説明

乗客コンベア

【課題】機械室内の温度上昇の低減を図ることができる乗客コンベアを提供する。
【解決手段】エスカレータ10のトラス12の端部内に配された機械室14と、機械室14に配されたモータ18と、モータ18をインバータ制御する制御装置40と、機械室14と、隣接する空間を仕切る仕切り板36とを有し、制御装置40における放熱部42が、仕切り板36によって隔てられた中間トラス30側に配されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベアの機械室に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エスカレータや動く歩道などの乗客コンベアの駆動力となるモータは、乗客コンベアのトラス端部に配されている機械室内部に取り付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、このモータは、乗客コンベアの速度などを正確に駆動させるために、可変電圧、可変周波数によりインバータ制御されている。このインバータ制御のための制御装置は、従来より機械室内に設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−321181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような制御装置は、電気的な損失を有し、この電気的損失により発生した熱によって、機械室内の温度が上昇するため、制御装置やモータの寿命低下などの要因となっていた。
【0006】
そのため、これを防止するため機械室に換気扇などで機械室の熱を外側に放出する手段が設けられている。ところが、制御装置の放熱手段付近の空気は、常に比較的高い温度環境にあるため、換気扇で熱を放出しても、モータなどの機械にとっては良い環境とはならないという問題点がある。また、換気扇を設けることにより風切り音も不快となるという問題点がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、機械室内の温度上昇の低減を図ることができる乗客コンベアを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、乗客コンベアのトラス端部内に配された機械室と、前記機械室内に配された前記乗客コンベアの駆動源であるモータと、前記モータの駆動をインバータ制御する制御装置と、前記機械室と、この機械室と隣接する空間とを仕切る仕切り板と、を有し、前記制御装置における少なくとも放熱部が、前記仕切り板によって隔てられた前記隣接する空間側に配されている、をことを特徴とする乗客コンベアである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、制御装置における少なくとも放熱部が、仕切り板によって隔てられた隣接する空間側に配されているため、機械室内の温度上昇を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1に係るエスカレータの側面から見た縦断面図である。
【図2】実施例1に係るエスカレータの要部の斜視図である。
【図3】実施例2に係るエスカレータの斜視図である。
【図4】実施例2に係るエスカレータの前面側から見た縦断面図である。
【図5】実施例3に係るエスカレータの側面から見た縦断面図である。
【図6】実施例3に係るエスカレータの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施例の乗客コンベアの一つであるエスカレータ10について、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
以下、本発明の実施例1に係るエスカレータ10について、図1と図2に基づいて説明する。
【0013】
エスカレータ10のトラス12は、上層階側の上トラス28、下層階側の下トラス(不図示)、上下トラスを連結する中間トラス30からなり、図1に示すように、上トラス12の上端部内、すなわち、上層階側のトラス端部内に機械室14が配されている。機械室14の底面には、エスカレータ10の駆動装置16が載置されている。駆動装置16は、モータ18、減速機20、マシンベッド22、マシン押さえ24、マシン受け26とから構成され、マシン受け26が機械室16の底面に固定されている。このモータ18と減速機20とは、マシンベッド22に取り付けられており、このマシンベッド22は、マシン受け26に載置され、かつ、マシン押さえ24によって、マシン受け26に固定されている。モータ18は、エスカレータ10の駆動源であり、後から説明する制御装置38によってインバータ制御される。減速機20はモータ18を減速し、所定の速度に落とすものである。
【0014】
上トラス28における中間トラス30側には、エスカレータ10を駆動する駆動輪32が配されている。駆動輪32と、駆動装置16の減速機20とは、ベルト34によって連結され、モータ18が回転することによって、駆動輪32も所定の減速した速度で回転する。
【0015】
図1と図2に示すように、駆動輪32と機械室14との間には、仕切り板36が縦方向に形成されている。仕切り板36の側部には、ベルト34が通る開口部35が形成されている。なお、図2では、ベルト34,駆動装置16は、仕切り板36を明りょうに示すために図示していない。仕切り板36の中央部分には、モータ18をインバータ制御するための制御装置38が取り付けられている。制御装置38は、仕切り板36を境に、機械室14側にはインバータ制御を行う制御基板を内蔵した制御部40、反対側の駆動輪32側には、これら制御基板からの熱を放熱するためのフィン、又は、送風ファンが内蔵された放熱部42が配されている。
【0016】
