乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置
【課題】移動手摺耳部に発生、残存したバリを自動で除去するとともに、除去痕が残らない美麗な手摺を製造出来る乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置を得る。
【解決手段】熱可塑性材から成る移動手摺の両端部を接続加工して無端ループ状の移動手摺を形成する際に、その接合端部において移動手摺の長手方向側面に発生するバリを除去する乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置であって、バリを加熱溶融することによってバリを除去する加熱部を有する仕上げ加工ユニットを設けたものである。
【解決手段】熱可塑性材から成る移動手摺の両端部を接続加工して無端ループ状の移動手摺を形成する際に、その接合端部において移動手摺の長手方向側面に発生するバリを除去する乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置であって、バリを加熱溶融することによってバリを除去する加熱部を有する仕上げ加工ユニットを設けたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エスカレータや動く歩道などの乗客コンベアで使用される移動手摺に係り、製造工程で移動手摺の長手方向側面(耳部)に発生するバリを、除去痕が残らないよう除去する乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエスカレータや動く歩道などの乗客コンベアでは、一般に無端ループ状に形成された移動手摺が使用されている。この移動手摺は、踏段上の乗客が安全のために掴むものであり、踏段と同期するように駆動されている。
特許文献1には、図11に示すような表面部が熱可塑性エラストマーから成る長尺の移動手摺本体4を無端ループ状に接続する際の詳細な方法が開示されている。要約すると、図9に示すような上金型1、下金型2および中芯金型3から構成される接続金型に移動手摺の端部同士を対向させて設置し、金型の加熱部で上記移動手摺の端部同士を加熱することにより熱可塑性エラストマーを溶融させて接続するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−172825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の仕上げ加工装置では、移動手摺4を無端ループ状に加熱成型する際、上金型1と下金型2の間に設けられた隙間から、溶融した熱可塑性エラストマーが流出し、これが冷却時に移動手摺の耳部に図10に示すようなバリ5として残存する。
そのため、上記バリ5を手作業で切断除去し、塗装により目立たなくする手直しを行っていたが、バリの除去痕によって意匠性が低下する、作業の手間がかかるといった課題があった。又、バリ5の除去痕が顧客からのクレームの対象となる場合もあった。
この発明は、上記のような課題を解決するためのものであり、移動手摺の耳部に発生したバリ5を自動で除去するとともに、除去痕が残らない美麗な手摺を製造出来る乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係わる乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置は、熱可塑性材から成る移動手摺の両端部を接続加工して無端ループ状の移動手摺を形成する際に、上記接合端部において移動手摺の長手方向側面に発生するバリを除去する乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置であって、上記バリを加熱溶融することによって上記バリを除去する加熱部を有する仕上げ加工ユニットを設けたものである。
【発明の効果】
【0006】
この発明の乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置によれば、移動手摺の無端ループ状に加熱成型した際に熱可塑性材から成る移動手摺耳部に発生するバリの、除去痕が無い美麗な移動手摺を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】この発明の実施の形態1における乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置を示す側面図である。
【図2】図1に示した仕上げ加工装置の平面図である。
【図3】図1に示した仕上げ加工装置の切断部の要部を示す正面図である。
【図4】図1に示した仕上げ加工装置の加熱部の要部を示す正面図である。
【図5】図4における金型41の拡大断面図である。
【図6】金型41の上下方向の温度分布を説明した説明図である。
【図7】移動手摺4に対する金型41の位置と、その位置での金型41の設定温度を説明した説明図である。
【図8】この発明の実施の形態2における仕上げ加工装置乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置を示す側面図である。
【図9】移動手摺4を一対の半割部材を用いて無端ループ状に加熱成型する際の模式図である。
【図10】加熱成型の際に移動手摺4に発生するバリを説明した説明図である。
【図11】移動手摺4の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面に基づいて、この発明の各実施の形態を説明する。
なお、各図間において、同一符号は同一あるいは相当部分を示す。
【0009】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1における乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置を、図1〜図7にもとづいて説明する。
