説明

乗客コンベア

【課題】利用者の立ち位置が、踏板の幅方向の中央にくるように利用者に対して注意喚起を促すことができる乗客コンベアを得る。
【解決手段】踏面16と相対する方向から見て、踏段14の移動方向に延在するクリート17が、踏板15の幅方向に互いに離間するように踏板15に複数形成され、踏面16の中央側の表示領域には、踏段14に乗った利用者が、利用者の前方の特定の範囲にある各踏段14の踏面16の表示領域を見たときに、利用者の立ち位置が、踏板15の幅方向の中央である場合と、幅方向の一側や他側である場合とで異なって見える注意喚起表示部20が表記されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クリートが形成された踏板を有する踏段を備えるエスカレータなどの乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエスカレータは、クリートが奥行き方向全域に亘り、かつ幅方向に所定の間隔で形成された踏面を有し、無端状に連なって、一対の乗降口間を移動する踏段と、踏段の幅方向の両側に設けられる欄干とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−247471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のエスカレータでは、踏段の踏面に乗った利用者を、一方から他方の乗降口へ搬送させることになる。このとき、利用者が、踏段の幅方向の一側または他側に移動して欄干に近づくと、例えば、利用者の荷物が、思いがけず欄干に接触し、踏段と欄干との間に挟まってしまう場合がある。
【0005】
この発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、利用者の立ち位置を、踏板の幅方向の中央にさせるように利用者に対して注意喚起を促すことができる乗客コンベアを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の乗客コンベアは、踏面を有する踏板をそれぞれ含み、無端状に連結されて、一対の乗降口間を循環移動する複数の踏段を備え、踏面と相対する方向から見て踏段の移動方向に延在する複数のクリートが、踏板の幅方向に互いに離間するように踏板に形成され、踏面の中央側に位置する表示領域には、踏段に乗った利用者が、利用者の前方の特定の範囲にある踏段の表示領域を見たときに、利用者の立ち位置が、踏板の幅方向の中央である場合と、幅方向の一側や他側である場合とで異なって見える注意喚起表示部が表記されている。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る乗客コンベアによれば、踏板の幅方向の中央を立ち位置としている利用者から見える注意喚起表示部の内容は、現状を肯定するような内容として設定し、踏板の幅方向の一側及び他側を立ち位置としている利用者から見える注意喚起表示部の内容は、利用者を踏板の幅方向の中央に移動させるような注意喚起を促す内容に設定することで、利用者は、立ち位置を踏板の幅方向の中央側にするように心がけるようになる。これにより、例えば、利用者の荷物が、思いがけず欄干に接触して、踏段と欄干との間に挟まることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の一実施の形態に係るエスカレータの模式図である。
【図2】この発明の一実施の形態に係るエスカレータの踏段まわりの図であり、踏段の幅方向の中央にいる利用者が、前方に位置する踏段を見たときの様子を示している。
【図3】この発明の一実施の形態に係るエスカレータの踏段まわりの斜視図であり、踏段の幅方向の一側にいる利用者が、前方に位置する所定の踏段の踏板を踏段の幅方向の中央に向かって見たときの様子を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
図1はこの発明の一実施の形態に係るエスカレータの模式図、図2はこの発明の一実施の形態に係るエスカレータの踏段まわりの図であり、踏段の幅方向の中央にいる利用者が、前方に位置する踏段を見たときの様子を示している。図3はこの発明の一実施の形態に係るエスカレータの踏段まわりの斜視図であり、踏段の幅方向の一側にいる利用者が、前方に位置する所定の踏段の踏板を踏段の幅方向の中央に向かって見たときの様子を示している。
なお、図2及び図3では、説明の便宜上、欄干の図示を省略している。
【0011】
