説明

乗客コンベア

【課題】既設のものにあって、破壊されたガラスパネルが脱落することを防止すると共に、破壊したガラスパネルの交換作業、および飛散防止フィルムのみの交換作業を容易に行うことのできる乗客コンベアの提供。
【解決手段】無端状に連結され、乗降口間を循環移動する踏段の進行方向両側に沿って、所定の隙間を介して複数枚並べられるガラスパネル5と、これらのガラスパネル5に貼り付けられる飛散防止フィルム11とを備えた乗客コンベアにおいて、各ガラスパネル5に飛散防止フィルム11を貼り付けると共に、隣接するガラスパネル5間の隙間に、これらのガラスパネル5の表面より突出することなく、かつ、飛散防止フィルム11に接することがないように接着剤またはコーキング材(12)を充填するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレーターあるいは電動道路等の乗客コンベアに係り、特に、踏段の進行方向両側に沿って並べられるガラスパネルに飛散防止フィルムが貼られた乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
乗客コンベアでは、欄干にガラスパネルを使用していることが多く、そのため、衝撃等によりガラスパネルが破壊することがある。また、欄干のガラスパネルとして網線が埋設された強化ガラスを使用することも考えられるが、このような強化ガラスは自然破壊することもある。ガラスパネルが破壊すると、周囲にガラス片が飛散し危険であるため、従来、ガラス片の飛散防止策として、ガラスパネルに飛散防止フィルムを貼る方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。なお、特許文献1に記載される乗客コンベアでは、飛散防止フィルムを、ガラスパネルのステップ移動方向の端面まで巻き込むようにすること、または、飛散防止フィルムの端部を覆うように、互いに隣接するガラスパネル間の隙間にコーキング材を充填することで、飛散防止フィルムの剥離を防止して、安全性及び見栄えを長期間にわたって維持するようになっている。
【0003】
また、既設の乗客コンベアにあって、欄干を構成するガラスパネルに、前述した特許文献1に記載される構造を適用することは難しいことから、隣接する2枚以上のガラスパネルを架け渡して1枚の飛散防止フィルムを貼り付け、既設の乗客コンベアにあって、破壊されたガラスパネルが脱落することを確実に防止するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
さらに、従来、隣接するガラスパネルの間隙に、コーキング材を充填することが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−319759号公報(段落番号0012〜0015、図1、図2)
【特許文献2】特開2010−215393号公報(段落番号0017〜0025、図3)
【特許文献3】実開昭64−12074号公報(第1頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した特許文献1に記載したものでは、飛散防止フィルムの端部を覆うように、互いに隣接するガラスパネル間の隙間にコーキング材が充填されていることから、飛散防止フィルムを貼り替える際、コーキング材も再加工する必要があり、コストの向上を招くという問題があった。また、コーキング材と飛散防止フィルムが接触していることから、コーキング材が飛散防止フィルムの劣化を促し、飛散防止フィルムが剥がれてしまう虞があった。さらに、ガラスパネルの隙間に充填したコーキング材がガラスパネル表面より突出する可能性があるため、充填したコーキング材の突出部分に利用客の手荷物等が引っ掛かることによって、コーキング材がガラスパネル表面より剥離することが懸念される。
【0007】
また、特許文献2に示すものでは、ガラスパネルが何らかの理由で破壊され、その交換を行う際、飛散防止フィルムが隣接する2枚以上のガラスパネルを架け渡して貼られていることから、隣接する破壊されていないガラスパネルの飛散防止フィルムを貼り替えることも必要となる。飛散防止フィルムの貼り付け施工は現地で行うことが条件となることから、乗客コンベアの停止期間短縮が困難であった。
【0008】
また、特許文献3では、飛散防止フィルムに関しては全く考慮が払われていなかった。
【0009】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、既設のものにあって、破壊されたガラスパネルが脱落することを防止すると共に、破壊したガラスパネルの交換作業、および飛散防止フィルムのみの交換作業を容易に行うことのできる乗客コンベアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は、無端状に連結され、乗降口間を循環移動する踏段の進行方向両側に沿って、所定の隙間を介して複数枚並べられるガラスパネルと、これらのガラスパネルに貼り付けられる飛散防止フィルムとを備えた乗客コンベアにおいて、前記各ガラスパネルに前記飛散防止フィルムを貼り付けると共に、隣接するガラスパネル間の隙間に、これらのガラスパネルの表面より突出することなく、かつ、前記飛散防止フィルムに接することがないように接着剤またはコーキング材を充填し、この接着剤またはコーキング材により隣接するガラスパネルの端部を繋いだことを特徴としている。
【0011】