本実施例のエスカレータ10であると、制御装置38が、モータ18をインバータ制御で回転させると、制御装置38の制御部40内部の制御基板の各素子は発熱するが、その熱は、放熱部42により、駆動輪32側に放出される。放出された熱で温まった空気は、駆動輪32などの回転により上トラス28から中間トラス30側に攪拌されながら、エスカレータ10の様々な隙間から外部に放出される。一方、機械室14内部は、制御装置38の放熱部42からの放熱が、仕切り板36によって仕切られているため、温度上昇を確実に低減できる。
【実施例2】
【0017】
次に、本発明の実施例2に係るエスカレータ10について、図3と図4に基づいて説明する。
【0018】
実施例1のエスカレータ10では、仕切り板36を機械室14と駆動輪32側との間に設けたが、本実施例では、仕切り板36を、図3、図4に示すように、上トラス28の左側面、すなわち、エスカレータ10が取り付けられた建屋44に設けられているピット46との間に仕切り板36が設け、その中央に制御装置38を設けている。そして、制御装置38に関しては、仕切り板36の機械室14側に制御部40を配し、ピット側に放熱部42を配している。また、ピット46の上面にある床板50には、放熱穴48が複数開口している。
【0019】
本実施例のエスカレータ10であると、制御装置38の放熱部42から放熱された温まった空気は、ピット46に放出され、ピット46の上部に設けられた放熱穴48から外部に放出される。一方、仕切り板36によって隔てられた機械室14内部は、放熱部42から放熱された空気は伝わり難く、機械室14内部の温度の上昇を低減できる。
【0020】
なお、本実施例では仕切り板36を、図4における左側面に設けたが、右側面に設けてもよく、また、上トラス28の端面とピット46との間の前面に設けてもよい。
【実施例3】
【0021】
次に、本発明の実施例3に係るエスカレータ10について、図5と図6に基づいて説明する。
【0022】
実施例1では仕切り板36を、仕切り板36を機械室14と駆動輪32側との間に設けたが、本実施例では、機械室14の上部に、仕切り板36を水平方向に設け、その中央に制御装置38を設けている。そして、制御装置38に関しては、仕切り板36の機械室14側に制御部40を配し、放熱部42を仕切り板36と床板50の間にある隙間54に配している。また、仕切り板36の上方に位置する床板50には、放熱穴52が複数開口している。
【0023】
本実施例のエスカレータ10であると、制御装置38の放熱部42から放熱された温まった空気は、床板50と仕切り板36との間にある隙間54に放出され、その後に放熱穴52から放出される。一方、機械室14側は、仕切り板36によって仕切られているため、放熱部42からの熱は伝わり難く、機械室14内の温度の上昇を低減できる。
【変更例】
【0024】
本発明は上記各実施例に限らず、その主旨を逸脱しない限り種々に変更することができる。
【0025】
上記各実施例では、乗客コンベアについてエスカレータ10の例をもって説明したが、本発明の乗客コンベアは、エスカレータ10に限られず、動く歩道に適応することもできる。
【0026】
上記各実施例では、制御装置38は、仕切り板36を境に、機械室14側には制御部40、反対側には放熱部42が配されていたが、これに限らず、制御部40と放熱部42を含めた制御装置38の全てを、仕切り板38に仕切られた、機械室12と隣接する空間に設けてもよい。この場合でも、機械室14側は、仕切り板36によって仕切られているため、放熱部42からの熱は伝わり難く、機械室14内の温度の上昇を低減できる。
【符号の説明】
【0027】
10 エスカレータ
12 トラス
14 機械室
16 駆動装置
18 モータ
28 上トラス
30 中間トラス
32 駆動輪
36 仕切り板
38 制御装置
40 制御基板
42 放熱部42

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアのトラス端部内に配された機械室と、
前記機械室内に配された前記乗客コンベアの駆動源であるモータと、
前記モータの駆動をインバータ制御する制御装置と、
前記機械室と、この機械室と隣接する空間とを仕切る仕切り板と、
を有し、
前記制御装置における少なくとも放熱部が、前記仕切り板によって隔てられた前記隣接する空間側に配されている、
をことを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
前記仕切り板が、前記トラス端部と隣接する中間トラス側との間を仕切るように、前記機械室の側面に設けられ、
少なくとも前記放熱部が、前記中間トラス側に配されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記仕切り板が、前記トラス端部と隣接するピットとの間を仕切るように、前記機械室の側面に設けられ、
少なくとも前記放熱部が、前記ピット内に配されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
前記ピットの上面に、前記ピット内の熱を放熱する放熱穴を設けた、
ことを特徴とする請求項3に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
前記仕切り板が、前記機械室の天井面に設けられ、
少なくとも前記放熱部が、前記乗客コンベアの乗降口の床板と前記仕切り板との間の隙間に配されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項6】
前記床板に、前記隙間からの熱を放熱する放熱穴を設けた、
ことを特徴とする請求項5に記載の乗客コンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−157144(P2011−157144A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17842(P2010−17842)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】