図1は、この発明の実施の形態1における乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置を示す側面図、図2はその平面図、図3は切断部の正面図、図4は加熱部の正面図、図5は図4における金型41の拡大断面図、図6は金型41の上下方向の温度分布図、図7は移動手摺4に対する金型41の位置とその位置での金型41の設定温度を説明した図である。
【0010】
図1において、乗客コンベア用移動手摺4の仕上げ加工装置20は、仕上げ加工ユニット30、この仕上げ加工ユニットの移動手段である駆動部70で構成され、架台80で支持されている。
仕上げ加工ユニット30は、切断部50、加熱部40、加圧部60で構成され、移動手摺4に対する移動方向の前段から後段に向かって、切断部50、加熱部40の順に配置され、加圧部60は切断部50、加熱部40にそれぞれ設けられている。
又、駆動部70は、ブロックナット31、このブロックナットに螺合したボールねじ71、このボールねじに並設された案内軸72、及びボールねじ71を駆動するサーボモーター74で構成され、仕上げ加工ユニット30は、ブロックナット31によりボールねじ71および案内軸72に取付けられており、サーボモーター74が回転することにより、移動可能となっている。
なお、移動手摺4は、中芯81(図3、図4)を介して架台80で支持されている。
【0011】
図3において、切断部50は、切断刃51、スペーサ53、軸54で構成され、切断刃51は、発振器52より印加された高周波により振動する。この振動により移動手摺4の長手方向側面である耳部に発生したバリ5を摩擦熱により溶断する。
又、スペーサ53は、ローラー形状となっており、駆動部70により仕上げ加工ユニット30が移動する際に、スプリング61、軸62および止め板63で構成される加圧手段である加圧部60により耳部へ押し付けられながら転動し、移動手摺4の寸法が製造ばらつきにより変化した場合でも耳部と切断刃51の距離(バリ5の切断寸法)を一定に保つように設計されている。
【0012】
すなわち、バリ5が発生している箇所は、無端ループ状に加熱成型された後の冷却工程での熱可塑性エラストマーの収縮によるヒケ(凹痕)が発生しており、バリ5を耳部の根
元から完全に除去してしまうと、後の加熱部40による加圧加熱時にヒケ部の体積を埋めるだけの熱可塑性エラストマーが無くなり美麗に補修出来ない。ヒケによる体積不足分の熱可塑性エラストマーを補うだけの体積(長さ)、すなわちヒケの発生を防ぐ量に相当する寸法のバリ5を残して、それ以上の長さのバリ5を除去することが、切断部の役割である。
【0013】
図4において、加熱部40は、金型41、金型を加熱するヒーター(電熱器)42、金型の加熱温度を測定する温度計43、金型の作動軸44で構成され、金型41は移動手摺4の長手方向側面の耳部外側の凸形状に沿う凹曲面を有したローラー形状の加熱ローラーとなっており、移動手摺の耳部外側を転動しながらバリ5を加熱する。
このように、加熱部40は、切断部50と同様に加圧手段である加圧部60により耳部に押しつけられ、切断部50により所定の長さに切断されたバリ5を溶融させる。
【0014】
バリ5を溶融させる上で、金型41の温度管理は非常に重要である。例えば150℃程度の温度では熱可塑性エラストマーが溶融せずにバリ5を補修出来ない。250℃程度の高温では耳部の熱可塑性エラストマーが過剰に溶融し、芯体層11が露出してしまう。
そこで、図5に示すように温度計43により測定した金型41の金型温度実測値46は、制御器47にフィードバックされる。制御器47は、図示しないマイクロコンピュータを内蔵し、温度指令値48と金型温度実測値46を照合して、金型中央の温度が180〜200℃となるようにヒーター42への入力電力を制御する。なお、図示はしないが、ヒーター42への入力電力を制御する代わりに、サーボモーター74の回転速度を制御して仕上げ加工ユニット30の移動手摺4に対する速度を変えても良い。
したがって、温度計43で、ヒーター42への入力電力、又は移動手摺4と加熱部40の相対移動速度を制御することによって、バリ5の加熱温度を所定温度に維持することができる。
【0015】
又、金型41(加熱ローラー)は、手摺長手方向に複数個、すなわち、予熱用金型、加熱用金型、冷却用金型の順に配置されているものとする(図1の例では3個とした)。このように複数個配置し、それぞれの金型の温度を例えば前段から、150℃、200℃、50℃となるように制御することで、金型41にそれぞれ耳部に対して予熱、加熱(溶融)、冷却(成型)の効果を持たせることが出来る。
【0016】
さらに、金型41(加熱ローラー)は、熱伝導率の異なる2種類以上の材料で構成され(例えば銅と鉄。それぞれの熱伝導率は、銅:398W/m・K、鉄:84W/m・K)、その中の熱伝導率が最も高い材料で構成される部分でバリ5を加熱する。このように構成された金型には、上下方向に図6に示すような温度勾配が出来ており、耳部の金型41による加熱溶融部と非溶融部の境界をなだらかにすることで、加圧痕の発生を抑制している。
すなわち、各加熱ローラーは、バリ5を加熱する部分の加熱温度を最高温度とすると共に加熱溶融部と非加熱溶融部との温度分布をなだらかにするため熱伝導率の異なる2種類以上の部材で構成され、これらの部材を加熱ローラー軸に対し垂直方向に配置したものである。
【0017】
又、仕上げ加工ユニット30を移動手摺4に対してサーボモーター74により移動可能に構成したことで、加熱部40の位置を検知出来る。これにより移動手摺4の任意の位置で金型41の温度を任意に設定しバリ5を加熱することが出来、移動手摺4の長手方向にてバリ5を加熱する金型41の温度を図7に示すように変化させ、バリ5の金型41による加熱溶融部と非溶融部の境界をなだらかにすることで、加圧痕の発生を抑制している。
【0018】
実施の形態2.
