説明

乗客コンベア装置

【課題】この発明は、作業員の進入口を形成可能としつつ剛性を向上でき、ステップの循環をより安定させることができる乗客コンベア装置を提供することを目的とするものである。
【解決手段】ステップ軸2は、左右一体型の一体型ステップ軸20と分割式ステップ軸21とから構成されている。分割式ステップ軸21は、テップ軸本体200を有し、駆動レール1の離間幅中間でステップ軸本体200が分割可能であり、分割されたステップ軸本体200の一部が回動可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エスカレータや動く歩道等の乗客コンベア装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、乗客コンベアのトラス内には、一対の駆動レール、複数のステップ軸、及び駆動手段が設けられている。一対の駆動レールは互いに間隔を置いて配置されており、各ステップ軸は、駆動レール間を跨いで配置されるとともに、各駆動レールの延在方向に互いに間隔を置いて配置されている。各ステップ軸の両端には駆動レール上を転動する駆動ローラが取り付けられ、各ステップ軸の上部には乗客が乗るステップが取り付けられる。各ステップ軸は、例えば無端状のステップチェーン及びステップリンク等の連結部材によって互いに連結されており、駆動手段によってこの連結部材が駆動されることで、各ステップが循環される。ここで、駆動手段の点検等を行う場合には作業員がトラス内に入る必要があるが、ステップ軸間の距離が400mm程度と狭いため、作業員がトラス内に入りづらいという問題があった。
【0003】
そこで従来装置では、いくつかのステップ軸の中間部を無くすことで、作業員のトラス内への進入を容易にするための空間を確保している。また、中間部を無くすことでステップ軸は左右独立とされているが、このステップ軸の内側端部をステップの裏面に設けられた支持部に取り付けることで片持ち支持構造を形成している。さらに、前記支持部を追従レール上に配置された追従ローラによって補強支持することで、剛性の維持を図っている(例えば非特許文献1参照)。
【0004】
【非特許文献1】発明協会公開技報 公開番号97−4553
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来の乗客コンベア装置では、前記支持部を追従ローラによって補強支持することで剛性の維持を図っているが、片持ち支持構造のため、軸の材質及び径の大きさによっては剛性不足となり、ステップに大きな負荷がかかった際に固定部を支点として駆動ローラに上向きの力が作用し、ステップの循環が不安定になることがある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、作業員の進入口を形成可能としつつ剛性を向上でき、ステップの循環をより安定させることができる乗客コンベア装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る乗客コンベア装置は、トラス内に互いに間隔を置いて配置された一対の駆動レールと、駆動レール間を跨いで配置されるとともに、各駆動レールの延在方向に沿って互いに間隔を置いて配置された複数のステップ軸とを備えた乗客コンベア装置において、ステップ軸の少なくとも1つは、ステップ軸本体を有し、駆動レールの離間幅中間でステップ軸本体が分割可能であり、分割されたステップ軸本体の一部が回動可能な分割式ステップ軸である。
【発明の効果】
【0008】
この発明の乗客コンベア装置によれば、ステップ軸の少なくとも1つは、ステップ軸本体を有し、駆動レールの離間幅中間でステップ軸本体が分割可能であり、分割されたステップ軸本体の一部が回動可能な分割式ステップ軸であるので、通常の稼動時には、両持ち支持構造を形成でき、点検時には、分割されたステップ軸本体の一部を回動させることで作業員のトラス内への進入を容易にするための空間を確保できる。すなわち、作業員の進入口を形成可能としつつ剛性を向上でき、ステップの循環をより安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による乗客コンベア装置を示す平面図であり、分割式ステップ軸の連結状態を示している。図2は、図1の分割式ステップ軸が分割された状態を示す平面図である。図において、断面L字状の一対の駆動レール1は、トラス(図示せず)内で互いに間隔を置いて配置されている。各駆動レール1上には、該駆動レール1間を跨ぐとともに、駆動レール1の延在方向に沿って互いに間隔を置いて複数のステップ軸2が配置されている。各ステップ軸2の両端には駆動レール1上を転動する駆動ローラ2aが取り付けられている。また、各ステップ軸2には、乗客が乗るステップ(図示せず)が取り付けられるステップ取付部2bが設けられている。各ステップ軸2は例えば無端状のステップチェーン及びステップリンク等の連結部材3によって互いに連結されており、この連結部材3がトラス内に配置された駆動手段(図示せず)によって駆動されることで、各ステップ軸2に取り付けられた各ステップが循環される。