図1において、乗客コンベアとしてのエスカレータ1は、上下階に設けられた一対の乗降口2間に架設されたトラス3と、トラス3の上階側に設置された機械室4Aと、トラス3の下階側に設けられた機械室4Bと、機械室4Aに設けられた上部スプロケット7Aと、機械室4Bに設けられた下部スプロケット7Bと、上部スプロケット7A及び下部スプロケット7Bに無端状に巻き掛けられて図示しない電動機の駆動力により、循環走行する踏段鎖10と、踏段鎖10に無端状に連結されて、一対の乗降口2間を踏段鎖10の走行に連動して循環移動する踏段14と、踏段14の横幅方向の両側に立設された一対の欄干13とを備えている。
【0012】
各踏段14は、図2及び図3に示されるように、一面に踏面16を有し、所定の幅及び奥行きを有する矩形平板状の踏板15と、踏板15の奥行き方向の一端側から、踏板の幅方向の全域わたって、踏板15の他面側に延出するライザ18とを有する。
【0013】
踏板15の奥行き方向に延在する複数のクリート17が、踏板15の幅方向に互いに離間するように踏板15の踏面16側に形成されている。
踏板15の奥行き方向に垂直な断面において、踏面16は凹凸形状を有する。
【0014】
また、ライザ18の表面側には、踏板15からの突出方向に沿って延在する複数のクリート19が、ライザ18の幅方向に互いに離間するように形成されている。
ライザ18の踏板15からの突出方向に垂直な断面において、ライザ18の表面は、凹凸形状を有する。
【0015】
また、踏板15の幅方向の中央側に位置する踏面16の所定領域(表示領域)には、後述する注意喚起表示部20が表記されている。
【0016】
ここで、複数の踏段14は、踏面16と相対する側から見て、踏板15の奥行き方向が、踏段14の移動方向(進行方向)に一致されるように、踏段鎖10に無端状に連結され、踏段鎖10の走行に連動して循環移動する。即ち、踏面16と相対する側から見て、クリート17の延在方向は、踏段14の移動方向に一致される。なお、踏段14の循環経路には、利用者を一方の乗降口2から他方の乗降口2へ搬送する往路側経路を有している。踏段14は、往路側経路を移動する際、踏面16を上方に向け、踏板15を水平に維持したまま走行される。
一方の乗降口2から踏板15上に乗った利用者は、踏段14が往路側経路を移動するのに伴って、他方の乗降口2まで搬送されることになる。
【0017】
注意喚起表示部20は、踏段14の踏板15に乗った利用者が、利用者の前方の特定の範囲にある各踏段14の表示領域を見たときに、利用者の立ち位置が、踏板15の幅方向の中央である場合と、幅方向の一側及び他側のいずれかである場合とで異なって見えるように表記されている。
【0018】
注意喚起表示部20は、例えば、塗装により、踏面16に表記され、以下に説明する第1パターン20A及び第2パターン20Bを有する。
【0019】
第1パターン20Aは、図2に示されるように、踏板15の幅方向の中央P1を立ち位置とする利用者だけが、利用者の前方の特定の範囲にある各踏段14の表示領域を見たときに、利用者の注意を引き付ける内容として見えるように踏面16に表記されている。
特定の範囲は、利用者と、利用者の搬送先となる乗降口2との間のうち、踏板15の幅方向の中央側を立ち位置としている利用者にとって、注意喚起表示部20が第1パターン20Aとして見える少なくとも一つの踏段14を含む範囲である。
【0020】
また、第2パターン20Bは、図2に示されるように、踏板15の幅方向の一側及び他側のいずれかP2を立ち位置とする利用者だけが、利用者の前方の特定の範囲にある各踏段14の表示領域を見たときに、利用者の注意を引き付ける内容として見えるように表記されている。
特定の範囲は、利用者と、利用者の搬送先となる乗降口2との間のうち、踏板15の幅方向の一側または他側を立ち位置とする利用者にとって、注意喚起表示部20が第2パターン20Bとして見える少なくとも一つの踏段14を含む範囲である。
【0021】
ここで、利用者の立ち位置が、踏板15の幅方向の中央にある場合、踏面16の中央側に位置するクリート17の底面は、利用者から見えるが、側面は、利用者から略見えない。
【0022】
第1パターン20Aは、複数のクリート17の壁面のうち、底面に所定のパターンで塗装を施すことで実現される。
第1パターン20Aは、図2に示されるように、例えば、利用者が、踏面16の中央側と相対する側から見て、利用者から「笑い顔」として見えるパターンである。
利用者にとっては、第1パターン20Aは、現状が好ましいものとして受け取れる。
【0023】
