説明

乗客コンベア

【課題】乗客が乗り口側の反転部に接触することを物理的に阻止すると共に、乗客や管理者の利便性を向上させることである。
【解決手段】エスカレータ10は、ステップ11の両側に設けられた欄干部13と、欄干部13に取り付けられた移動手摺12と、移動手摺12が反転する移動手摺12の反転部23と、を備え、乗り口21側の反転部23において、移動手摺12の外側面から内側面までをカバーする反転部カバー25が設置されることを特徴とする。反転部カバー25は、挟持部26と伸縮部27とから構成され、伸縮部27を伸縮させる電動モータ28と、エスカレータ10の運転方向に基いて、電動モータ28の駆動状態を制御する制御装置61の電動モータ作動手段とを有する。さらに、身長検出装置32を備え、電動モータ作動手段は、身長検出装置32の検出情報に基いて、電動モータ28の駆動状態を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベアに係り、特に欄干部の乗り口側及び降り口側の各端部において、欄干部の形状に沿って移動手摺が反転する移動手摺の反転部を備えた乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータ等の乗客コンベアには、ステップと共に移動する移動手摺が欄干部に取り付けられ、移動手摺の高さは、大人が持ち易い高さに設定されている。欄干部の乗り口側及び降り口側の各端部では、欄干部の形状に沿って移動手摺が反転する移動手摺の反転部が存在し、反転した移動手摺は、インレット部から乗客には見えない欄干部の下方に引き通されて、欄干部の下方に設置される移動手摺駆動装置により、ステップの移動と共に循環する仕組みになっている。
【0003】
インレット部は、欄干部の下方に設置されているので、身長の低い子供であっても、移動手摺の反転部に触れることができる。このような反転部に体重の軽い幼児がつかまった場合には、移動手摺の移動と共に子供が欄干部上に持ち上げられるおそれがあるので、乗客コンベアの乗り口付近で幼児等の子供が遊ばないように、アナウンス等によって乗客に注意を促している。
【0004】
本発明に関連する技術として、乗客コンベアの移動手摺をカバーする手摺フードが特許文献1に開示されている。この手摺フードは、移動手摺の乗客が触れる部分を外側から覆うように、手摺デッキに取り付けられており、断面形状が略半円の弾性部材から構成されている。さらに、手摺フードの表面には、押圧を検出するセンサが取り付けられ、手摺フードに対して強い力が加わったときには、警報を発する仕組みになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−53281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の手摺フードによれば、移動手摺の反転部に子供がつかまって欄干部上に持ち上げられることを物理的に阻止することができる。しかしながら、この手摺フードは、乗客が移動手摺を持つことを妨げないようにするため、移動手摺の内側がカバーされていない半円形状であって、子供は反転部に触れることができる。したがって、子供が反転部に触った場合には、手摺フードに体が接触するおそれがあり、手摺フードに接触すると警報が発せられるので、乗客に不快感を与えることが想定される。また、手摺フードに体が接触すると、子供にとっては幾分衝撃がある。
【0007】
また、特許文献1の手摺フードは、降り口側の反転部にも設置される。降り口側においては、移動手摺を持ちステップに載って移動してきた乗客の手が移動手摺から離れるのが遅かった場合に、乗客の手が手摺フードに接触して、頻繁に警報が発せられることが想定され、乗客に不快感を与えるおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、乗客コンベアの乗り口側において、乗客が反転部に接触することを物理的に阻止することが可能な乗客コンベアを提供することである。また、本発明のもう1つの目的は、乗客が乗り口側の反転部に接触することを物理的に阻止すると共に、乗客や管理者の利便性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る乗客コンベアは、乗り口から降り口に亘って、ステップの両側に設けられた欄干部と、欄干部に取り付けられた移動手摺と、欄干部の乗り口側及び降り口側の各端部において、欄干部の形状に沿って移動手摺が反転する移動手摺の反転部と、を備えた乗客コンベアであって、乗り口側の反転部において、移動手摺の外側面から内側面までをカバーする反転部カバーが設置されることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、乗り口側の反転部への接触を物理的に阻止することができ、反転部に幼児がつかまって欄干部上に持ち上げられることを防止できる。
【0011】