以下、この発明の実施の形態2における乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置を図
8に基づいて説明する。
図8に示す実施の形態2では、仕上げ加工ユニット30が直接、架台80に固定されており、仕上げ加工ユニット30に対して移動手摺4を移動させる移動手段である駆動装置90を有している。
駆動装置90は、上ローラー91、下ローラー92および加圧手段(図示せず)により構成され、加圧手段により上ローラー91と下ローラー92で移動手摺4を挟み込み、図示しないモーターにより上ローラー91と下ローラー92が回転させることで移動手摺4が移動する。その他の機構および機能は実施の形態1と同様のものを有している。
【符号の説明】
【0019】
1 上金型 2 下金型
3 中芯金型 4 移動手摺
5 バリ 11 芯体層
12 表面層 13 スライダー層
14 抗張体 20 仕上げ加工装置
30 仕上げ加工ユニット 31 ブロックナット
32 軸 40 加熱部
41 金型 42 ヒーター(電熱器)
43 温度計 44 作動軸
45 取付板 46 金型温度実測値
47 制御器 48 温度指令値
50 切断部 51 切断刃
52 発振器 53 スペーサ
54 軸 55 取付板
60 加圧部 61 スプリング
62 軸 63 止め板
70 駆動部 71 ボールねじ
72 案内軸 73 軸受け
74 サーボモーター 80 架台
81 中芯 90 駆動部
91 上ローラー 92 下ローラー。
【技術分野】
【0001】
この発明は、エスカレータや動く歩道などの乗客コンベアで使用される移動手摺に係り、製造工程で移動手摺の長手方向側面(耳部)に発生するバリを、除去痕が残らないよう除去する乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエスカレータや動く歩道などの乗客コンベアでは、一般に無端ループ状に形成された移動手摺が使用されている。この移動手摺は、踏段上の乗客が安全のために掴むものであり、踏段と同期するように駆動されている。
特許文献1には、図11に示すような表面部が熱可塑性エラストマーから成る長尺の移動手摺本体4を無端ループ状に接続する際の詳細な方法が開示されている。要約すると、図9に示すような上金型1、下金型2および中芯金型3から構成される接続金型に移動手摺の端部同士を対向させて設置し、金型の加熱部で上記移動手摺の端部同士を加熱することにより熱可塑性エラストマーを溶融させて接続するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−172825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の仕上げ加工装置では、移動手摺4を無端ループ状に加熱成型する際、上金型1と下金型2の間に設けられた隙間から、溶融した熱可塑性エラストマーが流出し、これが冷却時に移動手摺の耳部に図10に示すようなバリ5として残存する。
そのため、上記バリ5を手作業で切断除去し、塗装により目立たなくする手直しを行っていたが、バリの除去痕によって意匠性が低下する、作業の手間がかかるといった課題があった。又、バリ5の除去痕が顧客からのクレームの対象となる場合もあった。
この発明は、上記のような課題を解決するためのものであり、移動手摺の耳部に発生したバリ5を自動で除去するとともに、除去痕が残らない美麗な手摺を製造出来る乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係わる乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置は、熱可塑性材から成る移動手摺の両端部を接続加工して無端ループ状の移動手摺を形成する際に、上記接合端部において移動手摺の長手方向側面に発生するバリを除去する乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置であって、上記バリを加熱溶融することによって上記バリを除去する加熱部を有する仕上げ加工ユニットを設けたものである。
【発明の効果】
【0006】
この発明の乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置によれば、移動手摺の無端ループ状に加熱成型した際に熱可塑性材から成る移動手摺耳部に発生するバリの、除去痕が無い美麗な移動手摺を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】この発明の実施の形態1における乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置を示す側面図である。
【図2】図1に示した仕上げ加工装置の平面図である。
【図3】図1に示した仕上げ加工装置の切断部の要部を示す正面図である。
【図4】図1に示した仕上げ加工装置の加熱部の要部を示す正面図である。
【図5】図4における金型41の拡大断面図である。
【図6】金型41の上下方向の温度分布を説明した説明図である。
【図7】移動手摺4に対する金型41の位置と、その位置での金型41の設定温度を説明した説明図である。
【図8】この発明の実施の形態2における仕上げ加工装置乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置を示す側面図である。