【0010】
ここで、ステップ軸2は、一体型ステップ軸20と分割式ステップ軸21とから構成されている。この実施の形態では、2つの分割式ステップ軸21が互いに隣り合うように配置されており、それ以外は一体型ステップ軸20である。一体型ステップ軸20は、左右一体型のステップ軸2であり、従来から使用されているものである。分割式ステップ軸21は、両端に駆動ローラ2aが取り付けられたステップ軸本体200を有しており、このステップ軸本体200が駆動レール1の離間幅中間で分割可能であり、分割されたステップ軸本体200の一部が回動可能とされているものである(図2参照)。具体的には、ステップ軸本体200は、一対のローラ軸部210、一対の軸体220、及び連結体230から構成されている。各ローラ軸部210の一端には駆動ローラ2aがそれぞれ取り付けられている。各軸体220は各ローラ軸部210の他端に回動可能に取り付けられている。連結体230は各軸体220を分割可能に互いに連結している。図1のように、連結体230によって各軸体220を連結することで、一体型ステップ軸20と同様に両持ち支持構造を形成できる。一方、図2に示すように、連結体230が取り外されることにより軸体220間の連結が解除され、各軸体220がローラ軸部210に対して直角となるように回動されることで、作業員のトラス内への進入を容易にするための空間を確保できる。なお、ステップ取付部2bは軸体220に設けられており、連結部材3は各ローラ軸部210を連結している。
【0011】
次に、図3は、図1の連結体230を拡大して示す平面図である。図において、連結体230は、スリーブ231、一対のボルト232、及び一対のナット233を有している。スリーブ231には、各軸体220の一端221が両側から各々挿入されている。各軸体220の一端221がスリーブ231に挿入されると、各軸体220及びスリーブ231を貫通する一対のボルト挿入孔234が形成される。このボルト挿入孔234に各ボルト232が挿入され、スリーブ231から突出したボルト232の端部にナット233が螺着されることで、各軸体220の一端221がスリーブ231に各々固定される。すなわち、ボルト232及びナット233をスリーブ231から取り外すことで、スリーブ231に対する軸体220の固定を解除でき、軸体220が分割可能とされる。なお、この実施の形態では、締結部材は、一対のボルト232及び一対のナット233によって構成されている。
【0012】
次に、図4は図1のローラ軸部210と軸体220との接続部分を拡大して示す平面図であり、図5は図4のローラ軸部210と軸体220との接続部分を分離した状態でさらに拡大して示す平面図であり、図6は図5のローラ軸部210及び軸体220の側面図である。図5,図6に示すように、軸体220には平板状の凸部222が設けられ、ローラ軸部210には凸部222が挿入される断面U字状の凹部211が設けられている。これら凸部222及び凹部211には、凸部222が凹部211に挿入された際に互いに連通される回動軸孔250が設けられている。図4に示すように、回動軸孔250に回動軸260が取り付けられることで、軸体220がローラ軸部210に回動自在に取り付けられる。具体的には、図6に示すように、回動軸260は、先端に溝261aが設けられた回動軸本体261と、C字状のワッシャからなる止め具262とから構成されており、回動軸孔250に回動軸本体261が挿入された後に、溝261aに止め具262が装着されることで、軸体220がローラ軸部210に回動自在に取り付けられる。
【0013】
このような乗客コンベア装置では、ステップ軸2の少なくとも1つは、ステップ軸本体200を有し、駆動レール1の離間幅中間でステップ軸本体200が分割可能であり、分割されたステップ軸本体200の一部が回動可能な分割式ステップ軸21であるので、通常の稼動時には、両持ち支持構造を形成でき、点検時には、分割されたステップ軸本体200の一部を回動させることで作業員のトラス内への進入を容易にするための空間を確保できる。すなわち、作業員の進入口を形成可能としつつ剛性を向上でき、ステップの循環をより安定させることができる。
【0014】
また、連結体230は、前記各軸体220の一端221が各々挿入されるスリーブ231と、前記各軸体220の一端221を前記スリーブ231に各々固定する一対のボルト232及び一対のナット233とを含むので、各軸体220間を強固に連結でき、分割式ステップ軸21の剛性をより確実に向上できる。
【0015】
さらに、軸体220に凸部222が設けられ、ローラ軸部210に凹部211が設けられ、これら凸部222及び凹部211の回動軸孔250に回動軸260が取り付けられることで軸体220がローラ軸部210に回動自在に取り付けられるので、簡単な構造で軸体220をローラ軸部210に対して回動自在とすることができ、コストを低減できる。
【0016】
なお、実施の形態1では、ステップ軸本体200は長さ方向中央で対称に分割されていたが、非対称に分割されてもよい。
【0017】
実施の形態2.