また、反転部カバーは、移動手摺に沿って伸縮する伸縮部を有することが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、利用者のニーズに応じて、反転部カバーによるカバー領域を調整することが可能になる。例えば、幼児の利用が想定されるときにのみ伸縮部を伸長させて反転部をカバーすることができる。
【0013】
また、全ての反転部に反転部カバーが設置されると共に、伸縮部を伸縮させる駆動アクチュエータと、乗客コンベアの動作を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、乗客コンベアの運転方向に基き、駆動アクチュエータを制御して、降り口側となる反転部に設置された反転部カバーの伸縮部を収縮させることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、全ての反転部に反転部カバーが設置した場合であっても、乗客コンベアの運転方向に応じて、乗り口側の反転部のみを自動的にカバーすることが可能となり、管理者の負荷を軽減することができる。即ち、降り口側の反転部カバーは、自動的に収縮され、降り口側の反転部において乗客の手が触れる可能性がある部分には、反転部カバーは設置されない。
【0015】
また、乗り口に設置され、乗客の身長を検出する身長検出装置と、伸縮部を伸縮させる駆動アクチュエータと、乗客コンベアの動作を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、身長検出センサの検出情報に基き、駆動アクチュエータを制御して、伸縮部を伸縮させることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、身長検出装置によって身長の低い幼児を検出した場合にのみ、自動的に伸縮部を伸張させて反転部をカバーすることが可能になる。
【0017】
また、反転部カバーは、乗客コンベアの運転状況を表示する表示部を有することが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、反転部カバーは乗客から目に付き易い位置に設置されるので、乗客コンベアの運転状況を確認することが容易になり、乗客の利便性を向上させることができる。
【0019】
また、反転部カバーは、乗降口を閉鎖するゲートを有することが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、反転部カバーは乗客から目に付き易い位置に設置されるので、乗客コンベアの休止を確認することが容易になり、乗客の利便性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る乗客コンベアによれば、乗客が乗り口側の反転部に接触することを物理的に阻止すると共に、乗客や管理者の利便性を向上させることである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係るエスカレータの概略構成を示す模式図である。
【図2】図1に示すエスカレータにおいて、乗り口付近を示す図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るエスカレータにおいて、乗り口付近を示す図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係るエスカレータにおいて、乗り口付近を示す図である。
【図6】図5のB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に図面を用いて本発明に係る乗客コンベアの実施の形態につき、詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るエスカレータ10の概略構成を示す模式図である。図2は、図1に示すエスカレータ10において、乗り口21付近を示す図であり、図3は、図2のA−A線断面図である。なお、以下では、乗客コンベアとしてエスカレータ10を例に挙げて説明するが、乗客コンベアは、所謂動く歩道とすることもできる。
【0024】
図1に示すように、エスカレータ10は、複数のステップ11が上階と下階との間を循環する昇降装置である。ステップ11の両側には、ステップ11と共に移動する移動手摺12を取り付けるための欄干部13が設けられている。なお、エスカレータ10の運転は、後述の制御装置61によって制御されている。
【0025】
ステップ11は、乗客を運搬するための踏段であって、乗客が載る踏板14と、段差を塞ぐためのライザ15と、踏板14及びライザ15を固定する図示しないフレームとを備える。フレームには、各ステップ11を連結するステップチェーンに取り付けられたステップ軸が設置される。そして、後述の駆動装置62によってステップチェーンが駆動されることで、ステップ11が移動する仕組みになっている。
【0026】