【図9】移動手摺4を一対の半割部材を用いて無端ループ状に加熱成型する際の模式図である。
【図10】加熱成型の際に移動手摺4に発生するバリを説明した説明図である。
【図11】移動手摺4の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面に基づいて、この発明の各実施の形態を説明する。
なお、各図間において、同一符号は同一あるいは相当部分を示す。
【0009】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1における乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置を、図1〜図7にもとづいて説明する。
図1は、この発明の実施の形態1における乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置を示す側面図、図2はその平面図、図3は切断部の正面図、図4は加熱部の正面図、図5は図4における金型41の拡大断面図、図6は金型41の上下方向の温度分布図、図7は移動手摺4に対する金型41の位置とその位置での金型41の設定温度を説明した図である。
【0010】
図1において、乗客コンベア用移動手摺4の仕上げ加工装置20は、仕上げ加工ユニット30、この仕上げ加工ユニットの移動手段である駆動部70で構成され、架台80で支持されている。
仕上げ加工ユニット30は、切断部50、加熱部40、加圧部60で構成され、移動手摺4に対する移動方向の前段から後段に向かって、切断部50、加熱部40の順に配置され、加圧部60は切断部50、加熱部40にそれぞれ設けられている。
又、駆動部70は、ブロックナット31、このブロックナットに螺合したボールねじ71、このボールねじに並設された案内軸72、及びボールねじ71を駆動するサーボモーター74で構成され、仕上げ加工ユニット30は、ブロックナット31によりボールねじ71および案内軸72に取付けられており、サーボモーター74が回転することにより、移動可能となっている。
なお、移動手摺4は、中芯81(図3、図4)を介して架台80で支持されている。
【0011】
図3において、切断部50は、切断刃51、スペーサ53、軸54で構成され、切断刃51は、発振器52より印加された高周波により振動する。この振動により移動手摺4の長手方向側面である耳部に発生したバリ5を摩擦熱により溶断する。
又、スペーサ53は、ローラー形状となっており、駆動部70により仕上げ加工ユニット30が移動する際に、スプリング61、軸62および止め板63で構成される加圧手段である加圧部60により耳部へ押し付けられながら転動し、移動手摺4の寸法が製造ばらつきにより変化した場合でも耳部と切断刃51の距離(バリ5の切断寸法)を一定に保つように設計されている。
【0012】
すなわち、バリ5が発生している箇所は、無端ループ状に加熱成型された後の冷却工程での熱可塑性エラストマーの収縮によるヒケ(凹痕)が発生しており、バリ5を耳部の根
元から完全に除去してしまうと、後の加熱部40による加圧加熱時にヒケ部の体積を埋めるだけの熱可塑性エラストマーが無くなり美麗に補修出来ない。ヒケによる体積不足分の熱可塑性エラストマーを補うだけの体積(長さ)、すなわちヒケの発生を防ぐ量に相当する寸法のバリ5を残して、それ以上の長さのバリ5を除去することが、切断部の役割である。
【0013】
図4において、加熱部40は、金型41、金型を加熱するヒーター(電熱器)42、金型の加熱温度を測定する温度計43、金型の作動軸44で構成され、金型41は移動手摺4の長手方向側面の耳部外側の凸形状に沿う凹曲面を有したローラー形状の加熱ローラーとなっており、移動手摺の耳部外側を転動しながらバリ5を加熱する。
このように、加熱部40は、切断部50と同様に加圧手段である加圧部60により耳部に押しつけられ、切断部50により所定の長さに切断されたバリ5を溶融させる。
【0014】
バリ5を溶融させる上で、金型41の温度管理は非常に重要である。例えば150℃程度の温度では熱可塑性エラストマーが溶融せずにバリ5を補修出来ない。250℃程度の高温では耳部の熱可塑性エラストマーが過剰に溶融し、芯体層11が露出してしまう。
そこで、図5に示すように温度計43により測定した金型41の金型温度実測値46は、制御器47にフィードバックされる。制御器47は、図示しないマイクロコンピュータを内蔵し、温度指令値48と金型温度実測値46を照合して、金型中央の温度が180〜200℃となるようにヒーター42への入力電力を制御する。なお、図示はしないが、ヒーター42への入力電力を制御する代わりに、サーボモーター74の回転速度を制御して仕上げ加工ユニット30の移動手摺4に対する速度を変えても良い。
したがって、温度計43で、ヒーター42への入力電力、又は移動手摺4と加熱部40の相対移動速度を制御することによって、バリ5の加熱温度を所定温度に維持することができる。
【0015】
又、金型41(加熱ローラー)は、手摺長手方向に複数個、すなわち、予熱用金型、加熱用金型、冷却用金型の順に配置されているものとする(図1の例では3個とした)。このように複数個配置し、それぞれの金型の温度を例えば前段から、150℃、200℃、50℃となるように制御することで、金型41にそれぞれ耳部に対して予熱、加熱(溶融)、冷却(成型)の効果を持たせることが出来る。