このように構成した本発明では、複数のガラスパネルのうちの1枚が何らかの理由により破壊されると、破壊されたガラスパネルに貼られている飛散防止フィルムにガラス片が貼着した状態になる。このとき、破壊されたガラスパネルは隣接する破壊されていないガラスパネルに接着剤またはコーキング材を介して繋がっているため、破壊されたガラスパネルが脱落することはない。また、破壊されたガラスパネルは、隣接するガラスパネルとの隙間に充填された接着剤またはコーキング材と共に取り除かれ、飛散防止フィルムが貼られた新たなガラスパネルに置き換えられると共に、隣接するガラスパネルとの隙間に接着剤またはコーキング材を充填し、交換作業を終了する。さらに、飛散防止フィルムのみの交換作業は、各ガラスパネルから既設のものを剥がし、新たなものを貼り付けるだけであり、接着剤またはコーキング材はそのまま継続して使用する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、既設の乗客コンベアにあって、ガラスパネルが破壊した際、飛散防止フィルムにガラス片が貼着した状態で、ガラスパネルが一体的に脱落することを防ぎ、安全性の向上を図ることができる。また、破壊したガラスパネルの交換作業は、飛散防止フィルムを貼り付けた新たなガラスパネルを用意することで、隣接するガラスパネルに影響を及ぼすことなく、破壊したガラスパネルを単独で交換することが可能となり、短時間で作業を行うことができる。さらに、飛散防止フィルムのみの交換作業は、各ガラスパネルから既設のものを剥がし、新たなものを貼り付けるだけであり、接着剤またはコーキング材はそのまま継続して使用可能である。従って、容易に交換作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】乗客コンベアの全体を表す概略側面図である。
【図2】本発明の実施例を示す概略断面図である。
【図3】図2においてAから見た部分概略側面図である。
【図4】図3のB−B線に沿う矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る乗客コンベアの実施例を図に基づき説明する。
【0015】
乗客コンベア、例えばエスカレーターは、図1に示すように、2つの階床間に架設されるトラス1と、無端状に連結された状態でトラス1内に設けられ、乗降口2、3間を循環移動する踏段4と、踏段4の進行方向両側に沿って、所定の隙間を介して複数枚並べられ、欄干を構成するガラスパネル5と、図2に示すように、ガラスパネル5の上面に支持される手摺デッキ6と、この手摺デッキ5に装着されると共に、踏段4と同期して循環移動する移動手摺7と、ガラスパネル5の下部を支持するパネル受け8と、ガラスパネル5下部の踏段側に配置される内デッキ9と、ガラスパネル5下部の反踏段側に配置される外デッキ10とを備えている。
【0016】
そして、本実施例では、図3および図4に示すように、各ガラスパネル5、5a、5bに飛散防止フィルム11を貼り付けると共に、隣接するガラスパネル間の隙間hに、これらのガラスパネルの表面より突出することなく、また飛散防止フィルム11に接することがないように、例えば接着剤12を充填し、この接着剤12により隣接するガラスパネルの端部を繋いでいる。
【0017】
本実施例にあっては、複数のガラスパネル5、5a、5bのうちの1枚が何らかの理由により破壊されると、破壊されたガラスパネル、例えばガラスパネル5に貼られている飛散防止フィルム11にガラス片が貼着した状態になる。このとき、破壊されたガラスパネル5は隣接する破壊されていないガラスパネル5a、5bに接着剤12を介して繋がっているため、破壊されたガラスパネル5が脱落することはない。
【0018】
破壊されたガラスパネル5の交換作業は、破壊されたガラスパネル5を、隣接するガラスパネル5a、5bとの隙間に充填された接着剤12と共に取り除き、飛散防止フィルム11が貼られた新たなガラスパネルに置き換え、次いで、隣接するガラスパネル5a、5bとの隙間hに接着剤12を充填し、作業を終了する。
【0019】
飛散防止フィルム11のみを交換する場合、各ガラスパネル5、5a、5bから既設の飛散防止フィルム11を剥がし、新たなものを貼り付けるだけである。このとき、接着剤12はそのまま継続して使用する。
【0020】
本実施例によれば、既設の乗客コンベアにあって、ガラスパネル5が破壊した際、飛散防止フィルム11にガラス片が貼着した状態で、ガラスパネル5が一体的に脱落することを防ぎ、安全性の向上を図ることができる。また、破壊したガラスパネル5の交換作業は、飛散防止フィルム11を貼り付けた新たなガラスパネルを用意することで、隣接するガラスパネルに影響を及ぼすことなく、破壊したガラスパネルを単独で交換することが可能となり、短時間で作業を行うことができる。さらに、飛散防止フィルム11のみの交換作業は、各ガラスパネル5、5a、5bから既設のものを剥がし、新たなものを貼り付けるだけであり、接着剤12はそのまま継続して使用可能である。従って、容易に交換作業を行うことができる。
【0021】
なお、前述した実施例では、隣接するガラスパネル間の隙間に接着剤12を充填したが、コーキング材を充填しても同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0022】
1 トラス
2、3 乗降口
4 踏段
5、5a、5b ガラスパネル
6 手摺デッキ
7 移動手摺
8 パネル受け
9 内デッキ
10 外デッキ
11 飛散防止フィルム
12 接着剤
h 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結され、乗降口間を循環移動する踏段の進行方向両側に沿って、所定の隙間を介して複数枚並べられるガラスパネルと、これらのガラスパネルに貼り付けられる飛散防止フィルムとを備えた乗客コンベアにおいて、
前記各ガラスパネルに前記飛散防止フィルムを貼り付けると共に、隣接するガラスパネル間の隙間に、これらのガラスパネルの表面より突出することなく、かつ、前記飛散防止フィルムに接することがないように接着剤またはコーキング材を充填し、この接着剤またはコーキング材により隣接するガラスパネルの端部を繋いだことを特徴とする乗客コンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−246072(P2012−246072A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117088(P2011−117088)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】