移動手摺12は、ステップ11の移動と共に移動する手摺であって、欄干部13に取り付けられている。移動手摺12は、図示しない移動手摺駆動部によって駆動され、移動手摺駆動部は、ステップ11を移動させる駆動装置62によって駆動されるので、ステップ11及び移動手摺12を連動させることが可能になる。
【0027】
欄干部13は、上記のように、ステップ11の両側に設けられ、移動手摺12が取り付けられる側壁であって、鉛直方向に沿った欄干パネル16を備える。図2に示す欄干パネル16は、ガラス又はプラスチック製の透明な厚板であるが、ステンレス板等の金属製パネルを使用することもできる。
【0028】
欄干パネル16の上方には、手摺デッキ17が設置され、手摺デッキ17の上面には、移動手摺12が取り付けられる手摺レール18が設置されている。また、図2に示すように、欄干パネル16の下方には、ステップ11側である内側に、インナーデッキ19、外側に、アウターデッキ20がそれぞれ設けられている。なお、図2は、図面の明瞭化のため、欄干パネル16を透かして見える部分の記載を省略している(図4、図5も同様)。
【0029】
図1に示すように、欄干部13は、乗り口21から降り口22に亘って設けられている。そして、欄干部13の端部は、半円形状を呈しており、手摺デッキ17及び手摺レール18は欄干部13の形状に沿って設けられるので、移動手摺12も欄干部13の形状に沿って反転することになる。この移動手摺12が反転する部分が反転部23であって、反転した移動手摺12は、インレット部24から乗客には見えない欄干部13の下方に引き通されて、移動手摺駆動部により駆動される。即ち、インレット部24は、乗り口21においては、移動手摺12が欄干部13の下方から上方に出てくる出口であり、降り口22においては、移動手摺12が欄干部13の上方から下方に引き込まれる入口となる。
【0030】
反転部23は、上記のように、2つの欄干部13の乗り口21側と降り口22側のそれぞれに存在し、インレット部24から移動手摺12の反転が完了するところまでを意味する。乗り口21側の反転部23において、移動手摺12は、乗客が持つ上面を鉛直下方に向けた状態でインレット部24から現れて、欄干部13の半円形状に沿って反転し、上面を鉛直上方に向けた状態となる。
【0031】
なお、一般的には、移動手摺12の反転が完了して移動手摺12の上面が水平となる位置よりもやや先方に、ステップ11の載り位置が設定される。したがって、反転部23は、乗客が持つことを想定した部分ではないため、後述の反転部カバー25により完全に覆ったとしても、乗客の利便性を害することはない。
【0032】
エスカレータ10は、移動手摺12の反転部23をカバーする反転部カバー25を備えることを特徴とする。反転部カバー25は、乗り口21側の反転部23において、移動手摺12の外側面から内側面までをカバーする部材である。この反転部カバー25によって、乗り口21側の反転部23に幼児等の子供が接触することを物理的に阻止することができる。
【0033】
反転部カバー25は、少なくともインレット部24から幼児の目線の高さまでをカバーしていることが好ましく、図1に示すように、反転部23のほぼ全長に亘って、即ち、インレット部24から反転が完了して移動手摺12の上面が水平になる部分あたりまでをカバーするように設けられる。一方、同図に示すように、降り口22側の反転部23においては、乗客の手が触れる可能性がある部分に反転部カバー25は設置されず、後述の電動モータ28によって伸縮部27が収縮した状態となっている。
【0034】
詳しくは図2に示すように、反転部カバー25は、挟持部26と伸縮部27とから構成される。そして、詳しくは図3に示すように、反転部カバー25は、断面形状が欄干部13を外内両側から挟持可能なU字形状(略U字形状を含む)であって、移動手摺12の外側面から上面を亘って、内側面までを覆っている。
【0035】
挟持部26は、欄干部13を両側から挟持して、反転部カバー25を欄干部13に固定する機能を有する。反転部カバー25が反転部23をカバーして欄干部13に取り付けられたときには、欄干パネル16の両側から挟持力が働き、後述の駆動ローラ29を欄干パネル16に押し付けている。具体的に、挟持部26は、欄干パネル16を両側から挟持できるように加工された樹脂(ゴム)製や金属製の薄板など弾性変形可能な部材から構成される。即ち、欄干部13への取り付け前において、挟持部26の断面形状は、C字形状(略C字形状を含む)であり、反転部カバー25は、挟持部26を挟持力に抗して開きながら欄干パネル16に嵌め込んで取り付けられる。
【0036】
上端の挟持部26には、図3に示すように、伸縮部27を伸縮させる駆動アクチュエータである電動モータ28が設置され、伸縮部27を自動で伸縮させることが可能である。具体的には、電動モータ28が、欄干パネル16に当接した駆動ローラ29を回転駆動させることにより、伸縮部27が手摺デッキ17に沿って伸縮することになる。
