑りを抑制することができる。
なお、押棒受部14は、樹脂に限らず、その他の材料であってもよい。
【0014】
次に、実施の形態1に係るエスカレータ1の踏段4の口金5を用いて踏段4を踏段軸3に取り付ける手順について説明する。
図6は、口金5を用いて踏段4を踏段軸3に取り付ける様子を示す説明図である。
まず、口金本体7の内部に踏段軸3が入るようにして、踏段4を踏段軸3に配置する。
次に、踏段軸3に当接したレバー10が回動されて、蓋部6cを回動させ、蓋部6cの係合部15とブラケット部8の被係合部16とのラチェット機構を係合させる。このとき、バネ11により、ブラケット部8の円弧部8bは、蓋部6cの先端部に近づく方向に付勢されているので、蓋部6cの係合部15とブラケット部8の被係合部16とのラチェット機構は確実に係合している。
その結果、口金5が踏段軸3を把持するので、簡単に踏段4を踏段軸3に固定することができる。
【0015】
次に、口金5を用いて踏段4を踏段軸3から取り外す手順について説明する。
図7は、口金5を用いて踏段4を踏段軸3から取り外す様子を示す説明図である。
まず、踏板9に形成された貫通孔9aに押棒13を通し、この押棒13の先端部をブラケット部8の平板部8aに設けられた押棒受部14に当接する。
次に、この押棒13をバネ11の付勢力に逆らって押し込むと、ブラケット部8は円弧部8bが蓋部6cの先端部から離間する方向にシーソー回動する。
ブラケット部8の円弧部8bと蓋部6cの先端部とが離間するので、蓋部6cの係合部15とブラケット部8の被係合部16とのラチェット機構の係合が解除され、蓋部6cは自重により開く。
その結果、口金5による踏段軸3の把持が解除されるので、簡単に踏段軸3から踏段4を取り外すことができる。
【0016】
以上説明したように、実施の形態1に係るエスカレータ1の踏段4の口金5よれば、踏段軸3を閉じ込める蓋部6cの係合部15およびブラケット部8の被係合部16は、蓋部6cが開く方向に回動することを規制するラチェット機構を構成しているので、簡単に、口金5に踏段軸3を把持させて、踏段4を踏段軸3に取り付けることができる。
【0017】
また、ブラケット部8の円弧部8bが蓋部6cの先端部から離間する方向に、ブラケット部8は回動可能であるので、簡単に、蓋部6cの係合部15とブラケット部8の被係合部16とのラチェット機構の係合を解除して、蓋部6cを開き、踏段軸3から踏段4を取り外すことができる。
【0018】
また、ブラケット部8には、平板部8aに円弧部8bが蓋部6cの先端部に近づく方向に付勢したバネ11が取り付けられているので、踏段軸3に踏段4を取り付けるときには、蓋部6cの係合部15とブラケット部8の被係合部16とのラチェット機構を確実に係合させることができ、踏段軸3から踏段4を取り外すときには、バネ11の付勢力に逆らってブラケット部8を回動させて、簡単に、蓋部6cの係合部15とブラケット部8の被係合部16とのラチェット機構の係合を解除することができる。
【0019】
なお、上記実施の形態1では、弾性体としてバネ11を例に説明したが、勿論このものに限らず、その他の弾性体であってもよい。
【0020】
また、上記実施の形態1では、循環移動体として踏段チェーン2を例に説明したが、勿論このものに限らず、例えば、踏段リンクであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】エスカレータを示す斜視図である。
【図2】図1の踏段を拡大した斜視図である。
【図3】図2の踏段軸と口金と踏段とを示す側面図である。
【図4】図3の口金を示す要部拡大図である。
【図5】図4の口金を示す正面図である。
【図6】口金を用いて踏段を踏段軸に取り付ける様子を示す説明図である。
【図7】口金を用いて踏段を踏段軸から取り外す様子を示す説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1 エスカレータ、2 踏段チェーン(循環移動体)、3 踏段軸、4 踏段、5 口金、6a 受部、6b 回動軸、6c 蓋部、7 口金本体、8 ブラケット部、8a 平板部、8b 円弧部、8c 回動軸、9 踏板、9a 貫通孔、10 レバー、11 バネ、12 ストッパ、13 押棒、14 押棒受部、15 係合部、16 被係合部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏段に設けられ、前記踏段の軌道に沿って循環移動する循環移動体に取り付けられた踏段軸を把持する乗客コンベアの踏段の口金であって、
受部とこの受部に対して回動可能に設けられ表面に係合部が形成された蓋部とを有し、前記蓋部が閉じたときに前記受部および前記蓋部により前記踏段軸を囲う口金本体と、
前記蓋部に接触可能にもうけられ、前記蓋部が閉じたときに前記係合部と係合する被係合部が表面に形成されたブラケット部とを備え、
前記係合部および前記被係合部は、前記蓋部が開く方向に回動することを規制するラチェット機構を構成していることを特徴とする乗客コンベアの踏段の口金。
【請求項2】
前記ブラケット部は、前記被係合部が前記係合部から離間する方向に回動可能であることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアの踏段の口金。
【請求項3】
前記ブラケット部に設けられ、前記被係合部が前記係合部に近づく方向に前記ブラケット部を付勢した弾性体を備えたことを特徴とする請求項2に記載の乗客コンベアの踏段の口金。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−67576(P2009−67576A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240427(P2007−240427)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】