【0016】
さらに、金型41(加熱ローラー)は、熱伝導率の異なる2種類以上の材料で構成され(例えば銅と鉄。それぞれの熱伝導率は、銅:398W/m・K、鉄:84W/m・K)、その中の熱伝導率が最も高い材料で構成される部分でバリ5を加熱する。このように構成された金型には、上下方向に図6に示すような温度勾配が出来ており、耳部の金型41による加熱溶融部と非溶融部の境界をなだらかにすることで、加圧痕の発生を抑制している。
すなわち、各加熱ローラーは、バリ5を加熱する部分の加熱温度を最高温度とすると共に加熱溶融部と非加熱溶融部との温度分布をなだらかにするため熱伝導率の異なる2種類以上の部材で構成され、これらの部材を加熱ローラー軸に対し垂直方向に配置したものである。
【0017】
又、仕上げ加工ユニット30を移動手摺4に対してサーボモーター74により移動可能に構成したことで、加熱部40の位置を検知出来る。これにより移動手摺4の任意の位置で金型41の温度を任意に設定しバリ5を加熱することが出来、移動手摺4の長手方向にてバリ5を加熱する金型41の温度を図7に示すように変化させ、バリ5の金型41による加熱溶融部と非溶融部の境界をなだらかにすることで、加圧痕の発生を抑制している。
【0018】
実施の形態2.
以下、この発明の実施の形態2における乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置を図
8に基づいて説明する。
図8に示す実施の形態2では、仕上げ加工ユニット30が直接、架台80に固定されており、仕上げ加工ユニット30に対して移動手摺4を移動させる移動手段である駆動装置90を有している。
駆動装置90は、上ローラー91、下ローラー92および加圧手段(図示せず)により構成され、加圧手段により上ローラー91と下ローラー92で移動手摺4を挟み込み、図示しないモーターにより上ローラー91と下ローラー92が回転させることで移動手摺4が移動する。その他の機構および機能は実施の形態1と同様のものを有している。
【符号の説明】
【0019】
1 上金型 2 下金型
3 中芯金型 4 移動手摺
5 バリ 11 芯体層
12 表面層 13 スライダー層
14 抗張体 20 仕上げ加工装置
30 仕上げ加工ユニット 31 ブロックナット
32 軸 40 加熱部
41 金型 42 ヒーター(電熱器)
43 温度計 44 作動軸
45 取付板 46 金型温度実測値
47 制御器 48 温度指令値
50 切断部 51 切断刃
52 発振器 53 スペーサ
54 軸 55 取付板
60 加圧部 61 スプリング
62 軸 63 止め板
70 駆動部 71 ボールねじ
72 案内軸 73 軸受け
74 サーボモーター 80 架台
81 中芯 90 駆動部
91 上ローラー 92 下ローラー。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性材から成る移動手摺の両端部を接続加工して無端ループ状の移動手摺を形成する際に、上記接合端部において移動手摺の長手方向側面に発生するバリを除去する乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置であって、上記バリを加熱溶融することによって上記バリを除去する加熱部を有する仕上げ加工ユニットを設けたことを特徴とする乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置。
【請求項2】
上記仕上げ加工ユニットは、上記バリに当接し加熱する凹曲面を有する金型と、この金型を加熱するヒーターと、上記金型の加熱温度を測定する温度計とを有する加熱部を設けたことを特徴とする請求項1記載の乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置。
【請求項3】
上記仕上げ加工ユニットは、ヒケ(凹痕)の発生を防ぐ量の寸法位置で上記バリを切断する切断部を設けたことを特徴とする請求項2記載の乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置。
【請求項4】
上記仕上げ加工ユニットは、上記バリを押圧する加圧部を設けたことを特徴とする請求項2記載の乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置。
【請求項5】
上記仕上げ加工ユニット、又は上記移動手摺を所定の加熱速度で移動させる駆動部を設けたことを特徴とする請求項2の乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置。
【請求項6】
上記金型は、上記移動手摺の長手方向側面を転動しながら上記バリを加熱する加熱ローラーで形成したことを特徴とする請求項2記載の乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置。
【請求項7】
上記加熱ローラーは、上記バリを加熱する部分の加熱温度を最高温度とすると共に加熱溶融部と非加熱溶融部との温度分布をなだらかにするため熱伝導率の異なる2種類以上の部材で構成し、これらの部材を加熱ローラー軸に対し垂直方向に配置したことを特徴とする請求項6記載の乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置。