【0037】
駆動ローラ29は、挟持部26の挟持力によって欄干パネル16に押し付けられると共に、ローラの側面が手摺デッキ17に当接するように配置されている。そして、移動手摺12(手摺デッキ17)に沿って伸縮部27を伸縮させるために、手摺デッキ17の厚み方向に対し駆動ローラ29と反対側に係合爪30が設けられ、駆動ローラ29と係合爪30により手摺デッキ17を挟んでいる。なお、電動モータ28、駆動ローラ29、及び係合爪30は、いずれも支持プレート31に設置されている。
【0038】
挟持部26は、反転部カバー25の上端部、中途部、下端部の3箇所に設けられ、反転部カバー25を安定に固定することができる。中途部の挟持部26には、支持プレート31上に駆動ローラ29及び係合爪30が設置され、反転部カバー25が手摺デッキ17に沿って伸縮可能に設計されている。なお、挟持部26の数、長さ、挟持力等を調整することにより、反転部カバー25の伸縮性や固定性等を任意に設定することができる。
【0039】
下端の挟持部26には、駆動ローラ29の代わりにボルトやネジ等の締結部材が設けられ、反転部カバー25が手摺デッキ17等に締結される。なお、例えば、手摺デッキ17の一部には、図示しないボルト等の締結部材を貫通する貫通孔を形成することができる。反転部カバー25は、移動手摺12のメンテナンス時等において、取り外されることが想定され、そのような場合には、下端の挟持部26の締結部材を外すだけで、反転部カバー25を容易に取り外すことができる。
【0040】
反転部カバー25の伸縮部27は、上記のように、長さが伸縮する部分であって、山折り部と谷折り部とが交互に連続して繰り返された所謂ジャバラ構造を有している。図1に示すように、降り口22側の反転部カバー25のように、伸縮部27の収縮時には、山折り部及び谷折り部が折り畳まれ、一方、乗り口21側の反転部カバー25のように、伸長時には、山折り部及び谷折り部が展開した形態となる。
【0041】
伸縮部27を伸縮させるのは、上端の挟持部26に設置された電動モータ28である。
手摺デッキ17や欄干パネル16には、伸縮部27が完全に伸びたときに、駆動ローラ29等に当接する図示しないストッパを設けることができ、駆動ローラ29等がストッパに当接した時点で電動モータ28の駆動が停止されるように設定することができる。
【0042】
また、エスカレータ10は、図1に示すように、身長検出装置32を乗り口21及び降り口22に設置することができる。なお、降り口22側の身長検出装置32は、エスカレータ10の運転方向が変更されて乗り口21側となったときに使用される。身長検出装置32は、身長の低い幼児の存在を検出して、伸縮部27を自動的に伸縮制御させるために設置され、目的とする幼児の身長を検出できるセンサであれば、光学式センサや画像センサなど各種公知のセンサを使用することができる。
【0043】
例えば、身長検出装置32は、投光器と受光器とから構成される投受光赤外線センサとすることができ、両サイドの欄干部13の延長線上に、それぞれ投光器及び受光器を設置することができる。具体的には、検出したい幼児の身長に対応する高さに光軸を有する位置に第1の投光器、受光器をそれぞれ設置し、それよりも高い位置に第2の投光器、受光器をそれぞれ設置して、第1の光軸のみが遮断されたときに、目的とする幼児の存在を検出することができる。
【0044】
なお、図1に示すように、電動モータ28及び身長検出装置32は、トラス60内に設置された制御装置61とそれぞれ配線接続されている。そして、制御装置61によって、エスカレータ10の運転情報や身長検出装置32の検出情報に基いて、電動モータ28の駆動状態が制御される。
【0045】
ここで、制御装置61が設置されるトラス60は、自重及び荷重を支える土台部分であって、内部には、制御装置61の他に、ステップ11を連結する図示しないステップチェーン、ステップチェーンが撒き掛けられる図示しないスプロケット、移動手摺12を駆動する図示しない移動手摺駆動部、及びスプロケットを駆動する駆動装置62等が設置されている。なお、駆動装置62がスプロケットを駆動させることで、ステップチェーン及び移動手摺駆動部に連結された手摺チェーンが駆動して、ステップ11及び移動手摺12が循環することになる。
【0046】
制御装置61は、エスカレータ10の機械的要素の動作を統一的に制御する装置であって、駆動装置62の駆動を制御して、ステップ11及び移動手摺12を駆動又は停止させる機能を有する。さらに、制御装置61は、エスカレータ10の運転方向に関する情報や身長検出装置32からの検出信号を受信して、伸縮部27の長さを伸縮させる機能を有し、電動モータ作動手段を有する。
【0047】
なお、制御装置61は、CPUと、制御パラメータ等の入力に用いられる入力装置と、入力した制御パラメータや制御プログラム等を記憶する記録装置と、入出力ポートなどを備える装置であって、コンピュータによって構成することができる。各手段の機能は、ソフトウェアを実行することで実現でき、具体的には、対応するエスカレータ制御プログラムを実行することにより実現できる。