また、例えば、利用者の立ち位置が、踏板15の幅方向の一側にずれて、立ち位置P2に移動されると、図3に示されるように、利用者が、踏面16の中央側を見たときには、クリート17の底面17aの少なくとも一部が見えなくなり、代わりにクリート17の一方及び他方の側面17bのうち、他方の側面17bが見えるようになる。
【0024】
また、図示しないが、利用者の立ち位置P1が、踏板15の幅方向の他側にずれると、クリート17の一方及び他方の側面17bのうち、一方の側面17bが見えやすくなる。
【0025】
第2パターン20Bは、複数のクリート17の両側面17bに所定のパターンで塗装を施すことで実現される。
第2パターン20Bは、図3に示されるように、例えば、立ち位置が、踏板15の幅方向の一側にずれて欄干13の近傍にいる利用者が、踏面16の中央側を見た時に、利用者から「中央へ」と見えるパターンである。
つまり、第2パターン20Bは、利用者にとって現状が好ましくなく、利用者に踏板15の中央へ立ち位置を変更させるための注意喚起を促す表示内容となっている。
なお、利用者が、立ち位置を踏板15の幅方向の他側にずらしても、第2パターン20Bが踏面16の表示領域に見えるように、踏面16の表示領域に塗装が施されている。
以上のようにエスカレータ1が構成されている。
【0026】
この発明によれば、踏面16の中央側に位置する表示領域には、踏段14に乗った利用者が、利用者の前方の特定の範囲にある各踏段14の表示領域を見たときに、利用者の立ち位置が、踏板15の幅方向の中央である場合と、幅方向の一側や他側である場合とで異なって見える注意喚起表示部20が表記されている。
【0027】
例えば、踏板15の幅方向の中央を立ち位置としている利用者から見える注意喚起表示部20の内容は、現状を肯定するような内容として設定し、踏板15の幅方向の一側及び他側を立ち位置としている利用者から見える注意喚起表示部20の内容は、利用者を踏板15の幅方向の中央に移動させるような注意喚起を促す内容に設定する。これにより、利用者は、立ち位置を踏板15の幅方向の中央側にするように心がけるので、利用者が、立ち位置を踏板15の幅方向の一側または他側にすることが抑制される。これにより、例えば、利用者の荷物が、思いがけず欄干13に接触して、踏段14と欄干13との間に挟まることを防止できる。
【0028】
なお、上記実施の形態では、注意喚起表示部20は、第1パターン20A及び第2パターン20Bからなるものとして説明したが、第1パターン20A及び第2パターン20Bは、このものに限定されない。第1パターン20Aを文字として表示したり、第2パターン20Bを絵として表示したりしてもよい。第1パターン20Aは、利用者が立ち位置を踏板15の幅方向の中央にしていることを肯定的にとらえられる内容として表記すればよい。また、パターンは、3つ以上用意してもよい。
【0029】
また、第2パターンは、利用者の立ち位置を踏板15の幅方向の中央に向かわせる内容であれば、その種類は問わない。
もしくは、第2パターンは、省略してもよい。この場合、利用者が、踏板15の幅方向の一側または他側に立ち位置を移動させても、何の表示も見えず、第1パターン20Aに利用者の注意喚起が集まるので、踏板15の幅方向の中央に利用者を向わせる効果が得られる。つまり、荷物等が、踏段14と欄干13との間に挟まれるのを防止する効果が得られる。
【0030】
また、乗客コンベアはエスカレータ1であるものとして説明したが、乗客コンベアが動く歩道であっても本願を適用できる。
【符号の説明】
【0031】
1 エスカレータ(乗客コンベア)、2 乗降口、14 踏段、15 踏板、16 踏面、20 注意喚起表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏面を有する踏板をそれぞれ含み、無端状に連結されて、一対の乗降口間を循環移動する複数の踏段を備え、
上記踏面と相対する方向から見て上記踏段の移動方向に延在するクリートが、上記踏板の幅方向に互いに離間するように上記踏板に複数形成され、
上記踏面の中央側に位置する表示領域には、上記踏段に乗った利用者が、上記利用者の前方の特定の範囲にある上記踏段の上記表示領域を見たときに、上記利用者の立ち位置が、上記踏板の幅方向の中央である場合と、幅方向の一側や他側である場合とで異なって見える注意喚起表示部が表記されていることを特徴とする乗客コンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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