【請求項8】
上記加熱部は、複数個の金型で構成し、これら金型を予熱用金型、加熱用金型、冷却用金型の順に配置したことを特徴とする請求項2又は請求項7に記載の乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置。
【請求項9】
上記切断部は、高周波で振動する切断刃と、上記バリの切断寸法を設定するスペーサとを設けたことを特徴とする請求項3記載の乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置。
【請求項10】
上記スペーサは、上記移動手摺の長手方向側面を転動するスペーサローラーで形成したことを特徴とする請求項9記載の乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置。
【請求項11】
上記ヒーターへの入力電力、又は上記移動手摺と上記加熱部の相対移動速度を、上記温度計で制御することによって、上記バリの加熱温度を所定温度に維持することを特徴とする請求項5に記載の乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置。
【請求項1】
熱可塑性材から成る移動手摺の両端部を接続加工して無端ループ状の移動手摺を形成する際に、上記接合端部において移動手摺の長手方向側面に発生するバリを除去する乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置であって、上記バリを加熱溶融することによって上記バリを除去する加熱部を有する仕上げ加工ユニットを設けたことを特徴とする乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置。
【請求項2】
上記仕上げ加工ユニットは、上記バリに当接し加熱する凹曲面を有する金型と、この金型を加熱するヒーターと、上記金型の加熱温度を測定する温度計とを有する加熱部を設けたことを特徴とする請求項1記載の乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置。
【請求項3】
上記仕上げ加工ユニットは、ヒケ(凹痕)の発生を防ぐ量の寸法位置で上記バリを切断する切断部を設けたことを特徴とする請求項2記載の乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置。
【請求項4】
上記仕上げ加工ユニットは、上記バリを押圧する加圧部を設けたことを特徴とする請求項2記載の乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置。
【請求項5】
上記仕上げ加工ユニット、又は上記移動手摺を所定の加熱速度で移動させる駆動部を設けたことを特徴とする請求項2の乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置。
【請求項6】
上記金型は、上記移動手摺の長手方向側面を転動しながら上記バリを加熱する加熱ローラーで形成したことを特徴とする請求項2記載の乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置。
【請求項7】
上記加熱ローラーは、上記バリを加熱する部分の加熱温度を最高温度とすると共に加熱溶融部と非加熱溶融部との温度分布をなだらかにするため熱伝導率の異なる2種類以上の部材で構成し、これらの部材を加熱ローラー軸に対し垂直方向に配置したことを特徴とする請求項6記載の乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置。
【請求項8】
上記加熱部は、複数個の金型で構成し、これら金型を予熱用金型、加熱用金型、冷却用金型の順に配置したことを特徴とする請求項2又は請求項7に記載の乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置。
【請求項9】
上記切断部は、高周波で振動する切断刃と、上記バリの切断寸法を設定するスペーサとを設けたことを特徴とする請求項3記載の乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置。
【請求項10】
上記スペーサは、上記移動手摺の長手方向側面を転動するスペーサローラーで形成したことを特徴とする請求項9記載の乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置。
【請求項11】
上記ヒーターへの入力電力、又は上記移動手摺と上記加熱部の相対移動速度を、上記温度計で制御することによって、上記バリの加熱温度を所定温度に維持することを特徴とする請求項5に記載の乗客コンベア用移動手摺の仕上げ加工装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−1506(P2013−1506A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133994(P2011−133994)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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