【0048】
電動モータ作動手段は、エスカレータ10の運転方向に関する情報に基いて、電動モータ28の駆動状態を制御する機能を有する。具体的に、電動モータ作動手段は、まず、エスカレータ10の運転方向に関する情報を取得して、乗り口21及び降り口22を特定する。そして、降り口22側の反転部カバー25の伸縮部27を収縮させると共に、乗り口21側の伸縮部27を伸長させるように、それぞれの電動モータ28に対して、電動モータ28の駆動指令を出力する。なお、運転方向に関する情報としては、駆動装置62のモータの回転方向やステップ11の移動方向等が挙げられ、電動モータ作動手段は、これらの動作を検知する図示しないセンサから情報を取得する。
【0049】
さらに、電動モータ作動手段は、身長検出装置32の検出情報に基いて、電動モータ28の駆動状態を制御する機能を有する。具体的に、電動モータ作動手段は、身長検出装置32により幼児の存在が検出されたときには、乗り口21側の伸縮部27を伸長させるように、電動モータ28に対して、電動モータ28の駆動指令を出力する。
【0050】
以上のように、本発明の第1実施形態に係るエスカレータ10には、乗り口21側の反転部23において、移動手摺12の外側面から内側面までをカバーする反転部カバー25が設置される。したがって、幼児等が乗り口21側の反転部23に対して接触することを物理的に阻止することが可能になる。
【0051】
また、反転部カバー25は、伸縮部27と、伸縮部27を伸縮させる電動モータ28と、電動モータ28を制御する制御装置61の電動モータ作動手段と、を有するので、エスカレータ10の運転方向に応じて、乗り口21側の反転部23のみを自動的にカバーすることが可能となり、管理者の負荷を軽減することができる。
【0052】
なお、上記では、駆動ローラ29及び係合爪30により、移動手摺12に沿った反転部カバー25の伸縮を実現したが、別途レールや溝を欄干パネル16に設置してガイドすることも可能である。また、電動モータ28により自動的に伸縮するものとして説明したが、電動モータ28を設けず、手動によって伸縮部27を伸縮させる構成とすることも可能である。
【0053】
次に、本発明の第2及び第3実施形態に係るエスカレータ10について、図4〜図6を用いて説明する。図4は、第2実施形態に係るエスカレータ10において、乗り口21付近を示す図である。図5は、第3実施形態に係るエスカレータ10において、乗り口21付近を示す図であり、図6は、図5のB−B線断面図である。
【0054】
図4に示すように、反転部カバー40は、アングル41によって乗り口21の床面(ランディングプレート)に固定されている。反転部カバー40は、欄干部13の内側をカバーする内側パネルと、外側をカバーする外側パネルと、移動手摺12の上面をカバーする前面パネルと、から構成されている。各パネルは、いずれも樹脂製の薄板等から構成され、鉛直方向に沿って設けられ、移動手摺12の内側面から外側面までを完全にカバーしている。
【0055】
反転部カバー40の内側パネル及び外側パネルは、欄干部13に沿った長さが、図4に示すように、欄干部13の先端部からインレット部24までを完全にカバーできる長さであることが好ましい。また、前面パネルは、鉛直方向に沿った長さが、少なくとも床面から幼児の目線付近までの長さである必要があって、同図に示すように、床面から反転部23の上端部あたりまでの長さを有することが好ましい。
【0056】
反転部カバー40の前面パネルには、エスカレータ10の運転状況を表示する表示部42が設けられる。表示部42としては、LEDや各種ディスプレイを用いた電光掲示板を使用することができる。反転部カバー40の前面パネルは、図4に示すように、エスカレータ10を利用しようと歩いてくる乗客に対して対向する位置に設けられるため、表示効果が高く、乗客がエスカレータ10の運転状況を確認することが容易になり、乗客の利便性を向上させることができる。
【0057】
また、反転部カバー40の内側パネルには、エスカレータ10が休止状態のときに乗り口21を閉鎖するゲート43が設けられる。ゲート43としては、乗り口21を閉鎖でき、反転部カバー40に取り付け可能であれば、図4に示すフラッパーゲートやロープゲートなど種々の形態のゲートを適用することができる。
【0058】
図5、図6に示すように、エスカレータ10は、第1実施形態の反転部カバー25と同様に、移動手摺12の外側面から上面を亘り内側面までを覆って、手摺デッキ17に取り付けられた反転部カバー50を備えることができる。反転部カバー50は、反転部カバー50が反転部23をカバーして欄干部13に取り付けられたときには、欄干パネル16の両側から挟持力が働くように、加工された樹脂(ゴム)製や金属製の薄板など弾性変形可能な部材から構成される。
【0059】