図7は、この発明の実施の形態2による乗客コンベア装置を示す平面図である。実施の形態1では、分割式ステップ軸21に2つの回動部分が設けられていたが、図7に示すように回動部分を1つとしてもよい。すなわち、この実施の形態2のステップ軸本体200は、一対のローラ軸部210、ローラ軸部210のいずれか一方に一端220aが回動自在に取り付けられた軸体220、及びローラ軸部210の他方と軸体220の他端220bとを分割可能に連結する連結体(図7では図示せず)から構成される。その他の構成は、実施の形態1と同様である。このように回動部分を1つとした場合には、構造を簡単にでき、コストを低減出来る。
【0018】
なお、実施の形態1,2では、2つの分割式ステップ軸21が互いに隣り合うように配置されていると説明したが、連続して設けられる分割式ステップ軸の数は1つでもよく、3以上でもよい。
【0019】
また、実施の形態1,2では、軸体220に凸部222が設けられ、ローラ軸部210に凹部211が設けられていると説明したが、軸体に凹部が設けられローラ軸部に凸部が設けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施の形態1による乗客コンベア装置を示す平面図である。
【図2】図1の分割式ステップ軸が分割された状態を示す平面図である。
【図3】図1の連結体を拡大して示す平面図である。
【図4】図1のローラ軸部と軸体との接続部分を拡大して示す平面図である。
【図5】図4のローラ軸部と軸体との接続部分を分離した状態でさらに拡大して示す平面図である。
【図6】図5のローラ軸部及び軸体の側面図である。
【図7】この発明の実施の形態2による乗客コンベア装置を示す平面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 駆動レール、2 ステップ軸、2a 駆動ローラ、3 連結部材、21 分割式ステップ軸、200 ステップ軸本体、210 ローラ軸部、211 凹部、220 軸体、221 一端、222 凸部、230 連結体、231 スリーブ、232 ボルト(締結部材)、233 ナット(締結部材)、250 回動軸孔、260 回動軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラス内に互いに間隔を置いて配置された一対の駆動レールと、
前記駆動レール間を跨いで配置されるとともに、前記各駆動レールの延在方向に沿って互いに間隔を置いて配置された複数のステップ軸と
を備えた乗客コンベア装置において、
前記ステップ軸の少なくとも1つは、ステップ軸本体を有し、前記駆動レールの離間幅中間で前記ステップ軸本体が分割可能であり、分割された前記ステップ軸本体の一部が回動可能な分割式ステップ軸であることを特徴とする乗客コンベア装置。
【請求項2】
前記ステップ軸本体は、
前記駆動レール上を転動する駆動ローラが一端に取り付けられた一対のローラ軸部と、
前記各ローラ軸部の他端に各々回動可能に取り付けられた一対の軸体と、
前記各軸体を分割可能に互いに連結する連結体と
を含むことを特徴とする乗客コンベア装置。
【請求項3】
前記連結体は、前記各軸体の一端が各々挿入されるスリーブと、前記各軸体の一端を前記スリーブに固定する締結部材とを含み、前記スリーブに対する前記各軸体の固定を解除することで前記各軸体が分割可能とされることを特徴とする請求項2記載の乗客コンベア装置。
【請求項4】
前記ローラ軸部と前記軸体とのいずれか一方には平板状の凸部が設けられ、他方には前記凸部が挿入される断面U字状の凹部が設けられ、
前記凸部及び前記凹部には、前記凸部が前記凹部に挿入された際に互いに連通される回動部軸孔が設けられ、この回動軸孔に回動軸が取り付けられることで、前記軸体が前記ローラ軸部に回動自在に取り付けられることを特徴とする請求項2記載の乗客コンベア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−290796(P2008−290796A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−135253(P2007−135253)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】