反転部カバー50は、内側に設けられた取り付け部51により、手摺デッキ17を挟んで取り付けられる。反転部カバー50が欄干部13に取り付けられたときには、欄干パネル16の両側から挟持力が働き、取り付け部51が手摺デッキ17に押し付けられる。したがって、反転部カバー50を取り付ける際には、反転部カバー50を挟持力に抗して開きながら欄干部13に嵌め込む。
【0060】
反転部カバー50の取り付け部51は、ゴム材料等によって構成することができ、取り付け部51には、図6に示すように、手摺デッキ17を挟んで対向する位置に、2つの爪が形成されている。このような取り付け部51は、反転部カバー50の全長に亘って設けられるが、取り付け安定性を損なわない限り、部分的に設けることもできる。また、取り付け部51の一部には、ボルトやネジ等の締結部材を設けることが好ましく、反転部カバー50は、この締結部材によって位置ずれしないように固定される。
【0061】
なお、上記のように、通常、移動手摺12の反転が完了して移動手摺12の上面が鉛直上方に向く位置よりもやや先方に、ステップ11の乗り位置が設定されるが、欄干部13の長さを、ステップ11の乗り位置から大きく延出させることもできる。このように、欄干部13の先端部を延出させた形状とすれば、ステップ11の乗り位置と反転部23の位置とが大きく離間することになり、反転部カバー25を反転部23を越えて広範に設けた場合であっても、ステップ11の乗り位置において、乗客は移動手摺12を持つことが可能である。
【0062】
なお、第1実施形態及び第3実施形態においては、反転部カバー25、50を手摺デッキ17に取り付けるものとして説明したが、手摺デッキ17を有さないエスカレータ10においては、欄干パネル16にボルトやネジ等の締結部材を用いて取り付けることができる。また、欄干パネル16に対して、吸盤や粘着テープ、或いは金属性の欄干パネル16であれば、磁石を用いて取り付けることも可能である。
【符号の説明】
【0063】
10 エスカレータ、11 ステップ、12 移動手摺、13 欄干部、14 踏板、15 ライザ、16 欄干パネル、17 手摺デッキ、18 手摺レール、19 インナーデッキ、20 アウターデッキ、21 乗り口、22 降り口、23 反転部、24 インレット部、25 反転部カバー、26 挟持部、27 伸縮部、28 電動モータ、29 駆動ローラ、30 係合爪、31 支持プレート、32 身長検出装置、40 反転部カバー、41 アングル、42 表示部、43 ゲート、50 反転部カバー、51 取り付け部、60 トラス、61 制御装置、62 駆動装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り口から降り口に亘って、ステップの両側に設けられた欄干部と、
欄干部に取り付けられた移動手摺と、
欄干部の乗り口側及び降り口側の各端部において、欄干部の形状に沿って移動手摺が反転する移動手摺の反転部と、
を備えた乗客コンベアであって、
乗り口側の反転部において、移動手摺の外側面から内側面までをカバーする反転部カバーが設置されることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
請求項1に記載の乗客コンベアにおいて、
反転部カバーは、移動手摺に沿って伸縮する伸縮部を有することを特徴とする乗客コンベア。
【請求項3】
請求項2に記載の乗客コンベアにおいて、
全ての反転部に反転部カバーが設置されると共に、
伸縮部を伸縮させる駆動アクチュエータと、
乗客コンベアの動作を制御する制御装置と、
を備え、
制御装置は、乗客コンベアの運転方向に基き、駆動アクチュエータを制御して、降り口側となる反転部に設置された反転部カバーの伸縮部を収縮させることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項4】
請求項2に記載の乗客コンベアにおいて、
乗り口に設置され、乗客の身長を検出する身長検出装置と、
伸縮部を伸縮させる駆動アクチュエータと、
乗客コンベアの動作を制御する制御装置と、
を備え、
制御装置は、身長検出センサの検出情報に基き、駆動アクチュエータを制御して、伸縮部を伸縮させることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1に記載の乗客コンベアにおいて、
反転部カバーは、乗客コンベアの運転状況を表示する表示部を有することを特徴とする乗客コンベア。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1に記載の乗客コンベアにおいて、
反転部カバーは、乗降口を閉鎖するゲートを有することを特徴とする乗客コンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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